説明

個人認証システム

【課題】認証スピードを速められるとともに、他人受け入れ率を下げることが可能な個人認証システムを提供すること。
【解決手段】電子キー2αは、認証を受ける指として指定された指が五指のいずれであるかを示す指情報をIDコード信号に付加して送信する。照合装置は、IDコード信号に含まれる指情報により指定されている指(中指)に関する生体情報データ(パターンデータC)を基準データとして選択する。そして、照合装置は、指静脈センサによる検出データを唯一の基準データと照合し、両データが一致したとき、被験者が正規ユーザであると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体認証を利用した個人認証システムに関し、詳しくは、指紋認証や指静脈認証を利用した個人認証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、指紋等の個人差による生体認証を利用することで車両ユーザであるか否かを判定するとともに、それにより車両ユーザと認められた者に対してはエンジンの始動を許容し、逆に車両ユーザと認められない第三者に対してはエンジンの始動を禁止する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−239079号公報(請求項1、請求項4、段落番号0008〜0010、0025)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、指紋認証を例にとると、車両側では被験者(エンジンの始動が許容されるように指紋認証を受ける者)が誰であるかを前もって特定できないので、一般的には、指紋認証に際して車両側の指紋センサにより検出される被験者の検出指紋データが、車両側に登録されている全ての基準指紋データと照らし合わされる。
【0004】
このため、被験者=車両ユーザであると認められるまでの認証期間が長きに亘り、認証スピードが遅くなってしまう。また、全ての基準指紋データとの照合過程において、検出指紋データが被験者本人とは別人の基準指紋データと一致するようなことが考えられ、これは、第三者であるにも関わらずエンジンの始動が許容される可能性を示唆するものであり、いわゆる他人受け入れ率が上がってしまう。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、認証スピードを速められるとともに、他人受け入れ率を下げることが可能な個人認証システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、認証を受ける者である被験者の指に関する生体情報を検出手段により検出するとともに、その検出データを正規ユーザの指に関する生体情報データである基準データと照合し、両データが一致したとき、被験者が正規ユーザであると判定する生体認証を利用した個人認証システムにおいて、五指の中から認証を受ける指を指定する認証指指定手段と、前記認証指指定手段により指定された指に関する生体情報データを基準データとして選択する基準データ選択手段とを備えることをその要旨としている。
【0007】
同構成によると、指定された指に関する生体情報データが基準データとして選択されるとともに、検出データがそれと照合され、両データが一致したとき、被験者が正規ユーザであると判定される。ここに、他の指に関する生体情報データについては基準データとして選択されないので、いわば余計な照合が回避され、よって認証期間が短縮される。また、全ての生体情報データではなく、いわば限定された生体情報データが基準データとして選択されるので、他人を受け入れる確率は低いものとなる。従って、認証スピードを速められるとともに、他人受け入れ率を下げることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の個人認証システムにおいて、通信機能を有する電子キー毎に個別に設定されたIDコードを含むIDコード信号を受信するとともに、そのIDコード信号に含まれるIDコードを、正規の電子キーに設定されたIDコードと同一のIDコードである基準IDコードと照合し、両コードが一致したとき、正規の電子キーが利用されたと判定するキー認証を利用した電子キーシステムに連動され、前記電子キーは、認証を受ける指として前記認証指指定手段により指定された指が五指のいずれであるかを示す指情報を前記IDコード信号に付加して送信し、前記基準データ選択手段は、前記IDコード信号に含まれる指情報により指定されている指に関する生体情報データを基準データとして選択することをその要旨としている。
【0009】
同構成によると、当該個人認証システムは、いわゆる電子キーシステムと連動され、電子キーから送信されてくるIDコード信号に指情報が付加されてきたとき、その指情報により指定されている指に関する生体情報データが基準データとして選択される。ここに、電子キー毎に個別に設定されたIDコードと指情報とが関連付けされるので、認証を受ける指をユーザ毎に自由に指定することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の個人認証システムにおいて、認証を受ける指を変更する認証指変更手段をさらに備えることをその要旨としている。
同構成によると、認証を受ける指を変更可能とすることで、現在指定中の指をケガしたような場合に別の指に変更することが可能となり、よって柔軟に対処することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
本発明によれば、認証スピードを速められるとともに、他人受け入れ率を下げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両には、セキュリティシステム1が適用されている。セキュリティシステム1は、車両ユーザが所持する電子キー2と、車両側に設けられるセキュリティ装置3とを備えるとともに、両者間で双方向通信が可能となっている。尚、前記電子キー2は、その所持態様から携帯機と称されている。
【0013】
電子キー2は、無線通信による受信機能及び無線通信による送信機能を有するとともに、受信アンテナ21、受信回路22、マイコン23、送信回路24、送信アンテナ25を備えている。
【0014】
受信アンテナ21は、セキュリティ装置3から送信されてくるリクエスト信号を受信するための媒体である。受信回路22は、受信アンテナ21により受信されたリクエスト信号を復調して受信信号を生成するとともに、その受信信号をマイコン23に出力する。
【0015】
マイコン23は、不揮発性のメモリ23aを備えるとともに、そのメモリ23aには、当該電子キー2に対して個別に設定されたIDコード(電子キー2のIDコード)が記憶されている。そして、マイコン23は、受信回路22からリクエスト信号に関する受信信号が入力されたとき、リクエスト信号に応答するために、電子キー2のIDコードを含む信号(IDコード信号)を生成するとともに、そのIDコード信号を送信回路24に出力する。
【0016】
送信回路24は、マイコン23から入力されたIDコード信号を所定周波数(本実施形態では300MHz)の電波に変調する。送信アンテナ25は、送信回路24により変調されたIDコード信号を送信するための媒体である。
【0017】
セキュリティ装置3は、無線通信による送信機能及び無線通信による受信機能を有するとともに、送信回路31、送信アンテナ32、受信アンテナ33、受信回路34、照合装置35を備えている。
【0018】
送信回路31は、照合装置35から入力されるリクエスト信号を所定周波数(本実施形態では134KHz)の電波に変調する。送信アンテナ32は、送信回路31により変調されたリクエスト信号を送信するための媒体である。
【0019】
ここで、送信アンテナ32から送信されるリクエスト信号は、車内の略全域に及んで且つ車外に殆ど及ばないようになっている。図2には、その領域が車内の所定領域A32として2点鎖線で示されている。そして、この車内の所定領域A32内において、電子キー2とセキュリティ装置3との間での双方向通信が可能となっている。つまり、車内の所定領域A32内にリクエスト信号が送信されている状態で、その車内の所定領域A32内に電子キー2が持ち込まれたとき、その電子キー2によりリクエスト信号が受信されて同電子キー2からIDコード信号が送信されるようになっている。
【0020】
図1に戻って、受信アンテナ33は、リクエスト信号に対する応答信号として電子キー2から送信されてくるIDコード信号を受信するための媒体である。受信回路34は、受信アンテナ33により受信されたIDコード信号を復調して受信信号を生成するとともに、その受信信号を照合装置35に出力する。
【0021】
照合装置35は、不揮発性のメモリ35aを備えるとともに、そのメモリ35aには、セキュリティ装置3が搭載されている車両に適合する電子キー2(=正規の電子キー2)のIDコードと同一のIDコード(基準IDコード)が記憶されている。
【0022】
照合装置35は、ドアが開けられたとき、正規の電子キー2の所持者による乗車(車内の所定領域A32に対する進入)を監視するため、送信回路31にリクエスト信号を出力する。つまり、この場合、照合装置35は、車内通信制御を実行する。その結果、送信アンテナ32から車内の所定領域A32内にリクエスト信号が送信される。
【0023】
照合装置35は、車内通信制御を実行したことに伴って、受信回路34からIDコード信号に関する受信信号が入力されたとき、その受信信号に含まれているIDコードと基準IDコードとが一致しているか否かを判断する。つまり、この場合、照合装置35は、IDコード照合(キー認証)を実行する。そして、照合装置35は、このキー認証により両IDコードが一致したとき、正規の電子キー2が利用されたと判定する。その結果、正規の電子キー2が利用されたとき、エンジンの始動が許容されるために必要な条件の1つが満たされる。
【0024】
尚、本実施形態では、当該車両に適合する正規の電子キー2として、最高で8個の電子キー2をこの車両に登録可能となっており、登録済みのいずれかの電子キー2を利用することで、エンジンの始動が許容されるために必要な条件の1つが満たされるようになっている。ここでは、1台の車両を共有する3人のユーザα〜γが、この車両に適合する正規の電子キー2を1人1個ずつ所有している場合を想定するとともに、便宜上、ユーザαが所有する電子キー2を電子キー2αと規定する一方、ユーザβが所有する電子キー2を電子キー2βと規定する他方、ユーザγが所有する電子キー2を電子キー2γと規定する。そして、電子キー2αのIDコードを第1のIDコードと規定する一方、電子キー2βのIDコードを第2のIDコードと規定する他方、電子キー2γのIDコードを第3のIDコードと規定する。
【0025】
また、セキュリティ装置3の側において、第1のIDコードと一致する基準IDコードを第1の基準IDコードと規定する一方、第2のIDコードと一致する基準IDコードを第2の基準IDコードと規定する他方、第3のIDコードと一致する基準IDコードを第3の基準IDコードと規定する。
【0026】
従って、ユーザαが電子キー2αを所持して乗車すると、第1のIDコードと第1の基準IDコードとが一致することとなり、この場合、3つ存在する正規の電子キー2α〜2γのうち電子キー2αが利用されたと判定され、エンジンの始動が許容されるために必要な条件の1つが満たされる。
【0027】
次に、本実施形態の車両における特徴点について説明する。
本実施形態の車両では、エンジンの始動が許容されるための条件として、キー認証を利用した電子キーシステムにより正規の電子キー2が利用されたと判定されることに加えて、生体認証(本実施形態では指静脈認証)を利用した個人認証システムにより正規ユーザであると判定されることが必要となっている。
【0028】
前記照合装置35には、エンジンを始動する場合に操作される操作手段として機能するエンジン始動ボタン40が電気的に接続されるとともに、このエンジン始動ボタン40には、これによるエンジン始動操作を行う者の指に関する生体情報(本実施形態では指静脈パターン)を検出するための指静脈センサ45が設けられている。指静脈センサ45は、エンジン始動ボタン40が押圧操作されることに伴って、それを行う者、つまりエンジンの始動が許容されるように指静脈認証を受ける者(被験者)の指静脈パターンを検出するとともに、その検出指静脈パターンデータを照合装置35に出力する。
【0029】
前記メモリ35aには、正規ユーザの指静脈パターンデータ(基準指静脈パターンデータ)が記憶されるとともに、照合装置35は、指静脈センサ45から入力された検出指静脈パターンデータを基準指静脈パターンデータと照合し、両データが一致したとき、被験者が正規ユーザであると判定する。
【0030】
そして、照合装置35は、キー認証により正規の電子キー2が利用されたと判定し、且つ生体認証により被験者が正規ユーザであると判定したとき、エンジンの始動を許容するために、エンジン制御装置50にエンジン始動許可信号を出力する。その結果、エンジン制御装置50によりエンジンが始動される。
【0031】
次に、正規ユーザの指静脈パターンデータ(基準指静脈パターンデータ)を登録する方法について説明する。尚、本実施形態では、正規ユーザとして最高で8人のユーザの指静脈パターンデータを登録可能となっており、また、ユーザ1人につき最高で五本の指(右手の五指)それぞれの指静脈パターンデータを登録可能となっている。ここでは、正規ユーザとして、1台の車両を共有する3人のユーザα〜γの指静脈パターンデータを登録することとし、ユーザαは右手の五指全てのデータを登録する一方、ユーザβは右手の親指を除く右手の四指のデータを登録する他方、ユーザγは右手の親指と小指を除く右手の三指のデータを登録することとする。
【0032】
さて、ユーザαが電子キー2αを所持して乗車すると、照合装置35は、車内でのキー認証を経て、正規の電子キー2αが利用されたと判定する。この状態でユーザαがいわゆるカーナビゲーションシステムを起動させた後、所定の画面操作を行うと、当該車両は、基準指静脈パターンデータの登録モードへ移行する。
【0033】
ユーザαは、この登録モードにおいて、画面上の案内に従って自身の右手の親指でエンジン始動ボタン40を押圧操作し、これにより自身の右手の親指の指静脈パターンを指静脈センサ45に検出させる。すると、セキュリティ装置3の側において、ユーザαの親指に関する検出指静脈パターンデータが基準指静脈パターンデータとして、このデータが五指のうち親指に関するデータであることを示す指情報及び第1の基準IDコードと関連付けされてメモリ35aに記憶される。尚、図3には、このデータがパターンデータAとして示されている。
【0034】
続いて、ユーザαは、画面上の案内に従って自身の右手の人差し指でエンジン始動ボタン40を押圧操作し、これにより自身の右手の人差し指の指静脈パターンを指静脈センサ45に検出させる。すると、セキュリティ装置3の側において、ユーザαの人差し指に関する検出指静脈パターンデータが基準指静脈パターンデータとして、このデータが五指のうち人差し指に関するデータであることを示す指情報及び第1の基準IDコードと関連付けされてメモリ35aに記憶される。尚、図3には、このデータがパターンデータBとして示されている。
【0035】
続いて、ユーザαは、画面上の案内に従って自身の右手の中指でエンジン始動ボタン40を押圧操作し、これにより自身の右手の中指の指静脈パターンを指静脈センサ45に検出させる。すると、セキュリティ装置3の側において、ユーザαの中指に関する検出指静脈パターンデータが基準指静脈パターンデータとして、このデータが五指のうち中指に関するデータであることを示す指情報及び第1の基準IDコードと関連付けされてメモリ35aに記憶される。尚、図3には、このデータがパターンデータCとして示されている。
【0036】
続いて、ユーザαは、画面上の案内に従って自身の右手の薬指でエンジン始動ボタン40を押圧操作し、これにより自身の右手の薬指の指静脈パターンを指静脈センサ45に検出させる。すると、セキュリティ装置3の側において、ユーザαの薬指に関する検出指静脈パターンデータが基準指静脈パターンデータとして、このデータが五指のうち薬指に関するデータであることを示す指情報及び第1の基準IDコードと関連付けされてメモリ35aに記憶される。尚、図3には、このデータがパターンデータDとして示されている。
【0037】
続いて、ユーザαは、画面上の案内に従って自身の右手の小指でエンジン始動ボタン40を押圧操作し、これにより自身の右手の小指の指静脈パターンを指静脈センサ45に検出させる。すると、セキュリティ装置3の側において、ユーザαの小指に関する検出指静脈パターンデータが基準指静脈パターンデータとして、このデータが五指のうち小指に関するデータであることを示す指情報及び第1の基準IDコードと関連付けされてメモリ35aに記憶される。尚、図3には、このデータがパターンデータEとして示されている。
【0038】
その後、ユーザαが所定の画面操作を行うと、当該車両は、基準指静脈パターンデータの登録モードから通常モードへ移行し、これにてユーザαの右手の五指全ての指静脈パターンデータの登録が完了する。
【0039】
そして、時が変わって、ユーザβが電子キー2βを所持して乗車すると、照合装置35は、車内でのキー認証を経て、正規の電子キー2βが利用されたと判定する。この状態でユーザβがカーナビゲーションシステムを起動させた後、所定の画面操作を行うと、当該車両は、基準指静脈パターンデータの登録モードへ移行する。
【0040】
ユーザβは、この登録モードにおいて、右手の親指でのエンジン始動ボタン40の押圧操作を促す案内が画面上に表示されたとき、これをスキップするための画面操作を行う。そして、ユーザβは、こうしたスキップ操作後に、右手の人差し指でのエンジン始動ボタン40の押圧操作を促す案内が画面上に表示されたとき、この案内に従って自身の右手の人差し指でエンジン始動ボタン40を押圧操作し、これにより自身の右手の親指の指静脈パターンを指静脈センサ45に検出させる。すると、セキュリティ装置3の側において、ユーザβの人差し指に関する検出指静脈パターンデータが基準指静脈パターンデータとして、このデータが五指のうち人差し指に関するデータであることを示す指情報及び第2の基準IDコードと関連付けされてメモリ35aに記憶される。尚、図3には、このデータがパターンデータFとして示されている。
【0041】
続いて、ユーザβは、画面上の案内に従って自身の右手の中指でエンジン始動ボタン40を押圧操作し、これにより自身の右手の中指の指静脈パターンを指静脈センサ45に検出させる。すると、セキュリティ装置3の側において、ユーザβの中指に関する検出指静脈パターンデータが基準指静脈パターンデータとして、このデータが五指のうち中指に関するデータであることを示す指情報及び第2の基準IDコードと関連付けされてメモリ35aに記憶される。尚、図3には、このデータがパターンデータGとして示されている。
【0042】
続いて、ユーザβは、画面上の案内に従って自身の右手の薬指でエンジン始動ボタン40を押圧操作し、これにより自身の右手の薬指の指静脈パターンを指静脈センサ45に検出させる。すると、セキュリティ装置3の側において、ユーザβの薬指に関する検出指静脈パターンデータが基準指静脈パターンデータとして、このデータが五指のうち薬指に関するデータであることを示す指情報及び第2の基準IDコードと関連付けされてメモリ35aに記憶される。尚、図3には、このデータがパターンデータHとして示されている。
【0043】
続いて、ユーザβは、画面上の案内に従って自身の右手の小指でエンジン始動ボタン40を押圧操作し、これにより自身の右手の小指の指静脈パターンを指静脈センサ45に検出させる。すると、セキュリティ装置3の側において、ユーザβの小指に関する検出指静脈パターンデータが基準指静脈パターンデータとして、このデータが五指のうち小指に関するデータであることを示す指情報及び第2の基準IDコードと関連付けされてメモリ35aに記憶される。尚、図3には、このデータがパターンデータIとして示されている。
【0044】
その後、ユーザβが所定の画面操作を行うと、当該車両は、基準指静脈パターンデータの登録モードから通常モードへ移行し、これにてユーザβの右手の親指を除く右手の四指の指静脈パターンデータの登録が完了する。
【0045】
また、時が変わって、ユーザγが電子キー2γを所持して乗車すると、照合装置35は、車内でのキー認証を経て、正規の電子キー2γが利用されたと判定する。この状態でユーザγがカーナビゲーションシステムを起動させた後、所定の画面操作を行うと、当該車両は、基準指静脈パターンデータの登録モードへ移行する。
【0046】
ユーザγは、この登録モードにおいて、右手の親指でのエンジン始動ボタン40の押圧操作を促す案内が画面上に表示されたとき、これをスキップするための画面操作を行う。そして、ユーザγは、こうしたスキップ操作後に、右手の人差し指でのエンジン始動ボタン40の押圧操作を促す案内が画面上に表示されたとき、この案内に従って自身の右手の人差し指でエンジン始動ボタン40を押圧操作し、これにより自身の右手の親指の指静脈パターンを指静脈センサ45に検出させる。すると、セキュリティ装置3の側において、ユーザγの人差し指に関する検出指静脈パターンデータが基準指静脈パターンデータとして、このデータが五指のうち人差し指に関するデータであることを示す指情報及び第3の基準IDコードと関連付けされてメモリ35aに記憶される。尚、図3には、このデータがパターンデータJとして示されている。
【0047】
続いて、ユーザγは、画面上の案内に従って自身の右手の中指でエンジン始動ボタン40を押圧操作し、これにより自身の右手の中指の指静脈パターンを指静脈センサ45に検出させる。すると、セキュリティ装置3の側において、ユーザγの中指に関する検出指静脈パターンデータが基準指静脈パターンデータとして、このデータが五指のうち中指に関するデータであることを示す指情報及び第3の基準IDコードと関連付けされてメモリ35aに記憶される。尚、図3には、このデータがパターンデータKとして示されている。
【0048】
続いて、ユーザγは、画面上の案内に従って自身の右手の薬指でエンジン始動ボタン40を押圧操作し、これにより自身の右手の薬指の指静脈パターンを指静脈センサ45に検出させる。すると、セキュリティ装置3の側において、ユーザγの薬指に関する検出指静脈パターンデータが基準指静脈パターンデータとして、このデータが五指のうち薬指に関するデータであることを示す指情報及び第3の基準IDコードと関連付けされてメモリ35aに記憶される。尚、図3には、このデータがパターンデータLとして示されている。
【0049】
続いて、ユーザγは、右手の小指でのエンジン始動ボタン40の押圧操作を促す案内が画面上に表示されたとき、これをスキップするための画面操作を行う。そして、こうしたスキップ操作後に、ユーザγが所定の画面操作を行うと、当該車両は、基準指静脈パターンデータの登録モードから通常モードへ移行し、これにてユーザγの右手の親指と小指を除く右手の三指の指静脈パターンデータの登録が完了する。
【0050】
次に、認証を受ける指を指定する方法について説明する。尚、本実施形態では、右手の五指のうち1本の指を指静脈認証を受ける指として指定可能となっており、ここでは、ユーザαが電子キー2αを用いて自身の右手の中指を指静脈認証を受ける指として指定することとする。
【0051】
さて、ユーザαが電子キー2αに設けられたロックボタン及びアンロックボタン(いずれも図示略)を同時に長押しすると、当該電子キー2αは、認証を受ける指の指定モードへ移行する。尚、ロックボタンとは、車両から離れた地点(本実施形態では、車両から最長で10m離れた地点)でそれを押圧操作することで、いわば遠隔操作によりドアを施錠(ロック)させたい場合に操作されるものである。一方、アンロックボタンとは、車両から離れた地点(本実施形態では、車両から最長で10m離れた地点)でそれを押圧操作することで、いわば遠隔操作によりドアを解錠(アンロック)させたい場合に操作されるものである。ちなみに、こうした既存のボタン(スイッチ)を特殊操作することに代えて又は加えて、電子キー2を指定モードへ移行させるための指定スイッチを別途設けるとともに、それを操作することで電子キー2を指定モードへ移行させる構成を採用してもよい。
【0052】
そして、ユーザαがこの指定モードにおいて、所定の期間内にロックボタンを3回押すと、電子キー2αのマイコン23は、当該電子キー2αが利用される場合にあって、ユーザαの右手の中指を指静脈認証を受ける指として指定する。尚、図4には、ユーザαが所有する電子キー2αにおいて、指定モード中にロックボタンが3回押された結果、ユーザαの右手の中指が指静脈認証を受ける指として指定された様子が○印にて示されている。
【0053】
ちなみに、ユーザαが所有する電子キー2αにおいて、指定モード中にロックボタンが1回(2回、4回、5回)押された場合、ユーザαの右手の親指(人差し指、薬指、小指)が指静脈認証を受ける指として指定される。つまり、指定モード中のロックボタンの操作回数(押しボタン回数)と、指静脈認証を受ける指として指定される指(認証指)とが関連付けされている。
【0054】
その後、ユーザαがロックボタン及びアンロックボタンを同時に長押しすると、当該電子キー2αは、認証を受ける指の指定モードから通常モードへ移行し、これにてユーザαによる電子キー2αを用いた認証を受ける指の指定が完了する。
【0055】
尚、ユーザβ(γ)が電子キー2β(2γ)を用いて自身の右手の五指の中から指静脈認証を受ける指を指定する方法は、ユーザαが電子キー2αを用いて自身の右手の五指の中から指静脈認証を受ける指を指定する方法と同様であるので、これらについては説明を割愛する。
【0056】
ところで、認証を受ける指を指定した後で、その指をケガしたような場合、当該指で指静脈認証を受けると、生体認証をパスできず、よって正規ユーザでありながらエンジンを始動できなくなる虞がある。そこで、本実施形態では、認証を受ける指を変更できるようになっている。
【0057】
例えば、ユーザαが現在指定中の中指をケガしたことに伴って、指静脈認証を受ける指を当該中指から自身の右手の人差し指に変更する場合、電子キー2αのロックボタン及びアンロックボタンを同時に長押しすることで、当該電子キー2αを指定モードへ移行させる。ちなみに、こうした既存のボタン(スイッチ)を特殊操作することや指定スイッチを操作することに代えて又は加えて、電子キー2を認証を受ける指の変更モードへ移行させるための変更スイッチを別途設けるとともに、それを操作することで電子キー2を変更モードへ移行させる構成を採用してもよい。
【0058】
そして、ユーザαがこの指定モードにおいて、所定の期間内にロックボタンを2回押すと、電子キー2αのマイコン23は、当該電子キー2αが利用される場合にあって、ユーザαの右手の人差し指を指静脈認証を受ける指として指定する。
【0059】
その後、ユーザαがロックボタン及びアンロックボタンを同時に長押しすると、当該電子キー2αは、指定モードから通常モードへ移行し、これにてユーザαによる電子キー2αを用いた認証を受ける指の指定が完了する。つまり、本実施形態では、認証を受ける指を変更することは、認証を受ける指を新たに指定すること(現在指定中の指を無効化するとともに、新たに指定した指を有効化すること、つまり認証を受ける指を更新すること)に等しい。
【0060】
次に、エンジンを始動する場合の動作について説明する。ここでは、電子キー2αを所有するユーザαがエンジンを始動する場合を想定するとともに、その前提として、このユーザαが電子キー2αを用いて自身の右手の中指を指静脈認証を受ける指として指定し、且つセキュリティ装置3の側において図3に示される態様で基準指静脈パターンデータ(パターンデータA〜L)が登録されていることとする。
【0061】
さて、電子キー2αを所持したユーザαがドアを開けると、車内の所定領域A32内にリクエスト信号が送信されるとともに、このリクエスト信号が電子キー2αで受信される。
【0062】
すると、電子キー2αのマイコン23は、リクエスト信号に応答してIDコード信号を送信するに際して、認証を受ける指としてマイコン23自身が指定した指が中指であることを示す指情報を付加したIDコード信号を生成するとともに、それを送信回路24及び送信アンテナ25を通じて送信する(図1参照)。つまり、このIDコード信号には、電子キー2αのIDコードである第1のIDコードと、認証を受ける指として指定された指が中指であることを示す指情報とが含まれている。
【0063】
セキュリティ装置3の側において、このIDコード信号が受信アンテナ33で受信されると、IDコード信号に関する受信信号が受信回路34から照合装置35へ出力される。
照合装置35は、IDコード照合(キー認証)を実行するに際して、この場合、受信回路34からの受信信号に含まれる第1のIDコードを、第1の基準IDコード〜第3の基準IDコードの順にそれらと照合するのであるが、その過程で、該第1のIDコードが第1の基準IDコードと一致するので、正規の電子キー2αが利用されたと判定する。
【0064】
また、このとき、照合装置35は、第1の基準IDコードと一致する第1のIDコードが受信回路34からの受信信号に含まれていることを認識するとともに、同受信信号に含まれる指情報に基づいて、認証を受ける指として指定された指が中指であることを認識する。そして、照合装置35は、図3に示されるメモリ35aの記憶内容を参照して、この場合、第1の基準IDコード及び中指に関する指情報の両方に関連付けされている基準指静脈パターンデータであるパターンデータCを生体認証で使用する唯一の基準データとして選択する。尚、図3には、パターンデータCが生体認証で使用される唯一の基準データとして選択された様子がいわゆる梨子地模様にて示されている。
【0065】
そして、ユーザαが自身の右手の中指でエンジン始動ボタン40を押圧操作すると、該ユーザαの右手の中指の指静脈パターンが指静脈センサ45で検出されるとともに、その検出指静脈パターンデータが指静脈センサ45から照合装置35へ出力される。
【0066】
照合装置35は、生体認証(指静脈認証)を実行するに際して、この場合、指静脈センサ45からの検出指静脈パターンデータを、生体認証で使用する唯一の基準データとして選択したパターンデータCと照合する。尚、このパターンデータCは、ユーザαの右手の中指に関する検出指静脈パターンデータが基準指静脈パターンデータとして車両側に登録されたものであり、よってこの場合、両データは一致するので、照合装置35は、被験者(エンジンの始動が許容されるように指静脈認証を受けたユーザα)が正規ユーザであると判定する。
【0067】
従って、この場合、照合装置35は、キー認証により正規の電子キー2αが利用されたと判定し、且つ生体認証により被験者が正規ユーザであると判定することになるので、エンジンの始動を許容するために、エンジン制御装置50にエンジン始動許可信号を出力する。その結果、エンジン制御装置50によりエンジンが始動される。
【0068】
尚、本実施形態において指静脈センサ45は、認証(指静脈認証)を受ける者である被験者の指に関する生体情報(指静脈パターン)を検出する検出手段に相当する。一方、電子キー2のマイコン23は、五指の中から認証を受ける指を指定する認証指指定手段に相当するとともに、認証を受ける指を変更する認証指変更手段に相当する。他方、セキュリティ装置3の照合装置35は、認証指指定手段(電子キー2のマイコン23)により指定された指に関する生体情報データ(基準指静脈パターンデータ)を基準データとして選択する基準データ選択手段に相当する。
【0069】
以上、詳述したように本実施形態によれば、次のような作用、効果を得ることができる。
(1)電子キー2の側で指定された指に関する生体情報データ(基準指静脈パターンデータ)が基準データとして選択されるとともに、指静脈センサ45による検出データ(検出指静脈パターンデータ)がそれと照合され、両データが一致したとき、被験者が正規ユーザであると判定される。ここに、他の指に関する生体情報データについては基準データとして選択されないので、いわば余計な照合が回避され、よって認証期間が短縮される。従って、生体認証に関して認証スピードを速めることができる。
【0070】
(2)上記(1)に関連して、全ての生体情報データではなく、電子キー2の側でいわば限定された生体情報データが基準データとして選択されるので、他人を受け入れる確率は低いものとなる。従って、生体認証に関して他人受け入れ率を下げることができる。
【0071】
(3)上記(1)及び(2)から、認証スピードを速められるとともに、他人受け入れ率を下げることができる。
(4)指静脈認証を利用した個人認証システムは、キー認証を利用した電子キーシステムと連動され、電子キー2から送信されてくるIDコード信号に指情報が付加されてきたとき、その指情報により指定されている指に関する生体情報データが基準データとして選択される。ここに、電子キー2毎に個別に設定されたIDコードと指情報とが関連付けされるので、認証を受ける指をユーザ毎に自由に指定することができる。
【0072】
(5)認証を受ける指を変更可能とすることで、現在指定中の指をケガしたような場合に別の指に変更することが可能となり、よって柔軟に対処することができる。
(6)指に関する生体認証の中でも、指紋認証ではなく、指静脈認証を用いているので、素手で触れた器物に指紋が残っていても、それが採取されることによる「なりすまし行為」を防止することができる。従って、セキュリティレベルの高い個人認証システムを提供できる。
【0073】
(7)認証を受ける指を、複数の指ではなく、いわば1本の指に絞り込んでいるので、認証スピードを速める観点において非常に優れるとともに、他人受け入れ率を下げる観点においても非常に優れている。
【0074】
(8)指情報を付加したIDコード信号を電子キー2から送信するに際して、セキュリティ装置3の側で生体認証に供される基準データそのものではなく、指定指が五指のいずれであるかという、いわば最低限の情報を付加しているので、通信速度を速めることができる。
【0075】
(9)上記(8)に関連して、いわば通信時の情報量を抑えているので、通信エラーとなる確率を下げることができる。
(10)上記(8)及び(9)から、通信速度を速められるとともに、通信エラー率を下げることができる。
【0076】
(11)近年の車両にあって標準装備となりつつある電子キーシステムで用いられるIDコード信号に指情報を付加することで、電子キーシステムと個人認証システムとを融合しているので、こうした電子キーシステムが適用された車両に個人認証システム(指静脈センサ45等)を後付けし易く、よって利便性にも優れる。
【0077】
(12)正規の電子キー2を所持してエンジン始動ボタン40を操作するという、エンジン始動に関する自然の流れの中で個人認証が行われるので、正規ユーザにしてみれば、何ら特別な操作を行う必要はなく、よって簡便である。特に、上記(7)の如く個人認証を速くてしかも正確に行えるので、こうした個人認証をやり直さなくてはならない確率が格段に下がり、よって極めて好都合である。
【0078】
(13)仮に電子キー2を紛失する等してそれが第三者に渡ったとしても、この第三者はキー認証をパスすることはできるが、生体認証についてはパスできず、結局のところ、この第三者によってエンジンが始動されることはない。従って、こうしたことからもセキュリティレベルの観点で優れる。
【0079】
(14)正規ユーザとして最高で8人のユーザの指静脈パターンデータを登録でき、しかもユーザ1人につき最高で五本の指それぞれの指静脈パターンデータを登録でき、都合40ものデータを登録できる。このように登録可能なデータが多ければ多い程、生体認証に供される基準データとして1つのデータを選択する意義は大きくなる。この理由は、40ものデータ全てとの照合を行うとなると、単純計算で40倍もの時間がかかり、また、他人受け入れ率も40倍に膨れ上がるからである。
【0080】
(15)認証を受ける指を指定する場合と同じ要領で認証を受ける指を変更できるので、指をケガしたような場合に混乱が生じる余地はなく、よってこうした場合でも、利便性が損なわれることはない。
【0081】
(16)認証を受ける指を指定したり、認証を受ける指を変更したりする場合、わざわざ車両まで出向く必要はなく、電子キー2があればその場でそれらを行うことができ、よって簡便である。
【0082】
(17)指情報を付加したIDコード信号を電子キー2から送信するに際して、セキュリティ装置3の側で生体認証に供される基準データそのものを送信していないので、こうしたデータを第三者に盗聴される心配がなく、この点からもセキュリティレベルが高いと言える。
【0083】
尚、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・キー認証により正規の電子キー2が利用されたと判定されたとき、その電子キー2のIDコードと同一のIDコードである基準IDコードに関連付けされている、最高で五本の指(前記実施形態では右手の五指)それぞれに関する生体情報データを基準データとして選択してもよい。こうした構成でも、正規の電子キー2として複数(例えば8個)の電子キー2が登録され、且つ電子キー2毎に複数本(例えば5本)の指それぞれに関する生体情報データが登録されている場合にあって、都合40もの生体情報データ全てとの照合を行うときよりも、認証スピード及び他人受け入れ率の観点で有利となる。この理由は、本例の場合、5つの基準データとの照合を行えば事足りることとなり、比較例による40もの基準データとの照合を行う場合との差は歴然であるからである。
【0084】
尚、この場合、電子キー2からのIDコード信号に必ずしも指情報を付加する必要はなく、これを割愛できる。なぜなら、電子キー2のIDコードと同一のIDコードである基準IDコードに対して、複数本(例えば5本)の指それぞれに関する生体情報データを関連付けしてそれらを車両側に登録しておけば事足りるからである。従って、この場合、生体情報データ(前記実施形態では基準指静脈パターンデータ)を登録する必要は勿論あるが、認証を受ける指を指定するための正規ユーザによる特別な作業(前記実施形態における認証指の指定方法を参照)を割愛できる。そして、この場合、電子キー2のIDコードを含むIDコード信号を当該電子キー2から送信すること自体が、本発明の「五指の中から認証を受ける指を指定すること」に相当するとともに、やはり電子キー2のマイコン23が「認証指指定手段」に相当する。
【0085】
・正規ユーザ1人(正規の電子キー1個につき)につき、右手の五指のみならず左手の五指を含めた合計10本の指それぞれに関する生体情報データを登録する構成、或いはエンジン始動ボタン40を押圧操作し易い2本以上の複数の指(例えば、右手の親指、人差し指、中指の3本)それぞれに関する生体情報データを登録する構成を採用してもよい。尚、エンジン始動ボタン40を押圧操作し易い2本以上の複数の指としては、右手の親指、左手の親指、右手の人差し指、左手の人差し指、右手の中指、左手の中指の6本というように、それらは左右両手に亘るものであってもよい。
【0086】
・指に関する生体認証を利用した個人認証システムは、指静脈認証を利用したものに限らず、指紋認証を利用したものであってもよい。
・生体認証を利用した個人認証システムを構築するに際して、エンジン始動ボタン40に代えて又は加えて、ドアアウトサイドハンドル、シフトレバー、ステアリングホイール等の各操作手段に指静脈センサや指紋センサを設けるようにしてもよい。例えば、乗車時にドアアウトサイドハンドルを操作してドアを車外から開ける場合を想定すると、ユーザは利き手の人差し指、中指、薬指、小指が該ハンドルの裏側に望む態様で操作を行う可能性が高い。そこで、該ハンドルの裏側に4個の指静脈センサを設けるとともに、認証を受ける指として指定された指の指静脈センサによる検出データのみを有効化する一方、他のセンサによる検出データを無効化する。そして、この場合、該有効化された検出データを、基準データとして選択された生体情報データと照合するようにすればよい。
【0087】
尚、ドアアウトサイドハンドルに指静脈センサや指紋センサを設ける場合、電子キーとセキュリティ装置との間での双方向通信を通じて、正規の電子キーが利用されたと判定されたとき、車両ドアの解錠を許容する、いわゆるスマートエントリーシステム(電子キーシステム)と当該個人認証システムとを融合させればよい。或いは、電子キーのアンロックボタンが操作されることに基づき、IDコードと解錠要求コードとを含むIDコード信号を電子キー(送信側)から送信し、こうした単方向通信を通じて、正規の電子キーが利用されたと判定されたとき、車両ドアの解錠を許容する、いわゆるキーレスシステム(電子キーシステム)と融合させてもよい。
【0088】
・車両用の個人認証システムに限らず、建物用の個人認証システムとして本発明を具体化してもよく、この場合、例えば住宅の玄関のドアノブに指静脈センサや指紋センサを設ければよい。尚、この場合、建物用のスマートエントリーシステム或いはキーレスシステムと当該個人認証システムとを融合させればよい。
【0089】
・正規ユーザの生体情報データを車両側に登録する際、このとき登録した指に関するデータ(指情報や生体情報データそのもの)を車両側から電子キー2へ送信し、これらのデータを電子キー2の側に記憶させるようにしてもよい。そして、この登録済みの指の中から認証を受ける指を電子キー2の側で指定するようにしてもよい。つまり、正規ユーザの生体情報データを、車両のみならず電子キー2にも登録するようにしてもよい。尚、この場合、電子キー2がセキュリティ装置3との双方向通信が可能なエリア(車内の所定領域A32)に存在していることになるので、登録のついでに車内でカーナビゲーションシステムを用いて認証を受ける指を指定するようなことも可能である。従って、この場合、カーナビゲーションシステムが認証指指定手段として機能する。そうすると、電子キー2から指定モードを割愛しても差し支えない。
【0090】
次に、上記実施形態及びその変更例から把握できる技術的思想について記載する。
〔1〕認証を受ける者である被験者の指に関する生体情報を検出手段により検出するとともに、その検出データを正規ユーザの指に関する生体情報データである基準データと照合し、両データが一致したとき、被験者が正規ユーザであると判定する生体認証を利用した個人認証方法において、
前記基準データとして、正規ユーザの五指それぞれに関する複数の生体情報データを登録可能であり、
五指の中から認証を受ける指が指定されたとき、その指に関する生体情報データを前記基準データとして選択する
ことを特徴とする個人認証方法。
【0091】
〔2〕通信機能を有する電子キー毎に個別に設定されたIDコードを含むIDコード信号を受信するとともに、そのIDコード信号に含まれるIDコードを、正規の電子キーに設定されたIDコードと同一のIDコードである基準IDコードと照合し、両コードが一致したとき、正規の電子キーが利用されたと判定するキー認証を利用した電子キーシステムに連動され、
認証を受ける指として指定された指が五指のいずれであるかを示す指情報が前記IDコード信号に付加されて前記電子キーから送信されてきたとき、そのIDコード信号に含まれる指情報により指定されている指に関する生体情報データを基準データとして選択する
技術的思想〔1〕に記載の個人認証方法。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本実施形態の車両に適用されるセキュリティシステムの構成を示すブロック図。
【図2】車内の所定領域を示す説明図。
【図3】基準指静脈パターンデータの登録内容を示す概念図。
【図4】認証を受ける指の指定内容を示す概念図。
【符号の説明】
【0093】
2…電子キー、23…マイコン(認証指指定手段、認証指変更手段)、35…照合装置(基準データ選択手段)、45…指静脈センサ(検出手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
認証を受ける者である被験者の指に関する生体情報を検出手段により検出するとともに、その検出データを正規ユーザの指に関する生体情報データである基準データと照合し、両データが一致したとき、被験者が正規ユーザであると判定する生体認証を利用した個人認証システムにおいて、
五指の中から認証を受ける指を指定する認証指指定手段と、
前記認証指指定手段により指定された指に関する生体情報データを基準データとして選択する基準データ選択手段とを備える
ことを特徴とする個人認証システム。
【請求項2】
通信機能を有する電子キー毎に個別に設定されたIDコードを含むIDコード信号を受信するとともに、そのIDコード信号に含まれるIDコードを、正規の電子キーに設定されたIDコードと同一のIDコードである基準IDコードと照合し、両コードが一致したとき、正規の電子キーが利用されたと判定するキー認証を利用した電子キーシステムに連動され、
前記電子キーは、認証を受ける指として前記認証指指定手段により指定された指が五指のいずれであるかを示す指情報を前記IDコード信号に付加して送信し、
前記基準データ選択手段は、前記IDコード信号に含まれる指情報により指定されている指に関する生体情報データを基準データとして選択する
請求項1に記載の個人認証システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の個人認証システムにおいて、
認証を受ける指を変更する認証指変更手段をさらに備える
ことを特徴とする個人認証システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−288944(P2009−288944A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139460(P2008−139460)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】