説明

個人用美容皮膚トリートメントのための眼の保護物品

IPL又はレーザデバイスにより放出される強くかつ不意の光であって、ユーザ又はオペレータの両眼に偶然到達し得る光を減衰するが、明るい領域での視認性を制限することがないように設計された物品が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本物品は一般には光強度減衰器に関し、詳しくは、強パルス光による個人用皮膚トリートメントのための眼の保護物品に関する。
【背景技術】
【0002】
強パルス光(Intense Pulse Light(IPL))及びレーザ光源は、普及している美容の、及びある程度は医療の皮膚トリートメントである。IPLは、高度に強いパルスの広帯域光を送達する。強い光が皮膚の深い層(例えば真皮)に送達されるときは、皮膚表面がダメージを与えられることはなく、例えば角質層及び表皮のような表皮は実際上影響されないままである。回復時間は非常に短く、トリートメントを受けた人は自分の日常活動にほぼすぐに戻ることができる。
【0003】
IPLは、個人の容姿を改善するべく及び血管病変のような皮膚疾患を低減又はなくすべく広く使用されている。これは、クモ状静脈、ポートワイン母斑、脱毛、顔のしわの線、しわ伸ばし等を含む。当該処置は通常、医師の指導のもとで働く医療従事者又は美容師によって行われる。これは、特別に構成されたキセノン閃光電球を含む。時には、所定の皮膚面積のトリートメントに最適な光スペクトル(例えば400nmから1200nm又は590から1200nmの波長)を選択するべく通常はレンズ及びフィルタである特別の光学要素も含む。IPL機器により生成される光パルスは継続時間が短いが、高度かつ眼にダメージを与える強度を有する。患者及びオペレータは眼の保護を装着する。患者は、不透明なプラスチック若しくは金属のゴーグル又は単なる可撓性の不透明なバンデージを使用する。オペレータは、IPLが適用される皮膚面積を選択することが眼の保護なしで行われる場合であっても、IPL源の観察を可能とする特殊なゴーグルを装着する。
【0004】
IPLトリートメントの簡易性により、日常の居住環境にいるユーザにより自己操作される機器の開発が可能となっている。当該トリートメントは通常、ユーザが、被トリートメント皮膚面積の所望位置にIPLハンドピース又はアプリケータを視覚的に導くのに十分な環境照明を有する鏡の前で行われる。ユーザは、光の強いパルスが送達されるときに、トリートメント面積の上で当該ハンドピースをゆっくり動かす。IPLパルスは約1−20J/cmの強度を有し、偶然の反射、又はアプリケータ位置の直接的な追跡でさえも、ユーザにとって不快であり又はユーザの眼にとってダメージさえ与える。ユーザが顔の皮膚及び特に眼の近くに位置する皮膚セグメントにトリートメントを与える場合に眼の傷害のリスクが増大する。
【0005】
サングラス、偏光めがね等の様々な、人の眼の保護システムを使用することが知られている。しかし、これらのシステムは環境照明を低減してアプリケータの位置選択及び追跡を妨げる。さらに、これらの保護ガラスは、広いスペクトルによるIPL光源に対してあまり効果的でない。レーザ安全ゴーグルは、所定波長の入射光をブロックするべく設計され、キセノン電球から発せられる光のような広いスペクトルの光の環境に適用可能とはいえない。光に基づく美容皮膚トリートメントデバイスの安全性は、強パルス光源の動作が可能な場合にのみ保護を可能とするセンサを組み入れることにより増大させることができる。しかし、眼の安全性を増大させるべく付加されるいずれのセンサの使用も複雑性を増すものであり、もちろん失敗する可能性もある。したがって、眼を強い光から保護するべく設計される理想的な物品及びかかる保護方法は、電気回路から独立すべきである。
【0006】
用語集
本開示を通していくつかの用語が用いられる。これらの用語の定義を便宜上ここに与える。
【0007】
本開示で用いられる用語「ゴーグル」及び「アイマスク」は同じ意味を有し、眼の保護物品を意味する。
【0008】
本明細書において、用語「皮膚トリートメント」は、脱毛、発毛遅延、スキンリジュベネーション、しわ低減、皮膚引き締め、サイズダウン(circumferential reduction)、血管病変除去、テクスチャ改善、セルライト低減、皮膚アブレーション、にきび効果低減等を完全に又は部分的に含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,081,934号明細書
【特許文献2】米国特許第4,869,584号明細書
【特許文献3】米国特許第2,824,308号明細書
【特許文献4】米国特許第5,016,999号明細書
【特許文献5】米国特許第5,949,514号明細書
【発明の概要】
【0010】
IPL皮膚トリートメントにおいて、ユーザの眼に到達する光の強度を制限する受動物品である。眼の保護は、IPL源に向かって延びる複数のバッフルの一のアセンブリによって達成される。バッフルは、快適なIPL又はレーザアプリケータの追跡及び操作を可能とする安全量の光強度を結合するのに十分な値にまで当該物品の視野を制限する。強い光の光源に向かって当該物品から延びる複数のバッフルの寸法同士の比が、当該物品により結合されて眼に到達する光の強度量を決定する。
【0011】
本物品は、再使用可能物品として又は使い捨て可能物品として実装できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面を参照して眼の保護物品の複数の実施例が説明される。ここで、同じ参照番号は同じ部材を表す。
【0013】
【図1】本個人用IPL皮膚トリートメントのための眼の保護物品に係る一実施例の簡略的な正面斜視図である。
【図2】本個人用IPL皮膚トリートメントのための眼の保護物品に係るアイマスクの側面斜視図の断面の概略を示す。
【図3】バッフルの視野決定を示す概略図である。
【図4】光強度の減衰を向上させるバッフル構造の一実施例の簡略的な付加図である。
【図5】本個人用IPL皮膚トリートメントのための眼の保護物品に係るアイマスクの追加実施例の断面の概略を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
経験の浅いユーザが近年、市販の個人IPL皮膚トリートメントデバイスによって、しわ伸ばし、皮膚引き締め、脱毛等の一連の皮膚トリートメント処置を個人的にできるようになっている。トリートメントセッションの間、有資格担当者が不在であり、当該トリートメントの安全性が大きな懸念となっている。IPLは強い拡散光であり、適切な安全対策がなければユーザの眼の傷害を引き起こす。安定した態様で標的皮膚位置にトリートメントを与えるプロフェッショナルIPLデバイスとは異なり、例えばSyneron Medical Ltd., Yoqneam, Israelから市販されている「my elos(登録商標)」のような個人用皮膚トリートメントデバイスは、被トリートメント皮膚セグメントに沿ったトリートメントの過程で連続的に変位され、トリートメントの時点で観察する必要がある。
【0015】
本個人用IPL皮膚トリートメントのための眼の保護物品の一実施例の簡略的な正面斜視図である図1を参照する。物品又はゴーグル100は、2つのアイマスク104及び108を含む。光又はレーザ源に面する第1側と、ユーザの両眼に面する第2表面と、中央配置ノーズブリッジ112とを有する。各アイマスクは、外縁116に開口又はバックル(図示せず)を有する。ヘッドストラップ120が外縁116に挿入されて、ゴーグル100を所定位置に固定するべく用いられる。ストラップ120の長さとノーズブリッジ112の長さの双方は、ユーザの頭のサイズにフィットさせるべく調整可能である。アイマスク104及び108は、例えばプラスチックのような不透明材料又は他の低コストな生体適合性材料から作られる。バッフル124及び128のアセンブリがそれぞれ、光又はレーザ源に面する第1表面上のアイマスク104及び108に挿入される。バッフルアセンブリ124及び128は、矩形又は正方形断面を有するものとして示されるが、バッフルの断面は六角形、三角形、又は他の任意の幾何学形状でもよい。代替的には、バッフルアセンブリ124及び128は、アイマスクの一体的部分として製造することができる。
【0016】
図2は、本個人用IPL皮膚トリートメントのための眼の保護物品に係るアイマスクの側面斜視図の断面の概略を示す。不透明なシリコーン又は発泡体のガスケット204及び208(図示せず)が、ユーザの顔に面しかつ接触するアイマスク104及び108を第2表面上でフレームをなす。ここで、アセンブリ124及び128(図示せず)のバッフルは、アイマスク104及び108から外方へ延び又は強パルス光源に向かって配向される。これの強度が減衰されることとなる。ガスケットにより、ゴーグルは両眼にわたってぴたりとフィットし、ユーザの眼に到達する周囲光又は偶然の反射光がなくなる。マスクの深さdは、ユーザの眼を便宜に収容するべく選択される。
【0017】
バッフル124及び128は、ユーザの視野を低減する。しかし、バッフルがなければ、多くの方向からの光が通常のゴーグルから入り両眼に到達する。バッフルを用いることにより、ほとんどの迷光をブロックして眼への到達を防止することができる。バッフルに入射する光の量は、当該バッフルによって許容される視野に比例する。図3は、バッフルの視野決定を示す概略図である。視野(field of view(FOV))は、ユーザ300が自分の眼(又は頭)を動かすことなく捉えることができる角度として定義することができる。正方形バッフル断面の場合、FOVは、H対Lの比として定義される。バッフルが長ければ長いほど、結合する光又はレーザの強度の量が小さくなり使用での安全性が増す。しかし、バッフル長さの選択は、アプリケータ追跡を快適にするのに十分な眼に入る光強度量によって支配される。バッフルの寸法選択はまた、アセンブリ124を形成するバッフルの量にも影響する。いくつかの場合、一のバッフルチャネルで十分である。正方形バッフル断面の代わりにH寸法を調整して矩形を用いることにより、特定のIPLトリートメントに最適な、垂直方向、水平方向、又は他の方向に異なる視野を有するバッフルを作ることができる。参照番号304は強パルス光(IPL)の光源又はレーザ源である。
【0018】
図4は、光源300から発生する光の光強度減衰を向上させるアセンブリ124バッフルの追加実施例である。アセンブリ124バッフルの減衰動作は、アセンブリ124バッフルの内部空間に小さいバッフル400を加えることにより、又は光吸収又は拡散コーティングを設けることにより向上させることができる。バッフル400は、アセンブリ124の壁404に対して異なる角度で配向され、サイズ及び形状が異なる。
【0019】
図5は、本個人用IPL皮膚トリートメントのための眼の保護物品に係るアイマスクの追加実施例の断面の概略を示す。単一のアイマスク504が、例えばプラスチックのような不透明材料、又は低コストの生体適合性材料から作られる。バッフル124のアセンブリが、光又はレーザ源に面するアイマスク504の側に挿入され又は一体的に取り付けられる。アセンブリ124のバッフルは、強パルス光源(図示せず)に向かって延びる。不透明なシリコーン又は発泡体のガスケット508が、ユーザの顔に面しかつ接触する表面上にアイマスク504のフレームをなす。ガスケット508は、剥離層512により保護される接着剤コーティングを支承する。使用時、ユーザは剥離層512をはがし、アイマスク504のガスケット508を両眼のすぐ周囲の皮膚に接着させて取り付ける。アイマスクは、右眼及び/又は左眼のための形状を有し、ゴーグル100(図1)と同様の保護を与える。バッフルの突出長さは、バッフル400(図4)と同様の付加バッフルの使用してバッフル400をアセンブリ124のバッフルの内部空間に配置することによって低減することができる。マスク504のサイズ/取付面積は最小限であり、ユーザの顔の実際上任意の点に、遮るものなくアクセスすることができる。
【0020】
皮膚トリートメントに対しユーザは、ゴーグル又は別個のアイマスクを両眼のすぐ周囲の皮膚に取り付け、IPL又はレーザアプリケータソースを、顔を含む被トリートメント皮膚の任意のセグメント上を視覚的に導く。ガスケットによってアイマスクは両眼にわたってぴたりとフィットするので、ユーザの眼に到達する周囲光又は偶然の反射光をなくすことができる。
【0021】
上述の安全ゴーグルは、当人が所望のIPL皮膚トリートメントを行っている間にユーザの両眼及び視力を高強度光から保護する上で相当な利点を与える。同時にゴーグルによりユーザは、強い光の一部を利用することによってアプリケータを観察し、十分かつ快適な光強度で皮膚トリートメントを行うことができる。さらに、ユーザの眼の生理学的保護を与えることに加えて、本ゴーグルは、ユーザ及びオペレータ双方が、所定量の光のみを自動選択してこれを所望の光入力に結合することを目的とする他の皮膚トリートメント用途において使用できる独自の光学系を形成する。
【0022】
例示により与えられる詳細な説明を用いていくつかの実施例を述べたが、これらは限定を意図したものではない。説明された実施例は複数の異なる特徴を含むが、これらのすべてがすべての実施例において必要とされるわけではない。当該特徴のいくつかのみ又は可能な組み合わせを用いる実施例もある。説明された実施例の変形例、及び説明された実施例で注記された特徴の異なる組み合わせを含む実施例が当業者に想到される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源に面する第1表面及びユーザの顔に面する第2表面を有するアイマスクと、
前記第1表面で終端する一以上のバッフルであって、入射する強パルス光の強度を減衰させる動作が可能なバッフルと
を含む、強パルス光皮膚トリートメントのための眼の保護物品。
【請求項2】
前記バッフルは、ユーザの顔から離れる方向に前記第1表面から延びる、請求項1に記載の眼の保護物品。
【請求項3】
前記バッフルは、前記アイマスクの中に挿入される一のインサートである、請求項1に記載の眼の保護物品。
【請求項4】
前記バッフルは、前記アイマスクの一体的部材である、請求項1に記載の眼の保護物品。
【請求項5】
前記バッフルの長さ及び断面積の寸法が前記物品の視野を決定する、請求項1に記載の眼の保護物品。
【請求項6】
前記物品の前記視野は、ユーザの両眼に到達する前記強パルス光の強度を決定する、請求項5に記載の眼の保護物品。
【請求項7】
前記アイマスクの前記第2表面に取り付けられてフレームをなす柔らかいガスケットをさらに含む、請求項1に記載の眼の保護物品。
【請求項8】
前記柔らかいガスケットは、剥離材料によって覆われた接着剤層を含む、請求項7に記載の眼の保護ゴーグル。
【請求項9】
一の表面で終端する一以上のバッフルを有するアイマスクであって、両眼に到達する強パルス光の強度を減衰する動作が可能なアイマスクと、
前記アイマスクの対向表面上にあって前記表面のフレームをなす柔らかいガスケットと
を含む、個人用強パルス光皮膚トリートメントのための眼の使い捨て可能保護物品。
【請求項10】
前記柔らかいガスケットは、剥離材料によって覆われた接着剤層を含む、請求項9に記載の眼の使い捨て可能保護マスク。
【請求項11】
一以上のバッフルを含む眼の保護マスクを装着することと、
皮膚の所望セグメントにトリートメントを与えるべく強パルス光アプリケータを操作することと、
前記アプリケータを皮膚位置において連続して観察及び追跡することと
を含む、強パルス光皮膚トリートメントの方法。
【請求項12】
前記眼の保護マスクのバッフルは眼に到達する強パルス光の強度を減衰する動作が可能である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
一以上のバッフルを含む眼の保護マスクであって、前記バッフルは両眼に到達する強パルス光の強度を減衰する動作が可能な眼の保護マスクを装着することと、
皮膚の所望セグメントにトリートメントを与えるべく強パルス光アプリケータを操作することと、
前記アプリケータを皮膚位置において連続して観察及び追跡することと
を含む、強パルス光皮膚トリートメントの方法。
【請求項14】
第1表面及び第2表面を有するアイマスクと、
前記第1表面で終端する一以上のバッフルであって、入射する強パルス光の強度を減衰させる動作が可能なバッフルと
を含む、強パルス光皮膚トリートメントのための眼の保護物品。
【請求項15】
前記第1表面は光源に面し、前記第2表面はユーザの顔に面する、請求項14に記載の眼の保護物品。
【請求項16】
前記バッフルは、ユーザの顔から離れる方向に前記第1表面から延びる、請求項14に記載の眼の保護物品。
【請求項17】
強パルス光源を与え、皮膚トリートメントを行うべく前記光源を操作することと、
トリートメントを与える者の視野を制限するアイマスクを用いることと
を含む、強パルス光皮膚トリートメント処置における眼の保護方法。
【請求項18】
アイマスクと、
前記アイマスクの視野を制限するアセンブリと
を含む、強パルス光皮膚トリートメントにおける眼の保護物品。
【請求項19】
アイマスクと、
前記アイマスクによって受容される光の角度を制限するアセンブリと
を含む、強パルス光皮膚トリートメントにおける眼の保護物品。
【請求項20】
前記光の角度を制限するアセンブリは複数のバッフルのアセンブリである、請求項19に記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−512752(P2013−512752A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542684(P2012−542684)
【出願日】平成22年12月5日(2010.12.5)
【国際出願番号】PCT/IL2010/001025
【国際公開番号】WO2011/067771
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(504359488)シネロン メディカル リミテッド (25)