説明

偏光フィルム及びその製造方法並びに表示装置

【課題】高い等方散乱性を発現でき、かつ正面輝度も高い偏光フィルムを提供する。
【解決手段】第1の透明樹脂で形成された連続相中に、第2の透明樹脂で形成された板状分散相を、前記分散相の板面がフィルム面と略平行に配向させる。前記分散相の平面形状において、短軸に対する長軸の比は1〜1.5程度である。平面形状での分散相の平均サイズが0.2〜5μmであり、かつ平均厚みに対する前記平均サイズの比が2〜50であってもよい。前記分散相は略円板状であってもよい。本発明の偏光フィルムは、二軸延伸フィルムであって、直線偏光に対する連続相と分散相との屈折率差が一方の延伸方向と他方の延伸方向とで異なっていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散性及び偏光性を有する偏光フィルム及びその製造方法、並びにこの偏光フィルムを備えた表示装置(面光源装置、透過型又は反射型液晶表示装置など)に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では、一般にヨウ素系や染料系の吸収型偏光板が使用されている。そのため、表示面の明るさが外光又は照射光などの光源の明るさの半分以下になる。また、液晶パネルの表裏に2枚の前記吸収型偏光板を用いるため、実際は光源の明るさの30〜40%の明るさに低減する。従って、より高い輝度を得るため、偏光変換して前記欠点を補う試みがなされている。偏光変換の方法としては、例えば、偏光ビームスプリッターなどのプリズムによる方法や、コレステリック液晶の円偏光の特性を利用した偏光変換法等が挙げられる。
【0003】
しかし、プリズムによる方法では、偏光が角度や波長に依存するとともに、軽量性やコンパクト性に欠ける。コレステリック液晶を用いる場合は、全波長をカバーするには、液晶を螺旋ピッチの異なる多層にする必要があり、液晶の作製が複雑でコストが高くなる。さらに、方解石などの複屈折物質からなる平板状素子の両面に光学素子を積層した偏光シート、ポリエステル系樹脂などで構成されたフィルムを多層積層した偏光子、液晶と高分子との複合体を用いる方法なども知られているが、いずれも製法が複雑である上に、高価であり、普及するには至っていない。
【0004】
一方、連続相中に、連続相とは屈折率の異なる分散相を粒子状に分散させた散乱シートを偏光素子として利用する方法も提案されている。例えば、特開平9−297204号公報(特許文献1)には、アスペクト比が1以上の無機散乱粒子を屈折率の異なる樹脂又は高分子に分散配列した異方性散乱素子が開示されている。
【0005】
しかし、この散乱素子では、散乱が異方性であるため、この散乱素子を偏光素子として用いると、正面輝度が低下する。さらに、この散乱素子では、分散相が無機粒子で構成されているため、散乱粒子を一定方向に配列する場合に、高分子と無機粒子との間に空隙を生じ易く、安定して製造できない。
【0006】
そこで、分散相を高分子で構成することにより、延伸することにより、分散相に異方性を発現する方法も提案されている。特開2008−129556号公報(特許文献2)には、ポリエステル系樹脂(A)からなる連続相と、ポリスチレン系樹脂(B)からなる分散相とを有する散乱型偏光子であって、黄色度(YI値)が−3〜3の範囲内である散乱型偏光素子が開示されている。
【0007】
しかし、この偏光素子においても、散乱が異方性であるため、正面輝度が低下する。また、輝度を向上するためには、4倍以上の高倍率の延伸が必要である。これに対して、延伸倍率が4倍以下であれば、汎用のポリエステル用2軸延伸装置、テンター装置の使用が可能となり、便宜性が高い。また、使用する材料についても、高価なポリエステル系樹脂が連続相として使用されるため、材料費が高く、経済性が低い。
【0008】
そこで、簡便な方法で、優れた偏光特性及び散乱特性を発現できる偏光素子として、WO2010/137450号公報(特許文献3)には、ポリカーボネート系樹脂で構成された連続相に、透明樹脂で構成された分散相が粒子状に分散している延伸シートで構成された素子であって、前記連続相の面内複屈折が0.05未満であり、前記分散相の面内複屈折が0.05以上であり、かつ直線偏光に対する連続相と分散相との屈折率差が延伸方向とこの延伸方向に対して垂直な方向とで異なる偏光素子が開示されている。
【0009】
しかし、この偏光素子でも、散乱が異方性であるため、正面輝度が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−297204号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献2】特開2008−129556号公報(特許請求の範囲、段落[0024]、実施例)
【特許文献3】WO2010/137450号公報(請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、高い等方散乱性を発現でき、かつ正面輝度も高い偏光フィルム及びその製造方法並びにこの偏光フィルムを備えた表示装置(面光源装置、液晶表示装置などの表示装置)を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、簡便な方法で、輝度を向上できる偏光フィルム及びその製造方法並びにこの偏光フィルムを備えた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、所定の方法で二軸方向に延伸し、第1の透明樹脂で形成された連続相中に、第2の透明樹脂で形成された板状分散相が分散したフィルムにおいて、前記分散相の板面をフィルム面と略平行に配向させることにより、高い等方散乱性を発現でき、かつ正面輝度も向上できることを見いだし、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の偏光フィルムは、第1の透明樹脂で形成された連続相と、第2の透明樹脂で形成された分散相とを含む偏光フィルムであって、前記分散相が板状であり、かつ前記分散相の板面がフィルム面と略平行に配向している。前記分散相の平面形状において、短軸に対する長軸の比は1〜1.5程度である。平面形状での分散相の平均サイズは0.2〜5μm程度であり、かつ平均厚みに対する前記平均サイズの比が2〜50程度であってもよい。前記分散相は略円板状であってもよい。本発明の偏光フィルムは略直角に交差する二方向に延伸されたフィルムであって、直線偏光に対する連続相と分散相との屈折率差が一方の延伸方向と他方の延伸方向とで異なっていてもよい。前記延伸フィルムにおいて、一方の延伸方向における連続相と分散相との屈折率差の絶対値が0.1〜0.3であり、かつ他方の延伸方向における連続相と分散相との屈折率差の絶対値が0.1以下であってもよい。本発明の偏光フィルムは、屈折率差が小さい延伸方向の直線偏光の全光線透過率が80%以上であり、かつ屈折率差が大きい延伸方向の直線偏光の反射率が30〜60%程度であってもよい。本発明の偏光フィルムは、連続相の面内複屈折が0.05未満であり、かつ分散相の面内複屈折が0.05以上であってもよい。前記連続相はポリカーボネート系樹脂で形成され、かつ前記分散相はポリエステル系樹脂で形成されていてもよい。本発明の偏光フィルムは、連続相中に分散相が略均一に分散していてもよい。前記連続相と前記分散相との割合は、連続相/分散相=99/1〜50/50(重量比)程度である。
【0015】
本発明には、2種類の透明樹脂を溶融混合して成形したシートを、略直角に交差する二方向に延伸して前記偏光フィルムを製造する方法も含まれる。この方法において、連続相を形成する透明樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、縦及び横方向のうち、一方の延伸をTg℃〜(Tg+80)℃の温度条件下、引張速度100〜800mm/分で、1.2〜4倍に延伸し、かつ他方の延伸を(Tg+15)℃〜(Tg+80)℃の温度条件下、引張速度5〜100mm/分で、1.2〜4倍に延伸してもよい。
【0016】
本発明には、前記偏光フィルムを備えた面光源装置及び液晶表示装置も含まれる。
【0017】
なお、本明細書において、「板状」とは、略平面形状を有する形状を意味し、前記略平面形状は全体に亘り平滑である必要はなく、部分的に又は全体的に膨らんだ形状又は窪んだ形状を有していてもよい。すなわち、「板状」とは、全体的に平滑な面を有する形状を意味し、「板面」とは、前記平面形状である面を意味する。本明細書において、「フィルム」とは厚みの如何を問わず、シートを含む意味に用いる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、第1の透明樹脂で形成された連続相中に、第2の透明樹脂で形成された板状分散相を、前記分散相の板面がフィルム面と略平行に配向させているため、散乱光が分散相から等方的に出射し、かつ散乱光の出射角度が適度に狭くなるためか、高い等方散乱性を発現でき、かつ正面輝度も向上できる。さらに、簡便な方法で、表示装置の輝度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の面光源装置を用いた透過型液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の反射型液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。
【図3】図3は、本発明の反射型液晶表示装置の他の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[偏光フィルム]
本発明の偏光フィルムは、第1の透明樹脂で形成された連続相と、第2の透明樹脂で形成され、かつ板面がフィルム面と略平行に配向した板状分散相とを含む。すなわち、偏光フィルムは、偏光フィルムの母体(マトリックス)を形成する連続相と、そのマトリックス中に存在し、かつ偏光機能を発現する分散相とで形成されている。さらに、連続相と分散相との界面は実質的に空隙が生じることなく、連続相と分散相とが結合又は密着している。
【0021】
(連続相)
連続相を構成する第1の透明樹脂には、熱可塑性樹脂[オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ハロゲン含有樹脂(フッ素系樹脂を含む)、ビニルアルコール系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6−キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)など]、ゴム又はエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂など)などが含まれる。これらの透明樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの透明樹脂のうち、安価で、かつ透明性も高い点から、ポリカーボネート系樹脂が好ましい。
【0022】
ポリカーボネート系樹脂は、面内複屈折(延伸方向とこの延伸方向に対して垂直な方向との屈折率差の絶対値)が低く、面内複屈折が0.05未満、例えば、0〜0.03、好ましくは0〜0.02、さらに好ましくは0〜0.01程度である。そのため、本発明では、面内複屈折の高い分散相と組み合わせることにより、延伸倍率を低く抑制できる。特に、ビスフェノールA型ポリカーボネート系樹脂では、後述する実施例の条件での延伸倍率3〜5倍において、前記面内複屈折は略0である。なお、屈折率は、後述する実施例で記載されているように、プリズムカップラー(メトリコン社製)を用いて、波長633nmで測定できる。
【0023】
ポリカーボネート系樹脂には、ビスフェノール類をベースとする芳香族ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートなどの脂肪族ポリカーボネートなどが含まれる。これらのうち、光学的特性に優れ、安価である点から、ビスフェノール類をベースとする芳香族ポリカーボネートが好ましい。
【0024】
ビスフェノール類としては、例えば、ジヒドロキシビフェニルなどのビフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビス(4−ヒドロキシトリル)アルカン、ビス(4−ヒドロキシキシリル)アルカンなどのビス(ヒドロキシアリール)アルカン類[例えば、ビス(ヒドロキシアリール)C1−10アルカン類、好ましくはビス(ヒドロキシアリール)C1−6アルカン類]、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類[例えば、ビス(ヒドロキシアリール)C3−12シクロアルカン類、好ましくはビス(ヒドロキシアリール)C4−10シクロアルカン類]、4,4′−ジ(ヒドロキシフェニル)エーテルなどのジ(ヒドロキシフェニル)エーテル類、4,4′−ジ(ヒドロキシフェニル)ケトンなどのジ(ヒドロキシフェニル)ケトン類、ビスフェノールSなどのジ(ヒドロキシフェニル)スルホキシド類、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン類、ビスフェノールフルオレン類[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなど]などが挙げられる。これらのビスフェノール類は、C2−4アルキレンオキサイド付加体であってもよい。これらのビスフェノール類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0025】
ポリカーボネート系樹脂はジカルボン酸成分(脂肪族、脂環族又は芳香族ジカルボン酸又はその酸ハライドなど)を共重合したポリエステルカーボネート系樹脂であってもよい。これらのポリカーボネート系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいポリカーボネート系樹脂は、ビス(ヒドロキシフェニル)C1−6アルカン類をベースとする樹脂、例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネート系樹脂である。ビスフェノールA型ポリカーボネート系樹脂において、ビスフェノールA以外の他の共重合性単量体の割合は、例えば、20モル%以下、好ましくは10モル%以下(例えば、0.1〜10モル%)程度である。
【0026】
第1の透明樹脂(特にポリカーボネート系樹脂)の平均分子量は、例えば、20℃での濃度0.7g/dLの塩化メチレン溶液中で測定した粘度から求める粘度平均分子量で10000〜200000(例えば、15000〜150000)程度の範囲から選択でき、例えば、15000〜120000、好ましくは17000〜100000、さらに好ましくは18000〜50000(特に18000〜30000)程度である。第1の透明樹脂の分子量が小さすぎるとフィルムの機械的強度が低下し易く、分子量が大きすぎると溶融流動性が低下し、製膜時の取り扱い性や分散相の均一分散性が低下し易い。
【0027】
第1の透明樹脂(特にポリカーボネート系樹脂)のメルトフローレート(MFR)は、ISO1133(300℃、1.2kg荷重(11.8N))に準拠して、例えば、3〜30g/10分程度の範囲から選択でき、例えば、5〜30g/10分、好ましくは6〜25g/10分、さらに好ましくは7〜20g/10分(特に8〜15g/10分)程度である。
【0028】
第1の透明樹脂(特にポリカーボネート系樹脂)の粘度は、回転型レオメーター(Anton Paar社製)を用いて、270℃、剪断速度10sec−1の条件で測定したとき、例えば、100〜1500Pa・s、好ましくは200〜1200Pa・s、さらに好ましくは300〜1000Pa・s(特に500〜750Pa・s)程度である。
【0029】
第1の透明樹脂(特にポリカーボネート系樹脂)のガラス転移温度は、例えば、110〜250℃程度の範囲から選択できるが、延伸温度を低めに設定でき、分散相の樹脂の選択範囲が拡がる観点から、例えば、110〜180℃、好ましくは120〜160℃、さらに好ましくは130〜160℃(特に140〜155℃)程度である。なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量計を用いて測定でき、例えば、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)製「DSC6200」)を用い、窒素気流下、昇温速度10℃/分で測定できる。
【0030】
連続相は、ポリマーアロイで構成されていてもよい。第1の透明樹脂としてポリカーボネート系樹脂を用いる場合、例えば、他の透明樹脂の割合は、例えば、ポリカーボネート系樹脂100重量部に対して、例えば、100重量部以下、好ましくは50重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下(例えば、0.1〜10重量部)程度である。ポリマーアロイの具体例としては、例えば、特開平9−183892号公報に開示されたポリカーボネート樹脂組成物(ポリカーボネートにポリエステル樹脂及びエステル交換反応触媒を配合し、ヘイズ値及び複屈折を低下させた樹脂組成物)、特開平11−3497969号公報に開示されたポリカーボネート樹脂組成物(ポリカーボネートに芳香族アルケニル化合物やシアン化ビニル化合物を配合した樹脂組成物)、特許4021741号公報に開示されたポリカーボネート樹脂組成物(ポリカーボネートにポリエステル及びエポキシ変性ポリオレフィンを配合した樹脂組成物)などが挙げられる。
【0031】
(分散相)
分散相は、前記連続相を構成する第1の透明樹脂に対して非相容であり、かつ偏光フィルム中で連続相と異なる面内複屈折を発現できる透明樹脂であればよく、第1の透明樹脂として例示された透明樹脂の中から選択できる。分散相を構成する透明樹脂は、面内複屈折(縦方向における屈折率と横方向における屈折率差の絶対値)が0.05以上の透明樹脂が好ましい。前記面内複屈折は、例えば、0.05〜0.5、好ましくは0.1〜0.4、さらに好ましくは0.15〜0.3(特に0.2〜0.25)程度である。第1の透明樹脂(例えば、ポリカーボネート系樹脂)で連続相を構成し、かつ固有複屈折が大きい透明樹脂で分散相を構成すると、低倍率の延伸で効果的に連続相と分散相との間に高度な屈折率差を発現でき、散乱特性及び偏光特性の高い素子を調製できる。
【0032】
このような透明樹脂としては、例えば、環状オレフィン系樹脂、ビニル系有樹脂(ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドンなど)、スチレン系樹脂(スチレン−アクリロニトリル樹脂など)、アクリル系樹脂(ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルなど)、アクリロニトリル系樹脂(ポリ(メタ)アクリロニトリルなど)、ポリエステル系樹脂(非晶性芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、液晶ポリエステルなど)、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610など)、セルロース誘導体(セルロースアセテートなど)、合成ゴム(ポリブタジエン、ポリイソプレンなど)、天然ゴムなどが含まれる。これらの透明樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0033】
これらの透明樹脂のうち、ポリカーボネート系樹脂と略同一の屈折率を有するとともに、延伸により容易に延伸方向での屈折率を上昇できる点から、ポリエステル系樹脂、特に、ポリアルキレンアリレート系樹脂が好ましい。ポリアルキレンアリレート系樹脂には、アレンアリレート単位を主成分として、例えば、50モル%以上、好ましくは75〜100モル%、さらに好ましくは80〜100モル%(特に90〜100モル%)の割合で含むホモ又はコポリエステルが含まれる。コポリエステルを構成する共重合性単量体には、ジカルボン酸成分(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸などのC8−20芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC4−12アルカンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などのC4−12シクロアルカンジカルボン酸など)、ジオール成分(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2−10アルカンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリC2−4アルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのC4−12シクロアルカンジオール、ビスフェノールAなどの芳香族ジオールなど)、ヒドロキシカルボン酸成分(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシエトキシ安息香酸など)などが含まれる。これらの共重合性単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ポリアルキレンアリレート系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリC2−4アルキレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリC2−4アルキレンナフタレート系樹脂などが挙げられる。
【0034】
これらのポリアルキレンアリレート系樹脂の中でも、延伸前に前記ポリカーボネート系樹脂と同等の屈折率を有し、かつ延伸により延伸方向で屈折率を容易に上昇できる点から、ポリアルキレンナフタレート系樹脂(特にポリエチレンナフタレート系樹脂などのポリC2−4アルキレンナフタレート系樹脂)が好ましい。ポリアルキレンナフタレート系樹脂としては、アルキレンナフタレート単位(特にエチレン−2,6−ナフタレートなどのC2−4アルキレンナフタレート単位)のホモポリエステル、又はアルキレンナフタレート単位の含有量が80モル%以上(特に90モル%以上)のコポリエステルが挙げられる。コポリエステルを構成する共重合性単量体としては、前述のジカルボン酸成分、ジオール成分、ヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。これらの共重合性単量体のうち、テレフタル酸などのジカルボン酸成分などが汎用される。
【0035】
第2の透明樹脂(例えば、ポリアルキレンナフタレート系樹脂などのポリエステル系樹脂)の平均分子量は、例えば、数平均分子量で5000〜1000000程度の範囲から選択でき、例えば、10000〜500000、好ましくは12000〜300000、さらに好ましくは15000〜100000程度である。第2の透明樹脂の分子量が大きすぎると溶融流動性が低下し、分散相のアスペクト比が低下し易い。なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて、ポリスチレン換算で測定できる。
【0036】
第2の透明樹脂(例えば、ポリアルキレンナフタレート系樹脂などのポリエステル系樹脂)の溶融粘度は、回転型レオメーター(Anton Paar社製)を用いて、270℃、剪断速度10sec−1の条件で測定したとき、例えば、200〜5000Pa・s、好ましくは300〜4000Pa・s、さらに好ましくは500〜3000Pa・s(特に1000〜2000Pa・s)程度である。
【0037】
第1の透明樹脂(特に、ポリカーボネート系樹脂)の溶融粘度との比率は、例えば、第1の透明樹脂の溶融粘度/第2の透明樹脂の溶融粘度=2/1〜1/10、好ましくは2/1〜1/5、さらに好ましくは2/1〜1/3(特に1/1〜1/2.5)程度である。このような範囲にあると、両樹脂が充分に混合されて、連続相中に適度な大きさを有する分散層を均一に形成できるとともに、分散相を適度な粒径に制御でき、分散相に高い面内複屈折を付与できる。
【0038】
第2の透明樹脂(例えば、ポリアルキレンナフタレート系樹脂などのポリエステル系樹脂)のガラス転移温度は、例えば、50〜200℃程度の範囲から選択できるが、延伸により分散相のアスペクト比を容易に上昇できる点から、第1の透明樹脂のガラス転移温度よりも低いのが好ましく、例えば、1〜100℃、好ましくは5〜80℃、さらに好ましくは10〜50℃(特に20〜40℃)程度低くてもよい。具体的に、第2の透明樹脂のガラス転移温度は、例えば、60〜180℃、好ましくは80〜150℃、さらに好ましくは90〜130℃(特に100〜120℃)程度である。なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量計を用いて測定でき、例えば、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)製「DSC6200」)を用い、窒素気流下、昇温速度10℃/分で測定できる。
【0039】
分散相の形状は、板状(又は扁平状)であればよく、板面の平面形状は、特に限定されず、例えば、不定形状、多角形状などであってもよいが、略円形状(略真円形状)、楕円形状が好ましい。すなわち、分散相の形状としては、円板状又は楕円板状が好ましく、略円板状が特に好ましい。本発明では、略円板状などの板状であるため、適度な等方散乱性を発現できるとともに、輝度を向上できる。その理由は、明確でないが、散乱光の出射方向などにおける等方性が向上するとともに、散乱光の出射角度が適度に狭くなって、フィルム面に垂直な方向に集束され、正面輝度も向上し、散乱光も有効利用されて輝度が向上するためであると推定される。
【0040】
分散相の板面の平面形状は、要求される散乱特性及び輝度に応じて選択でき、異方形状であってもよいが、散乱特性と輝度の向上効果とのバランスに優れる点から、等方形状(略円形状)が好ましい。
【0041】
平面形状において、分散相のサイズ(楕円形状などの異方形状の場合、平面形状における長軸と短軸との加算平均サイズ)は、平均で0.1〜10μm程度であり、例えば、0.2〜5μm、好ましくは0.3〜4μm、さらに好ましくは0.5〜3μm(特に1〜2μm)程度である。分散相の平面形状(特に楕円形状又は略円形状の平面形状)において、短軸に対する長軸の比は1〜10程度の範囲から選択でき、例えば、1〜5、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2(特に1〜1.5)程度であり、用途に応じて、例えば、1〜1.2(特に1〜1.1)程度であってもよい。
【0042】
分散相の平均厚みは、例えば、0.01〜1μm、好ましくは0.03〜0.8μm、さらに好ましくは0.05〜0.5μm(特に0.1〜0.4μm)程度である。平均厚みに対する前記平均サイズの比は1.5〜100程度の範囲から選択でき、例えば、2〜50、好ましくは3〜30、さらに好ましくは4〜20(特に5〜10)程度である。本発明では、例えば、海島構造に相分離したシートを二軸方向に延伸することにより、短軸に対する長軸と短軸の比及び平均厚みに対する前記平均サイズの比を制御することができるため、散乱の異方性を制御して輝度を向上できる。
【0043】
連続相(連続相を構成する樹脂成分)と分散相(分散相を構成する樹脂成分)との割合(重量比)は、樹脂の種類や溶融粘度、光拡散性などに応じて選択でき、例えば、連続相/分散相=99/1〜50/50、好ましくは98/2〜70/30、さらに好ましくは96/4〜80/20程度の範囲から選択でき、通常、95/5〜85/15程度である。このような割合で用いると、予め両成分をコンパウンド化することなく、各成分のペレットを直接的に溶融混練しても、均一に分散相を分散でき、一軸延伸などの配向処理によりボイドが発生するのを防止でき、良好な偏光フィルムを得ることができる。
【0044】
(添加剤)
本発明の偏光フィルムにおいて、分散相は、連続相との界面において実質的に空隙(ボイド)を生じることなく、連続相と結合又は密着しているが、必要に応じて、相溶化剤を配合してもよい。相溶化剤を配合した場合、分散相が相溶化剤を介して連続相と結合又は密着してもよい。
【0045】
相溶化剤としては、通常、連続相及び分散相を構成する樹脂と同じ又は共通する成分を有する重合体(ランダム、ブロック又はグラフト共重合体)、連続相及び分散相を構成する樹脂に対して親和性を有する重合体(ランダム、ブロック又はグラフト共重合体)などが使用される。具体的には、ポリエステル系エラストマー、主鎖にエポキシ基を有する相溶化剤、特にエポキシ変性芳香族ビニル−ジエン系ブロック共重合体[例えば、エポキシ化されたスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体やエポキシ化されたスチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB)等のエポキシ化スチレン−ジエン系共重合体又はエポキシ変性スチレン−ジエン系共重合体]などが挙げられる。エポキシ化芳香族ビニル−ジエン系共重合体は、透明性が高いだけでなく、軟化温度が約70℃程度と比較的高く、連続相と分散相との多くの組み合わせにおいて樹脂を相溶化させ、分散相を均一に分散できる。
【0046】
相溶化剤の割合は、例えば、分散相に対する割合(重量比)として、分散相/相溶化剤(重量比)=99/1〜50/50、好ましくは99/1〜70/30、さらに好ましくは98/2〜80/20程度である。さらに、相溶化剤の割合は、例えば、連続相と分散相との合計100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部、さらに好ましくは1〜10重量部程度である。
【0047】
本発明の偏光フィルムは、光学的特性を損なわない範囲で、慣用の添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤などの安定化剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、紫外線吸収剤などを含有していてもよい。
【0048】
(偏光フィルムの特性)
本発明の偏光フィルムは、直線偏光に対する連続相と分散相との屈折率差が、フィルムの縦方向(MD方向、長さ方向又は流れ方向、以下、「X軸方向」と称することがある)と横方向(CD方向又は幅方向、以下、「Y軸方向」と称することがある)とで異なっている。従って、前記偏光フィルムは、屈折率差が大きい方向の偏光は散乱する特性を有し、一部の偏光がフィルムの前方に散乱するとともに、残りの偏光がフィルムの後方に散乱し、ほとんど吸収されない。また、屈折率差の小さい方向の偏光はほぼ透過する特性を有する。すなわち、前記偏光フィルムは、一方の方向(例えば、X軸方向)の直線偏光を大きく散乱し、この方向に対して垂直な方向の直線偏光は、X軸方向よりも小さく散乱するか又はほぼ散乱しない。
【0049】
前記屈折率差について、一方の方向(例えば、X軸方向)での連続相と分散相との屈折率差の絶対値は0.1以上(例えば、0.1〜0.5)、好ましくは0.1〜0.3、さらに好ましくは0.1〜0.2程度であり、他方の方向(例えば、Y軸方向)での連続相と分散相との屈折率差の絶対値は0.1以下であってもよく、例えば、0.05以下、好ましくは0.04以下、さらに好ましくは0.03以下(例えば、0.001〜0.03程度)である。両者の屈折率差の絶対値が、それぞれ前記範囲にあると、後方散乱(反射)と透過散乱とのバランスに優れ、優れた偏光特性及び散乱特性を発現できるとともに、表示装置の輝度も向上できる。
【0050】
本発明の偏光フィルムは、略直角に交差する二方向に延伸されたフィルムであるのが好ましいが、前記屈折率差の偏光フィルムにおいて、連続相と分散相とは、製膜時のシート(いわゆるキャストシート)の段階では、それぞれの屈折率の異方性は小さく、しかも互いに略同一の屈折率を有しているのが好ましい。例えば、延伸前のポリカーボネート系樹脂と分散相を構成するポリエステル系樹脂との屈折率差の絶対値は0.05以下、好ましくは0.04以下、さらに好ましくは0.03以下であってもよい。延伸前の両樹脂の屈折率差がこの範囲にあると、通常の延伸によって容易に延伸方向において屈折率差を発現できる。すなわち、通常の条件で延伸を行った場合、連続相を構成するポリカーボネートが延伸により屈折率があまり変化しないのに対して、分散相は延伸によって円板状又は楕円板状などの形状に変形するとともに、大きな屈折率差を生じる。一方、特定の条件(高温で低速で延伸など)で延伸することにより、分子配向を大きく変化させずに、すなわち延伸前とあまり屈折率を変化させずに、分散相の形状のみを変形させることができる。そのため、二軸方向の延伸において、延伸条件を変えることにより、屈折率に異方性を発現でき、優れた偏光特性を発現できる。
【0051】
従って、本発明の偏光フィルムは、略直角に交差する二方向に延伸することにより、X軸方向及びY軸方向の両方向において、屈折率差を適宜調整でき、特に、縦及び横の延伸倍率を同一とすることにより、分散相の形状が略円板状となるため、高い等方散乱特性を維持しながら、正面輝度などの輝度を向上できる。
【0052】
本発明の偏光フィルムは、X軸方向及びY軸方向のうち、屈折率差が小さい方向(屈折率差が小さい延伸方向)では、直線偏光の全光線透過率は高く、例えば、屈折率差が小さい方向の直線偏光の全光線透過率は80%以上であり、例えば、80〜99%、好ましくは85〜98%、さらに好ましくは90〜95%程度である。さらに、前記方向での直線偏光の拡散光線透過率は、輝度を向上できる点から、例えば、20%以上(例えば、20〜90%)、好ましくは30〜80%、さらに好ましくは35〜60%(特に40〜50%)程度であってもよい。このような高い全光線透過率を示す方向は、X軸方向、Y軸方向のいずれの方向でもよいが、生産性などの点から、Y軸方向が好ましい。
【0053】
一方、本発明の偏光フィルムは、X軸方向及びY軸方向のうち、屈折率差が大きい方向(屈折率差の大きい延伸方向)では、散乱特性に優れており、屈折率差が大きい方向での全光線透過率は70%以下(例えば、10〜70%)、好ましくは60%以下(例えば、30〜60%)、さらに好ましくは50%以下(例えば、40〜50%)である。すなわち、本発明の偏光フィルムは反射率(正反射成分及び後方散乱成分による反射率)が高く、前記方向での反射率(後方散乱率)は30%以上(例えば、30〜90%)を示し、好ましくは40%以上(例えば、40〜80%)、さらに好ましくは50%以上(例えば、50〜60%)であり、例えば、30〜60%(特に40〜60%)程度であってもよい。このような反射率を示す方向は、X軸方向、Y軸方向のいずれの方向でもよいが、生産性などの点から、X軸方向が好ましい。
【0054】
すなわち、本発明の偏光フィルムは、屈折率差の小さい方向での全光線透過率が80%以上であり、かつ屈折率差の大きい方向での反射率(正反射成分及び後方散乱成分による反射率)が30%以上であり、透過光に光拡散と偏光性とを付与するため、吸収型偏光板と類似の性質を有する。しかも、偏光を吸収せずに反射するため、吸収型の欠点である片方の偏光の吸収による温度上昇がなく、良好な透過型偏光板類似の散乱型偏光板となる。さらに、反射光は輝度の向上に寄与するため、本発明の偏光フィルムは、液晶表示装置などの輝度向上シートとしても利用できる。
【0055】
なお、全光線透過率及び拡散光線透過率は、後述する実施例で記載されているように、偏光測定装置(ヘイズメーター)(日本電色工業(株)製、NDH5000W)を用いて、全光線については、JIS K7361−1に準じた手法で測定でき、ヘーズ(拡散光線)については、JIS K7136に準じた手法で測定できる。
【0056】
本発明の偏光フィルムの厚みは、3〜500μm、好ましくは5〜400μm(例えば、30〜400μm)、さらに好ましくは5〜300μm(例えば、50〜300μm)程度である。
【0057】
本発明の偏光フィルムは、単層フィルムであってもよく、その少なくとも一方の面(特に両面)に、光学的特性を損なわない透明樹脂層が積層された積層フィルムであってもよい。透明樹脂層で偏光フィルムを保護すると分散相粒子の脱落や付着を防止でき、偏光フィルムの耐擦傷性や製造安定性を向上できるとともに、その強度や取扱い性を高めることができる。
【0058】
透明樹脂層の樹脂は、前記連続相又は分散相の構成成分として例示した樹脂から選択できる。好ましい透明樹脂層は、連続相と同系統(特に、同一)の透明樹脂(特にポリカーボネート系樹脂)により形成されている。透明樹脂層も、光学的特性を損なわない範囲で、前述の慣用の添加剤を含んでいてもよい。
【0059】
透明樹脂層の合計厚みは、例えば、前記偏光フィルムと同程度であってもよい。特に、偏光フィルム層の厚みが3〜500μm程度の場合、透明樹脂層の厚みは3〜150μm、好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは5〜15μm程度から選択できる。
【0060】
偏光フィルムの厚みと透明樹脂層の合計厚みとの割合は、例えば、偏光フィルム/透明樹脂層=5/95〜99/1程度の範囲から選択でき、通常、50/50〜99/1、好ましくは70/30〜95/5程度である。積層フィルムの厚みは、例えば、6〜800μm、好ましくは10〜600μm、さらに好ましくは20〜450μm程度である。
【0061】
偏光フィルムの表面には、光学特性を妨げない範囲で、シリコーンオイルなどの離型剤を塗布してもよく、コロナ放電処理してもよい。なお、偏光フィルムの表面には、フィルムの凹凸部を形成してもよい。このような凹凸部を形成すると、防眩性を付与できる。
【0062】
[偏光フィルムの製造方法]
偏光フィルムは、連続相を構成する第1の透明樹脂中に、分散相を構成する第2の透明樹脂を分散して配向させることにより得ることができる。例えば、ポリカーボネート系樹脂とポリエステル系樹脂と必要により相溶化剤などの添加剤とを、必要に応じて、慣用の方法(例えば、溶融ブレンド法、タンブラー法など)でブレンドし、溶融混合し、Tダイやリングダイなどから押出してフィルム成形することにより、連続相中に分散相を分散できる。溶融温度は、第1及び第2の透明樹脂の融点以上が好ましく、樹脂の種類により異なるが、例えば、150〜290℃、好ましくは200〜260℃程度である。
【0063】
分散相の配向処理は、例えば、(1)押出成形シートを延伸する方法、(2)押出成形シートをドローしながら製膜してシートを固化し、その後延伸する方法などにより行うことができる。本発明の偏光フィルムの優れた特質を発現するには、前記溶融製膜により、第1の透明樹脂で構成された連続相に、第2の透明樹脂で構成された分散相を粒子状に分散させたシートを固化し冷却したキャストシートを再加熱して、その後に延伸により配向加工することが好ましい。
【0064】
延伸は、略直角に交差する二方向に延伸されていればよく、同時二軸延伸であってもよいが、縦及び横の延伸条件(配向条件)を異なる条件に調整し易い点から、逐次二軸延伸が好ましい。逐次二軸延伸では、未延伸シートを一軸方向に延伸し、次いで、前記延伸方向に直交する方向に延伸する方法などが挙げられる。また、いわゆる逐次二軸延伸に限定されず、例えば、逐次延伸の1段目(最初)の延伸時のドメインの変形を押し出しシート化で行った態様(押出シートの成形と同時に延伸を行った態様)の延伸であってもよい。
【0065】
二軸延伸は、単純な自由幅二軸延伸であってもよく、一定幅(固定幅)二軸延伸であってもよい。前記二軸延伸法は、特に限定されず、例えば、固化したシートの両端を引っ張る方法(引張延伸)、互いに対向する一対のロール(2本ロール)を複数系列(例えば、2系列)用意して並列に設置し、それぞれの2本ロールにフィルムを挿入すると共に、繰入れ側の2本ロールと繰出し側の2本ロールとの間にフィルムを張り渡し、繰出し側の2本ロールのフィルムの送り速度を繰入れ側の2本ロールより速くすることにより延伸する方法(ロール間延伸)、互いに対向する一対のロールの間にフィルムを挿入し、ロール圧でフィルムを圧延する方法(ロール圧延)、テンター法による固定幅二軸延伸などが挙げられる。
【0066】
テンター法による固定幅二軸延伸は、延伸方向に垂直な方向の幅は変化しない方法であり、分散相の異方配向性を保持しながら、全幅で均一なシートを製造するのに有利である。さらに、その作用の詳細は不明であるが、分散相の屈折率の変化にも有効である。
【0067】
本発明の二軸延伸では、縦方向及び横方向の延伸条件を異なる条件とすることにより、直線偏光に対する連続相と分散相との屈折率差を、縦方向と横方向とで異なるように延伸する。例えば、テンター法による二軸延伸では、生産性などの点から、屈折率差を大きくする延伸方向をシートの流れ方向としてもよく、小さい屈折率差を発現させる(屈折率差を発現させない)延伸方向をシートの幅方向としてもよい。
【0068】
屈折率差を発現させるための延伸条件(シートの流れ方向及び幅方向のうち、屈折率が大きい方向での延伸条件)としては、通常の延伸条件を利用できる。延伸温度は、第1の透明樹脂のガラス転移温度以上の温度が好ましく、第1の透明樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、例えば、Tg〜(Tg+80)℃、好ましくは(Tg+5)〜(Tg+50)℃、さらに好ましくは(Tg+5)〜(Tg+30)℃[特に(Tg+8)〜(Tg+20)℃]程度高い温度であってもよい。具体的な延伸温度は、第1の透明樹脂がポリカーボネート系樹脂である場合、例えば、120〜180℃、好ましくは130〜175℃、さらに好ましくは140〜170℃(特に150〜170℃)程度であってもよい。
【0069】
テンター方式による二軸延伸において、引張速度は、延伸温度や倍率に応じて、例えば、50〜1000mm/分程度の範囲から選択でき、例えば、100〜800mm/分、好ましくは150〜700mm/分、さらに好ましくは200〜600mm/分(特に400〜600mm/分)程度である。
【0070】
延伸倍率は、幅広い範囲から選択できるが、本発明では、比較的低い延伸倍率でも延伸方向の屈折率と延伸方向に垂直な方向の屈折率に大きな差を生じさせることができ、例えば、1.1〜5倍(例えば、1.2〜4倍)、好ましくは1.3〜3.5倍、さらに好ましくは1.5〜3倍(特に1.8〜2.5倍)程度であってもよい。特に、本発明では、4倍以下の延伸倍率であっても、散乱特性に優れるシートを製造できるため、前述のテンター法による二軸延伸などの汎用の延伸装置を用いて簡便に製造できる。
【0071】
一方、屈折率差を発現させないための延伸条件(シートの流れ方向及び幅方向のうち、屈折率が小さい方向での延伸条件)としては、屈折率差を大きくするための延伸条件に対して、高温で、かつ徐々に延伸する条件が用いられる。延伸温度は、屈折率差を発現させるための延伸温度よりも1〜50℃高い延伸温度、好ましくは3〜30℃高い延伸温度、さらに好ましくは5〜20℃高い延伸温度であってもよい。具体的には、(Tg+5)〜(Tg+100)℃、好ましくは(Tg+10)〜(Tg+90)℃、さらに好ましくは(Tg+15)〜(Tg+80)℃[特に(Tg+20)〜(Tg+60)℃]程度高い温度であってもよい。
【0072】
テンター方式による二軸延伸において、引張速度は、屈折率差を大きくするための引張速度よりも小さく、例えば、1〜100mm/分、好ましくは5〜100mm/分、さらに好ましくは6〜50mm/分(特に8〜30mm/分)程度である。
【0073】
延伸倍率は、屈折率差を大きくするための延伸倍率の範囲から選択でき、例えば、1.1〜5倍(例えば、1.2〜4倍)、好ましくは1.3〜3.5倍、さらに好ましくは1.5〜3倍(特に1.8〜2.5倍)程度である。等方散乱性を向上させる点からは、屈折率差を大きくするための延伸倍率と同程度の倍率であってもよい。
【0074】
本発明の偏光フィルムは、連続相の複屈折を緩和して偏光特性を発現するため、延伸温度又は延伸温度よりも高い温度で緊張熱処理(シートの長さを保持したままでの熱処理)することにより、偏光特性を維持しながら、耐熱性を付与できる。熱処理温度は、例えば、屈折率差を発現させないための延伸温度から延伸温度よりも50℃程度高い温度までの範囲から選択でき、例えば、延伸温度から延伸温度よりも30℃程度高い温度であってもよく、例えば、屈折率差を発現させないための延伸温度と略同一の温度であってもよい。熱処理時間は、例えば、0.1〜30分間、好ましくは1〜10分間、さらに好ましくは2〜5分間程度であり、温度に応じて選択でき、例えば、165℃程度の温度の場合、2〜3分程度でよい。この熱処理により、連続相の屈折率差を減少でき、延伸方向に垂直な方向において連続相と分散相との屈折率を一致させることができるため、光学特性も向上できる。さらに、偏光フィルムの寸法安定性などの耐熱性や強度が向上できる。
【0075】
なお、前記積層フィルムは、慣用の方法、例えば、共押出成形法、ラミネート法(押出ラミネート法、ドライラミネート法など)などにより、偏光フィルム層の少なくとも一方の面に透明樹脂層を積層させて得ることができる。
【0076】
[面光源装置及び透過型液晶表示装置]
本発明の面光源装置は、管状光源(蛍光管など)と、この管状光源からの光を側面から入射して平坦な出射面から出射させるための導光部材と、この導光部材の出射光側に配設された偏光フィルムとを備えている。なお、前記面光源装置において、偏光フィルムは散乱型素子として使用されている。
【0077】
図1は、本発明の偏光フィルムを用いて輝度を向上させた面光源装置を用いた透過型液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。液晶表示装置1は、管状光源としての蛍光管2と、この蛍光管2の側部に配設され、前記蛍光管2からの光を側面から入射して平坦な出射面から出射させるための導光部材(導光板)4と、この導光板4からの出射光により照明されるTN型液晶セル7と、前記入射光を反射させる反射部材(反射板)3と、前記導光板4と前記液晶セル7との間に配設された偏光フィルム5と、偏光フィルム5を透過した光を拡散させる拡散シート6とを備えている。
【0078】
液晶表示装置1において、蛍光管2からの光は、導光板4を通過し、反射板3で反射され、前記導光板4から出射される。出射した光は、偏光フィルム5内において、連続相と分散相との屈折率差が小さい方向(Y軸方向)の偏光がほぼ透過され、屈折率差が大きい方向(X軸方向)の偏光が散乱して透過又は反射される。
【0079】
反射した光は、再び、導光板4を通過し、反射板3で反射される。そして、この反射により、一部その偏光の向きが90度回転した光が発生する。この偏光の向きが回転した光は、再び導光板4を通過して偏光フィルム5に達して透過する。偏光の向きが変わらなかった光は、再度、偏光フィルム5で反射されるが、反射板3での反射により、再び偏光の向きが90度回転した光は、偏光フィルム5を通過する。偏光フィルム5を通過した光は、拡散シート6によって散乱され、液晶セル7を照射する。
【0080】
従って、蛍光管2からの多くの光は、ほとんど偏光軸を一致させ、偏光フィルム5から出射するので、液晶セル7の入射側の吸収型偏光板(図示せず)の偏光軸を、前記の軸と一致させれば、従来では50%程度しか利用されなかった蛍光管2の光を、それ以上の効率で用いることができる。
【0081】
この用途に用いる本発明の偏光フィルムは、Y軸方向の直線偏光の全光線透過率は80%以上であり、X軸方向の直線偏光の反射率(正反射成分及び後方散乱成分による反射率)が30%以上の散乱特性を有する透過型液晶表示装置に用いるのが好ましい。本発明の偏光フィルムの輝度向上効果は、通常用いられている、導光板/拡散板/プリズムシートの上に積層しても効果がある。さらに、本発明の偏光フィルムの輝度向上効果は、導光板を用いない直下型のバックライト(面光源装置)及びそれを使用した透過型液晶表示装置にも同様に好ましい。
【0082】
[反射型液晶表示装置]
本発明の反射型液晶表示装置は、本発明の偏光フィルムと反射板との間に液晶セルが配設されていてもよく、液晶セルと反射板との間に本発明の偏光フィルムが配設されていてもよい。これらの装置のうち、液晶セルと反射板との間に前記偏光フィルムが配設された反射型液晶表示装置が好ましい。
【0083】
図2は本発明の偏光フィルムを用いて輝度を向上させた反射型液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。反射型液晶表示装置10は、外光を反射するための反射部材(反射板)13と、反射板13からの出射光により照明される(反射型液晶装置用)TN型液晶セル17と、外光を液晶セル17に導くための吸収型偏光板18と、反射板13と液晶セル17との間に配設され、反射板13からの出射光を散乱するための偏光フィルム15とを備えている。
【0084】
反射型液晶表示装置10において、吸収型偏光板18に入射した外光のうち、偏光板と偏光軸の一致する光のみが透過されて、液晶セル17に到達する。液晶セル17に入射した光は、偏光方向を回転して、偏光フィルム15に到達する。
【0085】
液晶セルの表示を暗表示とする場合には、液晶セル17を通過した外光の偏光方向を、偏光フィルム15のY軸方向に一致させるように、偏光フィルム15を配置する。吸収型偏光板18を通過した偏光は再び偏光フィルム15を通過し、液晶セル17で偏光の向きを回転され、吸収型偏光板18の偏光軸と直行する方向となるので、暗表示となる。
【0086】
一方、液晶セルの表示を明表示とする場合には、液晶セル17を通過した外光の偏光方向を、偏光フィルム15のX軸方向に一致させるように、偏光フィルム15を配置する。吸収型偏光板18に入射した外光のうち、偏光板18と偏光軸の一致する光のみが液晶セル17に透過され、液晶セル17で偏光方向を回転しないで、偏光フィルム15に到達する。偏光フィルム15に入射した偏光は、反射方向又は透過方向に散乱される。透過方向に散乱された光は反射板13で反射され、すでに偏光フィルム15により散乱された光と合体して吸収型偏光板18に到達し、そのまま透過する。この透過光は、偏光子15により充分に散乱されているので、視野角依存性の少ない良好な白表示を示す。
【0087】
図3は本発明の偏光フィルムを用いて輝度を向上させた反射型液晶表示装置の他の一例を示す概略断面図である。反射型液晶表示装置20は、反射板23からの出射光により照明される反射型液晶装置用液晶セル27と、外光を反射するための反射部材(反射板)23と、液晶セル27と反射板23との間に配設された1/4波長板29と、1/4波長板29と液晶セル27との間に配設され、反射板23からの出射光を散乱するための偏光フィルム25とを備えている。なお、前記液晶セル27は、2色性色素を含むタイプの液晶である。
【0088】
反射型液晶表示装置20において、液晶セル27は、電圧無印加状態では、液晶分子は液晶の配向処理方向(液晶セルのガラス基板に平行な方向)に配向し、2色性色素も同様に配向する。液晶セル27に入射した外光のうち、2色性色素分子の長軸方向に対して平行な直線偏光成分は、2色性色素により吸収される。また、2色性色素分子の長軸方向に対して垂直な方向の直線偏光成分は、液晶セル27を通過し、偏光フィルム25に入射する。この通過する直線偏光の向きを、偏光フィルム8のY軸方向に一致させるように、偏光フィルム25を配置すると、偏光フィルム25を出射した偏光は、1/4波長板(位相差板)29により円偏光になる。さらに、その円偏光は、反射板23で反射され、その円偏光の向きを回転し、再び1/4波長板29に入射して、もとの直線偏光の向きを90度回転して、再度、偏光フィルム25に入射する。入射した光は、偏光フィルム25のX軸方向の偏光となり、2色性色素の分子の長軸方向に平行な直線偏光として散乱され、液晶セル27において2色性色素により吸収されるので、液晶セル27の表示は良好な黒表示となる。
【0089】
一方、液晶セル27は、電圧印加状態では、液晶分子がガラス基板に対し垂直に配向し、2色性色素も同様に配向する。入射した外光は、2色性色素を含む液晶セル27の2色性色素によって吸収されずに液晶セル27を通過し、偏光フィルム25に入射する。入射した光は、偏光フィルム25において、Y軸方向の偏光はそのまま通過するが、X軸方向の偏光は散乱される。次に、偏光フィルム25を出射した偏光は、1/4波長板29で円偏光となり、反射板23で反射する。反射した光は、前記円偏光の向きが逆周りとなり、再び1/4波長板29に入射する。入射光のうち、Y軸方向の偏光はそのまま通過し、円偏光になった偏光は90度回転し、偏光フィルム25により散乱される。従って、2色性色素を含む液晶セル27を通過した光は、すべて散乱された反射光となるため、良好な白色表示を実現できる。
【0090】
本発明の偏光フィルムを用いると、透過光及び反射光に高い散乱性と偏光性を付与できるため、液晶表示画面の視認性を向上できる。特に、面積の大きな液晶表示面であっても、全体に亘り明るく表示できる。そのため、透過型又は反射型液晶表示装置は、例えば、パーソナルコンピューター(パソコン)、ワードプロセッサー、液晶テレビ、携帯電話、時計、電卓などの電気製品の表示部に幅広く利用できる。特に、携帯型情報機器の液晶表示装置に好適に利用できる。
【実施例】
【0091】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で得られた偏光フィルムの特性は、下記の方法に従って評価した。
【0092】
[シートの断面観察]
延伸前の原反シートと、延伸後の延伸シートから微小切片を2方向(延伸シートの場合、延伸方向に平行及び垂直方向)に切り出し、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JEM1200EXII)で観察したところ、分散相のポリマーは押出方向に配列した楕円体状(又は細長い線状)の形態の散乱子(粒子状分散相)を形成しており、その長軸長さと短軸長さを50個の分散相粒子について測定し、加算平均した。
【0093】
[屈折率]
連続及び分散相の屈折率は、実施例及び比較例と同条件でそれぞれの樹脂単体シートを延伸したときの縦延伸方向(X軸方向)及び横延伸方向(Y軸方向)について、プリズムカップラー(メトリコン社製)を用いて、波長633nmで測定した。さらに、測定した屈折率に基づいて屈折率差を求めた。
【0094】
[偏光及び散乱特性の評価]
偏光測定装置(日本電色工業(株)製、NDH5000W)を用いて、全光線については、JIS K7361−1に準じた手法で測定し、ヘーズ(拡散光線)については、JIS K7136に準じた手法で測定した。測定は、光源と吸収型偏光板との間に実施例及び比較例で得られた偏光フィルムを挿入し、光源を鉛直方向に偏光する直線偏光のみにして、偏光フィルムの偏光に対する全光線透過率、拡散光線透過率、全光線反射率(全光線反射率=1−全光線透過率で計算した)を測定した。この全光線反射率は、前記反射率(正反射成分及び後方散乱成分による反射率)と一致する。測定は、連続相と分散相との屈折率差が小さい方向を前記吸収型偏光板の偏光軸に一致させた場合(表2中の「平行」)と、連続相と分散相との屈折率差が大きい方向を前記吸収型偏光板の偏光軸に一致させた場合(表2中の「垂直」)とについて測定した。
【0095】
[正面輝度]
自動変角光度計((株)村上色彩技術研究所製「GP−200」)を用いて、拡散シート/プリズム/拡散シート/輝度向上シートの構成で評価を行った。
【0096】
実施例1
分散相を構成する樹脂としてのポリエチレンナフタレート樹脂(PEN、帝人化成(株)製、「テオネックス TN8065S」、270℃及び剪断速度10sec−1における粘度:1578Pa・s)10重量部、連続相を構成する樹脂としてのビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(PC、三菱エンジニアリングプラスチック(株)製、「中粘度品 ユーピロンS−2000」、粘度平均分子量18000〜20000、MFR10g/10分、270℃及び剪断速度10sec−1における粘度:681Pa・s)90重量部を、二軸押出機(池貝鉄工(株)製、PCM30)を用いて、シリンダー温度280℃で溶融混練して押出し、冷却してペレットを作製した。得られたペレットを小型プレス機((株)東洋精機製作所、ミニテストプレス10)を用いて、270℃、10MPaのプレス圧で3分間プレス成形することにより、厚み1mmのプレスシートを作製した。得られたシートを幅40mm、長さ70mmに切り出し、テンター式二軸延伸機(恒温槽付きテンシロンUCT−5)を用いて、チャック間40mmで、165℃で3分間予熱したのち、引張速度10mm/分で1.5倍に横方向に延伸後、155℃、引張速度500mm/分で2倍に縦方向に延伸した後、チャックに保持した状態で、165℃で3分間熱処理した後、室温に急冷し、二軸延伸シートを得た。
【0097】
実施例2
横方向の延伸倍率を1.7倍にする以外は実施例1と同様にして、二軸延伸シートを製造した。
【0098】
実施例3
横方向の延伸倍率を1.9倍にする以外は実施例1と同様にして、二軸延伸シートを製造した。
【0099】
比較例1
横方向は延伸せず、155℃、引張速度500mm/分で2.5倍に縦方向に延伸する以外は実施例1と同様にして、一軸延伸シートを製造した。
【0100】
比較例2
横方向は延伸せず、165℃、引張速度500mm/分で3倍に縦方向に延伸する以外は実施例1と同様にして、一軸延伸シートを製造した。
【0101】
実施例1〜3及び比較例1〜2における延伸温度及び倍率、延伸フィルムの厚み、分散相のサイズを表1に示す。さらに、延伸シートの全光線透過率、反射率、拡散光線透過率、全方向輝度、正面輝度についての結果を表2に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
表から明らかなように、実施例の偏光フィルム(特に実施例1の偏光フィルム)は、比較例の偏光フィルムに比べて、X軸方向の反射率が小さいにも拘わらず、全方向輝度が比較例とほぼ同等の性能を有している。これは、実施例ではドメイン形状を制御したことにより、X軸方向の散乱特性を改善し、その結果として光のリサイクル効率が向上したためであると推定できる。また、実施例2及び3においては、全方向輝度が比較例に比べて若干低いにも拘わらず、正面輝度が高い。これは、ドメイン形状を制御したことにより、Y軸方向の散乱特性を改善したことにより、正面輝度が向上したと推定できる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の偏光フィルムは、各種の面光源装置に利用できるが、特に、透過型又は反射型液晶表示装置(例えば、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサー、液晶テレビ、携帯電話、時計、電卓などの電気製品の表示部など)に有効に利用できる。
【符号の説明】
【0106】
1,10,20…液晶表示装置
2…蛍光管
3,13,23…反射部材又は反射層
4…導光板
5,15,25…偏光フィルム
6…拡散シート
7,17,27…液晶セル
18…吸収型偏光板
29…1/4波長板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の透明樹脂で形成された連続相と、第2の透明樹脂で形成された分散相とを含む偏光フィルムであって、前記分散相が板状であり、かつ前記分散相の板面がフィルム面と略平行に配向している偏光フィルム。
【請求項2】
分散相の平面形状において、短軸に対する長軸の比が1〜1.5である請求項1記載の偏光フィルム。
【請求項3】
平面形状での分散相の平均サイズが0.2〜5μmであり、かつ平均厚みに対する前記平均サイズの比が2〜50である請求項1又は2記載の偏光フィルム。
【請求項4】
分散相が略円板状である請求項1〜3のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項5】
略直角に交差する二方向に延伸されたフィルムであって、直線偏光に対する連続相と分散相との屈折率差が一方の延伸方向と他方の延伸方向とで異なる請求項1〜4のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項6】
一方の延伸方向における連続相と分散相との屈折率差の絶対値が0.1〜0.3であり、かつ他方の延伸方向における連続相と分散相との屈折率差の絶対値が0.1以下である請求項5記載の偏光フィルム。
【請求項7】
屈折率差が小さい延伸方向の直線偏光の全光線透過率が80%以上であり、かつ屈折率差が大きい延伸方向の直線偏光の反射率が30〜60%である請求項5記載の偏光フィルム。
【請求項8】
連続相の面内複屈折が0.05未満であり、かつ分散相の面内複屈折が0.05以上である請求項1〜7のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項9】
連続相がポリカーボネート系樹脂で形成され、かつ分散相がポリエステル系樹脂で形成されている請求項1〜8のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項10】
連続相中に分散相が略均一に分散している請求項1〜9のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項11】
連続相と分散相との割合が、連続相/分散相=99/1〜50/50(重量比)である請求項1〜10のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項12】
2種類の透明樹脂を溶融混合して成形したシートを、略直角に交差する二方向に延伸して請求項1記載の偏光フィルムを製造する方法。
【請求項13】
連続相を形成する透明樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、縦及び横方向のうち、一方の延伸をTg℃〜(Tg+80)℃の温度条件下、引張速度100〜800mm/分で、1.2〜4倍に延伸し、かつ他方の延伸を(Tg+15)℃〜(Tg+80)℃の温度条件下、引張速度5〜100mm/分で、1.2〜4倍に延伸する請求項12記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれかに記載の偏光フィルムを備えた面光源装置。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれかに記載の偏光フィルムを備えた液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−226078(P2012−226078A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92966(P2011−92966)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】