説明

偏光ダイバーシティを有するMM波の多入力多出力アンテナシステム

【課題】MIMO機能の性能が向上したアンテナ動作のためのシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】システムは、第1方向に偏光された第1信号を通信する第1アンテナエレメントと、第1アンテナエレメントと同一の場所に設置され、前記第1方向に直交する第2方向に偏光された第2信号を通信する第2アンテナエレメントと、第1アンテナエレメントおよび前記第2アンテナエレメントに連結され、前記第1信号および前記第2信号を処理して、無線通信リンクの信号ダイバーシティを達成するドライバ回路とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多入力多出力(MIMO)アンテナシステムに係り、より詳しくは、偏光ダイバーシティを有するミリ波(MM波)MIMOアンテナシステムに係る。
【背景技術】
【0002】
ラップトップ、ノートブック、ネットブック、携帯情報端末(PDA)およびモバイルフォン等の電子デバイスが、益々様々な無線通信機能を含むようになってきている。これらのデバイスが利用する無線通信システムは、例えばミリ波領域(特に60GHzの5から7GHz幅の無認可スペクトル帯域)等の高周波数通信スペクトル領域へも拡大利用されている。高周波数へ拡大利用されるようになった誘因の1つに、高精細ビデオ(マルチギガビットデータ速度を要するようなもの)等の用途において、高速データ速度が必要とされる、ということがある。
【0003】
MIMOアンテナシステムは、無線ネットワークにおけるデータスループットを増加させるために利用することができるが、従来のMIMOアンテナシステムでは、アンテナ間に十分なアイソレーションを提供して、空間ダイバーシティを保つために、十分な間隔を空けて設けられた別個のアンテナが必要となっていた。しかしながら高MM波周波数では伝播損失および減衰が大きくなりがちであり、アンテナ間が広く信号損失も大きい従来のMIMOアンテナシステムをデバイスプラットフォームに実装することは困難である。
【0004】
請求される主題の実施形態の特徴および利点は、以下の詳細な説明を、図面を参照しながら読むことで明らかになり、図面においては同様の参照番号が同様の部材を示している。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】本開示の1つの例示的な実施形態のシステムダイアグラムを示す。
【図2】本開示の別の例示的な実施形態のシステムダイアグラムを示す。
【図3】本開示の別の例示的な実施形態のシステムダイアグラムを示す。
【図4】本開示の別の例示的な実施形態のシステムダイアグラムを示す。
【図5】本開示の1つの例示的な実施形態のシステムブロックダイアグラムを示す。
【図6】本開示の1つの例示的な実施形態の処理のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の詳細な記載は、例示的な実施形態を参照して行われるが、当業者には数多くの代替物、変形例、および、変更例が明らかである。
【0007】
一般的には、本開示は、以下で詳述するように、複数の間隔が空けられたアンテナエレメントではなくてデュアル偏光アンテナエレメントを利用することで、MIMO機能の性能が向上したアンテナ動作のためのシステムおよび方法を提供している。デュアル偏光アンテナエレメントの直交偏光された水平および垂直チャネルの間には、2x2MIMO動作を行うことができる程度のアイソレーションを行うことができ、アンテナダイバーシティが得られるという利点もある。このシステムは、RFスペクトルのMM波領域で動作するように構成されている(特に、無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)および無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)通信システムの利用に関する60GHz領域)。空間的に離間されたアンテナエレメントを設ける必要性をなくすことにより、ドライバ回路からアンテナエレメントまでの送信経路長を短くすることができるようになり、これによって、さらにMM波周波数において特徴的な信号送信損失が低減する。
【0008】
一部の実施形態では、複数のデュアル偏光アンテナエレメントを、各MIMOチャネルにおいて同時ビーム走査を可能ならしめるフェーズドアレイ2x2MIMOアンテナに構成することができる。
【0009】
個人基本サービスセット制御ポイント(PCP)という用語は、ここでは、mm波ネットワークの制御ポイントとして動作する局(STA)として定義されている。
【0010】
ここで利用される「アクセスポイント(AP)」という用語は、STA機能を有し、且つ、関連するSTAに対して、無線媒体(WM)を介して配信サービスへのアクセスを提供する任意の実体のこととして定義される。
【0011】
ここで利用される「無線ネットワークコントローラ」という用語は、無線ネットワークのPCPおよび/またはAPとして動作する局として定義される。
【0012】
ここで利用される「指向性帯域(DBand)という用語は、チャネル開始周波数が45GHzを超える任意の周波数帯域のこととして定義される。
【0013】
ここで利用される「DBandSTA」という用語は、無線トランスミッタがDBand内にあるチャネル上で動作するSTAのこととして定義される。
【0014】
ここで利用される「個人基本サービスセット(PBSS)」という用語は、暫定的な内蔵式のネットワークを形成し、DBandで動作し、1つのPBSS制御ポイント(PCP)を含み、配信システム(DS)へのアクセスは存在しないが、イントラPBSS転送サービスがオプションとして存在するような基本サービスセット(BSS)として定義される。
【0015】
ここで利用される「スケジュールされたサービス期間(SP)」は、サービス品質(QoS)APまたはPCPによりスケジュールされる。スケジュールされたSPは、所望の場合には、固定時間間隔で始まってよい。
【0016】
ここで利用される「トラフィック」および/または「トラフィックストリーム」という用語は、STA等の無線デバイス間のデータフローおよび/またはストリームとして定義される。ここで利用される「セッション」という用語は、直接物理リンク(例えば転送を除く)が既に構築されている一対の局に維持または格納されている状態情報として定義され、この状態情報はセッションを記述または定義するものであってよい。
【0017】
ここで利用する「無線デバイス」という用語は、例えば、無線通信のできるデバイス、無線通信のできる通信デバイス、無線通信のできる通信局、無線通信のできるポータブルまたは非ポータブルデバイス等であってよい。一部の実施形態では、無線デバイスとは、コンピュータに統合された周辺デバイスであったり、これを含んだりするものであってよく、または、コンピュータに取り付けられた周辺デバイスであったり、これを含んだりするものであってよい。一部の実施形態では、「無線デバイス」という用語は、無線サービスをオプションとして含む概念であってよい。
【0018】
本発明は、様々な用途に利用可能であることを理解されたい。本発明はこの点に限定はされないが、ここに開示する回路および技術は、無線システムの局等の様々な装置内で利用することができる。本発明の範囲内に含まれることが意図される局は、あくまで例であるが、WLAN局、無線パーソナルネットワーク(WPAN)等を含む。
【0019】
本発明の範囲内に含まれることが意図される種類のWPAN局は、これらに限定はされないが、マルチバンドステーションとして動作可能な局、PCPとして動作可能な局、APとして動作可能な局、DBand局として動作可能な局、移動局、アクセスポイント、例えば周波数ホッピング方式信号(FHSS)、直接拡散方式(DSSS)、相補的符号化キーイング(CCK)、直交周波数分割多重(OFDM)等の拡散スペクトル信号を受信および送信する局等を含む。
【0020】
一部の実施形態は、様々なデバイスおよびシステム(例えば、ラップトップコンピュータのドッキングステーション、ネットワークインタフェースカード(NIC)、ビデオデバイス、オーディオデバイス、オーディオ−ビジュアル(A/V)デバイス、セットトップボックス(STB)、Blu−ray(登録商標)ディスク(BD)プレーヤ、BDレコーダ、DVDプレーヤ、高精細(HD)DVDプレーヤ、DVDレコーダ、HD DVDレコーダ、パーソナルビデオレコーダ(PVR)、ブロードキャストHDレシーバ、ビデオソース、オーディオソース、ビデオシンク、オーディオシンク、ステレオチューナ、ブロードキャスト無線レシーバ、ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、パーソナルメディアプレーヤ(PMP)、デジタルビデオカメラ(DVC)、デジタルオーディオプレーヤ、スピーカ、オーディオレシーバ、オーディオ増幅器、データソース、データシンク、デジタル静止カメラ(DSC)、パーソナルコンピュータ(PC)、デスクトップコンピュータ、モバイルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ノートブックコンピュータ、タブレットコンピュータ、サーバコンピュータ、ハンドヘルドコンピュータ、スマートフォン、タッチフォン、ハンドヘルドデバイス、携帯情報端末(PDA)デバイス、ハンドヘルドPDAデバイス、オンボードデバイス、オフボードデバイス、ハイブリッドデバイス、車両デバイス、非車両デバイス、モバイルまたはポータブルデバイス、消費者用デバイス、非モバイルまたは非ポータブルデバイス、無線通信局、無線通信デバイス、無線アクセスポイント(AP)、有線または無線ルータ、有線または無線モデム、有線または無線ネットワーク、無線エリアネットワーク、無線ビデオエリアネットワーク(WVAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、無線LAN(WLAN)、パーソナルエリアネットワーク(PAN)、無線PAN(WPAN)、Wireless HD(登録商標)および/または無線ギガビットアライアンス(WGA)仕様および/または将来のバージョンおよび/またはこれらの派生物、既存のIEEE802.11(IEEE802.11―19992007:無線LAN媒体アクセス制御(MAC)および物理層(PHY)仕様)規格および修正版(「IEEE802.11規格」)、WiMAX(WorldInteroperability for Microwave Access)用のIEEE802.16規格、ロングタームエボリューション(LTE)およびロングタームエボリューション−アドバンスト(LTE−A)を含む第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)、および/または、その将来のバージョンおよび/または派生物に従って動作するデバイスおよび/またはネットワークとの関連で利用されてよい。
一部の実施形態は、また、上述したネットワークの一部であるユニットおよび/またはネットワーク、一方向および/または双方向無線通信システム、セルラー式無線電話通信システム、無線ディスプレイ(WiDi)デバイス、セルラー式電話機、無線電話機、パーソナル通信システム(PCS)デバイス、無線通信デバイスを含むPDAデバイス、モバイルまたはポータブルグローバルポジショニングシステム(GPS)デバイス、GPSレシーバまたはトランシーバまたはチップを含むデバイス、RFID素子またはチップを含むデバイス、多入力多出力(MIMO)トランシーバまたはデバイス、単一入力多出力(SIMO)トランシーバまたはデバイス、多入力単一出力(MISO)トランシーバまたはデバイス、1以上の内部アンテナおよび/または外部アンテナを有するデバイス、デジタルビデオブロードキャスト(DVB)デバイスまたはシステム、多重標準の無線デバイスまたはシステム、有線または無線ハンドヘルドデバイス(例えばBlackBerry,Palm Treo等)、無線アプリケーションプロトコル(WAP)デバイス等との関連で利用されてもよい。
【0021】
一部の実施形態は、1以上の種類の無線通信信号および/またはシステム(例えば無線周波数(RF)、赤外線(IR)、周波数分割多重(FDM)、直交FDM(OFDM)、時分割多重(TDM)、時分割多重接続(TDMA)、拡張TDMA(E−TDMA)、汎用パケット無線サービス(GPRS)、拡張GPRS、符号分割多重接続(CDMA)、ワイドバンドCDMA(WCDMA)、CDMA2000、シングルキャリアCDMA、マルチキャリアCDMA、マルチキャリア変調(MDM)、離散マルチトーン(DMT)、Bluetooth(登録商標)、グローバルポジショニングシステム(GPS)、Wi−Fi、Wi−Max、ZigBee(登録商標)、Ultra−Wideband(UWB)、モバイル通信用のグローバルシステム(GSM(登録商標))、2G、2.5G,3G、3.5GのEDGE(Enhanced Data rates for GSM(登録商標) Evolution:GSM(登録商標)進化に関する向上データレート等)とともに利用することができる。他の実施形態は、様々な他のデバイス、システム、および/または、ネットワークで利用することができる。
【0022】
一部の実施形態は、適切な限られた範囲または短距離の無線通信ネットワーク(例えば「ピコネット」、無線エリアネットワーク、WPAN、WVAN等)とともに利用することもできる。
【0023】
図1は、本開示の1つの例示的な実施形態のシステムダイアグラム100を示す。デュアル偏光アンテナエレメント102は、直交偏光信号110および112を送受信する。信号110および112は、水平および垂直偏光されるものとして称される場合もあるが、これらの用語は信号110および112が、任意の特定の基準となる座標系に対して水平または垂直であるという意味ではなくて、これら同士が互いに直交している、ということを示している。一部の実施形態では、直交偏光信号110および112は、それぞれ右円偏光および左円偏光であってよい。デュアル偏光アンテナエレメント102は、ドライバ回路104に連結されており、ドライバ回路104は信号110および112を、送信経路106および108を介して提供するよう構成されている。アンテナシステム100は、このように、チャネル間が十分に電磁的アイソレーションされていることにより、水平および垂直偏光信号用の別個のチャネルを提供して、アンテナシステムを2x2MIMOアンテナとして動作させることができる(つまり、RF無線チャネル114に2つの入力があり、RF無線チャネル116に2つの出力がある)。
【0024】
MIMOアンテナは、第1経路から独立したフェージング特性を受ける、RF無線チャネル114からの第2ダイバーシティ経路を提供することで、データレートを上げ、範囲を広げることができる。従来のMIMOアンテナシステムでは、このダイバーシティは、2つのアンテナの空間分離により達成される(2x2MIMOの場合)。しかし本開示における一実施形態では、このダイバーシティをデュアル偏光により達成することができる。この方法により、水平および垂直偏光チャネル同士を単一のアンテナエレメント102という同一の場所に設置することができる、という利点が得られる。ここで利用する「同一の場所への設置」という用語は、記載される2つの実体を、実質的に空間的に同じ地点に設置する、という意味であり、必ずしも完全に同じ地点である必要はない。アンテナエレメント同士を互いから離間させる必要がなくなるために、ドライバ回路104からアンテナエレメント102までの送信経路長を短くすることができ、ひいては、MM波周波数で顕著となりうる信号送信損失を低減させることができるようになる。
【0025】
一部の実施形態では、ドライバ回路104は、無線周波数集積回路(RFIC)であってよい。ドライバ回路104およびアンテナエレメント102は、RFスペクトルのMM波領域(特に、無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)および無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)の利用に関連した60GHz領域)で動作するよう構成されていてよい。水平および垂直チャネル間の電磁的アイソレーションは、15デシベル(dB)以上であってよい。このレベルのアイソレーションは、水平および垂直チャネルのアンテナエレメント供給線の間の距離を広げることにより達成することができる。
【0026】
図2は、本開示の別の例示的な実施形態のシステムダイアグラムを示す。複数のデュアル偏光アンテナエレメント102a、102b等は、各MIMOチャネルで同時にビーム走査を行うことのできる、フェーズドアレイ2x2MIMOアンテナ202に構成されていてよい。デュアル偏光アンテナエレメント102a、102b等は、ドライバ回路104に連結されており、ドライバ回路104は、アンテナエレメント102aには送信経路106aおよび108aを介して、アンテナエレメント102bには送信経路106bおよび108bを介して、というように、それぞれ別個の信号チャネルを提供する。アンテナシステム200は、このように、アンテナエレメント102a、102b等それぞれに対して別個の水平および垂直チャネルを提供して、水平チャネル上の信号を、垂直信号上の信号から独立させることができる。システムは、チャネル間に十分な電磁的アイソレーションを提供することにより、アンテナを2x2MIMOフェーズドアレイアンテナとして動作させることができる。この2x2MIMOフェーズドアレイアンテナシステム200は、送受信両方について2つの独立した走査ビームを生成することができる。ビーム走査は、以下で詳述するように、各アンテナエレメント102a、102bそれぞれの偏光に関する位相遅延を制御することで行われる。
【0027】
一部の実施形態では、フェーズドアレイアンテナシステム200は、フェーズドアレイのエッジ部の一部または全てにダミーアンテナエレメント204を含んでよい。ダミーアンテナエレメント204は、送信線の特徴的なインピーダンスに整合する終端インピーダンスを提供することで、送信経路の端部におけるRF信号の反射を低減させる終端負荷抵抗(termination load resistor)であってよい。これにより、ビームが異なる角度で走査されるので、フェーズドアレイの周波数および帯域幅特性が安定性を増すことができる。
【0028】
図3は、本開示の別の例示的な実施形態のシステムダイアグラム300を示す。フェーズドアレイアンテナシステム200は、フェーズドアレイアンテナ202のアンテナエレメント102の水平および垂直偏光チャネルが生成する、独立して走査された302および304とともに示されている。ビーム302および304は、任意の方向を向いているとして図示されており、実際にも任意の方向へと走査されうる。場合によってはビーム302および304が同じ方向を向いていてもよい。こうすると、通信線が既知の位置にある特定の実体に向けられているような同じ送受信の見通し内という条件下で動作する際などに好適である。フェーズドアレイアンテナ202では任意の好適な数のアンテナエレメントを利用することができる。一般的にはアンテナ202の利得は、アンテナエレメント102の数が増えるに連れて増加する。
【0029】
図4は、本開示の別の例示的な実施形態のシステムダイアグラム400を示す。アンテナシステム202は、プラットフォーム上に配置されているものとして示されている。プラットフォーム402は、この図ではラップトップコンピュータとして示されているが、ノートブック、タブレット、ネットブック、携帯情報端末(PDA)、モバイルフォン、スマートフォン、ネットワークハブ等の任意のデバイス、その他の無線通信機能を有することが望ましい任意のデバイスであってよい。アンテナシステム202は、プラットフォーム402の蓋404に位置しているが、プラットフォーム402の任意の好適な位置に配置することもできる。一部の実施形態では、アンテナシステム202は、プラットフォーム402の内側の面または部分に配置されてもよい。アンテナシステム202は、電気的接続または送信経路406を通じてRFIC104に連結されるとして示されている。走査されたビーム302および304も示されている。
【0030】
一部の実施形態では、複数のプラットフォーム402を、WWANまたはWMANにより通信するとして示している。各プラットフォームが、無線機として動作して、ネットワークダイバーシティを提供することができる。
【0031】
図5は、本開示の1つの例示的な実施形態のシステムブロックダイアグラム500を示す。図には、フェーズドアレイアンテナエレメントとして設計することができるアンテナエレメント102a、102b等が示されている。ベースバンド集積回路(BBIC)モジュール502は、双方向回路であり、送受信両方を行うよう構成されていてよい。送信方向においては、IF信号504がBBIC502から提供されてよい。RFキャリアは、RFキャリア生成器508により生成されて、ミキサ506によりIF信号504とミキシングされて、IF信号をRF信号へとアップコンバートする。ミキサ506は、パッシブな双方向ミキサであってよい。RF信号は、双方向増幅器510により増幅されてから、フェーズドアレイアンテナシステムに連結されてよい。フェーズドアレイアンテナシステムは、方向を調節可能なように、走査されたビームパターンでRF信号を送信する。こうするために、RF信号をスプリッタ/結合器514を利用して分割して、複数のトランシーバ516に供給する。各トランシーバ516は、該トランシーバ516に供給された、分割されているRF信号の位相を独立して調節することのできる位相シフタ518により構成されている。位相をシフトされたRF信号はさらに電力増幅器(PA)520により増幅されて、特定のトランシーバ516に関連付けられているアンテナエレメント102a、102b等に供給される。
【0032】
位相シフタ518は、フェーズドアレイコントローラ524の制御下にあり、フェーズドアレイコントローラ524は、各トランシーバ516の位相シフト調節のタイミングおよび量を制御する。各アンテナエレメント102a、102bにより送信された、分割されているRF信号それぞれの位相を独立して調節することにより、建設的および破壊的な干渉パターンがアンテナエレメント102a、102の間に生成されて、この結果、特定の方向へのステアリングが可能な所望の形状のビームパターンを形成することができる。位相調節をリアルタイムに変更することにより、結果生じる送信ビームパターンを所望の範囲の方向に走査することができる。一部の実施形態では、フェーズドアレイコントローラ524は、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、プログラム可能ロジックまたはファームウェアであってよい。
【0033】
同様のプロセスは受信方向でも利用可能である。各アンテナエレメント102、102bは、フェーズドアレイコントローラ524の制御の下で、自身に関連付けられているトランシーバ516が処理したRF信号を受信して、低ノイズ増幅器(LNA)520により増幅して、位相シフタ518により位相シフトする。各トランシーバ516の出力は、スプリッタ/結合器514により結合される。異なる方向から到着した受信RF信号は、通常は、異なる時点に各アンテナエレメント102a、102bに到達する。位相シフトは、時間シフトと均等の概念であり、これにより、特定の方向から到達する受信RF信号間の時間的整合をとりつつ、他の方向から到達する受信RF信号にはこのような整合を行わない、ということができる。スプリッタ/結合器514による結合の結果、特定の方向から到達した信号について時間的整合をとったコンポーネントに利得が生じる。これにより、その方向にビームパターン利得が生じる。位相調節をリアルタイムに変更することにより生成される受信ビームパターンは、所望の方向の範囲で走査することができる。
【0034】
フェーズドアレイアンテナシステムから受信されるRF信号は、さらに、双方向増幅器510による増幅を受けてから、ミキサ506により、RFキャリア生成器508が生成したRFキャリアとミキシングされ、RF信号が出力IF信号504へとダウンコンバートされ、ベースバンド処理のためにBBIC502に送信される。
【0035】
上述したプロセスにより、送信経路106a、106b等から得られた水平偏光された信号を処理することができる。同じ、または同様のプロセスを独立して、略同時に実行することで、送信経路108a、108b等から得られた垂直偏光された信号を処理することができる。従って、各アンテナエレメント102a、102bは、水平および垂直チャネルに対して独立した位相遅延を持ち、水平および垂直偏光信号に別々のビーム走査を行うことができる。
【0036】
一部の実施形態では、システムは、57−60GHzの周波数範囲のRF信号、および、11.4−13.2GHzの周波数範囲のIF信号に対して処理を行うよう構成されている。ベースバンド信号は、約2GHzの範囲であってよい。
【0037】
図6は、本開示の1つの例示的な実施形態の処理600のフローチャートを示す。処理610で、第1アンテナエレメントが、第1方向に偏光された第1信号を通信するよう設定される。処理620で、第2アンテナエレメントを第1アンテナエレメントと同一の場所に設置する。第2アンテナエレメントは、第1方向に直交する第2方向に偏光された第2信号を通信するよう設定される。処理630で、ドライバ回路が、第1および第2のアンテナエレメントに連結される。ドライバ回路は、第1および第2の信号を処理して、無線通信リンクにおける信号ダイバーシティを達成する。
【0038】
ここに記載する方法の実施形態は、1以上のプロセッサにより実行されると、独立してまたは組み合わせで、方法を実行する命令を格納する1以上の格納媒体を含むシステムに実装されてよい。ここで、例えばプロセッサは、システムCPU(例えばコアプロセッサ)および/またはプログラム可能回路を含んでよい。従って、ここに記載する方法による処理は、複数の物理デバイス(例えば幾つかの異なる物理位置にある複数の処理構造等)に分散されてよい。さらに、当業者であれば理解するように、方法における各処理は、個々にまたはサブコンビネーションとして実行することもできる。従って、各フローチャートの処理全てを実行する必要はなく、本開示により、これら処理の全てのサブコンビネーションが可能であることは当業者には明らかである点を強調する。
【0039】
格納媒体は、フロッピー(登録商標)ディスク、光ディスク、CD−ROM、CD−RW、DVD−ROM、および磁気光ディスク等の任意の種類のディスク、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)(ダイナミックおよびスタティックRAM等)、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、磁気カードまたは光カード等の半導体デバイス、または、電子命令を格納する目的に適した任意の種類の媒体等の任意の種類の有形媒体を含んでよい。本実施形態で利用される「回路」という用語は、例えば、ハードワイヤ回路、プログラム可能回路、ステートマシン回路、および/または、プログラム可能回路が実行する命令を格納するファームウェアを単独または組み合わせで含んでよい。
【0040】
ここで利用した用語および表現は、記載を目的として利用されており、限定は意図しておらず、これら用語および表現を利用していても、記載図示される均等物を排除する意図はなく、請求項の範囲で数多くの変形例が可能であると認識される。従って請求項はこれらの均等物をも含むことを意図している。様々な特徴、態様、および実施形態を記載してきた。これらの特徴、態様、および実施形態は、当業者であれば理解するように、互いに組み合わせが容易であり、各種の変更および変形も容易である。従って本開示は、これらの組み合わせ、変形例、および変更例を全て含むものとして理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に偏光された第1信号を通信する第1アンテナエレメントと、
前記第1アンテナエレメントと同一の場所に設置され、前記第1方向に直交する第2方向に偏光された第2信号を通信する第2アンテナエレメントと、
前記第1アンテナエレメントおよび前記第2アンテナエレメントに連結され、前記第1信号および前記第2信号を処理して、無線通信リンクの信号ダイバーシティを達成するドライバ回路と
を備えるシステム。
【請求項2】
前記第1方向は水平であり、前記第2方向は垂直である請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1方向は右円偏光であり、前記第2方向は左円偏光である請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
ミリ波周波数範囲で動作する請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1信号と前記第2信号の間に少なくとも15dBのアイソレーションを提供する請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ドライバ回路は、無線周波数集積回路(RFIC)である請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記ドライバ回路に連結されるプロセッサと、前記プロセッサに連結されるメモリと、前記プロセッサに連結されるユーザインタフェースとを含むプラットフォームをさらに備える請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記プラットフォームは、スマートフォン、タブレットまたはラップトップコンピューティングデバイスのいずれかである請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記ユーザインタフェースはタッチスクリーンである請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
各デュアル偏光アンテナエレメントが水平偏光エレメントと垂直偏光エレメントとを含む複数のデュアル偏光アンテナエレメントを含むフェーズドアレイアンテナと、
前記水平偏光エレメントおよび前記垂直偏光エレメントのそれぞれに連結され、前記水平偏光エレメントのそれぞれの間、および、前記垂直偏光エレメントのそれぞれの間に位相オフセットを提供するドライバ回路と
を備えるシステム。
【請求項11】
前記ドライバ回路は、前記水平偏光エレメントのそれぞれおよび前記垂直偏光エレメントのそれぞれに独立して調節可能な位相遅延を提供する複数のトランシーバを有する請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記複数のトランシーバは、前記水平偏光エレメントのそれぞれの前記調節可能な位相遅延を制御することで、第1フェーズドアレイビームの走査を実装して、前記垂直偏光エレメントのそれぞれの前記調節可能な位相遅延を制御することで、第2フェーズドアレイビームの走査を実装する請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1フェーズドアレイビームの走査および前記第2フェーズドアレイビームの走査により、無線通信リンクの信号ダイバーシティが提供される請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
ミリ波の周波数範囲で動作する請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記水平偏光エレメントと前記垂直偏光エレメントとの間に少なくとも15dBのアイソレーションを提供する請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記ドライバ回路はRFICである請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
前記ドライバ回路に連結されるプロセッサと、前記プロセッサに連結されるメモリと、前記プロセッサに連結されるユーザインタフェースとを含むプラットフォームをさらに備える請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
前記プラットフォームは、スマートフォン、タブレットまたはラップトップコンピューティングデバイスのいずれかである請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記ユーザインタフェースはタッチスクリーンである請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
それぞれが無線ワイドエリアネットワーク(WWAN)を介して通信する複数の前記プラットフォームをさらに備える請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
それぞれが無線メトロポリタンエリアネットワーク(WMAN)を介して通信する複数の前記プラットフォームをさらに備える請求項17に記載のシステム。
【請求項22】
第1方向に偏光された第1信号を通信する第1アンテナエレメントを設定する段階と、
前記第1方向に直交する第2方向に偏光された第2信号を通信する第2アンテナエレメントを、前記第1アンテナエレメントと同一の場所に設置する段階と、
前記第1信号および前記第2信号を処理して、無線通信リンクの信号ダイバーシティを達成するドライバ回路を、前記第1アンテナエレメントおよび前記第2アンテナエレメントに連結する段階と
を備える方法。
【請求項23】
前記第1方向は水平であり、前記第2方向は垂直である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1方向は右円偏光であり、前記第2方向は左円偏光である請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記第1アンテナエレメント、前記第2アンテナエレメント、および、前記ドライバ回路を、ミリ波周波数範囲で動作するよう設定する段階をさらに備える請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記第1アンテナエレメントと前記第2アンテナエレメントとを、前記第1信号と前記第2信号の間に少なくとも15dBのアイソレーションを提供するよう設定する段階をさらに備える請求項22に記載の方法。
【請求項27】
複数の前記第1アンテナエレメントおよび複数の前記第2アンテナエレメントをフェーズドアレイアンテナに設定する段階と、
前記ドライバ回路を、前記複数の第1アンテナエレメントのそれぞれの間、および、前記複数の第2アンテナエレメントのそれぞれの間に位相オフセットを提供するよう設定する段階と
をさらに備える請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記複数の第1アンテナエレメントのそれぞれおよび前記複数の第2アンテナエレメントのそれぞれに独立して調節可能な位相遅延を提供するよう、前記ドライバ回路に関連付けられた複数のトランシーバを設定する段階をさらに備える請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記複数の第1アンテナエレメントのそれぞれの前記調節可能な位相遅延を制御することで、第1フェーズドアレイビームの走査を実装して、前記複数の第2アンテナエレメントのそれぞれの前記調節可能な位相遅延を制御することで、第2フェーズドアレイビームの走査を実装する段階をさらに備える請求項28に記載の方法。
【請求項30】
第1方向に偏光された第1信号を通信する第1アンテナエレメントと、
前記第1アンテナエレメントと同一の場所に設置され、前記第1方向に直交する第2方向に偏光された第2信号を通信する第2アンテナエレメントと、
前記第1アンテナエレメントに連結された第1アンテナ供給線と、
前記第2アンテナエレメントに連結された第2アンテナ供給線と
を備え、
前記第1アンテナ供給線からの距離が予め決定された閾値を超えた値に維持されるように前記第2アンテナ供給線の経路を設定するダイバーシティアンテナ。
【請求項31】
前記予め決定された閾値においては、前記第1アンテナエレメントと前記第2アンテナエレメントの間に、少なくとも15dBのアイソレーションが提供される請求項30に記載のダイバーシティアンテナ。
【請求項32】
前記第1方向は水平であり、前記第2方向は垂直である請求項30に記載のダイバーシティアンテナ。
【請求項33】
前記第1方向は右円偏光であり、前記第2方向は左円偏光である請求項30に記載のダイバーシティアンテナ。
【請求項34】
ミリ波周波数範囲で動作する請求項30に記載のダイバーシティアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−231446(P2012−231446A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−10984(P2012−10984)
【出願日】平成24年1月23日(2012.1.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WCDMA
【出願人】(591003943)インテル・コーポレーション (1,101)
【Fターム(参考)】