説明

倒立型Hk構造を有する垂直磁気記録媒体

【課題】 倒立型Hk構造を有する垂直磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】 一実施形態によれば、垂直磁気記録媒体は、磁気異方性Kuを特徴とする第1粒状記録層と、磁気異方性Kuを特徴とする第1粒状記録層上方の第2粒状記録層と、磁気異方性Kuを特徴とする第2粒状記録層上方の第3粒状記録層と、を含み、Ku<Ku>Kuである。別の実施形態によれば、磁気媒体は、第1比率Xにおける第1CoCrPt合金を有する第1記録層と、第1記録層上方に位置し、且つ、第2比率Xにおける第2CoCrPt合金を有する第2記録層と、第3比率Xにおける第3CoCrPt合金を有する第2記録層上方の第3記録層と、を含み、各比率は、それぞれのCoCrPt合金中におけるPtの濃度をCrの濃度によって除算したものとして規定され、X<X>Xである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録媒体に関し、且つ、更に詳しくは、倒立型Hk構造を有する大容量の情報を記録することができる垂直磁気媒体及びこれを利用した磁気ストレージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録装置の容量を増大させるには、磁化情報(磁気記録ビット)の熱安定性を維持しつつ、書き込み性及び信号対ノイズ比(SNR)を改善することにより、垂直磁気記録媒体の性能を向上させることが有利である。現在市販されている多くの垂直磁気記録媒体は、例えば、(特許文献1)、(特許文献2)、及び(特許文献3)に開示されているように、酸化物を含み且つ粒状構造を有する粒状記録層と、酸化物を含まず且つ明瞭な粒状構造を有していない強磁性金属層と、を有する積層構造を有する。強磁性金属層は、相対的に低い磁気異方性を有する材料から形成されており、このため、小さなスイッチング磁界を有し、従って、書き込み性を改善するべく機能する。粒状記録層は、高い磁気異方性を有する材料から形成されており、且つ、従って、熱安定性を改善するべく機能する。更には、粒状記録層は、磁気クラスタサイズを低減すると共にノイズを低減するべく、機能する。粒状記録層は、通常、酸化物及び窒化物などの非磁性化合物をCoCrPt合金と混合した材料から形成される。この層内においては、主にCo原子によって形成された磁性粒子が非磁性Cr酸化物及び/又はその他の追加された酸化物又は窒化物によって取り囲まれている。この結果、磁気クラスタサイズが低減され、且つ、これにより、ノイズが低減される。このように粒状記録層と強磁性金属層を組み合わせることにより、熱安定性を維持しつつ、高い書き込み性と、高いSNRと、を実現することができる。
【0003】
その値が上部層に向かって小さくなるように、粒状記録層の磁気異方性がグラデーションを有している場合には、インコヒーレントな磁気モーメントの回転モードが促進され、且つ、これにより、しばしば、書き込み性の更なる改善が可能となる。
【0004】
例えば、(特許文献4)及び(特許文献5)は、基板面上に形成された下部粒状記録層を相対的に高い磁気異方性を有する磁性合金から形成し、且つ、連続的に、その上部に交換結合制御層を形成し、その上部に相対的に低い磁気異方性を有する粒状記録層を形成し、且つ、その上部に非粒状材料から形成された強磁性金属層を形成した記録媒体を開示している。磁気異方性が上部層に向かって小さくなるようなグラデーションを粒状記録層が有する場合には、インコヒーレントな回転モードが促進され、これにより、書き込み性が改善される。更には、(特許文献6)も、同種の構成を開示している。磁化転移幅の拡大の問題を抑制するべく、低い磁気異方性を有する粒状記録層を強磁性金属層の直接下部に形成している。この結果、SNR及び分解能を改善することができることが開示されている。更には、(非特許文献1)は、粒状層が2又は3層構造によって形成されると共に磁気異方性が上部層に向かって段階的に小さくなっている構成を開示している。この構成は、インコヒーレントな回転モードを促進し、且つ、従って、書き込み性を維持しつつ、強磁性金属層の膜厚を低減することができることが開示されている。強磁性金属層の膜厚の低減により、磁気クラスタサイズが低減され、且つ、これにより、SNR及びATI(Adjacent Track Interference)特性を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−23144号公報
【特許文献2】特開2003−91808号公報
【特許文献3】特開2003−168207号公報
【特許文献4】特開2009−187597号公報
【特許文献5】特開2009−11060号公報
【特許文献6】特開2009−59402号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】K. Tanahashi、H. Nakagawa、R. Arai、H. Kashiwase、H. Nemotoによる「Dual Segregand Perpendicular Recording Media With Graded Properties」、IEEE Trans. Magn.、45(2009)799
【非特許文献2】Quingzhi Peng及びHans J. Richterによる「Field Sweep Rate Dependence of Media Dynamic Coercivity」、IEEE Trans. Magn.、40(2004)2446
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態によれば、垂直磁気記録媒体は、磁気異方性Kuを有する第1粒状記録層と、磁気異方性Kuを有する第1粒状記録層上方の第2粒状記録層と、磁気異方性Kuを有する第2粒状記録層上方の第3粒状記録層と、を含み、それぞれの磁気異方性は、Ku<Ku>Kuという数学的関係を有する。
【0008】
別の実施形態においては、垂直磁気記録媒体は、第1CoCrPt合金中におけるPtの濃度をCrの濃度によって除算したものとして規定される第1比率Xにおける第1CoCrPt合金を有する第1粒状記録層と、第1粒状記録層の上方に位置し、且つ、第2CoCrPt合金中におけるPtの濃度をCrの濃度によって除算したものとして規定される第2比率Xにおける第2CoCrPt合金を有する第2粒状記録層と、第2粒状記録層の上方に位置し、且つ、第3CoCrPt合金中におけるPtの濃度をCrの濃度によって除算したとものして規定される第3比率Xにおける第3CoCrPt合金を有する第3粒状記録層と、を含み、それぞれの比率は、X<X>Xという数学的関係に準拠している。
【0009】
更に別の実施形態においては、垂直磁気記録媒体は、第1粒状記録層と、第1粒状記録層上方の第2粒状記録層と、第2粒状記録層上方の交換結合制御層と、交換結合制御層上方の第3粒状記録層と、を含み、交換結合制御層は、約300emu/cc以下の飽和磁化を有する。
【0010】
これらの実施形態は、そのいずれもが、ディスクドライブシステムなどの磁気データストレージシステム内において実装されてもよく、この磁気データストレージシステムは、磁気ヘッドと、ヘッドの上方において磁気ストレージ媒体(例えば、ハードディスク)を通過させる駆動メカニズムと、ヘッドの動作を制御するべくヘッドに電気的に結合された制御ユニットと、を含んでもよい。
【0011】
本発明のその他の態様及び利点については、本発明の原理を一例として示している添付図面との関連において以下の詳細な説明を参照することにより、明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】例示的一実施形態による垂直磁気記録媒体の断面概略図である。
【図2】PtとCrの濃度比率Xと磁気異方性Kの間の関係を示す。
【図3】最大のKを有する層の膜厚とKV/KTの間の関係を示す。
【図4】PtとCrの濃度比率Xを変化させた際の分解能とKV/KTの間の関係を示す。
【図5】PtとCrの濃度比率Xを変化させた際のオーバーライトとKV/KTの間の関係を示す。
【図6】PtとCrの濃度比率Xを変化させた際のSNRとKV/KTの間の関係を示す。
【図7】第1粒状記録層内のCr濃度とSNRの間の関係を示す。
【図8】第1粒状記録層内のCr濃度とKV/KTの間の関係を示す。
【図9】例示的一実施形態による垂直磁気記録媒体の断面概略図である。
【図10】例示的一実施形態による磁気記録装置の断面概略図である。
【図11】磁気ヘッドと磁気記録媒体の間の関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明は、本発明の一般的な原理を例示することを目的として提供されるものであり、従って、本明細書においてその権利が主張されている本発明の概念を限定することを意味するものではない。更には、本明細書に記述されている個々の特徴は、様々な可能な組合せ及び変形のそれぞれにおいて、その他の記述されている特徴と組み合わせて使用することができる。
【0014】
本明細書に特記されていない限り、すべての用語に対しては、本明細書から含意される意味と、当業者によって理解され且つ/又は辞書や条約などに規定されている意味と、を含むそれぞれの可能な最も広範な解釈を付与することを要する。
【0015】
又、本明細書及び添付の請求項に使用されている単数形「1つ(a、an、及びthe)」は、特記されていない限り、複数のものを含むことに留意されたい。
【0016】
一般的な一実施形態によれば、垂直磁気記録媒体は、磁気異方性Kuを有する第1粒状記録層と、磁気異方性Kuを有する第1粒状記録層上方の第2粒状記録層と、磁気異方性Kuを有する第2粒状記録層上方の第3粒状記録層と、を含み、それぞれの磁気異方性は、Ku<Ku>Kuという数学的関係を有する。
【0017】
別の一般的な実施形態においては、垂直磁気記録媒体は、第1CoCrPt合金中におけるPtの濃度をCrの濃度によって除算したものとして規定される第1比率Xにおける第1CoCrPt合金を有する第1粒状記録層と、第1粒状記録層の上方に位置し、且つ、第2CoCrPt合金中におけるPtの濃度をCrの濃度によって除算したものとして規定される第2比率Xにおける第2CoCrPt合金を有する第2粒状記録層と、第2粒状記録層の上方に位置し、且つ、第3CoCrPt合金中におけるPtの濃度をCrの濃度によって除算したものとして規定される第3比率Xにおける第3CoCrPt合金を有する第3粒状記録層と、を含み、それぞれの比率は、X<X>Xという数学的関係に準拠している。
【0018】
更に別の実施形態においては、垂直磁気記録媒体は、第1粒状記録層と、第1粒状記録層上方の第2粒状記録層と、第2粒状記録層上方の交換結合制御層と、交換結合制御層上方の第3粒状記録層と、を含み、交換結合制御層は、約300emu/cc以下の飽和磁化を有する。
【0019】
垂直磁気記録媒体の記録密度を向上させるには、媒体内において、高線密度の記録パターンを明瞭に書き込み、且つ、保持してもよい。このため、記録パターンの分解能の改善が重要である。これを実現する1つの方法は、一実施形態によれば、磁気クラスタサイズを低減するステップを伴う。この理由は、磁気クラスタサイズが低減されると、磁化転移幅が狭くなり、且つ、これにより、高線密度の記録パターンが可能となるためである。例えば、1つの方式によれば、粒状記録層内のCoCrPt合金の酸化物の含有量を増大させると共に磁性粒子の境界幅を物理的に増大させることにより、磁気クラスタサイズを低減することができる。しかしながら、酸化物の量が過剰である場合には、酸化物が磁性粒子(磁性粒子コア)の内部に浸透し、この結果、磁性粒子の磁気異方性の劣化と、スイッチング磁界分布の増大と、がもたらされることになり、この結果、信号対ノイズ比(SNR)が劣化する。これは、合金の組成及び酸化物の含有量を変更することによる分解能の改善には限度が存在するということを意味している。
【0020】
磁気記録媒体の分解能を改善する別の有効且つ有望な方法は、相対的に薄い記録層を使用するステップを伴う。1つの方式によれば、記録層の厚さが低減されると、記録層が受け取る磁気ヘッドからの有効磁界強度及び磁界勾配が増大し、これにより、磁化転移幅が低減されうる。この結果、高線密度の記録パターンが明瞭になり、これにより、分解能が改善される。しかしながら、単純なスケーリングによって記録層の厚さを低減(薄化)した場合には、磁気体積が減少するため、熱安定性が劣化する。記録層内における熱安定性と膜厚の間の関係は、トレードオフの関係にある。
【0021】
一実施形態によれば、熱安定性を維持しつつ記録層の膜厚を低減させた垂直磁気記録媒体が可能であり、且つ、高い分解能と、高い信号対ノイズ比(SNR)と、が実現される。別の実施形態においては、前述の垂直磁気記録媒体を利用した磁気記録装置と共に、前述の垂直磁気記録媒体を製造する方法が提供される。
【0022】
図1は、例示的一実施形態による垂直磁気記録媒体の構造を示している。この垂直磁気記録媒体においては、基板10上に、接着層11と、軟磁性裏打ち層12と、シード層13と、第1中間層(第1介在層)14と、第2中間層15と、からなる層を連続的に形成している。この上部に、粒状記録層16及び強磁性金属記録層17を記録層として連続的に形成し、且つ、この上部に、オーバーコート層18及び潤滑剤層19を連続的に形成する。これらの層のうち、粒状記録層16を構築する方法は、この垂直磁気記録媒体における特に興味深い特徴であり、その他の層の材料及び構築方法については、それらの層が本説明を参照した際に当業者に理解されるように形成される限り、特段の制限は存在しない。
【0023】
1つの方式によれば、粒状記録層16は、Co、Cr、及びPtを主成分とする磁性合金から形成されており、且つ、酸化物を含む。具体的には、磁性合金は、Co−Cr−Pt合金、Co−Cr−Pt−B合金、Co−Cr−Pt−Mo合金、Co−Cr−Pt−Nb合金、Co−Cr−Pt−Ta合金、Co−Cr−Pt−Ni合金、Co−Cr−Pt−Ru合金などと、更には、Si、Ti、Ta、Nb、B、W、及びCrなどの酸化物のうちの1つ又は複数のものと、を含んでもよい。第1粒状記録層16−1、第2粒状記録層16−2、及び第3粒状記録層16−3を基板面から連続的に形成する。第1粒状記録層は、第2粒状記録層内における熱安定性及び磁性粒子間の隔離を少なくとも部分的に促進するべく、形成される。第2粒状記録層は、主記録層であり、且つ、少なくとも部分的に、熱安定性を改善し、磁気クラスタサイズを低減し、且つ、ノイズを低減するべく、形成される。第3粒状記録層は、様々な実施形態において、少なくとも部分的に、強磁性金属層17から第2粒状記録層にスイッチングトルクを効果的に伝達し、これにより、インコヒーレントな磁化の回転を促進し、且つ、書き込み性を改善するべく、形成される。
【0024】
この垂直磁気記録媒体は、第1粒状記録層の磁気異方性Kuと、第2粒状記録層の磁気異方性Kuと、第3粒状記録層の磁気異方性Kuと、の間に、次の関係が満足されることを特徴とする。
【0025】
Ku>Ku、Ku>Ku 式1
一実施形態においてKuが相対的に大きい理由は、以下のように説明することができる。2つの隣接する層は、一般に、これらの2つの隣接する層の境界面に存在する磁気モーメントによる交換相互作用を経験する。交換相互作用により、高い磁気異方性(Ku)を有する層は、低い磁気異方性Kuを有する隣接する層内に存在する磁気モーメントの熱擾乱を抑制する。全体としての薄膜の熱安定性は、最大のKuを有する層との接触状態にある層の数が大きいほど、改善される。この結果、熱安定性を維持しつつ、粒状記録層の膜厚を低減することができる。以上のことから理解できるように、最大のKuを有する層を粒状層の中心に配置することが、粒状記録層の膜厚を低減するのに有用である。
【0026】
第1粒状記録層の磁気異方性Kuが第2粒状記録層の磁気異方性Kuよりも小さい理由は、以下のように説明することができる。熱安定性の改善のみを検討している際には、Kuが大きいほど、大きな改善が結果的に得られる。しかしながら、粒状記録層の最下部層に位置したセクションは、書込みヘッドから離れており、且つ、従って、ヘッドの磁界強度が急激に減少する。これは、Kuが過大であると、第1粒状記録層の磁気モーメントをヘッドの磁界によってスイッチングすることができず、且つ、従って、書き込み性が相当に劣化することを意味している。一方、KuをKuよりも小さくなるように設定した場合には、書き込み性の大きな劣化は存在しない。この理由は、この場合には、第2粒状記録層の磁気モーメントがスイッチング(回転)すると、第1粒状記録層の磁気モーメントも、スイッチング(回転)することができるためである。従って、Kuが、Ku未満の値の範囲内にあると共に一緒に使用されるヘッドとマッチングするように適切に設定されることが有用である。一方、第1粒状記録層の飽和磁化(磁化飽和モーメント)(Ms)は、ノイズを制限する観点から、過大ではないことが好ましい。粒子境界が不明瞭である領域が、中間層15との接触状態にある粒状記録層の初期成長領域内に存在する。粒子境界が不明瞭である領域内においては、磁性粒子が磁気的に結合され、且つ、従って、Msが大きいと、磁気クラスタサイズが増大する。この結果、ノイズが増大する。従って、第1粒状記録層のMsは、主記録層である第2粒状記録層のMsよりも小さいことが好ましい。この条件は、前述の式1とも矛盾しない。この理由は、MsがCoCrPt合金によって低減された場合に、Kuも同時に低減されるためである。
【0027】
いくつかの実施形態においてKuがKuよりも小さいことを要する理由は、以下のように説明されよう。強磁性金属層は、一般に、書き込み性を維持するべく、粒状記録層よりもはるかに低い磁気異方性を有する材料から形成される。大きなKuを有する層を第3粒状記録層として使用すると、強磁性金属層と粒状記録層のKuの差が過大となり、これにより、強磁性金属層からのスイッチングトルクが、もはや、下方の粒状記録層に対して効果的に伝達されなくなる。この結果、インコヒーレントなスイッチングの回転モードが抑制され、且つ、これにより、書き込み性が劣化する。従って、Kuは、いくつかの実施形態においては、十分な書き込み性を実現するべく、Kuよりも小さくなるように設定することを要する。
【0028】
以上のことから、式1が満足されるようにそれぞれの粒状層内のKuを設定した場合には、熱安定性を維持しつつ、記録層内における熱安定性の改善と膜厚の低減の間のトレードオフの関係を改善することができることが理解される。粒状記録層が3層構造を有する最も一般的な垂直磁気記録媒体の場合には、磁気異方性は、Ku>Ku>Kuという関係を有している。この場合には、最大のKuを有する層に隣接する層が1つであり、且つ、従って、熱安定性を改善する効果は大きくない。この結果、粒状記録層の膜厚を低減した場合に、熱安定性が劣化し、且つ、十分な性能を実現することができない。
【0029】
一実施形態によれば、垂直磁気記録媒体は、磁気異方性(Ku)を有する第1粒状記録層と、第1粒状記録層上方の第2粒状記録層であって、磁気異方性(Ku)を有する第2粒状記録層と、第2粒状記録層上方の第3粒状記録層であって、磁気異方性(Ku)を有する第3粒状記録層と、を含み、Ku<Ku>Kuである。
【0030】
一実施形態においては、垂直磁気記録媒体は、Ku<Kuとなるような比率を有することを特徴としてもよい。
【0031】
別の実施形態においては、垂直磁気記録媒体は、第1粒状記録層16−1下方の中間層(第1及び第2中間層14、15を含む)と、中間層下方の軟磁性裏打ち層12と、第3粒状記録層上方の強磁性金属層17と、を更に含んでもよい。更なる実施形態によれば、中間層は、軟磁性裏打ち層上方に配置された第1中間層14と、第1中間層上方に配置された第2中間層15と、を含んでもよい。
【0032】
1つの方式によれば、強磁性金属層17は、第3粒状記録層16−3の直接上部に配置してもよい。強磁性金属層は、基本的に(妥当な限度内において、当技術分野において既知の任意のタイプの)酸化物を含んでいなくてもよく、且つ、第1粒状記録層、第2粒状記録層、及び第3粒状記録層は、それぞれ、当技術分野において既知の任意のタイプの、且つ、様々な実施形態に従って本明細書に記述されている濃度を有する、酸化物を有してもよい。
【0033】
前述の実施形態に加えて、CoCrPt合金中のCr及びPtの濃度比率を調節することにより、CoCrPt合金内のKuを調節することができる。
【0034】
X=(Pt濃度)/(Cr濃度) 式2
具体的には、前述の式2に規定されているように、Xは、CoCrPt合金中におけるPtとCrの濃度の比率である。Ku及びXの値は、正比例することが判明している。従って、垂直磁気記録媒体の1つの特徴を表している式1は、第1粒状記録層内におけるPtとCrの濃度比率Xと、第2粒状記録層内におけるPtとCrの濃度比率Xと、第3粒状記録層内におけるPtとCtの濃度比率Xと、を使用し、以下のように表現してもよい。
【0035】
>X;X>X 式3
更には、第1粒状記録層は、磁性粒子の間を磁気的に分離するべく、形成してもよく、且つ、従って、そのCr含有量は、好ましくは、少なくとも約18at.%である。粒状記録層内に含まれているCr原子が酸化してCr酸化物が形成され、磁性粒子が隔離され、且つ、磁性粒子間の磁気結合が分割される。しかしながら、Cr濃度が約18at.%以下である場合には、磁性粒子間の磁気結合が過大になり、且つ、これにより、ノイズが増大する。第2粒状記録層は、約5.0×10erg/cc以上の磁気異方性を有することが好ましいが、これは、ヘッドとの組合せによって左右される。このために、1つの方式によれば、好ましくは、Xを約1.0以上に設定してもよい。Xが約1.0未満である場合には、十分な熱安定性を実現することができなくなり、且つ、磁気クラスタサイズも増大し、これにより、ノイズが増大する。1つの方式によれば、第2粒状記録層の膜厚は、好ましくは、約2.5nmと約5.5nmの間に設定してもよいが、これは、この層を形成する合金のKuと、ヘッドとの組合せと、によって左右される。約2.5nm未満の厚さを使用すると、十分な熱安定性が実現され得ない一方、1つの方式によれば、これが約5.5nmを上回ると、書き込み性が劣化し得る。
【0036】
磁気記録システム内において使用されるヘッドの磁界強度が小さく、且つ、書き込み性が不十分である際には、1つの方式によれば、第2粒状記録層と第3粒状記録層の間に、約1nmの厚さを有する交換相互作用制御層を挿入してもよい。当然のことながら、当業者には理解されるように、約0.75nm、1.25nm、1.5nm、2nmなどの任意の厚さを使用してもよい。この層により、第2粒状記録層と第3粒状記録層の間に適切な交換相互作用を提供することによって、インコヒーレントな回転モードを促進し、且つ、結果的に書き込み性を改善することができる。交換結合制御層の飽和磁化は、好ましくは、約250emu/cc以下、約300emu/cc以下、約350emu/cc以下、約400emu/cc以下などである。飽和磁化が約300emu/ccを上回ると、第2粒状記録層と第3粒状記録層の間の交換相互作用が過大となり、これにより、書き込み性の改善の効果が提供されないかもしれない。
【0037】
交換結合制御層の材料については、その飽和磁化が約300emu/cc以下であると共に第3粒状記録層と第2粒状記録層の交換結合を制御するべく挿入される限り、制限は存在しないが、この材料は、好ましくは、Co−Cr−Pt合金、Co−Cr−Pt−B合金、Co−Cr−Pt−Mo合金、Co−Cr−Pt−Nb合金、Co−Cr−Pt−Ta合金、Co−Cr−Pt−Ni合金、Co−Cr−Pt−Ru合金などと、更には、Si、Ti、Ta、Nb、B、W、及びCrなどの酸化物のうちの1つ又は複数のものと、を含む粒状材料であってよい。更には、Cr濃度は、更に好ましくは、交換結合制御層の飽和磁化を約300emu/cc以下に維持するべく、約25at.%以上、約30at.%以上、約35at.%以上などであってよい。
【0038】
別の実施形態によれば、垂直磁気記録媒体は、第1比率(第1CoCrPt合金中におけるPtの濃度をCrの濃度によって除算したものによって規定されるX)における第1CoCrPt合金を有する第1粒状記録層と、第1粒状記録層上方の第2粒状記録層であって、第2比率(第2CoCrPt合金中におけるPtの濃度をCrの濃度によって除算したものによって規定されるX)における第2CoCrPt合金を有する第2粒状記録層と、第2粒状記録層上方の第3粒状記録層であって、第3比率(第3CoCrPt合金中におけるPtの濃度をCrの濃度によって除算したものによって規定されるX)における第3CoCrPt合金を有する第3粒状記録層と、を含んでもよく、X<X>Xである。
【0039】
別の実施形態においては、垂直磁気記録媒体は、X<Xとなる比率を有することを特徴としてもよい。
【0040】
別の実施形態によれば、第1粒状記録層内のCr濃度は、約18at.%と約30at.%の間、約21at.%と約27at.%の間、約20at.%と約25at.%の間などであってよい。
【0041】
更に別の実施形態においては、垂直磁気記録媒体は、第1粒状記録層下方の中間層と、中間層下方の軟磁性裏打ち層と、第3粒状記録層上方の強磁性金属層と、を更に含んでもよい。更なる実施形態においては、中間層は、軟磁性裏打ち層上方の第1中間層と、第1中間層上方の第2中間層と、を含んでもよい。
【0042】
別の実施形態においては、垂直磁気記録媒体は、第1粒状記録層と、第1粒状記録層上方の第2粒状記録層と、第2粒状記録層上方の交換結合制御層と、交換結合制御層上方の第3粒状記録層と、を含み、交換結合制御層は、約300emu/cc以下の飽和磁化を有する。
【0043】
1つの方式によれば、垂直磁気記録媒体は、少なくとも約25at.%の、少なくとも約30at.%の、約20at.%〜約50at.%の範囲内のなどの交換結合制御層内におけるCr濃度を有してもよい。
【0044】
別の実施形態においては、任意の実施形態における前述の垂直磁気記録媒体は、磁気異方性(Ku)を有する第1粒状記録層と、磁気異方性(Ku)を有する第2粒状記録層と、磁気異方性(Ku)を有する第3粒状記録層と、を有してもよい。更には、それぞれの層の磁気異方性は、Ku<Ku>Kuという関係により、且つ、更には、いくつかの構成においては、Ku<Kuという関係により、比較の観点において表現してもよい。
【0045】
以下、粒状記録層以外の要素との関係において、垂直磁気記録媒体の好適な実施形態について説明する。基板10としては、ガラス基板、アルミニウム合金基板、プラスチック基板、シリコン基板などの様々な種類の基板を使用してもよい。
【0046】
接着層11の材料については、基板10に対して良好に接着すると共に優れた平坦性を有している限り、特段の制限は存在しないが、接着層は、好ましくは、Ni、Co、Al、Ti、Cr、Zr、Ta、及びNbから選択された少なくとも2つの材料を有する材料を含んでもよい。具体的には、例えば、TiAl、NiTa、TiCr、AlCr、NiTaZr、CoNbZr、TiAlCr、NiAlTi、及びCoAlTiを使用することができる。膜厚は、約2nm〜約40nmの範囲であることが好ましい。2nm未満であると、接着層としての効果が損なわれることになり、且つ、膜厚が約40nmを上回るように形成した場合にも、接着層としての性能が改善されることはなく、従って、効果が乏しく、且つ、その結果、生産性が低下することになるため、これは、望ましくない。
【0047】
軟磁性裏打ち層12は、磁気ヘッドによって生成される磁界の拡張を制御すると共に記録層16を効果的に磁化するべく、機能する。1つの方式によれば、軟磁性裏打ち層の材料については、その飽和磁束密度(Bs)が少なくとも約1テスラ以上であり、単軸異方性がディスク基板の半径方向において付与されており、ヘッドの運動方向において計測される保磁力が約2.4kA/m以下であり、且つ、表面の平坦性が優れている限り、特段の制限は存在しない。
【0048】
具体的には、前述の特徴は、Co又はFeを主成分とし、且つ、Ta、Nb、Zr、B、Crなどがこれに追加されたアモルファス合金を使用することにより、容易に得られよう。1つの方式によれば、最適な膜厚値は、軟磁性裏打ち層12から記録層16までの距離及び材料と、その媒体と共に使用される磁気ヘッドと、に従って変化するが、好ましくは、約20nm〜約100nmの範囲を使用してもよい。更には、軟磁性裏打ち層12の一部に、fcc構造を有する合金を使用することもできる。これは、軟磁性裏打ち層12上方に形成されるシード層13の結晶方位を制御するために形成され、且つ、具体的には、様々な方式において、Ta、Nb、W、B、VなどをCoFeに追加した材料を使用することができる。1つの方式によれば、膜厚は、好ましくは、約1nm〜約10nmの範囲であってよい。1つの方式によれば、シード層13は、中間層14の結晶方位と、粒子サイズと、を制御するべく機能する。このために、fcc構造を有する金属又はアモルファス材料を使用することができる。fcc構造を有する具体的な材料は、Ni、Cu、Pd、Ptなどを含み、且つ、好ましい結晶方位は、例えば、Cr、W、V、Mo、Ta、及びNbから選択された1つ又は複数の元素を追加することによって実現される。
【0049】
更には、同時にfcc構造をも有する磁気材料を使用することにより、軟磁性裏打ち層のものに類似した働きを付与することも可能であり、且つ、磁気ヘッドと軟磁性層の間の距離を低減することができる。具体的には、1つの方式によれば、10at.%以下のTa、W、Nb、Cr、Bなどをfcc構造を有する組成のNiFe又はCoFeに追加してもよい。シード層の最適な膜厚値は、中間層及び記録層の材料及び膜厚と、ヘッドと、に従って変化するが、いくつかの方式によれば、約2nm〜約10nmの範囲を使用してもよい。これが約2nm未満であると、結晶方位が劣化しうることになり、これは、望ましくない。これが約10nmを上回ると、記録層内の結晶粒子サイズが増大しうることになり、これも望ましくない。更には、記録層内の結晶粒子サイズを低減する必要がある場合には、アモルファス材料を使用することができる。具体的には、このような材料は、Ta、TiAl、CrTi、NiTaなどを含み、且つ、膜厚が約1nm〜約4nmの範囲にある際に、好ましい結晶方位が実現されうる。
【0050】
第1中間層14は、記録層16の結晶方位を向上させるべく形成されており、且つ、更には、記録層16内の粒子の分離をも促進する。具体的には、Ru又はRu合金を使用することにより、Cr、Ta、W、Mo、Nb、Coなどから選択された元素がRuに追加されたhcp構造を形成することができる。形成条件の変更及び材料の変更により、本明細書に開示されている方法において結晶方位及び粒子分離の両方に対処することができる。具体的には、1つの形成技法は、結晶方位を向上させるために、膜形成の開始時点において、可能な低ガス圧において層を形成するステップと、膜形成の終了時点の直前において、粒子分離のためにガス圧を上昇させるステップと、を含んでもよく、或いは、ガス圧及び材料を変化させるという条件において、2段構造又は3段構造を製造することも同様に可能である。低ガス圧とは、具体的には、約1Pa以下を意味している。高ガス圧とは、約2Paと約6Paの間の範囲を意味しており、且つ、この範囲を採用した際には、Ruの表面粗度が増大し、且つ、空隙が粒子境界に形成される。1つの方式によれば、膜厚は、好ましくは、約8nm〜約20nmの範囲である。膜厚が約8nm未満になると、結晶方位が劣化し、膜厚が約20nmを上回ると、磁気ヘッドと軟磁性裏打ち層の間の距離が増大し、且つ、これにより、書き込み性が劣化する。
【0051】
第2中間層15は、記録層16の粒子分離を促進するべく、形成される。具体的には、1つの方式によれば、Ti、Ta、Nb、Al、Siなどから選択された元素がRuに追加されたRu合金を使用することができる。又、1つの方式によれば、追加される元素のうちのいくつかが酸化物の形態を有するRu合金を使用することもできる。強磁性金属層17内においては、1つの方式によれば、CoCrPtを主成分としつつ、B、Ta、Ru、Ti、W、Mo、Nb、Ni、Mnから選択された少なくとも1つの元素が追加されることが好ましい。それぞれの組成及び膜厚については、それらが軟磁性裏打ち層の膜厚及び磁気ヘッドの性能に適するように調節可能であると共にそれらが熱安定性を維持することができる範囲内にある限り、特段の制限は存在しない。
【0052】
オーバーコート層18は、1つの方式によれば、好ましくは、炭素オーバーコートなどの約2nmと約5nmの間の厚さの炭素を主成分として有する薄膜を使用して形成してもよい。更には、潤滑剤層19は、好ましくは、パーフルオロアルキルポリエーテルなどの潤滑剤を利用する。この結果、非常に信頼性の高い磁気記録媒体を得ることができる。
【0053】
一実施形態によれば、垂直磁気記録媒体内において熱安定性を維持すると共に記録層の膜厚を低減することが可能であり、且つ、従って、分解能及びSNRを改善することができる。高分解能及び高SNRを有する垂直磁気記録媒体は、記録密度を増大させるために極めて重要であり、且つ、この種の垂直磁気記録媒体を使用することにより、小型であり且つ高容量の磁気記録装置を提供することができる。
【0054】
一実施形態においては、任意の実施形態における前述の垂直磁気記録媒体は、第1CoCrPt合金中におけるPtの濃度をCrの濃度によって除算したものとして規定される第1比率(X)における第1CoCrPt合金を含む第1粒状記録層と、第2CoCrPt合金中におけるPtの濃度をCrの濃度によって除算したものとして規定される第2比率(X)における第2CoCrPt合金を含む第2粒状記録層と、第3CoCrPt合金中におけるPtの濃度をCrの濃度によって除算したものとして規定される第3比率(X)における第3CoCrPt合金を含む第3粒状記録層と、を有してもよい。更には、この実施形態においては、それぞれの比率は、X<X>Xとなるような数学的な関係を有してもよく、且つ、更には、いくつかの方式によれば、それぞれの比率は、X<Xとなるような数学的関係を有してもよい。
【0055】
別の構成においては、前述の垂直磁気記録媒体は、約18at.%と約30at.%の間、約21at.%と約27at.%の間、約20at.%と約25at.%の間などの第1粒状記録層内におけるCr濃度を有してもよい。
【0056】
一実施形態によれば、磁気データストレージシステムは、少なくとも1つの磁気ヘッドと、本明細書においていずれかの実施形態に従って記述されている垂直磁気記録媒体と、磁気ヘッドの上方において垂直磁気記録媒体を通過させる駆動メカニズムと、磁気ヘッドに電気的に結合され、且つ、磁気ヘッドの動作を制御する能力を有するコントローラと、を含んでもよい。
【0057】
実験結果
図1は、例示的一実施形態(例示的実施形態1)を構成する垂直磁気記録媒体の断面を概略的に示している。この例示的実施形態における垂直磁気記録媒体は、Intevac, Inc.社によって製造された200LEANスパッタリング装置を使用して製造した。すべてのチャンバを約2×10−5Pa以下の真空状態にまで排気し、その後に、プロセスを連続的に実行するべく、基板がその上部に搭載されたキャリアをプロセスチャンバのそれぞれに移動させた。DCマグネトロンスパッタリングを使用することにより、基板10上に、接着層11と、軟磁性裏打ち層12と、シード層13と、第1中間層14と、第2中間層15と、粒状記録層16と、強磁性金属層17と、を連続的に形成し、且つ、DLC(Diamon−Like Carbon)を炭素オーバーコート18として形成した。最後に、パーフロオロアルキルポリエーテルに基づいた材料をフルオロカーボン材料によって希釈した潤滑剤を液体潤滑剤層19として塗布した。
【0058】
約0.8nmの厚さ及び約65nmの直径のガラス基板を基板10として使用した。基板を加熱することなしに、約0.5PaのArガス圧の条件下において、接着層11として、Ni−37.5Taを約15nmに形成し、且つ、約0.4PaのArガス圧の条件下において、2つの層として、即ち、約0.4nmの厚さのRu薄膜の介在を伴う約20nmの厚さのCo−28Fe−3Ta−5Zr合金薄膜として、軟磁性裏打ち層12を形成した。この上部に、シード層13として、約7nmの厚さのNi−14Fe−6W薄膜を形成した。約0.5PaのArガス圧の条件下において、第1中間層14として、約4nmの厚さのRuを形成し、且つ、更には、約3.3PaのArガス圧の条件下において、約5nmの厚さのRuを形成し、且つ、その上部に、約6.0PaのArガス圧の条件下において、約5nmの厚さのRuを形成した。Ru−20Ti−10TiOターゲットを使用し、4PaのArガス圧の条件下において、第2中間層15を形成した。第1粒状記録層、第2粒状記録層、及び第3粒状記録層のすべてを異なるチャンバ内において形成した。[Co−18Cr−10.5Pt]−4SiO−2.5Coターゲットを使用し、約4PaのArガス圧及び約200Vの基板バイアスの条件下において、第1粒状記録層を形成し、且つ、Pt及びCr濃度比率Xを変化させるべく、Pt濃度を約22.5at.%に上昇させた。膜厚を約4nmに固定した。[Co−18Cr−22.5Pt]−4SiO−2.5Coターゲットを使用し、約4PaのArガス圧及び約300Vの基板バイアスの条件下において、第2粒状記録層を形成し、且つ、Pt及びCr濃度比率Xを変化させるべく、Pt濃度を約10.5at.%に低減した。膜厚を約4nmに固定した。[Co−26Cr−10.5Pt]−4SiO−Coターゲットを使用し、約0.9PaのArガス圧の条件下において、第3粒状記録層を約4.5nmの膜厚に形成した。これにより、媒体表面の平坦性を改善することができた。第3粒状記録層の場合の膜厚及びスパッタリング条件は、一定であった。Co−15Cr−14Pt−8Bターゲットを使用し、強磁性金属層17を約4nmの膜厚に形成した。約2.5nmの厚さのDLC薄膜をオーバーコート層18として形成した。最後に、パーフルオロアルキルをフルオロカーボン材料によって希釈したポリエーテルに基づいた材料の潤滑剤を潤滑剤層19として塗布した。
【表1】

【0059】

表1は、製造されたサンプルにおける第1粒状記録層、第2粒状記録層、及び第3粒状記録層のターゲット組成、そのときのX、X、及びX、及びその平均値、読取り/書込み計測値を使用することによって得られた分解能、並びに、KV/KTを示している。
【0060】
、X、及びXの平均値が変化したため、薄膜全体の磁気異方性も変化しているが、すべてのサンプルについて、X、X、及びXの平均値を同一にした。スピンスタンドを使用することにより、媒体の読取り/書込み特性を評価した。評価においては、約70nmのトラック幅を有する単極型の書込み素子と、トンネル磁気抵抗を利用した約60nmのトラック幅を有する読取り素子と、を有する磁気ヘッドを利用しており、評価のための条件は、周速が約10m/秒であり、スキュー角が約0°であり、且つ、磁気間隔が約8nmであった。Kerr磁力計を使用することにより、KV/KTを計測した。磁界掃引速度(掃引速度)は、約212kA/(m・秒)、約106kA/(m・秒)、約53kA/(m・秒)、約27kA/(m・秒)、及び約13kA(m・秒)において変化させた。磁界をサンプルの薄膜表面に対して垂直の方向に印加しつつ、Kerrループを計測し、且つ、保磁力(磁力を保持する力)の減衰プロセスからKV/KTを得た。
【0061】
V/KTを評価する方法は、例えば、(非特許文献2)に開示されている。
【0062】
表1に示されている結果によれば、サンプルは、いずれも、一定の膜厚を有し、且つ、従って、分解能は、概ね不変であるが、KV/KTは、Xに伴って増大している。具体的には、XがXを下回っている際には、KV/KTは、明らかに小さく、且つ、熱安定性が劣化している。従って、同一の膜厚条件下において、X、X、及びXの平均値を比較した際に、Xを上回るようにXを設定した際に熱安定性が改善されることが明らかである。
【0063】
ここで、Xと磁気異方性(Ku)の関係を調査するべく、粒状記録層が中間層15上の約13nmの単層構造として形成されたサンプルを用意した。トルク磁力計を使用することによって計測された磁気トルクの磁界角度依存性により、磁気異方性を評価した。振動試料磁力計により、飽和磁化Msを計測した。磁性粒子の内部における磁気異方性として、磁気異方性を判定した。又、磁性粒子の内部における飽和磁化として、飽和磁化を判定した。具体的には、合計薄膜容積から酸化物の含有物の容積を減算することによって得られた値を薄膜内に含まれる磁性粒子の容積として取得し、且つ、この磁性粒子の容積を使用することにより、磁性粒子の内部における磁気異方性を得た。
【表2】

【0064】

表2に示されている合金組成について前述の計測を実行した際の磁性粒子の内部におけるXとKuの間の関係を図2に示した。図2から、Xが増大した際に、Kuも同時に増大することが明らかである。従って、式1と式3が等価であることが明らかである。
【0065】
以上のことから、表1の結果は、同一の膜厚条件下においてKu、Ku、及びKuの平均値を比較した際に、Kuを上回るようにKuを設定することにより、Ku、Ku、及びKuの平均値及び合計膜厚が同一であるかどうかとは無関係に、熱安定性が改善されることを示している。
【0066】
粒状記録層16を除いて、例示的実施形態1におけると同一のプロセスを使用し、別の実施形態(例示的実施形態2)による垂直磁気記録媒体を用意した。[Co−26Cr−18.5Pt]−4SiO−2.5Coターゲットを使用し、約4PaのArガス圧及び約200Vの基板バイアスの条件下において、第1粒状記録層を約3nmの膜厚に形成した。[Co−18Cr−22.5Pt]−4SiO−2.5CoOターゲットを使用し、4PaのArガス圧及び約300Vの基板バイアスの条件下において、第2粒状記録層を形成し、且つ、Pt及びCtの濃度比率Xを変化させるべく、Pt濃度を約10.5at.%に低減させた。膜厚を4nmに固定した。[Co−26Cr−10.5Pt]−4SiO−Coターゲットを使用し、約0.9PaのArガス圧の条件下において、第3粒状記録層を形成し、且つ、Pt及びCtの濃度比率Xを変化させるべく、Pt濃度を約22.5at.%に上昇させた。膜厚を4nmに固定した。第1粒状記録層の場合における膜厚及びスパッタリング条件は、一定であり、上述のサンプルを使用し、X及びXの平均値が一定であると共にX及びXを変化させた際の磁気特性及び読取り/書込み特性を調査した。媒体の磁気特性及び読取り/書込み特性を評価する方法は、以前の例示的実施形態におけるものと同一ある。
【表3】

【0067】

表3は、製造されたサンプルにおける第1粒状記録層、第2粒状記録層、及び第3粒状記録層のターゲット組成、そのときのX、X、及びX、及びその平均値、読取り/書込み計測値によって得られた分解能及びオーバーライトを示している。X、X、及びXの平均値が変化した際に、薄膜全体の磁気異方性も変化しており、且つ、従って、X、X、及びXの平均値がすべてのサンプルついて同一となるように、ターゲット組成を選択したことに留意されたい。表3に示されている結果によれば、サンプルのすべてにおいて、分解能及びKV/KTは、概ね不変であるが、Xが大きいほど、オーバーライトが小さくなっている。具体的には、XがXを上回っている際に、オーバーライトが相当に劣化しており、且つ、従って、書き込み性が劣化している。XがXを上回っている際には、強磁性金属層17からのスイッチングトルクが、もはや、下方の粒状記録層に対して効果的に伝達されず、且つ、従って、書き込み性が劣化するものと考えられる。従って、十分な書き込み性を実現するには、XがXを下回るべきである。
【0068】
粒状記録層16を除いて、例示的実施形態1におけるものと同一のプロセスを使用し、別の例示的実施形態(例示的実施形態3)による垂直磁気記録媒体を用意した。3つのタイプのターゲット、即ち、[Co−26Cr−18.5Pt]−4SiO−2.5Co、[Co−10.5Cr−22.5Pt]−5SiO−5TiO−1.5Co、及び[Co−26Cr−10.5Pt]−4SiO−1Coを、粒状記録層16用のターゲットとして用意し、且つ、表4に示されているように、異なる積層順序を有するサンプルを製造した。
【表4】

【0069】

これらのうち、最大のKu(最大のX)を有するターゲット組成である[Co−10.5Cr−22.5Pt]−5SiO−5TiO−1.5Coを、約4PaのArガス圧及び約300Vの基板バイアスの条件下において形成し、且つ、膜厚を約1.5nmと約6.5nmの間において変化させた。2番目に大きいKu(2番目に大きいX)を有する[Co−26Cr−18.5Pt]−4SiO−2.5Coを、約4PaのArガス圧及び約−200Vの基板バイアスの条件下において形成し、且つ、膜厚を約3nmに固定した。粒状層のうちで最小のKu(最小X)を有する[Co−26Cr−10.5Pt]−4SiO−1Coを、約0.9PaのArガス圧の条件下において形成し、且つ、膜厚を約4.5nmに固定した。例4−1及び例4−2は、前述の式1を満足する構造を有すると共にこの実施形態の特徴を有する垂直磁気記録媒体に関係している。比較サンプルは、材料が固定されると共に積層順序のみが変更された際の前述の式1に準拠しない積層構造を有するすべての組合せをカバーしている。
【0070】
前述のサンプルを使用し、磁気特性及び読取り/書込み特性を評価し、且つ、前述の式1を満足する構造を有するサンプルの優位性を確認した。媒体の磁気特性及び読取り/書込み特性を評価する方法は、例示的実施形態1におけるものと同一である。
【0071】
図3は、最大のKuを有する層の膜厚を変化させた際のそれぞれのサンプルにおけるKuV/KTの値を示している。最大のKuを有する層の膜厚を増大させた際には、KuV/KTが増大し、且つ、熱安定性が改善されることが明らかである。更には、同一の膜厚において比較した場合に、比較例4−1及び比較例4−2においては、熱安定性が劣化していることが明らかである。比較例4−1における構造は、現在市場に存在している多数の垂直磁気記録媒体の構造と同一の構造であり、最大のKuを有する層が最下部層であり、且つ、Kuが上部層に向かって小さくなる構造を有する。垂直磁気記録媒体の熱安定性を満足させるには、KuV/KTは、一般に、少なくとも約80でなければならない。KuV/KTが約80に到達するには、比較例4−1及び比較例4−2においては、最大のKuを有する層の厚さを少なくとも4.5nmにすることが必要となり、且つ、例4−1においては、最大のKuを有する層の膜厚が、少なくとも約2.5nmであるべきであることが明らかである。従って、第2粒状記録層が最大のKuを有する層である例4−1及び例4−2によれば、比較例4−1及び比較例4−2と比べて、依然として熱安定性を維持しつつ、膜厚を、約2nmだけ、低減することができることが明らかである。従って、例4−2においては、熱安定性及び記録層の膜厚の傾向が改善されていると言える。
【0072】
図4は、垂直軸の水平分解能に対してKuV/KTを示している。同一値のKub/KTについて比較を行った場合に、比較例4−1及び比較例4−2と比べて、例4−1及び例4−2においては、約3ポイントの分解能の改善を観察することができる。
【0073】
比較例4−3及び比較例4−4における熱安定性及び分解能の傾向は、例4−1及び例4−2のものと等価であり、且つ、一見したところでは、比較例4−3及び比較例4−4は、十分な性能が実現されていることを示している。しかしながら、図5に示されているように、同一値のKuV/KTとの関係におけるオーバーライト特性は、例4−1及び例4−2と比べて、比較例4−3及び比較例4−4は、乏しく、且つ、熱安定性及び書き込み性の傾向が劣化していると言える。
【0074】
図6の結果は、それぞれのサンプルにおけるKuV/KTに対するSNRの結果である。同一のKuV/KTにおいて比較を行った場合に、SNRは、例4−1及び例4−2においては、比較サンプルのいずれのものにおけるよりも高い。更には、例4−1と例4−2を比較した場合に、SNRは、例4−1においては、同一の熱安定性において高い。従って、最小のKuを有する層は、第3粒状記録層に配置することが更に好ましいことが明らかである。
【0075】
以上の内容を要約すれば、例4−1及び例4−2においては、熱安定性及び分解能の傾向が、比較例4−1及び比較例4−2とは対照的に、改善されており、且つ、熱安定性及び書き込み性と熱安定性及びSNRの傾向が、比較例4−3及び比較例4−4とは対照的に、改善されており、且つ、従って、これらの媒体構造は、密度を増大させるのに適していることが明らかである。
【0076】
粒状記録層16を除いて、例示的実施形態1におけるものと同一のプロセスを使用し、別の例示的実施形態(例示的実施形態4)による垂直磁気記録媒体を用意した。
【表5】

【0077】

Cr濃度を表5に示されているものに変化させたいくつかのターゲットを使用し、4PaのArガス圧及び約200Vの基板バイアスの条件下において、第1粒状記録層を約3nmの膜厚に形成した。[Co−10.5Cr− 22.5Pt]−5SiO−5TiO−1.5Coターゲットを使用し、約4PaのArガス圧及び約−300Vの基板バイアスの条件下において、第2粒状記録層を約2.5nmの膜厚に形成した。[Co−26Cr−10.5Pt]−4SiO−1Coターゲットを使用し、約0.9PaのArガス圧の条件下において、第3粒状記録層を約4.5nmの膜厚に形成した。
【0078】
前述のサンプルを使用し、第1粒状記録層内のCr濃度の変化との関係におけるKuV/KT及びSNRの変化を調査した。媒体の磁気特性及び読取り/書込み特性を評価する方法は、例示的実施形態1におけるものと同一である。
【0079】
図7は、第1粒状記録層内のCr濃度の変化との関係におけるSNRの変化を示している。Cr濃度が約18at.%以上である際には、十分に高いSNRが明らかであるが、Cr濃度が約18at.%未満である際には、SRNが急激に低下している。Cr濃度が約18at.%未満である際には、磁性粒子が磁気的に結合され、且つ、これにより、ノイズが増大するものと考えられる。
【0080】
一方、図8のKuV/KTの結果から、Cr濃度が約32at.%以上である際にも、熱安定性が急激に劣化することが明らかである。Cr濃度が約32at.%以上である際には、磁気異方性及び飽和磁化が急激に減少すると共に磁性がもはや現れなくなり、且つ、従って、記録層の有効容積が低減され、これにより、熱安定性が劣化するものと考えられる。上述のSNR及びKuV/KTの結果から、第1粒状記録層内のCr濃度は、約18at.%と約30at.%の間であるべきであることが明らかである。
【0081】
粒状記録層16を除いて、例示的実施形態1におけるものと同一のプロセスを使用し、別の例示的実施形態(例示的実施形態5)による垂直磁気記録媒体を用意した。4PaのArガス圧及び約200vの基板バイアスの条件下において、第1粒状記録層を形成した。約4PaのArガス圧及び約300Vの基板バイアスの条件下において、第2粒状記録層を形成した。約0.9PaのArガス圧の条件下において、第3粒状記録層を形成した。表6には、粒状記録層のそれぞれを形成するべく使用したターゲット組成及び膜厚が示されている。
【表6】

【0082】

表6は、例示的実施形態4において使用した比較サンプルを比較対象として含んでいる。前述のサンプルを使用し、酸化物濃度を変化させた際及び追加の元素をCoCrPt合金に追加した際の磁気特性及び読取り/書込み特性を調査した。表6に示されているように、追加の元素をCoCrPt合金に追加した際には、且つ、酸化物濃度を変化させた際には、熱安定性を維持しつつ、良好な分解能、オーバーライト、及びSNRが実証されることが明らかである。
【0083】
図9は、別の実施形態(例示的実施形態6)による垂直磁気記録媒体の断面を概略的に示している。この例示的実施形態における垂直磁気記録媒体は、Intevac, Inc.社によって製造された200LEANスパッタリング装置を使用して製造した。すべてのチャンバを約2×10−5Pa以下の真空状態にまで排気し、その後に、プロセスを連続的に実行するべく、基板がその上部に搭載されたキャリアをプロセスチャンバのそれぞれに移動させた。DCマグネトロンスパッタリングを使用することにより、基板610上に、接着層611、軟磁性裏打ち層612、シード層613、第1中間層614、第2中間層615、粒状記録層616、及び強磁性金属層617を連続的に形成し、且つ、DLC(Diamond−Like Carbon)をオーバーコート層618として形成した。最後に、パーフルオロアルキルポリエーテルに基づいた材料をフルオロカーボン材料によって希釈した潤滑剤を液体潤滑剤層619として塗布した。
【0084】
約0.8mmの厚さ及び約65mmの直径のガラス基板を基板610として使用し、基板を加熱することなしに、約0.5PaのArガス圧の条件下において、接着層611として、Ni−37.5Taを約15nmに形成し、且つ、約0.4PaのArガス圧の条件下において、2つの層として、即ち、約0.4nmの厚さのRu薄膜の介在を伴う約20nmの厚さのCo−28Fe−3Ta−5Zr合金薄膜として、軟磁性裏打ち層612を形成した。その上部に、シード層613として、約7nmの厚さのNi−14Fe−6W薄膜を形成した。約0.5PaのArガス圧の条件下において、第1中間層614として、4nmの厚さのRuを形成し、且つ、更には、約3.3PaのArガス圧の条件下において、約5nmの厚さのRuを形成し、且つ、その上部に、約6.0PaのArガス圧の条件下において、約5nmの厚さのRuを形成した。約4PaのArガス圧の条件下において、Ru−20Ti−10TiOターゲットを使用し、第2中間層615を形成した。第1粒状記録層616−1、第2粒状記録層616−2、及び第3粒状記録層616−4のすべてを異なるチャンバにおいて形成した。[Co−26Cr−18.5Pt]−4SiO−2.5Coターゲットを使用し、約4PaのArガス圧及び約200Vの基板バイアスの条件下において、第1粒状記録層を約3nmの膜厚に形成した。[Co−10.5Cr−22.5Pt]−5SiO−5SiO−1.5Coターゲットを使用し、約4PaのArガス圧及び−300Vの基板バイアスの条件下において、第2粒状記録層を約2.5nmの厚さに形成した。[Co−26Cr−10.5Pt]−4SiO−1Coターゲットを使用し、約0.9PaのArガス圧の条件下において、第3粒状記録層を約4.5nmの膜厚に形成した。第2粒状記録層と第3粒状記録層の間に、これらの層の交換相互作用を制御するべく、表7に示されている交換結合制御層616−3を形成した。約4PaのArガス圧及び約200Vの基板バイアスの条件下において、交換結合制御層を1nmの厚さに形成した。
【0085】
1つの方式によれば、軟磁性裏打ち層612は、第1粒状記録層616−1の下方に配置してもよく、第1中間層614は、軟磁性裏打ち層612の上方に配置してもよく、第2中間層615は、第1中間層614の上方に配置してもよく、且つ、強磁性金属層617は、第3粒状記録層616−4の直接上部に又はその上方に配置してもよい。強磁性金属層は、基本的に、(妥当な限度内において、当技術分野において既知の任意のタイプの)酸化物を含まなくてもよく、第1粒状記録層、第2粒状記録層、及び第3粒状記録層は、それぞれ、当技術分野において既知のタイプの、且つ、様々な実施形態に従って本明細書に記述されている濃度を有する、酸化物を有してもよい。
【0086】
低磁界強度を有するヘッドを使用し、前述のサンプルの読取り/書込み性能を調査した。スピンスタンドを使用することにより、媒体のオーバーライト特性を評価した。評価においては、前述の例示的実施形態において使用されたヘッドよりも狭いトラック幅と、小さな磁界強度と、を有するヘッドを利用した。具体的には、評価においては、約60nmのトラック幅を有する単極型の書込み素子と、トンネル磁気抵抗を利用した約55nmのトラック幅を有する読取り素子と、を有する磁気ヘッドを利用しており、評価の条件は、周速が約10m/秒であり、スキュー角が約0°であり、且つ、磁気間隔が約8.5nmであった。評価結果が表7に示されている。
【表7】

【0087】

狭いトラック幅を有する前述のヘッドを利用した際に、例示的実施形態4、即ち、例4−1において製造された媒体のオーバーライト値は、約30dB以下であった。一般に、垂直磁気記録媒体を磁気記録装置に内蔵するには、オーバーライト特性は、少なくとも約30dBであることが好ましい。従って、低磁界強度を有する前述のヘッドとの組合せにおいて使用された際に、例示的実施形態4において製造された媒体は、十分に動作しない可能性が存在する。一方、オーバーライト値は、約300emu/cc以下の飽和磁化を有する材料から形成された交換結合制御層を含むこの例示的実施形態において製造された垂直磁気記録媒体の場合には改善されており、且つ、従って、書き込み性も改善されている。この理由は、交換結合制御層の存在によってインコヒーレントな回転モードが促進されるためであると考えられる。一方、約300emu/cc超の飽和磁化を有する材料から形成された交換結合制御層を使用した際には、書き込み性は、改善されないか又は劣化する。この理由は、交換結合制御層の飽和磁化が過大になった際には、第2粒状記録層と第3粒状記録層の間の交換相互作用が過大になり、これにより、インコヒーレントな回転モードが抑制されるためであると考えられる。以上の結果から、媒体が組み合わせられるヘッドにマッチングするように、第2粒状記録層と第3粒状記録層の間の交換相互作用の大きさを適切に調節するべきであり、且つ、ヘッドの磁界強度が媒体のスイッチング磁界との関係において相対的に小さい場合には、300emu/cc以下の飽和磁化を有する材料から形成された交換結合制御層を導入するべきであることが明らかである。
【0088】
一実施形態に従い、別の実施形態による磁気記録装置が図10A及び図10Bに概略的に示されている。磁気記録媒体100は、前述の例示的実施形態のうちの1つによる媒体を含み、且つ、磁気記録装置は、媒体を駆動する駆動ユニット101と、記録部及び再生部を有する磁気ヘッド102と、磁気記録媒体100との関係において磁気ヘッド102を運動させるメカニズム103と、信号を磁気ヘッド102に対して入出力するメカニズム104と、を有する。
【0089】
一実施形態に従い、磁気ヘッド102と磁気記録媒体100の関係が図11に示されている。1つの方式によれば、磁気ヘッドと媒体の最上部の間の距離(磁気間隔)は、約7nmに設定されており、トンネル磁気抵抗(TMR)素子を読取り部110内の読取り素子111に使用してもよく、且つ、書込み部112の主磁極113の周りにラップアラウンド遮蔽体114を有するようにヘッドを形成してもよい。このように書込み部の主磁極の周りに遮蔽体を形成した磁気ヘッド102を使用することにより、媒体の高いSNRを維持しつつ、オーバーライト特性を改善することが可能であり、且つ、センチメートル当たりの線記録密度を約728,000ビットに、そして、センチメートル当たりのトラック密度を約167,000トラックに設定することにより、約121ギガバイト/平方センチメートル(Gb/cm)における動作を確認することができる。
【0090】
一実施形態によれば、磁気データストレージシステムは、少なくとも1つの磁気ヘッドと、本明細書の任意の実施形態において記述されている垂直磁気記録媒体と、磁気ヘッドの上方において垂直磁気記録媒体を通過させる駆動メカニズムと、磁気ヘッドに電気的に結合され、且つ、磁気ヘッドの動作を制御する能力を有するコントローラと、を含んでもよい。
【0091】
以上、様々な実施形態について説明したが、これらは、限定を目的としてではなく、例示を目的として提示されたものに過ぎないことを理解されたい。従って、本発明の実施形態の広さ及び範囲は、前述の例示的実施形態のいずれによっても限定されるものではなく、添付の請求項及びそれらの等価物によってのみ規定されることを要する。
【符号の説明】
【0092】
12 軟磁性裏打ち層
14 第1中間層
15 第2中間層
16−1 第1粒状記録層
16−2 第2粒状記録層
16−3 第3粒状記録層
17 強磁性金属層
100 磁気記録媒体
103 駆動メカニズム
102 磁気ヘッド
616−1 第1粒状記録層
616−2 第2粒状記録層
616−3 交換結合制御層
616−4 第3粒状記録層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気異方性(Ku)を有する第1粒状記録層と、
前記第1粒状記録層上方の第2粒状記録層であって、磁気異方性(Ku)を有する第2粒状記録層と、
前記第2粒状記録層上方の第3粒状記録層であって、磁気異方性(Ku)を有する第3粒状記録層と、
を有し、
Ku<Ku>Kuである、垂直磁気記録媒体。
【請求項2】
Ku<Kuである請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項3】
前記第1粒状記録層下方の中間層と、
前記中間層下方の軟磁性裏打ち層と、
前記第3粒状記録層上方の強磁性金属層と、
を更に有する請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項4】
前記強磁性金属層は、基本的に酸化物を含まず、且つ、前記第3粒状記録層の直接上部に位置しており、且つ、前記第1粒状記録層、前記第2粒状記録層、及び前記第3粒状記録層は、それぞれ、酸化物を有する請求項3に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項5】
少なくとも1つの磁気ヘッドと、
請求項1に記載の垂直磁気記録媒体と、
前記少なくとも1つの磁気ヘッドの上方において前記垂直磁気記録媒体を通過させる駆動メカニズムと、
前記少なくとも1つの磁気ヘッドの動作を制御するべく前記少なくとも1つの磁気ヘッドに電気的に結合されたコントローラと、
を有する磁気データストレージシステム。
【請求項6】
第1比率(X)における第1CoCrPt合金を有する第1粒状記録層であって、Xは、前記第1CoCrPt合金中におけるPtの濃度をCrの濃度で除算したものによって規定される、第1粒状記録層と、
前記第1粒状記録層上方の第2粒状記録層であって、前記第2粒状記録層は、第2比率(X)における第2CoCrPt合金を有し、Xは、前記第2CoCrPt合金中におけるPtの濃度をCrの濃度で除算したものによって規定される、第2粒状記録層と、
前記第2粒状記録層上方の第3粒状記録層であって、前記第3粒状記録層は、第3比率(X)における第3CoCrPt合金を有し、Xは、前記第3CoCrPt合金中におけるPtの濃度をCrの濃度で除算したものによって規定される、第3粒状記録層と、
を有し、
<X>Xである、垂直磁気記録媒体。
【請求項7】
<Xである請求項6に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項8】
前記第1粒状記録層内の前記Cr濃度は、約18at.%と約30at.%の間である請求項6に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項9】
前記第1粒状記録層下方の中間層と、
前記中間層下方の軟磁性裏打ち層と、
前記第3粒状記録層の直接上部の強磁性金属層と、
を更に有する請求項6に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項10】
前記中間層は、
前記軟磁性裏打ち層上方の第1中間層と、
前記第1中間層上方の第2中間層と、
を有する請求項9に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項11】
少なくとも1つの磁気ヘッドと、
請求項6に記載の垂直磁気記録媒体と、
前記少なくとも1つの磁気ヘッドの上方において前記垂直磁気記録媒体を通過させる駆動メカニズムと、
前記少なくとも1つの磁気ヘッドの動作を制御するべく前記少なくとも1つの磁気ヘッドに電気的に結合されたコントローラと、
を有する磁気データストレージシステム。
【請求項12】
第1粒状記録層と、
前記第1粒状記録層上方の第2粒状記録層と、
前記第2粒状記録層上方の交換結合制御層と、
前記交換結合制御層上方の第3粒状記録層と、
を有し、
前記交換結合制御層は、約300emu/cc以下の飽和磁化を有する、垂直磁気記録媒体。
【請求項13】
前記交換結合制御層内のCr濃度は、少なくとも約25at.%である請求項12に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項14】
前記第1粒状記録層は、磁気異方性(Ku)を有し、前記第2粒状記録層は、磁気異方性(Ku)を有し、且つ、前記第3粒状記録層は、磁気異方性(Ku)を有し、且つ、
Ku<Ku>Kuである請求項12に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項15】
Ku<Kuである請求項14に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項16】
前記第1粒状記録層は、第1比率(X)における第1CoCrPt合金を有し、Xは、前記第1CoCrPt合金中におけるPtの濃度をCrの濃度によって除算したものによって規定され、
前記第2粒状記録層は、第2比率(X)における第2CoCrPt合金を有し、Xは、前記第2CoCrPt合金中におけるPtの濃度をCrの濃度によって除算したものによって規定され、
前記第3粒状記録層は、第3比率(X)における第3CoCrPt合金を有し、Xは、前記第3CoCrPt合金中におけるPtの濃度をCrの濃度によって除算したものによって規定され、且つ、
<X>Xである請求項12に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項17】
<Xである請求項16に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項18】
前記第1粒状記録層内のCr濃度は、約18at.%と約30at.%の間である請求項12に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項19】
前記第1粒状記録層下方の軟磁性裏打ち層と、
前記軟磁性裏打ち層上方の第1中間層と、
前記第1中間層上方の第2中間層と、
前記第3粒状記録層の直接上部の強磁性金属層と、
を更に有し、
前記強磁性金属層は、基本的に酸化物を含まず、且つ、前記第3粒状記録層の直接上部に位置しており、且つ、
前記第1粒状記録層、前記第2粒状記録層、及び前記第3粒状記録層は、それぞれ、酸化物を有する請求項12に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項20】
少なくとも1つの磁気ヘッドと、
請求項12に記載の垂直磁気記録媒体と、
前記少なくとも1つの磁気ヘッドの上方において前記垂直磁気記録媒体を通過させる駆動メカニズムと、
前記少なくとも1つの磁気ヘッドの動作を制御するべく前記少なくとも1つの磁気ヘッドに電気的に結合されたコントローラと、
を有する磁気データストレージシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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