説明

個別認識装置及び個別認識システム

【課題】
識別情報が記録されたICタグを貼付されている複数の対象物に対し、各物体を自動的に識別し個々の移動予測を行なう個別認識装置と個別認識システムを提供する。
【解決手段】
識別情報が記録されたICタグを貼付されている複数の対象物に対し、各物体を自動的に識別し個々の移動予測を行なう個別認識装置であって、センシング中央にセットしてセンサ周囲の環境形状を測定するレーザーレンジファインダと、各物体に貼付されたICタグに記録された情報を蓄積したデータベースと、システム中心から各物体の距離を読み取れるICタグリーダと、レーザーレンジファインダで得た環境形状変化と、ICタグリーダで得たICタグ情報と、システム中心から前記各物体までの距離変化から、データベースに蓄積した情報を元に、各ICタグが添付された対象物情報、位置、移動ベクトルを算出し、各対象物の移動予測を行ない各対象物を認識する判別器から構成した個別認識装置及び個別認識システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のさまざまな対象物の現在位置および移動予測をおこなう個別認識装置及び個別認識システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーを発射し、物体面で反射して戻ってくる時間により距離を計測するセンサをある回転軸周りに回転させることで2次元環境形状を測定するレーザーレンジファインダが実現されている。このセンサを用いると動物体の個数や大きさをリアルタイムに計測可能であるが、対象物の種類、名前などを認識することは不可能である。
一方、ICタグの情報と対象物の種類、名前などのデータをデータベースで関連付け、これを対象物に貼付し、ICタグリーダでICタグ情報および電波強度を読み取ることにより、物体の大まかな距離及び認識をおこなうシステムが考案されているが、精確な位置を認識することは不可能であった。
これを解決する為、レーザーレンジファインダと組み合わせた認識システムが提案されているが、複数の対象物を高速かつ同時に個別認識することはできない問題があった。
【特許文献1】特許公開2007−148595公報(発明の名称:移動体)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
画像処理による個別認識は、対象物の形、色などから個別認識を行うことができるが、カメラを対象物方向に向け、ピントを合わせ撮影後、画像処理を行なう為、多数の対象物を高速に個別認識させるのは困難である。
レーザーを発射し、物体面で反射して戻ってくる時間により距離を計測するセンサをある回転軸周りに回転させることで2次元環境形状を測定するレーザーレンジファインダが実現されている。このセンサを用いるとセンサを中心として、動物体の個数や大きさをリアルタイムに計測可能であり、このセンサを用いて、人物、車両、荷物などの認識に利用可能である。しかしながら、対象物に対してある水平面でカットした断面のレーザー入射方向側の形状しか読み取ることができず、このデータだけでは対象物の種類、名前などを認識することは不可能である。
一方、ICタグの情報と対象物の種類、名前などのデータをデータベースで関連付け、これを対象物に貼付し、ICタグリーダでICタグ情報および電波強度を読み取ることにより、システムから対象物までの大まかな距離及び認識をおこなうシステムが考案されているが、対象物の正確な位置、移動ベクトルを認識することは不可能であった。
これを解決する為、レーザーレンジファインダと組み合わせた認識システムが提案されているが、多数の対象物が存在した場合、個別認識できない問題があった。
本発明が解決しようとする課題は、上記記載の問題点を解消し、多数の対象物を高速に認識する装置及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
かかる課題を解決した本発明の構成は
1) 識別情報が記録されたICタグを貼付されている複数の対象物に対し、前記各物体を自動的に識別し個々の移動予測を行なう個別認識装置であって、センシング中央にセットしてセンサ周囲の環境形状を測定するレーザーレンジファインダと、前記各物体に貼付されたICタグに記録された情報を蓄積したデータベースと、システム中心から前記各物体の距離を読み取れるICタグリーダと、前記レーザーレンジファインダで得た環境形状の変化と、前記ICタグリーダで得たICタグ情報と、前記システム中心から前記各物体までの距離変化から、前記データベースに蓄積した情報を元に、前記各ICタグが添付された対象物情報、位置、移動ベクトルを算出し、各対象物の移動予測を行ない各対象物を認識する判別器から構成されることを特徴とする個別認識装置である。
2) 識別情報が記録されたICタグを貼付されている複数の対象物に対し、前記各物体を自動的に識別し個々の移動予測を行なう個別認識装置であって、センシング中央にセットしてセンサ周囲の環境形状を測定するレーザーレンジファインダと、前記各物体のICタグに記録された情報を蓄積したデータベースと、システム中心から前記各物体の距離を読み取れるICタグリーダと、前記レーザーレンジファインダで得た環境形状の変化と、前記ICタグリーダで得たICタグ情報と、前記システム中心から前記各物体までの距離変化から、前記データベースに蓄積した情報を元に、前記各ICタグが添付された対象物情報、位置、移動ベクトルを算出し、各対象物の移動予測を行ない各対象物を認識する判別器から構成される個別認識装置において、前記ICタグの情報と、複数の前記対象物に添付したICタグの対象物情報を前記データベースで管理し、前記レーザーレンジファインダで得た環境形状の変化と、前記ICタグリーダで得たICタグ情報とシステム中心からの距離の変化から、各ICタグが添付された対象物情報、位置、移動ベクトルを算出し、各対象物を認識する移動予測をおこなうことを特徴とする個別認識システムである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、物体の一部断面形状をリアルタイムに取得できるレーザーレンジファインダと、対象物識別情報が記録されたICタグと、前記ICタグの識別情報と対象物情報の関係を管理するデータベースを併用し、システムと対象物体との相対移動関係を計算することで、計算処理量が膨大な画像処理を行なわずに、ICタグを添付された多数の対象物の個別認識および、移動ベクトルをリアルタイムに高速に認識することが実現可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
レーザーレンジファインダの測定中心とICタグ情報の電波強度分布中心が一致するようにレーザーレンジファインダ中心軸上にICタグリーダアンテナを設置した。これら2つのセンサデータを計算機に送り、計算機は複数対象物の個別認証と、移動予測を行なった。以下本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0007】
図1はレーザーレンジファインダとICタグリーダアンテナと判別器を組み合わせたシステムを真上から見た説明図で、図2はレーザーレンジファインダとICタグリーダアンテナと判別器を組み合わせたシステムを真横から見た説明図である。図3はこのシステムを真上から見たときのシステムと、ICタグリーダ読み取り強度分布の説明図である。図4は複数対象物がシステムに対し相対移動している例の移動前状態において、レーザーレンジファインダの形状情報と、ICタグリーダ読み取り強度の説明図である。図5は複数対象物がシステムに対し相対移動している例の移動後状態において、レーザーレンジファインダの形状情報と、ICタグリーダ読み取り強度の説明図である。表1は対象物名と各対象物に貼付されたICタグのICタグコードを関連付けるデータベースを示す説明表である。表2は5つの対象物が個別認識装置に対して図4、図5に示す相対移動をしたとき、各対象物に添付されたICタグコードの読み取り強度変化を説明してある。表3は5つの対象物が個別認識装置に対して図4、図5に示す相対移動をしたとき、移動前後のレーザーレンジファインダ形状情報の各凸形状がICタグリーダ読み取り強度分布のどの領域に存在したかを示している。以下、図と表を参照して本発明に係る実施例を説明する。
【表1】

【表2】

【表3】

【0008】
本実施例の対象物認識装置は、図2に示すように、レーザーを発射し対象物までの距離を測定する検出部を360度方向に回転させることでシステム周囲の環境形状情報を計測する手段を備えたレーザーレンジファインダ4の真上に、各対象物2a〜2eに貼付されたICタグ内部のICタグ情報と、読み取り電波強度を取得可能な手段を備えたICタグリーダアンテナ5が配置され、対象物の名前、属性、形状、重量などの情報とICタグ情報を関連付けたデータベースを記録管理する手段と、これらの情報を統合し対象物認識と各対象物移動ベクトルを計算する手段を備えた判別器6で構成した。

【0009】
図3はシステムを真上から見たときのICタグ情報読み取り強度分布を示している。ICタグリーダアンテナ5を中心としてICタグ読み取り強度1の領域境界3aまでがICタグ読み取り強度1、 ICタグ読み取り強度1の領域境界3aからICタグ読み取り強度2の領域境界3bまでがICタグ読み取り強度2、ICタグ読み取り強度2の領域境界3bからICタグ読み取り強度3の領域境界3cまでがICタグ読み取り強度3と定義する。
【0010】
例として対象物5つを認識させるとする。あらかじめ各対象物2a、2b、2c、2d、2eそれぞれにICタグを貼付した。また表1に示す各対象物2a、2b、2c、2d、2eのICタグ情報データベースを判別器6内部に登録しておく。
【0011】
先ず、各対象物2a、2b、2c、2d、2eがシステム認識範囲内にあると、図4に図示するようにレーザーレンジファインダ4によって各対象物2a、2b、2c、2d、2eの存在する位置がそれぞれレーザーレンジファインダ検出形状1a、1b、1c、1d、1eとして検出され、あらかじめ図3に図示するとおりICタグ読み取り強度分布はわかっている為、各レーザーレンジファインダ検出形状位置でのICタグ読み取り強度が推定できた。また同時に各ICタグ情報と前記各ICタグの読み取り強度がICタグリーダアンテナ5によって計測できた。
次に対象物がシステムに対して相対移動すると、図5に示すように対象物のレーザーレンジファインダ検出形状1a、1b、1c、1d、1eの移動後位置が計測でき、図4に図示するレーザーレンジファインダ検出形状の移動前位置と比較することで各対象物2a、2b、2c、2d、2eの移動ベクトルが測定できた。同時に各レーザーレンジファインダ検出形状位置でのICタグ読み取り強度が推定され、またICタグ情報とICタグ読み取り強度がICタグリーダアンテナ5によって計測された。上記の計測によって、表2、表3に示すように、対象物の移動前後の、各ICタグの読み取り強度と、対象物のレーザーレンジファインダ検出形状1a、1b、1c、1d、1eでの各ICタグ読み取り強度が判明された。
【0012】
測定結果から各対象物2a、2b、2c、2d、2eを特定するには、表2、表3に示すように、各対象物2a、2b、2c、2d、2eに貼付されている各ICタグの読み取り強度変化と、対象物凸形状1a、1b、1c、1d、1eの各読み取り強度変化から、読み取り強度変化が一致するものを選び出すことによって、各レーザーレンジファインダ検出形状とICタグの相関を得た。更にこの結果と、表1に示すICタグ情報データベースから、各対象物名称を得ることができた。この結果、全対象物の名称、位置、移動ベクトルが判明した。
【0013】
例として第2の対象物2bの位置、移動ベクトルを特定するには、まず表1を参照し、第2の対象物2bに貼付しているICタグのICタグコードを検索すると、ID5であることが判明する。
つぎに表2を参照し、ICタグコードがID5の相対移動前後のICタグ読み取り強度を検索すると、移動前読み取り強度が3、移動後読み取り強度が1であることが判明する。
つぎに表3を参照し、移動前読み取り強度が3かつ移動後読み取り強度が1であるレーザーレンジファインダ検出形状を検索すると、第2のレーザーレンジファインダ検出形状1dが該当することがわかった。これによって第2の対象物2bが第2のレーザーレンジファインダ検出形状1dの位置にあることがわかり、位置が判明した。同時に図4、5から第2のレーザーレンジファインダ検出形状1dの移動ベクトルが算出でき、第2の対象物2bの移動ベクトルも判明した。
【0014】
逆にレーザーレンジファインダ形状から対象物が何であるか特定する例として、第4のレーザーレンジファインダ形状1bの対象物名称を特定する。まず表3を参照し、移動前後のICタグ読み取り強度を検索すると、移動前読み取り強度が3で移動後読み取り強度が2であることが判明する。
次に表2を参照し、移動前ICタグ読みとり強度が3かつ移動後読みとり強度が2であるICタグコードを検索するとICタグコードがID1であることが判明する。
次に表1を参照し、ICタグコードがID1であるタグを貼付されている対象物の名前を検索すると第2の対象物2dであることが判明する。これによって第4のレーザーレンジファインダ検出形状1bは第2の対象物2dであることが判明した。
【0015】
各対象物2a、2b、2c、2d、2eに添付しているICタグの読み取り強度は周囲の環境条件によって、同じ読み取り距離であっても変動することがある。各対象物2a、2b、2c、2d、2eの特定精度を向上させるため、表2と表3の相関計算を移動前と移動後だけでなく3回以上に拡張可能とした。また物理的に考えられない移動ベクトルを検出した場合、エラーとみなし相関計算から除外可能とした。また読み取り強度を絶対値でなくその前後も含んだ数値モデルで表記し微小な誤差で相関計算が破綻しないアルゴリズムとした。
【0016】
レーザーレンジファインダ4の検出情報は対象物の表面反射率等の条件によって、瞬間的に実際と違った形状を出力することがある。各対象物2a、2b、2c、2d、2eの特定精度を向上させるためには、表2と表3の相関計算を移動前と移動後だけでなく3回以上に拡張した。また物理的に考えられない移動ベクトルを検出した場合、エラーとみなし相関計算から除外した。
【0017】
認識装置周囲にICタグを貼付していない静止物体がある場合は、レーザーレンジファインダ4の検出情報にその静止物体の形状が含まれる為、ICタグを貼付した対象物と判別できないことがある。あらかじめレーザーレンジファインダ4で検出される静止物体の形状を判別器6に記録しておき、ICタグを添付した対象物認識時には、レーザーレンジファインダ4で検出した形状情報から、記録されている静止物体の形状を差分することで、ICタグを貼付した対象物形状のみを抽出可能とした。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の認識装置は、セキュリティレベルの高い屋内での個人認証や、移動ロボットに搭載することによる案内ロボット、ロボットハンドに搭載することによって多数の部品を認識するセル生産システム、車両、航空機、船舶の認識など多数の対象物を認識しなければならない分野で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】個別認識装置を上からみた平面図である。
【図2】個別認識装置の側面図である。
【図3】実施例の個別認識装置のセンサ部と、ICタグ読み取り強度分布を上から見た説明図である。
【図4】実施例の個別認識装置のセンサ部と、センサ部に対して5つの対象物が相対移動しているときの移動前状態における、レーザーレンジファインダ検出形状と、ICタグ読み取り強度分布の関係を上から見た説明図である。
【図5】実施例の個別認識装置のセンサ部と、センサ部に対して5つの対象物が相対移動しているときの移動後状態における、レーザーレンジファインダ検出形状と、ICタグ読み取り強度分布の関係を上から見た説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1a 第5の対象物のレーザーレンジファインダ検出形状
1b 第4の対象物のレーザーレンジファインダ検出形状
1c 第1の対象物のレーザーレンジファインダ検出形状
1d 第2の対象物のレーザーレンジファインダ検出形状
1e 第3の対象物のレーザーレンジファインダ検出形状
2a 第1の対象物
2b 第2の対象物
2c 第3の対象物
2d 第4の対象物
2e 第5の対象物
3a ICタグ読み取り強度1の領域境界
3b ICタグ読み取り強度2の領域境界
3c ICタグ読み取り強度3の領域境界
4 レーザーレンジファインダ
5 ICタグリーダ(アンテナ)
6 判別器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別情報が記録されたICタグを貼付されている複数の対象物に対し、前記各物体を自動的に識別し個々の移動予測を行なう個別認識装置であって、センシング中央にセットしてセンサ周囲の環境形状を測定するレーザーレンジファインダと、前記各物体に貼付されたICタグに記録された情報を蓄積したデータベースと、前記センシング中心から前記各物体の距離を読み取れるICタグリーダと、前記レーザーレンジファインダで得た環境形状の変化と、前記ICタグリーダで得たICタグ情報と、前記センシング中心から前記各物体までの距離変化から、前記データベースに蓄積した情報を元に、前記各ICタグが添付された対象物情報、位置、移動ベクトルを算出し、各対象物の移動予測を行ない各対象物を認識する判別器から構成されることを特徴とする個別認識装置。
【請求項2】
識別情報が記録されたICタグを貼付されている複数の対象物に対し、前記各物体を自動的に識別し個々の移動予測を行なう個別認識装置であって、センシング中央にセットしてセンサ周囲の環境形状を測定するレーザーレンジファインダと、前記各物体のICタグに記録された情報を蓄積したデータベースと、前記センシング中心から前記各物体の距離を読み取れるICタグリーダと、前記レーザーレンジファインダで得た環境形状の変化と、前記ICタグリーダで得たICタグ情報と、前記センシング中心から前記各物体までの距離変化から、前記データベースに蓄積した情報を元に、前記各ICタグが添付された対象物情報、位置、移動ベクトルを算出し、各対象物の移動予測を行ない各対象物を認識する判別器から構成される個別認識装置において、前記ICタグの情報と、複数の前記対象物に添付したICタグの対象物情報を前記データベースで管理し、前記レーザーレンジファインダで得た環境形状の変化と、前記ICタグリーダで得たICタグ情報と、前記センシング中心からの距離の変化から、各ICタグが添付された対象物情報、位置、移動ベクトルを算出し、各対象物を認識する移動予測をおこなうことを特徴とする個別認識システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−25607(P2010−25607A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184480(P2008−184480)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000214191)長崎県 (106)
【Fターム(参考)】