説明

個体識別装置、個体識別対象物、個体識別方法、及びプログラム

【課題】 微細物質を対象物にランダムに付与し、個体識別に利用する個体識別システムにおいて、精度を損なわずに高速に対象物の検証を行うことが可能な個体識別装置等を提供する。
【解決手段】 異なる種類の微細物質20A、20Bを異なる数量で対象物2に付与する。個体識別装置4は少数付与された微細物質20Aの配置パターンに基づく特徴量データをインデックス認証用データ6Aとしてデータベース5に登録するとともに、多数付与された微細物質20Bの配置パターンに基づく特徴量データを本認証用データ6Bとして登録する。認証処理では、対象物2から、まず微細物質20Aの配置パターンに基づき算出された特徴量データと、データベース5のインデックス認証用データ6Aを照合し、認証成功すると、微細物質20Bの配置パターンに基づき算出された特徴量データと、データベース5の本認証用データ6Bを照合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に付与される微細物質の配置パターンに基づいて個体識別を行う個体識別装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IDカード等の対象物について個体識別による認証を行うための技術として、人工物メトリクス技術が提案されている。人工物メトリクス技術が提案されている。人工物メトリクス技術とは、対象物(人工物)に分離不可能にランダムに付与されるような固有の物理的特徴を計測し、これに基づくデータを事前に計測された真のデータと比較照合することにより、対象物の検証を行うものである。すなわち、人間の指紋に相当するような固有の物理的特徴を人工物から読取り検証に利用する。
【0003】
対象物固有の物理的特徴としては、大別して光学特性、磁気特性、電気特性、振動特性等がある。光学特性を有するものの具体例としては、基材にランダム分散した粒状物やファイバ等の光反射、光透過パターンなどが挙げられる。
これらの対象物に固有の特徴は、スキャナやカメラ等の撮像装置によって画像データとして読み取られ、読み取ったデータから適切な画像処理等を施すことによって算出される。そして、算出された特徴量データと、同様の手法で読取り、算出され、予め登録された特徴量データである認証用データとを照合することで認証を行うのが一般的である。
【0004】
このような人工物メトリクスの例としては、特許文献1のように、透明プラスチック基材の片面のラベルに、真偽判別要素であるホログラムとタガント(追跡用添加物)としての微小細粒を存在させ、偽造防止を図るものや、特許文献2のように、透明プラスチック基材の片側のラベルの粘着剤層に光学的に検知可能な物質を混入して、偽造防止を図るものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−261967号公報
【特許文献2】特開2008−281912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、タガントを用いて真偽判定を行う場合、精度の良い認証結果を得るためには、タガントをある程度多量に用いる必要があった。すると、特徴量データの算出や照合に時間がかかり、実用性を損ねる恐れがあった。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、微細物質(タガント)を対象物にランダムに付与し、個体識別に利用する個体識別システムにおいて、精度を損なわずに高速に対象物の検証を行うことが可能な個体識別装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するため第1の発明は、第1の微細物質、および前記第1の微細物質より少ない第2の微細物質が基材上にランダムに付与された対象物を撮影した撮影画像を取得する撮影画像取得部と、前記撮影画像に基づいて、前記対象物の前記第1の微細物質および前記第2の微細物質の配置パターンについて特徴量データを算出する特徴量データ算出部と、前記第2の微細物質についての特徴量データを、前記対象物につき予め算出された前記第2の微細物質についての特徴量データであるインデックス認証用データと照合し、一致しないと判定される場合には前記対象物の認証を否とし、一致すると判定される場合には、前記第1の微細物質についての特徴量データを、前記対象物につき予め算出された前記第1の微細物質についての特徴量データである本認証用データと照合することにより、前記対象物の認証の可否を判定する対象物識別部と、を具備することを特徴とする個体識別装置である。
【0009】
第1の発明によれば、予め、対象物を撮影した画像から、対象物に少数配置された微細物質の配置パターンにつき特徴量データを算出し、インデックス認証用データとしてデータベース等に登録するとともに、対象物により多数配置された、上記とは別の微細物質の配置パターンにつき特徴量データを算出し、本認証用データとしてデータベース等に登録する。
対象物の認証時、個体識別装置は、対象物を撮影した撮影画像から、対象物に少数配置された微細物質についての特徴量データを算出するとともに、多数配置された微細物質についての特徴量データを算出し、少数配置された微細物質についての特徴量データをデータベースに登録されているインデックス認証用データと照合し、認証成功した場合に、多数配置された微細物質についての特徴量データをデータベースに登録されている本認証用データと照合する本認証を行う。
【0010】
これにより、まず、少数付与された微細物質の配置パターンに基づいて簡易な認証(インデックス認証)を行うので、少数の微細物質の配置パターンより高速に特徴量データを算出できるとともに、この段階で認証失敗した対象物については直ちに認証失敗の結果を出力できる。一方、インデックス認証が成功した対象物については、続けて、多数付与された微細物質の配置パターンに基づいて高精度な認証(本認証)を行う。このように、段階的に認証処理を行うため、認証の精度を損なうことなく、高速に認証結果を得ることが可能となる。
【0011】
また、前記第1の微細物質と前記第2の微細物質は、少なくとも、色、大きさ、形のいずれかが異なることが望ましい。
微細物質の種類として、色、大きさ、形が異なる微細物質を用いれば、いずれも同じ撮像装置で光学的にその特徴を読取ることができるため、システム構成を簡素にできる。
【0012】
第2の発明は、個体識別装置による認証の対象となる個体識別対象物であって、第1の微細物質、および前記第1の微細物質より少ない第2の微細物質が基材上にランダムに付与され、前記個体識別装置により、前記個体識別対象物を撮影した撮影画像に基づいて、前記第1の微細物質および前記第2の微細物質の配置パターンについて特徴量データが算出され、前記第2の微細物質についての特徴量データが、前記対象物につき予め算出された前記第2の微細物質についての特徴量データであるインデックス認証用データと照合され、一致しないと判定される場合には前記個体識別対象物の認証を否とされ、一致すると判定される場合には、前記第1の微細物質についての特徴量データが、前記対象物につき予め算出された前記第1の微細物質についての特徴量データである本認証用データと照合されることにより、前記個体識別対象物の認証の可否を判定されることを特徴とする個体識別対象物である。
第2の発明は、第1の発明の個体識別装置による個体識別の対象物である。
また、前記第1の微細物質と前記第2の微細物質は、少なくとも、色、大きさ、形のいずれかが異なることが望ましい。
【0013】
第3の発明は、個体識別装置が、第1の微細物質、および前記第1の微細物質より少ない第2の微細物質が基材上にランダムに付与された対象物を撮影した撮影画像を取得する撮影画像取得ステップと、前記撮影画像に基づいて、前記対象物の前記第1の微細物質および前記第2の微細物質の配置パターンについて特徴量データを算出する特徴量データ算出ステップと、前記第2の微細物質についての特徴量データを、前記対象物につき予め算出された前記第2の微細物質についての特徴量データであるインデックス認証用データと照合し、一致しないと判定される場合には前記対象物の認証を否とし、一致すると判定される場合には、前記第1の微細物質についての特徴量データを、前記対象物につき予め算出された前記第1の微細物質についての特徴量データである本認証用データと照合することにより、前記対象物の認証の可否を判定する対象物識別ステップと、を実行することを特徴とする個体識別方法である。
第3の発明は、第1の発明の個体識別装置による個体識別方法である。
また、前記第1の微細物質と前記第2の微細物質は、少なくとも、色、大きさ、形のいずれかが異なることが望ましい。
【0014】
第4の発明は、個体識別装置を、第1の微細物質、および前記第1の微細物質より少ない第2の微細物質が基材上にランダムに付与された対象物を撮影した撮影画像を取得する撮影画像取得部と、前記撮影画像に基づいて、前記対象物の前記第1の微細物質および前記第2の微細物質の配置パターンについて特徴量データを算出する特徴量データ算出部と、前記第2の微細物質についての特徴量データを、前記対象物につき予め算出された前記第2の微細物質についての特徴量データであるインデックス認証用データと照合し、一致しないと判定される場合には前記対象物の認証を否とし、一致すると判定される場合には、前記第1の微細物質についての特徴量データを、前記対象物につき予め算出された前記第1の微細物質についての特徴量データである本認証用データと照合することにより、前記対象物の認証の可否を判定する対象物識別部と、して機能させるためのプログラムである。
第4の発明は、第1の発明の個体識別装置におけるプログラムである。
また、前記第1の微細物質と前記第2の微細物質は、少なくとも、色、大きさ、形のいずれかが異なることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、微細物質を対象物にランダムに付与し、個体識別に利用する個体識別システムにおいて、精度を損なわずに高速に対象物の検証を行うことが可能な個体識別装置等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】個体識別システム1の全体構成図
【図2】微細物質20A,20Bの配置例
【図3】微細物質20A,20Bの例
【図4】個体識別装置4のハードウエア構成を示すブロック図
【図5】個体識別装置4の機能構成を示す図
【図6】対象物2から抽出される特徴データ(インデックス認証用データと本認証用データ)について説明する図
【図7】データベース5に登録されるインデックス認証用データと本認証用データの例
【図8】登録処理の流れを説明するフローチャート
【図9】認証処理の流れを説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る個体識別装置等を含む個体識別システム1の構成を説明する。
図1に示すように、個体識別システム1は、個体識別要素としての微細物質(タガント)20A、20Bが基材上にランダムに付与された対象物2と、対象物2を撮影する撮像装置3と、個体識別装置4と、対象物2についての複数の認証用データ(後述するインデックス認証用データ及び本認証用データ)を記憶するデータベース5とを備える。
【0019】
図2に示すように、対象物2の基材上には、製造段階において、種類の異なる微細物質20A(第2の微細物質)、20B(第1の微細物質)がランダムに散布等されて付与される。微細物質20Aと微細物質20Bとは数量が異なるように付与される。微細物質20Aは対象物2に少数付与され、微細物質20Bは微細物質20Aより多数付与される。
【0020】
微細物質20A、20Bは異なる種類のものとするが、いずれも撮像装置3にて光学的に読取(撮影)可能かつ読み取った画像より識別可能なものを利用することが望ましい。これにより、システム構成を簡素にできる。
例えば、図3に示すように、微細物質20A、20Bは互いに(A)大きさ、(B)色、(C)形のいずれかが異なるものとすればよい。ただし、微細物質20A、20Bは異なる機器を用いて読み取られるようなものであってもよい。
また、微細物質20A、20Bは対象物2の全体に付与されてもよいし、一部に付与されていてもよい。
【0021】
撮像装置3は、カメラ、スキャナ等の光学的撮像装置であり、撮影した画像データを個体識別装置4に出力する。
【0022】
次に、図4を参照して個体識別装置4の構成について説明する。図4は、個体識別装置4のハードウエア構成を示すブロック図である。
【0023】
図4に示すように、個体識別装置4は、制御部41、記憶部42、入力部43、表示部44、メディア入出力部45、通信I/F部46、周辺機器I/F部47等がバス49を介して接続されて構成されたコンピュータ等により実現される。
【0024】
制御部41は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Accsess Memory)等により構成される。
CPUは、記憶部42、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス49を介して接続された各部を駆動制御する。ROMは、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持する。RAMは、ロードしたプログラムやデータを一時的に保持するとともに、制御部41が後述する各種処理を行うために使用するワークエリアを備える。また、制御部41は、記憶部42等に記憶されている処理プログラムに従って、図8に示す登録処理や図9に示す認証処理を実行する。各処理の詳細については後述する。
【0025】
記憶部42は、HDD(ハードディスクドライブ)であり、制御部41が実行するプログラムや、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティング・システム)等が格納されている。これらのプログラムコードは、制御部41により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて実行される。
【0026】
入力部43は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、タブレット等のポインティング・デバイス、テンキー等の入力装置であり、入力されたデータを制御部41へ出力する。
表示部44は、例えば液晶パネル、CRTモニタ等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路(ビデオアダプタ等)で構成され、制御部41の制御により入力された表示情報をディスプレイ装置上に表示させる。
【0027】
メディア入出力部45は、例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、PDドライブ、CDドライブ、DVDドライブ、MOドライブ等のメディア入出力装置であり、データの入出力を行う。
通信I/F46は、通信制御装置、通信ポート等を有し、ネットワークを介して所定の外部装置との通信を媒介する通信インタフェースであり、通信制御を行う。例えば、データベース5や撮像装置3との通信を媒介する。
【0028】
周辺機器I/F(インタフェース)47は、個体識別装置4に周辺機器を接続させるためのポートであり、個体識別装置4は周辺機器I/F47を介して周辺機器とのデータの送受信を行う。周辺機器I/F47は、USBやIEEE1394やRS−232C等で構成されており、通常複数の周辺機器I/Fを有する。周辺機器との接続形態は有線、無線を問わない。
バス49は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0029】
図1のデータベース5や撮像装置3は、個体識別装置4と通信I/F部46等を介して接続される。なお、後述する認証用データの登録時には、撮像装置3によって撮影した撮影画像データを記録メディアに記録し、メディア入出力部45を介して個体識別装置4に入力するようにしてもよい。
【0030】
次に、図5を用いて、個体識別装置4の機能構成について説明する。
図5に示すように、個体識別装置4は、撮影画像取得部51、特徴量データ算出部53、対象物識別部55等を有する。
【0031】
撮影画像取得部51は、個体識別装置4の制御部41が、対象物2を撮像装置3にて撮影した撮影画像を取得するものである。
特徴量データ算出部53は、個体識別装置4の制御部41が、撮影画像に基づいて、認証しようとする対象物2の微細物質20A、20Bの配置パターンに基づく固有の特徴量データを算出するものである。
対象物識別部55は、個体識別装置4の制御部41が、上記算出した特徴量データを、対象物2につき予め撮影した撮影画像に基づき認証時と同様の計算処理にて算出されデータベース5に登録した、微細物質20Aについての特徴量データであるインデックス認証用データおよび微細物質20Bについての特徴量データである本認証用データと照合することにより、対象物2の個体識別を行い認証の可否を判定するものである。
【0032】
図6は、対象物2から算出される特徴量データについて説明する図である。
対象物2には異なる種類の微細物質20A、20Bがそれぞれ異なる数量でランダムに付与されている。撮像装置3により読み取られた各対象物2の画像は、個体によって各微細物質20A、20Bの配置パターンが異なるため、微細物質20A、20Bの配置パターンに基づき固有の特徴量データを算出することができる。
【0033】
少数付与された微細物質20Aの配置パターンに基づいて算出された特徴量データは、インデックス認証用データ6Aとしてインデックス認証用に用いられる。また、より多数付与された微細物質20Bの配置パターンに基づいて算出された特徴量データは、本認証用データ6Bとして本認証用に用いられる。
インデックス認証用データ6A及び本認証用データ6Bは、対象物2のIDと対応付けてデータベース5に登録され、認証時には、対象物2の微細物質20A、20Bの配置パターンについて上記と同様の計算処理により算出された特徴量データと照合される。
【0034】
図7は、データベース5にインデックス認証用データ6Aと本認証用データ6Bとして登録される特徴量データの例を示す図である。
特徴量データとしては種々考えられるが、単純な例としては、例えば、ID「1」の対象物2から微細物質20Aの座標(10,30),(20,10),・・・を抽出し、インデックス認証用データ6Aとして登録するとともに、微細物質20Bの座標(40,50),(20,85),・・・を抽出し、本認証用データ6Bとして登録する。同様に、ID「2」の対象物2からも微細物質20A、微細物質20Bの座標を抽出し、それぞれインデックス認証用データ6A、本認証用データ6Bとして登録する。
微細物質20Aは微細物質20Bよりも少数であるので、インデックス認証用データ6Aとして抽出される微細物質20Aの座標数は、本認証用データ6Bとして抽出される微細物質20Bの座標数よりも少なくなる。
【0035】
上記は特徴量データとして微細物質20A、20Bの座標そのものを用いた簡単な例であるが、実際には、インデックス認証用データ6Aや本認証用データ6B(特徴量データ)としては、対象物2の撮影時のずれ(位置ずれ、回転ずれ、拡大・縮小ずれ)等にロバストな、微細物質20A、20Bの配置パターン等に基づく既知のアフィン不変量等の値を用いることが望ましい。
【0036】
次に、個体識別システム1における処理の流れを説明する。
まず、図8を参照して、認証用データの登録処理について説明する。
微細物質20A、20Bが付与された対象物2が撮像装置3にセットされると、撮像装置3により、対象物2の微細物質20A、20Bの配置パターンを示す画像が撮影される(ステップS101)。撮像装置3により撮影された撮影画像は、個体識別装置4に入力される。
【0037】
個体識別装置4の制御部41は、撮影画像を取得すると(ステップS102)、取得した撮影画像から、微細物質20Aの配置パターン(座標データ)を抽出する(ステップS103)。
すなわち、個体識別装置4の制御部41は、撮影画像より、微細物質20Aを示す点を、色、大きさ、形等により識別し抽出する。微細物質20Aの識別は、例えば、記憶部42に予め微細物質20Aの大きさ、形状、色等をテンプレートとして登録しておき、テンプレートに一致する点を抽出するなどすればよい。
【0038】
個体識別装置4の制御部41は、抽出した微細物質20Aの配置パターンに基づく特徴量データをインデックス認証用データ6Aとして算出する(ステップS104)。
【0039】
一方、個体識別装置4の制御部41は、撮像装置3から取得した撮影画像から、微細物質20Bの配置パターン(座標データ)を上記と同様に抽出する(ステップS105)。
そして、抽出した微細物質20Bの配置パターンに基づく特徴量データを本認証用データ6Bとして算出する(ステップS106)。
【0040】
個体識別装置4の制御部41は、ステップS104で算出したインデックス認証用データ6AとステップS106で算出した本認証用データ6Bとを対象物2のIDに対応付けてデータベース5に登録する(ステップS107)。個体識別装置4は、ステップS101〜ステップS107の登録処理を個々の対象物2について繰り返し行う。
【0041】
次に、図9を参照して、認証処理について説明する。
認証処理のステップS201〜ステップS206は登録処理のステップS102〜ステップS106と同様である。即ち、対象物2による認証が必要な箇所で撮像装置3を設置し、認証時、この撮像装置3に対象物2がセットされると、個体識別装置4の制御部41は、撮像装置3により対象物2の微細物質20A、20Bの配置パターンを示す画像を撮影する(ステップS201)。撮像装置3は撮影した画像を個体識別装置4に出力する。
【0042】
個体識別装置4の制御部41は、撮像装置3から撮影画像を取得すると(ステップS202)、上記の登録時と同様の計算処理により、取得した画像から微細物質20Aの配置パターン(座標データ)を抽出し(ステップS203)、微細物質20Aの配置パターンに基づき、インデックス認証用の特徴量データを算出する(ステップS204)。
さらに、個体識別装置4の制御部41は、撮像装置3から取得した画像から、上記の登録時と同様の計算処理により、微細物質20Bの配置パターン(座標データ)を抽出し(ステップS205)、抽出した微細物質20Bの配置パターンに基づき、本認証用の特徴量データを算出する(ステップS206)。
【0043】
そして、個体識別装置4の制御部41は、データベース5を検索し、ステップS204で得た微細物質20Aについてのインデックス認証用の特徴量データを、インデックス認証用データ6Aと照合する(ステップS207)。
照合の結果、一致するインデックス認証用データ6Aがない場合(ステップS208;無)は、本認証を行わずに認証NG(認証が「否」)と判定する(ステップS212)。
【0044】
照合の結果、一致するインデックス認証用データ6Aがあった場合、すなわちインデックス認証が成功した場合は(ステップS208;有)、次に、個体識別装置4の制御部41は、更に一致データに対し、ステップS206で得た微細物質20Bについての本認証用の特徴量データで照合を行う。すなわち、データベース5に登録されている本認証用データ6Bのうち、上述の一致データ(インデックス認証用データ6A)に対応付けられて登録されている本認証用データ6Bと、ステップS206で得た本認証用の特徴量データとを照合する(ステップS209)。
【0045】
照合の結果、一致する本認証用データ6Bがあった場合は(ステップS210;有)、認証OK(認証が「可」)であると判定する(ステップS211)。
一方、本認証が失敗した場合(ステップS210;無)は、認証NGであると判定する(ステップS212)。
【0046】
以上の認証可否を示す情報は、認証の目的に応じて必要な機器に出力することができる。また、認証OKの場合には、一致する本認証用データに対応するIDを、管理情報として適宜必要な機器に出力することもできる。
また、本実施形態の変形例として、ステップS205、S206の本認証用の特徴量データの算出処理は、ステップS208でインデックス認証が成功した場合にのみ、ステップS209の前に行うようにしてもよい。
【0047】
なお、ステップS208、ステップS210の照合処理において、「一致」とは、厳密な一致に限定する必要はなく、所定の許容範囲内にあるものも含むものとできる。その許容範囲は認証に必要な精度に応じて任意に設定できる。
【0048】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、対象物2に、異なる種類の微細物質20A、20Bを異なる数量となるように付与し、少数の微細物質20Aの配置パターンについての特徴量データをインデックス認証用データとしてデータベース5に登録するとともに、より多数の微細物質20Bの配置パターンについての特徴量データを本認証用データとしてデータベース5に登録し、段階的な認証処理に利用する。
対象物2の認証時、個体識別装置4は、対象物2を撮影した撮影画像から、対象物2に少数配置された微細物質20Aについての特徴量データを算出するとともに、多数配置された微細物質20Bについての特徴量データを算出し、少数配置された微細物質20Aについての特徴量データをデータベース5に登録されているインデックス認証用データと照合し、認証成功した場合に、多数配置された微細物質20Bについての特徴量データをデータベース5に登録されている本認証用データと照合する本認証を行う。
【0049】
これにより、まず、少数付与された微細物質20Aの配置パターンに基づいて簡易な認証(インデックス認証)を行うので、少数の微細物質20Aの配置パターンより高速に特徴量データを算出できるとともに、この段階で認証失敗した対象物2については直ちに認証失敗の結果を出力できる。一方、インデックス認証が成功した対象物2については、続けて、多数付与された微細物質20Bの分布に基づいて高精度な認証(本認証)を行う。このように、段階的に認証処理を行うため、認証の精度を損なうことなく、高速に認証結果を得ることが可能となる。
【0050】
また、微細物質の種類として、色、大きさ、形が異なる2種類の微細物質を用いれば、いずれも同じ撮像装置3で光学的に特徴を読取ることができるため、システム構成を簡素にできる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、図1では、個体識別装置4において認証用データの登録と認証処理を実現しているが、これに限らず、認証用データ登録用のコンピュータと、認証処理を行うコンピュータとは別のものとして構成してもよい。認証時には、認証処理を行うコンピュータが、認証用データを登録したコンピュータに算出した特徴量データを送信するなどして認証問い合わせを行うことになる。また、認証用データが登録されるデータベース5は、インターネット等のネットワークを介して接続された外部サーバ等に存在してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1・・・・・・・・・・・・個体識別システム
2・・・・・・・・・・・・対象物
20A、20B・・・・・・微細物質
3・・・・・・・・・・・・撮像装置
4・・・・・・・・・・・・個体識別装置
5・・・・・・・・・・・・データベース
6A・・・・・・・・・・・インデックス認証用データ
6B・・・・・・・・・・・本認証用データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の微細物質、および前記第1の微細物質より少ない第2の微細物質が基材上にランダムに付与された対象物を撮影した撮影画像を取得する撮影画像取得部と、
前記撮影画像に基づいて、前記対象物の前記第1の微細物質および前記第2の微細物質の配置パターンについて特徴量データを算出する特徴量データ算出部と、
前記第2の微細物質についての特徴量データを、前記対象物につき予め算出された前記第2の微細物質についての特徴量データであるインデックス認証用データと照合し、一致しないと判定される場合には前記対象物の認証を否とし、一致すると判定される場合には、前記第1の微細物質についての特徴量データを、前記対象物につき予め算出された前記第1の微細物質についての特徴量データである本認証用データと照合することにより、前記対象物の認証の可否を判定する対象物識別部と、
を具備することを特徴とする個体識別装置。
【請求項2】
前記第1の微細物質と前記第2の微細物質は、少なくとも、色、大きさ、形のいずれかが異なることを特徴とする請求項1記載の個体識別装置。
【請求項3】
個体識別装置による認証の対象となる個体識別対象物であって、
第1の微細物質、および前記第1の微細物質より少ない第2の微細物質が基材上にランダムに付与され、
前記個体識別装置により、前記個体識別対象物を撮影した撮影画像に基づいて、前記第1の微細物質および前記第2の微細物質の配置パターンについて特徴量データが算出され、前記第2の微細物質についての特徴量データが、前記対象物につき予め算出された前記第2の微細物質についての特徴量データであるインデックス認証用データと照合され、一致しないと判定される場合には前記個体識別対象物の認証を否とされ、一致すると判定される場合には、前記第1の微細物質についての特徴量データが、前記対象物につき予め算出された前記第1の微細物質についての特徴量データである本認証用データと照合されることにより、前記個体識別対象物の認証の可否を判定されることを特徴とする個体識別対象物。
【請求項4】
前記第1の微細物質と前記第2の微細物質は、少なくとも、色、大きさ、形のいずれかが異なることを特徴とする請求項3記載の個体識別対象物。
【請求項5】
個体識別装置が、
第1の微細物質、および前記第1の微細物質より少ない第2の微細物質が基材上にランダムに付与された対象物を撮影した撮影画像を取得する撮影画像取得ステップと、
前記撮影画像に基づいて、前記対象物の前記第1の微細物質および前記第2の微細物質の配置パターンについて特徴量データを算出する特徴量データ算出ステップと、
前記第2の微細物質についての特徴量データを、前記対象物につき予め算出された前記第2の微細物質についての特徴量データであるインデックス認証用データと照合し、一致しないと判定される場合には前記対象物の認証を否とし、一致すると判定される場合には、前記第1の微細物質についての特徴量データを、前記対象物につき予め算出された前記第1の微細物質についての特徴量データである本認証用データと照合することにより、前記対象物の認証の可否を判定する対象物識別ステップと、
を実行することを特徴とする個体識別方法。
【請求項6】
前記第1の微細物質と前記第2の微細物質は、少なくとも、色、大きさ、形のいずれかが異なることを特徴とする請求項5記載の個体識別方法。
【請求項7】
個体識別装置を、
第1の微細物質、および前記第1の微細物質より少ない第2の微細物質が基材上にランダムに付与された対象物を撮影した撮影画像を取得する撮影画像取得部と、
前記撮影画像に基づいて、前記対象物の前記第1の微細物質および前記第2の微細物質の配置パターンについて特徴量データを算出する特徴量データ算出部と、
前記第2の微細物質についての特徴量データを、前記対象物につき予め算出された前記第2の微細物質についての特徴量データであるインデックス認証用データと照合し、一致しないと判定される場合には前記対象物の認証を否とし、一致すると判定される場合には、前記第1の微細物質についての特徴量データを、前記対象物につき予め算出された前記第1の微細物質についての特徴量データである本認証用データと照合することにより、前記対象物の認証の可否を判定する対象物識別部と、
して機能させるためのプログラム。
【請求項8】
前記第1の微細物質と前記第2の微細物質は、少なくとも、色、大きさ、形のいずれかが異なることを特徴とする請求項7記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−29924(P2013−29924A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164307(P2011−164307)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】