倒立型エアゾール用バルブと、該バルブを用いた容器
【課題】噴射剤を無駄に噴射しない、倒立型エアゾール用バルブを提供する。
【解決手段】缶に取り付けて倒立型エアゾール用容器を形成するバルブであって、重力動作機構部が、管6dとストッパ6aと密閉部材6bとを備えており、管6dが、前記第2端の第1開口に接続されており、管6d内径より小径の円形の第2開口6fを有している底面を備えており、ストッパ6aが、円錐形で、第2開口6fより小径の頂部近傍の部分に大径の密閉部材6bを備えており、密閉部材6bから、ストッパ6aの直径が前記第2開口と同じになる部分までの範囲よりも広範囲の表面に、内包物を通す1以上の溝6cを備えており、密閉部材6bが、正立時に第2開口を密閉し、缶に取り付けて形成した容器を正立してステムを押下した場合、ストッパ6aと密閉部材6bとが、予め定めた圧力に抗して密閉の状態を保つだけの重さを少なくとも有している。
【解決手段】缶に取り付けて倒立型エアゾール用容器を形成するバルブであって、重力動作機構部が、管6dとストッパ6aと密閉部材6bとを備えており、管6dが、前記第2端の第1開口に接続されており、管6d内径より小径の円形の第2開口6fを有している底面を備えており、ストッパ6aが、円錐形で、第2開口6fより小径の頂部近傍の部分に大径の密閉部材6bを備えており、密閉部材6bから、ストッパ6aの直径が前記第2開口と同じになる部分までの範囲よりも広範囲の表面に、内包物を通す1以上の溝6cを備えており、密閉部材6bが、正立時に第2開口を密閉し、缶に取り付けて形成した容器を正立してステムを押下した場合、ストッパ6aと密閉部材6bとが、予め定めた圧力に抗して密閉の状態を保つだけの重さを少なくとも有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倒立型エアゾール用バルブと、該バルブを用いた容器と、に関する。
【背景技術】
【0002】
倒立型エアゾールとは、化粧品等に用いられ、倒立させた時に下側に位置するステムを押すことによって内容物を噴射する型のエアゾール製品等のことである。以下、倒立型エアゾールに用いる容器を、倒立型エアゾール用容器という。また、該容器で、缶上に取り付けて用いるバルブ構造体を、倒立型エアゾール用バルブという。
【0003】
図11は、従来の倒立型エアゾール用容器200の構造を示す断面図である。倒立型エアゾール用容器200は、缶1と、倒立型エアゾール用バルブCと、を備えている。倒立型エアゾール用バルブCは、マウンテンカップ1aと、ステム2と、ハウジング3と、を備えている。ハウジング3は、ステム2と容器の内側とを連通する、バルブ機能を有している。ハウジング3の容器内方の開口3aが、原液吸い込み口である。マウンテンカップ1aは、ステム2とハウジング3とを保持しており、いわゆるクリンチ処理によって、缶1に気密に接続されている。
【0004】
倒立型エアゾール用容器200は、ステム2を真下に向けた状態で用いることを想定して設計されている。容器本体1には、内包物の一例である原液4と、該原液を噴射するための噴射剤5とが、注入されている。
【0005】
倒立型エアゾール用容器200を、正立させた状態で、ステム2を押下すると、ステム2は、原液4を噴射する代わりに、噴射剤5の気相部のみを噴射する。このことが原因で噴射剤5の気相部が少なくなると、原液4を最後まで使うことができなくなってしまう。
【0006】
例えば、特許文献1には、正立時には、ステムを押下できなくする機構を有しているエアゾール用バルブを備えたエアゾール用容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−154295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の前記機構は、構造が複雑である。
【0009】
本発明は、正立時にステムを押下しても、噴射剤を出さないようになる、簡単な構成の倒立型エアゾール用バルブと、該バルブを用いる容器と、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の倒立型エアゾール用バルブは、倒立させたときに下側に位置するステムを押すことによって、内包物をステムから噴射させようとする予め定めた圧力によって内包物を噴射する倒立型エアゾール、の容器を形成するため、エアゾール用缶に取り付けて用いる倒立型エアゾール用バルブであって、前記バルブが、マウンテンカップと、ステムと、ハウジングと、重力動作機構部と、を備えており、前記ハウジングの第1端にステムが取り付けられており、該ハウジングがステムの押下に応じて、ステムと、ハウジングのステム取り付け側と反対の第2端と、の間を連通するようになっており、ステムとハウジングとは、前記マウンテンカップに、取り付けられており、前記マウンテンカップが、前記エアゾール用缶を密閉するように、該缶に気密に取り付けられ得るものであり、前記重力動作機構部が、管と、ストッパと、密閉部材と、を備えており、前記管が、前記ハウジングの第2端の第1開口に接続されており、容器本体の内方へと突出しており、該突出している側に、管の内径に比べて小径の円形の第2開口を有している底面を備えており、前記ストッパが、円錐体の形状であり、前記第2開口よりも小径の、頂部近傍の部分に、前記第2開口よりも大径の前記密閉部材を備えており、該密閉部材からストッパの直径が前記第2開口と同じになる部分までの範囲で、前記第2開口を挟んで移動できるようになっており、更に、前記ストッパが、前記範囲よりも広い範囲の表面に、内包物を通す1以上の溝を備えており、前記密閉部材が、容器の正立時、前記第2開口を密閉するようになっており、エアゾール用缶に取り付けて容器を形成し、容器を正立させて前記ステムを押下した場合、前記ストッパと密閉部材とが、少なくとも、前記予め定めた圧力に抗して密閉の状態を保つだけの重さを有している、ことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の倒立型エアゾール用バルブは、請求項1記載の倒立型エアゾール用バルブであって、前記密閉部材が、前記ストッパへの取り付け位置に嵌る第3開口を有しており、少なくとも前記ストッパが、前記取り付け位置に、密閉部材とストッパとを接続する接続部を有している、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の倒立型エアゾール用バルブは、請求項2記載の倒立型エアゾール用バルブであって、前記接続部として、前記ストッパが前記取り付け位置に密閉部材の幅の、1対の、表面からの突起部を有しており、前記突起部が、前記密閉部材を係止するようになっている、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の倒立型エアゾール用バルブは、請求項2記載の倒立型エアゾール用バルブであって、前記接続部として、前記ストッパが前記取り付け位置にねじ切りされた部分を有しており、前記第3開口が、前記ねじ切りされている部分に螺合する部分を有している、ことを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の倒立型エアゾール用バルブは、請求項1記載の倒立型エアゾール用バルブであって、前記ストッパが、前記第2開口よりも小さな直径の部分から上の部分が取り除かれた形状のものであり、前記密閉部材の底面と、前記ストッパの上面とに、互いを接続するための接続部を有している、ことを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の倒立型エアゾール用バルブは、請求項4又は5に記載の倒立型エアゾール用バルブであって、前記密閉部材の底面にゴムパッキンが、設けられている、ことを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の倒立型エアゾール用バルブは、請求項1乃至6の何れか1つに記載の倒立型エアゾール用バルブであって、前記ストッパの、少なくとも、前記密閉部材よりも容器の内方にある部分が、空洞になっており、球状の錘が、前記空洞に備えられている、ことを特徴とする。
【0017】
請求項8記載の倒立型エアゾール用容器は、請求項1乃至7の何れか1つに記載の倒立型エアゾール用バルブを、エアゾール用缶に取り付けることによって形成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の倒立型エアゾール用バルブでは、正立時に、密閉部材が、ストッパと密閉部材との重みによって、確実に第2開口を密閉することができる、という効果がある。
【0019】
また、該バルブは、倒立時には、ストッパが第2開口に嵌合し、予め表面に設けてある複数の溝を介して内包物を、容器内側からステム側へと通すことができるようになる。このように、正立時には噴射されず、倒立時にのみ噴射されることから、誤使用防止効果をも有するものである。
【0020】
該バルブは、ストッパの形状を円錐形としたことによって、例えば、円柱状とする場合に比べて、第2開口より下側の上下高さを極端に短くすることができる、という効果がある。
【0021】
例えば、ストッパの形状を円柱状にする場合、前記上下高さを短くするには、第2開口より下側の円柱の直径を大きくする必要がある。また、ストッパが、密閉部材と共同することによって、第2開口を挟んで、ある範囲で上下動できるようにするには、ストッパの密閉部材下側に、第2開口よりも小径で、かつ、前記ある範囲で上下動するための長さを有している円柱部分と、該円柱部分に接続される、第2開口よりも大径の円柱部分と、が必要である。
【0022】
請求項1記載の倒立型エアゾール用バルブは、ストッパの形状を円錐形にしたことによって、前記2つの円柱部分を接続する部分のような、直径が大きく変化する部分を形成する必要が無く、構成の簡単化と、これによるコストの低減と、を図ることができる、という効果がある。
【0023】
請求項2記載の倒立型エアゾール用バルブでは、請求項1記載のバルブであって、密閉部材に第3開口を設け、接続部によって接続する。該構成を採用したことによって、密閉部材とストッパとの間に管の第2開口を挟むように、ストッパを取り付けることが容易になる、という効果がある。
【0024】
前記接続部として、請求項3記載のバルブのように突起部を用いる場合と、請求項4記載のバルブのようにねじを用いる場合と、がある。突起部を用いる場合、密閉部材の第3開口を特に加工する必要が無く、構成を簡略化することができる、という効果がある。ねじを用いる場合、密閉部材の確実な取り付けができる、という効果がある。
【0025】
請求項5記載の倒立型エアゾール用バルブでは、請求項1記載のバルブであって、ストッパと密閉部材との2部品構成とすることによって、密閉部材が、管の第2開口を挟んで、ストッパに取り付け易くなる、という効果がある。
【0026】
請求項6記載の倒立型エアゾール用バルブでは、請求項4又は5記載のバルブであって、密閉部材の底面にゴムパッキンを備えたことによって、密閉部材が、より確実な密閉を行うことができる、という効果がある。
【0027】
請求項7記載の倒立型エアゾール用バルブでは、円錐形のストッパの形状に起因して、容器がストッパの側面を水平にする位置を越えて傾けられたときに、球状の錘がストッパの底側から密閉部材側へと移動する。該錘の動作によってストッパの重心位置が密閉部材近くの位置に変わり、ストッパが、速やかに、第2開口を開放する位置へと動かすことができる、という効果がある。
【0028】
請求項8記載の倒立型エアゾール用容器では、非常に簡単な構成のバルブを用いるにもかかわらず、前記噴射剤の無駄な噴射を防ぐことができる、という効果がある。また、請求項7記載のバルブを用いることによって、容器を使用する直前まで、ストッパが、第2開口を密閉、又は、略密閉した状態を保つことができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】倒立型エアゾール用バルブを備えている容器を示す断面図である。
【図2】(a)は、重力動作機構部の構成を示す側面図で、便宜上、一部の部品について断面で表した図であり、(b)は、ストッパの底面図である。
【図3】容器を完全に倒立させたときの、重力動作機構部の状態を示す側面図で、便宜上、一部の部品について断面で表した図である。
【図4】ストッパと密閉部材との第1構成例を示す図であり、(a)は、断面図、(b)は側面図である。
【図5】ストッパと密閉部材との第2構成例を示す側面図である。
【図6】ストッパと密閉部材との第3構成例を示す側面図である。
【図7】ストッパの構成の変形例を示す断面図である。
【図8】図7に示す構成のストッパの動作を説明するための断面図である。
【図9】図7に示す構成のストッパの動作を説明するための断面図である。
【図10】図7に示す構成のストッパの動作を説明するための断面図である。
【図11】従来の倒立型エアゾール用容器の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、倒立型エアゾールに用いる容器100の全体を示す断面図である。説明の便宜上、重力動作機構部6の詳しい断面については、省略する。図11を用いて説明した従来の容器200が備えているものと同じ構成物は、同じ参照番号を付して示す。倒立型エアゾール用バルブ容器100は、倒立させたときに下側に位置するステム2を押すことによって、内包物をステム2から噴射させようとする予め定めた圧力又はそれ以下の圧力によって内包物を噴射する倒立型エアゾール、の容器を形成するため、缶1と、倒立型エアゾール用バルブAと、を備えている。
【0031】
前記倒立型エアゾール用バルブAは、マウンテンカップ1aと、ステム2と、ハウジング3と、重力動作機構部6と、を備えている、前記ハウジング3の第1端にステム2が取り付けられている。重力動作機構部6の構成は、後に図2を参照しつつ、詳しく説明する。ステム2とハウジング3とが、前記マウンテンカップ1aに、取り付けられており、前記マウンテンカップ1aは、エアゾール用缶1の上部開口部分との間に、気密に接続されている。
【0032】
ハウジング3は、スプリング3bを有しており、ステム2を常に上方へと付勢している。ステム2は、図中、縦方向に延びている吐出口(縦孔)2aと、吐出口2aから横向きに延びているステムオリフィス(横孔)2bと、を備えている。ステムオリフィス2bは、ステム2が押下されていないときは、ハウジング3の弾性体であるパッキン3cによって密閉されている。ハウジング3は、パッキン3cの下側に、ステム2を押下したときにステムオリフィス2bと開口3aとを接続する路3dを備えている。
【0033】
缶1は、円柱状であるが、原液4を噴射するための噴射剤5の封入に耐えられるものであれば特に限定されない。内包物としては、原液4の他、泡状、ゲル状、粒状のもの等、噴射剤5による圧力によってステム2から噴射可能な物を含む。
【0034】
図2(a)は、重力動作機構部6の構成を説明するため、管6dを断面で表した図であり、(b)は、ストッパの底面図である。重力動作機構部6は、管6dと、ストッパ6aと、密閉部材6bと、を備えている。管6dが、ハウジング3の容器本体の内方に向かう開口3aに接続されている。管6dは、容器本体1の内方へと突出しており、該突出している側に、管6dの内径に比べて小さな直径の円形の開口6fを有している底面6eを備えている。ストッパ6aは、円錐体の形状であり、頂部近傍の開口6fよりも小さな直径の部分に、前記開口6fよりも大きな外径の前記密閉部材6bを、備えている。ストッパ6aは、該密閉部材6bから、ストッパ6aの直径が開口6fと同じになる部分までの範囲αで、開口6fを挟んで、図中上下に移動できるようになっている。更に、ストッパ6aは、前記範囲αよりも広い範囲の表面に、原液4を通す、1以上、好ましくは、図2(b)に示す底面に示すように複数の、溝6cを備えている。前記密閉部材6bは、容器100を正立させた時、前記溝6cの部分も含め、開口6fを密閉するようになっている。前記ストッパ6aと密閉部材6bとは、容器100を正立させた時、ステム2を押下した場合、内包物をステム2から噴射させようとする噴射剤5の圧力に抗して密閉の状態を保つだけの重さを有している。ストッパ6aの材質としては、所望の効果を発揮する大きさで、且つ、密閉の状態を保つだけの重さを有するものであれば特に限定されないが、例えば、金属、プラスティック等を用いること好ましい。
【0035】
上記構成の倒立型エアゾール用バルブAでは、正立させた時に、密閉部材6bが、ストッパ6aと密閉部材6bとの重みによって、確実に開口6fを密閉する。缶1に取り付けて容器100を形成しているとき、ステム2が誤って押された場合の噴射剤5の気相部の無駄な噴射が、防止される。
【0036】
図3は、容器100を完全に倒立させたときの、重力動作機構部6の状態を示す図である。説明の便宜のため、管6dは、断面図で表してある。ストッパ6aが、開口6fに嵌合し、原液4が、予め表面に設けてある複数の溝6cを介して、矢印で示すように、容器内側からステム側へと通る。
【0037】
上記構成の重力動作機構部6では、ストッパ6aの形状を円錐形としたことによって、例えば、円柱状とする場合に比べて、開口6fより下側の上下高さを極端に短くすることができる。
【0038】
比較のため、ストッパ6aの形状を円柱状にする場合について考える。この場合、前記上下高さを短くするには、開口6fより下側の円柱の直径を大きくする必要がある。また、ストッパ6aが、密閉部材6bと共同することによって、開口6fを挟んで、ある範囲で上下動できるようにするには、ストッパ6aの密閉部材6bの下側に、開口6fよりも小径で、かつ、前記ある範囲で上下動するための長さを有している円柱部分と、該円柱部分に接続される、開口6fよりも大径の円柱部分と、が必要である。
【0039】
重力動作機構部6は、ストッパ6aの形状を円錐形にしたことによって、前記2つの円柱部分を接続する部分のような、直径が大きく変化する部分を形成する必要が無く、構成の簡単化と、これによるコストの低減と、を図ることができる。即ち、重力動作機構部6を有している倒立型エアゾール用バルブAと、缶1と、で構成されているエアゾール用容器100は、非常に簡単な構成で、噴射剤5の無駄な噴射を防ぐことができるという利点を有している。
【0040】
以下、図4乃至8を参照しつつ、ストッパ6aと密閉部材6bとの種々の実施例について、説明するが、これら実施例の形状のみに限定されるものではない。
【0041】
図4乃至図6は、重力動作機構部6が備えるストッパと密閉部材との第1乃至第3構成例を示す図である。図4、5に示す実施例において、密閉部材6bは、前記ストッパ6aの取り付け位置6hに嵌る開口6g、6kを、有している。該構成を採用することによって、管6dの開口6fを挟んで、密閉部材6bをストッパ6aに取り付け易くなる。
【0042】
図4に示す実施例において、ストッパ6aは、取り付け位置6hに、ストッパ6aと密閉部材6bとを接続する接続部として突起部6iを有している。図4(a)に示すように、突起部6iの上下の幅L1は、密閉部材6bの厚みL2と同じである。密閉部材6bは、開口6gを有している。開口6gの上下の寸法L3、L5は、それぞれ、ストッパ6aの対応箇所の寸法L4、L6と同じである。図4(b)に示すように、密閉部材6bは、突起部6iによって係止される。突起部6iを用いることによって、密閉部材6bの開口6gを、ねじ切り等する必要が無くなる。密閉部材6bは、硬質のゴム等の弾性体であることが好ましい。
【0043】
図5に示す実施例において、ストッパ6aは、取り付け位置6hに、ねじ切りされた部分6jを有している。密閉部材6bは、前記ねじ切りされた部分6jに螺合するように、ねじ切りされている開口6kを有している。密閉部材6bは、ねじを用いることによって、ストッパ6aに確実に取り付けられる。
【0044】
密閉部材6bの底面には、密閉性能を高めるため、ゴムパッキン6lが設けられていることが好ましい。また、前記ゴムパッキン61の代わりに、管6dの底面6eのみに、設けても良い。より密閉性能を高めるために、ゴムパッキンを、ゴムパッキン6lと管6dの底面6eとに設けても良い。
【0045】
図6に示す実施例のストッパ6mは、頂部近傍の開口6fよりも小さな直径の部分から上の部分を取り除いた、断面が等脚台形となる形状のものである。密閉部材6nの底面と、前記ストッパ6mの上面とには、互いを接続するための接続部6o、6pが設けられている。接続部は、例えば、ねじ6oと、ねじ穴6pと、である。該構成を採用することによって、管6dの開口6fを挟むように、密閉部材6bをストッパ6aに取り付けることが容易になる。
【0046】
なお、密閉部材6nの形状は、図示する形状に限らず、上側の円錐形の部分を、外径と同じ直径の底面を持つ円錐又は円柱としても良い。これによって、高さを変えずに重くし、密閉効果を高めることができる。
【0047】
図5に示した密閉部材6lと同様に、密閉部材6nの底面には、密閉性能を高めるため、ゴムパッキン6qが設けられている。ゴムパッキンは、更に、管6dの底面6eに設けても良い。または、前記ゴムパッキン6qの代わりに、管6dの底面6eのみに、設けても良い。
【0048】
図7は、ストッパの構成の変形例を示す断面図である。図7に示す実施例のストッパは、図1乃至図6に示した前記ストッパ6a又は6mのストッパであって、少なくとも、前記密閉部材6bよりも容器の内方にある部分に、空洞6rを備えているものである。該空洞6r内には、球状の錘6sが、備えられている。球状の錘6sの材質は、特に限定されないが、例えば、錘6sに比重の重い金属を用いることで、ストッパ6aの材料として、金属だけでなく、加工処理しやすいスプラスティック等を用いることができる。また、容器毎に設定され得る、注入する噴射剤の圧力、又は、要求される密閉度の違いに、錘6sを変えるだけで対応することができる、という利点を有している。
【0049】
空洞6rを有するストッパ6a又は6mの内に、球状の錘6sを入れる手段としては、特に限定されないが、例えば、空洞6rを有するストッパ6a又は6mの製造時に、予め球状の錘6sを挿入する方法、若しくは、空洞6rを有するストッパ6a又は6mの製造後に表面加工を施し、球状の錘6sを挿入後、封する方法などを例示することができる。
【0050】
図8乃至図10は、図7に示す構成のストッパの動作を説明するための断面図である。図8又は図9の状態にある容器が、図10の状態へと傾けられて、ストッパ6a又は6mの側面が水平になる位置を越えて、その頂部が下へ向くように傾けられたとき、円錐形のストッパの形状に起因して、球状の錘6sが、ストッパの底側から密閉部材6b又は6n側へと移動する。この錘6sの動作によってストッパの重心位置が、密閉部材6b又は6n近くの位置に変わり、ストッパ6a又は6mが、速やかに、開口6fを開放する位置へと動く。該構成を採用することによって、密閉部材6bは、容器100を使用する直前まで、開口6fを密閉、又は、略密閉した状態に保つことができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、化粧用品、殺虫剤等の、原液を噴射させて用いる倒立型エアゾール用容器を形成するのに用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 エアゾール用容器本体
2 ステム
3、6f、6g、6k 開口
4 原液
5 噴射剤
6 重力動作機構部
6a ストッパ
6b 密閉部材
6c 溝
6d 管
6e 底面
6r 空洞
6s 錘
【技術分野】
【0001】
本発明は、倒立型エアゾール用バルブと、該バルブを用いた容器と、に関する。
【背景技術】
【0002】
倒立型エアゾールとは、化粧品等に用いられ、倒立させた時に下側に位置するステムを押すことによって内容物を噴射する型のエアゾール製品等のことである。以下、倒立型エアゾールに用いる容器を、倒立型エアゾール用容器という。また、該容器で、缶上に取り付けて用いるバルブ構造体を、倒立型エアゾール用バルブという。
【0003】
図11は、従来の倒立型エアゾール用容器200の構造を示す断面図である。倒立型エアゾール用容器200は、缶1と、倒立型エアゾール用バルブCと、を備えている。倒立型エアゾール用バルブCは、マウンテンカップ1aと、ステム2と、ハウジング3と、を備えている。ハウジング3は、ステム2と容器の内側とを連通する、バルブ機能を有している。ハウジング3の容器内方の開口3aが、原液吸い込み口である。マウンテンカップ1aは、ステム2とハウジング3とを保持しており、いわゆるクリンチ処理によって、缶1に気密に接続されている。
【0004】
倒立型エアゾール用容器200は、ステム2を真下に向けた状態で用いることを想定して設計されている。容器本体1には、内包物の一例である原液4と、該原液を噴射するための噴射剤5とが、注入されている。
【0005】
倒立型エアゾール用容器200を、正立させた状態で、ステム2を押下すると、ステム2は、原液4を噴射する代わりに、噴射剤5の気相部のみを噴射する。このことが原因で噴射剤5の気相部が少なくなると、原液4を最後まで使うことができなくなってしまう。
【0006】
例えば、特許文献1には、正立時には、ステムを押下できなくする機構を有しているエアゾール用バルブを備えたエアゾール用容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−154295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の前記機構は、構造が複雑である。
【0009】
本発明は、正立時にステムを押下しても、噴射剤を出さないようになる、簡単な構成の倒立型エアゾール用バルブと、該バルブを用いる容器と、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の倒立型エアゾール用バルブは、倒立させたときに下側に位置するステムを押すことによって、内包物をステムから噴射させようとする予め定めた圧力によって内包物を噴射する倒立型エアゾール、の容器を形成するため、エアゾール用缶に取り付けて用いる倒立型エアゾール用バルブであって、前記バルブが、マウンテンカップと、ステムと、ハウジングと、重力動作機構部と、を備えており、前記ハウジングの第1端にステムが取り付けられており、該ハウジングがステムの押下に応じて、ステムと、ハウジングのステム取り付け側と反対の第2端と、の間を連通するようになっており、ステムとハウジングとは、前記マウンテンカップに、取り付けられており、前記マウンテンカップが、前記エアゾール用缶を密閉するように、該缶に気密に取り付けられ得るものであり、前記重力動作機構部が、管と、ストッパと、密閉部材と、を備えており、前記管が、前記ハウジングの第2端の第1開口に接続されており、容器本体の内方へと突出しており、該突出している側に、管の内径に比べて小径の円形の第2開口を有している底面を備えており、前記ストッパが、円錐体の形状であり、前記第2開口よりも小径の、頂部近傍の部分に、前記第2開口よりも大径の前記密閉部材を備えており、該密閉部材からストッパの直径が前記第2開口と同じになる部分までの範囲で、前記第2開口を挟んで移動できるようになっており、更に、前記ストッパが、前記範囲よりも広い範囲の表面に、内包物を通す1以上の溝を備えており、前記密閉部材が、容器の正立時、前記第2開口を密閉するようになっており、エアゾール用缶に取り付けて容器を形成し、容器を正立させて前記ステムを押下した場合、前記ストッパと密閉部材とが、少なくとも、前記予め定めた圧力に抗して密閉の状態を保つだけの重さを有している、ことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の倒立型エアゾール用バルブは、請求項1記載の倒立型エアゾール用バルブであって、前記密閉部材が、前記ストッパへの取り付け位置に嵌る第3開口を有しており、少なくとも前記ストッパが、前記取り付け位置に、密閉部材とストッパとを接続する接続部を有している、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の倒立型エアゾール用バルブは、請求項2記載の倒立型エアゾール用バルブであって、前記接続部として、前記ストッパが前記取り付け位置に密閉部材の幅の、1対の、表面からの突起部を有しており、前記突起部が、前記密閉部材を係止するようになっている、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の倒立型エアゾール用バルブは、請求項2記載の倒立型エアゾール用バルブであって、前記接続部として、前記ストッパが前記取り付け位置にねじ切りされた部分を有しており、前記第3開口が、前記ねじ切りされている部分に螺合する部分を有している、ことを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の倒立型エアゾール用バルブは、請求項1記載の倒立型エアゾール用バルブであって、前記ストッパが、前記第2開口よりも小さな直径の部分から上の部分が取り除かれた形状のものであり、前記密閉部材の底面と、前記ストッパの上面とに、互いを接続するための接続部を有している、ことを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の倒立型エアゾール用バルブは、請求項4又は5に記載の倒立型エアゾール用バルブであって、前記密閉部材の底面にゴムパッキンが、設けられている、ことを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の倒立型エアゾール用バルブは、請求項1乃至6の何れか1つに記載の倒立型エアゾール用バルブであって、前記ストッパの、少なくとも、前記密閉部材よりも容器の内方にある部分が、空洞になっており、球状の錘が、前記空洞に備えられている、ことを特徴とする。
【0017】
請求項8記載の倒立型エアゾール用容器は、請求項1乃至7の何れか1つに記載の倒立型エアゾール用バルブを、エアゾール用缶に取り付けることによって形成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の倒立型エアゾール用バルブでは、正立時に、密閉部材が、ストッパと密閉部材との重みによって、確実に第2開口を密閉することができる、という効果がある。
【0019】
また、該バルブは、倒立時には、ストッパが第2開口に嵌合し、予め表面に設けてある複数の溝を介して内包物を、容器内側からステム側へと通すことができるようになる。このように、正立時には噴射されず、倒立時にのみ噴射されることから、誤使用防止効果をも有するものである。
【0020】
該バルブは、ストッパの形状を円錐形としたことによって、例えば、円柱状とする場合に比べて、第2開口より下側の上下高さを極端に短くすることができる、という効果がある。
【0021】
例えば、ストッパの形状を円柱状にする場合、前記上下高さを短くするには、第2開口より下側の円柱の直径を大きくする必要がある。また、ストッパが、密閉部材と共同することによって、第2開口を挟んで、ある範囲で上下動できるようにするには、ストッパの密閉部材下側に、第2開口よりも小径で、かつ、前記ある範囲で上下動するための長さを有している円柱部分と、該円柱部分に接続される、第2開口よりも大径の円柱部分と、が必要である。
【0022】
請求項1記載の倒立型エアゾール用バルブは、ストッパの形状を円錐形にしたことによって、前記2つの円柱部分を接続する部分のような、直径が大きく変化する部分を形成する必要が無く、構成の簡単化と、これによるコストの低減と、を図ることができる、という効果がある。
【0023】
請求項2記載の倒立型エアゾール用バルブでは、請求項1記載のバルブであって、密閉部材に第3開口を設け、接続部によって接続する。該構成を採用したことによって、密閉部材とストッパとの間に管の第2開口を挟むように、ストッパを取り付けることが容易になる、という効果がある。
【0024】
前記接続部として、請求項3記載のバルブのように突起部を用いる場合と、請求項4記載のバルブのようにねじを用いる場合と、がある。突起部を用いる場合、密閉部材の第3開口を特に加工する必要が無く、構成を簡略化することができる、という効果がある。ねじを用いる場合、密閉部材の確実な取り付けができる、という効果がある。
【0025】
請求項5記載の倒立型エアゾール用バルブでは、請求項1記載のバルブであって、ストッパと密閉部材との2部品構成とすることによって、密閉部材が、管の第2開口を挟んで、ストッパに取り付け易くなる、という効果がある。
【0026】
請求項6記載の倒立型エアゾール用バルブでは、請求項4又は5記載のバルブであって、密閉部材の底面にゴムパッキンを備えたことによって、密閉部材が、より確実な密閉を行うことができる、という効果がある。
【0027】
請求項7記載の倒立型エアゾール用バルブでは、円錐形のストッパの形状に起因して、容器がストッパの側面を水平にする位置を越えて傾けられたときに、球状の錘がストッパの底側から密閉部材側へと移動する。該錘の動作によってストッパの重心位置が密閉部材近くの位置に変わり、ストッパが、速やかに、第2開口を開放する位置へと動かすことができる、という効果がある。
【0028】
請求項8記載の倒立型エアゾール用容器では、非常に簡単な構成のバルブを用いるにもかかわらず、前記噴射剤の無駄な噴射を防ぐことができる、という効果がある。また、請求項7記載のバルブを用いることによって、容器を使用する直前まで、ストッパが、第2開口を密閉、又は、略密閉した状態を保つことができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】倒立型エアゾール用バルブを備えている容器を示す断面図である。
【図2】(a)は、重力動作機構部の構成を示す側面図で、便宜上、一部の部品について断面で表した図であり、(b)は、ストッパの底面図である。
【図3】容器を完全に倒立させたときの、重力動作機構部の状態を示す側面図で、便宜上、一部の部品について断面で表した図である。
【図4】ストッパと密閉部材との第1構成例を示す図であり、(a)は、断面図、(b)は側面図である。
【図5】ストッパと密閉部材との第2構成例を示す側面図である。
【図6】ストッパと密閉部材との第3構成例を示す側面図である。
【図7】ストッパの構成の変形例を示す断面図である。
【図8】図7に示す構成のストッパの動作を説明するための断面図である。
【図9】図7に示す構成のストッパの動作を説明するための断面図である。
【図10】図7に示す構成のストッパの動作を説明するための断面図である。
【図11】従来の倒立型エアゾール用容器の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、倒立型エアゾールに用いる容器100の全体を示す断面図である。説明の便宜上、重力動作機構部6の詳しい断面については、省略する。図11を用いて説明した従来の容器200が備えているものと同じ構成物は、同じ参照番号を付して示す。倒立型エアゾール用バルブ容器100は、倒立させたときに下側に位置するステム2を押すことによって、内包物をステム2から噴射させようとする予め定めた圧力又はそれ以下の圧力によって内包物を噴射する倒立型エアゾール、の容器を形成するため、缶1と、倒立型エアゾール用バルブAと、を備えている。
【0031】
前記倒立型エアゾール用バルブAは、マウンテンカップ1aと、ステム2と、ハウジング3と、重力動作機構部6と、を備えている、前記ハウジング3の第1端にステム2が取り付けられている。重力動作機構部6の構成は、後に図2を参照しつつ、詳しく説明する。ステム2とハウジング3とが、前記マウンテンカップ1aに、取り付けられており、前記マウンテンカップ1aは、エアゾール用缶1の上部開口部分との間に、気密に接続されている。
【0032】
ハウジング3は、スプリング3bを有しており、ステム2を常に上方へと付勢している。ステム2は、図中、縦方向に延びている吐出口(縦孔)2aと、吐出口2aから横向きに延びているステムオリフィス(横孔)2bと、を備えている。ステムオリフィス2bは、ステム2が押下されていないときは、ハウジング3の弾性体であるパッキン3cによって密閉されている。ハウジング3は、パッキン3cの下側に、ステム2を押下したときにステムオリフィス2bと開口3aとを接続する路3dを備えている。
【0033】
缶1は、円柱状であるが、原液4を噴射するための噴射剤5の封入に耐えられるものであれば特に限定されない。内包物としては、原液4の他、泡状、ゲル状、粒状のもの等、噴射剤5による圧力によってステム2から噴射可能な物を含む。
【0034】
図2(a)は、重力動作機構部6の構成を説明するため、管6dを断面で表した図であり、(b)は、ストッパの底面図である。重力動作機構部6は、管6dと、ストッパ6aと、密閉部材6bと、を備えている。管6dが、ハウジング3の容器本体の内方に向かう開口3aに接続されている。管6dは、容器本体1の内方へと突出しており、該突出している側に、管6dの内径に比べて小さな直径の円形の開口6fを有している底面6eを備えている。ストッパ6aは、円錐体の形状であり、頂部近傍の開口6fよりも小さな直径の部分に、前記開口6fよりも大きな外径の前記密閉部材6bを、備えている。ストッパ6aは、該密閉部材6bから、ストッパ6aの直径が開口6fと同じになる部分までの範囲αで、開口6fを挟んで、図中上下に移動できるようになっている。更に、ストッパ6aは、前記範囲αよりも広い範囲の表面に、原液4を通す、1以上、好ましくは、図2(b)に示す底面に示すように複数の、溝6cを備えている。前記密閉部材6bは、容器100を正立させた時、前記溝6cの部分も含め、開口6fを密閉するようになっている。前記ストッパ6aと密閉部材6bとは、容器100を正立させた時、ステム2を押下した場合、内包物をステム2から噴射させようとする噴射剤5の圧力に抗して密閉の状態を保つだけの重さを有している。ストッパ6aの材質としては、所望の効果を発揮する大きさで、且つ、密閉の状態を保つだけの重さを有するものであれば特に限定されないが、例えば、金属、プラスティック等を用いること好ましい。
【0035】
上記構成の倒立型エアゾール用バルブAでは、正立させた時に、密閉部材6bが、ストッパ6aと密閉部材6bとの重みによって、確実に開口6fを密閉する。缶1に取り付けて容器100を形成しているとき、ステム2が誤って押された場合の噴射剤5の気相部の無駄な噴射が、防止される。
【0036】
図3は、容器100を完全に倒立させたときの、重力動作機構部6の状態を示す図である。説明の便宜のため、管6dは、断面図で表してある。ストッパ6aが、開口6fに嵌合し、原液4が、予め表面に設けてある複数の溝6cを介して、矢印で示すように、容器内側からステム側へと通る。
【0037】
上記構成の重力動作機構部6では、ストッパ6aの形状を円錐形としたことによって、例えば、円柱状とする場合に比べて、開口6fより下側の上下高さを極端に短くすることができる。
【0038】
比較のため、ストッパ6aの形状を円柱状にする場合について考える。この場合、前記上下高さを短くするには、開口6fより下側の円柱の直径を大きくする必要がある。また、ストッパ6aが、密閉部材6bと共同することによって、開口6fを挟んで、ある範囲で上下動できるようにするには、ストッパ6aの密閉部材6bの下側に、開口6fよりも小径で、かつ、前記ある範囲で上下動するための長さを有している円柱部分と、該円柱部分に接続される、開口6fよりも大径の円柱部分と、が必要である。
【0039】
重力動作機構部6は、ストッパ6aの形状を円錐形にしたことによって、前記2つの円柱部分を接続する部分のような、直径が大きく変化する部分を形成する必要が無く、構成の簡単化と、これによるコストの低減と、を図ることができる。即ち、重力動作機構部6を有している倒立型エアゾール用バルブAと、缶1と、で構成されているエアゾール用容器100は、非常に簡単な構成で、噴射剤5の無駄な噴射を防ぐことができるという利点を有している。
【0040】
以下、図4乃至8を参照しつつ、ストッパ6aと密閉部材6bとの種々の実施例について、説明するが、これら実施例の形状のみに限定されるものではない。
【0041】
図4乃至図6は、重力動作機構部6が備えるストッパと密閉部材との第1乃至第3構成例を示す図である。図4、5に示す実施例において、密閉部材6bは、前記ストッパ6aの取り付け位置6hに嵌る開口6g、6kを、有している。該構成を採用することによって、管6dの開口6fを挟んで、密閉部材6bをストッパ6aに取り付け易くなる。
【0042】
図4に示す実施例において、ストッパ6aは、取り付け位置6hに、ストッパ6aと密閉部材6bとを接続する接続部として突起部6iを有している。図4(a)に示すように、突起部6iの上下の幅L1は、密閉部材6bの厚みL2と同じである。密閉部材6bは、開口6gを有している。開口6gの上下の寸法L3、L5は、それぞれ、ストッパ6aの対応箇所の寸法L4、L6と同じである。図4(b)に示すように、密閉部材6bは、突起部6iによって係止される。突起部6iを用いることによって、密閉部材6bの開口6gを、ねじ切り等する必要が無くなる。密閉部材6bは、硬質のゴム等の弾性体であることが好ましい。
【0043】
図5に示す実施例において、ストッパ6aは、取り付け位置6hに、ねじ切りされた部分6jを有している。密閉部材6bは、前記ねじ切りされた部分6jに螺合するように、ねじ切りされている開口6kを有している。密閉部材6bは、ねじを用いることによって、ストッパ6aに確実に取り付けられる。
【0044】
密閉部材6bの底面には、密閉性能を高めるため、ゴムパッキン6lが設けられていることが好ましい。また、前記ゴムパッキン61の代わりに、管6dの底面6eのみに、設けても良い。より密閉性能を高めるために、ゴムパッキンを、ゴムパッキン6lと管6dの底面6eとに設けても良い。
【0045】
図6に示す実施例のストッパ6mは、頂部近傍の開口6fよりも小さな直径の部分から上の部分を取り除いた、断面が等脚台形となる形状のものである。密閉部材6nの底面と、前記ストッパ6mの上面とには、互いを接続するための接続部6o、6pが設けられている。接続部は、例えば、ねじ6oと、ねじ穴6pと、である。該構成を採用することによって、管6dの開口6fを挟むように、密閉部材6bをストッパ6aに取り付けることが容易になる。
【0046】
なお、密閉部材6nの形状は、図示する形状に限らず、上側の円錐形の部分を、外径と同じ直径の底面を持つ円錐又は円柱としても良い。これによって、高さを変えずに重くし、密閉効果を高めることができる。
【0047】
図5に示した密閉部材6lと同様に、密閉部材6nの底面には、密閉性能を高めるため、ゴムパッキン6qが設けられている。ゴムパッキンは、更に、管6dの底面6eに設けても良い。または、前記ゴムパッキン6qの代わりに、管6dの底面6eのみに、設けても良い。
【0048】
図7は、ストッパの構成の変形例を示す断面図である。図7に示す実施例のストッパは、図1乃至図6に示した前記ストッパ6a又は6mのストッパであって、少なくとも、前記密閉部材6bよりも容器の内方にある部分に、空洞6rを備えているものである。該空洞6r内には、球状の錘6sが、備えられている。球状の錘6sの材質は、特に限定されないが、例えば、錘6sに比重の重い金属を用いることで、ストッパ6aの材料として、金属だけでなく、加工処理しやすいスプラスティック等を用いることができる。また、容器毎に設定され得る、注入する噴射剤の圧力、又は、要求される密閉度の違いに、錘6sを変えるだけで対応することができる、という利点を有している。
【0049】
空洞6rを有するストッパ6a又は6mの内に、球状の錘6sを入れる手段としては、特に限定されないが、例えば、空洞6rを有するストッパ6a又は6mの製造時に、予め球状の錘6sを挿入する方法、若しくは、空洞6rを有するストッパ6a又は6mの製造後に表面加工を施し、球状の錘6sを挿入後、封する方法などを例示することができる。
【0050】
図8乃至図10は、図7に示す構成のストッパの動作を説明するための断面図である。図8又は図9の状態にある容器が、図10の状態へと傾けられて、ストッパ6a又は6mの側面が水平になる位置を越えて、その頂部が下へ向くように傾けられたとき、円錐形のストッパの形状に起因して、球状の錘6sが、ストッパの底側から密閉部材6b又は6n側へと移動する。この錘6sの動作によってストッパの重心位置が、密閉部材6b又は6n近くの位置に変わり、ストッパ6a又は6mが、速やかに、開口6fを開放する位置へと動く。該構成を採用することによって、密閉部材6bは、容器100を使用する直前まで、開口6fを密閉、又は、略密閉した状態に保つことができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、化粧用品、殺虫剤等の、原液を噴射させて用いる倒立型エアゾール用容器を形成するのに用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 エアゾール用容器本体
2 ステム
3、6f、6g、6k 開口
4 原液
5 噴射剤
6 重力動作機構部
6a ストッパ
6b 密閉部材
6c 溝
6d 管
6e 底面
6r 空洞
6s 錘
【特許請求の範囲】
【請求項1】
倒立させたときに下側に位置するステムを押すことによって、内包物をステムから噴射させようとする予め定めた圧力によって内包物を噴射する倒立型エアゾール、の容器を形成するため、エアゾール用缶に取り付けて用いる倒立型エアゾール用バルブであって、
前記バルブが、マウンテンカップと、ステムと、ハウジングと、重力動作機構部と、を備えており、
前記ハウジングの第1端にステムが取り付けられており、該ハウジングがステムの押下に応じて、ステムと、ハウジングのステム取り付け側と反対の第2端と、の間を連通するようになっており、
ステムとハウジングとは、前記マウンテンカップに、取り付けられており、前記マウンテンカップが、前記エアゾール用缶を密閉するように、該缶に気密に取り付けられ得るものであり、
前記重力動作機構部が、管と、ストッパと、密閉部材と、を備えており、
前記管が、前記ハウジングの第2端の第1開口に接続されており、容器本体の内方へと突出しており、該突出している側に、管の内径に比べて小径の円形の第2開口を有している底面を備えており、
前記ストッパが、円錐体の形状であり、前記第2開口よりも小径の、頂部近傍の部分に、前記第2開口よりも大径の前記密閉部材を備えており、該密閉部材からストッパの直径が前記第2開口と同じになる部分までの範囲で、前記第2開口を挟んで移動できるようになっており、更に、前記ストッパが、前記範囲よりも広い範囲の表面に、内包物を通す1以上の溝を備えており、
前記密閉部材が、容器の正立時、前記第2開口を密閉するようになっており、
エアゾール用缶に取り付けて容器を形成し、容器を正立させて前記ステムを押下した場合、前記ストッパと密閉部材とが、少なくとも、前記予め定めた圧力に抗して密閉の状態を保つだけの重さを有している、
ことを特徴とする倒立型エアゾール用バルブ。
【請求項2】
前記密閉部材が、前記ストッパへの取り付け位置に嵌る第3開口を有しており、
少なくとも前記ストッパが、前記取り付け位置に、密閉部材とストッパとを接続する接続部を有している、
ことを特徴とする請求項1記載の倒立型エアゾール用バルブ。
【請求項3】
前記接続部として、前記ストッパが前記取り付け位置に密閉部材の幅の、1対の、表面からの突起部を有しており、
前記突起部が、前記密閉部材を係止するようになっている、
ことを特徴とする請求項2記載の倒立型エアゾール用バルブ。
【請求項4】
前記接続部として、前記ストッパが前記取り付け位置にねじ切りされた部分を有しており、
前記第3開口が、前記ねじ切りされている部分に螺合する部分を有している、
ことを特徴とする請求項2記載の倒立型エアゾール用容器。
【請求項5】
前記ストッパが、前記第2開口よりも小さな直径の部分から上の部分が取り除かれた形状のものであり、
前記密閉部材の底面と、前記ストッパの上面とに、互いを接続するための接続部を有している、
ことを特徴とする請求項1記載の倒立型エアゾール用バルブ。
【請求項6】
前記密閉部材の底面にゴムパッキンが、設けられている、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の倒立型エアゾール用バルブ。
【請求項7】
前記ストッパの、少なくとも、前記密閉部材よりも容器の内方にある部分が、空洞になっており、球状の錘が、前記空洞に備えられている、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1つに記載の倒立型エアゾール用バルブ。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1つに記載の倒立型エアゾール用バルブを、エアゾール用缶に取り付けることによって形成されている、
ことを特徴とする倒立型エアゾール用容器。
【請求項1】
倒立させたときに下側に位置するステムを押すことによって、内包物をステムから噴射させようとする予め定めた圧力によって内包物を噴射する倒立型エアゾール、の容器を形成するため、エアゾール用缶に取り付けて用いる倒立型エアゾール用バルブであって、
前記バルブが、マウンテンカップと、ステムと、ハウジングと、重力動作機構部と、を備えており、
前記ハウジングの第1端にステムが取り付けられており、該ハウジングがステムの押下に応じて、ステムと、ハウジングのステム取り付け側と反対の第2端と、の間を連通するようになっており、
ステムとハウジングとは、前記マウンテンカップに、取り付けられており、前記マウンテンカップが、前記エアゾール用缶を密閉するように、該缶に気密に取り付けられ得るものであり、
前記重力動作機構部が、管と、ストッパと、密閉部材と、を備えており、
前記管が、前記ハウジングの第2端の第1開口に接続されており、容器本体の内方へと突出しており、該突出している側に、管の内径に比べて小径の円形の第2開口を有している底面を備えており、
前記ストッパが、円錐体の形状であり、前記第2開口よりも小径の、頂部近傍の部分に、前記第2開口よりも大径の前記密閉部材を備えており、該密閉部材からストッパの直径が前記第2開口と同じになる部分までの範囲で、前記第2開口を挟んで移動できるようになっており、更に、前記ストッパが、前記範囲よりも広い範囲の表面に、内包物を通す1以上の溝を備えており、
前記密閉部材が、容器の正立時、前記第2開口を密閉するようになっており、
エアゾール用缶に取り付けて容器を形成し、容器を正立させて前記ステムを押下した場合、前記ストッパと密閉部材とが、少なくとも、前記予め定めた圧力に抗して密閉の状態を保つだけの重さを有している、
ことを特徴とする倒立型エアゾール用バルブ。
【請求項2】
前記密閉部材が、前記ストッパへの取り付け位置に嵌る第3開口を有しており、
少なくとも前記ストッパが、前記取り付け位置に、密閉部材とストッパとを接続する接続部を有している、
ことを特徴とする請求項1記載の倒立型エアゾール用バルブ。
【請求項3】
前記接続部として、前記ストッパが前記取り付け位置に密閉部材の幅の、1対の、表面からの突起部を有しており、
前記突起部が、前記密閉部材を係止するようになっている、
ことを特徴とする請求項2記載の倒立型エアゾール用バルブ。
【請求項4】
前記接続部として、前記ストッパが前記取り付け位置にねじ切りされた部分を有しており、
前記第3開口が、前記ねじ切りされている部分に螺合する部分を有している、
ことを特徴とする請求項2記載の倒立型エアゾール用容器。
【請求項5】
前記ストッパが、前記第2開口よりも小さな直径の部分から上の部分が取り除かれた形状のものであり、
前記密閉部材の底面と、前記ストッパの上面とに、互いを接続するための接続部を有している、
ことを特徴とする請求項1記載の倒立型エアゾール用バルブ。
【請求項6】
前記密閉部材の底面にゴムパッキンが、設けられている、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の倒立型エアゾール用バルブ。
【請求項7】
前記ストッパの、少なくとも、前記密閉部材よりも容器の内方にある部分が、空洞になっており、球状の錘が、前記空洞に備えられている、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1つに記載の倒立型エアゾール用バルブ。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1つに記載の倒立型エアゾール用バルブを、エアゾール用缶に取り付けることによって形成されている、
ことを特徴とする倒立型エアゾール用容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−71883(P2012−71883A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220030(P2010−220030)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【Fターム(参考)】
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