説明

個人情報開示支援装置、方法及びプログラム

【課題】ユーザの負担を軽減し、しかもサービス事業者別に常に適切な開示条件を設定できるようにする。
【解決手段】個人情報開示支援装置において、ライフログDB31に蓄積されたライフログ情報に含まれるWebアクセス時間をもとに、アクセス先のWebサイトごとにユーザのアクセス状況を表すアクセス指標を算出すると共に、上記Webサイトを運営する法人の企業サーバから最新の企業情報を取得して、この企業情報をもとにWebサイトごとにその信頼度を表す指標を算出る。そして、上記算出されたアクセス指標及び信頼度指標をもとに、ユーザとWebサイトとの間の親密度の距離を示すCPS指標を算出し、このCPS指標をもとに記憶テーブル33から対応する開示レベルを読み出して、該当するユーザ端末へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば携帯端末やパーソナル・コンピュータ等のユーザ端末、又はデータベースサーバに蓄積されているユーザの行動履歴に関する情報の開示を支援する個人情報開示支援装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種センサの小型化により、携帯電話機をはじめユーザが常時所持する携帯端末やパーソナル・コンピュータ内に各種センサを搭載し、ユーザの状態を常時センシングすることが可能となってきている。また、上記センシングにより得られるユーザの日常生活の状態を表す情報、つまりライフログ又は体験情報と呼ばれるユーザの行動履歴に関する情報を開示することで、当該ユーザに対しその行動履歴に応じた各種サービスを提供する試みがなされている。
【0003】
しかしながら、センシングにより得られる情報の中には、ユーザが開示したくない情報も含まれている場合がよくある。このため、ユーザが安心してサービスを利用できるようにするには、ライフログ情報を開示する際にユーザごとにその範囲を設定できるようにすることが不可欠である。
【0004】
そこで、例えばユーザが自らのライフログ情報を閲覧して、サービス提供者等の他者へライフログ情報を開示してもよいかどうかを判断する際に、大量のライフログ情報の中から他者が要求するライフログ情報を抽出して表示したり、関連性のあるライフログ情報をまとめて表示する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−097411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記した従来の提案では、開示判断の対象となるライフログ情報が事前に絞り込まれて提示されるためユーザの負担は軽減されるが、提示されたライフログ情報について開示対象とするか否かは依然としてユーザが自ら判断しなければならない。このため、ユーザによっては開示条件を常に適切に設定できるとは限らず、この結果秘匿しておきたいライフログ情報が不特定のサービス事業者に不本意に開示されてしまう心配があった。また、このような不本意な開示を回避するために開示条件を一律に厳しく設定すると、サービス事業者に開示されるライフログ情報の開示範囲や粒度が制限され、この結果ユーザが受けられるサービスの品質が低下してしまうという問題もあった。
【0007】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、ユーザの負担を軽減し、しかもサービス事業者別に常に適切な開示条件を設定できるようにした個人情報開示支援装置、方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためにこの発明の1つの観点は、先ずユーザ端末が通信ネットワークを介してWebサイトに対しアクセスしたときのアクセス先とアクセス時間を表す情報を含むアクセス履歴情報を記憶すると共に、上記アクセス先のWebサイトを運営する企業の経営状況を表す企業情報を取得する。この状態で、上記アクセス先のWebサイトごとに、上記記憶されたアクセス先履歴情報に含まれるアクセス時間を表す情報に基づいて、アクセス量を表すアクセス指標を算出すると共に、上記取得された企業情報に基づいて、上記アクセス先のWebサイトの経営的信頼度を表す信頼度指標を算出する。そして、上記算出されたアクセス指標及び信頼度指標に基づいて、上記ユーザと上記Webサイトとの間の親密度の距離を表す指標を算出し、この算出された親密度を表す指標をもとに、上記Webサイトに対する上記ユーザの個人情報の開示範囲を規定する開示レベル情報を設定するようにしたものである。
【0009】
上記アクセス指標を算出する手段又は過程としては、上記記憶されたアクセス先履歴情報に含まれるアクセス時間を表す情報に基づいて、単位時間当たりのアクセス頻度と、当該アクセス頻度の変化率と、上記単位時間におけるアクセス時間と、当該アクセス時間の変化率の少なくとも一つについてその正規化関数を算出し、この算出された正規化関数を合成することにより上記アクセス指標を算出するものが考えられる。
【0010】
また、上記信頼度指標を算出する手段又は過程としては、上記取得された企業情報に基づいて、Webサイトへの登録会員数と、当該登録会員数の変化率と、運営する企業の財務状況を表す数値と、当該財務状況を表す数値の変化率と、過去の情報漏えい件数の少なくとも一つについてその正規化関数を算出し、この算出された正規化関数を合成することにより上記信頼度指標を算出するものが考えられる。
【0011】
上記親密度の距離を表す指標を算出する手段又は過程としては、上記アクセス指標を算出する手段により算出された正規化関数からなるアクセス指標と、上記信頼度指標を算出する手段により算出された正規化関数からなる信頼度指数とを合成することにより、親密度の距離を表す指標を算出するものが考えられる。
【0012】
したがって、この発明の1つの観点によれば、Webサイトに対するユーザのアクセス量を表すアクセス指標と、アクセス先のWebサイトの経営的信頼度を表す信頼度指標とに基づいて、Webサイトとユーザとの間の親密度の距離を表す指標が求められ、この指標をもとにWebサイトに対するユーザの個人情報の開示範囲が自動的に設定される。このため、ユーザは自身の個人情報の開示範囲を自ら判断して設定する必要がなくなり、これによりユーザの負担は大幅に軽減される。また、例えばWebサイトの取り扱い等に不慣れなユーザであっても、Webサイトごとに常に適切な開示範囲を設定することが可能となり、この結果秘匿しておきたい個人情報がサービス事業者に不本意に開示されてしまう心配がなくなる。その一方で、ユーザが親密度を感じているサービス事業者には詳細な個人情報が開示されるので、ユーザは当該サービス事業者から上記提供した個人情報の詳細度に見合う高品質のサービスを受けることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
すなわちこの発明によれば、ユーザの負担を軽減し、しかもサービス事業者別に常に適切な開示条件を設定することが可能な個人情報開示支援装置、方法及びプログラムを提供することを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施形態に係る個人情報開示支援装置を備えるサービス提供システムの概略構成図。
【図2】この発明の一実施形態に係る個人情報開示支援装置の構成を示すブロック図。
【図3】図2に示した個人情報開示支援装置に設けられるライフログデータベースにおける記憶情報の一例を示す図。
【図4】図2に示した個人情報開示支援装置に設けられる記憶テーブルに記憶される、サイバスペース指標と開示レベルとの関係の一例を示す図。
【図5】開示レベルと開示対象範囲との対応関係の一例を示す図。
【図6】図2に示した個人情報開示支援装置による処理手順と処理内容を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る個人情報開示支援装置を備えるサービス提供システムの概略構成図である。このシステムは、例えば通信事業者が運用する個人情報開示支援装置SVを備え、この個人情報開示支援装置SVと、各々ユーザが所持する複数のユーザ端末UT1〜UTnとの間、及び各々Webサイトの運営主体となる企業が設けた複数の企業サーバCS1〜CSmとの間で、通信ネットワークNWを介して情報伝送を可能としたものである。
【0016】
ユーザ端末UT1〜UTnは、携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistant)、スマートホン、携帯型のパーソナル・コンピュータからなり、通話ユニットやメーラ、ブラウザ等の標準的な機能に加えて、ユーザのライフログ情報を生成するために必要な複数のセンサを備えている。
【0017】
これらのセンサは、例えばGPS(Global Positioning System)センサ、歩数を計測する万歩計(登録商標)、ユーザの心拍や体温等を計測するバイタルセンサからなる。このうちGPSセンサは、図示しない複数のGPS衛星が送信するGPS信号をそれぞれ受信し、この受信した各GPS信号をもとに時刻、緯度及び経度を含む位置情報を算出する。
【0018】
ユーザ端末UT1〜UTnは、上記各センサにより一定のサンプリング周期で位置情報、歩行情報及びバイタル情報を検出して記憶し、この記憶された各センシング情報を個人情報開示支援装置SVからの送信要求に応じて読み出して、要求元の個人情報開示支援装置SVへ送信する機能を備える。またユーザ端末UT1〜UTnは、Webアクセスが行われた場合にそのアクセス先とアクセス時間を表す情報を、アクセス履歴を表す情報として記憶する。そして、上記送信要求に応じてこの記憶されたアクセス履歴を表す情報も読み出して、要求元の個人情報開示支援装置SVへ送信する機能も備える。
【0019】
企業サーバCS1〜CSmは、例えばWebサーバからなり、Webサイトを運営する企業の財務情報や登録ユーザ数等の企業情報を記憶している。そして、個人情報開示支援装置SVからの送信要求に応じて上記企業情報を読み出し、要求元の個人情報開示支援装置SVへ送信する機能を備える。
【0020】
通信ネットワークNWは、IP(Internet Protocol)網と、このIP網にアクセスするためのアクセス網とから構成される。アクセス網としては、公衆通信網、携帯電話網、LAN(Local Area Network)、無線LAN、CATV(Cable Television)網等が用いられる。
【0021】
ところで、個人情報開示支援装置SVは例えばサーバコンピュータからなり、次のように構成される。図2はその構成を示すブロック図である。
すなわち、個人情報開示支援装置SVは、通信ユニット20と、制御ユニット30と、記憶ユニット40を備えている。通信ユニット20は、制御ユニット30の制御の下で、通信ネットワークNWにより規定された通信プロトコルに従い、上記ユーザ端末UT1〜UTnからセンシング情報を収集するための通信を行うと共に、上記企業サーバCS1〜CSmから企業情報を取得するための通信を行う。
【0022】
記憶ユニット40は、HDD(Hard Disc Drive)又はSSD(Solid State Drive)を使用したランダムアクセス可能な不揮発性メモリを使用したもので、この発明を実現するために必要な記憶機能として、ライフログデータベース(ライフログDB)31と、企業情報記憶部32と、サイバーパーソナルスペース(Cyber Personal Space;CPS)/開示レベル記憶テーブル33を備えている。
【0023】
ライフログDB31は、上記ユーザ端末UT1〜UTnから収集したセンシング情報をライフログ情報として蓄積するために使用される。図3は、このライフログDB31に記憶されるライフログ情報の一例を示すものである。同図に示すようにライフログ情報は、ライフログの値と、ライフログの種類と、ライフログ発生時間とからなり、これらがユーザの識別情報(ユーザID)と関連付けて記憶される。ライフログ発生時間は、行動の開始時刻と終了時刻とにより表される。
【0024】
企業情報記憶部32は、上記企業サーバCS1〜CSmから取得した企業情報を企業識別情報(企業ID)と関連付けて記憶するために使用される。CPS/開示レベル記憶テーブル33には、サイバーパーソナルスペース指標(CPS指標)とライフログ開示レベルとの対応関係を表す情報が記憶される。図4はその一例を示すものである。CPS指標とは、個々のユーザとWebサイトとの間の親密度の距離を示す指標である。
【0025】
制御ユニット20は中央処理ユニット(Central Processing Unit;CPU)を主制御部として備えたもので、この発明を実施するために必要な処理機能として、ライフログ情報収集制御部21と、企業情報取得制御部22と、アクセス指標計算部23と、信頼度指標計算部24と、CPS計算部25と、開示レベル設定制御部26を備えている。
【0026】
ライフログ情報収集制御部21は、各ユーザ端末UT1〜UTnに対し一定の収集タイミングでセンシング情報の送信要求を順次送信し、この送信要求に対し各ユーザ端末UT1〜UTnから送信されるセンシング情報及びWebサイトに対するアクセス履歴を表す情報を通信ユニット10により受信する。そして、この受信されたセンシング情報及びアクセス履歴情報を、ユーザIDと関連付けて記憶ユニット30内のライフログDB31に格納する処理を行う。
【0027】
企業情報取得制御部22は、CPSの計算に際し、信頼度の判定対象となる法人が運用する企業サーバCS1〜CSmに対し企業情報の送信要求を送信し、この送信要求に対し要求先の企業サーバCS1〜CSmから送信される企業情報を通信ユニット10により受信する。そして、この受信された企業情報を企業IDと関連付けて記憶ユニット30内の企業情報記憶部32に一時格納する処理を行う。
【0028】
アクセス指標計算部23は、判定対象のユーザIDをもとに、記憶ユニット30内のライフログDB31からライフログの種類がネットアクセスに該当するライフログ情報を選択的に読み出す。そして、この読み出されたライフログ情報に含まれるライフログ発生時間を示す情報をもとに、各Webサイトに対するユーザのアクセス量を表すアクセス指標を算出する処理を行う。
【0029】
信頼度指標計算部24は、上記Webサイトごとに該当する企業IDをもとに企業情報記憶部32から企業情報を読み出し、この読み出された企業情報をもとに当該Webサイトの信頼度を表す指標を計算する処理を行う。
【0030】
CPS計算部25は、上記アクセス指標計算部23により算出されたアクセス指標と、上記信頼度指標計算部24により算出された信頼度指標とに基づいて、ユーザとWebサイトとの間の親密度の距離を示す指標であるCPS指標を計算する処理を行う。
【0031】
開示レベル設定制御部26は、上記CPS計算部25により算出されたCPS指数をもとに、CPS/開示レベル記憶テーブル33から対応する開示レベルを読み出し、この読み出された開示レベルを表す情報を該当するユーザ端末UT1〜UTnへ送信する処理を行う。
【0032】
次に、以上のように構成された個人情報開示支援装置SVの動作を説明する。図6はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
定常状態において個人情報開示支援装置SVは、ステップS11においてライフログ情報の収集タイミングになったか否かを監視している。この状態でライフログ収集タイミングになるとライフ情報収集制御部21が起動し、このライフ情報収集制御部21の制御の下で、各ユーザ端末UT1〜UTnに対し通信ユニット10からセンシング情報の送信要求が順次送信される。
【0033】
各ユーザ端末UT1〜UTnでは、個人情報開示支援装置SVから送信されたセンシング情報の送信要求が受信されると、前回の送信タイミングから現時点までに検出し記憶しておいた各センシング情報及びアクセス履歴情報が読み出され、要求元の個人情報開示支援装置SVへ向け送信される。
【0034】
個人情報開示支援装置SVでは、上記各ユーザ端末UT1〜UTnから送信された各センシング情報及びアクセス履歴情報が通信ユニット10で受信されると、この受信された各センシング情報及びアクセス履歴情報が、送信元のユーザIDと関連付けられて記憶ユニット30内のライフログDB31にライフログ情報として格納される(ステップS12)。図3にこの記憶されたライフログ情報の一例を示す。
【0035】
次に、個人情報開示支援装置SVはステップS13においてCPS指数の計算タイミングになったか否かを判定する。CPS指数の計算タイミングは、例えば毎日午前0時に設定される。なお、このCPS指数の計算タイミングは、1日に1回に限らず、1時間に1回や1日に数回に設定してもよく、また1週間或いは1ヶ月に1回に設定してもよい。
【0036】
さて、上記CPS指数の計算タイミングになったとする。そうすると個人情報開示支援装置SVでは、先ずステップS14に移行してアクセス指標計算部23が起動され、このアクセス指標計算部23により以下のようにアクセス指標の算出処理が行われる。すなわち、判定対象のユーザIDをもとに、記憶ユニット30内のライフログDB31からライフログの種類がネットアクセスに該当するライフログ情報が選択的に読み出される。そして、ステップS15において、上記読み出されたライフログ情報に含まれるライフログ発生時間を示す情報をもとに、アクセス先のWebサイトごとにユーザのアクセス状況を表すアクセス指標が算出される。
【0037】
例えば、上記ライフログ情報から求められる、Webサイトに対する単位時間当たりのアクセス頻度とその変化率、及び単位時間におけるアクセス時間の合計値とその変化率に着目し、以下の式によりアクセス指標NA を算出する。
NA =fnom (アクセス頻度)+fnom(アクセス頻度の変化率)
+fnom(アクセス時間)+fnom(アクセス時間の変化率)
ただし、fnom(x)は過去の履歴の最大値を1とする正規化関数である。
【0038】
次に、ステップS16において企業情報取得制御部22が起動され、この企業情報取得制御部22の制御の下で、上記Webサイトを運営する法人の企業サーバCS1〜CSmに対し通信ユニット10から企業情報の送信要求が送信される。そして、この送信要求に対し要求先の企業サーバCS1〜CSmから最新の企業情報が送られると、この企業情報は通信ユニット10により受信されたのち、企業IDと関連付けられて記憶ユニット30内の企業情報記憶部32に一時格納される。
【0039】
続いて、ステップS17において信頼度指標計算部24が起動され、この信頼度指標計算部24により、ライフログ情報に含まれるアクセス先のWebサイトごとに、対応する企業IDをもとに企業情報記憶部32から企業情報が読み出される。そして、この読み出された企業情報をもとにWebサイトごとにその信頼度を表す指標が計算される。
【0040】
例えば、上記取得された企業情報から求められる、Webサイトへの登録会員数と、当該登録会員数の変化率と、運営する企業の財務状況を表す数値、例えば営業利益と、当該財務状況を表す数値の変化率と、過去の情報漏えい件数に着目し、以下の式により信頼度を表す指標Rc を算出する。
Rc =fnom(登録会員数)+fnom(登録会員数の変化率)
+fnom(財務状況の数値)+fnom(財務状況の数値の変化率)
+fnom(過去の情報漏えい件数)
ただし、fnom(x)は過去の履歴の最大値を1とする正規化関数である。
【0041】
次に、ステップS18においてCPS計算部25が起動され、このCPS計算部25により、上記アクセス指標計算部23により算出されたアクセス指標NA と、上記信頼度指標計算部24により算出された信頼度指標Rc とに基づいて、ユーザとWebサイトとの間の親密度の距離を示す指標であるCPS指標を計算される。
例えば、CPS指標をFcpsとするとき、
Fcps =NA ×Rc
により算出される。
【0042】
続いてステップS19において開示レベル設定制御部26が起動され、この開示レベル設定制御部26の制御の下で以下のような処理が行われる。すなわち、先ず上記CPS計算部25により算出されたCPS指数Fcps をもとに、CPS/開示レベル記憶テーブル33から対応する開示レベルを読み出す。
【0043】
例えば、いまユーザU1とあるWebサイトとの親密度の距離を表すCPS指数Fcpsが
Fcps =NA ×Rc
=0.3×2
=0.6
だったとすると、図4に示す記憶テーブル33からは開示レベル“5”が読み出される。また、ユーザU1と別のWebサイトとの親密度の距離を表すCPS指数Fcpsが
Fcps =NA ×Rc
=0.5×10
=5
だったとすると、図4に示す記憶テーブル33からは開示レベル“3”が読み出される。
【0044】
以上のように記憶テーブル33から読み出された開示レベルを表す情報は、ステップS20において、企業IDまたはWebサイトの識別情報(例えばURL)と関連付けられた状態で、通信ユニット10から該当するユーザU1が所持するユーザ端末UT1へ送信される。
【0045】
ユーザ端末UT1では、上記開示レベルを表す情報が受信されると、以後この情報により指定された開示レベルに従い、Webサイトに対する自己のライフログ情報の開示制御が実行される。例えば、いまあるWebサイトの開示レベルとして開示レベル“5”が指定されると、この開示レベル“5”に対応する開示対象は図5に示すように「性別」、「年代」である。このため、以後当該Webサイトからライフログ情報の開示を要求された場合には、自身の「性別」、「年代」を表す情報のみが送信され、その他の個人情報は送信されない。
【0046】
また、別のWebサイトの開示レベルとして開示レベル“3”が指定されると、この開示レベル“3”に対応する開示対象は図5に示すように「性別」、「年代」から「体重」、「身体的特徴」までである。このため、以後当該Webサイトからライフログ情報の開示を要求された場合には、自身の「性別」、「年代」と、「趣味」、「職業」と、「体重」、「身体的特徴」が送信され、それより開示レベルが低い「写真」や「氏名」、「住所」については送信されない。
【0047】
以上詳述したようにこの実施形態では、個人情報開示支援装置SVにおいて、ライフログDB31に蓄積されたライフログ情報に含まれるWebアクセス時間をもとに、アクセス先のWebサイトごとにユーザのアクセス状況を表すアクセス指標NA を算出すると共に、上記Webサイトを運営する法人の企業サーバCS1〜CSmから最新の企業情報を取得して、この企業情報をもとにWebサイトごとにその信頼度を表す指標Rc を算出する。そして、上記算出されたアクセス指標NA 及び信頼度指標Rc に基づいて、ユーザとWebサイトとの間の親密度の距離を示すCPS指標Fcpsを算出し、このCPS指標FcpsをもとにCPS/開示レベル記憶テーブル33から対応する開示レベルを読み出して、該当するユーザ端末UT1へ送信するようにしている。
【0048】
したがって、Webサイトに対するユーザの個人情報の開示範囲が自動的に設定される。このため、ユーザは自身の個人情報の開示範囲を自ら判断して設定する必要がなくなり、これによりユーザの負担は大幅に軽減される。また、例えばWebサイトの取り扱い等に不慣れなユーザであっても、Webサイトごとに常に適切な開示範囲を設定することが可能となり、この結果秘匿しておきたい個人情報がサービス事業者に不本意に開示されてしまう心配がなくなる。その一方で、ユーザが親密度を感じているサービス事業者には詳細な個人情報が開示されるので、ユーザは当該サービス事業者から上記提供した個人情報の詳細度に見合う高品質のサービスを受けることが可能となる。
【0049】
また、アクセス指標NA 及び信頼度指標Rc を算出する際に、その各要素を過去の履歴の最大値を1とする正規化関数を求め、この正規化関数を加算することによりアクセス指標NA 及び信頼度指標Rc を算出するようにしている。このため、簡単な計算処理によりアクセス指標NA 及び信頼度指標Rc を算出することが可能となる。
【0050】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態ではユーザのライフログ情報の収集からCPS指標を計算するまでの一連の処理をコンピュータ・サーバからなる個人情報開示支援装置SVで行うようにした。しかし、それに限らず、ライフログ情報の検出からCPS指標を計算するまでの一連の処理をユーザ端末からなる個人情報開示支援装置SVで行うようにしてもよく、また上記一連の処理をサーバコンピュータとユーザ端末とで分担して行うようにしてもよい。
【0051】
また、前記実施形態ではアクセス指標NA を、NA =fnom (アクセス頻度)+fnom(アクセス頻度の変化率)+fnom(アクセス時間)+fnom(アクセス時間の変化率)として算出した。しかし、それに限らず、上記アクセス頻度と、アクセス頻度の変化率と、アクセス時間と、アクセス時間の変化率のうちの少なくとも一つを使用して算出するようにしてもよい。
【0052】
同様に、前記実施形態ではWebサイトの信頼度指標Rc を、Rc =fnom (登録会員数)+fnom(登録会員数の変化率)+fnom(運営邦人の財務状況を表す数値)+fnom(運営邦人の財務状況を表す数値の変化率)+fnom(過去の情報漏えい件数)として算出した。しかし、それに限らず、上記登録会員数と、登録会員数の変化率と、運営邦人の財務状況を表す数値と、運営邦人の財務状況を表す数値の変化率と、過去の情報漏えい件数のうちの少なくとも一つを使用して算出するようにしてもよい。
【0053】
また、前記実施形態ではCPS指標Fcpsに応じて設定した開示レベルをユーザ端末に通知し、ユーザ端末がこの通知された開示レベルに従い自己の個人情報の開示範囲を制限するようにした。しかしそれに限らず、上記CPS指標Fcps又は開示レベルをレコメンドサービスサーバに通知し、レコメンドサービスサーバが上記通知されたCPS指標Fcps又は開示レベルに基づいて、CPS指標Fcps又は開示レベルが同じ範囲の他のユーザに対し当該Webサイトの情報をレコメンドするようにしてもよい。
【0054】
その他、個人情報開示支援装置SVの構成や処理手順及び処理内容、アクセス指標及びWebサイトの信頼度指標を算出するために使用する情報要素の種類等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【0055】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0056】
SV…個人情報開示支援装置、UT1〜UTn…ユーザ端末、CS1〜CSm…企業サーバ、NW…通信ネットワーク、10…通信ユニット、20…制御ユニット、21…ライフログ情報収集制御部、22…企業情報取得制御部、23…アクセス指標計算部、24…信頼度指標計算部、25…CPS計算部、26…開示レベル設定制御部、30…記憶ユニット、31…ライフログデータベース(ライフログDB)、32…企業情報記憶部、33…CPS/開示レベル記憶テーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ端末が通信ネットワークを介してWebサイトに対しアクセスしたときのアクセス先とアクセス時間を表す情報を含むアクセス履歴情報を記憶する手段と、
前記アクセス先のWebサイトを運営する企業の経営状況を表す企業情報を取得する手段と、
前記アクセス先のWebサイトごとに、前記記憶されたアクセス先履歴情報に含まれるアクセス時間を表す情報に基づいて、アクセス量を表すアクセス指標を算出する手段と、
前記取得された企業情報に基づいて、前記アクセス先のWebサイトの経営的信頼度を表す信頼度指標を算出する手段と、
前記算出されたアクセス指標及び信頼度指標に基づいて、前記ユーザと前記Webサイトとの間の親密度の距離を表す指標を算出する手段と、
前記算出された親密度を表す指標をもとに、前記Webサイトに対する前記ユーザの個人情報の開示範囲を規定する開示レベル情報を設定する手段と
を具備することを特徴とする個人情報開示支援装置。
【請求項2】
前記アクセス指標を算出する手段は、前記記憶されたアクセス先履歴情報に含まれるアクセス時間を表す情報に基づいて、単位時間当たりのアクセス頻度と、当該アクセス頻度の変化率と、前記単位時間におけるアクセス時間と、当該アクセス時間の変化率の少なくとも一つについてその正規化関数を算出し、この算出された正規化関数を合成することにより前記アクセス指標を算出し、
前記信頼度指標を算出する手段は、前記取得された企業情報に基づいて、Webサイトへの登録会員数と、当該登録会員数の変化率と、運営する企業の財務状況を表す数値と、当該財務状況を表す数値の変化率と、過去の情報漏えい件数の少なくとも一つについてその正規化関数を算出し、この算出された正規化関数を合成することにより前記信頼度指標を算出し、
前記親密度の距離を表す指標を算出する手段は、前記アクセス指標を算出する手段により算出された正規化関数からなるアクセス指標と、前記信頼度指標を算出する手段により算出された正規化関数からなる信頼度指数とを合成することにより、親密度の距離を表す指標を算出することを特徴とする請求項1記載の個人情報開示支援装置。
【請求項3】
個人情報開示支援装置が、Webサイトに対するユーザの個人情報の開示範囲を設定する際に、
前記個人情報開示支援装置が、ユーザ端末が通信ネットワークを介してWebサイトに対しアクセスしたときのアクセス先とアクセス時間を表す情報を含むアクセス履歴情報を記憶媒体に記憶する過程と、
前記個人情報開示支援装置が、前記アクセス先のWebサイトを運営する企業の経営状況を表す企業情報を取得する過程と、
前記個人情報開示支援装置が、前記アクセス先のWebサイトごとに、前記記憶されたアクセス先履歴情報に含まれるアクセス時間を表す情報に基づいて、アクセス量を表すアクセス指標を算出する過程と、
前記個人情報開示支援装置が、前記取得された企業情報に基づいて、前記アクセス先のWebサイトの経営的信頼度を表す信頼度指標を算出する過程と、
前記個人情報開示支援装置が、前記算出されたアクセス指標及び信頼度指標に基づいて、前記ユーザと前記Webサイトとの間の親密度の距離を表す指標を算出する過程と、
前記個人情報開示支援装置が、前記算出された親密度を表す指標をもとに、前記Webサイトに対する前記ユーザの個人情報の開示範囲を規定する開示レベル情報を設定する過程と
を具備することを特徴とする個人情報開示支援方法。
【請求項4】
前記アクセス指標を算出する過程は、前記記憶されたアクセス先履歴情報に含まれるアクセス時間を表す情報に基づいて、単位時間当たりのアクセス頻度と、当該アクセス頻度の変化率と、前記単位時間におけるアクセス時間と、当該アクセス時間の変化率の少なくとも一つについてその正規化関数を算出し、この算出された正規化関数を合成することにより前記アクセス指標を算出し、
前記信頼度指標を算出する過程は、前記取得された企業情報に基づいて、Webサイトへの登録会員数と、当該登録会員数の変化率と、運営する企業の財務状況を表す数値と、当該財務状況を表す数値の変化率と、過去の情報漏えい件数の少なくとも一つについてその正規化関数を算出し、この算出された正規化関数を合成することにより前記信頼度指標を算出し、
前記親密度の距離を表す指標を算出する過程は、前記アクセス指標を算出する手段により算出された正規化関数からなるアクセス指標と、前記信頼度指標を算出する手段により算出された正規化関数からなる信頼度指数とを合成することにより、親密度の距離を表す指標を算出することを特徴とする請求項3記載の個人情報開示支援方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載の個人情報開示支援装置が具備する手段の処理を、当該個人情報開示支援装置が備えるコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−3323(P2012−3323A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135213(P2010−135213)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)