説明

個人認証装置

【課題】利用者が直感的に指の提示形態が分かり、利用者が自然に登録時と認証時に同じ形態で指を提示することを可能とする。
【解決手段】撮像した指生体画像は指生体画像入力手段4に入力される。指位置識別手段5は指位置情報登録ファイル6から予め掌形指生体画像入力手段1で検出された登録者の指位置情報が与えられている。指位置識別手段5は登録者の指位置情報と指位置情報入力手段3から入力される指位置情報とを比較し、入力された指位置情報との類似度の高い登録者を候補者として指生体照合手段7に出力する。指生体照合手段7は指生体情報登録ファイル8から予め掌形指生体画像入力手段1で撮像された登録者の指生体情報が与えられている。指生体照合手段7は前記候補者である登録者の指生体情報と指生体画像入力手段4から入力される指生体情報を比較照合し比較照合結果を個人認証結果出力手段9に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体情報を用いて個人認証対象者が予め登録された個人と一致するか否かを判別する個人認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、財産や情報の安全な管理を目的として個人認証技術への期待が高まっている。特に、人体の一部を鍵として利用する生体認証技術は従来の暗証番号や鍵による管理に比べ遺失や盗難等による不正行使の恐れが少ないことから注目を集めている。生体認証技術としては指紋、顔、虹彩、手や指の血管パターンなどを用いた様々な手法があるが、指の血管パターンを用いた認証方法は、指紋のように犯罪を連想させたり、虹彩のように直接眼球に光を照射したりすることがないので心理的抵抗感が少なく、生体の表面ではなく内部の特徴を読み取るため偽造が困難という利点がある。
【0003】
単指の指静脈認証装置としては例えば下記の特許文献1に記載されている。複数指の同時入力に関しては例えば指紋認証に関して下記の特許文献2、各指の位置に指紋を読み取る指紋読み取りセンサを配置した指紋採取台上に指紋認証登録者の片方もしくは両方の手を載置することが特許文献3に記載されている。生体情報に関して特許文献4に記載されている。また、指静脈特徴の照合方法については例えば下記の特許文献5に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−128936号公報
【特許文献2】特開昭61−177580号公報
【特許文献3】特開2000−268174号公報
【特許文献4】特開2004−78791号公報
【特許文献5】特許第3558025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
単指の指静脈認証装置は空間的に指の提示自由度が大きく、登録時の指の提示位置と認証時の指の提示位置が異なると認証が難しくなるという課題がある。指紋の複数指の同時入力の場合には指紋を指紋読取装置に密着させる必要があるため指の長手方向軸回りの回転は拘束されるが、指静脈認証装置は基本的に非接触であり指の長手方向軸回りの回転により、登録時の指の提示位置と認証時の指の提示位置が異なると認証が難しくなるという課題がある。指紋採取台への複数指紋読み取りセンサ設置は入退室扉脇等への設置時や個人利用情報機器の個人認証用としては空間的あるいはコスト的な課題がある。また、複数指を含む手を一度に撮影した後に複数本の指画像に分離する方法では、利用者が直感的に最適な複数指の提示方法が分かりにくく、また、利用者の指形状によっては隣合う指が重なった場合に分離が難しくなるという課題がある。
【0006】
本発明の目的は利用者が直感的に指の提示形態が分かり、利用者が自然に登録時と認証時に同じ形態で指を提示することを可能とし、登録時と認証時の指の空間変動が少ない複数指の照合による認証精度の向上と、各指の長手方向位置情報による認証候補者の絞込みによる認証時間の短縮が行える個人認証装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴とするところは、各指毎の指画像入力装置を配した掌形指生体画像入力手段から各指位置の情報を入力し、各指生体画像を入力し、指位置情報から個人認証対象者の候補者を選出し、入力された指生体画像から指生体特徴を抽出し前記候補者の予め登録された指生体特徴との比較照合を行い、該指生体照合の結果に基づいて個人認証結果を出力するようにしたことにある。
【0008】
すなわち、本発明は、個人認証対象者の指生体画像を入力し、該指生体画像から指生体特徴を抽出し、予め登録された指生体特徴との比較照合を行うことにより個人認証を行う個人認証装置において、
掌形生体画像入力手段と、掌形指生体画像入力手段からの各指位置の情報を入力する指位置入力手段および指生体画像を入力する指生体画像入力手段と、指位置情報から個人認証対象者の候補者を選出する指位置識別手段と、入力された指生体画像から指生体特徴を抽出し前記候補者の予め登録された指生体特徴との比較照合を行う指生体照合手段と、該指生体照合の結果に基づいて個人認証結果を出力する個人認証結果出力手段を具備することを特徴とする個人認証装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、各指毎の指画像入力装置を配した掌形指生体画像入力手段から各指位置の情報を入力し、各指生体画像を入力し、指位置情報から個人認証対象者の候補者を選出し、入力された指生体画像から指生体特徴を抽出し前記候補者の予め登録された指生体特徴との比較照合を行い、該指生体照合の結果に基づいて個人認証結果を出力することができる。
【0010】
本発明によると、掌形生体画像入力手段に従って利用者は直感的に指の提示形態が分かり、利用者が自然に登録時と認証時に同じ形態で指を提示することを可能とし、登録時と認証時の指の空間変動が少ない複数指の照合による認証精度の向上と、各指の長手方向位置情報による認証候補者の絞込みによる認証時間の短縮が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施例である個人認証装置は、上述した個人認証装置であって、掌形生体画像入力装置は指画像入力装置を有して該指画像入力装置は、各指について各指方向に配設され、その内の1つもしくは複数本の指生体画像情報が指生体照合手段での指生体照合に使用されることを特徴とする個人認証装置を構成する。
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の一実施例である個人認証装置100を示す。
【0014】
図1において、各指毎に単指用の指画像入力装置を配して指位置情報および指生体画像情報を取得する掌形指生体画像入力手段1は、例えば建物の扉脇に配置され、入室者あるいは退室者の対象者が入室あるいは退室の許可を得るために、対象者が手を掌形指生体画像入力手段1に提示する。掌形指生体画像入力手段1は他の装置、システムに付属されてもよい。
【0015】
掌形指生体画像入力手段1で検出した指位置情報は個人認証処理装置2の指位置情報入力手段3に入力される。また、掌形指生体画像入力手段1で撮像した指生体画像は指生体画像入力手段4に入力される。指位置識別手段5は指位置情報登録ファイル6から予め掌形指生体画像入力手段1で検出された登録者の指位置情報が与えられている。指位置識別手段5は登録者の指位置情報と指位置情報入力手段3から入力される指位置情報とを比較し、入力された指位置情報との類似度の高い登録者を候補者として指生体照合手段7に出力する。すなわち、指位置識別手段5は候補者識別手段として機能する。指生体照合手段7は指生体情報登録ファイル8から予め掌形指生体画像入力手段1で撮像された登録者の指生体情報が与えられている。指生体照合手段7は前記候補者である登録者の指生体情報と指生体画像入力手段4から入力される指生体情報を比較照合し、比較照合結果を個人認証結果出力手段9に出力する。個人認証結果出力手段9は入力された比較照合結果の最も類似度の高い登録者の類似度が予め定められた閾値以上であれば掌形指生体画像入力手段1への手の提示者が該登録者であることの認証結果を出力し、閾値より類似度が低い場合には登録者でないことの認証結果を出力する。
【0016】
次に図2、図3を用いて掌形指生体画像入力手段1を説明する。
図2は各指毎の指画像入力装置1a、1b、1c、1d、1eを配し掌形を呈した掌形指生体画像入力手段1の実施例を示している。掌形の外郭形状は例えばアクリル板に掌形の線画で示すか、合成樹脂等の成型により実施可能である。矩形で示している1a、1b、1c、1d、1eはそれぞれ親指、人指し指、中指、薬指、子指に対応し、各指の方向に対応した方向に角度(波線の方向)をもって配設され、単指の指画像入力装置であり例えば公知の単指の指静脈認証装置の画像入力部を用いることにより実施可能である。各指画像入力装置1a、1b、1c、1d、1eはそれぞれ波線の方向に可動できる。11はスイッチを示し、対象者が各指を指画像入力装置1a、1b、1c、1d、1eに乗せて指定点である0点から離れるように各指を動かすことにより本例の場合、1cがスイッチ11に接触し、該接触によりスイッチ11にON信号が入り各指の画像が各指画像入力装置により撮像される。
【0017】
図中、スイッチ11は中指に1ヶのみ記載しているが他の指にあっても、或いは全ての指に配しても良い。指位置信号として、例えば前記接触時に図中の0点から各指の先端(A、B、C、D、E)までの距離(La、Lb、Lc、Ld、Le)を例えば光電センサ等の変位センサにより計測可能である。このように単指の指画像入力装置1a、1b、1c、1d、1eを波線の方向に可動できることにより手の大小や指の長短にも対応可能である。無論、大小の掌形指生体画像入力手段を用意するようにしてもよい。各指の特定位置について指位置信号としてもよい。図2は右手用の例であるが、図3の100に示すように左手用、或いは101に示すように左右両手共用等も好ましい。指画像入力装置1a、1b、1c、1d、1eの初期位置を固定とすることにより、事故等により無い指がある場合、また全指を認証に用いない場合にも指位置情報を正確に取得可能である。掌形指生体画像入力手段1により、利用者が直感的に指の提示形態が分かり、利用者が自然に登録時と認証時に同じ形態で指を提示することを可能とし、登録時と認証時の指の空間変動が少ないことにより認識精度の向上が図れる。また、5本の指を掌形指生体画像入力手段1の掌形形成部に載置することによって各指が確実に掌形形成部に固定されることになる。これによって1本あるいは複数の指について指生体画像を取得する場合に確実に取得することができるメリットがある。
【0018】
各指画像入力装置1a、1b、1c、1d、1eのいずれかもしくは複数の指生体画像情報が指生体照合に使用される。
【0019】
次に、図4のフローチャートを参照して動作を説明する。
掌形指生体画像入力手段1に提示された対象者の指位置情報は指位置情報入力処理(S1)で入力され、掌形指生体画像入力手段1に提示された対象者の指生体画像は指生体画像入力処理(S2)で入力される。指位置識別処理(S3)では予め与えられている掌形指生体画像入力手段1で検出された登録者の指位置情報と、対象者から入力された指位置情報とを比較し、入力された指位置情報との類似度の高い登録者を候補者としてS4に進む。指生体照合処理(S4)では、指生体画像入力処理(S2)で入力された指生体画像から指生体特徴を抽出した指生体情報と、予め与えられている掌形指生体画像入力手段1で撮像された前記候補者の指生体情報との比較照合する。個人認証結果出力処理(S5)では、前記比較照合の結果の内、最も類似度の高い登録者の類似度が予め定められた閾値以上であれば掌形指生体画像入力手段1への手の提示者が該登録者であることの認証結果を出力し、閾値より類似度が低い場合には登録者でないことの認証結果を出力する。指生体情報の比較照合は公知の照合技術により実現可能である。前記候補者に対してのみ指生体情報との比較照合を行うことにより認識時間の短縮が可能となり、複数指の照合により認識精度の向上が図れる。
次に、図5のフローチャートと図2を参照してS3の動作を詳細説明する。
掌形指生体画像入力手段1に提示された対象者の指位置は、例えば中指を基準指位置として他の指位置の差を算出する(S31)。図2の例では親指の位置の差はLc−La、人指し指の位置の差はLc−Lb、薬指の位置の差はLc−Ld、小指の位置の差はLc−Leとなる。次に指位置情報登録ファイル6に登録されている現登録者の指位置情報登録データと比較し予め定められた類似度より高いか否かの判定を行い(S32)、高ければS33に進み、高くなければS34に進む。S33では現登録者を指生体照合候補に追加する。S34では次の登録者を現登録者としてS35に進む。S35では登録者全員に対して指位置の比較を行ったか否かの判定を行い、全員分終了していなければS32に戻り、全員分終了していれば処理を終了する。この処理により対象者の指位置と類似性の高い候補者が選出される。
【0020】
従来の単指の指静脈認証装置は空間的に指の提示自由度が大きく、登録時の指の提示位置と認証時の指の提示位置が異なると認証が難しくなるという課題、指静脈認証装置は基本的に非接触であり指の長手方向軸回りの回転により、登録時の指の提示位置と認証時の指の提示位置が異なると認証が難しくなるという課題、また、複数指を含む手を一度に撮影した後に複数本の指画像に分離する方法では、利用者が直感的に最適な複数指の提示方法が分かりにくく、また、利用者の指形状によっては隣合う指が重なった場合に分離が難しくなるという課題に対して、本実施例では利用者が直感的に指の提示形態が分かり、利用者が自然に登録時と認証時に同じ形態で指を提示することを可能とし、登録時と認証時の指の空間変動が少ない複数指の照合による認証精度の向上と、各指の長手方向位置情報による認証候補者の絞込みによる認証時間の短縮が行える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】本発明の掌形指生体画像入力手段1の一実施例を示す図である。
【図3】本発明の掌形指生体画像入力手段1の他の実施例を示す図である。
【図4】本実施例の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】本実施例の指位置識別処理S3の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0022】
1…掌形指生体画像入力手段、1a、1b、1c、1d、1e…単指の指画像入力装置、2…個人認証処理装置、3…指位置情報入力手段、4…指生体画像入力手段、5…指位置識別手段、6…指位置情報登録ファイル、7…指生体照合手段、8…指生体情報登録ファイル、9…個人認証結果出力手段、11…スイッチ、100…個人認証装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人認証対象者の指生体画像を入力し、該指生体画像から指生体特徴を抽出し、予め登録された指生体特徴との比較照合を行うことにより個人認証を行う個人認証装置において、
掌形生体画像入力手段と、掌形指生体画像入力手段からの各指位置の情報を入力する指位置入力手段および指生体画像を入力する指生体画像入力手段と、指位置情報から予め登録されている個人認証対象者から候補者を選出する指位置識別手段と、入力された指生体画像から指生体特徴を抽出し前記候補者の予め登録された指生体特徴との比較照合を行う指生体照合手段と、該指生体照合の結果に基づいて個人認証結果を出力する個人認証結果出力手段を具備することを特徴とする個人認証装置。
【請求項2】
請求項1において、掌形生体画像入力装置は指画像入力装置を有して該指画像入力装置は、各指について各指方向に配設され、その内の1つもしくは複数本の指生体画像情報が指生体照合手段での指生体照合に使用されることを特徴とする個人認証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−200051(P2007−200051A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18301(P2006−18301)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(390023928)日立エンジニアリング株式会社 (134)
【Fターム(参考)】