個人認証装置、個人認証プログラム、および個人認証装置を備えたインターホンシステム
【課題】複数種類の情報を用いて認証を行う場合に、適切な順番で速やかに認証を行うことができる個人認証装置、個人認証プログラム、および個人認証装置を備えたインターホンシステムを提供する。
【解決手段】来訪者が住宅7に設置されたインターホンシステム1の子機10に近づくにつれ、両者との距離に応じて異なる個人情報を使用した認証処理が順に行われる。来訪者が顔特徴認証範囲A1に進入すると、子機10のカメラで撮像された画像から抽出される来訪者の顔特徴データによる認証が行われる。認証の結果、来訪者が登録者か否か不明の場合、来訪者がさらに子機10に近づき、虹彩認証範囲A2に進入すると、来訪者の虹彩データによる認証が行われる。それでも来訪者が登録者か否か不明の場合、来訪者がさらに子機10に近づき、筆跡認証範囲A3に到達すると、子機10の操作パネルから入力される来訪者の筆跡データによる認証が行われる。
【解決手段】来訪者が住宅7に設置されたインターホンシステム1の子機10に近づくにつれ、両者との距離に応じて異なる個人情報を使用した認証処理が順に行われる。来訪者が顔特徴認証範囲A1に進入すると、子機10のカメラで撮像された画像から抽出される来訪者の顔特徴データによる認証が行われる。認証の結果、来訪者が登録者か否か不明の場合、来訪者がさらに子機10に近づき、虹彩認証範囲A2に進入すると、来訪者の虹彩データによる認証が行われる。それでも来訪者が登録者か否か不明の場合、来訪者がさらに子機10に近づき、筆跡認証範囲A3に到達すると、子機10の操作パネルから入力される来訪者の筆跡データによる認証が行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人認証装置、個人認証プログラム、および個人認証装置を備えたインターホンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な場面でセキュリティ確保の必要性が高まり、個人の認証を行う技術が注目されている。個人認証技術の中には、例えば、マルチモーダル認証と呼ばれる、複数種類の生体情報を用いて認証を行う技術がある。このような複数種類の情報を用いた個人認証の場合、被認証者から取得された複数種類の情報がすべて処理されるため、認証精度は高くなるが、認証処理に時間がかかる場合がある。そこで、例えば、特許文献1で提案されている複合認証システムは、登録者毎に予め登録されている、複数種類の情報をそれぞれ用いて認証を行った場合の認証性能に基づいて、複数種類の情報を認証に使用する順番を決定する。そして、決定された順番で認証を行うことにより、登録者を速やかに認証することを可能とする。
【特許文献1】特開2003−186836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の複合認証システムでは、被認証者が登録者である場合には、被認証者に対応して各情報を用いて認証を行った場合の認証性能が予め登録されているため、この認証性能に基づいて、認証を行う順番を決定することができる。しかしながら、認証性能は、各情報の登録時と認証時に被認証者が置かれた環境(例えば、被認証者と認証手段との距離、外光や周囲の音のレベル)が異なれば、変動する可能性がある。また、被認証者が登録者でない場合、各情報を用いた場合の認証性能は登録されていない。よって、認証性能に基づいて、複数種類の情報を認証に使用する順番を適切に決定することはできない場合がある。
【0004】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、複数種類の情報を用いて認証を行う場合に、適切な順番で速やかに認証を行うことができる個人認証装置、個人認証プログラム、および個人認証装置を備えたインターホンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の個人認証装置は、複数種類の個人情報の少なくとも1種類を用いて個人の認証を行う個人認証装置であって、前記複数種類の個人情報をそれぞれ用いて個人認証を行う複数の認証手段と、被認証者が現在置かれている環境に応じて、前記被認証者の前記複数種類の個人情報のいずれか1種類を、被認証者情報として取得する被認証者情報取得手段を備え、前記複数の認証手段のうち、認証に用いる個人情報が前記被認証者情報と同じ種類である認証手段が、前記被認証者情報と、複数の人物の各々に対応する前記複数種類の個人情報を記憶する個人情報記憶手段に記憶された前記被認証者情報と同じ種類の個人情報とを照合することによって被認証者の認証を行い、前記認証手段による認証結果により、前記被認証者を前記複数の人物のいずれか1名に特定できない場合に、前記被認証者情報取得手段は、前記環境に応じた前記被認証者情報を新たに取得し、前記複数の認証手段のうち、認証に用いる個人情報が前記被認証者情報取得手段によって新たに取得された前記被認証者情報と同じ種類である認証手段が、前記個人情報記憶手段に記憶された新たに取得された前記被認証者情報と同じ種類の個人情報と前記被認証者情報とを照合することによって、新たに被認証者の認証を行うことを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る発明の個人認証装置では、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記認証手段による前記認証結果が、前記被認証者が前記複数の人物のいずれかに該当するか否かが不明であることを示す場合に、前記被認証者情報取得手段は、前記環境に応じて前記被認証者情報を新たに取得することを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る発明の個人認証装置では、請求項1または2に記載の発明の構成に加え、前記認証手段による前記認証結果が、前記被認証者が前記複数の人物のいずれにも該当しないことを示す場合に、前記個人情報記憶手段に、前記被認証者情報取得手段によって取得された前記被認証者情報を登録する個人情報登録手段をさらに備えている。
【0008】
請求項4に係る発明の個人認証装置では、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記環境は、前記被認証者情報の基となる情報である基礎情報を前記被認証者から取得する基礎情報取得手段と前記被認証者との距離であり、前記被認証者情報取得手段は、前記被認証者情報として、前記距離に応じた種類の個人情報を、前記基礎情報取得手段によって取得された前記基礎情報から取得することを特徴とする。
【0009】
請求項5に係る発明の個人認証プログラムは、請求項1〜4のいずれかに記載の個人認証装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0010】
請求項6に係る発明のインターホンシステムは、室外に設置される子機と、前記子機に接続され、室内に設置される親機とを備えたインターホンシステムであって、前記親機は、請求項1〜3のいずれかに記載の個人認証装置と、前記室内に情報を通知する通知手段と、前記通知手段を制御して、前記認証手段による認証結果を通知させる通知制御手段を備えている。
【0011】
請求項7に係る発明のインターホンシステムでは、請求項6に記載の発明の構成に加え、前記子機は、前記被認証者情報の基となる情報である基礎情報を取得する基礎情報取得手段を備え、前記環境は、前記子機と前記被認証者との距離であり、前記被認証者情報取得手段は、前記被認証者情報として、前記距離に応じた種類の個人情報を、前記基礎情報取得手段によって取得された前記基礎情報から取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明の個人認証装置によれば、被認証者が置かれている環境に応じた被認証者情報が取得され、複数の認証手段のうち、取得された被認証者情報と同じ種類の個人情報を用いて認証を行う認証手段によって認証が行われる。そして、認証により、被認証者を、個人情報記憶手段に個人情報が記憶されている人物のいずれかに1名に特定できない場合には、被認証者の置かれた環境に応じた被認証者情報が新たに取得され、再び認証が行われる。つまり、被認証者の置かれた環境が変化すると、被認証者の認証に使用される個人情報の種類が変化することになる。よって、被認証者の置かれた環境に応じた適切な順番で複数種類の個人情報を使用することができるため、速やかに認証を行うことができる。また、必ずしも複数種類の個人情報をすべて取得して認識に用いる必要はないため、装置に要求される処理能力や被認証者に与える負荷を軽減することができる。
【0013】
請求項2に係る発明の個人認証装置によれば、被認証者情報と同じ種類の個人情報を認証に用いる認証手段によって、被認証者が複数の人物のいずれかに該当するか否かが不明な場合にのみ、環境に応じた認証処理が繰り返される。したがって、請求項1に記載の発明の効果に加え、より高い認証精度で速やかに処理を完了することができる。
【0014】
請求項3に係る発明の個人認証装置によれば、被認証者が、個人情報記憶手段に個人情報が記憶されている複数の人物のいずれにも該当しないと認証された場合には、被認証者取得手段によって取得された被認証者情報が、個人情報記憶手段に登録される。したがって、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、別途、個人情報記憶手段に被認証者情報を記憶させる必要がなく、また、その後の認証処理に用いることができる。
【0015】
請求項4に係る発明の個人認証装置によれば、被認証者から基礎情報を取得する基礎情報取得手段と被認証者との距離に応じた種類の個人情報が、被認証者情報として取得され、認証に使用される。したがって、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の効果に加え、被認証者が基礎情報取得手段に近づいていく間に、両者間の距離に応じた適切な順番で複数種類の個人情報を使用することができるため、速やかに認証を行うことができる。
【0016】
請求項5に係る個人認証プログラムは、請求項1〜4のいずれかに記載の個人認証装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させることができる。したがって、請求項1〜4のいずれかに記載の発明の効果を奏することができる。
【0017】
請求項6に係る発明のインターホンシステムによれば、親機で速やかな個人認証を行い、その結果が室内に通知される。したがって、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の効果に加え、室内にいる人間は、来訪者の情報を速やかに得ることができ、適切な応対が可能となる。
【0018】
請求項7に係る発明のインターホンシステムによれば、被認証者が子機に近づいていく間に、両者間の距離に応じた適切な順番で複数種類の個人情報を使用して、速やかな認証が行われる。したがって、請求項6に記載の発明の効果に加え、室内にいる人間は、来訪者が子機に到達する前に来訪者の情報を得られる場合があり、より適切な応対が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、これらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成、各種処理のフローチャートなどは、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0020】
まず、図1〜図10を参照して、本発明に係る個人認証装置をインターホンシステムに適用した一実施の形態について説明する。最初に、図1を参照して、インターホンシステム1の概略構成と、インターホンシステム1で行われる処理の概要について説明する。図1は、来訪者2とインターホンシステム1の子機10との距離と各種認証処理の適用範囲との関係を示す説明図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のインターホンシステム1は、住宅7に設置されている。より具体的には、インターホンシステム1は、住宅7の戸外、例えば玄関付近に設置された子機10と、信号線30で子機10に接続され、室内に設置された親機20とを備えている。子機10と親機20との間で通話が可能であるため、住宅7の室内に居る者(以下、室内対応者という)は、入口を開けることなく室外の来訪者2に応対することができる。
【0022】
詳細は後述するが、子機10はカメラ113(図2参照)を備えている。そして、親機20は、カメラ113によって撮像された来訪者の画像に基づいて、顔特徴データによる認証処理、および虹彩データによる認証処理を行うことができる。さらに、子機10は、タッチパッドが内蔵された操作パネル114(図2参照)を備えている。そして、来訪者2によってタッチペン115(図2参照)を用いて操作パネル114への書き込み入力が行われると、親機20は、筆跡データによる認識処理も行うことができる。すなわち、親機20は、複数の認証方法によって、個人認証を行うことができる個人認証装置である。
【0023】
撮像手段の性能にもよるが、一般的に、顔特徴データによる認証方法は、被認証者と画像を撮像する撮像手段との距離が3m程度離れていても適用可能である。一方、虹彩データによる認証方法を適用するには、被認証者と撮像手段との距離が0.5m程度以内であることが必要である。つまり、顔特徴データによる認証方法の方が、虹彩データによる認証方法よりも長距離での適用が可能である。また、筆跡データによる認証方法を適用するには、被認証者が入力手段に実質的に接触する必要がある。すなわち、両者の距離は0mである。そこで、本実施形態では、カメラ113の撮像範囲内で顔特徴データによる認証が可能な範囲内、且つ、虹彩データによる認証が不可能な範囲が顔特徴認証範囲A1、虹彩データによる認証が可能な範囲が虹彩認証範囲A2、子機10との距離が0mの範囲、つまり来訪者2が子機10と実質的に接触状態にある位置が筆跡認証範囲A3とされている。
【0024】
住宅7を訪問する来訪者2は、図1に示すように、住宅7に向かって歩いてくるため、来訪者2と子機10との距離は徐々に縮まっていく。つまり、来訪者2は、顔特徴認証範囲A1、虹彩認証範囲A2、および筆跡認証範囲A3に順に進入することになる。そこで、親機20では、来訪者がいる範囲、すなわち子機10との距離に応じて認証方法が切り替えられる。具体的には、来訪者2が顔特徴認証範囲A1に進入すると、A1にいる間は顔特徴データによる認証処理が行われる。来訪者が顔特徴認証範囲A1から虹彩認証範囲A2に進入すると、A2にいる間は虹彩データによる認証処理が行われる。さらに、来訪者2が子機10に到達し、操作パネル114から入力を行うと、筆跡認証範囲A3に到達したことになり、筆跡データによる認証処理が行われる。なお、これらの処理の詳細については後述する。
【0025】
以下に、図2〜図6を参照して、インターホンシステム1の構成要素である子機10および親機20の構成について説明する。図2は、子機10の外観正面図である。図3は、親機20の外観正面図である。図4は、インターホンシステム1の電気的構成を示すブロック図である。図5は、フラッシュROM220が有する記憶エリアの説明図である。図6は、フラッシュROM220の登録者情報記憶エリア221に記憶されるデータの一例を示す説明図である。
【0026】
図2を参照して、子機10の物理的構成について説明する。図2に示すように、子機10は、略直方体形状の筐体105を備えており、筐体105の正面(来訪者に対向する面)の下半分には、操作パネル114が設けられている。操作パネル114の上方左右に、マイク111、スピーカ112がそれぞれ設けられている。さらに、マイク111およびスピーカ112の上方には、一対の赤外LED照明117が設けられている。筐体105正面の上方中央部には、カメラ113が設けられている。また、筐体105には、付属品であるタッチペン115がコードでつながっている。
【0027】
マイク111は、入力された来訪者の音声を音声信号に変換し、通信装置150(図4参照)を介して親機20に出力する機器である。スピーカ112は、親機20から入力された音声信号を、音声に変換して出力する機器である。カメラ113は、例えば、周知のCCDカメラであり、子機10の正面の所定の撮像範囲を撮像し、撮像した画像の画像信号を、通信装置150を介して親機20に出力する。所定の撮像範囲は、撮像時に子機10の正面に対向して立った来訪者の顔が位置すると予測される領域を含むように予め設定されている。
【0028】
操作パネル114には、親機20から送信される画像信号に基づき表示が行われる液晶パネル、液晶パネルを駆動する駆動回路、ならびに入力位置および圧力を検知可能な入力装置であるタッチパッドが内蔵された表示装置である。操作パネル114には、例えば、図2に示すように、来訪者への指示が表示される。また、操作パネル114には、後述する処理の過程で、氏名の入力欄が表示される。来訪者が、筐体105に付属するタッチペン115または指を用いて操作パネル114に触れると、その位置および圧力がタッチパッドにより検知され、出力される。赤外LED照明117は照度センサを備えており、検出された照度が所定の閾値より低い場合に、子機10近傍を照明するために点灯する。
【0029】
図4を参照して、子機10の電気的構成について説明する。図4に示すように、子機10は、CPU101、ROM102、RAM103、マイク111、スピーカ112、カメラ113、操作パネル114、人感センサ116、赤外LED照明117、および通信装置150を備えており、これらはすべてバスで相互に接続されている。
【0030】
CPU101は、子機10全体の制御を司る。ROM102は、子機10の基本的な動作に必要なプログラムやそのための設定値を記憶している。CPU101は、ROM102に記憶されたプログラムに従って、子機10の動作を制御する。RAM103は、各種データを一時的に記憶するための記憶装置である。
【0031】
人感センサ116は、子機10正面の所定領域内にある物体の動きを検知するセンサである。人感センサ116として、例えば、物体に対して赤外線を発射し、反射された赤外線の受光量の変化に基づいて物体を検知する赤外線センサを採用することができる。他に、超音波を利用する人感センサ等を採用してもよい。人感センサ116は、子機10から、図1に示す顔特徴認証範囲A1の外側の境界までの領域を検知範囲とする。すなわち、来訪者が顔特徴認証範囲A1に来訪者が進入すると同時に来訪者を検知することができる。人感センサ116は、常時移動物の検知を行っており、その結果を示す信号を、通信装置150を介して親機20に送信している。通信装置150は、親機20との間で、信号線30を介して、制御信号、画像信号、および音声信号を含む各種信号の送受信を行う装置である。
【0032】
図3を参照して、親機20の物理的構成について説明する。図3に示すように、親機20は、略直方体形状の筐体205を備えている。筐体205の正面最下部には、応答ボタン215が設けられている。応答ボタン215の上方には、マイク211およびスピーカ212が設けられている。さらに、マイク211およびスピーカ212の上方には、操作パネル214が設けられている。
【0033】
マイク211は、室内対応者の音声を音声信号に変換し、通信装置250(図2参照を介して子機10に出力する機器である。スピーカ212は、子機10から入力された音声信号を音声に変換して出力する機器である。操作パネル214は、例えば、液晶パネル、駆動回路、ならびに入力位置および圧力を検知可能な入力装置であるタッチパッドが内蔵された表示装置である。操作パネル214に表示される画面は、来訪者に関する情報や、入力用のボタン等が表示される情報表示領域241と、子機10のカメラ113によって撮像された撮像領域の画像が表示される画像表示領域242を含む。応答ボタン215は、通信装置250および信号線30を介して子機10との通話を可能とするボタンである。通信装置250は、子機10との間で、信号線30を介して、制御信号、画像信号、および音声信号を含む各種信号の送受信を行う装置である。
【0034】
図5および図6を参照して、フラッシュROM220について説明する。フラッシュROM220は、不揮発性の半導体メモリである。フラッシュROM220は、例えば、図3に示すように、登録者情報記憶エリア221、表示画面記憶エリア222、通知音声記憶エリア223を含む複数の記憶エリアを備えている。
【0035】
登録者情報記憶エリア221には、複数の人物について、各個人に固有の情報が記憶されている。例えば図6に示すように、登録者情報記憶エリア221には、ID欄、氏名欄、顔特徴データ欄、虹彩データ欄、筆跡データ欄、および前回来訪日欄が設けられている。
【0036】
ID欄には、各個人を識別するための固有情報であるIDが記憶される。氏名欄には、顔特徴データ、虹彩データおよび筆跡データの取得元の人物(以下、登録者という)の氏名が記憶される。顔特徴データ欄には、顔特徴データとして、例えば、眉、目、鼻、口等、顔の特徴点の位置や形状を示す数値データが記憶されている。なお、本実施形態では、目、鼻、口に対応する特徴点のデータが、顔特徴データとして採用されているものとする。虹彩データ欄には、虹彩データとして、例えば、登録者の目の虹彩の模様を示すデータが記憶されている。筆跡データ欄には、筆跡データとして、例えば、ペン先の座標や筆庄を一定時間間隔でサンプリングして得られる時系列データが記憶される。前回来訪日欄には、前回来訪日として、登録者が前回このインターホンシステム1が設置されている住宅7を訪問した日付が記憶される。
【0037】
なお、以下では、各登録者の氏名、顔特徴データ、虹彩データ、筆跡データ、および前回来訪日を総称して、登録者情報というものとする。また、登録者情報記憶エリア221に記憶されている上記の情報のうち、IDおよび前回来訪日以外は、適宜、親機20のユーザまたはCPU201によって登録される。つまり、親機20のユーザは、住宅7の住民、親戚、友人、近隣の住人等、住宅7を来訪する可能性が高い人物の情報を予め登録しておくことができる。また、本実施形態では、登録されていない人物が来訪した場合には、後述する室内通知処理(図10参照)において、CPU201により登録者情報が新規登録される。IDは、登録者情報が新規登録される際にCPU201により付与される情報であり、前回来訪日は、登録者が来訪したと認識された際、CPU201により新規登録または自動更新される情報である。
【0038】
図5に示す表示画面記憶エリア222には、親機20の操作パネル214に表示させる画面のテンプレートが記憶されている。詳細は後述するが、操作パネル214には、例えば、図3に示すように、情報表示領域241や画像表示領域242を有する画面が表示される。本実施形態では、操作パネル214に表示される画面は複数種類あるため、表示画面記憶エリア222には、複数の表示画面のテンプレートが記憶されている。
【0039】
通知音声記憶エリア223には、親機20のスピーカ212または子機10のスピーカ112に出力させる音声の音声データが記憶されている。記憶されている音声データとして、例えば、子機10のスピーカ112から出力される、来訪者に対して操作パネル114への名前の書込み入力を促す音声の音声データが挙げられる。
【0040】
以下に、図7〜図10を参照して、インターホンシステム1の親機20において実行される処理について説明する。図7は、親機20のメイン処理のフローチャートである。図8は、図7のメイン処理中に実行される顔・虹彩認証処理のフローチャートである。図9は、図7のメイン処理中に実行される筆跡認証処理のフローチャートである。図10は、図7のメイン処理中に実行される室内通知処理のフローチャートである。なお、図7〜図10に示す処理は、ROM202に記憶されたプログラムに従って、CPU201が実行する。
【0041】
図7に示すメイン処理は、親機20の電源がONにされると開始され、電源がONの間は継続して繰り返され、電源がOFFにされた時点で終了する。まず、リセット処理が行われる(S1)。具体的には、RAM203に記憶されている情報がすべて消去される。続いて、子機10の操作パネル114が来訪者によって操作され、入力が行われたか否かが判断される(S2)。この判断は、操作パネル114からの入力が検知されたことを示す信号が子機10から受信されたか否かに基づいて行われる。操作パネル114からの入力が行われていないと判断された場合には(S2:NO)、CPU201は、子機10の人感センサ116によって、移動物、すなわち来訪者と思われる物体が検知されたことを示す信号が子機10から親機20に入力されたか否かを判断する(S3)。移動物が検知されなければ(S3:NO)、CPU201は操作パネル114から入力がされたか否かの判断に戻る(S2)。
【0042】
操作パネル114が操作されない間に移動物が検知された場合には(S2:NO、S3:YES)、通信装置250により、カメラ113による撮像を開始させるための制御信号が、信号線30を介して子機10に対して送信される(S4)。親機20からの制御信号を受信した後、子機10では、カメラ113が常時撮像を行う。カメラ113から出力された画像信号は、通信装置150により、信号線30を介して親機20に送信される。親機20では、別途実行されるプログラムに従って、通信装置250により受信された画像信号を操作パネル214に表示可能なデータに変換する処理が行われる。つまり、子機10のカメラ113で撮像された画像がリアルタイムで操作パネル214に表示可能な状態となる。
【0043】
また、CPU201は、子機10から送信され、通信装置250によって受信された画像信号の1フレームを取得し、撮像領域の静止画(以下、撮影画像という)を生成する(S5)。生成された撮影画像は、RAM203に記憶される。
【0044】
続いて、顔・虹彩認証処理が行われる(S10および図8)。顔・虹彩認証処理では、取得した撮影画像から取得できるデータに応じた認証処理が行われる。顔・虹彩認証処理について、図8を参照して説明する。
【0045】
図8に示すように、まず、図7に示すメイン処理のステップS5で生成され、RAM203に記憶された撮影画像から、顔領域が検出される(S101)。顔領域の検出には、例えば、予め記憶した顔のパターンとのマッチングを行う方法や、肌色領域を検出する方法を採用することができるが、他のいかなる公知の方法を採用してもよい。しかし、来訪者がまだ子機10から遠く離れており、図1に示す顔特徴認証範囲A1内にまだ到達していない場合、顔領域は検出できない(S102:NO)。よって、この場合は顔特徴データや虹彩データの抽出が不可能であるため、顔・虹彩認証処理はそのまま終了し、図7に示すメイン処理に戻る。
【0046】
一方、来訪者が子機10に向かって近づいてきて、図1に示す顔特徴認証範囲A1内に進入しており、顔領域の検出に成功した場合には(S102:YES)、検出された顔領域から来訪者の顔特徴データが抽出される(S103)。具体的には、顔領域から、顔の特徴点である目、鼻および口の特徴点が抽出され、これらの位置や形状を示す数値データが来訪者の顔特徴データとして求められる。なお、来訪者がサングラスをかけていたり、マスクをかけていたりする場合、目、鼻および口の特徴点のすべてが抽出できない場合がありうるが、このような場合は、抽出できた特徴点のデータのみ求めればよい。
【0047】
さらに、虹彩データが抽出される(S104)。具体的には、例えば、明るさの違い等を用いて虹彩の外側の境界および内側の境界を検出し、顔領域の画像から虹彩画像を切り出し、虹彩の模様(濃淡の変化)をコード化して所定のデータに変換することにより、来訪者の虹彩データを取得することができる。しかし、来訪者がまだ図1に示す顔特徴認証範囲A1内におり、虹彩認証範囲A2に到達していなければ、虹彩データは抽出できない(S105:NO)。この場合、ステップS103で抽出された顔特徴データによる認証処理が行われる(S107)。
【0048】
具体的には、例えば、フラッシュROM220の登録者情報記憶エリア221(図6参照)から登録者の顔特徴データが順に読み出され、来訪者の顔特徴データと照合されて、非類似度DFが求められる。そして、非類似度DFと、本人であることが確実な場合の非類似度の第1の閾値DF1および他人であることが確実な場合の非類似度の第2の閾値DF2との関係により、認識結果が決定される。なお、第1の閾値DF1と第2の閾値DF2は予め収集されたデータを統計的に処理することにより定められており、DF1<DF2の関係にある。
【0049】
非類似度DFが第1の閾値DF1よりも小さければ、来訪者は照合相手の登録者本人であると決定され、非類似度DFが第2の閾値DF2よりも大きければ、来訪者は照合相手の登録者ではない、すなわち他人であると決定される。また、非類似度DFが、第1の閾値DF1以上、且つ、第2の閾値DF2以下である場合には、来訪者は照合相手の登録者であるか否かが不明であると決定される。顔特徴データによる認証結果は、RAM203に記憶される。
【0050】
来訪者はある登録者本人であると決定された場合、来訪者は登録者であることを示す情報と来訪者であると特定された登録者のIDとが、顔特徴データによる認証結果として記憶される。すべての登録者の顔特徴データについて、非類似度DFが第2の閾値DF2より大きかった場合、来訪者はいずれの登録者とも他人の関係にある。すなわち、来訪者は未登録者であるから、未登録者であることを示す情報が、顔特徴データによる認証結果として記憶される。また、少なくとも1名の登録者の顔特徴データとの非類似度DFが第1の閾値DF1以上、且つ、第2の閾値DF2以下であった場合、来訪者は該当する登録者である可能性がある。すなわち、来訪者の候補が存在する。よって、来訪者は不明であることを示す情報と来訪者候補である登録者のIDとが、顔特徴データによる認証結果として記憶される。なお、来訪者候補が複数いる場合には、複数のIDが記憶される。顔特徴データによる認証処理の後(S107)、顔・虹彩認証処理は終了し、図7に示すメイン処理に戻る。
【0051】
一方、来訪者がさらに子機10に近づいてきて、図1に示す顔特徴認証範囲A1から虹彩認証範囲A2に進入しており、虹彩データの抽出に成功した場合(S105:YES)、虹彩データによる認証処理が行われる(S106)。具体的には、フラッシュROM220の登録者情報記憶エリア221(図6参照)から登録者の虹彩データが順に読み出され、来訪者の虹彩データと照合されて、非類似度DIが求められる。そして、前述した顔特徴データによる認証処理と同様、本人であることが確実な場合の非類似度の第1の閾値DI1および他人であることが確実な場合の非類似度の第2の閾値DI2との関係により、虹彩データによる認識結果が決定され、RAM203に記憶される。虹彩データによる認証処理の後(S106)、顔・虹彩認証処理は終了し、図7に示すメイン処理に戻る。
【0052】
図7に示すメイン処理では、顔・虹彩認証処理の後(S10)、室内通知処理が行われる(S20および図10)。室内通知処理では、これまでに行われた顔特徴データ、虹彩データ、および筆跡データによる認証結果を通知する処理が行われる。図10を参照して、室内通知処理について説明する。
【0053】
図10に示すように、まず、来訪者が登録者であると特定されているか否かが判断される(S201)。つまり、顔・虹彩認証処理(図8参照)での顔特徴データまたは虹彩データによる認証の結果、もしくは後述する筆跡認証処理(図9参照)での筆跡データによる認証の結果、来訪者がいずれかの登録者本人であると決定されたか否かが判断される。来訪者は登録者であることを示す情報と登録者のIDとがいずれかの認証処理による認識結果としてRAM203に記憶されている場合には、来訪者が登録者であると判断される(S201:YES)。そこで、CPU201は、親機20のスピーカ212から呼出音を出力させるとともに、操作パネル214に来訪者の画像と認証結果を表示させることにより、室内対応者に対して来訪者に関する情報を通知する(S202)。
【0054】
具体的には、例えば、フラッシュROM220の表示画面記憶エリア222から、来訪者が登録者の場合の画面のテンプレートが読み出される。そして、登録者のIDに従って登録者情報記憶エリア221から読み出された登録者の氏名および前回来訪日、ならびに子機10から送信された画像信号から生成された表示用のデータに基づいて、表示画面の表示用データが生成され、操作パネル214に表示される。なお、画面の生成方法は、以下に説明する他の画面でも同様である。ステップS202で表示される画面は、例えば図3に示すようになる。つまり、情報表示領域241には、認識結果として、来訪者が登録者である旨とその氏名および前回来訪日とが表示され、画像表示領域242には、来訪者の画像が表示される。室内への通知の後(S202)、室内処理は終了し、図7に示すメイン処理に戻り、ステップS31へ進む。
【0055】
来訪者が登録者であると特定されていない場合(S201:NO)、来訪者は未登録者であると特定されているか否かが判断される(S205)。つまり、顔・虹彩認証処理(図8参照)での顔特徴データまたは虹彩データによる認証の結果、もしくは後述する筆跡認証処理(図9参照)での筆跡データによる認証の結果、来訪者がいずれの登録者本人とも他人であると決定されたか否かが判断される。来訪者は未登録者であることを示す情報がいずれかの認証処理による認識結果としてRAM203に記憶されている場合には、来訪者が未登録者であると判断される(S205:YES)。
【0056】
この場合、CPU201は、親機20のスピーカ212から呼出音を出力させるとともに、操作パネル214に来訪者の画像と認識結果を表示させることにより、室内対応者に対して来訪者に関する情報を通知する(S206)。このときの表示画面は、例えば、図3に示す情報表示領域241には、認識結果として「来訪者は未登録者です」というメッセージのみが表示され、画像表示領域242に来訪者の画像が表示された画面となる。
【0057】
来訪者は未登録者であるから、フラッシュROM220の登録者情報記憶エリア221(図6参照)には、この来訪者のデータは登録されていない。そこで、これまでに取得できたデータを基にして登録者情報を新規登録する処理が行われる(S207)。具体的には、この来訪者に対して新たなIDが割り当てられ、顔・虹彩認証処理(図8参照)のステップS103およびS104で取得された顔特徴データおよび虹彩データが、それぞれ、対応する顔特徴データ欄および虹彩データ欄に保存される。また、後述する筆跡認証処理(図9参照)のステップS153で取得された筆跡データが、対応する筆跡データ欄に記憶される。筆跡データが取得できていれば、記入された氏名が、氏名欄に記憶される。さらに、現在の日付が、前回来訪日欄に保存される。登録者情報の新規登録後(S207)、室内通知処理は終了し、図7に示すメイン処理に戻り、ステップS31へ進む。
【0058】
このように、未登録者のデータが取得された場合には登録者情報記憶エリア221に新規登録していくことにより、親機20のユーザが、別途、登録者情報を記憶させる手間を省くことができる。また、ここで新規登録されたデータを、その後の認証処理に用いることができる。
【0059】
なお、顔特徴データ、虹彩データ、および筆跡データは、来訪者が子機10に近づいてくるにつれ、この順に取得される。よって、顔特徴データによる認証処理によって来訪者が登録者または未登録者であると特定されてしまえば、この時点では虹彩データと筆跡データは取得できていない。また、虹彩データによる認証処理によって来訪者が登録者または未登録者であると特定されてしまえば、この時点では筆跡データは取得できていない。よって、このような場合、ステップS207で新規登録される登録者情報は一部のみとなるため、同一人物が次に来訪した場合には、登録されているデータでのみ認証処理を行えばよい。また、何度か来訪する間に、登録されていないデータが収集できた場合には、新たに収集されたデータを登録者情報記憶エリア221に追加で登録していけばよい。
【0060】
来訪者が未登録者であるとも特定されていない場合(S205:NO)、筆跡データによる認証結果がRAM203に記憶されているか否かに基づいて、筆跡データによる認証処理が済んでいるか否かが判断される(S211)。すでに来訪者が子機10まで到達しており、筆跡データによる認証処理が済んでいる場合(S211:YES)、顔・虹彩認証処理(図8参照)での顔特徴データおよび虹彩データによる認証の結果、ならびに後述する筆跡認証処理(図9参照)での筆跡データによる認証の結果、来訪者は、いずれの場合も登録者か否かが不明であると判断されていることになる。
【0061】
この場合、CPU201は、親機20のスピーカ212から呼出音を出力させるとともに、操作パネル214に来訪者の画像と認識結果を表示させることにより、室内対応者に対して来訪者に関する情報を通知する(S212)。このとき、例えば、図3に示す情報表示領域241に、認識結果として「来訪者は以下の登録者の可能性があります。」というメッセージが表示される。また、「この中に来訪者がいれば、選択してください。」というメッセージと、来訪者候補の氏名を示す選択ボタンと、「該当なし」ボタンとが表示される。画像表示領域242には、来訪者の画像があわせて表示される。なお、来訪者候補の氏名は、顔・虹彩認証処理(図8参照)のステップS106またはS107において、来訪者候補のIDがRAM203に記憶されているので、このIDに対応する氏名をフラッシュROM220の登録者情報記憶エリア221から取得すればよい。
【0062】
選択ボタンが選択され、来訪者候補が選択された場合には(S213:YES)、選択された登録者に対応してフラッシュROM220の登録者情報記憶エリア221に記憶されている登録者情報が更新される(S215)。具体的には、顔・虹彩認証処理(図8参照)のステップS103およびS104、ならびに筆跡認証処理(図9参照)のステップS153において、顔特徴データ、虹彩データ、および筆跡データが取得されていれば、取得されたデータによって対応するデータが上書きされる。さらに、現在の日付が、前回来訪日欄に上書きされる。登録者情報の更新後(S214)、室内通知処理は終了し、図7に示すメイン処理に戻り、ステップS31へ進む。
【0063】
一方、選択ボタンではなく「該当なし」ボタンが選択された場合には(S213:NO)、これまでに取得できたデータを基にして、前述したように、登録者情報を新規登録する処理が行われる(S207)。その後、室内通知処理は終了し、図7に示すメイン処理に戻り、ステップS31へ進む。
【0064】
このように、室内通知処理では、来訪者の画像表示とあわせて、室内対応者に対して、来訪者が登録者なのか、未登録者なのか、または不明なのかが通知されるため、室内対応者は、来訪者が警戒すべき人物か否かを判断することが容易となる。特に、顔特徴データや虹彩データによる認証処理で、来訪者が登録者または未登録者であると決定されれば、室内対応者は来訪者が子機10に到達する前に来訪者の情報を得られるので、より適切な応対が可能となる。
【0065】
また、ステップS211において、まだ筆跡データによる認証は済んでいないと判断された場合には(S211:NO)、図7に示すメイン処理に戻り、ステップS2に進む。図1に示す顔特徴認証範囲A1または虹彩認証範囲A2を通過中に行われる顔・虹彩認証処理(図8参照)において、来訪者が登録者であるか否かが不明であると判断されたまま、室内通知処理(S20)を経て処理が再びステップS2に戻った場合、来訪者はそのまま子機10に対面して立つ位置まで近づいてくる。
【0066】
子機10の操作パネル114には、図2に示すように「御用の方はタッチしてください」という指示が表示されているので、来訪者は指示に従い操作パネル114に指またはタッチペン115で触れる。すなわち、来訪者は筆跡認証範囲A3に到達したことになる。すると、操作パネル114からの入力を示す信号が親機20で受信され(S2:YES)、筆跡認証処理が行われる(S15および図9)。筆跡認証処理では、操作パネル114から入力されたデータに応じて、筆跡データによる認証処理が行われる。筆跡認証処理について、図9を参照して説明する。
【0067】
図9に示すように、まず、来訪者に対して操作パネル114に名前を記入するように指示するための制御信号とデータが子機10に送信される(S151)。具体的には、フラッシュROM220の表示画面記憶エリア222から名前記入指示画面(図示外)の表示用データが読み出され、通知音声記憶エリア223から指示音声の音声データが読み出されて、通信装置250により子機10に送信される(S151)。これを受信した子機10では、操作パネル114に、名前記入指示画面が表示される。このとき表示される画面には、例えば、「下の枠内にタッチペンであなたのお名前を書いてください。」という名前の入力指示、名前の入力欄、および終了ボタンが表示される。また、スピーカ112からは、「下の枠内にタッチペンであなたのお名前を書いてください。」という音声が出力される。
【0068】
その後、CPU201は、操作パネル114にタッチペン115による入力がなされ、入力受付が完了するまで待機する(S152:NO)。具体的には、画面の終了ボタンが選択されたことを示す信号が入力されるまで待機する。そして、終了ボタンが選択され、入力受付が完了すると(S152:YES)、来訪者によって入力された名前の筆跡データが取得される(S153)。具体的には、入力受付中に入力されたタッチペン115のペン先の入力位置の座標および圧力(筆圧)を一定時間間隔でサンプリングして得られた時系列データが、来訪者の筆跡データとされる。
【0069】
続いて、来訪者候補との筆跡データによる認証処理が行われる(S154)。具体的には、来訪者候補の筆跡データが、フラッシュROM220の登録者情報記憶エリア221(図6参照)から読み出される。そして、来訪者候補の筆跡データと来訪者の筆跡データと照合されて、非類似度DSが求められる。なお、前述したように、顔・虹彩認証処理(図8参照)のステップS106またはS107において、来訪者候補のIDがRAM203に記憶されているので、来訪者候補の筆跡データとして、このIDに対応する筆跡データが読み出されることになる。
【0070】
さらに、前述した顔特徴データによる認証処理と同様、本人であることが確実な場合の非類似度の第1の閾値DS1および他人であることが確実な場合の非類似度の第2の閾値DS2との関係により、認識結果が決定され、RAM203に記憶される。なお、RAM203に来訪者候補のIDが複数記憶されている場合には、複数の来訪者候補の筆跡データが順に読み出されて、照合が行われる。筆跡データによる認証処理の後(S154)、筆跡認証処理は終了し、図7に示すメイン処理に戻り、前述した室内通知処理が行われる(S20)。
【0071】
前述したように、室内通知処理において、顔特徴データ、虹彩データ、または筆跡データによる認証結果に基づいて室内対応者に来訪者の情報が通知された後(S20)、ステップS31では、親機20の応答ボタン215が押下げられたことを示す信号が検知されたか否かが判断される。応答ボタン215が押下げられていない場合(S31:NO)、所定時間(例えば、1分)が経過したか否かが判断される(S32)。例えば、室内通知処理で操作パネル214への表示により、来訪者の情報が通知された際スタートされるタイマによって経過時間を計測し、閾値を超えたか否かで判断すればよい。所定時間が経過しない間は(S32:NO)、CPU201は、応答ボタン215が押下げられたか否かの判断に戻り(S31)、処理を繰り返す。
【0072】
所定時間が経過した場合は(S32:YES)、室内に人がおらず、応答がされないと考えられるので、処理はステップS1に戻り、次の来訪者のために、リセット処理においてRAM203に記憶されている情報がすべて消去される。
【0073】
一方、室内通知処理において室内対応者に来訪者の情報が通知された後、操作パネル214に表示された来訪者の画像および来訪者の情報を確認した上で、来訪者が応答ボタン215を押下げた場合には、その情報が検知される(S31:YES)。この場合、CPU201は、通話開始の処理を行う(S33)。具体的には、CPU201は、別途、子機10との通話に関する親機20の動作を制御するためのプログラムを起動させる。これにより、子機10と親機20の間の通話路が形成され、来訪者と室内対応者の通話が可能となる。そして、処理はステップS1に戻り、次の来訪者のために、リセット処理においてRAM203に記憶されている情報がすべて消去される。
【0074】
以上に説明したように、本実施形態のインターホンシステム1では、住宅7を訪問する来訪者が子機10に近づいてくると、来訪者と子機10との距離に応じて、子機10が備えるカメラ113により撮像される撮像範囲の画像、および操作パネル114における入力位置や圧力に基づいて、来訪者の個人情報である顔特徴データ、虹彩データ、および筆跡データが順に取得される。そして、取得された個人情報に基づいて、認証処理が行われる。つまり、最初に顔特徴データによる認証処理が行われ、その結果、来訪者が登録者であるか否かが不明な場合には、次に虹彩データによる認証処理が行われ、それでも来訪者が登録者であるか否かが不明な場合には、さらに筆跡データによる認証処理が行われることになる。
【0075】
したがって、複数種類の個人情報(顔特徴データ、虹彩データ、および筆跡データ)を使用する場合であっても、来訪者と子機10との距離に応じた適切な順番で、複数種類の個人情報を使用することができるため、速やかに認証を行うことができる。特に、来訪者が子機10に近づいていく間に、両者間の距離に応じた適切な順番で認証が行われるため、室内対応者は来訪者が子機10に到達する前に来訪者の情報を得られる場合があり、より適切な応対が可能となる。
【0076】
また、例えば、顔特徴データによる認証処理で来訪者が登録者または未登録者であると判断されれば、それ以上の認証処理は行われない。よって、必ずしも複数種類の個人情報をすべて取得して認識に用いる必要はないため、親機20に要求される処理能力や来訪者に与える負荷を軽減することができる。また、来訪者が登録者であるか否かが不明な場合にのみ、次の認証処理が行われるため、来訪者が登録者であると判断された場合にのみ処理を終了する方法に比べ、より速やかに処理を完了することができる。
【0077】
本実施形態では、インターホンシステム1の親機20が、本発明の「個人認証装置」に相当する。図8の顔・虹彩認証処理のステップS106およびS107、ならびに図9の筆跡認証処理のステップS154で、それぞれ、来訪者と子機10との距離に応じて顔特徴データ、虹彩データおよび筆跡データによる認証処理を行う親機20のCPU201が、「複数の認証手段」に相当する。図8の顔・虹彩認証処理のステップS103およびS104、ならびに図9の筆跡認証処理のステップS153で、それぞれ、顔特徴データ、虹彩データおよび筆跡データを取得するCPU201が、「被認証者情報取得手段」に相当する。
【0078】
親機20のフラッシュROM220の登録者情報記憶エリア221が、「個人情報記憶手段」に相当し、登録者情報記憶エリア221に記憶されている顔特徴データ、虹彩データおよび筆跡データが、それぞれ「個人情報」に相当する。図10の室内通知処理のステップS207で、取得された顔特徴データ、虹彩データおよび筆跡データを登録者情報記憶エリア221に新規登録するCPU201が、「個人情報登録手段」に相当する。親機20の操作パネル214が、「通知手段」に相当し、図10の室内通知処理のステップS202、S206、およびS212で、操作パネル214に認証結果を表示させるCPU201が、「通知制御手段」に相当する。子機10のカメラ113および操作パネル114が、それぞれ「基礎情報取得手段」に相当し、カメラ113により撮像された画像および操作パネル114から入力されたデータは、「基礎情報」に相当する。
【0079】
なお、前述の実施形態に示される構成や処理は例示であり、各種の変形が可能なことはいうまでもない。例えば、前述の実施形態では、別個の装置である子機10と親機20を備えたインターホンシステム1により、複数種類の個人情報を使用した個人の認証処理を行っている。しかしながら、1つの装置によって、同様の処理を行うことも可能である。このような別の実施形態について、図11および図12を参照して説明する。
【0080】
図11は、別の実施形態に係る入場管理装置50の電気的構成を示すブロック図である。図12は、入場管理装置50のメイン処理のフローチャートである。なお、図11に示す入場管理装置50において、前述の実施形態のインターホンシステム1の子機10および親機20と同一の構成要素には、同一の符号を付している。また、図12に示すフローチャートにおいて、前述の実施形態のメイン処理(図7参照)と同一のステップには、同一のステップ番号を付している。
【0081】
図11に示す入場管理装置50は、セキュリティ目的で建物や部屋の入口に設置され、建物や部屋に入場しようとする人間が予め許可されている登録者本人であると認証された場合にのみ、電気錠を開錠する装置である。図11に示すように、入場管理装置50は、前述のインターホンシステム1の子機10と親機20の構成を併せ持つ。
【0082】
具体的には、入場管理装置50は、子機10に設けられていたスピーカ112、カメラ113、操作パネル114、人感センサ116、および赤外LED照明117、ならびに親機20に設けられていたCPU201、ROM202、RAM203、およびフラッシュROM220を備えている。これらの構成および機能は前述の実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。入場管理装置50には、さらに、入口のドアをモータ等を用いて電気的に施開錠する電気錠51が接続されている。
【0083】
図12を参照して、入場管理装置50で行われるメイン処理について説明する。入場管理装置50では、インターホンシステム1と同様に、来訪者と入場管理装置50との距離に応じて、顔特徴データ、虹彩データおよび筆跡データによる認証処理が順に行われ、来訪者が登録者であると認証された時点で電気錠51が開錠される。図12のメイン処理は、前述のインターホンシステム1の親機20で行われるメイン処理(図7参照)と一部が共通しているため、異なる処理についてのみ簡単に説明する。
【0084】
具体的には、図12に示すように、ステップS1〜S5、ステップS10、およびステップS15の処理は、前述の実施形態のメイン処理(図7参照)と同一である。そして、図7のステップS20、ステップS31〜S33の処理に代えて、次のような処理が行われる。
【0085】
まず、ステップS10またはステップS15で顔特徴データ、虹彩データ、および筆跡データによる認証処理が行われた後、認証の結果、来訪者が登録者のいずれか1名に特定されているか否かが判断される(S51)。来訪者が登録者であると特定されていれば(S51:YES)、この来訪者の入場は許可されているため、CPU201は、電気錠51を開錠した後(S52)、ステップS1の処理に戻る。一方、認証の結果、登録者ではなく未登録者であると特定されていれば(S51:NO、S53:YES)、入場は許可できないため、CPU201は、エラー音をスピーカ112から出力させた後(S54)、ステップS1の処理に戻る。
【0086】
また、登録者か否かが不明な場合は(S53:NO)、CPU201は、3種類の認証処理がすべて行われたか否かを判断する(S55)。すべて行われても登録者であると判断されていないのであれば(S55:YES)、やはり入場は許可できないためエラー音をスピーカ112から出力させた後(S54)、ステップS1の処理に戻る。まだ行なわれていない認証処理があれば(S55:NO)、ステップS2に戻って処理が繰り返される。
【0087】
この実施形態でも、インターホンシステム1の場合と同様、来訪者と入場管理装置50との距離に応じて、来訪者の個人情報である顔特徴データ、虹彩データ、および筆跡データが順に取得される。そして、取得された個人情報に基づいて認証処理が行われる。したがって、来訪者と入場管理装置50との距離に応じた適切な順番で、複数種類の個人情報を使用することができるため、速やかに認証を行うことができる。特に、来訪者が入口付近の入場管理装置50に近づいていく間に、両者間の距離に応じた適切な順番で認証が行われるため、来訪者が登録者の場合、入口に到達する時には認証が完了している可能性がある。よって、登録者は入口で認証に時間をとられることがなく、速やかな入場が可能となる。なお、この実施形態では、入場管理装置50が、本発明の「個人認証装置」に相当する。
【0088】
また、インターホンシステム1は、必ずしも図1に示すような戸建て住宅に設置されている必要はない。例えば、マンションのような集合住宅、会社、またはビルに設置されていてもよい。
【0089】
前述の実施形態では、個人認証に使用する複数種類の個人情報として、顔特徴データ、虹彩データおよび筆跡データを採用しているが、他の個人情報を採用することも可能である。例えば、前述の実施形態と同様、距離に応じた順番で異なる認証処理を行う場合には、筆跡データに代えて、子機10あるいは入場管理装置50の操作パネル114に来訪者が触れて入力する個人情報である指紋、静脈、掌紋、暗証番号等のデータを採用してもよい。
【0090】
また、複数種類の個人情報を個人認証に使用する場合、必ずしも距離に応じて異なる認証処理を行う必要はなく、被認証者の置かれたその他の環境に応じて異なる認証処理を行えばよい。例えば、明るさや騒音のレベルに応じて異なる認証処理を行ってもよい。例えば、夕暮れ時等、明るさのレベルが下がっていくにつれ、明るさに影響される度合いが小さい個人情報による認証処理を優先して認証を行うようにすることができる。また、このような場合、本人であることが確実な場合の非類似度の第1の閾値を通常よりも低くしてもよい。
【0091】
前述の実施形態では、認証の結果、来訪者が登録者であるか否かが不明な場合に限って次の異なる個人情報による認証処理が行われ、来訪者が未登録者であると判断された場合にはそれ以上の認証処理は行われない。しかしながら、来訪者が未登録者であると判断された場合にも、次の認証処理を行ってもよい。
【0092】
前述の実施形態では、人感センサ116によって、子機10正面の移動物の検知を行っているが、必ずしも人感センサ116を子機10に設ける必要はない。代わりに、カメラ113によって、常時、撮像範囲の撮像を行い、画像の変化によって移動物を検出する構成としてもよい。
【0093】
前述の実施形態では、親機20がフラッシュROM220を備え、そこに記憶された画面のデータや指示音声のデータ等を子機10に送信することにより、子機10での表示や音声出力が行われる。しかしながら、表示画面や指示画面のデータ、指示音声のデータは、必ずしも親機20に記憶しておく必要はなく、子機10にフラッシュROMを設けて記憶しておいてもよい。この場合、親機20からは、データを特定する指示のみが子機10に送信され、子機10のCPU101が、指示に従って表示や音声出力を行う。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】来訪者2とインターホンシステム1の子機10との距離と各種認証処理の適用範囲との関係を示す説明図である。
【図2】子機10の外観正面図である。
【図3】親機20の外観正面図である。
【図4】インターホンシステム1の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】フラッシュROM220が有する記憶エリアの説明図である。
【図6】フラッシュROM220の登録者情報記憶エリア221に記憶されるデータの一例を示す説明図である。
【図7】親機20のメイン処理のフローチャートである。
【図8】図7のメイン処理中に実行される顔・虹彩認証処理のフローチャートである。
【図9】図7のメイン処理中に実行される筆跡認証処理のフローチャートである。
【図10】図7のメイン処理中に実行される室内通知処理のフローチャートである。
【図11】別の実施形態に係る入場管理装置50の電気的構成を示すブロック図である。
【図12】入場管理装置50のメイン処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
1 インターホンシステム
10 子機
113 カメラ
114 操作パネル
20 親機
201 CPU
214 操作パネル
50 入場管理装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人認証装置、個人認証プログラム、および個人認証装置を備えたインターホンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な場面でセキュリティ確保の必要性が高まり、個人の認証を行う技術が注目されている。個人認証技術の中には、例えば、マルチモーダル認証と呼ばれる、複数種類の生体情報を用いて認証を行う技術がある。このような複数種類の情報を用いた個人認証の場合、被認証者から取得された複数種類の情報がすべて処理されるため、認証精度は高くなるが、認証処理に時間がかかる場合がある。そこで、例えば、特許文献1で提案されている複合認証システムは、登録者毎に予め登録されている、複数種類の情報をそれぞれ用いて認証を行った場合の認証性能に基づいて、複数種類の情報を認証に使用する順番を決定する。そして、決定された順番で認証を行うことにより、登録者を速やかに認証することを可能とする。
【特許文献1】特開2003−186836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の複合認証システムでは、被認証者が登録者である場合には、被認証者に対応して各情報を用いて認証を行った場合の認証性能が予め登録されているため、この認証性能に基づいて、認証を行う順番を決定することができる。しかしながら、認証性能は、各情報の登録時と認証時に被認証者が置かれた環境(例えば、被認証者と認証手段との距離、外光や周囲の音のレベル)が異なれば、変動する可能性がある。また、被認証者が登録者でない場合、各情報を用いた場合の認証性能は登録されていない。よって、認証性能に基づいて、複数種類の情報を認証に使用する順番を適切に決定することはできない場合がある。
【0004】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、複数種類の情報を用いて認証を行う場合に、適切な順番で速やかに認証を行うことができる個人認証装置、個人認証プログラム、および個人認証装置を備えたインターホンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の個人認証装置は、複数種類の個人情報の少なくとも1種類を用いて個人の認証を行う個人認証装置であって、前記複数種類の個人情報をそれぞれ用いて個人認証を行う複数の認証手段と、被認証者が現在置かれている環境に応じて、前記被認証者の前記複数種類の個人情報のいずれか1種類を、被認証者情報として取得する被認証者情報取得手段を備え、前記複数の認証手段のうち、認証に用いる個人情報が前記被認証者情報と同じ種類である認証手段が、前記被認証者情報と、複数の人物の各々に対応する前記複数種類の個人情報を記憶する個人情報記憶手段に記憶された前記被認証者情報と同じ種類の個人情報とを照合することによって被認証者の認証を行い、前記認証手段による認証結果により、前記被認証者を前記複数の人物のいずれか1名に特定できない場合に、前記被認証者情報取得手段は、前記環境に応じた前記被認証者情報を新たに取得し、前記複数の認証手段のうち、認証に用いる個人情報が前記被認証者情報取得手段によって新たに取得された前記被認証者情報と同じ種類である認証手段が、前記個人情報記憶手段に記憶された新たに取得された前記被認証者情報と同じ種類の個人情報と前記被認証者情報とを照合することによって、新たに被認証者の認証を行うことを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る発明の個人認証装置では、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記認証手段による前記認証結果が、前記被認証者が前記複数の人物のいずれかに該当するか否かが不明であることを示す場合に、前記被認証者情報取得手段は、前記環境に応じて前記被認証者情報を新たに取得することを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る発明の個人認証装置では、請求項1または2に記載の発明の構成に加え、前記認証手段による前記認証結果が、前記被認証者が前記複数の人物のいずれにも該当しないことを示す場合に、前記個人情報記憶手段に、前記被認証者情報取得手段によって取得された前記被認証者情報を登録する個人情報登録手段をさらに備えている。
【0008】
請求項4に係る発明の個人認証装置では、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記環境は、前記被認証者情報の基となる情報である基礎情報を前記被認証者から取得する基礎情報取得手段と前記被認証者との距離であり、前記被認証者情報取得手段は、前記被認証者情報として、前記距離に応じた種類の個人情報を、前記基礎情報取得手段によって取得された前記基礎情報から取得することを特徴とする。
【0009】
請求項5に係る発明の個人認証プログラムは、請求項1〜4のいずれかに記載の個人認証装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0010】
請求項6に係る発明のインターホンシステムは、室外に設置される子機と、前記子機に接続され、室内に設置される親機とを備えたインターホンシステムであって、前記親機は、請求項1〜3のいずれかに記載の個人認証装置と、前記室内に情報を通知する通知手段と、前記通知手段を制御して、前記認証手段による認証結果を通知させる通知制御手段を備えている。
【0011】
請求項7に係る発明のインターホンシステムでは、請求項6に記載の発明の構成に加え、前記子機は、前記被認証者情報の基となる情報である基礎情報を取得する基礎情報取得手段を備え、前記環境は、前記子機と前記被認証者との距離であり、前記被認証者情報取得手段は、前記被認証者情報として、前記距離に応じた種類の個人情報を、前記基礎情報取得手段によって取得された前記基礎情報から取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明の個人認証装置によれば、被認証者が置かれている環境に応じた被認証者情報が取得され、複数の認証手段のうち、取得された被認証者情報と同じ種類の個人情報を用いて認証を行う認証手段によって認証が行われる。そして、認証により、被認証者を、個人情報記憶手段に個人情報が記憶されている人物のいずれかに1名に特定できない場合には、被認証者の置かれた環境に応じた被認証者情報が新たに取得され、再び認証が行われる。つまり、被認証者の置かれた環境が変化すると、被認証者の認証に使用される個人情報の種類が変化することになる。よって、被認証者の置かれた環境に応じた適切な順番で複数種類の個人情報を使用することができるため、速やかに認証を行うことができる。また、必ずしも複数種類の個人情報をすべて取得して認識に用いる必要はないため、装置に要求される処理能力や被認証者に与える負荷を軽減することができる。
【0013】
請求項2に係る発明の個人認証装置によれば、被認証者情報と同じ種類の個人情報を認証に用いる認証手段によって、被認証者が複数の人物のいずれかに該当するか否かが不明な場合にのみ、環境に応じた認証処理が繰り返される。したがって、請求項1に記載の発明の効果に加え、より高い認証精度で速やかに処理を完了することができる。
【0014】
請求項3に係る発明の個人認証装置によれば、被認証者が、個人情報記憶手段に個人情報が記憶されている複数の人物のいずれにも該当しないと認証された場合には、被認証者取得手段によって取得された被認証者情報が、個人情報記憶手段に登録される。したがって、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、別途、個人情報記憶手段に被認証者情報を記憶させる必要がなく、また、その後の認証処理に用いることができる。
【0015】
請求項4に係る発明の個人認証装置によれば、被認証者から基礎情報を取得する基礎情報取得手段と被認証者との距離に応じた種類の個人情報が、被認証者情報として取得され、認証に使用される。したがって、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の効果に加え、被認証者が基礎情報取得手段に近づいていく間に、両者間の距離に応じた適切な順番で複数種類の個人情報を使用することができるため、速やかに認証を行うことができる。
【0016】
請求項5に係る個人認証プログラムは、請求項1〜4のいずれかに記載の個人認証装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させることができる。したがって、請求項1〜4のいずれかに記載の発明の効果を奏することができる。
【0017】
請求項6に係る発明のインターホンシステムによれば、親機で速やかな個人認証を行い、その結果が室内に通知される。したがって、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の効果に加え、室内にいる人間は、来訪者の情報を速やかに得ることができ、適切な応対が可能となる。
【0018】
請求項7に係る発明のインターホンシステムによれば、被認証者が子機に近づいていく間に、両者間の距離に応じた適切な順番で複数種類の個人情報を使用して、速やかな認証が行われる。したがって、請求項6に記載の発明の効果に加え、室内にいる人間は、来訪者が子機に到達する前に来訪者の情報を得られる場合があり、より適切な応対が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、これらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成、各種処理のフローチャートなどは、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0020】
まず、図1〜図10を参照して、本発明に係る個人認証装置をインターホンシステムに適用した一実施の形態について説明する。最初に、図1を参照して、インターホンシステム1の概略構成と、インターホンシステム1で行われる処理の概要について説明する。図1は、来訪者2とインターホンシステム1の子機10との距離と各種認証処理の適用範囲との関係を示す説明図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のインターホンシステム1は、住宅7に設置されている。より具体的には、インターホンシステム1は、住宅7の戸外、例えば玄関付近に設置された子機10と、信号線30で子機10に接続され、室内に設置された親機20とを備えている。子機10と親機20との間で通話が可能であるため、住宅7の室内に居る者(以下、室内対応者という)は、入口を開けることなく室外の来訪者2に応対することができる。
【0022】
詳細は後述するが、子機10はカメラ113(図2参照)を備えている。そして、親機20は、カメラ113によって撮像された来訪者の画像に基づいて、顔特徴データによる認証処理、および虹彩データによる認証処理を行うことができる。さらに、子機10は、タッチパッドが内蔵された操作パネル114(図2参照)を備えている。そして、来訪者2によってタッチペン115(図2参照)を用いて操作パネル114への書き込み入力が行われると、親機20は、筆跡データによる認識処理も行うことができる。すなわち、親機20は、複数の認証方法によって、個人認証を行うことができる個人認証装置である。
【0023】
撮像手段の性能にもよるが、一般的に、顔特徴データによる認証方法は、被認証者と画像を撮像する撮像手段との距離が3m程度離れていても適用可能である。一方、虹彩データによる認証方法を適用するには、被認証者と撮像手段との距離が0.5m程度以内であることが必要である。つまり、顔特徴データによる認証方法の方が、虹彩データによる認証方法よりも長距離での適用が可能である。また、筆跡データによる認証方法を適用するには、被認証者が入力手段に実質的に接触する必要がある。すなわち、両者の距離は0mである。そこで、本実施形態では、カメラ113の撮像範囲内で顔特徴データによる認証が可能な範囲内、且つ、虹彩データによる認証が不可能な範囲が顔特徴認証範囲A1、虹彩データによる認証が可能な範囲が虹彩認証範囲A2、子機10との距離が0mの範囲、つまり来訪者2が子機10と実質的に接触状態にある位置が筆跡認証範囲A3とされている。
【0024】
住宅7を訪問する来訪者2は、図1に示すように、住宅7に向かって歩いてくるため、来訪者2と子機10との距離は徐々に縮まっていく。つまり、来訪者2は、顔特徴認証範囲A1、虹彩認証範囲A2、および筆跡認証範囲A3に順に進入することになる。そこで、親機20では、来訪者がいる範囲、すなわち子機10との距離に応じて認証方法が切り替えられる。具体的には、来訪者2が顔特徴認証範囲A1に進入すると、A1にいる間は顔特徴データによる認証処理が行われる。来訪者が顔特徴認証範囲A1から虹彩認証範囲A2に進入すると、A2にいる間は虹彩データによる認証処理が行われる。さらに、来訪者2が子機10に到達し、操作パネル114から入力を行うと、筆跡認証範囲A3に到達したことになり、筆跡データによる認証処理が行われる。なお、これらの処理の詳細については後述する。
【0025】
以下に、図2〜図6を参照して、インターホンシステム1の構成要素である子機10および親機20の構成について説明する。図2は、子機10の外観正面図である。図3は、親機20の外観正面図である。図4は、インターホンシステム1の電気的構成を示すブロック図である。図5は、フラッシュROM220が有する記憶エリアの説明図である。図6は、フラッシュROM220の登録者情報記憶エリア221に記憶されるデータの一例を示す説明図である。
【0026】
図2を参照して、子機10の物理的構成について説明する。図2に示すように、子機10は、略直方体形状の筐体105を備えており、筐体105の正面(来訪者に対向する面)の下半分には、操作パネル114が設けられている。操作パネル114の上方左右に、マイク111、スピーカ112がそれぞれ設けられている。さらに、マイク111およびスピーカ112の上方には、一対の赤外LED照明117が設けられている。筐体105正面の上方中央部には、カメラ113が設けられている。また、筐体105には、付属品であるタッチペン115がコードでつながっている。
【0027】
マイク111は、入力された来訪者の音声を音声信号に変換し、通信装置150(図4参照)を介して親機20に出力する機器である。スピーカ112は、親機20から入力された音声信号を、音声に変換して出力する機器である。カメラ113は、例えば、周知のCCDカメラであり、子機10の正面の所定の撮像範囲を撮像し、撮像した画像の画像信号を、通信装置150を介して親機20に出力する。所定の撮像範囲は、撮像時に子機10の正面に対向して立った来訪者の顔が位置すると予測される領域を含むように予め設定されている。
【0028】
操作パネル114には、親機20から送信される画像信号に基づき表示が行われる液晶パネル、液晶パネルを駆動する駆動回路、ならびに入力位置および圧力を検知可能な入力装置であるタッチパッドが内蔵された表示装置である。操作パネル114には、例えば、図2に示すように、来訪者への指示が表示される。また、操作パネル114には、後述する処理の過程で、氏名の入力欄が表示される。来訪者が、筐体105に付属するタッチペン115または指を用いて操作パネル114に触れると、その位置および圧力がタッチパッドにより検知され、出力される。赤外LED照明117は照度センサを備えており、検出された照度が所定の閾値より低い場合に、子機10近傍を照明するために点灯する。
【0029】
図4を参照して、子機10の電気的構成について説明する。図4に示すように、子機10は、CPU101、ROM102、RAM103、マイク111、スピーカ112、カメラ113、操作パネル114、人感センサ116、赤外LED照明117、および通信装置150を備えており、これらはすべてバスで相互に接続されている。
【0030】
CPU101は、子機10全体の制御を司る。ROM102は、子機10の基本的な動作に必要なプログラムやそのための設定値を記憶している。CPU101は、ROM102に記憶されたプログラムに従って、子機10の動作を制御する。RAM103は、各種データを一時的に記憶するための記憶装置である。
【0031】
人感センサ116は、子機10正面の所定領域内にある物体の動きを検知するセンサである。人感センサ116として、例えば、物体に対して赤外線を発射し、反射された赤外線の受光量の変化に基づいて物体を検知する赤外線センサを採用することができる。他に、超音波を利用する人感センサ等を採用してもよい。人感センサ116は、子機10から、図1に示す顔特徴認証範囲A1の外側の境界までの領域を検知範囲とする。すなわち、来訪者が顔特徴認証範囲A1に来訪者が進入すると同時に来訪者を検知することができる。人感センサ116は、常時移動物の検知を行っており、その結果を示す信号を、通信装置150を介して親機20に送信している。通信装置150は、親機20との間で、信号線30を介して、制御信号、画像信号、および音声信号を含む各種信号の送受信を行う装置である。
【0032】
図3を参照して、親機20の物理的構成について説明する。図3に示すように、親機20は、略直方体形状の筐体205を備えている。筐体205の正面最下部には、応答ボタン215が設けられている。応答ボタン215の上方には、マイク211およびスピーカ212が設けられている。さらに、マイク211およびスピーカ212の上方には、操作パネル214が設けられている。
【0033】
マイク211は、室内対応者の音声を音声信号に変換し、通信装置250(図2参照を介して子機10に出力する機器である。スピーカ212は、子機10から入力された音声信号を音声に変換して出力する機器である。操作パネル214は、例えば、液晶パネル、駆動回路、ならびに入力位置および圧力を検知可能な入力装置であるタッチパッドが内蔵された表示装置である。操作パネル214に表示される画面は、来訪者に関する情報や、入力用のボタン等が表示される情報表示領域241と、子機10のカメラ113によって撮像された撮像領域の画像が表示される画像表示領域242を含む。応答ボタン215は、通信装置250および信号線30を介して子機10との通話を可能とするボタンである。通信装置250は、子機10との間で、信号線30を介して、制御信号、画像信号、および音声信号を含む各種信号の送受信を行う装置である。
【0034】
図5および図6を参照して、フラッシュROM220について説明する。フラッシュROM220は、不揮発性の半導体メモリである。フラッシュROM220は、例えば、図3に示すように、登録者情報記憶エリア221、表示画面記憶エリア222、通知音声記憶エリア223を含む複数の記憶エリアを備えている。
【0035】
登録者情報記憶エリア221には、複数の人物について、各個人に固有の情報が記憶されている。例えば図6に示すように、登録者情報記憶エリア221には、ID欄、氏名欄、顔特徴データ欄、虹彩データ欄、筆跡データ欄、および前回来訪日欄が設けられている。
【0036】
ID欄には、各個人を識別するための固有情報であるIDが記憶される。氏名欄には、顔特徴データ、虹彩データおよび筆跡データの取得元の人物(以下、登録者という)の氏名が記憶される。顔特徴データ欄には、顔特徴データとして、例えば、眉、目、鼻、口等、顔の特徴点の位置や形状を示す数値データが記憶されている。なお、本実施形態では、目、鼻、口に対応する特徴点のデータが、顔特徴データとして採用されているものとする。虹彩データ欄には、虹彩データとして、例えば、登録者の目の虹彩の模様を示すデータが記憶されている。筆跡データ欄には、筆跡データとして、例えば、ペン先の座標や筆庄を一定時間間隔でサンプリングして得られる時系列データが記憶される。前回来訪日欄には、前回来訪日として、登録者が前回このインターホンシステム1が設置されている住宅7を訪問した日付が記憶される。
【0037】
なお、以下では、各登録者の氏名、顔特徴データ、虹彩データ、筆跡データ、および前回来訪日を総称して、登録者情報というものとする。また、登録者情報記憶エリア221に記憶されている上記の情報のうち、IDおよび前回来訪日以外は、適宜、親機20のユーザまたはCPU201によって登録される。つまり、親機20のユーザは、住宅7の住民、親戚、友人、近隣の住人等、住宅7を来訪する可能性が高い人物の情報を予め登録しておくことができる。また、本実施形態では、登録されていない人物が来訪した場合には、後述する室内通知処理(図10参照)において、CPU201により登録者情報が新規登録される。IDは、登録者情報が新規登録される際にCPU201により付与される情報であり、前回来訪日は、登録者が来訪したと認識された際、CPU201により新規登録または自動更新される情報である。
【0038】
図5に示す表示画面記憶エリア222には、親機20の操作パネル214に表示させる画面のテンプレートが記憶されている。詳細は後述するが、操作パネル214には、例えば、図3に示すように、情報表示領域241や画像表示領域242を有する画面が表示される。本実施形態では、操作パネル214に表示される画面は複数種類あるため、表示画面記憶エリア222には、複数の表示画面のテンプレートが記憶されている。
【0039】
通知音声記憶エリア223には、親機20のスピーカ212または子機10のスピーカ112に出力させる音声の音声データが記憶されている。記憶されている音声データとして、例えば、子機10のスピーカ112から出力される、来訪者に対して操作パネル114への名前の書込み入力を促す音声の音声データが挙げられる。
【0040】
以下に、図7〜図10を参照して、インターホンシステム1の親機20において実行される処理について説明する。図7は、親機20のメイン処理のフローチャートである。図8は、図7のメイン処理中に実行される顔・虹彩認証処理のフローチャートである。図9は、図7のメイン処理中に実行される筆跡認証処理のフローチャートである。図10は、図7のメイン処理中に実行される室内通知処理のフローチャートである。なお、図7〜図10に示す処理は、ROM202に記憶されたプログラムに従って、CPU201が実行する。
【0041】
図7に示すメイン処理は、親機20の電源がONにされると開始され、電源がONの間は継続して繰り返され、電源がOFFにされた時点で終了する。まず、リセット処理が行われる(S1)。具体的には、RAM203に記憶されている情報がすべて消去される。続いて、子機10の操作パネル114が来訪者によって操作され、入力が行われたか否かが判断される(S2)。この判断は、操作パネル114からの入力が検知されたことを示す信号が子機10から受信されたか否かに基づいて行われる。操作パネル114からの入力が行われていないと判断された場合には(S2:NO)、CPU201は、子機10の人感センサ116によって、移動物、すなわち来訪者と思われる物体が検知されたことを示す信号が子機10から親機20に入力されたか否かを判断する(S3)。移動物が検知されなければ(S3:NO)、CPU201は操作パネル114から入力がされたか否かの判断に戻る(S2)。
【0042】
操作パネル114が操作されない間に移動物が検知された場合には(S2:NO、S3:YES)、通信装置250により、カメラ113による撮像を開始させるための制御信号が、信号線30を介して子機10に対して送信される(S4)。親機20からの制御信号を受信した後、子機10では、カメラ113が常時撮像を行う。カメラ113から出力された画像信号は、通信装置150により、信号線30を介して親機20に送信される。親機20では、別途実行されるプログラムに従って、通信装置250により受信された画像信号を操作パネル214に表示可能なデータに変換する処理が行われる。つまり、子機10のカメラ113で撮像された画像がリアルタイムで操作パネル214に表示可能な状態となる。
【0043】
また、CPU201は、子機10から送信され、通信装置250によって受信された画像信号の1フレームを取得し、撮像領域の静止画(以下、撮影画像という)を生成する(S5)。生成された撮影画像は、RAM203に記憶される。
【0044】
続いて、顔・虹彩認証処理が行われる(S10および図8)。顔・虹彩認証処理では、取得した撮影画像から取得できるデータに応じた認証処理が行われる。顔・虹彩認証処理について、図8を参照して説明する。
【0045】
図8に示すように、まず、図7に示すメイン処理のステップS5で生成され、RAM203に記憶された撮影画像から、顔領域が検出される(S101)。顔領域の検出には、例えば、予め記憶した顔のパターンとのマッチングを行う方法や、肌色領域を検出する方法を採用することができるが、他のいかなる公知の方法を採用してもよい。しかし、来訪者がまだ子機10から遠く離れており、図1に示す顔特徴認証範囲A1内にまだ到達していない場合、顔領域は検出できない(S102:NO)。よって、この場合は顔特徴データや虹彩データの抽出が不可能であるため、顔・虹彩認証処理はそのまま終了し、図7に示すメイン処理に戻る。
【0046】
一方、来訪者が子機10に向かって近づいてきて、図1に示す顔特徴認証範囲A1内に進入しており、顔領域の検出に成功した場合には(S102:YES)、検出された顔領域から来訪者の顔特徴データが抽出される(S103)。具体的には、顔領域から、顔の特徴点である目、鼻および口の特徴点が抽出され、これらの位置や形状を示す数値データが来訪者の顔特徴データとして求められる。なお、来訪者がサングラスをかけていたり、マスクをかけていたりする場合、目、鼻および口の特徴点のすべてが抽出できない場合がありうるが、このような場合は、抽出できた特徴点のデータのみ求めればよい。
【0047】
さらに、虹彩データが抽出される(S104)。具体的には、例えば、明るさの違い等を用いて虹彩の外側の境界および内側の境界を検出し、顔領域の画像から虹彩画像を切り出し、虹彩の模様(濃淡の変化)をコード化して所定のデータに変換することにより、来訪者の虹彩データを取得することができる。しかし、来訪者がまだ図1に示す顔特徴認証範囲A1内におり、虹彩認証範囲A2に到達していなければ、虹彩データは抽出できない(S105:NO)。この場合、ステップS103で抽出された顔特徴データによる認証処理が行われる(S107)。
【0048】
具体的には、例えば、フラッシュROM220の登録者情報記憶エリア221(図6参照)から登録者の顔特徴データが順に読み出され、来訪者の顔特徴データと照合されて、非類似度DFが求められる。そして、非類似度DFと、本人であることが確実な場合の非類似度の第1の閾値DF1および他人であることが確実な場合の非類似度の第2の閾値DF2との関係により、認識結果が決定される。なお、第1の閾値DF1と第2の閾値DF2は予め収集されたデータを統計的に処理することにより定められており、DF1<DF2の関係にある。
【0049】
非類似度DFが第1の閾値DF1よりも小さければ、来訪者は照合相手の登録者本人であると決定され、非類似度DFが第2の閾値DF2よりも大きければ、来訪者は照合相手の登録者ではない、すなわち他人であると決定される。また、非類似度DFが、第1の閾値DF1以上、且つ、第2の閾値DF2以下である場合には、来訪者は照合相手の登録者であるか否かが不明であると決定される。顔特徴データによる認証結果は、RAM203に記憶される。
【0050】
来訪者はある登録者本人であると決定された場合、来訪者は登録者であることを示す情報と来訪者であると特定された登録者のIDとが、顔特徴データによる認証結果として記憶される。すべての登録者の顔特徴データについて、非類似度DFが第2の閾値DF2より大きかった場合、来訪者はいずれの登録者とも他人の関係にある。すなわち、来訪者は未登録者であるから、未登録者であることを示す情報が、顔特徴データによる認証結果として記憶される。また、少なくとも1名の登録者の顔特徴データとの非類似度DFが第1の閾値DF1以上、且つ、第2の閾値DF2以下であった場合、来訪者は該当する登録者である可能性がある。すなわち、来訪者の候補が存在する。よって、来訪者は不明であることを示す情報と来訪者候補である登録者のIDとが、顔特徴データによる認証結果として記憶される。なお、来訪者候補が複数いる場合には、複数のIDが記憶される。顔特徴データによる認証処理の後(S107)、顔・虹彩認証処理は終了し、図7に示すメイン処理に戻る。
【0051】
一方、来訪者がさらに子機10に近づいてきて、図1に示す顔特徴認証範囲A1から虹彩認証範囲A2に進入しており、虹彩データの抽出に成功した場合(S105:YES)、虹彩データによる認証処理が行われる(S106)。具体的には、フラッシュROM220の登録者情報記憶エリア221(図6参照)から登録者の虹彩データが順に読み出され、来訪者の虹彩データと照合されて、非類似度DIが求められる。そして、前述した顔特徴データによる認証処理と同様、本人であることが確実な場合の非類似度の第1の閾値DI1および他人であることが確実な場合の非類似度の第2の閾値DI2との関係により、虹彩データによる認識結果が決定され、RAM203に記憶される。虹彩データによる認証処理の後(S106)、顔・虹彩認証処理は終了し、図7に示すメイン処理に戻る。
【0052】
図7に示すメイン処理では、顔・虹彩認証処理の後(S10)、室内通知処理が行われる(S20および図10)。室内通知処理では、これまでに行われた顔特徴データ、虹彩データ、および筆跡データによる認証結果を通知する処理が行われる。図10を参照して、室内通知処理について説明する。
【0053】
図10に示すように、まず、来訪者が登録者であると特定されているか否かが判断される(S201)。つまり、顔・虹彩認証処理(図8参照)での顔特徴データまたは虹彩データによる認証の結果、もしくは後述する筆跡認証処理(図9参照)での筆跡データによる認証の結果、来訪者がいずれかの登録者本人であると決定されたか否かが判断される。来訪者は登録者であることを示す情報と登録者のIDとがいずれかの認証処理による認識結果としてRAM203に記憶されている場合には、来訪者が登録者であると判断される(S201:YES)。そこで、CPU201は、親機20のスピーカ212から呼出音を出力させるとともに、操作パネル214に来訪者の画像と認証結果を表示させることにより、室内対応者に対して来訪者に関する情報を通知する(S202)。
【0054】
具体的には、例えば、フラッシュROM220の表示画面記憶エリア222から、来訪者が登録者の場合の画面のテンプレートが読み出される。そして、登録者のIDに従って登録者情報記憶エリア221から読み出された登録者の氏名および前回来訪日、ならびに子機10から送信された画像信号から生成された表示用のデータに基づいて、表示画面の表示用データが生成され、操作パネル214に表示される。なお、画面の生成方法は、以下に説明する他の画面でも同様である。ステップS202で表示される画面は、例えば図3に示すようになる。つまり、情報表示領域241には、認識結果として、来訪者が登録者である旨とその氏名および前回来訪日とが表示され、画像表示領域242には、来訪者の画像が表示される。室内への通知の後(S202)、室内処理は終了し、図7に示すメイン処理に戻り、ステップS31へ進む。
【0055】
来訪者が登録者であると特定されていない場合(S201:NO)、来訪者は未登録者であると特定されているか否かが判断される(S205)。つまり、顔・虹彩認証処理(図8参照)での顔特徴データまたは虹彩データによる認証の結果、もしくは後述する筆跡認証処理(図9参照)での筆跡データによる認証の結果、来訪者がいずれの登録者本人とも他人であると決定されたか否かが判断される。来訪者は未登録者であることを示す情報がいずれかの認証処理による認識結果としてRAM203に記憶されている場合には、来訪者が未登録者であると判断される(S205:YES)。
【0056】
この場合、CPU201は、親機20のスピーカ212から呼出音を出力させるとともに、操作パネル214に来訪者の画像と認識結果を表示させることにより、室内対応者に対して来訪者に関する情報を通知する(S206)。このときの表示画面は、例えば、図3に示す情報表示領域241には、認識結果として「来訪者は未登録者です」というメッセージのみが表示され、画像表示領域242に来訪者の画像が表示された画面となる。
【0057】
来訪者は未登録者であるから、フラッシュROM220の登録者情報記憶エリア221(図6参照)には、この来訪者のデータは登録されていない。そこで、これまでに取得できたデータを基にして登録者情報を新規登録する処理が行われる(S207)。具体的には、この来訪者に対して新たなIDが割り当てられ、顔・虹彩認証処理(図8参照)のステップS103およびS104で取得された顔特徴データおよび虹彩データが、それぞれ、対応する顔特徴データ欄および虹彩データ欄に保存される。また、後述する筆跡認証処理(図9参照)のステップS153で取得された筆跡データが、対応する筆跡データ欄に記憶される。筆跡データが取得できていれば、記入された氏名が、氏名欄に記憶される。さらに、現在の日付が、前回来訪日欄に保存される。登録者情報の新規登録後(S207)、室内通知処理は終了し、図7に示すメイン処理に戻り、ステップS31へ進む。
【0058】
このように、未登録者のデータが取得された場合には登録者情報記憶エリア221に新規登録していくことにより、親機20のユーザが、別途、登録者情報を記憶させる手間を省くことができる。また、ここで新規登録されたデータを、その後の認証処理に用いることができる。
【0059】
なお、顔特徴データ、虹彩データ、および筆跡データは、来訪者が子機10に近づいてくるにつれ、この順に取得される。よって、顔特徴データによる認証処理によって来訪者が登録者または未登録者であると特定されてしまえば、この時点では虹彩データと筆跡データは取得できていない。また、虹彩データによる認証処理によって来訪者が登録者または未登録者であると特定されてしまえば、この時点では筆跡データは取得できていない。よって、このような場合、ステップS207で新規登録される登録者情報は一部のみとなるため、同一人物が次に来訪した場合には、登録されているデータでのみ認証処理を行えばよい。また、何度か来訪する間に、登録されていないデータが収集できた場合には、新たに収集されたデータを登録者情報記憶エリア221に追加で登録していけばよい。
【0060】
来訪者が未登録者であるとも特定されていない場合(S205:NO)、筆跡データによる認証結果がRAM203に記憶されているか否かに基づいて、筆跡データによる認証処理が済んでいるか否かが判断される(S211)。すでに来訪者が子機10まで到達しており、筆跡データによる認証処理が済んでいる場合(S211:YES)、顔・虹彩認証処理(図8参照)での顔特徴データおよび虹彩データによる認証の結果、ならびに後述する筆跡認証処理(図9参照)での筆跡データによる認証の結果、来訪者は、いずれの場合も登録者か否かが不明であると判断されていることになる。
【0061】
この場合、CPU201は、親機20のスピーカ212から呼出音を出力させるとともに、操作パネル214に来訪者の画像と認識結果を表示させることにより、室内対応者に対して来訪者に関する情報を通知する(S212)。このとき、例えば、図3に示す情報表示領域241に、認識結果として「来訪者は以下の登録者の可能性があります。」というメッセージが表示される。また、「この中に来訪者がいれば、選択してください。」というメッセージと、来訪者候補の氏名を示す選択ボタンと、「該当なし」ボタンとが表示される。画像表示領域242には、来訪者の画像があわせて表示される。なお、来訪者候補の氏名は、顔・虹彩認証処理(図8参照)のステップS106またはS107において、来訪者候補のIDがRAM203に記憶されているので、このIDに対応する氏名をフラッシュROM220の登録者情報記憶エリア221から取得すればよい。
【0062】
選択ボタンが選択され、来訪者候補が選択された場合には(S213:YES)、選択された登録者に対応してフラッシュROM220の登録者情報記憶エリア221に記憶されている登録者情報が更新される(S215)。具体的には、顔・虹彩認証処理(図8参照)のステップS103およびS104、ならびに筆跡認証処理(図9参照)のステップS153において、顔特徴データ、虹彩データ、および筆跡データが取得されていれば、取得されたデータによって対応するデータが上書きされる。さらに、現在の日付が、前回来訪日欄に上書きされる。登録者情報の更新後(S214)、室内通知処理は終了し、図7に示すメイン処理に戻り、ステップS31へ進む。
【0063】
一方、選択ボタンではなく「該当なし」ボタンが選択された場合には(S213:NO)、これまでに取得できたデータを基にして、前述したように、登録者情報を新規登録する処理が行われる(S207)。その後、室内通知処理は終了し、図7に示すメイン処理に戻り、ステップS31へ進む。
【0064】
このように、室内通知処理では、来訪者の画像表示とあわせて、室内対応者に対して、来訪者が登録者なのか、未登録者なのか、または不明なのかが通知されるため、室内対応者は、来訪者が警戒すべき人物か否かを判断することが容易となる。特に、顔特徴データや虹彩データによる認証処理で、来訪者が登録者または未登録者であると決定されれば、室内対応者は来訪者が子機10に到達する前に来訪者の情報を得られるので、より適切な応対が可能となる。
【0065】
また、ステップS211において、まだ筆跡データによる認証は済んでいないと判断された場合には(S211:NO)、図7に示すメイン処理に戻り、ステップS2に進む。図1に示す顔特徴認証範囲A1または虹彩認証範囲A2を通過中に行われる顔・虹彩認証処理(図8参照)において、来訪者が登録者であるか否かが不明であると判断されたまま、室内通知処理(S20)を経て処理が再びステップS2に戻った場合、来訪者はそのまま子機10に対面して立つ位置まで近づいてくる。
【0066】
子機10の操作パネル114には、図2に示すように「御用の方はタッチしてください」という指示が表示されているので、来訪者は指示に従い操作パネル114に指またはタッチペン115で触れる。すなわち、来訪者は筆跡認証範囲A3に到達したことになる。すると、操作パネル114からの入力を示す信号が親機20で受信され(S2:YES)、筆跡認証処理が行われる(S15および図9)。筆跡認証処理では、操作パネル114から入力されたデータに応じて、筆跡データによる認証処理が行われる。筆跡認証処理について、図9を参照して説明する。
【0067】
図9に示すように、まず、来訪者に対して操作パネル114に名前を記入するように指示するための制御信号とデータが子機10に送信される(S151)。具体的には、フラッシュROM220の表示画面記憶エリア222から名前記入指示画面(図示外)の表示用データが読み出され、通知音声記憶エリア223から指示音声の音声データが読み出されて、通信装置250により子機10に送信される(S151)。これを受信した子機10では、操作パネル114に、名前記入指示画面が表示される。このとき表示される画面には、例えば、「下の枠内にタッチペンであなたのお名前を書いてください。」という名前の入力指示、名前の入力欄、および終了ボタンが表示される。また、スピーカ112からは、「下の枠内にタッチペンであなたのお名前を書いてください。」という音声が出力される。
【0068】
その後、CPU201は、操作パネル114にタッチペン115による入力がなされ、入力受付が完了するまで待機する(S152:NO)。具体的には、画面の終了ボタンが選択されたことを示す信号が入力されるまで待機する。そして、終了ボタンが選択され、入力受付が完了すると(S152:YES)、来訪者によって入力された名前の筆跡データが取得される(S153)。具体的には、入力受付中に入力されたタッチペン115のペン先の入力位置の座標および圧力(筆圧)を一定時間間隔でサンプリングして得られた時系列データが、来訪者の筆跡データとされる。
【0069】
続いて、来訪者候補との筆跡データによる認証処理が行われる(S154)。具体的には、来訪者候補の筆跡データが、フラッシュROM220の登録者情報記憶エリア221(図6参照)から読み出される。そして、来訪者候補の筆跡データと来訪者の筆跡データと照合されて、非類似度DSが求められる。なお、前述したように、顔・虹彩認証処理(図8参照)のステップS106またはS107において、来訪者候補のIDがRAM203に記憶されているので、来訪者候補の筆跡データとして、このIDに対応する筆跡データが読み出されることになる。
【0070】
さらに、前述した顔特徴データによる認証処理と同様、本人であることが確実な場合の非類似度の第1の閾値DS1および他人であることが確実な場合の非類似度の第2の閾値DS2との関係により、認識結果が決定され、RAM203に記憶される。なお、RAM203に来訪者候補のIDが複数記憶されている場合には、複数の来訪者候補の筆跡データが順に読み出されて、照合が行われる。筆跡データによる認証処理の後(S154)、筆跡認証処理は終了し、図7に示すメイン処理に戻り、前述した室内通知処理が行われる(S20)。
【0071】
前述したように、室内通知処理において、顔特徴データ、虹彩データ、または筆跡データによる認証結果に基づいて室内対応者に来訪者の情報が通知された後(S20)、ステップS31では、親機20の応答ボタン215が押下げられたことを示す信号が検知されたか否かが判断される。応答ボタン215が押下げられていない場合(S31:NO)、所定時間(例えば、1分)が経過したか否かが判断される(S32)。例えば、室内通知処理で操作パネル214への表示により、来訪者の情報が通知された際スタートされるタイマによって経過時間を計測し、閾値を超えたか否かで判断すればよい。所定時間が経過しない間は(S32:NO)、CPU201は、応答ボタン215が押下げられたか否かの判断に戻り(S31)、処理を繰り返す。
【0072】
所定時間が経過した場合は(S32:YES)、室内に人がおらず、応答がされないと考えられるので、処理はステップS1に戻り、次の来訪者のために、リセット処理においてRAM203に記憶されている情報がすべて消去される。
【0073】
一方、室内通知処理において室内対応者に来訪者の情報が通知された後、操作パネル214に表示された来訪者の画像および来訪者の情報を確認した上で、来訪者が応答ボタン215を押下げた場合には、その情報が検知される(S31:YES)。この場合、CPU201は、通話開始の処理を行う(S33)。具体的には、CPU201は、別途、子機10との通話に関する親機20の動作を制御するためのプログラムを起動させる。これにより、子機10と親機20の間の通話路が形成され、来訪者と室内対応者の通話が可能となる。そして、処理はステップS1に戻り、次の来訪者のために、リセット処理においてRAM203に記憶されている情報がすべて消去される。
【0074】
以上に説明したように、本実施形態のインターホンシステム1では、住宅7を訪問する来訪者が子機10に近づいてくると、来訪者と子機10との距離に応じて、子機10が備えるカメラ113により撮像される撮像範囲の画像、および操作パネル114における入力位置や圧力に基づいて、来訪者の個人情報である顔特徴データ、虹彩データ、および筆跡データが順に取得される。そして、取得された個人情報に基づいて、認証処理が行われる。つまり、最初に顔特徴データによる認証処理が行われ、その結果、来訪者が登録者であるか否かが不明な場合には、次に虹彩データによる認証処理が行われ、それでも来訪者が登録者であるか否かが不明な場合には、さらに筆跡データによる認証処理が行われることになる。
【0075】
したがって、複数種類の個人情報(顔特徴データ、虹彩データ、および筆跡データ)を使用する場合であっても、来訪者と子機10との距離に応じた適切な順番で、複数種類の個人情報を使用することができるため、速やかに認証を行うことができる。特に、来訪者が子機10に近づいていく間に、両者間の距離に応じた適切な順番で認証が行われるため、室内対応者は来訪者が子機10に到達する前に来訪者の情報を得られる場合があり、より適切な応対が可能となる。
【0076】
また、例えば、顔特徴データによる認証処理で来訪者が登録者または未登録者であると判断されれば、それ以上の認証処理は行われない。よって、必ずしも複数種類の個人情報をすべて取得して認識に用いる必要はないため、親機20に要求される処理能力や来訪者に与える負荷を軽減することができる。また、来訪者が登録者であるか否かが不明な場合にのみ、次の認証処理が行われるため、来訪者が登録者であると判断された場合にのみ処理を終了する方法に比べ、より速やかに処理を完了することができる。
【0077】
本実施形態では、インターホンシステム1の親機20が、本発明の「個人認証装置」に相当する。図8の顔・虹彩認証処理のステップS106およびS107、ならびに図9の筆跡認証処理のステップS154で、それぞれ、来訪者と子機10との距離に応じて顔特徴データ、虹彩データおよび筆跡データによる認証処理を行う親機20のCPU201が、「複数の認証手段」に相当する。図8の顔・虹彩認証処理のステップS103およびS104、ならびに図9の筆跡認証処理のステップS153で、それぞれ、顔特徴データ、虹彩データおよび筆跡データを取得するCPU201が、「被認証者情報取得手段」に相当する。
【0078】
親機20のフラッシュROM220の登録者情報記憶エリア221が、「個人情報記憶手段」に相当し、登録者情報記憶エリア221に記憶されている顔特徴データ、虹彩データおよび筆跡データが、それぞれ「個人情報」に相当する。図10の室内通知処理のステップS207で、取得された顔特徴データ、虹彩データおよび筆跡データを登録者情報記憶エリア221に新規登録するCPU201が、「個人情報登録手段」に相当する。親機20の操作パネル214が、「通知手段」に相当し、図10の室内通知処理のステップS202、S206、およびS212で、操作パネル214に認証結果を表示させるCPU201が、「通知制御手段」に相当する。子機10のカメラ113および操作パネル114が、それぞれ「基礎情報取得手段」に相当し、カメラ113により撮像された画像および操作パネル114から入力されたデータは、「基礎情報」に相当する。
【0079】
なお、前述の実施形態に示される構成や処理は例示であり、各種の変形が可能なことはいうまでもない。例えば、前述の実施形態では、別個の装置である子機10と親機20を備えたインターホンシステム1により、複数種類の個人情報を使用した個人の認証処理を行っている。しかしながら、1つの装置によって、同様の処理を行うことも可能である。このような別の実施形態について、図11および図12を参照して説明する。
【0080】
図11は、別の実施形態に係る入場管理装置50の電気的構成を示すブロック図である。図12は、入場管理装置50のメイン処理のフローチャートである。なお、図11に示す入場管理装置50において、前述の実施形態のインターホンシステム1の子機10および親機20と同一の構成要素には、同一の符号を付している。また、図12に示すフローチャートにおいて、前述の実施形態のメイン処理(図7参照)と同一のステップには、同一のステップ番号を付している。
【0081】
図11に示す入場管理装置50は、セキュリティ目的で建物や部屋の入口に設置され、建物や部屋に入場しようとする人間が予め許可されている登録者本人であると認証された場合にのみ、電気錠を開錠する装置である。図11に示すように、入場管理装置50は、前述のインターホンシステム1の子機10と親機20の構成を併せ持つ。
【0082】
具体的には、入場管理装置50は、子機10に設けられていたスピーカ112、カメラ113、操作パネル114、人感センサ116、および赤外LED照明117、ならびに親機20に設けられていたCPU201、ROM202、RAM203、およびフラッシュROM220を備えている。これらの構成および機能は前述の実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。入場管理装置50には、さらに、入口のドアをモータ等を用いて電気的に施開錠する電気錠51が接続されている。
【0083】
図12を参照して、入場管理装置50で行われるメイン処理について説明する。入場管理装置50では、インターホンシステム1と同様に、来訪者と入場管理装置50との距離に応じて、顔特徴データ、虹彩データおよび筆跡データによる認証処理が順に行われ、来訪者が登録者であると認証された時点で電気錠51が開錠される。図12のメイン処理は、前述のインターホンシステム1の親機20で行われるメイン処理(図7参照)と一部が共通しているため、異なる処理についてのみ簡単に説明する。
【0084】
具体的には、図12に示すように、ステップS1〜S5、ステップS10、およびステップS15の処理は、前述の実施形態のメイン処理(図7参照)と同一である。そして、図7のステップS20、ステップS31〜S33の処理に代えて、次のような処理が行われる。
【0085】
まず、ステップS10またはステップS15で顔特徴データ、虹彩データ、および筆跡データによる認証処理が行われた後、認証の結果、来訪者が登録者のいずれか1名に特定されているか否かが判断される(S51)。来訪者が登録者であると特定されていれば(S51:YES)、この来訪者の入場は許可されているため、CPU201は、電気錠51を開錠した後(S52)、ステップS1の処理に戻る。一方、認証の結果、登録者ではなく未登録者であると特定されていれば(S51:NO、S53:YES)、入場は許可できないため、CPU201は、エラー音をスピーカ112から出力させた後(S54)、ステップS1の処理に戻る。
【0086】
また、登録者か否かが不明な場合は(S53:NO)、CPU201は、3種類の認証処理がすべて行われたか否かを判断する(S55)。すべて行われても登録者であると判断されていないのであれば(S55:YES)、やはり入場は許可できないためエラー音をスピーカ112から出力させた後(S54)、ステップS1の処理に戻る。まだ行なわれていない認証処理があれば(S55:NO)、ステップS2に戻って処理が繰り返される。
【0087】
この実施形態でも、インターホンシステム1の場合と同様、来訪者と入場管理装置50との距離に応じて、来訪者の個人情報である顔特徴データ、虹彩データ、および筆跡データが順に取得される。そして、取得された個人情報に基づいて認証処理が行われる。したがって、来訪者と入場管理装置50との距離に応じた適切な順番で、複数種類の個人情報を使用することができるため、速やかに認証を行うことができる。特に、来訪者が入口付近の入場管理装置50に近づいていく間に、両者間の距離に応じた適切な順番で認証が行われるため、来訪者が登録者の場合、入口に到達する時には認証が完了している可能性がある。よって、登録者は入口で認証に時間をとられることがなく、速やかな入場が可能となる。なお、この実施形態では、入場管理装置50が、本発明の「個人認証装置」に相当する。
【0088】
また、インターホンシステム1は、必ずしも図1に示すような戸建て住宅に設置されている必要はない。例えば、マンションのような集合住宅、会社、またはビルに設置されていてもよい。
【0089】
前述の実施形態では、個人認証に使用する複数種類の個人情報として、顔特徴データ、虹彩データおよび筆跡データを採用しているが、他の個人情報を採用することも可能である。例えば、前述の実施形態と同様、距離に応じた順番で異なる認証処理を行う場合には、筆跡データに代えて、子機10あるいは入場管理装置50の操作パネル114に来訪者が触れて入力する個人情報である指紋、静脈、掌紋、暗証番号等のデータを採用してもよい。
【0090】
また、複数種類の個人情報を個人認証に使用する場合、必ずしも距離に応じて異なる認証処理を行う必要はなく、被認証者の置かれたその他の環境に応じて異なる認証処理を行えばよい。例えば、明るさや騒音のレベルに応じて異なる認証処理を行ってもよい。例えば、夕暮れ時等、明るさのレベルが下がっていくにつれ、明るさに影響される度合いが小さい個人情報による認証処理を優先して認証を行うようにすることができる。また、このような場合、本人であることが確実な場合の非類似度の第1の閾値を通常よりも低くしてもよい。
【0091】
前述の実施形態では、認証の結果、来訪者が登録者であるか否かが不明な場合に限って次の異なる個人情報による認証処理が行われ、来訪者が未登録者であると判断された場合にはそれ以上の認証処理は行われない。しかしながら、来訪者が未登録者であると判断された場合にも、次の認証処理を行ってもよい。
【0092】
前述の実施形態では、人感センサ116によって、子機10正面の移動物の検知を行っているが、必ずしも人感センサ116を子機10に設ける必要はない。代わりに、カメラ113によって、常時、撮像範囲の撮像を行い、画像の変化によって移動物を検出する構成としてもよい。
【0093】
前述の実施形態では、親機20がフラッシュROM220を備え、そこに記憶された画面のデータや指示音声のデータ等を子機10に送信することにより、子機10での表示や音声出力が行われる。しかしながら、表示画面や指示画面のデータ、指示音声のデータは、必ずしも親機20に記憶しておく必要はなく、子機10にフラッシュROMを設けて記憶しておいてもよい。この場合、親機20からは、データを特定する指示のみが子機10に送信され、子機10のCPU101が、指示に従って表示や音声出力を行う。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】来訪者2とインターホンシステム1の子機10との距離と各種認証処理の適用範囲との関係を示す説明図である。
【図2】子機10の外観正面図である。
【図3】親機20の外観正面図である。
【図4】インターホンシステム1の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】フラッシュROM220が有する記憶エリアの説明図である。
【図6】フラッシュROM220の登録者情報記憶エリア221に記憶されるデータの一例を示す説明図である。
【図7】親機20のメイン処理のフローチャートである。
【図8】図7のメイン処理中に実行される顔・虹彩認証処理のフローチャートである。
【図9】図7のメイン処理中に実行される筆跡認証処理のフローチャートである。
【図10】図7のメイン処理中に実行される室内通知処理のフローチャートである。
【図11】別の実施形態に係る入場管理装置50の電気的構成を示すブロック図である。
【図12】入場管理装置50のメイン処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
1 インターホンシステム
10 子機
113 カメラ
114 操作パネル
20 親機
201 CPU
214 操作パネル
50 入場管理装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の個人情報の少なくとも1種類を用いて個人の認証を行う個人認証装置であって、
前記複数種類の個人情報をそれぞれ用いて個人認証を行う複数の認証手段と、
被認証者が現在置かれている環境に応じて、前記被認証者の前記複数種類の個人情報のいずれか1種類を、被認証者情報として取得する被認証者情報取得手段を備え、
前記複数の認証手段のうち、認証に用いる個人情報が前記被認証者情報と同じ種類である認証手段が、前記被認証者情報と、複数の人物の各々に対応する前記複数種類の個人情報を記憶する個人情報記憶手段に記憶された前記被認証者情報と同じ種類の個人情報とを照合することによって被認証者の認証を行い、
前記認証手段による認証結果により、前記被認証者を前記複数の人物のいずれか1名に特定できない場合に、
前記被認証者情報取得手段は、前記環境に応じた前記被認証者情報を新たに取得し、
前記複数の認証手段のうち、認証に用いる個人情報が前記被認証者情報取得手段によって新たに取得された前記被認証者情報と同じ種類である認証手段が、前記個人情報記憶手段に記憶された新たに取得された前記被認証者情報と同じ種類の個人情報と前記被認証者情報とを照合することによって、新たに被認証者の認証を行うことを特徴とする個人認証装置。
【請求項2】
前記認証手段による前記認証結果が、前記被認証者が前記複数の人物のいずれかに該当するか否かが不明であることを示す場合に、前記被認証者情報取得手段は、前記環境に応じて前記被認証者情報を新たに取得することを特徴とする請求項1に記載の個人認証装置。
【請求項3】
前記認証手段による前記認証結果が、前記被認証者が前記複数の人物のいずれにも該当しないことを示す場合に、前記個人情報記憶手段に、前記被認証者情報取得手段によって取得された前記被認証者情報を登録する個人情報登録手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の個人認証装置。
【請求項4】
前記環境は、前記被認証者情報の基となる情報である基礎情報を前記被認証者から取得する基礎情報取得手段と前記被認証者との距離であり、
前記被認証者情報取得手段は、前記被認証者情報として、前記距離に応じた種類の個人情報を、前記基礎情報取得手段によって取得された前記基礎情報から取得することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の個人認証装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の個人認証装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させるための個人認証プログラム。
【請求項6】
室外に設置される子機と、前記子機に接続され、室内に設置される親機とを備えたインターホンシステムであって、
前記親機は、
請求項1〜3のいずれかに記載の個人認証装置と、
前記室内に情報を通知する通知手段と、
前記通知手段を制御して、前記認証手段による認証結果を通知させる通知制御手段を備えたことを特徴とするインターホンシステム。
【請求項7】
前記子機は、前記被認証者情報の基となる情報である基礎情報を取得する基礎情報取得手段を備え、
前記環境は、前記子機と前記被認証者との距離であり、
前記被認証者情報取得手段は、前記被認証者情報として、前記距離に応じた種類の個人情報を、前記基礎情報取得手段によって取得された前記基礎情報から取得することを特徴とする請求項6に記載のインターホンシステム。
【請求項1】
複数種類の個人情報の少なくとも1種類を用いて個人の認証を行う個人認証装置であって、
前記複数種類の個人情報をそれぞれ用いて個人認証を行う複数の認証手段と、
被認証者が現在置かれている環境に応じて、前記被認証者の前記複数種類の個人情報のいずれか1種類を、被認証者情報として取得する被認証者情報取得手段を備え、
前記複数の認証手段のうち、認証に用いる個人情報が前記被認証者情報と同じ種類である認証手段が、前記被認証者情報と、複数の人物の各々に対応する前記複数種類の個人情報を記憶する個人情報記憶手段に記憶された前記被認証者情報と同じ種類の個人情報とを照合することによって被認証者の認証を行い、
前記認証手段による認証結果により、前記被認証者を前記複数の人物のいずれか1名に特定できない場合に、
前記被認証者情報取得手段は、前記環境に応じた前記被認証者情報を新たに取得し、
前記複数の認証手段のうち、認証に用いる個人情報が前記被認証者情報取得手段によって新たに取得された前記被認証者情報と同じ種類である認証手段が、前記個人情報記憶手段に記憶された新たに取得された前記被認証者情報と同じ種類の個人情報と前記被認証者情報とを照合することによって、新たに被認証者の認証を行うことを特徴とする個人認証装置。
【請求項2】
前記認証手段による前記認証結果が、前記被認証者が前記複数の人物のいずれかに該当するか否かが不明であることを示す場合に、前記被認証者情報取得手段は、前記環境に応じて前記被認証者情報を新たに取得することを特徴とする請求項1に記載の個人認証装置。
【請求項3】
前記認証手段による前記認証結果が、前記被認証者が前記複数の人物のいずれにも該当しないことを示す場合に、前記個人情報記憶手段に、前記被認証者情報取得手段によって取得された前記被認証者情報を登録する個人情報登録手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の個人認証装置。
【請求項4】
前記環境は、前記被認証者情報の基となる情報である基礎情報を前記被認証者から取得する基礎情報取得手段と前記被認証者との距離であり、
前記被認証者情報取得手段は、前記被認証者情報として、前記距離に応じた種類の個人情報を、前記基礎情報取得手段によって取得された前記基礎情報から取得することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の個人認証装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の個人認証装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させるための個人認証プログラム。
【請求項6】
室外に設置される子機と、前記子機に接続され、室内に設置される親機とを備えたインターホンシステムであって、
前記親機は、
請求項1〜3のいずれかに記載の個人認証装置と、
前記室内に情報を通知する通知手段と、
前記通知手段を制御して、前記認証手段による認証結果を通知させる通知制御手段を備えたことを特徴とするインターホンシステム。
【請求項7】
前記子機は、前記被認証者情報の基となる情報である基礎情報を取得する基礎情報取得手段を備え、
前記環境は、前記子機と前記被認証者との距離であり、
前記被認証者情報取得手段は、前記被認証者情報として、前記距離に応じた種類の個人情報を、前記基礎情報取得手段によって取得された前記基礎情報から取得することを特徴とする請求項6に記載のインターホンシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−79609(P2010−79609A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247260(P2008−247260)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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