説明

個人認証装置

【課題】 個人認証が行われる前に、簡単な構成で個人認証の不具合を発見することができる個人認証装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 開閉蓋58が検査面561に対向した閉状態で、個人認証が行われていないときに、開閉蓋58に形成されているテストパターン581を指紋センサ56で読み取り、そのテストパターン581を基準データと比較する。これにより、テストパターン581の比較結果に基づいて、指紋センサ56の故障や検査面561の汚れなどの不具合が発生しているか否かを判断することができるので、開閉蓋58に形成されているテストパターン581を読み取らせるといった簡単な構成で、個人認証が行われる前に、個人認証の不具合を発見することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人認証装置に係り、さらに詳しくは、指紋認証などの個人認証を行うことができる個人認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
指紋認証などの個人認証を行い、ユーザを認証することができたときにのみ所定の処理を実行可能にすることにより、セキュリティーが向上された種々の個人認証装置が提案されている(例えば、特許文献1〜3)。例えば、指紋認証を実行可能な個人認証装置には、検査面に対向する画像を読み取る画像読取装置が備えられており、この検査面上にユーザが指を置くことにより、そのユーザの指紋の画像が読み取られるようになっている。読み取られた画像は、ユーザ情報として予めメモリに記憶されているユーザの指紋データと比較され、その一致度に応じて、操作を行っている者が真のユーザであるか否かの認証が行われる。
【0003】
この種の個人認証装置では、検査面が汚れている場合や画像読取装置が故障した場合などには、個人認証を正常に行うことができず、真のユーザが操作を行う場合であっても認証できない事態が生じる場合がある。このような場合には、真のユーザであっても当該個人認証装置において実行可能な処理が制限されるため、不便をきたすこととなる。このような問題を解決するための構成として、特許文献1には、画像読取装置が故障した場合に、暗証番号を入力することにより個人認証を行うことができるような構成が提案されている。
【特許文献1】特開2000−172647号公報
【特許文献2】特開2003−336422号公報
【特許文献3】特開2005−267378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているような構成では、真のユーザが画像読取装置を用いた個人認証を行い、正常に認証できなかったときに、画像読取装置の故障や検査面の汚れといった個人認証の不具合を発見することはできるものの、個人認証が行われる前にこれらの不具合を発見することはできない。
【0005】
上記特許文献3には、受光素子からの検出信号を読み込み、検出信号の波形パターンを基準パターンと比較することにより、画像読取装置の異常を検出することができるような構成が開示されている。このような構成によれば、個人認証の不具合を事前に発見することはできるが、その不具合を認定するのに最適な基準パターンを設定するのが比較的難しいといった問題がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、個人認証が行われる前に、簡単な構成で個人認証の不具合を発見することができる個人認証装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明による個人認証装置は、検査面に対向する画像を読み取る画像読取手段と、上記検査面に対向可能に設けられ、上記検査面に対向する面にテストパターンが形成された検査面保護用蓋と、上記検査面保護用蓋が上記検査面に対向する閉状態及び上記検査面に対向していない開状態を検出する開閉検出手段と、上記開閉検出手段による上記開状態の検出結果に基づいて、上記画像読取手段により読み取った画像をユーザ情報と比較することにより個人認証を行う個人認証処理手段と、上記開閉検出手段による上記閉状態の検出結果に基づいて、上記画像読取手段により読み取った上記テストパターンを基準データと比較するテストパターン比較処理手段とを備えて構成される。
【0008】
このような構成によれば、検査面保護用蓋が検査面に対向した閉状態で、個人認証が行われていないときに、検査面保護用蓋に形成されているテストパターンを読み取り、そのテストパターンを基準データと比較することができる。これにより、テストパターンの比較結果に基づいて、画像読取手段の故障や検査面の汚れなどの不具合が発生しているか否かを判断することができる。したがって、検査面保護用蓋に形成されているテストパターンを読み取らせるといった簡単な構成で、個人認証が行われる前に、個人認証の不具合を発見することができる。
【0009】
第2の本発明による個人認証装置は、上記構成に加えて、上記個人認証処理手段によりユーザが認証されたときに所定の処理を実行可能にするとともに、上記テストパターンの比較結果に基づいて、上記所定の処理の一部を実行可能にする制限解除手段を備えて構成される。
【0010】
このような構成によれば、テストパターンの比較結果に基づいて、画像読取手段の故障や検査面の汚れなどの不具合が発生していると判断した場合に、ユーザが認証されたときにのみ実行可能な処理の一部に対する制限を解除することができる。したがって、その一部の処理については、個人認証の不具合が解消されるのを待たずに実行することができるので、利便性が向上する。
【0011】
第3の本発明による個人認証装置は、上記構成に加えて、上記検査面保護用蓋には、上記開状態から上記閉状態となる方向へ重力又は付勢力が作用するように構成される。
【0012】
このような構成によれば、個人認証を行わないときには、検査面保護用蓋が重力又は付勢力により自動的に閉状態となる。したがって、個人認証が行われていないときに、検査面保護用蓋が閉状態とされていないためにテストパターンを読み取ることができないといった事態が生じるのを防止できるので、個人認証の不具合をより確実に発見することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、検査面保護用蓋が検査面に対向した閉状態で、検査面保護用蓋に形成されているテストパターンを読み取り、そのテストパターンと基準データとの比較結果に基づいて、個人認証の不具合を発見することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の実施の形態による個人認証装置の構成を示したブロック図であり、個人認証装置の一例としてデジタル複合機1を示している。このデジタル複合機1は、スキャナ2で読み取った原稿の画像データに基づく画像をプリンタ機構3で用紙に印刷するコピー機能や、スキャナ2で読み取った原稿の画像データを通信部4からファクシミリ送信するファクシミリ機能などを備えている。
【0015】
このデジタル複合機1には、上記のスキャナ2、プリンタ機構3及び通信部4に加えて、操作表示パネル5及びメモリ6が備えられ、これらの動作が、プロセッサからなる制御部7により制御されるようになっている。メモリ6は、RAM(Random Access Memory)により構成されている。
【0016】
スキャナ2は、原稿に向けて光を照射し、原稿からの反射光を受光することにより、その受光量に応じた信号を制御部7へ出力する原稿読取手段である。このスキャナ2からの信号に基づいて原稿の画像データが生成され、生成された画像データがメモリ6に格納される。プリンタ機構3は、メモリ6に格納された画像データに基づく画像を用紙に印刷する。このプリンタ機構3は、感光体ドラム、帯電器、現像装置、転写装置及び定着装置などからなる周知の印刷手段であるため、ここでは詳細な説明を省略することとする。
【0017】
通信部4は、ファクシミリ装置などの通信端末との間で通信を行う通信手段である。このデジタル複合機1がファクシミリ送信を行う場合、通信部4により相手方のファクシミリ装置との間で接続状態が確立された後、スキャナ2で読み取った原稿の画像データが送信される。一方、ファクシミリ受信を行う場合には、通信部4を介して相手方のファクシミリ装置から画像データを受信し、その画像データに基づく画像がプリンタ機構3において用紙に印刷される。通信部4は、上記のようなファクシミリ送信及びファクシミリ受信を行うことができるだけでなく、他の通信端末との間で電子メールの送受信を行うこともできる。
【0018】
操作表示パネル5には、液晶表示器51、タッチパネル52、テンキー53、スタートキー54、ワンタッチキー55、指紋センサ56及び開閉センサ57などが備えられている。タッチパネル52は、液晶表示器51の表示画面に設けられている。液晶表示器51には、多数のキーを表示することができるようになっており、タッチパネル52上の各キーに対向する部分にユーザが触れることで、そのキーの選択操作を行うことができるようになっている。
【0019】
図2は、操作表示パネル5の構成を示した図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図を示している。テンキー53は、液晶表示器51の側方に設けられ、ファクシミリ送信を行う際に送信先の電話番号を入力したり、コピー機能を実行する際に印刷部数を入力したりする際に操作される。スタートキー54は、テンキー53の側方に設けられ、ファクシミリ送信やコピー機能の実行開始を指示する際などに操作される。
【0020】
ワンタッチキー55は、ファクシミリ送信の送信先を指定するための送信先指定手段である。各ワンタッチキー55に対応付けて送信先の電話番号をメモリ6に予め記憶しておくことにより、各ワンタッチキー55の操作に基づいて、対応する送信先の電話番号をメモリ6から読み出し、ファクシミリ送信の送信先として指定することができる。これらのワンタッチキー55は、上方を開閉蓋58で覆うことができるようになっている。
【0021】
開閉蓋58は、操作表示パネル5に対して回動軸581を中心に回動可能に設けられ、ワンタッチキー55の上方を覆う閉状態と、ワンタッチキー55の上方を開放する開状態との間で回動自在に構成されている。開閉センサ57は、開閉蓋58の開状態及び閉状態を検出する開閉検出手段であり、機械的又は光学的なスイッチにより構成することができる。図2(a)及び(b)では、開閉蓋58が開状態のときの操作表示パネル5の外観が示されている。
【0022】
指紋センサ56は、検査面561に対向する画像を読み取る画像読取手段であり、検査面561上にユーザが指を置くことにより、そのユーザの指紋の画像が読み取られるようになっている。読み取られた指紋の画像は、ユーザ情報として予めメモリ6に記憶されているユーザの指紋データと比較され、その一致度に応じて、操作を行っている者が真のユーザであるか否かを判断するための個人認証が行われる。
【0023】
指紋センサ56の検査面561は、ワンタッチキー55の近傍に設けられており、開閉蓋58を閉状態としたときには、ワンタッチキー55とともに検査面561の上方も開閉蓋58により覆われるようになっている。このような構成により、開閉蓋58は、検査面561に対向する閉状態において、当該検査面561を保護する検査面保護用蓋として機能し、指紋センサ56を用いた個人認証を行う際には、検査面561に対向しない開状態とされる。
【0024】
本実施の形態では、操作表示パネル5は、デジタル複合機1に対してほぼ水平に取り付けられており、図2(b)に示すように、開閉蓋58は、閉状態から鉛直方向Aまでの90°未満の角度範囲で回動可能となっている。すなわち、開閉蓋58がほぼ水平となる閉状態から鉛直方向Aを超えて90°以上回動することはできないようになっている。これにより、開閉蓋58には開状態から閉状態となる方向へ重力が作用し、外力が作用していない状態では、開閉蓋58が自動的に閉状態となるように構成されている。
【0025】
開閉蓋58のワンタッチキー55及び検査面561に対向する面には、閉状態で検査面561に対向する位置に、指紋センサ56で読取可能なテストパターン581が形成されている。テストパターン581としては、指紋センサ56で読取可能なパターンであれば、指紋パターンに限らず任意のパターンを採用することができる。このような構成により、開閉蓋58が開状態のときには、指紋センサ56の検査面561上にユーザが指を置くことにより指紋を読み取ることができ、開閉蓋58が閉状態のときには、検査面561に対向するテストパターン581を指紋センサ56で読み取ることができる。
【0026】
図3は、制御部7の一構成例を示した機能ブロック図である。制御部7は、開閉センサ57からの信号に基づいて、指紋センサ56でユーザの指紋を読み取る処理又はテストパターン581を読み取る処理のいずれかを選択し、その読取結果に応じた処理を実行する。制御部7は、読取切替部71、個人認証処理部72、テストパターン比較部73及び制限解除部74によって構成され、これらの各機能ブロックは、制御部7が実行するコンピュータプログラムにより実現される。
【0027】
メモリ6には、ユーザ情報記憶部61、基準データ記憶部62及び制限フラグ記憶部63が割り当てられている。ユーザ情報記憶部61には、このデジタル複合機1を使用する複数のユーザの指紋データが、ユーザ情報として各ユーザに対応付けて記憶されている。また、基準データ記憶部62には、指紋センサ56で読み取ったテストパターン581と比較するための基準データが記憶されている。
【0028】
このデジタル複合機1には、複数種類の機能が備えられており、それらの機能のうち所定の機能に関する処理は、指紋センサ56を用いた個人認証によりユーザが認証された場合に実行可能となる。すなわち、指紋センサ56で読み取った指紋に基づく個人認証の結果、ユーザ情報記憶部61に記憶されているいずれかのユーザの指紋データと一致し、操作を行っている者が真のユーザであると判断された場合に、上記所定の機能に関する処理を実行可能とすることにより、セキュリティーの向上が図られている。
【0029】
制限フラグ記憶部63には、上記所定の機能に関する処理の実行を制限するか否かを表す制限フラグが、各機能に対応付けて記憶されている。この例では、アドレス帳機能、親展ボックス機能及びメンテナンス機能などが備えられ、これらの各機能に対応付けられた制限フラグが制限フラグ記憶部63に記憶されている。
【0030】
ここで、アドレス帳機能は、ファクシミリ送信を行う際の送信先の電話番号や、電子メールを送信する際の送信先のメールアドレスなどの送信先情報をメモリ6から読み出すための機能であり、このアドレス帳機能を用いて送信先情報を読み出すことにより、送信先情報をわざわざ入力する手間を削減することができるようになっている。このアドレス帳機能に対応付けられた制限フラグは、送信先情報の読み出しを制限するか否かを表すフラグである。
【0031】
親展ボックス機能は、ファクシミリ受信したデータや受信した電子メールのデータなどの受信データを、メモリ6内の各ユーザに割り当てられた親展ボックスと呼ばれるフォルダに一旦格納し、ユーザが所定の操作を行った場合に、当該ユーザに割り当てられている親展ボックス内のデータを読み出す機能である。この親展ボックス機能を用いて通信を行う場合には、送信元から受信した受信データが、送信元で指定されたユーザの親展ボックスに格納される。このとき、操作表示パネル5には、受信データが格納された親展ボックスを特定する情報が表示され、その親展ボックスが割り当てられているユーザが操作表示パネル5に対する操作を行うことにより、その受信データをメモリ6から読み出すことができるようになっている。この親展ボックス機能に対応付けられた制限フラグは、親展ボックスからの受信データの読み出しを制限するか否かを表すフラグである。
【0032】
メンテナンス機能は、特定の作業者のみが当該デジタル複合機1のメンテナンスを行うことができるようにするための機能である。このデジタル複合機1に関する各種設定のうち所定の設定は、メンテナンス機能により許可された特定の作業者のみが行うことができるようになっている。このメンテナンス機能に対応付けられた制限フラグは、上記所定の設定の実行を制限するか否かを表すフラグである。
【0033】
読取切替部71は、開閉センサ57からの入力信号に基づいて、指紋センサ56を用いてユーザの指紋及びテストパターン581のいずれを読み取るかを切り替える。すなわち、読取切替部71により、開閉蓋58が開状態のときには指紋センサ56で指紋を読み取り、開閉蓋58が閉状態のときには指紋センサ56でテストパターン581を読み取るように切り替えられる。
【0034】
個人認証処理部72は、開閉センサ57が開閉蓋58の開状態を検出しているときに、指紋センサ56の検査面561上に置かれたユーザの指から指紋の画像を読み取り、その画像をユーザ情報記憶部61に記憶されている各ユーザの指紋データと比較することにより個人認証を行う。この個人認証により、読み取った指紋の画像がユーザ情報記憶部61に記憶されているいずれかのユーザの指紋データと一致すると判断された場合には、制限解除部74が、制限フラグ記憶部63に記憶されている制限フラグを書き換えることにより、所定の機能に関する処理に対する制限を解除し、当該機能を実行可能にする。この所定の機能には、上記のアドレス帳機能、親展ボックス機能及びメンテナンス機能などが含まれる。この場合、上記所定の機能に関する処理を実行するために操作されるキーが、閉状態の開閉蓋58によって覆われる位置に設けられていることが好ましい。
【0035】
テストパターン比較部は、開閉センサ57が開閉蓋58の閉状態を検出しているときに、指紋センサ56の検査面561に対向する開閉蓋58上のテストパターン581を読み取り、そのテストパターン581を基準データ記憶部62に記憶されている基準データと比較する。その結果、読み取ったテストパターン581が基準データ記憶部62に記憶されている基準データと一致すると判断された場合には、制限解除部74が、制限フラグ記憶部63に記憶されている制限フラグを書き換える処理を行う。このとき、制限解除部74は、個人認証の結果に基づいて制限が解除される上記所定の機能に関する処理のうち、一部の処理についてのみ制限を解除し、その機能を実行可能にする。このテストパターン581の比較結果に基づいて制限が解除される処理には、上記のアドレス帳機能、親展ボックス機能及びメンテナンス機能は含まれない。
【0036】
図4は、開閉センサ57からの入力信号に基づいて制御部7が行う処理の一例を示したフローチャートである。開閉センサ57により開閉蓋58の開状態が検出されているときには(ステップS101でYes)、指紋センサ56の検査面561上に読取対象があるか否か、すなわち検査面561上にユーザの指が置かれたか否かが監視される(ステップS102)。そして、検査面561上にユーザの指が置かれた場合には(ステップS102でYes)、その指紋が指紋センサ56により読み取られる(ステップS103)。
【0037】
その後、指紋センサ56で読み取られた指紋が、ユーザ情報記憶部61に記憶されている各ユーザの指紋データと比較されることにより、個人認証が行われる(ステップS104)。この個人認証の結果、ユーザを認証することができた場合には(ステップS105でYes)、上述した所定の機能に関する処理の全部に対する制限が解除され、当該機能が実行可能になる(ステップS106)。これに対して、ユーザを認証することができなかった場合には(ステップS105でNo)、上記所定の機能に関する処理に対する制限は解除されない。
【0038】
一方、開閉センサ57により開閉蓋58の閉状態が検出されているときには(ステップS101でNo)、一定時間経過ごとに(ステップS107でYes)、指紋センサ56による画像の読み取りが行われることにより、検査面561に対向するテストパターン581が読み取られる(ステップS108)。そして、指紋センサ56で読み取られたテストパターン581は、基準データ記憶部62に記憶されている基準データと比較される(ステップS109)。
【0039】
上記比較の結果、テストパターン581が基準データと一致しないと判断した場合には(ステップS110でNo)、上述した所定の機能に関する処理のうちの一部に対する制限が解除され、当該機能が実行可能になる(ステップS111)。このとき、液晶表示器51に対する表示又は音声の出力により、異常が発生している旨をユーザに報知するエラー報知が行われる(ステップS112)。これに対して、テストパターン581が基準データと一致すると判断した場合には(ステップS110でYes)、上記所定の機能に関する処理に対する制限は解除されない。
【0040】
本実施の形態では、開閉蓋58が検査面561に対向した閉状態で、個人認証が行われていないときに、開閉蓋58に形成されているテストパターン581を読み取り、そのテストパターン581を基準データと比較することができる。これにより、テストパターン581の比較結果に基づいて、指紋センサ56の故障や検査面561の汚れなどの不具合が発生しているか否かを判断することができる。したがって、開閉蓋58に形成されているテストパターン581を読み取らせるといった簡単な構成で、個人認証が行われる前に、個人認証の不具合を発見することができる。
【0041】
また、本実施の形態では、テストパターン581の比較結果に基づいて、指紋センサ56の故障や検査面561の汚れなどの不具合が発生していると判断した場合に、ユーザが認証されたときにのみ実行可能な処理の一部に対する制限を解除することができる。したがって、その一部の処理については、個人認証の不具合が解消されるのを待たずに実行することができるので、利便性が向上する。
【0042】
さらに、本実施の形態では、図2(b)において説明した通り、開閉蓋58に開状態から閉状態となる方向へ重力が作用し、外力が作用していない状態では、開閉蓋58が自動的に閉状態となるように構成されている。これにより、個人認証が行われていないときに、開閉蓋58が閉状態とされていないためにテストパターン581を読み取ることができないといった事態が生じるのを防止できるので、個人認証の不具合をより確実に発見することができる。
【0043】
ただし、開閉蓋58は、自重によって自動的に閉状態となるような構成に限らず、ばねなどの付勢手段を用いて開閉蓋58に付勢力を作用させることにより、開閉蓋58が自動的に閉状態となるような構成であってもよい。
【0044】
上記実施の形態では、指紋センサ56で読み取ったテストパターン581が基準データと一致しないと判断した場合に、上記所定の機能に関する処理のうちの一部に対する制限を解除し、当該機能を実行可能にするような構成について説明した。しかし、このような構成に限らず、指紋センサ56で読み取ったテストパターン581が基準データと一致しないと判断した場合に、実行可能な処理の一部又は全部を制限し、それらの処理を実行できないようにするような構成であってもよい。
【0045】
また、上記実施の形態では、指紋センサ56の検査面561が、ワンタッチキー55を覆うための開閉蓋58に対向可能な位置に設けられた場合について説明した。しかし、このような構成に限らず、他の部分に設けられた開閉蓋に対向可能な位置に指紋センサ56の検査面561が設けられた構成であってもよい。
【0046】
開閉蓋58は、閉状態で対向する部分を保護するためだけでなく、他の機能を兼ねていてもよい。例えば、開閉蓋58が開状態とされるのに基づいて、当該デジタル複写機1が省電力状態から待機状態に移行するような構成であってもよい。このような構成によれば、開閉センサ57からの入力信号が、指紋センサ56による読取態様を切り替えるためだけでなく、省電力状態から待機状態に移行させるための入力信号としても用いることができるので、使用するセンサの数を少なくすることができる。
【0047】
また、開閉蓋58は、回動軸581を中心に回動可能に設けられた構成に限らず、スライド可能に設けられた構成であってもよい。例えば、開閉蓋を水平方向にスライド可能に設けて、その開閉蓋の下面にテストパターンを形成した場合には、開閉蓋が指紋センサ56の検査面561に対向する閉状態及び対向しない開状態のいずれにおいても、開閉蓋が下方を向いた状態となるので、開閉蓋の下面に形成されているテストパターンが汚れたり、故意に改竄されたりする可能性が低くなる。
【0048】
上記実施の形態では、個人認証の一例として、ユーザの指紋を読み取って指紋認証を行うような構成について説明したが、このような構成に限らず、センサの検査面に対向する画像を読み取って認証を行うような構成であれば、ユーザの指紋以外の部分を読み取って認証を行うような構成であってもよい。
【0049】
また、上記実施の形態では、個人認証装置の一例としてデジタル複合機1に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、デジタル複合機に限らず、センサの検査面に対向する画像を読み取って個人認証を行うことができるような装置であれば、デジタル複合機1に限らず、パーソナルコンピュータなどの他の装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態による個人認証装置の構成を示したブロック図であり、個人認証装置の一例としてデジタル複合機を示している。
【図2】操作表示パネルの構成を示した図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図を示している。
【図3】制御部の一構成例を示した機能ブロック図である。
【図4】開閉センサからの入力信号に基づいて制御部が行う処理の一例を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1 デジタル複合機
5 操作表示パネル
6 メモリ
7 制御部
56 指紋センサ
57 開閉センサ
58 開閉蓋
61 ユーザ情報記憶部
62 基準データ記憶部
63 制限フラグ記憶部
71 読取切替部
72 個人認証処理部
73 テストパターン比較部
74 制限解除部
561 検査面
581 テストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査面に対向する画像を読み取る画像読取手段と、
上記検査面に対向可能に設けられ、上記検査面に対向する面にテストパターンが形成された検査面保護用蓋と、
上記検査面保護用蓋が上記検査面に対向する閉状態及び上記検査面に対向していない開状態を検出する開閉検出手段と、
上記開閉検出手段による上記開状態の検出結果に基づいて、上記画像読取手段により読み取った画像をユーザ情報と比較することにより個人認証を行う個人認証処理手段と、
上記開閉検出手段による上記閉状態の検出結果に基づいて、上記画像読取手段により読み取った上記テストパターンを基準データと比較するテストパターン比較処理手段とを備えたことを特徴とする個人認証装置。
【請求項2】
上記個人認証処理手段によりユーザが認証されたときに所定の処理を実行可能にするとともに、上記テストパターンの比較結果に基づいて、上記所定の処理の一部を実行可能にする制限解除手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の個人認証装置。
【請求項3】
上記検査面保護用蓋には、上記開状態から上記閉状態となる方向へ重力又は付勢力が作用していることを特徴とする請求項1に記載の個人認証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−123101(P2008−123101A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304140(P2006−304140)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】