説明

個人属性推定装置、個人属性推定方法及び個人属性推定システム

【課題】若年者を含む年齢を精度良く推定することができる個人属性推定装置、個人属性推定方法及び個人属性推定システムを提供することを課題とする。
【解決手段】撮像部11が撮像した画像から、顔検出部21が対象者の顔画像を検出し、鼻領域切り出し部22が顔画像から鼻を含む所定領域の画像を切り出す。共起ヒストグラム算出部23は、所定領域の画像における輝度の分布を共起ヒストグラムによって評価し、テンプレート照合部24が年齢層別に作成されたテンプレートと照合する。スコア算出部25がテンプレートとの照合結果から、最も一致度合いの高い年齢層を対象者の年齢層と推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、対象者の顔画像から個人属性を推定する個人属性推定装置、個人属性推定方法及び個人属性推定システムに関し、特に年齢層を精度良く推定することができる個人属性推定装置、個人属性推定方法及び個人属性推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔画像から年齢を推定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、上瞼のくぼみ、口角のしわ、鼻唇溝、下顎ラインのたるみ、口周囲のしわ、額のしわ、目尻のしわ、首のしわ、目の下のしわ、額中央のくぼみ等を判別対象とし、現在の顔の物理量より、加齢によって、しわ、たるみ及びくぼみの顔の形態変化が目立つか否かを判別する技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、画像中の顔の状態を判定し、予め定められた複数の年齢層の夫々について、顔がその年齢層に該当する確率を表すスコアを算出するとともに、顔の状態に基づいてスコアを補正し、年齢層ごとの補正後スコアのうち、最も高い確率を表す補正後スコアに対応する年齢層を該人物の属性とみなすよう構成した人物属性推定装置が開示されている。具体的には、この特許文献2では、右目、左目、鼻、口の4つの特徴部から年齢を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−360544号公報
【特許文献2】特開2008−282089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のものは、顔のしわ等を特徴量として用いているため、顔表面のしわ等が少ない若年者の年齢推定には適さず、十分な推定精度を得ることが難しい。
【0006】
また、特許文献2のものは、4つの特徴部の一つとして鼻の特徴量を年齢推定に用いている。確かに、鼻の形状は、成長過程において変化が大きいことが知られており、若年者では成長とともに鼻骨がしっかりとして、鼻筋が通ってくる。しかし、この特許文献2のものは、単に顔パーツの配置に着目しているだけであるので、この特許文献2の鼻の特徴量を用いたとしても年齢を推定することができない。鼻の形状はなだらかな凹凸であり、顔画像の特徴を抽出する際に一般的なエッジ検出やフーリエ変換は、なだらかな濃度変化から特徴を抽出することが困難なためである。
【0007】
これらのことから、若年者の年齢をいかに精度良く推定するかが重要な課題となっている。特に、酒やタバコなどの販売、ホームページのアクセス管理などの分野では成人識別の需要が高いため、若年者の年齢をいかに推定するかが大きな課題となっている。
【0008】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであって、若年者を含む年齢を精度良く推定することができる個人属性推定装置、個人属性推定方法及び個人属性推定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、対象者の顔画像から前記対象者の個人属性を推定する個人属性推定装置であって、前記顔画像から鼻を含む所定領域の画像を切り出す切り出し手段と、前記所定領域の画像における輝度の分布を評価する評価手段と、前記輝度の分布と個人属性別に作成されたテンプレートとを照合する照合手段と、前記照合手段による照合の結果に基づいて前記個人属性を推定する第1の推定手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記の発明において、前記評価手段は、前記所定領域の画像における共起ヒストグラムを算出し、前記照合手段は、前記個人属性別に作成した共起ヒストグラムを前記テンプレートとして照合を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、個人属性推定装置が、対象者の顔画像から鼻を含む所定領域の画像を切り出し、所定領域の画像における輝度の分布を評価し、輝度の分布と個人属性別に作成されたテンプレートとを照合して個人属性を推定するよう構成したので、若年者を含む年齢を精度良く推定することができる。また、個人属性推定装置が、鼻を含む所定領域の画像における共起ヒストグラムを算出し、個人属性別に作成した共起ヒストグラムをテンプレートとして照合を行うよう構成したので、なだらかな凹凸である鼻に対応する輝度分布を正確に評価し、若年者を含む年齢層を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例1に係る個人属性推定装置の構成を示す構成図である。
【図2】図2は、鼻を含む所定領域の画像からの共起ヒストグラムの算出について説明する説明図である。
【図3】図3は、顔画像からの所定領域の切り出しについて説明する説明図である。
【図4】図4は、テンプレート作成用の平均顔画像について説明する説明図である。
【図5】図5は、鼻を含む所定領域の画像と共起ヒストグラムについて説明する説明図である。
【図6】図6は、明るさを補正せずに共起ヒストグラムを求めてテンプレートマッチングを行った結果についての説明図である。
【図7】図7は、図6に示した例における相関値の分散値を示している。
【図8】図8は、鼻領域切り出し部による明るさ補正について説明する説明図である。
【図9】図9は、明るさの補正について説明する説明図である。
【図10】図10は、年齢層推定の精度についての説明図である。
【図11】図11は、個人属性推定装置10による個人属性推定処理手順を示すフローチャートである。
【図12】図12は、共起ヒストグラムの算出についてさらに詳細に説明するフローチャートである。
【図13】図13は、実施例2に係る個人属性推定装置の構成を示す構成図である。
【図14】図14は、個人属性推定装置10aによる個人属性推定処理手順を示すフローチャートである。
【0013】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る個人属性推定装置、個人属性推定方法及び個人属性推定システムの好適な実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
まず、本実施例に係る個人属性推定装置の構成について説明する。図1は、本実施例に係る個人属性推定装置の構成を示す構成図である。同図に示すように、この個人属性推定装置10は、撮像部11と、結果出力部12と、記憶部13と、制御部14とを備えている。また、記憶部13はテンプレート31を記憶する。制御部14は、顔検出部21と、鼻領域切り出し部22と、共起ヒストグラム算出部23と、テンプレート照合部24と、スコア算出部25とをさらに備えている。
【0015】
撮像部11は、CCD(Charge Coupled Devices)カメラ等の撮像機器で構成される。例えば、撮像部11を可視カメラで構成した場合であれば、撮像部11は、照明や日光による可視光が対象で反射した反射可視光を検知し、可視画像として撮像する。そして、撮像部11は、撮像した可視画像を制御部14の顔検出部21へ出力する。
【0016】
結果出力部12は、スコア算出部25で算出されたスコアを表示する表示装置などの出力装置であり、例えば、液晶ディスプレイやスピーカー等で構成されている。記憶部13は、不揮発性メモリやハードディスクドライブといった記憶デバイスで構成される記憶部であり、個人属性別に作成されたテンプレート31を記憶する。
【0017】
顔検出部14は、撮像部11が撮像した対象者の画像から顔画像を検出する。鼻領域切り出し部22は、顔画像から鼻を含む所定領域の画像を切り出す切り出し手段として機能する。共起ヒストグラム算出部23は、所定領域の画像における輝度の分布を評価する評価手段である。
【0018】
具体的には、共起ヒストグラム算出部23は、所定領域の画像における共起ヒストグラム(Co-occurrence Histogram)を評価指標として算出する。共起ヒストグラムは、画像の2点間における輝度の差を相対的に評価できる指標である。共起ヒストグラム算出部23は、所定領域の画像における第1の画素と、第1の画素から鼻筋に直交する方向に所定距離だけ離れた第2の画素との輝度について共起ヒストグラムを算出することが好適である。共起ヒストグラムの詳細については後述する。
【0019】
テンプレート照合部24は、共起ヒストグラム算出部23が求めた共起ヒストグラムと、テンプレート31とを照合する照合手段である。テンプレート31は、個人属性別に作成した共起ヒストグラムである。具体的には、テンプレート31は、年齢層が同一の複数の顔画像から求めた平均顔画像の鼻を含む所定領域の画像の共起ヒストグラムである。
【0020】
スコア算出部25は、テンプレート照合部24による照合の結果に基づいて撮像部11が撮像した対象者の個人属性を推定する第1の推定手段である。具体的には、スコア算出部25は、テンプレート31との照合の結果、年齢層で区分した各カテゴリについて、共起ヒストグラムの一致度合いをスコアとして算出する。このスコアが最も高いカテゴリが、対象者の年齢層として推定される。
【0021】
図2は、鼻を含む所定領域の画像からの共起ヒストグラムの算出について説明する説明図である。共起ヒストグラムでは、注目画素(x,y)と(x+k,y+l)の二点における輝度f(x,y)とf(x+k,y+l)の関連性を、その出現頻度や距離によって評価することができる。ここで、k及びlの値は、任意に決定することが可能である。
【0022】
図2に示した共起ヒストグラムでは、一例として、f(x,y)=0、f(x+k,y+l)=0となる画素が所定領域の画像内に5点あり、f(x,y)=0、f(x+k,y+l)=1となる画素が所定領域の画像内に3点あることを示している。
【0023】
図3は、顔画像からの所定領域の切り出しについて説明する説明図である。所定領域は、例えば、左端を左目の瞳の中心とし、右端を右目の瞳の中心とする。そして、上端を左右の瞳の中心とし、下端を唇の上とする。この鼻を含む所定領域の画像に対し、共起ヒストグラムの算出前に大きさの正規化を行う。正規化の際には、横幅を50画素とし、高さは縦横比(アスペクト比)を保って拡大或いは縮小する。画像からの顔の切り出し及び目、鼻、口など顔パーツの位置の取得は、特開2007−034723号公報等の既存の顔検出方法を用いて行うことができる。
【0024】
図4は、テンプレート作成用の平均顔画像について説明する説明図である。画像53は、5〜9歳の男性の平均顔画像であり、画像54は、20〜29歳の男性の平均顔画像である。画像53と画像54を比較すると、鼻の陰影の強弱に違いが現れていることが確認できる。具体的には、鼻は、両目の凹んだ所から下方に1cm程度の前頭骨と、鼻骨以下の軟骨を有する。軟骨部の大部分を占める外側鼻軟骨、大鼻翼軟骨は、成長に伴う顔の形状変化においても特に変化の大きい箇所である。鼻の長さも成長とともに長くなる。
【0025】
図5は、鼻を含む所定領域の画像と共起ヒストグラムについて説明する説明図である。画像55は、10歳未満男性の平均顔画像から切り出した鼻を含む所定領域の画像である。また、画像56は、10代前半男性の平均顔画像から切り出した鼻を含む所定領域の画像である。そして、画像57は、20代男性の平均顔画像から切り出した鼻を含む所定領域の画像である。
【0026】
画像55aは、画像55から算出した10歳未満男性の共起ヒストグラムを図示したものである。また、画像56aは、画像56から算出した10代前半男性の共起ヒストグラムを図示したものである。そして、画像57aは、画像57から算出した20代男性の共起ヒストグラムを図示したものである。
【0027】
画像55a、画像56a、画像57aを比較すると、年齢が上がるにつれて共起ヒストグラムが広範囲に分散することが分かる。そこで、画像55a、画像56a、画像57aのように年齢層でカテゴライズして算出した共起ヒストグラムをテンプレートとし、対象者の顔画像から算出した共起ヒストグラムとテンプレートマッチングを行うことで、対象者の年齢を推定することが可能となる。
【0028】
鼻を含む所定領域の画像から共起ヒストグラムを求め、テンプレートマッチングによって年齢を推定する場合に、撮像時の照明方向、強さ、撮像距離などが不均一であると所定領域の画像に含まれる情報量に差が生じ、推定の精度が低下することが懸念される。このため、鼻を含む所定領域の画像について明るさの補正を行なうことが望ましい。
【0029】
図6は、明るさを補正せずに共起ヒストグラムを求めてテンプレートマッチングを行った結果についての説明図である。図6に示した例では、15〜19歳の男女各10名の所定領域の画像について、テンプレートとの相関値(後述のR_a)を求めた結果の平均値示している。また、図7は、図6に示した例における相関値の分散値を示している。
【0030】
図6に示した例では、15〜19歳男性の所定領域の画像の共起ヒストグラムは、15〜19歳のテンプレートにおいて最も高い相関値0.66を取った。しかし、15〜19歳女性の所定領域の画像の共起ヒストグラムは、10〜14歳のテンプレートにおいて最も高い相関値0.68を取った。すなわち、15〜19歳男の所定領域の画像の共起ヒストグラムからは15〜19歳であると正しく推定されやすいが、15〜19歳女性の所定領域の画像の共起ヒストグラムからは、10〜14歳であると誤った推定がなされることが多い。
【0031】
ここで、図7を参照すると、15〜19歳男性の5〜9歳のテンプレートに対する相関値の分散値は、0.04467である。同じく、15〜19歳男性の10〜14歳のテンプレートに対する相関値の分散値は、0.04668である。また、15〜19歳男性の15〜19歳のテンプレートに対する相関値の分散値は、0.20335である。そして、15〜19歳男性の20〜29歳のテンプレートに対する相関値の分散値は、0.08585である。また、15〜19歳男性の30〜39歳のテンプレートに対する相関値の分散値は、0.08742であり、40〜49歳のテンプレートに対する相関値の分散値は、0.03911である。
【0032】
15〜19歳女性の5〜9歳のテンプレートに対する相関値の分散値は、0.03266である。同じく、15〜19歳女性の10〜14歳のテンプレートに対する相関値の分散値は、0.02228である。また、15〜19歳女性の15〜19歳のテンプレートに対する相関値の分散値は、0.00625である。そして、15〜19歳女性の20〜29歳のテンプレートに対する相関値の分散値は、0.02220である。また、15〜19歳女性の30〜39歳のテンプレートに対する相関値の分散値は、0.02466であり、40〜49歳のテンプレートに対する相関値の分散値は、0.02054である。
【0033】
このように、明るさを補正せずに所定領域の画像から共起ヒストグラムを算出してテンプレートと照合した場合には、相関値の分散値が大きくなる。肌の明るさが異なると、鼻の形状が同じでも明るい部分と暗い部分の輝度差が異なることとなり、年齢層を正確に推定することができなくなる。
【0034】
そこで、鼻領域切り出し部22は、切り出した鼻を含む所定領域の画像に対して明るさの補正を行なう。図8は、鼻領域切り出し部による明るさ補正について説明する説明図である。同図に示した画像61は、明るさ補正前の原画像であり、画像62は、明るさ補正後の画像である。
【0035】
明るさの補正では、具体的には、平均顔画像の所定領域の画像の明るさ補正前における輝度値ヒストグラムの最大値を基本軸とし、対象者の顔画像の所定領域の画像における輝度値ヒストグラムの最大値投票位置を基本軸の数値に移動させる。明るさ補正後の輝度値は、最大投票位置までについて
【数1】

最大投票位置以降について
【数2】

によって表される。
【0036】
図9は、明るさの補正について説明する説明図である。画像71は、対象者の顔画像から切り出した鼻を含む所定領域の画像である入力鼻画像の明るさ補正前の輝度値ヒストグラムである。画像73は、平均顔画像から切り出した鼻を含む所定領域の画像である平均鼻画像の明るさ補正前の輝度値ヒストグラムである。
【0037】
そして、画像72は、対象者の顔画像から切り出した鼻を含む所定領域の画像である入力鼻画像の明るさ補正後の輝度値ヒストグラムである。画像74は、平均顔画像から切り出した鼻を含む所定領域の画像である平均鼻画像の明るさ補正後の輝度値ヒストグラムである。
【0038】
画像71の最大投票位置と画像73の基本軸に一致していないので、画像72,74に示したように、画像71の最大投票位置を画像73の基本軸に移動させる。さらに、画像71と画像73の分布を同一縮尺で拡大することで、画像71及び画像73から明るさ補正後の画像72,74が得られる。このように明るさを補正した後、共起ヒストグラムを求めることで、年齢推定の精度を向上することができる。
【0039】
図10は、年齢推定の精度についての説明図である。具体的には、スコア算出部25が算出したスコアが最も高い年齢層を推定結果としている。表81に示したように、15〜19歳男性の画像を複数用いた場合には、そのうち20%が10〜14歳と推定され、40%が15〜19歳と推定され、30%が20〜29歳と推定され、10%が30〜39歳と推定された。同様に、20〜29歳男性の画像を複数用いた場合には、そのうち10%が10〜14歳と推定され、80%が30〜39歳と推定され、10%が40〜49歳と推定された。
【0040】
また、30〜39歳男性の画像を複数用いた場合には、そのうち10%が10〜14歳と推定され、30%が20〜29歳と推定され、50%が30〜39歳と推定され、10%が40〜49歳と推定された。そして、40〜49歳男性の画像を複数用いた場合には、そのうち30%が30〜39歳と推定され、70%が40〜49歳と推定された。
【0041】
したがって、表81から対象が未成年であるか否かを判定すると、表82に示したように、15〜19歳の男性を60%の精度で未成年であると推定でき、20〜29歳の男性及び30〜39歳の男性を90%の精度で成年であると推定でき、40〜49歳の男性を100%の精度で成年であると推定できたこととなる。
【0042】
また、表83に示したように、15〜19歳女性の画像を複数用いた場合には、そのうち20%が10〜14歳と推定され、50%が15〜19歳と推定され、10%が20〜29歳と推定され、10%が30〜39歳と推定され、10%が40〜49歳と推定された。同様に、20〜29歳女性の画像を複数用いた場合には、そのうち10%が10〜14歳と推定され、20%が15〜19歳と推定され、30%が20〜29歳と推定され、20%が30〜39歳と推定され、20%が40〜49歳と推定された。
【0043】
また、30〜39歳女性の画像を複数用いた場合には、そのうち20%が15〜19歳と推定され、30%が20〜29歳と推定され、40%が30〜39歳と推定され、10%が40〜49歳と推定された。そして、40〜49歳女性の画像を複数用いた場合には、そのうち20%が15〜19歳と推定され、10%が30〜39歳と推定され、70%が40〜49歳と推定された。
【0044】
したがって、表83から対象が未成年であるか否かを判定すると、表84に示したように、15〜19歳の女性を70%の精度で未成年であると推定でき、20〜29歳の女性を70%の精度で成年であると推定でき、30〜39歳の女性を80%の精度で成年であると推定でき、40〜49歳の女性を80%の精度で成年であると推定できたこととなる。
【0045】
次に、個人属性推定方法の処理手順について説明する。図11は、個人属性推定装置10による個人属性推定処理手順を示すフローチャートである。図11に示すように、撮像部11が撮像を行って画像を入力する(ステップS101)と、顔検出部22が入力された画像内から顔を検出する(ステップS102)。
【0046】
鼻領域切り出し部22は、ステップS102で検出された顔の左右の瞳の中心と唇の上端を識別し、鼻を含む所定領域の画像を切り出す(ステップS103)。共起ヒストグラム算出部23は、鼻を含む所定領域の画像から共起ヒストグラムを算出し(ステップS104)、テンプレート照合部24は、算出された共起ヒストグラムをテンプレート31と照合する(ステップS105)。スコア算出部25は、テンプレート31の各年齢層に対する一致度合いをスコアとして算出し(ステップS106)、処理を終了する。
【0047】
図12は、共起ヒストグラム算出部23による共起ヒストグラムの算出(ステップS104)についてさらに詳細に説明するフローチャートである。共起ヒストグラム算出部23は、鼻を含む所定領域の画像を入力すると(ステップS201)、共起ヒストグラムhhをゼロクリアする(ステップS202)(hh(i,j)=0 for 0≦i≦255,0≦j≦255)。
【0048】
そして、所定領域の範囲内について、(x,y)と(x+k,y+l)の輝度値f(x,y)とf(x+k,y+l)をそれぞれ算出する(ステップS203)。そして、算出結果を共起ヒストグラムhh(f(x,y),f(x+k,y+l))に投票することで、hh(i,j)を求め(ステップS204)、処理を終了する。なお、一例として、k=5,l=0が好適である。これは、鼻筋に直交する方向に離れた画素の間で、輝度差が特徴的に得られるためである。
【0049】
次にテンプレート照合部24によるテンプレートの照合についてさらに説明する。テンプレートの事前準備として、5〜9歳、10〜14歳、15〜19歳、20〜29歳、30〜39歳、40〜49歳の各年齢層について平均顔画像を作成し、作成した平均顔画像から鼻を含む所定領域の画像を切り出し、年齢層ごとにそれぞれ共起ヒストグラムを算出する。これをテンプレートhhT_a(k,l)とする(0≦k<256,0≦l<256)。
【0050】
また、撮像部11が撮像した画像から得られた所定領域の画像の共起ヒストグラムをhh(k,l)とする。hh(k,l)とhhT_a(k,l)を(i,j)ずらして相関を取ったものをR_a(i,j)とし、R_a(i,j)のi,jの変域に対する最大値を2者の照合スコアR(a)とすると、
【数3】

となる。ただし、ずらし量は、共起ヒストグラムの特徴パターンのズレ量に相当する大きさで、例えば共起ヒストグラムのサイズの上下及び左右に1/4とする。すなわち、−256/4≦i<256/4,−256/4≦j<256/4である。R_a(i,j)のi,jに対する最大値を照合スコアR(a)とする。すなわち、
【数4】

である。この照合スコアがその年齢層のスコアとなる。そして、照合スコアが最大の年齢層が、対象者の年齢層として推定され、結果出力部12から出力される。
【0051】
上述してきたように、本実施例では、鼻領域切り出し部22が対象者の顔画像から鼻を含む所定領域の画像を切り出し、共起ヒストグラム算出部23が所定領域の画像における輝度の分布を共起ヒストグラムによって評価し、テンプレート照合部24が年齢層別に作成されたテンプレートと照合することで、対象者の年齢層を推定するよう構成したので、成長過程の鼻の形状変化を特徴として利用し、若年者の年齢を高精度に推定することができる。このため、特に対象者が未成年か否かについて精度良く判定することが可能となる。
【0052】
なお、本実施例では、5歳若しくは10歳で年齢層の区別を行ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、任意の幅、例えば1歳刻みで年齢を区別するようにテンプレートを作成し、年齢を推定することができる。また、男女の区別無くテンプレートを作成しても良いし、性別と年齢層で区分したテンプレートを用いても良い。性別と年齢層とで区分したテンプレートを用いれば、年齢と性別とを個人属性として推定可能となる。
【実施例2】
【0053】
実施例1では、鼻を含む所定領域の画像から年齢層を推定する手法について説明したが、かかる手法は、他の個人属性推定手法と組み合わせて使用することもできる。図13は、本実施例に係る個人属性推定装置の構成を示す構成図である。同図に示すように、この個人属性推定装置10aは、撮像部11と、結果出力部12と、記憶部13aと、制御部14aとを備えている。記憶部13aは、識別関数32とテンプレート33,34とを記憶する。制御部14aは、顔検出部21と、鼻領域切り出し部22と、共起ヒストグラム算出部23と、テンプレート照合部24aと、スコア算出部25と、判定用マトリックス作成部26と、性別判定部27と、スコア算出部28と、スコア統合部29とをさらに備えている。
【0054】
撮像部11と、結果出力部12と、顔検出部21と、鼻領域切り出し部22と、共起ヒストグラム算出部23と、スコア算出部25については、実施例1と同一であるので、同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
判定用マトリックス作成部26は、顔検出部21が検出した顔画像から特徴量を抽出し、抽出した特徴量を識別関数32に代入して判定用マトリックスを作成する。性別判定部27は、判定用マトリックスから、対象者の性別を個人属性として推定する。テンプレート照合部24aは、性別の判定結果に基づいて使用するテンプレートを選択して、共起ヒストグラムとテンプレートとの比較を行う。
【0056】
記憶部13aが記憶するテンプレート33,34のうち一方は、男性の顔画像を年齢層でカテゴライズして作成したテンプレートであり、他方は女性の顔画像を年齢層でカテゴライズして作成したテンプレートである。判定用マトリックスによる性別判定は高い精度が得られるので、判定した性別によってテンプレートを選択し、年齢層の推定を行うことで、年齢層についても精度向上が期待できる。
【0057】
スコア算出部28は、顔画像から作成された特徴量のマトリックスである判定用マトリックスを用いて年齢層を推定する第2の推定手段である。スコア算出部28は、性別の判定結果を用いることで、性別の判定結果を用いない場合に比して精度良く年齢層を推定することができる。
【0058】
スコア統合部29は、第1の推定手段であるスコア算出部25の推定結果と第2の推定手段であるスコア算出部28の推定結果とを統合して対象者の年齢層を推定する統合推定手段である。一例として、スコア統合部29は、スコア算出部25,28の算出結果を年齢層ごとに足し合せることで統合スコアを算出し、最もスコアの高い年齢層を対象者の年齢層として推定する。このとき、スコア算出部25,28の算出結果に重み付けをして統合しても良い。
【0059】
図14は、個人属性推定装置10aによる個人属性推定処理手順を示すフローチャートである。図14に示すように、撮像部11が撮像を行って画像を入力する(ステップS301)と、顔検出部22が入力された画像内から顔を検出する(ステップS302)。
【0060】
判定用マトリックス作成部26は、検出された顔画像から特徴量を抽出し、識別関数32に代入して判定用マトリックスを作成する(ステップS303)。そして、性別判定部27は、判定用マトリックスから性別を判定し、スコア算出部28は、判定用マトリックスから年齢層のスコア算出する(ステップS305)。
【0061】
また、鼻領域切り出し部22は、ステップS302で検出された顔の左右の瞳の中心と唇の上端を識別し、鼻を含む所定領域の画像を切り出す(ステップS306)。共起ヒストグラム算出部23は、鼻を含む所定領域の画像から共起ヒストグラムを算出する(ステップS307)。テンプレート照合部24aは、性別の判定結果を利用し、算出された共起ヒストグラムと判定された性別に対応するテンプレートとを照合する(ステップS308)。スコア算出部25は、テンプレートの各年齢層に対する一致度合いをスコアとして算出する(ステップS309)。そしてスコア統合部29が判定用マトリックスから算出した年齢層のスコアと、テンプレートとの照合結果から算出した年齢層のスコアとを統合し、統合結果から対象者の年齢層を推定して(ステップS310)、処理を終了する。
【0062】
上述してきたように、本実施例では、対象者の顔画像から鼻を含む所定領域の画像を切り出して共起ヒストグラムを用いて推定した年齢層と、対象者の顔画像から抽出した特徴量から作成した判定用マトリックスによる年齢層との推定結果を統合して対象者の年齢層を推定するよう構成したので、複数の年齢推定手法を組み合わせ、年齢を高精度に推定することができる。
【0063】
また、年齢推定に比して精度の高い性別の判定を予め行って、年齢推定に利用するように構成したので、さらに年齢の推定精度を向上することができ、年齢に加えて性別をも個人属性として推定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明に係る個人属性推定装置、個人属性推定方法及び個人属性推定システムは、対象者の顔画像からの個人属性の推定に適している。
【符号の説明】
【0065】
10,10a 個人属性推定装置
11 撮像部
12 結果出力部
13,13a 記憶部
14,14a 制御部
21 顔検出部
22 鼻領域切り出し部
23 共起ヒストグラム算出部
24,24a テンプレート照合部
25,28 スコア算出部
26 判定用マトリックス作成部
27 性別判定部
29 スコア統合部
31,33〜34 テンプレート
32 識別関数
51〜57,55a,56a,57a,61,62,71〜74 画像
81〜84 表

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の顔画像から前記対象者の個人属性を推定する個人属性推定装置であって、
前記顔画像から鼻を含む所定領域の画像を切り出す切り出し手段と、
前記所定領域の画像における輝度の分布を評価する評価手段と、
前記輝度の分布と個人属性別に作成されたテンプレートとを照合する照合手段と、
前記照合手段による照合の結果に基づいて前記個人属性を推定する第1の推定手段と
を備えたことを特徴とする個人属性推定装置。
【請求項2】
前記評価手段は、前記所定領域の画像における共起ヒストグラムを算出し、前記照合手段は、前記個人属性別に作成した共起ヒストグラムを前記テンプレートとして照合を行うことを特徴とする請求項1に記載の個人属性推定装置。
【請求項3】
前記評価手段は、前記所定領域の画像における第1の画素と、前記第1の画素から鼻筋に直交する方向に所定距離だけ離れた第2の画素との輝度について前記共起ヒストグラムを算出することを特徴とする請求項2に記載の個人属性推定装置。
【請求項4】
前記第1の推定手段は、前記年齢層を前記個人属性として推定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の個人属性推定装置。
【請求項5】
前記テンプレートは、年齢層が同一の複数の顔画像から求めた平均顔画像の鼻を含む所定領域の画像の共起ヒストグラムであることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の個人属性推定装置。
【請求項6】
前記第1の推定手段は、前記対象者が未成年であるか否かを推定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の個人属性推定装置。
【請求項7】
前記顔画像から前記対象者の性別を判定する性別判定手段をさらに備え、前記照合手段は、前記性別の判定結果に基づいて使用するテンプレートを選択することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の個人属性推定装置。
【請求項8】
前記顔画像から作成された特徴量のマトリックスを用いて年齢層を推定する第2の推定手段と、前記第1の推定手段による推定結果と前記第2の推定手段による推定結果とを統合して前記対象者の年齢層を推定する統合推定手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の個人属性推定装置。
【請求項9】
対象者の顔画像から前記対象者の個人属性を推定する個人属性推定方法であって、
前記顔画像から鼻を含む所定領域の画像を切り出す切り出し工程と、
前記所定領域の画像における輝度の分布を評価する評価工程と、
前記輝度の分布と個人属性別に作成されたテンプレートとを照合する照合工程と、
前記照合工程による照合の結果に基づいて前記個人属性を推定する推定工程と
を含んだことを特徴とする個人属性推定方法。
【請求項10】
対象者の顔画像から前記対象者の個人属性を推定する個人属性推定システムであって、
前記顔画像から鼻を含む所定領域の画像を切り出す切り出し手段と、
前記所定領域の画像における輝度の分布を評価する評価手段と、
前記輝度の分布と個人属性別に作成されたテンプレートとを照合する照合手段と、
前記照合手段による照合の結果に基づいて前記個人属性を推定する推定手段と
を備えたことを特徴とする個人属性推定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−178018(P2012−178018A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40155(P2011−40155)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第53回自動制御連合講演会 講演プログラム
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【Fターム(参考)】