説明

個装ケース

【課題】マスターケースからの取り出しが容易であり、強度や密閉性にも優れた簡易な構成の個装ケースを提供する。
【解決手段】開閉用指掛け穴8に指を差し入れて蓋板2を上方向に引き上げると、蓋板2に連なる差し込み片3も上方向に引き上げられる。その結果、蓋板固定片5の幅狭部5bのスリット9に対する係合位置が挿入部9aからガイド部9bに移動し、さらにガイド部9bに沿ってガイド部9bの下端部まで移動する。これにより、蓋板2はガイド部9bの下端部と蓋板固定片5の幅狭部5bとが係合する位置で所定角度だけ開いた状態に保持されるため、蓋板2の両端部に形成された把持用指掛け穴10に指を掛けてマスターケース101に収容された個装ケース100を容易に取り出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品等を梱包する包装ケースに関し、特に、大型の外ケースに複数個梱包される個装用の包装ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、小型の電機製品や精密機器本体、或いは交換部品等の被梱包物を梱包して出荷する際、被梱包物を個装した包装ケース(以下、個装ケースという)を大型の外ケース(以下、マスターケースという)に複数個収納して出荷している。このとき、輸送中におけるマスターケース内の個装ケースのガタツキ等を防止するとともに、輸送効率や保管時の積載効率を高めるために、通常は個装ケースをマスターケース内に隙間なく整列させて収納している。
【0003】
しかし、マスターケースを開梱して個装ケースを取り出す際に、個装ケースが隙間なく収納されていると、最初の1箱(複数段積載されている場合は各段の最初の1箱)を取り出す際に手指を掛ける部分がなく、開梱時の作業性が低下するとともに、無理に取り出そうとすると個装ケースを破損したり、手指に思わぬ負荷がかかったりするという問題点があった。
【0004】
そこで、マスターケースからの取り出し性を向上させた個装ケースが種々提案されており、例えば特許文献1には、箱の上面側に位置する左右の角部に、角部に連なる2つの面にわたって2本の平行な切り込み線を設け、切り込み線の間の部分を内側に押し込むことで指挿入部を形成するようにした梱包用内装箱が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、個装カートンの上面フラップの両側に稜線に連続するコの字状のミシン目で囲まれた切り起こし部と、切り起こし部の内側に抜き穴からなる手掛け部とを有する把手部を備えた構成が開示されている。さらに特許文献3には、内フラップの一部を切り離してピックアップ部材を形成するとともに、天板にピックアップ部材を差し込む切り込みを設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平6−10117号公報
【特許文献2】実開平7−31613号公報
【特許文献3】特開平11−79160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法では角部に切り込みが形成されているため、角部の強度が低下するという問題点があった。また、特許文献2の方法ではミシン目を破断して把手部を形成した後は上面フラップに穴が開いてしまい、個装ケースとして再利用できないという問題点があった。一方、特許文献3の方法では梱包時にピックアップ部材を天板の切り込みに差し込む必要が生じ、梱包作業が繁雑になるとともに個装ケースの見栄えも悪くなる。
【0008】
本発明は、上述の問題点に鑑み、マスターケースからの取り出しが容易であり、強度や密閉性にも優れた簡易な構成の個装ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、少なくとも一面が開口した箱体と、該箱体の開口縁の一辺に延設される開閉可能な蓋板と、該蓋板の端部を折り曲げて形成され前記開口縁に差し込むことにより前記蓋板を閉状態に保持する差し込み片と、該差し込み片と重なる前記箱体の側面に設けられ、前記差し込み片に形成されるスリットに挿入される蓋板固定片と、を有する個装ケースにおいて、前記蓋板固定片は、前記スリットに挿入される幅広部と、該幅広部の基端部に形成される幅狭部と、を有し、前記スリットは、前記幅広部と略同一の幅を有する挿入部と、該挿入部の下方に連続して形成される前記幅狭部と略同一の幅を有するガイド部と、を有することを特徴としている。
【0010】
また本発明は、上記構成の個装ケースにおいて、前記蓋板の、前記蓋体を開閉する際の折り線と平行な方向の両端縁に、把持用指掛け穴が形成されることを特徴としている。
【0011】
また本発明は、上記構成の個装ケースにおいて、前記蓋板の外表面には、前記把持用指掛け穴を繋ぐように前記蓋体を開閉する際の折り線と略平行な山折り線が形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の構成によれば、蓋板固定片の幅広部がスリットの挿入部に挿入された状態で蓋板を引き上げることにより、蓋板固定片の幅狭部がスリットのガイド部の下端に係合して蓋板が所定角度だけ開いた状態で保持されるため、箱体と蓋板との間に指を差し入れてマスターケースに整列状態で収容された個装ケースの最初の1箱を容易に取り出すことができる。
【0013】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の個装ケースにおいて、蓋板の、蓋体を開閉する際の折り線と平行な方向の両端縁に、把持用指掛け穴を形成することにより、把持用指掛け穴に指を掛けてマスターケースに整列状態で収容された個装ケースを容易に持ち上げることができる。
【0014】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第2の構成の個装ケースにおいて、蓋板の外表面に、把持用指掛け穴を繋ぐように蓋体を開閉する際の折り線と略平行な山折り線を形成することにより、把持用指掛け穴に指を掛けて個装ケースを持ち上げたとき、蓋板が山折り線に沿って山形状に屈曲する。この屈曲部が梁の役割を果たすため、個装ケースが細長い箱であっても蓋板の端縁が折れ曲がったり、箱体との連結部分が破断したりするおそれがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の個装ケースの蓋板2を開放した状態を示す斜視図
【図2】図1におけるスリット9付近の部分拡大図
【図3】図1における蓋板固定片5付近の部分拡大図
【図4】本発明の個装ケースの蓋板2が閉じられた状態を示す正面図
【図5】図4の状態から蓋板2を引き上げた状態を示す正面図
【図6】図5における蓋板固定片5付近の部分断面図
【図7】複数の個装ケースが整列して収容されたマスターケースから最初の1箱を取り出す状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の個装ケースの一構成例を示す斜視図である。個装ケース100は、上面が開口した箱体1と、箱体1の開口端の一辺に延設された蓋板2と、蓋板2の一端を折り曲げて形成された差し込み片3とを有し、蓋板2を閉じたとき差し込み片3を箱体1の開口4の内側に差し込むことにより、蓋板2を閉状態に保持可能となっている。
【0017】
箱体1には蓋板2をロックするための蓋板固定片5が設けられており、蓋板2と差し込み片3の境界部を挟んで蓋板2側には蓋板2を引き上げるための略矩形状の開閉用指掛け穴8が形成され、差し込み片3側には蓋板固定片5が挿入されるスリット9が穿設されている。また、蓋板2の長手方向(箱体1と蓋板2との境界の折り線に対し平行な方向)の両端縁には半円形の把持用指掛け穴10が設けられており、蓋板2の外表面には把持用指掛け穴10を繋ぐように、箱体1と蓋板2との境界の折り線と略平行な山折り線11が形成されている。
【0018】
図2は、図1におけるスリット9付近の部分拡大図であり、図3は、図1における蓋板固定片5付近の部分拡大図である。図2に示すように、スリット9は蓋板固定片5が挿入される挿入部9aと、挿入部9aの下方に連続するガイド部9bとを有する。図3に示すように、蓋板固定片5は折り線13によりL字状に折り曲げ可能となっており、折り線13から先端までの部分が挿入部9aに挿入される幅広部5aである。幅広部5aの基端部には折り線13を跨ぐように幅狭部5bが形成されている。
【0019】
挿入部9aの長さL1は、幅広部5aを挿入できるように、幅広部5aの幅W1と略同一に形成されている。また、ガイド部9bの長さL2は、幅狭部5bの幅W2と略同一に形成されている。
【0020】
図4は、蓋板2が閉じられた状態を示す個装ケースの正面図である。なお、説明の便宜のため、図4及び後述する図5、図6では蓋板固定片5にハッチングを付している。蓋板固定片5の幅広部5aがスリット9の挿入部9aに挿入されることにより、蓋板2が閉状態に保持される。
【0021】
図5は、図4の状態から蓋板2を引き上げた状態を示す正面図であり、図6は、図5における蓋板固定片5付近の部分断面図(図5のAA′矢視断面図)である。開閉用指掛け穴8に指を差し入れて蓋板2を上方向に引き上げると、蓋板2に連なる差し込み片3も上方向に引き上げられる。その結果、蓋板固定片5の幅狭部5bのスリット9に対する係合位置が挿入部9aからガイド部9bに移動し、さらにガイド部9bに沿ってガイド部9bの下端部まで移動する。即ち、蓋板2はガイド部9bの分だけ上下に移動可能となっており、図5及び図6に示すように、蓋板2はガイド部9bの下端部と蓋板固定片5の幅狭部5bとが係合する位置で所定角度だけ開いた状態に保持される。
【0022】
図7は、マスターケースに整列して収容された複数(ここでは3箱)の個装ケースのうち、最初の1箱を取り出す状態を示す斜視図である。図5及び図6に示したように、開閉用指掛け穴8に指を差し入れて蓋板2を引き上げ、半開き状態に保持した後、図7に示すように、蓋板2の長手方向両端部の把持用指掛け穴10に指を掛けて個装ケース100を持ち上げる。これにより、マスターケース101内に隙間無く収容された個装ケース100を容易に取り出すことができる。
【0023】
そして、個装ケース100内から被梱包物を取り出す際は、図4のように蓋板2を完全に閉じた状態で蓋板固定片5をスリット9の挿入部9aから引き抜き、開閉用指掛け穴8に指を掛けて蓋板2を引き上げることにより、図1のように箱体1の開口4が広く開放されて被梱包物の取り出しが可能となる。
【0024】
また、蓋板2には把持用指掛け穴10を繋ぐように長手方向に沿って山折り線11が形成されているため、個装ケース100を取り出す際の負荷が大きい場合は蓋板2が山折り線11に沿って山形状に屈曲する。この屈曲部が梁の役割を果たすため、個装ケース100が細長い箱であっても蓋板2の長手方向の端縁が折れ曲がったり、箱体1と蓋板2との連結部分が破断したりすることなく、個装ケース100を円滑に取り出すことができる。
【0025】
蓋板2を引き上げた時の開放角度は特に制限はないが、開放角度が小さすぎると把持用指掛け穴10に指を差し入れることができず、開放角度が大きすぎると蓋板2を持ち上げにくくなる。そのため、把持用指掛け穴10に円滑に指を差し入れることができる角度が好ましい。
【0026】
その他本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、一対の底板と一対の底フラップを係合させて底面を形成するB式タイプや、矩形状の底板の四辺に連設された側板を上方に折り曲げるA式タイプ等、種々の組み立て方式の個装ケースに適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、マスターケース内に整列状態で複数収容される個装ケースに利用可能である。本発明の利用により、マスターケースからの取り出しが容易であり、強度や密閉性にも優れた簡易な構成の個装ケースを提供することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 箱体
2 蓋板
3 差し込み片
4 開口
5 蓋板固定片
5a 幅広部
5b 幅狭部
8 開閉用指掛け穴
9 スリット
9a 挿入部
9b ガイド部
10 把持用指掛け穴
11 山折り線
100 個装ケース
101 マスターケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一面が開口した箱体と、
該箱体の開口縁の一辺に延設される開閉可能な蓋板と、
該蓋板の端部を折り曲げて形成され前記開口縁に差し込むことにより前記蓋板を閉状態に保持する差し込み片と、
該差し込み片と重なる前記箱体の側面に設けられ、前記差し込み片に形成されるスリットに挿入される蓋板固定片と、
を有する個装ケースにおいて、
前記蓋板固定片は、前記スリットに挿入される幅広部と、該幅広部の基端部に形成される幅狭部とを有し、
前記スリットは、前記幅広部と略同一の幅を有する挿入部と、該挿入部の下方に連続して形成される前記幅狭部と略同一の幅を有するガイド部と、を有することを特徴とする個装ケース。
【請求項2】
前記蓋板の、前記蓋体を開閉する際の折り線と平行な方向の両端縁に、把持用指掛け穴が形成されることを特徴とする請求項1に記載の個装ケース。
【請求項3】
前記蓋板の外表面には、前記把持用指掛け穴を繋ぐように前記蓋体を開閉する際の折り線と略平行な山折り線が形成されることを特徴とする請求項2に記載の個装ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−25460(P2012−25460A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167670(P2010−167670)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】