説明

偏光フィルム、偏光フィルム用PVA系樹脂フィルム及び偏光フィルムの製造方法

【課題】染色を短時間で行うことができ、高い生産性で生産することが可能な偏光フィルムを提供する。
【解決手段】PVA系共重合体からなるPVA系樹脂フィルムに染色及び延伸を施してなる偏光フィルムであって、前記PVA系共重合体が、ビニルエステルモノマーと、ビニルアミン、N−ビニルカルボン酸アミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩からなる群から選択された少なくとも1種のコモノマーとを共重合して得られるポリマーをけん化することにより、得られた共重合体である、偏光フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコール(以下、PVA)系樹脂フィルムからなる偏光フィルムに関し、より詳細には、短時間の染色工程を経て得ることができる偏光フィルム、該偏光フィルム用PVA系樹脂フィルム及び偏光フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置などにおいては、PVA系樹脂フィルムを用いて形成された偏光フィルムが広く用いられている。
【0003】
PVA系樹脂を用いた偏光フィルムの製造に際しては、PVA系樹脂フィルムを一軸延伸し、次に染色し、しかる後、ホウ素化合物で固定化処理を行う。あるいは、PVA系樹脂フィルムを染色した後一軸延伸し、次にホウ素化合物で固定処理を行う。
【0004】
例えば、下記の特許文献1には、このようなPVA系樹脂フィルムを用いた偏光フィルム及びその製造方法が開示されている。特許文献1では、フィルム幅が2m以上であり、幅方向に1cm離れた2点間のレターデーション差が5nm以下であり、かつ幅方向に1m離れた2点間のレターデーション差が50nm以下であるPVA系樹脂重合体フィルムが開示されている。このPVA系樹脂重合体フィルムでは、色むらが少なく、均一な延伸が可能であるとされている。
【0005】
また、偏光フィルムでは、優れた偏光性能を有することが強く求められている。そのため、特許文献1では、用いるPVAとして、けん化度が95モル%以上が好ましく、特に99.5モル%以上であることが望ましいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3422759号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のような従来のPVA系樹脂を用いた偏光フィルムの製造に際しては、ヨウ化カリウム水溶液などを用いて染色した後に一軸延伸し、あるいは一軸延伸した後ヨウ化カリウム水溶液などを用いて染色処理を施す。また、染色及び延伸後に、ホウ酸水溶液を用いて固定化処理を行っていた。この場合、染色や固定化処理に比較的長い時間を要していた。従って、偏光フィルムの生産性が低いという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、短時間の染色工程により得ることができる偏光フィルム及び偏光フィルムの生産性を高め得る偏光フィルム用PVA系樹脂フィルム及び偏光フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る偏光フィルムは、PVA系共重合体からなるPVA系樹脂フィルムに染色及び延伸を施すことにより得られたものである。本発明において、上記PVA系共重合体は、ビニルエステルモノマーと、ビニルアミン、N−ビニルカルボン酸アミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩からなる群から選択された少なくとも1種のコモノマーとを共重合し得られるポリマーをけん化することにより得られるものである。
【0010】
本発明の他の広い局面では、上記偏光フィルムを得るための偏光フィルム用PVA系樹脂フィルムも提供され、該PVA系樹脂フィルムは、ビニルエステルモノマーと、ビニルアミン、N−ビニルカルボン酸アミド、(メタ)アクリル酸アミドプロパンスルホン酸及びその塩からなる群から選択された少なくとも1種のコモノマーとを共重合して得られるポリマーをけん化することにより得られた樹脂からなる偏光フィルム用のPVA系樹脂フィルムである。
【0011】
本発明に係る偏光フィルムの製造方法は、本発明に係る偏光フィルム用PVA系樹脂フィルムを染色する工程と、前記PVA系樹脂フィルムを延伸する工程とを備える。
【0012】
本発明に係る偏光フィルムの製造方法では、上記延伸工程は、染色工程の後に行われてもよく、また、上記延伸工程は、染色工程と同じ工程で、あるいは染色工程より前に行われてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る偏光フィルムは、上記ビニルエステルモノマーと、ビニルアミン、N−ビニルカルボン酸アミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩からなる群から選択された少なくとも1種のコモノマーとを共重合してなるポリマーをけん化することにより得られたPVA系共重合体を用いているため、偏光フィルム製造に際しての染色性を著しく高めることができる。従って、染色に要する時間を大幅に短縮し得るので、偏光フィルムの生産性を大幅に高めることが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る偏光フィルム用PVA系樹脂フィルムは、上記特定のPVA系共重合体をけん化することにより得られた樹脂からなるため、染色性に優れている。そのため、偏光フィルムの製造に際しての染色に必要な時間を大幅に短くすることができ、偏光フィルムの生産性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0016】
本発明においては、上記ビニルエステルモノマーと、ビニルアミン、N−ビニルカルボン酸アミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩からなる群から選択した少なくとも1種のコモノマーとを共重合して得られるポリマーをけん化することにより得られたPVA系共重合体が用いられる。
【0017】
上記ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニルなどを用いることができる。
【0018】
上記コモノマーは、ビニルアミン、N−ビニルカルボン酸アミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩からなる群から選択された少なくとも1種である。そのため、得られたPVA系共重合体は、コモノマーに由来するユニットを有するため、染色の吸着性に優れ、染色速度を大幅に高めることができる。よって、染色工程の必要な時間を大幅に短縮することができる。すなわち、本発明は、上記特定のPVA系共重合体を用いることにより、偏光フィルム製造に際しての染色工程の短縮化、さらには、染色後の固定処理の短縮化を図ることに特徴を有する。
【0019】
コモノマーが、ビニルアミン、N−ビニルカルボン酸アミド及び(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸ナトリウムの場合の上記PVA系共重合体の構造の例をそれぞれ下記の化学式(1)〜(3)に示す。
【0020】
【化1】

【0021】
【化2】

【0022】
【化3】

【0023】
上記PVA系共重合体におけるコモノマー由来のユニットは、上記PVA系共重合体を得るモノマー組成100モル%中、1〜10モル%の範囲にあることが好ましい。上記コモノマー由来のユニットが少な過ぎると、染色時間を十分に短縮することができないことかあり、多過ぎると、偏光性能などの光学性能が十分でない場合がある。より好ましくは、上記コモノマー由来のユニットの占める割合は、1〜6モル%、さらに好ましくは1〜5モル%の範囲である。
【0024】
上記PVA系共重合体の重合度は特に限定されないが、好ましくは、1000〜4000、より好ましくは1500〜3000、さらに好ましくは1800〜3000の範囲である。重合度が低すぎると、偏光フィルムの強度が低下することがあり、重合度が高すぎると、溶媒に対する溶解性が低くなり、溶液流延による成膜が困難となる場合がある。なお、上記重合度が、JIS K6726に準拠して測定することができる。
【0025】
上記PVA系共重合体からなる樹脂フィルムを用意するに際しては、上記PVA系共重合体を適宜の方法で成膜する方法を用いることができる。好ましくは、支持フィルム上において、PVA系共重合体と、溶媒とを含むPVA系共重合体溶液を流延し、乾燥する方法が用いられる。このような溶媒としては、上記PVA系共重合体を溶解し得る限り特に限定されるものではない。このような溶媒としては、例えば、水、ジメチルスルオキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、グリセリンなどを挙げることができる。これらの溶媒の1種または2種以上を用いることができる。なかでも、水、水とグリセリンとの混合溶媒、ジメチルスルオキシドが、PVA系共重合体の溶解に優れているため、好適に用いられる。
【0026】
なお、上記PVA系共重合体溶液中には、必要に応じて、可塑剤、界面活性剤などを含有させておいてもよい。
【0027】
上記可塑剤としては、特に限定されないが、多価アルコールが好適に用いられる。このような多価アルコールとしては、上記溶剤としても用いられる、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコールなどを挙げることができる。このような多価アルコールは1種のみが添加されてもよく、2種以上が添加されてもよい。延伸性を高めるためには、ジグリセリン、エチレングリコール及びグリセリンが好ましい。
【0028】
上記多価アルコールの添加量は、PVA系共重合体100重量部に対し1〜25重量部が好ましい。1重量部未満では、染色性や延伸性が低下するおそれがあり、25重量部を超えると、PVA系樹脂フィルムが柔軟になりすぎ、染色や延伸に際しての取扱い性が低下するおそれがある。上記界面活性剤としては、特に限定されず、適宜のアニオン性またはノニオン性の界面活性剤を好適に用いることができる。
【0029】
上記PVA系共重合体溶液におけるPVA系共重合体の濃度は、特に限定されないが、5〜60重量%であることが望ましい。より好ましくは、10〜55重量%である。PVA系共重合体の濃度が低すぎると、乾燥に長時間を必要とし、良好な膜質のPVA系樹脂フィルムを得ることが困難となることがあり、高すぎると、溶液流延が困難となることがある。
【0030】
上記溶液流延に際し用いられる支持フィルムとしては、溶液流延に際しPVA系共重合体溶液を表面に維持し、かつPVA系樹脂フィルムを支持し得る限り特に限定されない。このような支持フィルムを構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル系樹脂などを挙げることができる。
【0031】
上記溶液流延により支持フィルム上に形成されるPVA系樹脂フィルムの厚みは、偏光フィルムを得るためには、延伸後の厚みが10〜200μmの範囲とすることが望ましい。
【0032】
また、溶液流延後の乾燥については、自然乾燥、PVA系共重合体のTg以下の温度での加熱乾燥などの適宜の方法を用いることができる。
【0033】
上記PVA系共重合体の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法に従ってビニルエステルモノマーと上記コモノマーとが所定の割合になるように配合してなるモノマー組成を重合することにより得ることができる。また、上記のようにして得られたPVA系共重合体をけん化してなるポリマーを成膜することにより、本発明の偏光フィルム用PVA系樹脂フィルムを得ることができる。
【0034】
けん化度は、好ましくは、JIS K6726に準拠して測定された値で、92〜98.5モル%の範囲が好ましい。けん化度が低過ぎると、所望の光学性能を得ることができないことがあり、高過ぎると、染色性を十分に高め得ることができないことがある。
【0035】
(偏光フィルムの製造)
本発明の偏光フィルムの製造方法では、上記PVA系樹脂フィルムを染色する工程と、PVA系樹脂フィルムを延伸する工程と、固定処理工程とを備える。この場合、染色後または染色と同じ工程で延伸してもよく、延伸後に染色してもよい。
【0036】
PVA系樹脂フィルムの染色に際しては、適宜の染料を用いることができる。このような染料としては、ヨウ素−ヨウカリウム、ダイレクトブラック17,19,154、ダイレクトブラウン44,106,195,210,223、ダイレクトレッド2,23,28,31,37,39,79,81,210,242,247、ダイレクトブルー1,15,22,78,90,08,151,158,202,236,249,270、ダイレクトバイオレット9,12,51,98、ダイレクトグリーン1,85、ダイレクトイエロー8,12,44,86,87、ダイレクトオレンジ26,39,106,107などの二色性染料を用いることができる。上記染料は1種のみを用いてもよく、2種以上の染料を併用してもよい。
【0037】
染色に際しては、上記染料を含有する染料溶液中にPVA系樹脂フィルムを浸漬すればよい。もっとも、PVA系樹脂フィルム上に染料溶液を塗工してもよい。
【0038】
また、溶液流延によりPVA系樹脂フィルムを支持フィルム上において形成する方法では支持フィルムからPVA系樹脂フィルムを剥離して染色してもよい。あるいは、支持フィルム上に支持されたPVA系樹脂フィルムを、そのままの状態で染色してもよい。いずれにしても、本発明によれば、上記特定のPVA系共重合体を用いているので、染色を速やかに行うことができる。
【0039】
PVA系樹脂フィルムの延伸は、PVA系樹脂フィルムを一軸延伸することにより行う。一軸延伸の方法は、湿式延伸法または乾熱延伸法のいずれあってもよい。また、染色と同時に延伸を行ってよい。その場合には、染料溶液中にPVA系樹脂フィルムを浸漬した状態で延伸すればよい。
【0040】
さらに、前述したように、染料溶液を用いて染色した後に、PVA系樹脂フィルムを空気中で延伸してもよい。
【0041】
延伸温度は特に限定されないが、PVA系樹脂フィルムを湿式延伸する場合は30〜90℃、乾熱延伸する場合は、50〜180℃の範囲の温度が好適である。
【0042】
延伸倍率については、4倍以上が好ましく、より好ましくは5倍以上である。延伸倍率を高めることにより偏光性能を高めることができる。もっとも、延伸倍率が高すぎると、均一に延伸することができないおそれがある。従って、延伸倍率は8倍以下であることが望ましい。
【0043】
本発明においては、染色及び延伸を終了した後に染料をPVA系樹脂フィルムに確実に固定化するための固定処理を行う。この固定処理は、周知の方法に従って行うことができる。すなわち、ホウ酸及び/またはホウ素化合物溶液中にPVA系樹脂フィルムを浸漬することにより、上記固定処理を行うことができる。固定処理に際しての温度は特に限定されず、30〜90℃程度とすればよい。
【0044】
上記のように支持フィルム上にPVA系樹脂フィルムを成膜した場合には、支持フィルムからPVA系樹脂フィルムを剥離した後延伸してもよく、支持フィルムにPVA系樹脂フィルムが積層されたまま支持フィルムごと延伸してもよい。
【0045】
なお、染色前に延伸を行う場合には、支持フィルムごとPVA系樹脂フィルムを延伸することが好ましい。それによって均一な延伸が得られやすい。
【0046】
上記のように染色及び延伸並びに固定処理を経た後、PVA系樹脂フィルムを乾燥することにより、本発明の偏光フィルムを得ることができる。この乾燥は、自然乾燥により行ってもよいが、乾燥速度を高めるには、加熱乾燥することが望ましい。加熱温度は30〜150℃が好ましく、より好ましくは50〜150℃の範囲である。
【0047】
なお、本発明の偏光フィルムは、液晶表示装置の偏光板などの様々な光学デバイスや表示デバイスに用いられる。その場合、通常、偏光フィルムの両面または片面に保護膜を積層し偏光板を構成することが好ましい。このような保護膜としては、三酢酸セルロース(TEC)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CEB)フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルムなどを用いることができる。また、貼り合わせ用の接着剤としては、PVA系接着剤やウレタン系接着剤などを用いることができる。
【0048】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。
【0049】
なお、本発明は以下の示されに限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
酢酸ビニルモノマーと、ビニルアミンモノマーとを、全モノマー組成100モル中上記ビニルアミンモノマー含有割合が3モル%となるように配合し、モノマー組成物を得た。このモノマー組成物を重合し、得られたポリマーを水酸化ナトリウムによりけん化し、PVA系共重合体を得た。
【0051】
得られたPVA系共重合体100重量部と、グリセリン10重量部とを混合した。得られた混合物に、混合物濃度が40重量%となるように水を添加し、上記PVA系共重合体含有水溶液を得た。
【0052】
上記PVA系共重合体含有水溶液を支持フィルムとしてのポリプロピレンフィルム上に塗布し、乾燥し、PVA系樹脂フィルムを形成した。得られたPVA系樹脂フィルムを、ヨウ素0.4g/リットル及びヨウ化カリウム40g/リットルの濃度となるように、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含む水溶液中に、30℃の温度で120秒間浸漬し、染色した。次に、上記PVA系樹脂フィルムをホウ酸濃度40g/リットルのホウ酸55℃水溶液中に2分間浸漬と同時に、PVA系樹脂フィルムを55℃の温度延伸後の厚みが25μとなるように一軸延伸し、偏光フィルムを作製した。なお、延伸倍率は5.5倍である。
【0053】
上記のようにして得た偏光フィルムに厚み80μのトリアセチルセルロースフィルムを貼り合わせ、偏光板を作製した。
【0054】
(比較例1)
PVA系共重合体に代えて、けん化度99.3モル%のPVA(積水化学工業社製、商品名:「セキスイ・スペシャリティ・ケミカルズC165」、重合度2500)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製し、かつ偏光板を作製した。
【0055】
(比較例2)
PVA系共重合体に代えて、けん化度99.3モル%のPVA(積水化学工業社製、商品名:「セキスイ・スペシャリティ・ケミカルズC165」、重合度2500)を用い、染色時間を240秒及びホウ酸水溶液による固定処理時間を5分に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、偏光フィルムを作製し、かつ偏光板を得た。
【0056】
(評価)
実施例1及び比較例1,2で得た各偏光板の偏光度Pを、島津製作所,分光光度計UV−3101PC装置を用いて、クロス透過率及びパラレル透過率を測定して求めた。クロス透過率をYC、パラレル透過率をYPとしたとき、偏光度P={(YP−YC)/(YP+YC}1/2
【0057】
結果を下記の3段階で評価した。
○:99以上
△:90〜98以上
×:90未満
【0058】
結果を下記の表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1から明らかなように、比較例1では、偏光度が90未満と低かった。これは、染色時間が120秒、ホウ酸水溶液による固定処理時間が2分と短いため、十分に染色及び固定が行われなかっことによると考えられる。
【0061】
また、比較例2においては、偏光度は、99以上であったが、染色時間と固定化時間に長時間を要した。
【0062】
これに対して、染色時間が120秒、ホウ酸水溶液による固定処理時間が2分と短いにもかかわらず、偏光度は99以上と高かった。従って、上記PVA系共重合体をけん化してなるポリマーを用いることにより、染色速度を大幅に高めることができ、その場合でも、良好な偏光性能の得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PVA系共重合体からなるPVA系樹脂フィルムに染色及び延伸を施して得られる偏光フィルムであって、
前記PVA系共重合体が、ビニルエステルモノマーと、ビニルアミン、N−ビニルカルボン酸アミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩からなる群から選択された少なくとも1種のコモノマーとを共重合し得られるポリマーをけん化することにより得られたものである、偏光フィルム。
【請求項2】
ビニルエステルモノマーと、ビニルアミン、N−ビニルカルボン酸アミド、(メタ)アクリル酸アミドプロパンスルホン酸及びその塩からなる群から選択された少なくとも1種のコモノマーとを共重合して得られるポリマーをけん化することにより得られた樹脂からなる、偏光フィルム用PVA系樹脂フィルム。
【請求項3】
請求項2に記載のPVA系樹脂フィルムを染色する工程と、
前記PVA系樹脂フィルムを延伸する工程とを備える、偏光フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記延伸が、前記染色工程後に行われる、請求項3に記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記延伸が、前記染色工程と同時に、あるいは染色工程前に行われる、請求項3に記載の偏光フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2012−47853(P2012−47853A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187905(P2010−187905)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】