説明

個体識別装置、個体識別方法、及びプログラム

【課題】所定の特性を有する微小細粒(タガント)を物品に付与し、更にその分布位置に基づいて高精度に個々の物品を識別することが可能な個体識別装置等を提供する。
【解決手段】個々の物品1の基材10上に、基材とは異なる光学反射特性を有し、かつ、異色の微細物質12、並びに特徴的な図案及び形状等を有する微細物質をランダムに配置しておく。また個々の物品をスキャナ等により光学的に読み取り、所定の画像処理を施して微細物質の特徴点及びその特徴点における色情報に関する特徴量を抽出し、基準特徴量データとして記憶部に記憶しておく。識別対象となる物品を上述の読み取りの際と同様の手法で読み取り、同様の画像処理を施して微細物質の対象物特徴量データを抽出する。そして、抽出した対象物特徴量データと記憶されている基準特徴量データとを比較することにより識別対象とする物品と基準物品とが同一個体であるか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の表面に付した微細物質の特徴に基づいて個体識別する個体識別装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工業製品や商品パッケージ等には製造番号が付与され、製造管理や物流管理に利用されている。製造番号は物品の所定位置に文字或いはバーコード等の符号として印字される。また、証明書等の公的証書や商品券等の有価証券に対し、偽造防止や真正性認証を目的としてシリアルナンバーが印字されている。しかし、製造管理や物流管理を目的として個体識別のための製造番号を付与する場合は、明確に視認或いは機械識別を行うことを目的としているため、明示的に印字されることが多く、本来の製品等の意匠性を損なうことがあった。また、偽造防止を目的とした場合、文字やバーコード等の印字は容易に偽造・変造される恐れがあり、その効果は不十分であった。
【0003】
この他の固体識別手段として、ICタグを用いて個別IDを付与する方法が提案されている。ICタグは書換え困難かつユニークなIDを各々付与することができ、非接触で読取可能なことから、製品の裏面や内部にICタグを設けることにより個体識別が可能となる。しかし、ICタグは単価が高く普及しにくいという問題があった。
【0004】
これらの問題に対し、クレジットカードや有価証券類の一部にホログラムや回折格子などの光回折構造(以下、単にホログラムともいう。)を形成し、偽造を防止することが知られている。
特許文献1には、ホログラムとタガント(追跡用添加物)としての微小細粒を存在させて真偽判別要素とし、偽造防止を図るラベルが提案されている。例えば、微小細粒が、白色光や紫外線または赤外線を照射することによってある波長範囲で蛍光などの光を放射する特性を有するものを採用した場合は、偽造判定を行う際に微小細粒をルーペ等で拡大し、放射光の特性を確認することで真偽判定を行っていた。
【0005】
また、特許文献2では、特許文献1のようなホログラムやタガントを用いず、個体そのものの表面の特徴を解析することで、真偽を判定する技術について記載されている。特許文献2には、例えば、個体の表面の特徴量として紙の透明度(紙を形成する繊維質材料の絡み具合等に起因する明暗パターン)をスキャナ等で読み取って、真の個体の表面特徴と判定対象の個体の表面特徴とをパターン比較することや、比較領域を移動させながら相関値を演算することや、相関値の最大値のノーマライズド・スコアを算出し、真偽を判定すること等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−261967号公報
【特許文献2】特許第4103826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されるラベルでは、ホログラムやタガントを組み合わせることにより偽造困難としているが、ホログラムとタガントの存在やラベルの層構造まで解析され、模倣された場合には真偽判定が難しくなる恐れがあった。また、特許文献2の手法は、個体表面がランダムな特徴を有する場合に適用可能なものであり、個体表面に特徴が少ないものには適用できなかった。また、真偽判定の精度を向上するためには原本の紙質を特殊なものとしたり、表面に特殊な加工を施したりする必要があるため製造コストの増大につながる恐れがあった。そのため、物品に容易に付与できるが、個々の物品から切り離せない固有の特徴に基づいて個体識別や真偽判定を行えるようにすることが望まれている。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、所定の特性を有する微小細粒(タガント)を物品に付与し、その分布位置に基づいて個々の物品を高精度に識別可能であり、且つ、識別処理の効率を高めることが可能な個体識別装置、個体識別方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するため、第1の発明は、基材上に、前記基材とは異なる反射性を有し、平面形状を有する微細物質をランダムに配置した物品を個体識別する個体識別装置であって、前記微細物質が付与された基材を撮影した画像から前記微細物質の特徴点を抽出する特徴点抽出手段と、前記画像の3次元色空間座標系の少なくとも一つの座標系を区分して前記微細物質の特徴点の色情報を特定する色情報特定手段と、前記微細物質の特徴点及び色情報に基づき、微細物質の近傍に存在する他の複数の微細物質の色情報を配列したものを各微細物質の特徴量とする特徴量算出手段と、前記微細物質が付与された基準物品を撮影した画像に対して前記特徴量算出手段により算出された各微細物質の特徴量を基準特徴量データとして記憶する記憶手段と、識別対象とする物品を撮影した画像に対して前記特徴量算出手段により算出した対象物の特徴量データと、前記記憶手段に記憶されている基準特徴点データとを比較することにより前記識別対象とする物品と前記基準物品とが同一個体であるか否かを判別する判別手段と、を備えることを特徴とする個体識別装置である。
【0010】
第1の発明によれば、ランダムに微細物質が付与された基準物品の画像から、微細物質の特徴点を特定し、特徴点が特定された複数の微細物質の色情報に基づき算出された特徴量を物品固有の特徴として識別可能とする。この微細物質は、表面にランダムに付与されるため個々の個体で異なっており、これに基づいて個体を識別するので、固有値を特異な値とすることができ、個体識別の精度が向上する。そして、記憶された基準物品の基準特徴量と、識別対象とする物品の画像から算出された微細物質の特徴量とを比較することにより識別対象とする物品と基準物品とが同一個体であるか否かを判別する。
【0011】
これにより、個々の物品に付与した微細物質の特徴量に基づいて個体識別や真偽判定を行うことが可能となる。また、複数の微細物質の色情報の配列からなる特徴量で識別するので、各微細物質の正確な位置関係を特定する必要が無く、撮影画像の歪みやノイズの影響を受けにくく、識別精度が向上する。また、各微細物質の角度や面積等の位置に関する計算が不要であり、識別処理の効率が良く、識別までの所要時間を短縮できる。また、微細物質を表面に付与できる物品であれば、どのような形状、構造、性質の物品であっても個体識別可能であるため、適用対象が広く、実用性に優れる。さらに、個体識別用の特別な形式のコード等を印刷する必要がないため、製品の意匠性を損なわない。また、識別用のICタグ等を付加する必要もないため、低コストで実現できる。
【0012】
さらに、第1の発明において、前記特徴量算出手段は、微細物質間の距離が近い順に色情報を配列して特徴量とすることが望ましい。
【0013】
従来の個体識別装置では、特徴点同士の相対位置や距離の値に基づき物品の個体を識別するため、撮影画像の歪みや物品自体の歪みの影響を受けやすかった。しかし、本発明において、微細物質間の距離が近い順に色情報を配列して特徴量とすることにより、微細物質を基材上にランダムに配置した物品の個体を識別するために、基準物品に付与された前記微細物質の距離が近い順に配列した色情報を特徴量として用いるので、撮影画像の歪みの影響をほとんど受けず、識別能力が格段に向上する。
【0014】
更に、第1の発明において、前記微細物質が付与された基材を撮影した画像から各微細物質の形状情報を特定する形状情報特定手段を更に備え、前記特徴量算出手段は、微細物質の近傍に存在する他の複数の特徴点の色情報及び形状情報を特徴量とすることが望ましい。
これにより、特徴点の色情報に加えて、微細物質の形状情報を特徴量として用いることにより、識別パターンが相乗的に増加し、識別精度が向上する。
【0015】
第2の発明は、基材上に、前記基材とは異なる反射性を有し、平面形状を有する微細物質をランダムに配置した物品を個体識別する個体識別方法であって、前記微細物質が付与された基材を撮影した画像から前記微細物質の特徴点を抽出するステップと、前記画像の3次元色空間座標系の少なくとも一つの座標系を区分して前記微細物質の特徴点の色情報を特定するステップと、前記微細物質の特徴点及び色情報に基づき、微細物質の近傍に存在する他の複数の微細物質の色情報を配列したものを各微細物質の特徴量とするステップと、前記微細物質が付与された基準物品を撮影した画像に基づいて算出された各微細物質の特徴量を基準特徴量データとして記憶するステップと、識別対象とする物品を撮影した画像に基づいて算出された対象物の特徴量データを、記憶されている基準特徴点データと比較することにより前記識別対象とする物品と前記基準物品とが同一個体であるか否かを判別するステップと、を備えることを特徴とする個体識別方法である。
【0016】
第2の発明によれば、ランダムに微細物質が付与された基準物品の画像から、微細物質の特徴点を特定し、特徴点が特定された複数の微細物質の色情報から算出された特徴量を物品固有の特徴として識別可能とする。この微細物質は、表面にランダムに付与されるため個々の個体で異なっており、これに基づいて個体を識別するので、個体識別の精度が向上する。そして、記憶された基準物品の基準特徴量と、識別対象とする物品の画像から算出された微細物質の特徴量とを比較することにより識別対象とする物品と基準物品とが同一個体であるか否かを判別する。
【0017】
すなわち、色情報に基づき算出された特徴量で識別するので、各微細物質同士の正確な位置関係を特定する必要が無く、撮影画像の歪みやノイズの影響を受けにくいので、識別精度が向上する。また、各微細物質の角度や面積等の位置に関する計算が不要であり、識別処理の効率が良く、識別までの所要時間を短縮できる。また、微細物質を表面に付与できる物品であれば、どのような形状、構造、性質の物品であっても個体識別可能であるため、適用対象が広く、実用性に優れる。さらに、個体識別用の特別な形式のコード等を印刷する必要がないため、製品の意匠性を損なわないうえに、識別用のICタグ等を付加する必要がなく、低コストで高精度の個体識別を実現できる。
【0018】
第3の発明は、基材上に、前記基材とは異なる反射性を有し、平面形状を有する微細物質をランダムに配置した物品を個体識別するコンピュータにより読み取り可能な形式で記述されたプログラムであって、前記微細物質が付与された基材を撮影した画像から前記微細物質の特徴点を抽出するステップと、前記画像の3次元色空間座標系の少なくとも一つの座標系を区分して前記微細物質の特徴点の色情報を特定するステップと、前記微細物質の特徴点及び色情報に基づき、微細物質の近傍に存在する他の複数の微細物質の色情報を配列したものを各微細物質の特徴量とするステップと、前記微細物質が付与された基準物品を撮影した画像に基づいて算出された各微細物質の特徴量を基準特徴量データとして記憶するステップと、識別対象とする物品を撮影した画像に基づいて算出された対象物の特徴量データと、記憶されている基準特徴点データとを比較することにより前記識別対象とする物品と前記基準物品とが同一個体であるか否かを判別するステップと、を含む処理をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0019】
第3の発明により、コンピュータを第1の発明の個体識別装置として機能させることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、所定の光学的特性を有する微細物質(タガント)を物品に付与し、その微細物質の色情報に基づいて、効率良く、高精度に個々の物品を識別することが可能な個体識別装置、個体識別方法、及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を適用する物品1について説明する図
【図2】反射性金属層3を有する微細物質12A、12Bの構造の例
【図3】誘電率の異なる多層薄膜4を有する微細物質12Cの構造の例
【図4】光回折構造体層5を有する微細物質12Dの構造の例
【図5】特定照射光に対し所定の反射光を放射する反射層6を有する微細物質12Eの構造の例
【図6】個体識別処理の手順を説明するフローチャート
【図7】本発明に係る個体識別装置100のハードウエア構成図
【図8】微細物質分布解析処理の流れを説明するフローチャート
【図9】基準物品及び対象物品と、読み取る画像データ(絶対位置での比較の場合)の例
【図10】基準物品及び対象物品と、読み取る画像データ(相対位置での比較の場合)の例
【図11】特徴点データの相対位置情報の算出について説明する図
【図12】間引き処理を説明するフローチャート
【図13】ノイズ除去処理を説明するフローチャート
【図14】所定の文字、図形、記号、模様もしくはこれらを結合したものが付され、かつ、所定の3次元形状を有する微細物質82の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0023】
まず、図1を参照して、本発明を適用する物品1について説明する。
図1(a)は物品1の上面図、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図である。
物品1は、その基材10上にタガント(taggant:追跡用添加物)分布層11を有する。タガント分布層11には、基材10とは異なる反射性を有するタガント(微細物質)12(以下、微細物質12と記載する。)がランダムに複数配置されている。タガント分布層11の微細物質12は、例えば、印刷インクに混入して基材10に印刷を施したり、粘着剤等に混入して塗布したりすることで、物品1の基材10上のランダムな位置に配置される。
【0024】
なお、図1(a)では、物品1は基材10及びタガント分布層11のみを図示しているが、図1(b)に示すように、タガント分布層11の上面を更に透明プラスチック等のオーバーコート層で被覆し、タガント分布層11を保護するようにしてもよい。更に、基材10とタガント分布層11との間に、例えば感温変色材料層等、基材10やタガント分布層11とは異なる機能を有する層を形成してもよい。また、基材10としては、物品1の機能や性質、デザイン等に応じていかなる材料を利用してもよい。また、タガント分布層11は、物品の表面の全部に設けられてもよいし、一部に設けてもよい。
【0025】
次に、図2〜図5を参照して、微細物質12について説明する。図2〜図5は、様々な態様の微細物質12A〜12Eの断面図である。微細物質12は、ルーペで拡大するとその形状や表面の光学的特徴を視認できる大きさ(数μm〜数百μm程度)の微細な細粒である。また、本発明では、微細物質12を色で識別する点に特徴があるため、微細物質12は、少なくとも光学的に画像として読み取った場合に抽出可能な色を有する。さらに、微細物質12は、異なる色のものを混在させて用いる。
【0026】
すなわち、本発明で用いる微細物質は、画像として読み取ると、色及び平面形状を認識できる形状を有するものであれば、印刷したインクが固化したもの、紙片、プラスチック片、金属片等、材質を問わず用いることが可能であり、識別精度やコストに応じて適宜選定できる。
しかし、光学的な読み取り易さ、隠匿性等の機能を高めるために、微細物質は、例えば、図2に示すように反射性金属層3を有するもの、図3に示すように誘電率が異なる薄膜を多層にコート(多層薄膜4)したもの、図4に示すように光回折構造体層5を有するもの、図5に示すように、所定の照射光に対して特定の反射特性を有する反射層6を有するもの等を採用することが好適である。
【0027】
なお、図2〜図5の微細物質12A,12B,12C,12D,12Eは、説明のために断面形状を円形として示しているが、本発明の実施の形態では、これに限定されるものではなく、微細物質12の形状は、画像データとして読み取った際に、平面形状として抽出可能であれば、任意としてよい。例えば、偏平形状のものや、粉砕してランダムな形状となったものを微細物質12の基材120として用いるようにしてもよい。タガントの形状としては、動物や乗り物等の意味のある形状にしてもよい。
【0028】
図2の微細物質12Aは、微細物質12の基材120の表面に反射性金属層3を形成したものである。
【0029】
反射性金属層3を不透明層とする場合は、屈折率が小さい薄膜とすればよく、一般的に使用されるアルミニウムの他に、例えば、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、金、マグネシウム、鉛、錫、カドミウム、ビスマス、チタン、亜鉛、インジウム等の金属、または、その酸化物、窒化物、または、これらの金属の合金等を使用する。
また、反射性金属層3を透明層とする場合は、屈折率が大きい薄膜とすればよく、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化シリコン、硫化アンチモン等を使用する。
【0030】
反射性金属層3の形成は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの薄膜形成法によって行う。
反射性金属層3の厚みは目的に応じて設定する。例えば、0.005μm〜0.1μmの厚さとすればよい。
【0031】
反射性金属層3は微細物質12Aの基材120の表面の全部に付与されてもよいし、一部に付与されてもよい。また、例えば、文字、図形、記号、模様等やこれらの組み合わせからなる図案として、反射性金属層3を付与するようにしてもよい。
【0032】
基材120には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル),ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、セルローストリアセテート、ポリスチレン、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレンを使用すればよい。
【0033】
また、図2(B)に示す微細物質12Bのように、反射性金属層3を透明な被覆層31で覆い、保護するようにしてもよい。被覆層31の材料は、ポリエチレン、ワックス、シリコン、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルム等が好適である。
【0034】
微細物質12A,12Bのように反射性金属層3を有することにより、後述する微細物質分布解析処理(図8)において、特徴点として抽出しやすくなる。また、微細物質12の分布が確認しやすく、ルーペ(拡大鏡)による真偽判定が行いやすくなる。
【0035】
図3の微細物質12Cは、基材120の表面に誘電率の異なる薄膜を多層に形成したものである。例えば、天然雲母薄片(マイカフレーク)等の基材120に酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物をコートした顔料(パール顔料)や、合成アルミナフレーク、合成シリカフレーク、ホウ珪酸ガラスフレーク、酸化チタン被覆、合成マイカフレーク(酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、フッ素化合物等)等の基材120に、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物をコートした顔料(エフェクト顔料)等が微細物質12Cとして使用できる。
多層薄膜層4の厚みは目的に応じて設定する。例えば、0.005μm〜0.1μmの厚さとすればよい。
【0036】
微細物質12Cは見る角度によって色が変化するため、後述する微細物質分布解析処理(図8)において、特徴点として抽出しやすくなる。また、ルーペによる真偽判定が行いやすくなるという効果もある。
【0037】
図4の微細物質12Dは、基材120の表面に光回折構造体層5を形成したものである。光回折構造体層5とは、ホログラムの微細凹凸が形成された層であるが、光回折構造体層5自体は、ホログラムの微細凹凸の形成が可能な種々の素材を用いて形成できる。例えば、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネートなどの透明な熱可塑性樹脂、或いは、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン系アクリレート等の透明熱硬化性樹脂等を使用できる。更には、上述の熱可塑性樹脂と上述の熱硬化性樹脂とを混合して使用し、更に、ラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性物質、或いは、これらにラジカル重合性不飽和単量体を加え電離放射線硬化性としたものなどを使用してもよい。
【0038】
光回折構造体層5は微細物質12Dの全面に付与されてもよいし、一部に付与されてもよい。
また、光回折構造体層5を透明な被覆層(不図示)で覆い、保護するようにしてもよい。
【0039】
光回折構造体5へのホログラムの微細凹凸の形成は、回折格子やホログラムの干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型として用い、基材に上述の樹脂を塗布用組成物として調製したものを、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法などの手段で塗布して塗膜を形成し、その上に上述の原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段によって両者を加熱圧着して行なうことができる。また、フォトポリマーを用いる場合は、基材上に、フォトポリマーを同様に塗布した後、上述の原版を重ねてレーザー光を照射することにより複製できる。
光回折構造体層5の厚みは目的に応じて設定する。例えば、0.005μm〜0.1μmの厚さとすればよい。
【0040】
また、図4の微細物質12Dにおいて、ホログラムの微細凹凸の回折効率を高めるために、更に、反射性金属層を設けてもよい。その反射性金属層は、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、金、ゲルマニウム、アルミニウム、マグネシウム、アンチモン、鉛、錫、カドミウム、ビスマス、セレン、ガリウム、インジウム、ルビジウム等の金属、または、その酸化物、窒化物、または、これらの金属の合金等を使用できる。反射性金属層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの薄膜形成法によって形成することが好ましいが、メタリック顔料を含有するメタリックインクを用いて印刷することによって形成してもよい。
【0041】
微細物質12Dのように光回折構造体層5を有することにより、後述する微細物質分布解析処理において、光学的な読み取りが容易となり特徴点として抽出しやすくなる。また、ルーペによる確認がしやすくなる。その他、特定波長の光(レーザ光等)を照射してホログラム図案を再生し、ホログラム図案の判定を微細物質の分布の判定と合わせて行うことにより、偽造防止効果が高くなる。
【0042】
また、個々の微細物質12Dに付与されるホログラム図案は、同一としてもよいし、異なっていてもよい。異なるホログラム図案を付与する場合は、よりセキュリティ効果が高くなる。一方、同一のホログラム図案を付与する場合は、異なるホログラム図案を付与する場合と比べてコストダウンが可能となる。
【0043】
図5の微細物質12Eは、所定の照射光に対し、特定波長の光を放出する反射層6を形成したものである。反射層6は、例えば、基材120の表面に蛍光顔料を含む樹脂を塗布するか、印刷インクに蛍光顔料を混入して印刷することにより形成される。
【0044】
蛍光顔料として使用される無機蛍光体に用いられる材料は、例えば、紫外線発光蛍光体または赤外線発光蛍光体等である。紫外線発光蛍光体は紫外線により励起され、それよりも低いエネルギー準位に戻るときに発するスペクトルのピークが青、緑、赤等の波長域にあるもので、例えばCaCl:Eu2+、CaWO、ZnO:ZnSiO:Mn、YS:Eu、ZnS:Ag、YVO:Eu、Y:Eu、GdS:Tb、LaS:Tb、YAl12:Ce等があり、単体又はこれらから数種を選択し混合して使用することができる。その蛍光スペクトルはピークを青、赤、緑の波長域以外に持つものである。また赤外線発光蛍光体は波長λ1の励起光を受けて、波長λ2の可視光を発光する特性を示し、λ1≠λ2かつλ1>λ2なる性質を有するものとして、その組成は例えば、YF:Er+Yb、YOCl:Er+Yb、NaLnF:Er+Yb(Ln=Y,Gd,La)、BaY:Er+Yb、(PbF−GeO):Er+Yb、(PbF−GeO):Tm+Yb等があり、いずれも励起光(λ1)800〜1000nmの赤外線を受けて450nm〜650nmに発光スペクトルの顕のピークを有する可視光線(λ2)を発光するものである。
【0045】
反射層6は微細物質12Eの全面に付与されてもよいし、表面の一部に付与されてもよい。また、例えば、文字、図形、絵柄、模様等の図案として、反射層6を付与するようにしてもよい。
また、反射層6を透明な被覆層で覆い、保護するようにしてもよい。
反射層6の厚みは目的に応じて設定する。例えば、0.005μm〜0.1μmの厚さとすればよい。
【0046】
微細物質12Eのように特定照射光による反射層6を有することにより、後述する微細物質分布解析処理において、光学的な読み取りが容易となり、特徴点として抽出しやすくなる。また、通常の白色光の下では発光しないため、隠匿性が高く、模倣を防止しやすい。また、特徴点の抽出が容易となり、個体識別精度が高くなる。
【0047】
次に、物品1の個体識別方法について説明する。
まず、図6に示すように、検査用の所定の照射光を照射する検知器等を用いて、物品1のタガント分布層11に付与された微細物質12の放射光を放射させ、ルーペ等を用いて拡大し、視認することでその特性を判断することにより、大まかに真偽が判定される(ステップS1)。ステップS1で真と判定された物品1について、更に、コンピュータ等の個体識別装置100を用いた微細物質分布解析処理(ステップS2)を施すことにより、真偽が判定される。
【0048】
微細物質分布解析処理では、物品1にランダムに付与されたタガント(微細物質12)の特徴点及び色情報を読み取り、複数の特徴点における色情報をその個体の特徴量として照合に利用する。
なお、例えば、微細物質12を印刷インクに混入して付与した場合は、たとえ同じ機種の印刷装置であっても個々の印刷装置には固有の癖があり、厳密には同じ仕上がり状態を得られない。そのため、印刷装置や、用いるインク、インクの残存量、印刷の設定、更には、印刷時の気温や湿度等の諸条件によって、異なる印刷結果を得る。また、微細物質の混入の割合等によっても微細物質の分布は異なる。本発明は、予め真の物品の微細物質12の分布位置を求め、基準特徴点データとして記憶しておき、比較対象とする物品の微細物質12の分布と比較照合することにより個体の一致、不一致(真偽)を判別しようとするものである。
【0049】
まず、微細物質分布解析処理を行う個体識別装置100について説明する。図7は、個体識別装置100のハードウエア構成を示すブロック図である。図7に示すように、個体識別装置100は、制御部101、記憶部102、入力部103、表示部104、メディア入出力部105、通信I/F部106、周辺機器I/F部107等がバス109を介して接続されて構成される。また、周辺機器I/F部107には画像読取装置108が接続されている。
【0050】
制御部101は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Accsess Memory)等により構成される。
CPUは、記憶部102、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス109を介して接続された各部を駆動制御する。ROMは、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持する。RAMは、ロードしたプログラムやデータを一時的に保持するとともに、制御部101が後述する各種処理を行うために使用するワークエリアを備える。
【0051】
記憶部102は、HDD(ハードディスクドライブ)であり、制御部101が実行するプログラムや、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティング・システム)等が格納されている。これらのプログラムコードは、制御部101により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて実行される。
【0052】
入力部103は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、タブレット等のポインティング・デバイス、テンキー等の入力装置であり、入力されたデータを制御部101へ出力する。
【0053】
表示部104は、例えば液晶パネル、CRTモニタ等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路(ビデオアダプタ等)で構成され、制御部101の制御により入力された表示情報をディスプレイ装置に表示させる。
なお、入力部103と表示部104が一体的に構成されたタッチパネル式の入出力部としてもよい。
【0054】
メディア入出力部105は、例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、PDドライブ、CDドライブ、DVDドライブ、MOドライブ等のメディア入出力装置であり、データの入出力を行う。
通信I/F106は、通信制御装置、通信ポート等を有し、ネットワークとの通信を媒介する通信インタフェースであり、通信制御を行う。
【0055】
周辺機器I/F(インタフェース)107は、コンピュータに周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器I/F107を介してコンピュータは周辺機器とのデータの送受信を行う。周辺機器I/F107は、USBやIEEE1394やRS−232C等で構成されており、通常複数の周辺機器I/Fを有する。周辺機器との接続形態は有線、無線を問わない。
【0056】
画像読取装置108は、スキャナ、CCDカメラ等であり、画像を光学的に読み取り、画像データとして取得する装置である。画像読取装置108は、周辺機器I/F107を介して個体識別装置100に接続される。或いは、画像読取装置108は、通信I/F106を介して個体識別装置100と通信接続される構成としてもよい。画像読取装置108は読み取った画像データを制御部101へ出力する。制御部101は取得した画像データをRAMまたは記憶部102の所定のメモリ領域に記憶する。
バス109は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0057】
次に、微細物質分布解析処理の流れを説明する。
図8は、微細物質分布解析処理の流れを説明するフローチャート、図9、図10は基準物品及び対象物品と、読み取る画像データの例、図11は、特徴量の算出処理について説明する図である。
【0058】
図8に示すように、個体識別装置100の制御部101は、まず事前処理(ステップS101〜ステップS106)を行う。事前処理では、まず画像読取装置108を用いて基準物品(真の物品)に付与されたタガント分布層11を光学的に読み取る(ステップS101)。読み取り対象とする部位は、タガント分布層11の全部としてもよいし、一部としてもよい。
【0059】
一例として図9に示すように、タガント分布層11の一部領域15を読み取るものとする。制御部101は、画像読取装置108によって読み取った画像データ(階調画像)を基準画像データとしてRAMに保持する。
【0060】
次に、制御部101は、読み取った基準画像データに対して、特徴点抽出のための画像処理を行う(ステップS102)。特徴点を抽出するための画像処理としては、例えば、(A)中央値による二値化処理、(B)平均値による二値化処理等を採用することができる。以下、各処理について説明する。
【0061】
(A)中央値による二値化処理
以下の式(1)により算出される閾値Scにより、読み取った画像データ(階調画像)を二値化する。
【0062】
閾値Sc=(画像内の最大輝度値‐画像内の最少輝度値)/2・・・(1)
【0063】
(B)平均値による二値化処理
以下の式(2)により算出される閾値Saにより、読み取った画像データ(階調画像)を二値化する。
【0064】
閾値Sa=Σ(各画像の輝度値)/画素総数・・・(2)
【0065】
次に、二値化された画像データにおいて、各微細物質の輪郭線を抽出して、微細物質の形状を数量化処理し、各微細物質の領域の中心となる重心を求め、これを各微細物質の特徴点として抽出する(S102)。
微細物質の重心は、以下の式(3)により算出される。
【0066】
【数1】

【0067】
ここで、微細物質の面積(画素数)をnとし、輪郭の各画素の座標を(xi,y)とする。
本明細書において、特徴点とは、式(3)で得られた重心の座標で表される画素を言う。そして、HSV変換された画像において、この重心の画素における色相等の値から得られる所定の値を色情報と言う。色情報の詳細は後述する。
【0068】
上述の画像処理により微細物質の分布位置を特徴点として抽出し、抽出した特徴点の位置情報を求めて、基準特徴点データとしてRAMまたは記憶部102に記憶する(ステップS103)。
【0069】
ここで、特徴点の位置情報は、絶対位置情報でもよいし、相対位置情報でもよい。
【0070】
絶対位置情報を採用する場合は、図9に示すように、画像データの読取範囲は、基準物品と後に読み取る対象物品とで同じ位置、同じ向き、同じ範囲(同じ形状、同じ面積)とする必要がある。そのため、物品1に読取位置を示すマーカ等を予め付与しておくことが望ましい。
また、絶対位置情報は、読み取った画像データを所定の画素数で正規化し、正規化後画像データの、例えば中心点を原点として各特徴点の2次元絶対位置座標(X,Y)を求めればよい。
【0071】
また、相対位置情報を採用する場合は、画像データの読取範囲は、図10(a)、図10(b)に示すように、基準物品1Aと後に読み取る対象物品1Bとで同じとする必要がない。
【0072】
次に、画像読取装置108によって読み取った基準画像データをHSV変換する(ステップS103)。ここではHSV変換をおこなっているが、RGBの3次元色空間座標系を用いてもよいし、他の3次元色空間座標系に変換して用いてもよい。
【0073】
次に、各特徴点の色情報を特定する(ステップS104)。色情報は、色相、明度、彩度に基づき、特徴点の色を数値化する。なお、数値化される色情報は、色相の値のみでもよいし、色相に、明度や彩度の値を加えて数値化しても良い。なお、微細物質は、大きさや形状にバラつきがあるが、本発明では、各微細物質の特徴点(重心)における色情報を数値化する。例えば、色相の範囲を赤色、緑色、青色に区分けしておき、赤色を1、緑色を2、青色を3として定義する。特徴点の色相が、赤色の範囲に入るのであれば、特徴点情報を1と数値化する。RGBを用いるのであれば、RGBの3次元色空間座標系を区分して、赤色、緑色、青色に対応づけて、同じように、赤色を1、緑色を2、青色を3として数値化して、特徴点のRGBの値が赤色の範囲に入れば、特徴点情報を1と数値化してもよい。
【0074】
次に、制御部101は、抽出した各特徴点の色情報に基づき、微細物質の特徴量を算出し、特徴量としてRAMに記憶する(ステップS105)。具体的には、微細物質の近傍に存在する他の複数の微細物質の色情報を配列したものを各微細物質の特徴量とする。例えば、特徴点Aからの距離が近い順に、5つの特徴点(点B〜点F)の色情報を配列したものを、特徴点Aの特徴量とする。なお、色情報として配列させる近傍の特徴点の数は任意に設定することができる。
【0075】
図11に示す例の場合、任意に着目した特徴点Aと、この特徴点Aの近傍の複数の特徴点の色情報を用いる。同様に、特徴点B〜特徴点Fを着目した特徴点として各特徴点の特徴量を算出する。例えば、図11に示す各特徴点A〜Fの色情報が以下の通りである場合、各特徴点A〜Fの特徴量は表1に示す通りとなる。
【0076】
特徴点A・・・1(赤)
特徴点B・・・2(緑)
特徴点C・・・2(緑)
特徴点D・・・1(赤)
特徴点E・・・3(青)
特徴点F・・・3(青)
【0077】
【表1】

【0078】
なお、表1に示す例では、特徴点Aの特徴量には、特徴点Aの色情報を含めないものを挙げたが、着目した特徴点Aの色情報を特徴量の配列に含めても良い。
【0079】
なお、タガント分布層11に分布する各微細物質の形状は、すべて同一のものとしてもよいし、異なるものとしてもよい。
しかし、本発明に用いる微細物質は、色の他に、所定の形状が付されるものを採用することがより好ましい。ここで、微細物質は、埃や塵等と識別可能なものとするために、人為的に所定の形状が付与されたものが好ましい。
例えば、図11に示す例では、画像の外形状が円形、三角形、四角形となる微細物質12が混在する。このように、異なる形状の微細物質12を混ぜ合わせ、タガント分布層11にランダムに配置しても良い。この場合、例えば、円形を1、三角形を2、四角形を3という具合に設定し、形状情報特定手段により特定した形状情報を、各特徴点の色情報に付加してもよい。微細物質の形状特定手法は、公知技術を用いれば良い。
【0080】
異なる形状の微細物質を分布させる場合は、色による識別に加えて、個体識別処理による個体識別性が向上する。一方、同一形状の微細物質を分布させる場合は、異なる形状の微細物質を付与する場合と比べて低コストで実現できる。
【0081】
また、微細物質は、その外形状を所定の形状とする場合の他、所定の文字、図形、記号、模様もしくはこれらを結合したもの(以下、図案という)を採用しても良い。
図14は、微細物質82の一例であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は図14(b)のA−A線断面図である。
図14では、微細物質82の形状を六角柱とし、一部に「D」の文字(図案7)が付与されている。
【0082】
また、微細物質82を光学反射性のある材料によって形成するか、表面に光学反射性のある反射材料層71を設けるようにしてもよい。
すなわち、図14(c)に示すように、基材73の表面に図案形成層72を設け、更にその上面に反射材料層71を形成するようにしてもよい。微細物質82の基材73には、金属や樹脂等を用いる。
【0083】
図案形成層72は、印刷、刻印等により図案7が付与される。図案7は、基材73と異なる色の染料等を用いて形成される。
このように、図案7を有する微細物質82を用いる場合、図案7の色を色情報として用い、画像のHSV変換後に各特徴点の色情報(図案7の色情報)を抽出し易いように、基材73は、発色の低い染料等を用いることが好ましい。
【0084】
反射材料層71は、物品8の基材81及び図案72の染料75とは異なる反射性を有する材料を用いて形成される。例えば、反射性金属層3を有するもの(図2)、誘電率が異なる薄膜を多層にコート(多層薄膜4)したもの(図3)、光回折構造体層5を有するもの(図4)、所定の照射光に対して特定の反射特性を有する反射層6を有するもの(図5)等を採用することが好適である。
【0085】
このように、各微細物質12が、異なる色である他に、異なる形状や図案を有する場合、ステップS2の微細物質分布解析処理を行う際に、物品の真偽を正確に判定することが容易となる。すなわち、各特徴点の特徴量として、n種の色情報に加えて、m種の形状情報を組み合わせることにより、特徴量の判定要素の組み合わせが広がり、対象とする物品の真偽をより正確に判定することが可能となる。また、例えば、対象物の汚損等に起因して、読取画像の微細物質の色情報に誤差が生じた場合等であっても、形状や図案に基づく情報を特徴量として有することにより、特徴量の精度を補完することができる。
【0086】
ランダムに配置されている微細物質82の分布位置情報を基準特徴点データとして記憶しておき、これに基づいて対象とする物品の真偽を正確に判定することが可能となる。また、ルーペによる視認の段階(ステップS1)で真偽の判定が容易になる。
【0087】
このように、本発明は、ランダムに分散させた微細物質の色情報を用い、且つ、各特徴点の近傍に存在する複数の特徴点の色情報を組み合わせたデータを特徴量として用い、固体識別を行うので、画像から算出される特徴量の計算量を小さく抑えながら、識別精度を高く保つことができる。すなわち、従来は、各特徴点の座標を特定し、特徴点同士の角度や距離を算出して特徴量としていた。このような従来の特徴量の場合、特徴点の座標と角度の算出過程が必要となるため、計算量が大きくなる。また、特徴点同士の角度や距離を算出して特徴量とすると、撮影画像の小さな歪みやノイズによっても、特徴点同士の角度にずれが生じ易いという問題があった。
具体的に、微細物質が図11に示すような分布が得られた場合に、従来例と、本件発明とを比較する。
【0088】
従来例は、特徴量として、特徴点同士の角度を算出するので、3つの特徴点の座標を特定し、その3点間の角度を計算する必要がある。すなわち、着目特徴点Aから、最近傍点である特徴点Bへのベクトルを基準ベクトルとし、着目特徴点Aから第m特徴点へのベクトルと、基準ベクトルとのなす角度を特徴量とする場合、特徴点の総数をnとすると、特徴量の計算回数は、O(n×m)回(n×mのオーダー)となる。つまり、n個の特徴点を着目点とし、毎回m個の角度を特徴量として算出する必要がある。
また、3点間のベクトルのなす角度に基づき、特徴量を算出するため、画像の歪み等によりその角度が変化し易く、対象物の判別精度が影響を受け易い。
【0089】
これに対し、本発明の場合、色情報も形状情報も、各特徴点に対して1回だけ計算すればよいので、特徴量の計算回数は、O(n)回(nのオーダー)となる。
また、本発明の色情報や形状情報を算出する処理は、従来例の3点間のベクトルのなす角度を算出するよりも簡易である。したがって、識別までの所要時間を短縮できると言える。
【0090】
また、本発明は、各特徴点と、近傍特徴点間の距離の近い順に、特徴点の色情報を配列して特徴量を算出することができるので、従来法に比べて計算量を小さくすることができるうえに、撮影画像の歪みの影響を受けにくく、判定制度が向上する。
【0091】
上述の処理により抽出した特徴点の分布位置と、各特徴点の特徴量を基準特徴量データとしてRAMまたは記憶部102に記憶する(ステップS106)。
【0092】
ステップS101〜ステップS106の処理により基準物品から読み取った画像データから基準特徴量データを取得すると、次に、制御部101は、本処理(ステップS107〜ステップS115)へ移行する。
【0093】
本処理において、個体識別装置100は、対象物品に付与されたタガント分布層11を光学的に読み取る(ステップS107)。
基準特徴点データ算出時(ステップS103)に特徴点の絶対位置情報を求めた場合は、ステップS107の対象物品の読み取りは、基準物品の読み取りと同じ画像読取装置108を用い、同じ条件で読み取る。また、図9に示すように、読み取りの向き、位置、範囲も、基準物品の読み取りと同一とする。制御部101は、読み取った画像データを対象物画像データとしてRAMに保持する。
【0094】
一方、基準特徴点データ算出時(ステップS103)に特徴点の相対位置情報を求めた場合は、ステップS107の対象物品の読み取りは、基準物品の読み取りと同じ画像読取装置108を用い、同じ条件で読み取るが、読み取りの向き、位置、範囲は、図10(a)、(b)に示すように、基準物品の読み取りの向き、位置、範囲と異なっていてもよい。制御部101は、読み取った画像データを対象物画像データとしてRAMに保持する。
【0095】
次に、制御部101は、読み取った対象物画像データから微細物質12の特徴量を対象物特徴量データとして算出する(ステップS111)。この対象物特徴量データの算出方法は、基準特徴量データの算出処理(ステップS102〜ステップS106)と同様に行う。すなわち、対象物画像データから微細物質の特徴点を抽出し、その一方で対象物画像データをHSV変換し、HSV変換された画像において各微細物質の特徴点における色情報を特定し、各特徴点の近傍の複数の特徴点の色情報を配列して、各微細物質の特徴点の特徴量を算出する処理を行う。
【0096】
ここで、対象物の特徴点を抽出する際、対象物品に対して行う画像処理は、基準物品に対して行った画像処理と同一のものとする。すなわち、基準物品から読み取った基準画像データに対して上述の(A)中央値による二値化処理を行った場合は、対象物品から読み取った対象物画像データに対しても(A)の画像処理を行う。同様に、基準物品から読み取った基準画像データに対して上述の(B)による画像処理を行った場合は、対象物品から読み取った対象物画像データに対しても(B)の画像処理を行う。
【0097】
基準特徴点データとして絶対位置情報を算出している場合は、対象物特徴点データとして絶対位置情報を求める。
【0098】
一方、基準特徴点データとして相対位置情報を算出している場合は、図10(c)のように、対象物特徴点データの読取範囲Bから、まず基準特徴点データと同一形状、同一面積となる比較領域19−1を切出し、この比較領域19−1についての対象物特徴量データとして各特徴点の相対位置情報(相対距離の集合データ)を求める。次に、切出し位置を例えばx方向に1画素ずらして別の比較領域19−2を切出し、この比較領域19−2についての対象物特徴点データとして各特徴点の相対位置情報(相対距離の集合データ)を求める。これを繰り返すことにより、各比較領域19−1,19−2,・・・,19−Nについて、それぞれ対象物特徴点データを求める。
【0099】
制御部101は、算出した特徴点の特徴量を、対象物特徴量データとしてRAMに記憶する。
【0100】
次に、制御部101は、RAMまたは記憶部102に記憶されている基準特徴量データと、ステップS112で求めた対象物特徴量データとを照合し、一致するか否かを判断する(ステップS113)。
【0101】
基準特徴量データと対象物特徴量データとの照合は、例えば、正規化相互相関(NCC;Normalized Cross−Correlation、またはZNCC;Zero−mean Normalized Cross−Correlation)等を求めることにより行える。具体的には、基準特徴量データの各特徴点の特徴量と、各特徴点に対応する位置の対象物特徴量データにおける各特徴点の特徴量との相関値を求める。
【0102】
全ての比較領域について求めた相関値のうち、最大の値が所定閾値以上(相関値が類似度の場合)であれば、対象物品は真と判定する。一方、相関値の最大値が所定閾値を下回る場合は、基準物品と対象物品とが異なる個体(偽)であると判定する(相関値が類似度の場合)。
【0103】
なお、照合の「一致」とは、厳密な一致に限定する必要はなく、所定の許容範囲内にあるものも含むものとする。また、その許容範囲は真偽判定に必要な精度に応じて、任意に設定できるようにしてもよい。
【0104】
制御部101は、照合結果が「一致」であれば(ステップS113;Yes)、真と判定し、その結果を例えば表示部104に表示したり、所定の結果送信先へ送信したり、或いは所定のリストに登録する等の出力処理を行う(ステップS114)。また、照合結果が「不一致」であれば(ステップS115;No)、偽と判定し、その結果を例えば表示部104に表示したり、所定の結果送信先へ送信したり、或いは所定のリストに登録する等の出力処理を行う(ステップS114)。
その後、次の対象物品があれば、ステップS107〜ステップS114の本処理を繰り返し行い、結果を出力して、微細物質分布解析処理を終了する。
【0105】
上述の個体識別処理の具体例を図9を参照して説明する。
図9に示すように、基準物品から読み取った画像データ15を試料No.1とし、試料No.1と同じ基準物品を同じ条件で再読取した画像データ16を試料No.1Rとする。また、基準物品(試料No.1)と異なる条件でタガント分布層11が形成された物品から読み取った画像データ17,18をそれぞれ試料No.2,No.3とする。
【0106】
なお、画像データの読み取りの際は、付与した微細物質の光学的特徴に応じて適切な照射光を照射し、特定の性質を有する反射光が放射された状態で、読み取りを行う。
【0107】
ここで、例えば、図2、図3に示す微細物質12A,12Bの場合は、照射光の角度に応じて、その反射光や発光色が異なる分布状態として読み取れることがあるため、基準物品の画像読み取りの際と対象物品の画像読み取りの際とで光の照射角度を特定しておくことが望ましい。
【0108】
以上のように、取得した画像データについて、事前処理(図8のステップS101〜ステップS103)として、まず試料No.1(基準物品の画像データ)に対して、例えば上述の画像処理(A)の「中央値で二値化処理」を行う。そして、抽出された各微細物質の重心座標(基準特徴点データ)を算出する。
【0109】
次に、本処理として、試料No.1R(図9参照)に対して、事前処理と同じ画像処理(例えば画像処理(A))を行って特徴点を抽出し、抽出された各点(各画素)の絶対位置情報(対象物特徴点データ)を算出する(ステップS108)。
【0110】
次に、ステップS103と同様に、対象物の画像をHSV変換し、ステップS104と同じ処理を行い(ステップS109)、変換した画像において、各特徴点の色相等の値を特定し、微細物質の色情報を算出する(ステップS110)。
続いて、ステップS105と同じ処理を行い、対象物品の特徴量(対象物特徴量データ)を算出する(ステップS111)。ここで、基準物品の特徴量として、微細物質の形状に関する情報を含む場合は、対象物品の特徴量についても、同じように微細物質の形状に関する情報を含むものとする。
【0111】
次に、制御部101は算出した対象物特徴量データと基準特徴量データとの相関値を算出し、相関値が所定閾値以上である否かを判定することにより照合し、照合結果を出力する(ステップS112)。
【0112】
また、上述のステップS108〜ステップS112と同じ処理を、試料No.2及び試料No.3(図9参照)に対して行い、特徴点を抽出し、抽出された各点(各画素)の絶対位置情報(対象物特徴点データ)の算出と、色情報の特定と、試料No.2及び試料No.3の特徴量を算出する。制御部101は算出した対象物特徴点データと基準特徴点データとをそれぞれ照合し、照合結果を出力する。
【0113】
また、相対位置情報を用いる場合は、まず画像読取装置108を用いて基準物品(真の物品)に付与されたタガント分布層11を光学的に読み取る。読み取り対象とする範囲(読取範囲A)は、タガント分布層11の一部とする。制御部101は、画像読取装置108によって読み取った画像データに対し、所定の画像処理(例えば画像処理(A))を行って特徴点を抽出し、抽出した各特徴点について図11に示すように、まず任意の特徴点を着目特徴点Aに設定する。そして、その着目特徴点Aに隣接するt個の隣接特徴点を選択し、着目特徴点Aから各隣接特徴点までの各距離を算出し、着目特徴点Aとの距離が近い順に、予め算出された各特徴点の色情報を配列させて、着目特徴点Aの特徴量として算出する。次に、着目特徴点を変更し、その着目特徴点に隣接するt個の隣接点を新たに選択し、着目特徴点Aと同様に、着目特徴点からの距離が近い順に、各隣接特徴点の色情報を配列させて特徴量を算出する。これを全ての特徴点について繰り返し、各特徴点と隣接するt個の特徴点との相対距離の集合データを求める。これを基準特徴量データとして記憶部102に記憶する。
【0114】
次に、対象物品に付与されたタガント分布層11を光学的に読み取る。ここで、対象物品の読取範囲Bは、図9(b)に示すように、基準物品の読取範囲Aより広い範囲とする。また読取範囲Bに読取範囲Aの少なくとも一部を含むものとする。
【0115】
次に、制御部101は、図9(c)に示すように読取範囲B内の任意の点(例えば、読取範囲Bの左上)を切出し位置に設定し、基準画像データの読取範囲Aと同じ形状、同じ面積の範囲を比較領域19−1として切り出す。具体的には、例えば、「512画素×512画素」の読取範囲Bから「64画素×64画素」(実画像に対して1/8の大きさ)の比較領域を切出す。1画素の大きさは、スキャナの読み取り精度に依存する。
【0116】
なお、比較領域(すなわち、基準画像の読取範囲A)をどの程度の大きさに設定するかは、識別精度と計算速度とのトレードオフによって決まる。つまり、比較領域の大きさを大きくする(画素数を増やす)と、識別精度は上がるが計算速度は遅くなる。一方、比較領域の大きさを小さくする(画素数を減らす)と、精度は下がるが計算速度は速くなる。また、比較領域の形状(すなわち、読取範囲Aの形状)は、正方形に限らず、長方形等でもよい。
【0117】
制御部101は、切出した比較領域19−1について、各特徴点の相対距離の集合データを求める。そして、切出し位置を移動しながら別の比較領域19−2,19−3,・・・,19−Nを切出し、各比較領域について各特徴点の特徴量(対象物特徴量データ)を求める。
【0118】
そして、基準特徴量データと対象物特徴量データとを照合する際は、各比較領域の基準特徴量データと対象物特徴量データと比較し、一致する(許容範囲内のものも含む)対象物特徴量データがあれば、同一と判別する。
【0119】
なお、上述の実施の形態において、画像処理の結果、抽出される特徴点の点数が多い場合は、図2のステップS102及びステップS108の特徴点抽出処理において、図12に示す間引き処理を適用してもよい。
【0120】
制御部101は、まず、読み取った画像データ(基準画像データ及び対象物画像データ)を圧縮(一定間隔でサンプリング)する(ステップS201)。次に、元の画素数に戻し、間引き画像を作成する(ステップS202)。その後、制御部101は間引き画像に上述の(A)、(B)等の画像処理を施して特徴点を抽出する(ステップS203)。
【0121】
このように圧縮画像を用いることにより、特徴点を間引くことができ、照合に適した数の特徴点を抽出できる。その結果、照合の精度を向上させることが可能となり、また演算を高速化できる。
【0122】
また、上述の実施の形態において、画像の二値化処理等により得られた画像にノイズが残る(または生じる)場合は、得られた画像データにローパスフィルタを適用すれば、ノイズを除去することができる。
すなわち、制御部101は、図8のステップS102及びステップS108の特徴点抽出処理において、図13に示すノイズ除去処理を適用してもよい。
【0123】
制御部101は、まず、上述の画像処理(A)、(B)等の画像処理を行い(ステップS301)、得られた画像データにローパスフィルタを適用して、ノイズを除去する(ステップS302)。その後、ステップS103またはステップS106へ戻り、ノイズ除去後の特徴点について絶対位置情報を算出する。
【0124】
以上説明したように、本実施の形態の個体識別装置100によれば、基準物品に付与されたタガント分布層11を光学的に読み取った基準画像データに対して所定の画像処理を施して特徴点(微細物質12の位置)を抽出する。さらに、基準物品に付与されたタガント分布層11を光学的に読み取った基準画像データをHSV変換後、各特徴点の色情報を特定し、特定された色情報を、着目特徴点からの距離が近い順に配列して、各特徴点の基準特徴量データを算出し、これを記憶部102に記憶しておく。また識別対象とする対象物品に付与されたタガント分布層11を基準画像データの読み取りと同様の手法で読み取った対象画像データに対して同一の画像処理を施し、対象物特徴点データ及び対象物特徴量データを抽出する。そして抽出された対象物特徴量データと、記憶部102に記憶されている基準特徴量データとを比較照合することにより対象物品と基準物品とが同一個体であるか否かを判別し、その結果を出力する。
【0125】
これにより、タガント分布層11の各微細物質12の色情報から得られる特徴量に基づいて、物品の真偽を正確に判定することが可能となる。照合の対象は物品の表面にランダムに付与された微細物質12の分布であるため、微細物質12として、反射性金属層を有するもの、多層薄膜を有するもの、光回折構造体を有するもの、特定の照射光に対して特定の放射光を発するもの等の特殊な反射性を有するものを用いれば、個体識別精度をさらに向上させることができる。
また、微細物質12は印刷や塗布といった簡単な方法で付与できるため、容易に製造でき、本発明の個体識別処理を適用することで、高い精度で個体識別を行うことが可能となる。
【0126】
更に、微細物質12が反射性金属層3を有することにより、微細物質12の分布が確認しやすく、ルーペによる真偽判定が行いやすくなる。また、個体識別装置100を用いた微細物質分布解析処理において、特徴点として抽出しやすくなる。
【0127】
また、微細物質12に誘電率が異なる多層薄膜4を形成した場合には、見る角度によって色が変化するため、ルーペによる真偽判定が行いやすくなる。また、微細物質分布解析処理において、特徴点として抽出しやすくなる。
【0128】
また、微細物質12が光回折構造体層5を有する場合には、反射性がよく、特徴点を抽出しやすくなるだけでなく、ホログラム図案による判定を併せて行えるため、個体識別精度が高くなる。また、各微細物質に異なるホログラム図案となる光回折構造体を付与すれば、セキュリティ効果がより高くなる。一方、同一の図案となる光回折構造体を各微細物質に付与する場合は、異なるホログラム図案の光回折構造体を付与する場合と比べてコストダウンが可能となる。また偽造防止効果だけでなく、意匠性も向上する。
【0129】
また、微細物質12が、所定の照射光に対し、異なる波長の光を放出する特性を有する反射層6を有することにより、白色光のもとでの隠匿性を持たせることができ、偽造を防ぎやすくなる。また、ルーペによる真偽判定や微細物質分布解析処理において、光学的な読み取りが容易となり、特徴点として抽出しやすくなる。
【0130】
以上説明したように、本発明では、基材10上に、基材10とは異なる反射性を有し、色が異なる複数の微細物質12や、所定の平面形状、所定図案を有する微細物質82をランダムに配置した物品1の真偽を判定するために、個体識別装置100によって、基準物品に付与された微細物質の特徴点及び特徴量を基準特徴量データとして記憶部102に記憶しておき、識別対象とする物品に付与された微細物質12の特徴点の特徴量を抽出し、抽出された対象物特徴量データと、記憶されている基準特徴量データとを比較することにより識別対象とする物品と基準物品とが同一個体であるか否かを判別する。そのため、個々の物品1から切り離せない固有の特徴である微細物質12の特徴量に基づいて個体識別や真偽判定を行うことが可能となる。微細物質12は、物品に容易に付与できるとともに、ランダムに配置するので、偽造が困難となり、様々な物品に対して広く適用でき実用性に優れる。
また、微細物質82として、所定の図案(文字、図形、記号、模様もしくはこれらを結合したもの)を有するものを採用すれば、物品8をルーペによる拡大した際に、埃や塵等と微細物質82とを容易に識別でき、視認による偽造判定精度も高くなる。
【0131】
従って、本発明によれば、物品に容易に付与でき、また個々の物品から切り離せない固有の特徴に基づいて個体識別や真偽判定を高精度に行えるようになる。
【0132】
なお、本発明を適用する物品や微細物質の形状、性質、形成方法、付与する図案等は一例であり、上述の実施形態に記載されるものに限定されない。その他、当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0133】
100・・・個体識別装置
101・・・制御部
102・・・記憶部
108・・・画像読取装置
1・・・・・基準物品
11・・・・タガント分布層
12・・・・タガント(微細物質)

3・・・・・反射性金属層
4・・・・・被覆層
5・・・・・光回折構造体層
6・・・・・所定の照射光による反射層
82・・・・微細物質
7・・・・・図案(文字、図形、記号、模様、もしくはこれらの組み合わせ)
72・・・・図案形成層
71・・・・反射材料層
15・・・・基準画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、前記基材とは異なる反射性を有し、平面形状を有する微細物質をランダムに配置した物品を個体識別する個体識別装置であって、
前記微細物質が付与された基材を撮影した画像から前記微細物質の特徴点を抽出する特徴点抽出手段と、
前記画像の3次元色空間座標系の少なくとも一つの座標系を区分して前記微細物質の特徴点の色情報を特定する色情報特定手段と、
前記微細物質の特徴点及び色情報に基づき、微細物質の近傍に存在する他の複数の微細物質の色情報を配列したものを各微細物質の特徴量とする特徴量算出手段と、
前記微細物質が付与された基準物品を撮影した画像に対して前記特徴量算出手段により算出された各微細物質の特徴量を基準特徴量データとして記憶する記憶手段と、
識別対象とする物品を撮影した画像に対して前記特徴量算出手段により算出した対象物の特徴量データと、前記記憶手段に記憶されている基準特徴点データとを比較することにより前記識別対象とする物品と前記基準物品とが同一個体であるか否かを判別する判別手段と、
を備えることを特徴とする個体識別装置。
【請求項2】
前記特徴量算出手段は、微細物質間の距離が近い順に色情報を配列して特徴量とすることを特徴とする請求項1に記載の個体識別装置。
【請求項3】
前記微細物質が付与された基材を撮影した画像から各微細物質の形状情報を特定する形状情報特定手段を更に備え、
前記特徴量算出手段は、微細物質の近傍に存在する他の複数の特徴点の色情報及び形状情報を特徴量とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の個体識別装置。
【請求項4】
基材上に、前記基材とは異なる反射性を有し、平面形状を有する微細物質をランダムに配置した物品を個体識別する個体識別方法であって、
前記微細物質が付与された基材を撮影した画像から前記微細物質の特徴点を抽出するステップと、
前記画像の3次元色空間座標系の少なくとも一つの座標系を区分して前記微細物質の特徴点の色情報を特定するステップと、
前記微細物質の特徴点及び色情報に基づき、微細物質の近傍に存在する他の複数の微細物質の色情報を配列したものを各微細物質の特徴量とするステップと、
前記微細物質が付与された基準物品を撮影した画像に基づいて算出された各微細物質の特徴量を基準特徴量データとして記憶するステップと、
識別対象とする物品を撮影した画像に基づいて算出された対象物の特徴量データと、記憶されている基準特徴点データとを比較することにより前記識別対象とする物品と前記基準物品とが同一個体であるか否かを判別するステップと、
を備えることを特徴とする個体識別方法。
【請求項5】
基材上に、前記基材とは異なる反射性を有し、平面形状を有する微細物質をランダムに配置した物品を個体識別するコンピュータにより読み取り可能な形式で記述されたプログラムであって、
前記微細物質が付与された基材を撮影した画像から前記微細物質の特徴点を抽出するステップと、
前記画像の3次元色空間座標系の少なくとも一つの座標系を区分して前記微細物質の特徴点の色情報を特定するステップと、
前記微細物質の特徴点及び色情報に基づき、微細物質の近傍に存在する他の複数の微細物質の色情報を配列したものを各微細物質の特徴量とするステップと、
前記微細物質が付与された基準物品を撮影した画像に基づいて算出された各微細物質の特徴量を基準特徴量データとして記憶するステップと、
識別対象とする物品を撮影した画像に基づいて算出された対象物の特徴量データと、記憶されている基準特徴点データとを比較することにより前記識別対象とする物品と前記基準物品とが同一個体であるか否かを判別するステップと、
を含む処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−64625(P2013−64625A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202886(P2011−202886)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】