説明

偏光分離装置及び表示装置

【課題】表示パネルを1枚だけ用いて両眼に画像を提示させ、部品点数やその組立工数を減少させて製造コストの低廉化、内部設計の設計の容易化、及び装置の小型化を図る。
【解決手段】偏光分離装置1は、入射光が入射される第1の端面10aと、入射光のうち所定の偏光方位角のp偏光成分を反射するとともに、所定の偏光方位角とは異なる偏光方位角のs偏光成分を透過させる偏光分離面11と、第1の端面10aと対向配置され、偏光分離面11を透過したp偏光成分を、s偏光成分に変換するとともに、入射光と同一の光軸方向に反射させる第2の端面10bと、偏光分離面11を透過することなく偏光分離面11で反射されたs偏光成分が射出される第3の端面10cと、第3の端面10cと対向配置されるとともに、第2の端面10b及び偏光分離面11で反射されたs偏光成分が射出される第4の端面10dとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光の各偏光成分を入射方向と異なる2方向に振り分ける偏光分離装置及び、その偏光分離装置を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)と呼ばれる頭部装着型の表示装置が開発されている。この頭部装着型表示装置では、観察者の眼前に設置した液晶パネルや有機ELパネル等のディスプレイ装置によって光学像を形成し、その光学像を、接眼レンズやハーフミラー等を有する光学系を介して拡大して、観察者の眼前に結像させることによって、画像表示を行う。
【0003】
一般に、このようなHMDとしては、左右一対とした2つの画像表示装置に表示された画像を、観察者に両眼で観察させる両眼式のHMDが採用されている(例えば、特許文献1参照)。このような両眼式のHMDを観察者が装着した場合、観察者は左右のそれぞれの表示画像を重ねて1つの画像として観察することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−244869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたようなHMDでは、2つの表示パネルを備えているため、部品点数やその組立工数を増大し、製造コストが高価となっていた。また、2つの表示パネルの設置箇所を確保するために、表示装置や左右の光学系の設計が複雑となる問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、上述した事情を考慮して、表示パネルを1枚だけ用いて両眼に画像を提示させ、部品点数やその組立工数を減少させて製造コストの低廉化、内部設計の設計の容易化、及び装置の小型化を図ることができる偏光分離装置及び表示装置を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係る偏光分離装置は、入射光が入射される第1の端面と、前記入射光のうち所定の偏光方位角のs偏光成分を反射するとともに、前記所定の偏光方位角とは異なる偏光方位角のp偏光成分を透過させる偏光分離面と、前記第1の端面と対向配置され、前記偏光分離面を透過したp偏光成分を、前記s偏光成分に変換するとともに、前記入射光と同一の光軸方向に反射させる第2の端面と、前記偏光分離面を透過することなく前記偏光分離面で反射されたs偏光成分が射出される第3の端面と、前記第3の端面と対向配置されるとともに、前記第2の端面及び前記偏光分離面で反射されたs偏光成分が射出される第4の端面とを備えることを特徴とする。
【0008】
このような本発明の偏光分離装置によれば、第1の端面から入射した光を、その偏光方位角に応じて、第3の端面及び第4の端面から射出することができ、入射光の各偏光成分を、入射方向と異なる2方向に振り分けることが可能となる。この結果、本発明によれば、例えば、1枚の表示パネルに表示される偏光方位角の異なる2つの映像を、観察者の左右の眼に振り分けて提示することができる。
【0009】
これにより、本発明では、部品点数やその組立工数を減少させて部品点数やその組立工数を減少させて製造コストの低廉化、内部設計の設計の容易化、及び装置の小型化を図ることができる。また、このとき、偏光方位角の異なる2つの映像として、左右の眼に視差がある異なる映像を、観察者の左右の眼に振り分けて提示すれば、立体表示も可能となる。なお、前記第2の端面は、金属反射膜が形成された1/4波長フィルムが配置することにより構成することができる。
【0010】
上述した偏光分離装置では、前記第3の端面を透過した光の光路長を変換する光路長調整部材をさらに備えることが好ましい。ここで、「光路長」とは、屈折率nの媒質中を、光路に沿って距離dだけ光が進行するとき,その積ndで定められる光学距離である。この場合には、2方向に振り分けられた光について、偏光分離装置に入射してから出射されるまでの光路長を等しくすることができ、左右の眼に表示パネルの拡大された虚像を提示する光学系を、左右それぞれで同一のレンズ系、ミラーを用いることができる。この結果、左右の光学系における収差や倍率が等しくなるように設計しやすくなり、見やすい映像を提示できるとともに、共通の部品を利用できるので、部品点数やその組立工数を減少させて製造コストの低廉化を図ることができる。
【0011】
上述した偏光分離装置では、前記偏光分離面から前記第3の端面に至る部材と、前記光路長調整部材とが一体的に形成されていることが好ましい。この場合には、偏光分離装置全体の部品点数を減少させることができ、よりコストの低廉化を図ることができる。ここで「一体的」とは、同一の材料で一体成型される場合の他、異なる材質の二つの部品を貼り合わせて一体的に形成する場合も含まれる。
【0012】
上述した偏光分離装置では、前記光路調整部材から射出される光の透過率を変化させる透過率調整フィルターをさらに備えることが好ましい。この場合には、2方向に振り分けられた光の強度を等しくすることができる。この結果、左右の光学系における明るさを等しくでき、より見やすい映像を提示できる。
【0013】
上述した偏光分離装置では、前記偏光分離面を透過し、前記第2の端面及び前記偏光分離面で反射され、前記第4の端面に至る光路長と、前記偏光分離面で反射され、前記光路調整部材を透過して射出面に至る光路長とが等しいことが好ましい。この場合には、左右の光学系における収差や倍率が等しくなり、より見やすい映像を提示できる。
【0014】
上述した偏光分離装置では、前記第1の端面から前記偏光分離面に至る部材と、前記偏光分離面から前記第2の端面に至る部材と、前記光路長調整部材と、が同一の部材で形成されるとともに、前記光路調整部材の光軸方向の長さが、前記偏光分離面から前記第2の端面に至る距離の2倍であることが好ましい。この場合には、偏光分離面から前記第2の端面に至る部材と、光路長調整部材とを同一の部材で形成することにより、偏光分離装置において2方向に振り分けられる光について、偏光分離装置に入射してから出射されるまでの光路長を、容易に等しくすることができるため、光学系の設計を容易なものとすることができるとともに、原材料の調達を容易にして製造コストを低減することができる。
【0015】
また、本発明に係る表示装置は、上記の偏光分離装置のいずれかを備えた表示装置であって、所定の偏光方位角のp偏光成分及び前記p偏光成分とは異なる偏光方位角のs偏光成分のいずれか又はその両方からなる映像を、前記入射光として前記第1の端面に入射させる表示部と、前記第3又は第4の端面から射出された映像の拡大された虚像を、それぞれ観察者の左右の眼で観察可能とする左目用導光光学系及び右目用導光光学系とを備えたことを特徴とする。
【0016】
なお、上記表示部には、液晶ディスプレイなど映像を表示する表示パネルの他、映像に含まれる各偏光成分を分離させる偏光フィルターや、所定の偏光成分のみを選択的に射出させる偏光面回転素子などの偏光分離手段が含まれる。
【0017】
このような表示装置によれば、上記偏光分離装置を用いることによって、表示部に表示された偏光方位角の異なる2つの映像を2つの方向に振り分け、振り分けられた各映像を、左目用導光光学系及び右目用導光光学系を通じて、観察者の左右の眼にそれぞれ独立して提示することができる。このとき、偏光方位角の異なる2つの映像として、左右の眼に視差がある異なる映像を、観察者の左右の眼に振り分けて提示すれば、立体表示も可能となる。
【0018】
上述した表示装置においては、前記左目用導光光学系と前記右目用導光光学系が同一の光学要素から構成されていることが好ましい。この場合には、共通の部品を利用できるので、光学要素や光学系の設計を容易なものとすることができるとともに、部品点数及びその組立工数を低減することができ、装置の小型化及び製造コストの低廉化を図ることができる。
【0019】
上述した表示装置においては、前記表示部の中心位置が、前記観察者の両眼の中心位置に対して偏心していることが好ましい。この場合には、表示部の中心位置を表示装置全体の中心位置からずらすことにより、前記偏光分離装置が左右非対称となる場合であっても、偏光分離装置や左右の光学系を複雑化させることなく、その設置箇所を確保することができ、設計の容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る偏光分離装置1を示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るヘッドマウントディスプレイ100を人の頭部に装着させた状態を上部より示す説明図である。
【図3】ヘッドマウントディスプレイ100の内部構造を模式的に示した上面図である。
【図4】表示パネル40の画素41の配置を示す平面図である。
【図5】表示パネル40上の偏光フィルター42の配置を示す平面図である。
【図6】(a)はヘッドマウントディスプレイ100における右目用映像の虚像の反転状態を示す説明図であり、同図(b)は、ヘッドマウントディスプレイ100における左目用映像の虚像の反転状態を示す説明図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るヘッドマウントディスプレイ100aの内部構造を模式的に示した上面図である。
【図8】本発明の変更例に係るヘッドマウントディスプレイ100bの内部構造を模式的に示した上面図である。
【図9】本発明の変更例に係るヘッドマウントディスプレイ100cの内部構造を模式的に示した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<A:第1実施形態>
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。なお、図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある。また、かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内に任意に変更可能である。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態に係る偏光分離装置1の概略構成を示す断面図である。同図に示すように、偏光分離装置1は、入射光の各偏光成分を入射方向と異なる2方向に振り分ける装置であって、偏光ビームスプリッター10と、1/4波長フィルム12と、光路長調整部材13と、透過率調整フィルター14とを備える。
【0023】
偏光ビームスプリッター10は、光束を2つの偏光成分に分離するプリズムであり、本実施形態では、三角柱状をなすガラス製のプリズム部品10L及び10Rを貼り合わせて構成され、1辺の寸法がAとなる正方体の形状をなしている。なお、本実施形態では、これらリズム部品10L及び10Rを、同一の屈折率の屈折材料で形成するが、異なる屈折率の屈折材料を用いることもできる。そして、これらのリズム部品10L及び10Rを貼り合わせて正方体に構成された偏光ビームスプリッター10は、入射光が入射される第1の端面10aと、第1の端面10aと対向配置される第2の端面10bと、入射光のうち偏光分離面で反射した光が射出される第3の端面10cと、及び該第3の端面に対向する第4の端面10dとを有している。
【0024】
また、偏光ビームスプリッター10には、2つのプリズム部品10L及び10Rの接合面に沿って、偏光分離面11が形成されている。詳述するとプリズム部品10L及び10Rは、断面形状がそれぞれ1辺の長さがAの二等辺三角形の三角柱状をなし、二等辺三角形の底辺が、他の2つの等辺と45°をなしており、この底辺に位置する側面で、プリズム部品10L及び10Rが貼り合わされ、この貼り合わされた接合面が偏光分離面11となっている。
【0025】
この偏光分離面11には、例えば、誘導体多層膜が形成され、入射光のうち所定の偏光方位角のs偏光成分を反射するとともに、所定の偏光方位角とは異なる偏光方位角のp偏光成分を透過させる。これにより、本実施形態では、偏光ビームスプリッター10の第1の端面10aから入射された入射光のうち、s偏光成分は偏光分離面11を透過することなく偏光分離面11で反射されて第3の端面10cへ入射される一方、p偏光成分は偏光分離面11で反射されることなく透過して第2の端面10bへ入射されるようになっている。
【0026】
p偏光成分が入射される第2の端面10bには、1/4波長フィルム12が備えられている。この1/4波長フィルム12は、互いに直交する方向に振動する直線偏光の間に1/4波長(90°)の位相ずれを発生させる複屈折部材であり、本実施形態では、偏光分離面11を透過したp偏光成分を円偏光に変換するようになっている。
【0027】
また、1/4波長フィルム12には、金属反射膜15が成膜あるいは貼り合わされて形成されている。この金属反射膜15は、例えばアルミニウムなどの光反射性の高い金属からなり、入射光を同一の光軸方向に反射させるようになっている。
【0028】
このような構成により、p偏光成分は1/4波長フィルム12を透過して円偏光に変換され、金属反射膜15で反射される際に逆まわりの円偏光に変換され、再度1/4波長フィルム12から出た時にはs偏光成分に変換される。そして、反射されたs偏光成分は、偏光分離面11で反射されて第4の端面10dへ入射される。
【0029】
また、第3の端面10cには、光路長調整部材13が設けられている。この光路長調整部材13は、第3の端面10cを透過した光の光路長を変換(短縮又は伸長)する部材であり、少なくとも、偏光ビームスプリッター10のプリズム部材10Lと同じ屈折率を有するガラスで形成される。本実施形態においてこの光路長調整部材13は、プリズム部材10L及び10Rと同一の材料で形成されているとともに、その入射面13bが、第3の端面10cと貼り合わせられ、プリズム部材10Rと一体的に構成されている。また、光路長調整部材13の光軸方向の長さLは、偏光分離面11から第2の端面10bに至る距離(A/2)の2倍となっている。
【0030】
このような形状及び部材からなる光路長調整部材13と偏光ビームスプリッター10とが貼り合わされた偏光分離装置1では、偏光分離面11を透過し、第2の端面10b及び偏光分離面11で反射され、第4の端面10dに至る光路長と、偏光分離面11で反射され、光路長調整部材13を透過して射出面13aに至る光路長とが等しくなっている。
【0031】
ここで、この偏光分離装置1において分離されたs偏光成分の光路長について説明する。先ず、立方体形状である偏光ビームスプリッター10の一辺の長さをAとすると、偏光ビームスプリッター10に入射したp偏光成分は、入射した第1の端面10aから射出する第4の端面10dまで2Aの距離を伝播することとなる。ここで、偏光ビームスプリッター10を構成するガラスの屈折率をnとすると、その光路長はn×2Aとなる。一方、偏光ビームスプリッター10に入射したs偏光成分は、入射した第1の端面10aから射出する第3の端面10cまで、Aの距離を伝播することとなり、その光路長はn×Aとなる。
【0032】
そのため、第3の端面10cを出るs偏光成分に対する光路長を、第4の端面10dを出るs偏光成分の光路長に合わせるために、1辺の長さをAとし、屈折率が偏光ビームスプリッター10の屈折率と同一である部材の光路長調整部材13を第3の端面10cに貼り合わせた構成とする。このような構成により、偏光ビームスプリッター10に入射するs偏光成分は、第1の端面10aから光路長調整部材13を射出するまで2Aの距離を伝播し、その光路長はn×2Aとなる。これにより、偏光ビームスプリッター10に入射するp偏光成分が、入射してから第4の端面10dを射出するまでの光路長n×2Aと同じ光路長とすることができる。
【0033】
なお、本実施形態では、光路長調整部材13の屈折率が、偏光ビームスプリッター10を構成する部材の屈折率nと同一の屈折率の部材を用いたが、本発明は、これに限定するものではなく、例えば、偏光ビームスプリッター10を構成する部材の屈折率nと異なる部材を用いてもよい。この場合、光路長調整部材13の屈折率が、偏光ビームスプリッター10の屈折率nと異なるn’である場合、光路長調整部材13の長さA’を調整し、n’×2A’=n×2Aを満たす長さとすればよい。
【0034】
光路長調整部材13の射出面13aには、透過率調整フィルター14が貼り合わせられている。透過率調整フィルター14は、光路長調整部材13の射出面13aを透過する光の強度を調整し、第4の端面10dから射出される光の強度と射出面13aを透過する光の強度とのバランスを図るための光吸収型のフィルター部材である。この透過率調整フィルター14としては、例えば、ガラスなどの基板に光を吸収する物質を混ぜた構成であってもよいし、基板の表面に光学薄膜を成膜する構成であってもよい。
【0035】
このような本実施形態の偏光分離装置1によれば、第1の端面10aから入射した光を、その偏光方位角に応じて、第3の端面10c及び第4の端面10dから射出することができ、入射光の各偏光成分を、入射方向に直交する2方向に振り分けることが可能となる。この結果、本発明によれば、例えば、1枚の表示パネルに表示される偏光方位角の異なる2つの映像を、観察者の左右の眼に振り分けて提示することができる。
【0036】
これにより、本発明では、部品点数やその組立工数を減少させて部品点数やその組立工数を減少させて製造コストの低廉化、内部設計の設計の容易化、及び装置の小型化を図ることができる。なお、このとき、偏光方位角の異なる2つの映像として、左右の眼に視差がある異なる映像を、観察者の左右の眼に振り分けて提示すれば、立体表示も可能となる。
【0037】
また、本実施形態では、光路長調整部材13を第3の端面10cに貼り合わせているので、それぞれの射出面である第4の端面10d及び光路長調整部材13の射出面13aを射出するまでの光路長を等しくすることができる。さらに、本実施形態では、透過率調整フィルター14を設けているので、2方向に振り分けられた光の強度を等しくすることができる。この結果、左右の光学系における明るさを等しくでき、より見やすい映像を提示できる。
【0038】
<B:第2実施形態>
次に、以上の構成を有する偏光分離装置1を利用したヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDと称する)について説明する。なお、本実施形態において、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その機能等は特に言及しない限り同一であり、その説明は省略する。
【0039】
図2は、本実施形態に係るHMD100を人の頭部80に装着させた状態を上部より示す説明図であり、図3は、本実施形態に係るHMD100の内部構造を模式的に示した上面図である。図4は、本実施形態に係る表示パネル40の画素の配置を示す平面図であり、図5は、本実施形態に係る表示パネル40上の偏光素子の配置を示す平面図である。
【0040】
図2に示すように、HMD100は、少なくとも、頭部80に装着可能な一対の装着部102,102と、装着部102,102に連結されて人の両眼81の前方に配置される本体部101とを備えている。装着部102,102は、図2に示すように、本体部101の両端から内側に延びる一対のテンプルからなり、両側頭部と接触してHMD100を頭部80に固定するようになっている。
【0041】
本体部101は、画像を表示して観察者に両眼で観察させる装置であり、使用者の眼前に筐体が配置され、その筐体の内部に表示パネル40と、左目用導光光学系20と右目用導光光学系30との一対の光学系と、偏光分離装置1と、表示パネル側レンズ50とを備えている。なお、本体部101の筐体は、前方が開放状態であるか、若しくはガラス等の透明な部材が配置された状態でとなっている。
【0042】
本実施形態において、偏光分離装置1は、筐体の略中央に配置され、偏光分離装置1の中心が頭部80の中心線CLに配置されるようになっている。本実施形態では、図2及び図3に示すように、偏光分離装置1を構成する偏光ビームスプリッター10の一辺の長さと光路長調整部材13の一辺の長さは、同じAであるため、偏光ビームスプリッター10と光路長調整部材13とを貼り合わせた部分が頭部80の中心線CLに位置する。
【0043】
この偏光分離装置1の頭部80側には、表示部である表示パネル40と表示パネル側レンズ50とが配置されている。表示パネル40は、所定の偏光方位角のp偏光成分及びp偏光成分とは異なる偏光方位角のs偏光成分の両方からなる映像を、入射光として第1の端面10aに入射させる表示手段であり、本実施形態では、有機ELディスプレイが用いられている。有機ELディスプレイは、例えば、有機材料を含む少なくとも一層の有機薄膜を画素電極と対向電極とで挟んだ構造とし、適当な構成をもつ駆動回路によって駆動される。このうち画素電極は例えば陽極として、対向電極は陰極として機能する。両者間に電流が流されると、前記有機薄膜で電子及び正孔間の再結合が生じ、これにより、当該有機薄膜ないしは有機EL素子が発光するようになっている。
【0044】
このような有機ELディスプレイである表示パネル40は、図2に示すように、頭部80の中心線CLよりも左目81aに所定距離Dだけ偏心して配置され、前方に向けて映像光を射出する。本実施形態では、偏光ビームスプリッタ10と光路長調整部材13の部材長が等しいことから、距離Dは、偏光ビームスプリッター10の長さAの1/2の長さとなっている。そして、映像光は偏光分離装置1で左右に分離され、左目用導光光学系20と右目用導光光学系30によって左右の眼に導かれ、左右の眼は表示パネル40の映像の拡大された虚像を見ることができるようになっている。
【0045】
ここで、表示パネル40を構成する画素の配置を図4及び図5を用いて説明する。図4に示すように、表示パネル40には、多数の画素41が配置されており、各画素41は、右目用の映像を生成するために使われる画素Rと、左目用の映像を生成するために使われる画素Lがz軸方向に沿って1行ごとに交互に配置されている。また、画素R及び画素Lは、それぞれ、赤色、緑色、及び青色を表示する画素で構成されており、それらは、図4に示すように、x軸方向に並んで配置されている。具体的には、赤色の画素r、緑色の画素g、青色の画素bがこの順番で、かつ、周期的に配列され、連続する3つの画素Rr、画素Rg、画素Rb、又は連続する3つの画素Lr、画素Lg、画素Lbにより1つのカラー画素が形成される。すなわち、Rr(赤色)、Rg(緑色)、Rb(青色)のセットが右目用のカラー映像を生成するための画素単位となり、Lr(赤色)、Lg(緑色)、Lb(青色)のセットが左目用のカラー映像を生成するための画素単位となる。
【0046】
さらに、表示パネル40の偏光分離装置1方向には、図5に示すように映像に含まれる各偏光成分を分離させる偏光フィルター42が備えられている。本実施形態において、偏光フィルター42は、透明基板に、アルミニウム、銀、Cr等の金属線(線材)を一定周期かつ平行に配置したワイヤーグリッド型の偏光板である。そして偏光フィルター42には、偏光分離装置1に対して、s偏光成分が射出されるようなパターンを有する右目用のワイヤーグリッド型偏光フィルター42aと、偏光分離装置1に対してp偏光成分が射出されるようなパターンを有するワイヤーグリッド型偏光フィルター42bとが形成される。
【0047】
表示パネル側レンズ50は、図3に示すように、表示パネル40から射出された映像光(s偏光成分及びp偏光成分)を集束させるための対物レンズであり、表示パネル40に対して略平行に配置されており、表示パネル側レンズ50で集束された映像光を偏光分離装置1に入射させる。
【0048】
一方、偏光分離装置1の両側部には、右目用導光光学系30と、左目用導光光学系20とが備えられている。ここで、左目用導光光学系20及び右目用導光光学系30は、図3に示すように、偏光分離装置1の端面から等しい距離dだけ離れて配置されている。具体的に、図3に示すように、左目用導光光学系20は、偏光ビームスプリッター10の第4の端面10dから所定距離d離れて配置されている。右目用導光光学系30は、光路長調整部材13の射出面13aから所定距離d離れて配置されている。
【0049】
この右目用導光光学系30は、第3の端面10cから射出された映像の拡大された虚像を、それぞれ観察者の右の眼で観察可能とする光学系であり、左目用導光光学系20は、第4の端面10dから射出された映像の拡大された虚像を、それぞれ観察者の左の眼で観察可能とする光学系である。これらの光学系は、偏光分離装置1において分離されたs偏光成分を右目81b及び左目81aへそれぞれ投射する。
【0050】
本実施形態において、左目用導光光学系20と右目用導光光学系30は、同一の光学要素から構成され、それぞれ、接眼レンズ23,33と、反射ミラー22,32と、リレーレンズ21,31とを備えている。
【0051】
リレーレンズ21,31は、表示パネル40に表示された映像を接眼レンズ23、33に伝達するレンズである。本実施形態において、リレーレンズ21,31は、偏光分離装置1の第3の端面10c及び第4の端面10dと略平行に配置されている。
【0052】
反射ミラー22,32は、リレーレンズ21,31から射出された光を右目81b及び左目81a方向へと反射させるミラー部材であり、例えば誘電体多層膜、アルミニウム膜、銀膜等による反射膜が形成されている。また、反射ミラー22,32は、入射される光に対して略45度の角度を有し、かつ、反射面が頭部80側になるように配置されており、光学内レンズ21,31を通過した光は、反射ミラー22,32で90度屈曲されて、右目81b及び左目81a方向へと反射される。なお、本実施形態において、反射ミラー22,32は、光透過性を有さず、かつ照射された光を反射するミラーとなっている。
【0053】
接眼レンズ23,33は、画像情報に応じた画像光を拡大し、観察者の眼に投射する凸レンズであり、右目81b及び左目81aと略平行に配置されている。なお、本実施形態において、左目用導光光学系20と右目用導光光学系30は、接眼レンズ23,33と、反射ミラー22,32と、リレーレンズ21,31とを備えた構成としたが、これに限定するものではなく、適切なレンズ系を組み合わせた種々の光学系も適用することが可能である。
【0054】
なお、本実施形態におけるHMD100において、表示パネル40の映像を左右に振り分ける場合、偏光分離装置1及び反射ミラー22,32によって、左右の眼には画面の左右が反転した映像が提示されるため、右目用映像と左目用映像では画面の左右を反転させた映像を表示させる。
【0055】
このHMD100における虚像の反転について説明する。図6(a)は、HMD100における右目用映像の虚像の反転状態を示す説明図であり、図6(b)は、HMD100における左目用映像の虚像の反転状態を示す説明図である。なお、本実施形態では、表示パネル側レンズ50及びリレーレンズ21,31による虚像の反転は、左右対称となっているため考慮せず、偏光分離装置1及び反射ミラー22,32による虚像の反転についてのみ説明する。また、本実施形態において、右目用映像と左目用映像として、表示パネル40から、同一の映像(左向き矢印の映像P11、P21)が射出されたものとする。
【0056】
先ず、図6(a)に示すように、表示パネル40から射出された右目用映像P11は、偏光分離装置1の偏光分離面11により反射されて、90度回転して反射ミラー32へ射出される。この際、反射ミラー32から見た右目用映像P12の虚像は左向き矢印の映像となっている。そして、右目用映像P12は、反射ミラー32で反射されて、90度回転して右目81bへ射出される。この場合に、右目81bから見た右目用映像P13の虚像は、右向き矢印の映像となる。
【0057】
一方、図6(b)に示すように、表示パネル40から射出された左目用映像P21は、偏光分離面11を透過して、金属反射膜15で反射される。この際、偏光分離面11から見た左目用映像P22の虚像は左向き矢印の映像となっている。その後、左目用映像P22は、偏光分離面11で反射されて90度回転して、反射ミラー22へ射出される。この場合には、反射ミラー22から見た左目用映像P23の虚像は、右向き矢印の映像となる。そして、反射ミラー22に入射した左目用映像P23は反射されて、90度回転して左目81a方向へ射出される。この際、左目81aから見た左目用映像P24の虚像は、左向き矢印の映像となる。
【0058】
このように、右目用映像と左目用映像とで、同一の映像(左向き矢印の映像P11及びP21)を射出した場合であっても、右目には右向き矢印の映像P13が提示され、左目には左向き矢印の映像P24が提示されるようになる。したがって、本実施形態では、HMD100によって、表示パネル40の映像を左右に振り分ける場合、右目用映像と左目用映像では、表示パネル40において画面の左右を反転させた映像を表示させる。
【0059】
以上のように、本実施形態では、第1実施形態の偏光分離装置1を用いることによって、表示パネル40に表示された偏光方位角の異なる2つの映像を2つの方向に振り分け、振り分けられた各映像を、左目用導光光学系20及び右目用導光光学系30を通じて、観察者の左右の眼にそれぞれ独立して提示することができる。このとき、偏光方位角の異なる2つの映像として、左右の眼に視差がある異なる映像を、観察者の左右の眼に振り分けて提示すれば、立体表示も可能となる。
【0060】
特に、本実施形態では、2方向に振り分けられた光について、偏光分離装置1に入射してから出射されるまでの光路長を等しくすることができるので、左右の眼に表示パネルの拡大された虚像を提示する光学系を、左右それぞれで同一のレンズ系、ミラーを用いることができる。この結果、左右の光学系における収差や倍率が等しくなるように設計しやすくなり、見やすい映像を提示できるとともに、共通の部品を利用できるので、部品点数やその組立工数を減少させて製造コストの低廉化を図ることができる。
【0061】
また、本実施形態では、表示パネル40の中心位置が、観察者の両眼の中心位置に対して所定距離だけ偏心しているので、偏光分離装置1が左右非対称となる場合であっても、偏光分離装置1や左右の光学系を複雑化させることなく、その設置箇所を確保することができ、設計の容易化を図ることができる。さらに、本実施形態では、表示パネル40を1枚だけ用いて両眼に異なる画像を提示することができるので、HMD100の小型化、低コスト化を図ることができる。さらに、この際、右目及び左目用の各画素は、行方向に配列する構成としているので、水平解像度の劣化を抑えることができる。
【0062】
<C:第3実施形態>
図7は、本発明の第3実施形態に係るHMD100aの内部構造を模式的に示した上面図である。本実施形態に係るHMD100aは、表示パネル40を液晶ディスプレイとした点でHMD100と相違する。なお、本実施形態について、上述した第1実施形態及び第2実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その機能等は特に言及しない限り同一であり、その説明は省略する。
【0063】
本実施形態で用いる表示パネル40aは、射出側の偏光板によって特定の方向に振動する偏光成分を射出できる液晶ディスプレイとなっている。この表示パネル40aの画素配列は、第1の実施形態で説明したような特殊な配列ではなく、通常の液晶ディスプレイの画素配列、すなわち、赤、緑、青のドットから構成される画素が2次元的に並んでいる配列となっている。
【0064】
また、本実施形態においては、表示パネル40aの前面に、偏光面回転素子60が配置される。偏光面回転素子60は、液晶に印加する電圧によって、偏光分離装置1に入射させる光の偏光方位角をそのまま維持するか、90°回転させるかの切り替えを行い、所定の偏光成分のみを選択的に射出させる部材であり、強誘電性液晶(FLC)若しくは反強誘電性液晶(AFLC)が用いられる。
【0065】
本実施形態においては、左目用の映像と右目用の映像が順番に表示されるように、図示しないCPUなどの制御部により制御される。具体的には、左目用映像が表示されている場合には、制御部は、その偏光面を偏光面回転素子60によって偏光分離装置1に対するp偏光成分となるように制御し、一方、右目用映像が表示されている時にはその偏光面を偏光面回転素子60によって偏光分離装置1に対するs偏光成分となるように制御する。このようにして、左右の眼に時間的に切り替わる映像を提示し、左右の眼に対して異なる映像を提示する。
【0066】
このような本実施形態によれば、通常の液晶ディスプレイを用いた場合であっても、2方向に振り分けられた光について、偏光分離装置1に入射してから出射されるまでの光路長を等しくすることができ、左右の眼に表示パネルの拡大された虚像を提示する光学系を、左右それぞれで同一のレンズ系、ミラーを用いることができる。この結果、左右の光学系における収差や倍率が等しくなるように設計しやすくなり、見やすい映像を提示できるとともに、共通の部品を利用できるので、部品点数やその組立工数を減少させて製造コストの低廉化を図ることができる。
【0067】
<D:変更例>
なお、上述した各実施形態の説明は、本発明の一例である。このため、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることはもちろんである。図8は、本発明の変更例に係るヘッドマウントディスプレイ100cの水平断面図である。なお、本変更例においても、上述した各実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その機能等は特に言及しない限り同一であり、その説明は省略する。
【0068】
例えば、上述した第2及び第3実施形態において、左目用導光光学系20及び右目用導光光学系30における反射ミラー22,32は、透過性のないミラー部材を用いて説明したが、本発明は、これに限定するものではなく、例えば、図8に示すように、ミラー部材をハーフミラー22a,32aに置換え、いわゆるシースルー型のHMD100aを構成することもできる。
【0069】
この場合、HMD100cには、接眼レンズによる屈折力を打ち消す凹レンズ24,34をハーフミラー22a,32aを挟んで、接眼レンズ23,33とは反対側に配置する。このような構成により、外部から入射される光は、凹レンズ24,34及び接眼レンズ23,33を通過することで、それぞれの眼に提示される外界のゆがみを小さくして外界を見やすくすることができる。
【0070】
また、例えば、上述した第2及び第3実施形態において、HMD100は、偏光ビームスプリッター10の第4の端面10dから左目用の左目用導光光学系20までの距離dと、光路長調整部材13の射出面13aと右目用の右目用導光光学系30までの距離dを等しくなるような構成とし、表示パネル40の中心線は両眼の中心線CLから所定距離Dだけ偏心した構成としたが、このような構成に限定するものではなく、光路長調整部材13の屈折率を偏光ビームスプリッター10の屈折率とは異なる屈折率とするとともに、光路長調整部材13の長さを調整して表示パネル40の中心位置を両眼の中心線CL上に位置する構成としてもよい。
【0071】
具体的には、図9に示すように、偏光ビームスプリッター10の屈折率をnとし、偏光ビームスプリッター10の各辺の長さをAとする。また、光路長調整部材13の屈折率を偏光ビームスプリッター10の屈折率とは異なるn’として、光が通過する辺の長さをBとする。また、第4の端面10dからリレーレンズ21までの距離をdとして、光路長調整部材13の射出面13aからリレーレンズ31までの距離をd’とする。
【0072】
この場合、偏光ビームスプリッター10に入射したp偏光成分は、入射した第1の端面10aから射出する第4の端面10dまで2Aの距離を屈折率nで伝播し、その後、第4の端面10dからリレーレンズ21までを屈折率無しで伝播するので、リレーレンズ21までの光路長はn×2A+dとなる。
【0073】
一方、偏光ビームスプリッター10に入射したs偏光成分は、入射した第1の端面10aから射出する第3の端面10cまで、Aの距離を屈折率nで伝播し、その後、光路長調整部材13の長さBを屈折率n’で伝播する。さらに、光路長調整部材13の射出面13aからリレーレンズ31までの長さd’を屈折率無しで伝播するので、その光路長はn×A+n’×B+d’となる。ここで、2つの光路長が同じである場合には
n×2A+d=n×A+n’×B+d’の関係が成り立つ。
ここで、表示パネル40の中心位置を両眼の中心線CL上に位置するには、d=B+d’である必要があるため、上記式にd’=d−Bを代入すると、
n×A+d=n’×B+d−B
となる。
【0074】
この式を変形すると、
n×A=n’×B−B → n×A=B(n’−1)
となり、
B=n×A/n’−1
という関係性を有する。
【0075】
したがって、このような関係性を有する光路長調整部材13の長さBと屈折率n’を用いることで、表示パネル40の中心位置を両眼の中心線CL上に配置させることができる。
【0076】
また、上述した各実施形態では、偏光ビームスプリッター10は、全て同じ屈折率のガラスで形成させるとともに、光路長調整部材13は偏光ビームスプリッター10と同じ屈折率のガラスで形成させて、偏光ビームスプリッター10の屈折率と光路長調整部材13の屈折率とは同一としたが、本発明は、これに限定するものではなく、分離された2つのs偏光の光路長が同一となればよく、例えば、偏光ビームスプリッター10のうち、偏光分離面11から第2の端面10bに至るプリズム部品10Lを、光路長調整部材13と同一の部材で形成させ、他の部分であるプリズム部品10Rを、光路長調整部材13と異なる部材で構成されていてもよい。
この場合、偏光ビームスプリッター10のプリズム部品10Lと光路長調整部材13の屈折率が、プリズム部品10Rを構成するガラスの屈折率nと異なるn’とし、光路長調整部材13の長さCすると、偏光ビームスプリッター10の第1の端面(入射面)10aから入射して偏光分離面11で反射し、光路長調整ガラスの出口(射出面)13aまでの光路長は、n×A+n’×Cとなる。一方、偏光ビームスプリッターの第一の端面(入射面)10aから入射して偏光分離面11を透過し、金属反射膜15で反射し、偏光分離面11で反射して偏光ビームスプリッターの第4の端面10dに至る光路長は、n×(A/2)+n’×(3A/2)となる。これらの式で与えられる光路長が等しいとすると、光路長調整部材13の長さCを、n’×C=(A/2)×(3n’−n)を満たす長さとすればよい。
【0077】
このような本変更例によれば、偏光分離面11から第2の端面10bに至るプリズム部品10Lと、光路長調整部材13とを同一の部材で形成することにより、偏光分離装置1において2方向に振り分けられる光について、偏光分離装置1に入射してから出射されるまでの光路長を、容易に等しくすることができるため、光学系の設計を容易なものとすることができるとともに、原材料の調達を容易にして製造コストを低減することができる。
【0078】
さらに、上述した各実施形態では、表示パネル40の各画素の配列は、本発明はこれに限定するものではなく、均等に右目用の画素Rと左目用の画素Lが分散して配置されていればよく、横方向、斜め方向、又は市松模様等の各種のパターンを用いてもよい。
【0079】
また、上述した第2実施形態及び第3実施形態では、偏光ビームスプリッター10と光路長調整部材13とを貼り合わせる構成としたが、これに限定するものではなく、例えば、偏光ビームスプリッター10と、光路長調整部材13とを、同一の材質で一体成型によって一体化してもよい。この場合には、貼り合わせた偏光ビームスプリッター10の第3の端面10cと光路長調整部材13の入射面13bとの間に生じる屈折率などの変動を低減することができる。また、偏光分離装置1全体の部品点数を減少させることができ、よりコストの低廉化を図ることができる。
【0080】
さらに、上述した第2実施形態及び第3実施形態では、HMD100の装着者側に表示パネル40を配置し、外方に向けて映像光を射出する構成としたが、このような構成に限定するものではなく、HMD100の外側に表示パネル40を配置し、装着者側に向けて映像光を射出する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…偏光分離装置、10…偏光ビームスプリッター、10L,10R…プリズム部品、10a…第1の端面、10b…第2の端面、10c…第3の端面、10d…第4の端面、11…偏光分離面、12…1/4波長フィルム、13…光路長調整部材、13a…射出面、13b…入射面、14…透過率調整フィルター、15…金属反射膜、20…左目用導光光学系、21,31…リレーレンズ、22,32…反射ミラー、22a,32a…ハーフミラー、23,33…接眼レンズ、24,34…凹レンズ、30…右目用導光光学系、40(40a)…表示パネル、41…画素、42…偏光フィルター、42a,42b…ワイヤーグリッド偏光フィルター、50…表示パネル側レンズ、60…偏光面回転素子、80…頭部、81…両眼、81a…左目、81b…右目、100(100a,100b,100c)…ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、101…本体部、102…装着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光が入射される第1の端面と、
前記入射光のうち所定の偏光方位角のs偏光成分を反射するとともに、前記所定の偏光方位角とは異なる偏光方位角のp偏光成分を透過させる偏光分離面と、
前記第1の端面と対向配置され、前記偏光分離面を透過したp偏光成分を、前記s偏光成分に変換するとともに、前記入射光と同一の光軸方向に反射させる第2の端面と、
前記偏光分離面を透過することなく前記偏光分離面で反射されたs偏光成分が射出される第3の端面と、
前記第3の端面と対向配置されるとともに、前記第2の端面及び前記偏光分離面で反射されたs偏光成分が射出される第4の端面と、
を備えることを特徴とする偏光分離装置。
【請求項2】
前記第3の端面を透過した光の光路長を変換する光路長調整部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の偏光分離装置。
【請求項3】
前記偏光分離面から前記第3の端面に至る部材と、前記光路長調整部材とが一体的に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の偏光分離装置。
【請求項4】
前記光路調整部材から射出される光の透過率を変化させる透過率調整フィルターをさらに備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の偏光分離装置。
【請求項5】
前記偏光分離面を透過し、前記第2の端面及び前記偏光分離面で反射され、前記第4の端面に至る光路長と、前記偏光分離面で反射され、前記光路調整部材を透過して射出面に至る光路長とが等しい
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の偏光分離装置。
【請求項6】
前記第1の端面から前記偏光分離面に至る部材と、前記偏光分離面から前記第2の端面に至る部材と、前記光路長調整部材と、が同一の部材で形成されるとともに、前記光路調整部材の光軸方向の長さが、前記偏光分離面から前記第2の端面に至る距離の2倍であることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の偏光分離装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載された前記偏光分離装置を備えた表示装置であって、
所定の偏光方位角のp偏光成分及び前記p偏光成分とは異なる偏光方位角のs偏光成分のいずれか又はその両方からなる映像を、前記入射光として前記第1の端面に入射させる表示部と、
前記第3又は第4の端面から射出された映像の拡大された虚像を、それぞれ観察者の左右の眼で観察可能とする左目用導光光学系及び右目用導光光学系と、
を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項8】
前記左目用導光光学系と前記右目用導光光学系が同一の光学要素から構成されていることを特徴とする請求項7記載の表示装置。
【請求項9】
前記表示部の中心位置が、前記観察者の両眼の中心位置に対して偏心していることを特徴とする請求項7又は8に記載の表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−114021(P2013−114021A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259917(P2011−259917)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】