説明

個別識別可能なホログラムをドラムに露光する方法及び装置

本発明は、個別識別可能なホログラムの制作方法及び装置に関する。そのために、光線(3)を発生させて、光線(3)を空間光変調器(5)内で細かく分割して変調し、ホログラム記録材料(13)をホログラムマスター(23)に対して相対的に配置するとともに、細かく分割して変調された光線(3’)の少なくとも一部がホログラムマスター(23)で散乱及び/又は反射されて、ホログラム記録材料(13)内に個別識別可能なホログラムを表す干渉パターンが形成されるように、細かく分割して変調された光線(3’)を誘導し、ホログラムマスター(23)の全体を走査するために、細かく分割して変調された光線(3’)をホログラム記録材料(13)及びホログラムマスター(23)に対して相対的に動かし、記録材料(13)を円筒形のドラム(15)又は円筒形のドラムセグメントに密着して配置し、ホログラムマスター(23)を走査する時に、ドラム(15)又はドラムセグメントのドラム回転軸(27)の周りにドラム(15)を回転させるものと規定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、セキュリティ文書及び/又は有価文書のためのセキュリティ要素として使用される個別識別可能なホログラムの制作方法及び個別識別可能なホログラムの制作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セキュリティ要素は、セキュリティ文書及び/又は有価文書を偽造又は複写に対して保護する役割を果たす。セキュリティ要素の一形態として、ホログラムがある。多くの場合、セキュリティ要素には、例えば、シリアル番号、ID番号、生体情報データ、画像(パスポート写真)などの個別識別可能な情報が含まれている。それらは、平文又は画像形式で、或いは光学的に符号化された形又は機械読取り可能な形で配備することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、個別識別可能な情報を有するホログラムを制作する場合の基本的な措置が記載されている。以下において、その基本的な特徴を簡単に説明する。先ずは、原盤となるホログラムでホログラムマスターを制作する。次に、そのホログラムマスターをホログラム記録材料の背後に置く。例えば、レーザーからのコヒーレントな光を、典型的には、ホログラムマスターによって再構成すべきホログラムパターンに応じた所定の波長及び所定の入射角でホログラム記録材料のホログラムマスターと逆側に入射させる。その光は、ホログラム記録材料を通り抜けて、マスターによって散乱又は反射され、そのため入射光との干渉によってホログラムが発生し、そのホログラムをホログラム記録材料に投影して、光化学又は光物理プロセスによってホログラム記録材料に記録する。その場合、ホログラムマスターが複数の波長に反応するとともに、それらの波長に応じて散乱するように、ホログラムマスターを構成することができる。
【0004】
実際に、液晶ディスプレイ(LCD)の形の空間光変調器と共に動作するデジタルプロジェクタが周知である。その動作方式は、例えば、スライドの投影と同様であり、スライドの代わりに空間光変調器が差し込まれる。
【0005】
更に、実際に、空間光変調器としてDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)を備えたデジタルプロジェクタが周知である。特許文献2により、対象物を記録するためにデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)の形の空間光変調器を使用することが知られている。
【0006】
ホログラム記録材料の干渉パターン中に形成される干渉構造がマイクロメートルのオーダーであるために、記録している間ホログラム記録材料をそれぞれ所定の位置に留めておかなければならない。ホログラム記録材料は、通常フィルムとして構成されているので、従来技術で周知の方法及び装置では、ホログラム記録材料をホログラムマスターに対して相対的に配置した後数秒のオーダーで静止させる時間が必要である。そのような静止時間は、ホログラム記録材料にホログラムを露光するために必要な時間のオーダーである。そのような静止時間を大幅に短縮することができたとしても、静止時間は、ホログラムを制作する際のスループットを二桁しか向上させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許公開第0896260号明細書
【特許文献2】ドイツ特許公開第2005054396号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のことから、本発明の課題は、制作時間を低減する個別識別可能なホログラムの制作方法及び制作装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(定義)
セキュリティ要素とは、少なくとも一つのセキュリティ保護特性を有する構成ユニットである。セキュリティ要素は、セキュリティ文書及び/又は有価文書と結合する、例えば、貼り付けることが可能な独立した構成ユニットとすることができるが、セキュリティ文書及び/又は有価文書の一体的な構成要素とすることもできる。前者の例は、セキュリティ文書及び/又は有価文書上に貼り付けることが可能な査証である。後者の例は、紙幣又は証書と統合された、例えば、貼り合わされたホログラムである。
【0010】
セキュリティ保護特性とは、(簡単な複写と比べて)大きな負担でしか、或いは全く不正な制作又は再現ができない構造である。
【0011】
パターンとは、典型的には、隣接して配置された多数の模様の単位又は画素から構成されたものである。パターンの模様の単位又は画素は、互いに関連し合い、所定の手法で互いに横方向に、典型的には、二次元空間で配置されており、全体的に見て、一つの画像、例えば、絵、シンボル、ロゴ、筆跡(字体、数字、英数字)或いはコード(例えば、バーコード)を表す。
【0012】
セキュリティ文書及び/又は有価文書とは、単なる例として挙げると、身分証明書、パスポート、IDカード、アクセス制御用証明書、査証、制御符号、切符、運転免許証、自動車車検証、銀行券、小切手、郵便切手、クレジットカード、任意のチップカード、(例えば、製品保証用)粘着ラベルである。そのようなセキュリティ文書及び/又は有価文書は、典型的には、基質、印刷層、及び任意選択として透明なカバー層を有する。基質とは、情報、画像、模様及びそれらの同等物を有する印刷層を塗布するための支持構造である。基質用の材料としては、紙及び/又はプラスチックをベースとする当業者に周知の全ての素材が対象となる。
【0013】
空間光変調器(SLM)とは、大抵は平坦な対象物に対して強度を変調した二次元空間分布を持つ形で露光又は照射することが可能なものである。それは、例えば、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)チップ、LCD(液晶ディスプレイ)透過型ディスプレイ又はLCoS(リキッド・クリスタル・オン・シリコン)ディスプレイとすることもできる。全て、多数のSLMピクセルから構成され、各SLMピクセルは、別のSLMピクセルと独立して作動又は停止することが可能(中間段階も可能)であり、そのため、相応のSLMピクセルを駆動することによって、パターン又は画像を投影することができることが共通している。そのように自由に駆動することが可能なことによって、例えば、パスポート写真の形の様々な画像又はパターンを時間的に相前後して順番に難なく制作することもできる。
【0014】
一つのコード又はパターンは、それが人又は物の大きな全体集合の中から一人又は一つの物或いは人又は物のグループを唯一つ弁別することができる場合、個別識別可能なものである。一つの国の住民の全体集合内における人の一つのグループを個別識別可能なコードは、例えば、住所の市町村名である。一人を個別識別可能なコードは、例えば、身分証明書の番号又はパスポート写真である。紙幣の全体集合内の紙幣の一つのグループを個別識別可能なコードは、その金額である。紙幣を個別識別可能なものは、シリアル番号である。個別識別可能でないコード又はパターンの例は、紋章、印章、国章などである。
【0015】
ホログラム記録材料とは、感光性の材料から成る層であり、その層に、露光路内における不可逆的、さもなければ可逆的な光化学及び/又は光物理プロセスによって、ホログラフィーを記録することができるものである。単なる例として挙げると、ホログラフィーでしばしば用いられる感光性ポリマーである。
【0016】
本発明の範囲内において、色という概念は、波長又はスペクトル線であると理解されたい。混合色は、複数の相異なる波長又はスペクトル線を表す。従って、色という概念には、可視光帯域の他に、紫外線と赤外線の帯域も含まれる。
(本発明の主要な特徴と有利な実施構成)
本発明の課題を解決するために、ホログラム記録材料をドラムに密着して配置し、ホログラムマスターを走査する時に、そのドラムをドラムの駆動軸の周りに回転させることを提案する。ホログラム記録材料がドラムに密着していることによって、記録材料の静止が非常に速く行われる。更に、ホログラム記録材料が、例えば、多数のホログラムを露光するために、長く延びたフィルムとして構成されている場合、ホログラム記録材料をドラムと密着してドラムの一つの領域に配置する、即ち、露光によってホログラムの記録が済んだ領域から一定の角度だけ離れたドラムセグメントに配置することができる。従って、特に、個別識別可能なホログラムの制作方法であって、光線を発生させて、その光線を空間光変調器(SLM)で細かく分割して変調し、ホログラム記録材料をホログラムマスターに対して相対的に配置して、細かく分割して変調された光線の少なくとも一部がホログラムマスターで散乱及び/又は反射して、ホログラム記録材料内で細かく分割して変調された光線と干渉し、その結果ホログラム記録材料内に個別識別可能なホログラムを表す干渉パターンが形成されるように、細かく分割して変調された光線を誘導し、ホログラムマスター全体を走査するために、細かく分割して変調された光線をホログラム記録材料及びホログラムマスターに対して相対的に動かす方法を提案し、本発明の技術的な課題を解決するために、ホログラム記録材料をドラムに密着して配置し、ホログラムマスターを走査する時に、ドラム駆動軸の周りにドラムを回転させるものと規定する。従って、コヒーレントな光線を発生する光源と、その光線を細かく分割して変調された光線に細かく分割して変調するための空間光変調器(SLM)と、ホログラムマスターと、細かく分割して変調された光線の透過に関して、ホログラム記録材料をホログラムマスターに対して相対的に配置するための供給機器とを備えており、光線の少なくとも一部がホログラムマスターで散乱及び/又は反射して、ホログラム記録材料内で細かく分割して変調された光線と重なり合い、その結果ホログラム記録材料内に個別識別可能なホログラムを表す干渉パターンが形成され、ホログラムマスター全体を走査するために、細かく分割して変調された光線をホログラム記録材料及びホログラムマスターに対して相対的に動かすことが可能である個別識別可能なホログラムの制作装置を用いて、個別識別可能又は個々のホログラムを制作することができる。本発明の技術的な課題を解決するために、供給機器は、円筒形のドラムを有し、ホログラム記録材料がドラム又はドラムセグメントと密着した形でマスターに対して相対的に配置されるように構成されており、ドラムは、ホログラムマスターを走査する時にドラム駆動軸の周りにドラムを回転させるためのドラム駆動機器と連結されているものと規定する。ホログラム記録材料を供給機器のドラム又はドラムセグメントと密着して供給することによって、記録材料の静止がより速く、時間的に露光の前に行われるようにすることができる。ホログラム記録材料を、例えば、ほぼドラムの周囲全体を覆う形でドラム又はドラムセグメントと密着して供給する場合、そのような密着して配置することは、記録材料の露光が行われる場所から離れた所で行われ、そのため時間的に前に実施することができる。そうすることによって、静止していないホログラム記録材料内にホログラムを投影することによって、その品質を損なうこととなる画質の劣化を甘受すること無く、制作プロセスの加速を達成するとともに、装置のスループットを大幅に向上することができる。ホログラム記録材料がドラムに密着していることによって、露光時点で既に十分に静止しているので、そのような劣化は、ここで提案した方法では起こらない。
【0017】
特に簡単な光線の誘導は、ホログラムマスターを円筒形のドラムに嵌め込む、或いは嵌め込んでおく方法及び装置によって実現される。従って、ホログラム記録材料を供給する場合、ホログラム記録材料は、ホログラムマスターの前に配置される。ホログラム記録材料を露光する場合、細かく分割して変調された光線が、先ずはホログラム記録材料を通り抜けて、次にホログラムマスターに当たり、細かく分割して変調された光線の少なくとも一部が散乱及び/又は反射されて、ホログラム記録材料内に個別識別可能なホログラムを表す干渉パターンを形成することとなる。ホログラムマスターをドラム又はドラムセグメントに嵌め込むことは、ドラムを動かす、即ち、ドラム回転軸の周りにドラムを回転させることによって、ホログラムマスターとホログラム記録材料の共に同期した走査を実現することができるという利点を提供する。そうすることによって、光学的に簡単な光線の誘導が可能となる。
【0018】
光線は、有利には、ストライプ形状の光線として発生させることができる。そのために、本装置は、ストライプ形状の光線を発生するストライプ光源を備えることができる。如何なる場合でも、光源は、十分にコヒーレントな光を発生するように構成される。ホログラム干渉画像が発生可能であるためには、コヒーレンス特性を空間的にも時間的にも実現しなければならない。ストライプ形状の光線を発生するための一つの実施構成では、特に、円柱レンズ及び/又はホログラム光学素子を有する、ストライプ形状の光線を発生させるストライプ発生光学系を配備することができる。当業者には、ストライプ形状の光線を発生させるための更に別の素子が知られている。そのような光源は、有利には、赤外線、可視光線及び紫外線の中の一つ以上の波長又は周波数帯域の光を発生することが可能なレーザーである。
【0019】
特に簡単な実施構成では、空間光変調器は、ラインディスプレイである。その場合、ラインディスプレイは、一つ又は複数の画素配列を備えることができ、複数の画素配列の場合、ストライプ形状に構成されたディスプレイと呼ぶこともできる。ラインディスプレイを用いて光線を細かく分割して変調した場合、細かく分割して変調された光線を細分化するためにアレー状/ストライプ形状にした平坦なパターンを使用して、そのようなアレー状/ストライプ形状になった個々のパターンを個別識別可能なホログラム内に投影することができる。その場合、ラインディスプレイの個々のピクセルを自由に駆動することができる。即ち、アレー状/ストライプ形状になった平坦なパターンが、順番に表示、投影される。この実施構成は、回転するドラムの他に、更に別の可動部品を配備する必要が無いことを特徴とする。
【0020】
しかし、空間光変調器としてラインディスプレイを使用する場合、フィルム材料は、露光時間の間その時間中に起こるドラム駆動軸の周りのドラムの回転によって動かされることとなる。更に、そのことは、ドラムの湾曲のために、ホログラム記録材料と空間光変調器の間隔が露光中に変化することを意味する。従って、表示が不鮮明となることを防止するために、細かく分割して変調された光線、即ち、空間光変調器からの光線をホログラム記録材料とホログラムマスター上に投影するための投影光学系は、露光時間中のそのような間隔の違いを補償するような焦点深度を持たなければならない。
【0021】
細かく分割して変調された光線の入射地点において、記録材料の面の垂線に対して0°の角度で記録材料を露光する、即ち、細かく分割して変調された光線に関して、回転するドラムの頂点で記録材料を露光するように選定した場合、投影光路長における出来る限り小さい行程差が得られる。
【0022】
平坦なパターンを投影するラインディスプレイを使用した場合、ラインの遷移部分において、細かく分割した変調の変化が時間的に急激に起こるので、そのような変化は、ラインの遷移部分で発生するホログラムに対しても不利になることが分かっている。従って、本発明の実施構成では、空間光変調器を平坦に構成するとともに、有利には、ストライプ形状の光線で走査するのが有利である。
【0023】
そのような実施構成において、平坦に構成された空間光変調器を光線の走査速度で走査することによって、その走査速度がドラムと密着して動くホログラム記録材料の速度に近くなる。有利には、投影倍率mの投影光学系を使用しているので、細かく分割して変調された光線は、ホログラム材料上におけるストライプ形状の光に関する入射ラインである入射位置において、投影倍率mを乗算した走査速度で接平面内を動くこととなる。そのため、有利には、光線の光学的な誘導は、細かく分割して変調された光線が確かにドラムの回転軸に関して固定した位置でドラムに入射するが、その際光線によって「運ばれる」細かく分割して変調された情報がフィルムの動きと同期して移動するように選定される。そのことは、ホログラム記録材料とホログラムマスターが記録又は投影領域或いは走査領域全体に渡って一緒に動く時間において、光線が空間光変調器を走査することを意味する。そうすることによって、画素配列の遷移部分における急激な変化が起こらなくなる。「一様な」ホログラムが発生することとなる。
【0024】
有利な実施構成では、空間光変調器が平坦に構成されるとともに、有利には、ストライプ形状の光線で走査され、(投影される)細かく分割して変調された光線がミラーの回転軸の周りに回転可能な形で軸支された偏向ミラーによってホログラム記録材料の方に偏向され、偏向ミラーの回転速度は、偏向前の固定した位置の細かく分割して変調された光線に関して、ホログラム記録材料上の細かく分割して変調された光線の入射位置(入射ライン)が、ドラムの回転から生じるホログラム記録材料の接線方向の速度と一致する速度で記録材料の接平面内を動くように定められ、走査速度は、偏向ミラーが回転しないとした場合に、ホログラム記録材料上における細かく分割して変調された光線の入射位置が、ドラム又はドラムセグメントの回転から生じるホログラム記録材料の接線方向の速度を相殺する速度で接平面内を動くように定められるものと規定する。「相殺する」とは、絶対値は同じであるが、方向が逆向きであることを意味する。そのため、本装置は、平坦に構成された空間光変調器と、(投影される)細かく分割して変調された光線をホログラム記録材料の方に偏向するために、空間光変調器及びドラム又はドラムセグメントに対して相対的に配置された、ミラー軸の周りに回転可能な形で軸支された偏向ミラーとを有し、この偏向ミラーは、ミラーの回転速度を制御して、偏向前の固定した位置の細かく分割して変調された光線に関して、ホログラム記録材料に対する細かく分割して変調された光線の入射位置(入射ライン)が、ドラム又はドラムセグメントの回転から生じるホログラム記録材料の接線方向の速度と一致する速度で記録材料の接平面内を動くようにする駆動機器と連結されており、空間光変調器を走査する走査速度は、偏向ミラーが回転していないとした場合に、ホログラム記録材料上における細かく分割して変調された光線の入射位置が、ドラム又はドラムセグメントの回転から生じるホログラム記録材料の接線方向の速度を相殺する速度で接平面内を動くように定められる。そのため、偏向ミラーは、ドラムの回転のために記録材料が回転している場合に、固定した位置の細かく分割して変調された光線を常に記録材料の同じ場所に入射させる役割を果たす。ここで、空間光変調器の走査速度は、投影される細かく分割して変調された光線が記録材料の動きを相殺して、空間光変調器を走査している間ホログラムマスター全体も一緒に走査されるように選定される。そのため、入射ラインは、ドラム回転軸に関して固定した位置に、有利には、共軸平面内に有る。
【0025】
ここで、ドラムに嵌め込まれているホログラムマスターを360°の円筒形セグメントと一致するように構成してはならないことを強調しておきたい。むしろ、ドラムの円筒形の面、有利には、円筒形の側面に同一又は相異なる複数のホログラムマスターを嵌め込むことができる。そのような実施構成では、ミラー回転軸は、ドラムの回転軸に対して平行な方向を向いている。有利には、記録材料の露光又は透過は、二つの軸を接続する線の交線又は交点で行われる。しかし、そのような配置構成においても、細かく分割して変調された光線の記録材料への入射角は、偏向ミラーの回転位置、即ち、空間光変調器上の光線の走査位置に応じて僅かに変化する。別の実施構成では、光線の走査に必要な光線の走査速度と回転運動の相殺が、光学システムの並進運動によって実現されるものと規定する。従って、有利な実施構成は、光学システムがドラム回転軸に対して垂直な方向に並進的に動かされ、固定した位置に入射する光線が空間光変調器に対して相対的に動く走査光線に変換され、その光学システムが、少なくとも一つのビームスプリッタを有し、光線がビームスプリッタによって空間光変調器の方に偏向されるとともに、空間光変調器で細かく分割して変調された光線がビームスプリッタによってホログラム記録材料の方に偏向されるものと規定する。その場合、記録材料に入射する細かく分割して変調された光線の速度がドラム又はドラムのセグメントの回転から生じる記録材料の動きを相殺するように誘導する速度で、並進運動を実行することができる。そのような実施構成では、空間光変調器と細かく分割して変調された光線の入射位置の間にビームスプリッタが配置される。その場合、空間光変調器で細かく分割して変調された光線は、ビームスプリッタを直線的に通過して行く。そのため、投影光路の長さが、投影光学系の焦点深度と関係無く、それぞれ一定となる。
【0026】
本発明の改善構成では、光学システムが、更に、空間光変調器と、ビームスプリッタに対して相対的に固定した方向を向いた偏向ミラーとを有し、光学システムが、ドラム回転軸及びホログラム記録材料への細かく分割して変調された光線の入射方向に対して垂直な方向に動かされるものと規定する。そのような並進運動を実現するために、光学式個別分割システムとも呼ばれる光学システムは、スライド速度で並進運動を実行するスライド機器と連結されている。
【0027】
ドラムのドラム回転速度は、細かく分割して変調された光線がドラム回転軸に関して固定した位置に有る、或いは保持されている場合に、ドラム又はドラムセグメントの回転のために細かく分割して変調された光線に関して行われる、透過時間の間に記録材料に加えられるエネルギー量が、記録材料内に個別識別可能なホログラムを記録するために必要なエネルギー量と一致するように、光線の強度に応じて選定される。
【0028】
一つの実施構成では、個々に生じる速度を制御可能とするために、ドラム回転軸方向に対して個別識別可能なホログラムの露光領域の外に、有利には、ドラムの近くに、有利には、記録材料上における細かく分割して変調された光線の入射ラインの接平面内又はその上方に、位置に応じて光を感知する少なくとも一つのセンサーを配置して、記録材料の透過時に、細かく分割して変調された光線の周縁領域が位置に応じて光を感知するセンサーに入射するように、細かく分割して変調された光線を構成するとともに、記録材料上における光線の入射ラインをドラム回転軸に関して固定した位置に保持するために、その少なくとも一つのセンサーが、偏向ミラーの回転速度又は光学式個別分割システムのスライド速度を制御するために構成されたコントローラと共に閉じた制御系として統合されるものと規定する。そうすることによって、制御系によって、速度を追尾する手段を実現している。
【0029】
有利な改善構成では、ドラム回転軸方向に関して、個別識別可能なホログラムの露光領域の逆側の端部に、少なくとも一つの別の位置に応じて光を感知するセンサーを配置するものと規定する。そうすることによって、ドラム回転軸に関するストライプ形状の光線の場合によっては起こる傾斜を計測して、場合によっては、アクチュエータによって相殺することもできる。
【0030】
有利な実施構成では、ドラムの回転速度を制御、調節可能とするために、ドラム又はドラムセグメントにインクリメンタル測定器を配置するとともに、別の制御ユニットを配備して、インクリメンタル測定器の信号にもとづき、ドラムの回転速度を制御する。
【0031】
本発明の更なる利点は、以下における幾つかの有利な実施例の詳しい記述から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】空間光変調器を走査するとともに、偏向ミラーによって、ホログラム記録材料の方に偏向する個別識別可能なホログラムの制作装置の模式図
【図2a】空間光変調器の走査とホログラム記録材料の動きの相殺を並進的なスライドによって実現した個別識別可能なホログラムの制作装置の別の実施構成の時間的に連続した図
【図2b】空間光変調器の走査とホログラム記録材料の動きの相殺を並進的なスライドによって実現した個別識別可能なホログラムの制作装置の別の実施構成の時間的に連続した図
【図3】アレー状の空間光変調器を用いた実施構成の図
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1には、個別識別可能なホログラムの制作装置1が模式的に図示されている。有利には、アレー状又はストライプ形状に構成された、図面平面に対して垂直な方向に拡がる光線3は、速度vscanで空間光変調器5を走査する。空間光変調器5は、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)として構成されている。空間光変調器5では、画素に分解された個別の情報がパターンの形で作り出され、その場合、画素を個別に駆動することができる。空間光変調器5の個々の画素は、光線3を変調して、その光線を細かく分割して変調された光線3’に変換する。
【0034】
図1の図面では、矢印7で表示されている通り、光線3は、速度vscanで上から下に空間光変調器5を走査する。連続した三つの時点i=1,2,3での細かく分割して変調された光線3’が図示されており、その順番は、括弧で括った下方の添字で表されている。細かく分割して変調された光線3’は、倍率がmである投影光学系9を通して投影される。細かく分割して変調された光線3’は、回転可能な形で軸支された偏向ミラー11によって、ドラム15と密着した形で供給されるホログラム記録材料13の方に偏向される。偏向ミラー11は、有利には、偏向ミラー11のミラー面内に有るミラー回転軸17の周りを回転することが可能である。そのために、偏向ミラー11は、駆動機器19と連結されており、そのことは、破線21で表示されている。
【0035】
ホログラム記録材料13内にホログラムを記録するために、細かく分割して変調された光線3’がホログラム記録材料を通り抜けて、ドラム15内に嵌め込まれたホログラムマスター23に当たる。ホログラムマスター23は、有利には、ドラム15の側面内に嵌め込まれている。ホログラムマスター23は、ドラム15の周囲全体に沿って拡げることができる。同様に、同一又は相異なる複数のホログラムマスターをドラム15に嵌め込んだ実施構成も可能である。
【0036】
ドラム15は、ドラム駆動機器25と連結されている。ドラム駆動機器は、ドラム回転軸27の周りのドラムの回転を実行する。ドラム回転軸27は、図面平面に対して垂直な方向に延びている。そのため、ドラム回転軸は、ミラー回転軸17並びにストライプ形状の光線及び細かく分割して変調されたストライプ形状の光線が拡がる方向に対して平行である。従って、細かく分割して変調された光線3’は、同じくドラム回転軸27に対して平行な入射ライン29に沿ってホログラム記録材料に入射する。有利には、入射ライン29は、ミラー回転軸17とドラム回転軸27の接続線31上に有る。
【0037】
図示されている例では、個別識別可能なホログラムを記録している間、ドラム15は、矢印33で表示されている通り、時計方向に回転する。そのため、記録材料13は、入射ライン29におけるホログラム記録材料13の接平面37内を接線方向の速度vFilmで、それに対応するベクトル35で表示されている通り動く。偏向ミラー11の回転又は旋回速度は、固定した位置の細かく分割して変調された光線が常にフィルムの同じ位置に投影されるように選定される。そのため、そのことは、同じく接平面37内の入射ライン29がベクトル39で表示されている通り、ホログラム記録材料13の接線方向の速度vFilmと一致する速度vSpiegel(vSpiegel=vFilm)で動くような速度で偏向ミラー11を動かすことを意味する。
【0038】
光線3の走査速度vscanで空間光変調器5を走査しているために、偏向ミラー11を回転していないとした場合に、接平面37内の入射ライン29は、速度ベクトル41で表示されている通り、ホログラム記録材料の移動方向と逆向きの速度m・vscanで動くこととなる。この場合、係数mは、投影光学系9の倍率を表す。偏向ミラー11が無いと見做した場合、投影される細かく分割して変調された光線3’は、ミラー回転軸17との間隔45が入射ライン29、ホログラム記録材料13又は接平面37とミラー回転軸17の間隔47と等しいスクリーン43上に投影される。そのため、入射ライン29がドラム回転軸27に関して固定した位置に留まることを保証するためには、ホログラム記録材料の速度vFilmがミラーの回転速度又は接平面37内の入射ライン29の速度vSpiegelと等しく、走査速度と投影倍率にもとづく入射ライン29の速度m・vscanが、ホログラム記録材料の接線方向の速度vFilmと絶対値が同じで方向が反対である、即ち、−m・vscan=vFilm=vSpiegelであるものと規定される。
【0039】
従って、入射ライン29がドラム回転軸27に関して固定した位置に留まることを保証するために、破線で図示された、図面平面の上方に有る、位置に応じて光を感知するセンサー49が、軸方向27に沿って、即ち、図面平面から飛び出る形で、ホログラムの投影領域の外に、有利には、ドラム15の近くに配置されている。そのセンサーを用いて、接平面37内における入射ラインの揺動を検知することが可能である。そのために、位置に応じて光を感知するセンサー49は、コントローラ51と接続されており、そのコントローラは、更に駆動ユニット19を駆動し、その結果閉じた制御系を形成している。ドラム15には、ドラム15の位置、従って、密着したホログラム記録材料13の位置を検出することが可能なインクリメンタル測定器53が配置されている。即ち、更に別の制御ユニット55によって、ドラム駆動機器25を制御することができる、或いはそれに代わって、光線3の走査速度を規定するユニットを制御することができる。
【0040】
それぞれ連続する三つの時点i=1,2,3に対して表示された細かく分割して変調された光線3’(i)又は投影される細かく分割して変調された光線3’(i)の光路及び偏向ミラー11(i)(i=1,2,3)の位置から分かる通り、この実施構成では、入射角αは、接平面37の面の垂線に対して計測される一方、個別識別可能なホログラムの記録が僅かしか変化しないことが分かる。
【0041】
図2aと2bには、個別識別可能なホログラムの制作装置1’の別の実施構成が、連続した異なる時点で模式的に図示されている。技術的に同じ特徴には、同じ符号が付与されている。このような装置1’の実施構成は、光学式個別分割システム61を有する。光学式個別分割システム61は、スライド機器63を用いて、両矢印65で表示されている通り、ドラム回転軸27に対して垂直な方向に並進的にスライドすることが可能である。光学式個別分割システム61は、例えば、(図示されていない)並進的にスライド可能な光学テーブルを備えることができる。光学式個別分割システム61は、別の偏向ミラー69から入射して来るストライプ光源71のストライプ形状又はアレー状に形成されたコヒーレントな光線3に対して45°の角度方向を向いた偏向ミラー67を有する。ストライプ光源71は、有利には、コヒーレントな光を発生するレーザー73と、例えば、ストライプ形状の光線を発生させる円柱レンズ又はホログラム光学素子として構成することができるストライプ発生光学系75とを有する。
【0042】
両矢印65で表示された方向に対して平行な並進運動は、偏向ミラー67によって、偏光ビームスプリッタキューブ77又は空間光変調器5においてビームのずれを生じさせる。この実施構成では、空間光変調器5は、有利には、リキッド・クリスタル・オン・シリコン(LCoS)として構成される。そのような平坦に構成された空間光変調器では、LCDディスプレイの場合と同様に、個々の画素を自由に駆動することができる。ここでは、個別識別可能なホログラム用の個別識別可能なパターンは、図1による実施構成と同様に、走査時間全体の間表示することが可能である。走査速度又はホログラム記録材料13の速度vFilmとの同期は不要である。偏向ミラー67からビームスプリッタキューブ77に入射して来る、図面平面に対して垂直な方向にアレー状に形成された光線3は、先ずはビームスプリッタキューブ77で空間光変調器5の方に反射され、空間光変調器によって、画素毎に個別に変調されて、逆方向に反射される。その際、入射して来た光線3と比べて偏光面が変化する。細かく分割して変調された光線3’は、ビームスプリッタキューブ77を通り抜けて、ドラム15と密着したホログラム記録材料13上の入射ライン29に当たる。
【0043】
分かり易くするために、投影光学系は図示されていない。そのため、スライド速度vtransは、その速度がドラム回転軸27の周りのドラム15の回転から生じる接平面37内におけるホログラム記録材料の速度と一致する、即ち、vFilm=vtransとなるように選定される。そのような実施構成の利点は、細かく分割して変調された光線3’が常にホログラム記録材料上の同じ位置に同じ入射角で当たることである。この場合、「常に同じ位置に」とは、入射ライン29がドラム回転軸27に関して固定した位置に有ることを意味する。この実施構成では、位置に応じて光を感知するセンサー49は、コントローラ51及びスライド機器63と共に閉じた制御系を構成する。図1による実施構成と同様に、ホログラム記録材料13又はドラム15の速度は、インクリメンタル測定器53、別の制御ユニット55及びドラム駆動機器25によって駆動、制御される。ホログラム記録材料13が接平面37内を動く時の接線方向の速度vFilmは、ホログラム記録材料の透過時間の間、即ち、入射ライン29を通過している間に、ホログラムを発生する干渉パターンをホログラム記録材料13内に記録するのに十分なエネルギー量がホログラム記録材料13に投入されるように選定される。
【0044】
図2bには、光学システム61の時間的に遅れた位置が図示されている。ホログラム記録材料13も、ドラム回転軸27の周りのドラム15の回転のために、時計方向に、即ち、図面平面において「右に」動いてしまっている。そのため、その時点で入射ライン上に有るホログラム記録材料13の部分は、空間光変調器5において、図2aでホログラム記録材料13上に投影された情報に対して、(図面平面に関して)その「左」に有る情報に対応する。
【0045】
図1による実施構成と関連して述べた制御系は、図2aと2bによる実施構成においても同様に作用する。
【0046】
図3には、空間光変調器5がアレー状又はストライプ形状のディスプレイとして構成された実施構成が図示されている。それは、一つ又は複数の画素配列を有し、画素配列は、図面平面に対して垂直な方向に延びている。アレー状のディスプレイは、例えば、LCDディスプレイとすることができる。図面平面に対して垂直な方向に形成されたストライプ形状又はアレー状の光線3は、ストライプ形状又はアレー状に構成された空間光変調器5に当たって、細かく分割して変調される。次に、細かく分割して変調された光線3’は、ホログラムマスター23が嵌め込まれたドラム15と密着した形で供給されるホログラム記録材料13に当たる。画素配列又は画素ラインに関する露光時間tは、画素配列又は画素ラインをホログラム記録材料に投影している時間である。その時間の間、ホログラム記録材料は、距離vFilm・t=sだけ動く。露光は、有利には、それによって、投影される細かく分割して変調された光線3’の進行方向81に沿った光路の長さ(投影光路の長さ)の出来る限り小さい変化しか起こらないように実行される。そのような投影光路の長さの差83は、露光光学系9の焦点深度によって補償しなければならない。ホログラム記録材料を距離sだけ動かした場合、アレー状又はストライプ形状に構成された空間光変調器5によって表示されるパターンは、それぞれドラム15の回転と同期して変化する。そのようにして発生させた個別識別可能なホログラムは、全面に渡ってパターンを表示する場合に、同じ個別情報を有するフィルム材料の投影光路の長さが不均一であることが原因の乱れが個々の画素配列又は画素ラインの縁に生じるという欠点を有する。
【0047】
図3による実施構成では、ドラム回転速度とアレー状に構成された空間光変調器5を用いて表示される個別識別可能な情報の変化との同期を実現するために、有利には、ドラム15の側面に、有利には、周囲を取り囲む形で構成された、ドラム15と固定された位置に応じて光を感知するセンサー85が配置されている。それを用いて検出した信号にもとづき、制御部87によって、アレー状又はストライプ形状に構成された空間光変調器5を用いて表示する情報を変化させる周期(アレーの発生周期)を制御することができる。同様に、図3による実施構成は、それに代わって、或いはそれに加えてインクリメンタル測定器53を備えることができ、同じく、その信号は、それに代わって、或いはそれに加えてアレーの発生周期を制御するために使用することができる。別の実施構成では、制御部87は、ドラム駆動機器25を駆動するための別の制御ユニット55と一緒に実現することもできる。
【0048】
図2aと2bによる実施構成では、ホログラム記録材料13に対する細かく分割して変調された光線3’の選定された入射角αは、接平面37の面の垂線に関して計測され、図示されている構成では、零に等しく選定されている(α=0)。しかし、光学式個別分割システム61、別の偏向ミラー69及び光源71を入射ライン29の周りに、即ち、図面平面に沿って回転させる形で旋回させた場合、−90°〜+90°の間の任意の入射角を設定することができる。図2による実施構成では、入射方向が一定であるため、投影に関して角度選択性の大きいホログラムマスターを使用することができる。図1による実施構成においても、同様に、光線の投影及び細分化に関与する部品を入射ライン29の周りに図面平面に沿って旋回させることによって、限界内における平均的な入射角αを設定することができる。基本的に、そのことは、同じく図3による実施構成にも当てはまるが、0°と異なる入射角を選定した場合、投影光学系の焦点深度によって補償すべき投影光路の長さの差が大きくなる。
【0049】
ここで述べた実施構成は、単なる例として挙げた実施構成である。実施例と関連して述べた個々の特徴は、本発明を実施するために、任意に組み合わせて使用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1,1’,1’’ 個別識別可能なホログラムの制作装置
3 光線
3’ 細かく分割して変調された光線
3’(i) 時点iでの細かく分割して変調された光線
5 空間光変調器
7 矢印
9 投影光学系
11(i) 時点iの位置での偏向ミラー
13 ホログラム記録材料
15 ドラム
17 ミラー回転軸
19 駆動機器
21 (駆動機器と偏向ミラーが連結されていることを表す)破線
23 ホログラムマスター
25 ドラム駆動機器
27 ドラム回転軸
29 入射ライン
31 接続線
33 矢印
35 速度ベクトルvFilm
37 接平面
39 速度ベクトルvSpiegel
41 速度ベクトル−m・vscan
43 スクリーン
45 ミラー回転軸とスクリーン間の間隔
47 ミラー回転軸と入射ライン/ホログラム記録材料/接平面間の間隔
49 位置に応じて光を感知するセンサー
51 コントローラ
53 インクリメンタル測定器
55 別の制御ユニット
61 光学システム
63 スライド機器
65 両矢印
67 偏向ミラー
69 別の偏向ミラー
71 ストライプ光源
73 レーザー
75 ストライプ発生光学系
77 ビームスプリッタキューブ
81 進行方向
83 投影光路の長さの差
85 センサー
87 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別識別可能なホログラムの制作方法であって、
光線(3)を発生させ、
その光線(3)を空間光変調器(5)内で細かく分割して変調し、
ホログラム記録材料(13)をホログラムマスター(23)に対して相対的に配置するとともに、細かく分割して変調された光線(3’)の少なくとも一部がホログラムマスター(23)で散乱及び/又は反射されて、ホログラム記録材料(13)内で細かく分割して変調された光線(3’)と干渉し、その結果ホログラム記録材料(13)内に個別識別可能なホログラムを表す干渉パターンが形成されるように、細かく分割して変調された光線(3’)を誘導し、
ホログラムマスター(23)の全体を走査するために、細かく分割して変調された光線(3’)をホログラム記録材料(13)及びホログラムマスター(23)に対して相対的に動かす方法において、
記録材料(13)を円筒形のドラム(15)に密着して配置し、ホログラムマスター(23)を走査する時に、ドラム(15)のドラム回転軸(27)の周りにドラム(15)を回転させることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
ストライプ形状又はアレー状の光線として光線(3)を発生させることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
ホログラムマスター(23)をドラム(15)に嵌め込む、或いは嵌め込んでいることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一つに記載の方法において、
空間光変調器(5)がラインディスプレイであり、このラインディスプレイを用いて、光線(3)を細かく分割して変調することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法において、
空間光変調器(5)は、平坦に構成されるとともに、光線を変調するために、有利には、ストライプ形状の光線を用いて走査されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一つに記載の方法において、
ミラー回転軸(17)の周りを回転可能な形で軸支された偏向ミラー(11)によって、細かく分割して変調された光線(3’)をホログラム記録材料(13)の方に偏向させるとともに、細かく分割して変調された光線(3’)がドラム(15)のドラム回転軸(27)に関して固定した位置で記録材料(13)に当たる回転速度で、その偏向ミラーを回転させる、
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一つに記載の方法において、
ホログラム記録材料(13)上における細かく分割して変調された光線(3’)の入射ライン(29)又は入射位置が、ドラム(15)の回転から生じるホログラム記録材料(13)の接線方向の速度(vFilm)と一致する速度(vSpiegel)で記録材料(13)の接平面(37)内を動くように、偏向前の固定した位置の細かく分割して変調された光線(3’)に関して、偏向ミラー(11)の回転速度を定め、
ホログラム記録材料(13)上における細かく分割して変調された光線(3’)の入射ライン(29)又は入射位置が、偏向ミラー(11)を回転させないとした場合に、ドラム(15)の回転から生じるホログラム記録材料(13)の接線方向の速度(vFilm)を相殺する速度−m・vscanで接平面(37)内を動くように、走査速度を定める、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一つに記載の方法において、
ドラム(15)の回転と細かく分割して変調された光線(3’)に応じて、細かく分割して変調された光線(3’)がドラム回転軸に関して固定した位置に有る場合に得られる光線の透過時間中に記録材料(13)に加えられるエネルギー量が、記録材料(13)内に個別識別可能なホログラムを記録するのに必要なエネルギー量と一致するように、光線(3)の強度に応じてドラム(15)の回転速度を選定することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一つに記載の方法において、
固定した位置に入射する光線(3)が空間光変調器(5)に対して相対的に動く走査用光線に変換されるように、光学システム(61)をドラム回転軸(27)に対して垂直な方向に並進的に動かし、
この光学システムが、少なくとも一つのビームスプリッタ(77)を有し、ビームスプリッタ(77)によって、光線(3)を空間光変調器(5)の方に偏向させるとともに、ビームスプリッタ(77)によって、空間光変調器によって細かく分割して変調された光線(3’)をホログラム記録材料(13)の方に偏向させる、
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
光学系(61)が、更に、空間光変調器と、ビームスプリッタ(77)に対して相対的に固定した方向を向いている偏向ミラー(67)とを有し、
光学システム(61)が、ドラム回転軸(27)及びホログラム記録材料(13)上の細かく分割して変調された光線(3’)に対して垂直な方向に実現されている、
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一つに記載の方法において、
ドラム回転軸(27)の方向に対して、個別識別可能なホログラムの露光領域の外で、有利には、ドラム(15)の近くに、有利には、記録材料(13)上における細かく分割して変調された光線(3’)の入射ライン(29)の接平面(37)内又はその上方に、少なくとも一つの位置に応じて光を感知するセンサー(49)を配置し、
記録材料(13)に光線を通過させた場合に、細かく分割して変調された光線(3’)の周縁領域が位置に応じて光を感知するセンサー(49)に入射するように、細かく分割して変調された光線(3’)を形成し、
記録材料上における細かく分割して変調された光線(3’)の入射ラインが、ドラム回転軸に対して固定した位置に保持されるように、閉じた制御系によって、偏向ミラー(11)の回転速度又は光学式個別分割システムのスライド速度を制御する、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一つに記載の方法において、
インクリメンタル測定器(53)により、ドラム(15)の位置を判定し、それにもとづき、ドラム回転速度を制御することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか一つに記載の方法において、
ホログラム記録材料(13)及び/又はホログラムマスター(23)に対する細かく分割して変調された光線(3’)の入射方向を変化させるために、細かく分割して変調された光線(3’)の入射ライン(29)によって規定される旋回軸の周りに、光学システム(61)とドラム回転軸(27)を互いに相対的に旋回させることを特徴とする方法。
【請求項14】
個別識別可能なホログラムの制作装置(1)であって、この装置は、
コヒーレントな光線を発生させる光源と、
その光線(3)を細かく分割して変調された光線(3’)に細かく分割して変調するための空間光変調器(SLM)(5)と、
ホログラムマスター(23)と、
細かく分割して変調された光線(3’)の透過に関して、ホログラムマスター(23)に対して相対的にホログラム記録材料(13)を配置することが可能な供給機器と、
を有し、
細かく分割して変調された光線(3’)の少なくとも一部がホログラムマスター(23)で散乱及び/又は反射されて、ホログラム記録材料(13)内で細かく分割して変調された光線(3’)と重なり合い、その結果ホログラム記録材料(13)内に個別識別可能なホログラムを表す干渉パターンが形成されるように、細かく分割して変調された光線(3’)を誘導し、
ホログラムマスター(23)の全体を走査するために、細かく分割して変調された光線(3’)をホログラム記録材料(13)及びホログラムマスター(23)に対して相対的に動かすことが可能である装置において、
この供給機器が、円筒形のドラム(15)を有し、ホログラム記録材料(13)をドラム(15)に密着した形でホログラムマスター(23)に対して相対的に配置するように構成されており、
ホログラムマスター(23)を走査する時に、ドラム回転軸(27)の周りにドラム(15)を回転させるために、ドラム(15)がドラム駆動機器(25)と連結されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置(1)において、
ホログラムマスター(23)が、円筒形のドラム(15)に嵌め込まれていることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の装置(1)において、
当該の光源が、ストライプ形状の光線(3)を発生させるストライプ光源(71)であることを特徴とする請求項14又は15に記載の装置。
【請求項17】
請求項14から16までのいずれか一つに記載の装置(1)において、
特に、円柱レンズ及び/又はホログラム光学素子(HOE)を有するストライプ発生光学系(75)がストライプ形状の光線(3)を発生させることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項14から17までのいずれか一つに記載の装置(1)において、
空間光変調器(5)がラインディスプレイであることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項14から17までのいずれか一つに記載の装置(1)において、
空間光変調器(5)が平坦に構成されていることを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項14から19までのいずれか一つに記載の装置(1)において、
ミラー回転軸(17)の周りを回転可能な形で軸支された偏向ミラー(11)は、(投影する)細かく分割して変調された光線(3’)をホログラム記録材料(13)の方に偏向するように、空間光変調器(5)及びドラム(15)に対して相対的に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項14から20までのいずれか一つに記載の装置(1)において、
当該の偏向ミラーは、駆動機器(19)と連結されており、その駆動機器は、偏向ミラー(11)の回転速度を制御して、細かく分割して変調された光線(3’)がドラム(15)の回転軸(27)に関して固定した位置で記録材料(13)に当たる速度で偏向ミラー(11)を回転させることを特徴とする装置。
【請求項22】
請求項14から21までのいずれか一つに記載の装置(1)において、
偏向ミラー(11)は、駆動機器(19)と連結されており、その駆動機器は、ホログラム記録材料(13)上における細かく分割して変調された光線(3’)の入射ライン(29)又は入射位置が、ドラム(15)の回転から生じるホログラム記録材料(13)の接線方向の速度(vFilm)と一致する速度(vSpiegel)で記録材料(13)の接平面(37)内を動くように、偏向前の固定した位置の細かく分割して変調された光線(3’)に関して、偏向ミラー(11)の回転速度を制御し、
ホログラム記録材料(13)上における細かく分割して変調された光線(3’)の入射ライン(29)又は入射位置が、偏向ミラー(11)を回転させないとした場合に、ドラム(15)の回転から生じるホログラム記録材料(13)の接線方向の速度(vFilm)を相殺する速度−m・vscanで接平面(37)内を動くように、空間光変調器(5)の走査に関する走査速度(vscan)が定められている、
ことを特徴とする装置。
【請求項23】
請求項14から22までのいずれか一つに記載の装置(1)において、
ドラム(15)の回転と細かく分割して変調された光線(3’)に応じて、細かく分割して変調された光線(3’)がドラム回転軸に関して固定した位置に有る場合に得られる光線の透過時間中に記録材料(13)に加えられるエネルギー量が、記録材料(13)内に個別識別可能なホログラムを記録するのに必要なエネルギー量と一致するように、光線(3)の強度に応じてドラム(15)の回転速度が選定されることを特徴とする装置。
【請求項24】
請求項14から23までのいずれか一つに記載の装置(1)において、
固定した位置に入射する光線(3)が空間光変調器(5)に対して相対的に動く走査用光線(3)に変換されるように、光学システム(61)をドラム回転軸(27)に対して垂直な方向に並進的に動かすことが可能であり、
この光学システムは、少なくとも一つのビームスプリッタ(77)を有し、ビームスプリッタ(77)によって、光線(3)を空間光変調器(5)の方に偏向させるとともに、ビームスプリッタ(77)によって、空間光変調器(5)によって細かく分割して変調された光線(3’)をホログラム記録材料(13)の方に偏向させるように配置されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項25】
請求項24に記載の装置(1,1’1’’)において、
光学システム(61)が、更に、空間光変調器(5)と、ビームスプリッタ(77)に対して相対的に固定した方向を向いた偏向ミラー(67)とを有し、
光学システム(61)は、スライド機器(63)を用いて、ドラム回転軸(27)及び細かく分割して変調された光線(3’)のホログラム記録材料(13)への入射方向(29)に対して垂直な方向にスライド速度(vtrans)で並進的に動かすことが可能である、
ことを特徴とする装置。
【請求項26】
請求項14から25までのいずれか一つに記載の装置(1,1’1’’)において、
ドラム(15)には、インクリメンタル測定器(53)が配置されており、このインクリメンタル測定器の信号にもとづき、ドラム回転速度を制御する別の制御ユニット(55)が配備されていることを特徴とする装置。
【請求項27】
請求項14から26までのいずれか一つに記載の装置(1,1’1’’)において、
一方の側には、光線(3)の細分化、誘導及び投影に必要な部品が配備され、他方の側には、細かく分割して変調された光線(3’)の記録材料(13)及び/又はホログラムマスター(23)への入射方向を変化することが可能なように、ドラム(15)が、細かく分割して変調された光線(3’)の入射ライン(29)によって規定される旋回軸の周りに互いに相対的に旋回可能な形で構成されていることを特徴とする装置。
【請求項28】
請求項14から27までのいずれか一つに記載の装置(1,1’1’’)において、
ドラム回転軸(27)の方向に対して、個別識別可能なホログラムの露光領域の外で、有利には、ドラム(15)の近くに、有利には、記録材料(13)上における細かく分割して変調された光線(3’)の入射ライン(29)の接平面(37)内又はその上方に、少なくとも一つの位置に応じて光を感知するセンサー(49)が配置されており、
記録材料に光線を通過させた場合に、細かく分割して変調された光線(3’)の周縁領域が位置に応じて光を感知するセンサー(49)に入射するように、細かく分割して変調された光線(3’)が形成されており、
この少なくとも一つのセンサーは、記録材料(13)上における光線の入射ライン(29)がドラム回転軸(27)に対して固定した位置に保持されるように、偏向ミラー(11)の回転速度又は光学システム(61)のスライド速度(vtrans)を制御するように構成されたコントローラ(51)と共に閉じた制御系として統合されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項29】
請求項28に記載の装置(1,1’1’’)において、
ドラム回転軸の方向に関して、個別識別可能なホログラムの露光領域の逆側の端部に、少なくとも一つの別の位置に応じて光を感知するセンサーが配置されていることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−538330(P2010−538330A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523342(P2010−523342)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007408
【国際公開番号】WO2009/030502
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(510058829)ブンデスドルッケライ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (10)
【Fターム(参考)】