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倍加半数体植物を作出する方法
説明

倍加半数体植物を作出する方法

本発明は、倍加半数体植物を作出する方法であって、機能的精細胞を一つ有する花粉を中央細胞ではない胚嚢細胞と受精させる工程; 中央細胞を増殖させて胚乳とする工程; および該胚乳から倍加半数体植物を再生する工程を含む方法に関する。機能的精細胞を一つ有する花粉は、例えば、化学的突然変異、核酸を用いる形質転換または照射によって得ることができる突然変異体花粉である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倍加半数体植物を作出するための新規な方法に関する。本発明はさらに、このようにして得られる植物、ならびにこれらの植物の子孫、細胞、組織および種子に関する。
【背景技術】
【0002】
半数体胞子から植物を再生できるという、1964年の Guha および Maheshwari による発見(Nature 204: 497)以降、他の種について同様の知見を得るために多くの研究が行われてきた(例えば、"In vitro haploid production in Higher plants" Vol. 1, 2, 3, 4, 5, Eds: S. Jain, S. Sopory and R. Veilleux (1996) Kluwer Academic Publishers を参照)。
【0003】
現代の植物育種において、倍加半数体(DH)の使用は、遺伝的に純粋な系統の作出を加速するため、および難しい形質、例えば複数の遺伝子/アレルによってコードされる形質を評価およびモニターするための、非常に価値のあるツールとなっている。
【0004】
作物の育種における DH の作出および使用は、多くの種について良く知られている (例えば、Thomas W. et al.(2003), In: Doubled haploid production in crop plants. A Manual. Eds. M. Maluszynski, K. Kasha, B. Forster and I. Szarejko. Kluwer Academic Publishers, pp 337-349 を参照)。これまでのところ、DH は、雄性または雌性器官の胞子から得ることが出来る。雄性器官からの胞子は小胞子と称され、インビトロ培養は小胞子培養と称される。典型的な小胞子培養は、古くからアブラナ属(Brassica)において良く確立されている (例えば、Keller et al. (1984) In: K. Giles, S. Sen (eds.), Plant Cell Culture in Crop Improvement pp 169-183. Plenum Pub. Corp., New York を参照)。雌性器官からの胞子は大胞子と称され、これら胞子のインビトロ培養は一般的に雌性発生(gynogenesis)と称される。雌性発生は、例えばテンサイやキュウリに関して良く確立された技法である(例えば、Hosemans D. and Bossoutrot, Z. Pflanzenzuchtg. 91:74-77 (1983); EP 0 374 755 を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
雌性発生および小胞子培養の双方の成功は、多くの技術的進歩にも関わらず、受け入れ可能な(amenable)遺伝子型にのみ限られている。DH の作出の成功率が低い植物種、例えばスイカ (Sari N., Hort. Science 1994,vol.29(10), 1189-1190)およびカボチャ (Kurtar E.S. et al., Euphytica, Volume 127(3), 2002, 335-344(10)等が存在するだけでなく、DH の誘導に対して完全に抵抗性(recalcitrant)の種も存在する。
【0006】
このことは、DH の非常に大きな利点を、望まれる全ての植物種において活かすことができない事を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、DH を作出するための新規な方法を提供することが本発明の目的である。かかる目的は、以下の工程を含む、倍加半数体植物を作出する方法によって達成される:
a) 機能的精細胞を一つ有する花粉を、中央細胞ではない胚嚢細胞と受精させる工程;
b) 中央細胞を増殖させて胚乳とする工程; および
c) 該胚乳から倍加半数体植物を再生する工程。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図面は、本発明の方法を説明するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、小胞子または大胞子の使用から直接的に DH 植物を得るものではない。代わりに、雌性配偶体の中央細胞から DH 植物が再生される。
【0010】
被子植物における有性生殖は、重複受精と称されるユニークなプロセスによって特徴付けられる。これは、花粉粒から2つの精細胞が雌性配偶体へ進入することを意味する。第1の精細胞は半数体の卵細胞と受精し、第2の精細胞は、2つの核を含む中央細胞と受精する。受精した卵細胞からは二倍体の胚が発生し、中央細胞からは三倍体の胚乳が増殖する。中央細胞の受精が無い場合、および/または受精した卵細胞からの誘発(trigger)が無い場合には、通常、中央細胞が増殖して胚乳となることはない。限られた例外としては、自律的胚乳発生をもたらし得る fis および fie 突然変異体がある。
【0011】
しかしながら、本発明においては、精細胞の一方が存在しないかまたは不活化されている突然変異体花粉が、卵細胞とのみ受精する。第2の精細胞の不存在によって中央細胞は未受精のままとなり、そのため、倍加半数体の本質である二倍体のステージを維持する。卵細胞の受精は、未受精の中央細胞が増殖して胚乳となることを誘発する。そこから、多くの植物種に対して広く利用可能な、胚乳から三倍体植物を再生する技術を用いて、未受精の中央細胞から倍加半数体植物を再生することができる(T.D. Thomas & R. Chaturvedi, Plant Cell Tissue and Organ Culture 93: 1 を参照)。
【0012】
したがって、本発明は、未受精の倍加半数体中央細胞の発生を誘発する、卵細胞のみの受精のための突然変異体花粉の使用に関する。
【0013】
一つの態様において、機能的精細胞を一つだけ有する花粉が、EMS または EMS と同様の化学物質、例えば EES、BMS、PMS、MES もしくは MMS を用いる化学的突然変異誘発によって作成される。
【0014】
一つの態様において、機能的精細胞を一つだけ有する花粉が、例えば UV光、X線、ガンマ線を用いる照射、または電離放射線を介する突然変異誘発によって作成される。
【0015】
一つの態様において、eco-tilling を用いて、雄原細胞における細胞分裂を阻害する適切な突然変異について変異原植物をスクリーニングすることができる。
【0016】
一つの態様において、eco-tilling を用いて、機能的精細胞を一つだけ有する花粉の保有について自然集団(natural population)をスクリーニングすることができる。
【0017】
一つの態様において、雄原細胞の分裂を阻害する分子を、例えばプラスミド上に存在する核酸によって、花粉の発生中に一過性に発現させる。核酸またはタンパク質のいずれであってもよい該阻害分子は、プラスミドからの構成的発現によって、花粉または小胞子中において生産される。
【0018】
一つの態様において、雄原細胞の分裂を阻害する分子を、花粉のゲノム中に安定に組み込まれた核酸から発現させる。核酸またはタンパク質のいずれであってもよい該細胞分裂阻害分子は、構成的発現によって、花粉または小胞子中において生産される。
【0019】
本発明の一つの態様において、機能的精細胞を一つだけ含む花粉は、核酸を用いる形質転換によって得ることができる。該形質転換は、あらゆる適切な方法、例えばアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)または微粒子銃(遺伝子銃)を用いて行うことができる。
【0020】
これらの形質転換手法は周知である。アグロバクテリウム・ツメファシエンスを用いる植物細胞の形質転換は良く確立されており、例えば De la Riva et al., EJB Vol. 1(3) (1998) および Bent, Plant Physiol. 124:1540-1547 (2000) において概説されている。
【0021】
近年、植物の遺伝的形質転換はアグロバクテリウム(Agrobacterium)のみに限定されるものではなく、他の細菌も植物を形質転換する能力を有していることが見出された(引用により本明細書に取り込まれる Broothaerts et al., Nature 433, 629-633 (2005))。これらの植物に関連する共生細菌は、非武装(disarmed) Ti プラスミドおよび適切なバイナリーベクターの両方の獲得によって、遺伝子導入用にコンピテント(competent)なものにされている。かかる形質転換系は、本発明における使用にも適するものである。
【0022】
遺伝子銃による形質転換も当業者に良く知られており、かかる応用のためのツールが数年前から市販されている (Ralph Bock, In: QiagenNews, Issue No. 5, 1997)。本発明における使用に適した手法は、例えば、小胞子のレベルにおける DNA の送達およびその一過性発現がキンギョソウ(Antirrhinum majus)において示されている Barinova et al. (J Exp Bot. 53(371):1119 29 (2002))や、アルファルファ(Medicago sativa L.)において示されている Ramaiah et al. (Current Science 73:674-682 (1997)) にも記載されている。タバコにおける、遺伝子銃を用いた小胞子または花粉の形質転換の方法は、Baubak Bajoghli (Matrikel number: 9802743, University of Vienna, Experimentelle Genetic III. Plant Biotechnology by Alisher Touraev, July 2001)の中に見出すことができる。Van der Leede-Plegt, et al., Transgenic Research 4(2):77-86 (1995)は、微粒子銃によるタバコ(Nicotiana glutinosa)の花粉への DNA の直接送達を記載している。これらの手法および他の手法を、本発明における使用のための、花粉または小胞子の形質転換のために用いることができる。
【0023】
一つの態様において、花粉および小胞子は、核酸の存在によって細胞分裂阻害分子を含む。導入される核酸は、細胞分裂阻害分子そのものであってもよく、あるいは細胞分裂阻害分子をコードするものであってもよい。後者の場合、該阻害分子はタンパク質またはペプチドである。前者の場合、該阻害分子は核酸である。該核酸は、それ自身で阻害するものであってもよく、あるいは他の核酸が発現することを阻止するものであってもよい。例えば、核酸は CDK タンパク質ファミリーまたは KRP ファミリーのメンバーに対する RNAi であってもよく、該 RNAi をコードするものであってもよい。
【0024】
本発明は、形質転換された花粉または自然突然変異体花粉によって一つの精細胞のみが胚嚢または卵細胞へ送達されるという原理に基づく。雄原細胞における細胞分裂を阻害することができる遺伝子コンストラクトまたは分子は、それ自体公知のものであり、本発明の新規な方法において使用することができる。
【0025】
一つの態様において、花粉粒はその後、同じ種または該花粉/小胞子細胞の花粉放出が起こり得る種の植物の雌ずい上に移される。後者は異種受粉(heterologous pollination)と称される。異種受粉の例は、ナス科に属する種を花粉ドナーとして使用し、花粉アクセプターとしてトマトを使用することである。他の例は、de Martinis, D et al. Planta 214(5):806 812 (2002) および Dore C et al., Plant Cell Reports 15:758 761 (1996)に記載されている。一般的に、異種受粉に適する種は、植物の同じ科に属するものである。
【0026】
本発明はさらに、機能的精細胞を一つだけ有する花粉を生産する植物、および、かかる植物もしくはその子孫の小胞子、卵細胞、種子、細胞もしくは組織に関する。
【0027】
最後に、本発明は、本発明の方法によって得ることができる倍加半数体胚乳、ならびに、かかる倍加半数体胚乳から再生される植物、かかる植物の子孫、かかる植物もしくはその子孫の種子、細胞、組織、小胞子および卵細胞に関する。
【0028】
全ての態様において、花粉は、卵細胞と首尾良く受精することができる一つの機能的精細胞または雄原細胞を含むものである。
【0029】
図面は、本発明の方法を説明するものである。胚嚢細胞 1 は、3つの反足細胞 2、二核性の中央細胞 3 ならびに2つの助細胞 5 および 6 に隣接した半数体の卵細胞 4 を含む。2つの機能的精細胞 9 および 10 を有する野生型花粉 8 によって受精 7 が起こると、受精した三倍体の中央細胞 11 および受精した二倍体の卵細胞 12 が胚嚢細胞 1 において形成される。発芽後、胚から二倍体の植物 13 が形成される。機能的精細胞 15 を一つだけ含む突然変異体花粉 14 による受精 16 の後は、中央細胞 17 の受精は起こらない。未受精の中央細胞 17 は倍加半数体である。受精後の卵細胞 18 は二倍体である。その後、中央細胞 17 から倍加半数体植物 19 を再生することができる。
【0030】
本発明を、以下の実施例においてさらに説明する。これらの実施例は、単に説明のみを目的とするものであり、何ら本発明を限定することを意図したものではない。
【実施例】
【0031】
実施例
突然変異体花粉による受粉および胚乳培養
CDC2A 遺伝子は、植物の有糸分裂細胞周期において中心的な役割を果たす。CDC2A 領域における負の(negative)突然変異は、雄原細胞の有糸分裂がうまく起こらない花粉をもたらし、その結果、精細胞を一つだけ有する花粉がもたらされる (Nowack et al, Nature genetics 38: 63 (2006))。
【0032】
トマトの花を除雄し、実施例 1 におけるトマト植物体から得られる、形質転換された突然変異体花粉を用いて受粉した。受粉後、子房が膨張して果実様の部分を形成した。若い果実様構造を、植物上に 2-4 週間維持した。植物を、順化条件(climatized conditions)(昼 22℃、夜 18℃)において生育させた。
【0033】
果実を収穫し、胚細胞の残部から胚乳を分離した。次いで、該胚乳細胞を、胚乳再生のために一般的に用いられる培地(T.D. Thomas & R. Chaturvedi, Plant Cell Tissue and Organ Culture 93: 1 (2008) およびその参考文献を参照されたい)上でインキュベートした。首尾良く生じた植物の葉を用いて、フローサイトメトリーによって該植物の倍数性を決定した (K.E. Arumuganathan & E.D. Earle Plant Molecular Biology Reporter 9: 229)。胚乳から再生した小植物の大部分が二倍体のトマト植物と同様の核 DNA 含量を有していた事から、これらの植物は実際に倍加半数体であり、中央細胞の受精は起こっていなかったものと推論される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、倍加半数体植物を作出する方法:
a) 機能的精細胞を一つ有する花粉を、中央細胞ではない胚嚢細胞と受精させる工程;
b) 中央細胞を増殖させて胚乳とする工程; および
c) 該胚乳から倍加半数体植物を再生する工程。
【請求項2】
機能的精細胞を一つ有する花粉が突然変異体花粉である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
突然変異体花粉が、化学的突然変異、核酸を用いる形質転換、または照射によって得ることができるものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
化学的突然変異が、EMS、EES、BMS、PMS、MES または MMS からなる群より選択される化学物質による種子の処理によってもたらされるものである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
照射が、UV照射、X線、ガンマ線または電離放射線である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
核酸が、一過性に発現するものであるか又は安定に組み込まれるものである、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
形質転換が、アグロバクテリウム・ツメファシエンスまたは微粒子銃を用いて行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
核酸が、第2の精細胞の形成を調節する遺伝子の発現を阻止する RNAi であるか又は該 RNAi をコードするものである、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
花粉が、第2の精細胞の形成の阻害または停止に関与する遺伝子が突然変異した花粉である、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
突然変異した遺伝子が、CDC2A もしくはサイクリン依存性キナーゼタンパク質(CDK)ファミリーの別のメンバーまたは KRP タンパク質ファミリーの遺伝子の負の突然変異体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
花粉粒の一つの精細胞が破壊されている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
機能的精細胞を一つ有する花粉を生産する植物が eco-tilling によって得ることができるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
機能的精細胞を一つ有する花粉が、胚嚢細胞または卵細胞を提供するアクセプター植物とは別の種に属するドナー植物のものである、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13の機能的精細胞を一つだけ有する花粉を生産する植物、または該植物の子孫、種子、細胞もしくは組織。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに記載の方法によって得ることができる倍加半数体植物または胚乳。
【請求項16】
請求項15に記載の胚乳または植物の子孫、種子、細胞または組織。

【図1】
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【公表番号】特表2012−532617(P2012−532617A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520009(P2012−520009)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060076
【国際公開番号】WO2011/006899
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(500502222)ライク・ズワーン・ザードテールト・アン・ザードハンデル・ベスローテン・フェンノートシャップ (19)
【Fターム(参考)】