説明

偏光変換光源装置およびそれを用いた投射型液晶表示装置

【課題】光の利用効率を高く保ちつつ小型化された偏光変換光源装置を提供することを目的とする。
【解決手段】互いに略直交し、所定の波長の光を反射する二つの反射面13r、13bを有する無偏光クロスダイクロイックプリズム13と、互いに異なる波長の光をそれぞれ発する三つの光源11r、11g、11b、と、各光源に対応する三つの反射体12r、12g、12bと、反射型の偏光分離体14と、を有し、反射体12r、12g、12bは、偏光分離体14において反射された各色光が反射され、無偏光クロスダイクロイックプリズム13に入光するように配置されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源から出光された光束を偏光方向の揃った偏光に変換する偏光変換光源装置およびそれを用いた投射型液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイなどの液晶表示装置として、光源からの出射光に対して表示画像に対応する変調を施した後、投写光学系を介して投写画像を形成するものが知られている。この液晶表示装置で使用される液晶ライトバルブは、光源からの光の一方の偏光成分のみを使用し、通常は、光源からの光の他方の偏光成分は使用されない。
【0003】
近年、光源からの光の利用効率改善のため、上述の使用されない偏光光を、偏光変換装置を用いて使用できる偏光光に変換する構成が提案されている。例えば、特許文献1には、多数の偏光板やクロスダイクロイックプリズムなどを偏光変換装置として用いるプロジェクタが開示されている。
【0004】
特許文献1に記載される偏光変換光源装置では、偏光変換装置への入射光の一方の偏光成分は、偏光分離面を透過し、1/2波長位相差フィルムを透過して直交する偏光光に変換される。一方、入射光の別の一方の偏光成分は、偏光分離面で反射された後、反射鏡によって反射され、変換された偏光光と略同じ方向に出光される。つまり、偏光分離面で反射された偏光光と、偏光分離面を透過して偏光変換された偏光光とは、略位相の揃った光として略同じ方向に出光される。このように、特許文献1に記載の偏光変換光源装置においては、入射光の一の偏光成分を別の一の偏光成分に変換することにより、液晶ライトバルブに入射される光の利用効率が改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−258744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の偏光変換光源装置は、白色光源からの白色光をダイクロイックミラーによって赤、緑、青の各色光に分離し、さらに、赤、緑、青の各色光をクロスダイクロイックにより合成して光学像を形成するため、装置が大型化してしまうという問題がある。図4は、従来の偏光変換光源装置41を用いた液晶プロジェクタの構成例を示す模式図である。図4に示される偏光変換光源装置41では、白色光源42から出光された光は、偏光性を有するダイクロイックプリズム43で色分解された後、偏光分離体44r、44g、44bにより、透過光と反射光に分離される。各色の透過光は透過型液晶バルブ45r、45g、45bを透過し、再度、偏光性を有するダイクロイックプリズム46で合成され、投影レンズ47を経由し画像が投影される。このような構成の偏光変換光源装置41では、光源からの光を、各色の偏光分離面に効率よく集光、透過させるために複雑なレンズ設計と長い光路が必要となる。このため、装置の小型化は困難である。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、光の利用効率を高く保ちつつ小型化された偏光変換光源装置およびそれを用いた投射型液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の偏光変換光源装置は、互いに略直交し、所定の波長の光を反射する二つの反射面を有する無偏光クロスダイクロイックプリズムと、互いに異なる波長の光をそれぞれ発する三つの光源と、各光源に対応する三つの反射体と、反射型の偏光分離体と、を有し、第一の光源は、当該光源からの光が前記無偏光クロスダイクロイックプリズムの第一面に入光するように前記第一面側に配置され、第二の光源は、当該光源からの光が前記無偏光クロスダイクロイックプリズムの前記第一面と対向する第二面に入光するように前記第二面側に配置され、第三の光源は、当該光源からの光が前記無偏光クロスダイクロイックプリズムの前記第一面および前記第二面に隣接する第三面に入光するように前記第三面側に配置され、前記偏光分離体は、前記無偏光クロスダイクロイックプリズムの前記第三面と対向する第四面から出光した光が入光するように前記第四面側に配置され、第一の反射体は、前記偏光分離体において反射され、前記第一面から出光した光が入光するように前記第一面側に配置され、第二の反射体は、前記偏光分離体において反射され、前記第二面から出光した光が入光するように前記第二面側に配置され、第三の反射体は、前記偏光分離体において反射され、前記第三面から出光した光が入光するように前記第三面側に配置されたことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、三つの光源を用いると共に、各光源に対応する反射板を設けることによって、偏光分離体からの反射光を有効に利用することができる。このため、偏光変換光源装置からの出力光の強度を十分に確保することができる。また、白色光源を用いずに異なる波長の光を発する複数の光源を用いるため、光学系の設計が容易になり、また、偏光変換光源装置を小型化することができる。
【0010】
本発明の偏光変換光源装置において、前記第一面に入光した前記第一の光源からの光は、前記無偏光クロスダイクロイックプリズムの第一反射面において反射されると共に第二反射面を透過して前記第四面から出光し、その一部が前記偏光分離体において反射され、当該反射された光は前記第四面に入光し、前記第一反射面において反射されると共に前記第二反射面を透過して前記第一面から出光し、前記第一の反射体において反射されて再度前記第一面に入光し、前記第二面に入光した前記第二の光源からの光は、前記第一反射面を透過すると共に前記第二反射面において反射されて前記第四面から出光し、その一部が前記偏光分離体において反射され、当該反射された光は前記第四面に入光し、前記第一反射面を透過すると共に前記第二反射面において反射されて前記第二面から出光し、前記第二の反射体において反射されて再度前記第二面に入光し、前記第三面に入光した前記第三の光源からの光は、前記第一反射面を透過すると共に前記第二反射面を透過して前記第四面から出光し、その一部が前記偏光分離体において反射され、当該反射された光は前記第四面に入光し、前記第一反射面を透過すると共に前記第二反射面を透過して前記第三面から出光し、前記第三の反射体において反射されて再度前記第三面に入光しても良い。
【0011】
本発明の偏光変換光源装置において、前記反射体と前記偏光分離体との光路間に、偏光回転体を設けても良い。また、本発明の偏光変換光源装置において、前記偏光回転体が、広帯域1/4波長位相差フィルムであっても良い。また、本発明の偏光変換光源装置において、前記偏光回転体が、少なくとも1枚の1/4波長位相差フィルムと少なくとも1枚の1/2位相差フィルムとの積層体であっても良い。
【0012】
上記構成によれば、偏光分離体からの反射光の偏光方向を適切に変換することができるため、偏光分離体からの反射光をより有効に利用することができる。
【0013】
本発明の偏光変換光源装置において、前記偏光分離体が、ワイヤグリッド偏光板であっても良い。また、本発明の偏光変換光源装置において、前記偏光分離体が、複屈折材料を有する多層フィルムであっても良い。
【0014】
本発明の偏光変換光源装置において、前記光源と前記無偏光ダイクロイックプリズムの間にレンズを具備しても良い。
【0015】
本発明の投射型液晶表示装置は、前記偏光変換光源装置と、透過型液晶素子と、投射レンズと、を具備し、前記透過型液晶素子は、前記偏光変換光源装置から出光した光が前記透過型液晶素子に入光するように配置され、前記投射レンズは、前記透過型液晶素子から出光した光が前記投射レンズに入光するように配置されたことを特徴とする。
【0016】
本発明の投射型液晶表示装置において、前記偏光変換光源装置の出光側に吸収型偏光板を具備しても良い。
【0017】
本発明の投射型液晶表示装置は、前記偏光変換光源装置と、反射型液晶素子と、ポーラライジングビームスプリッターと、投射レンズと、を具備し、前記反射型液晶素子および前記ポーラライジングビームスプリッターは、前記偏光変換光源装置から出光した光が前記ポーラライジングビームスプリッターを通じて前記反射型液晶素子に入光するように配置され、前記投射レンズは、前記反射型液晶素子から出光した光が前記ポーラライジングビームスプリッターを通じて前記投射レンズに入光するように配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、三つの光源を用いると共に、各光源に対応する反射板を設けることによって、偏光分離体からの反射光を有効に利用することができる。このため、偏光変換光源装置からの出力光の強度を十分に確保することができる。また、白色光源を用いずに異なる波長の光を発する複数の光源を用いるため、光学系の設計が容易になり、また、偏光変換光源装置を小型化することができる。このため、光の利用効率を高く保ちつつ小型化された偏光変換光源装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】実施の形態に係る偏光変換光源装置の構成および赤色光の光路を示す模式図である。
【図1B】実施の形態に係る偏光変換光源装置の構成および青色光の光路を示す模式図である。
【図1C】実施の形態に係る偏光変換光源装置の構成および緑色光の光路を示す模式図である。
【図2】実施の形態に係る偏光変換光源装置を用いた透過型液晶プロジェクタの構成を示す模式図である。
【図3】実施の形態に係る偏光変換光源装置を用いた反射型液晶プロジェクタの構成を示す模式図である。
【図4】従来の偏光変換光源装置を用いた液晶プロジェクタの構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者らは、三つの光源を用いると共に、各光源に対応する反射板を設けることによって、装置を小型化しつつ、偏光分離体からの反射光を有効に利用できることを見出した。以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1A、図1B、図1Cは、本実施の形態に係る偏光変換光源装置1の構成を示す模式図である。図1A、図1B、図1Cに示される偏光変換光源装置1は、三つの光源11r、11g、11bと、光源11r、11g、11bに対応して配置される三つの反射体12r、12g、12bと、入射された光を反射または透過する無偏光クロスダイクロイックプリズム13と、反射型の偏光分離体14と、を有する。
【0022】
光源11rは、赤色光を発光可能に構成されている。同様に、光源11gは、緑色光を発光可能に構成されており、光源11bは、青色光を発光可能に構成されている。また、光源11rは、光源11rからの光が、無偏光クロスダイクロイックプリズム13の図面左側の一表面(第一面)に略垂直に入射するように、当該一表面側に配置されている。同様に、光源11gは、光源11gからの光が、無偏光クロスダイクロイックプリズム13の図面下側の一表面(第三面)に略垂直に入射するように、当該一表面側に配置されている。また、光源11bは、光源11bからの光が、無偏光クロスダイクロイックプリズム13の図面右側の一表面(第二面)に略垂直に入射するように、当該一表面側に配置されている。
【0023】
反射体12r、12g、12bは、光源11r、11g、11bに対応して、それぞれ、第一面側、第三面側、第二面側に配置されている。反射体12r、12g、12bは、反射型の偏光分離体14において反射された光を集光、反射して、無偏光クロスダイクロイックプリズム13に入光させる機能を有する。また、反射体12r、12g、12bは、光源11r、11g、11bからの光を集光する機能を有していても良い。
【0024】
無偏光クロスダイクロイックプリズム13は、所定の波長の光を反射し、他の波長の光を透過する二つの反射面13r、13bを有する。当該反射面13r、13bは、互いに略直交している。具体的には、無偏光クロスダイクロイックプリズム13の反射面13rは、赤色光を反射し、他の色の光を透過する。また、反射面13bは、青色光を反射し、他の色の光を透過する。このため、光源11rからの赤色光は、第一面から無偏光クロスダイクロイックプリズム13に入光し、反射面13bを透過し反射面13rにおいて反射されて、出光面である図面上側の一表面(第四面)から出光する。同様に、光源11bからの青色光は、第二面から無偏光クロスダイクロイックプリズム13に入光し、反射面13rを透過し反射面13bにおいて反射されて、出光面(第四面)から出光する。また、光源11gからの緑色光は、反射体12gによって集光されて無偏光クロスダイクロイックプリズム13に入光し、反射面13r、13bにおいて反射されることなく透過し、出光面(第四面)から出光する。これにより、無偏光クロスダイクロイックプリズム13の出光面から出光した赤色光、青色光、緑色光が合成され、無偏光の合成光(白色光)が得られる。
【0025】
なお、ここでは、反射面13r、13bは、赤色光または青色光を反射する構成としているが、本発明はこれに限られない。例えば、緑色光を反射する反射面を用いても良い。この場合、反射面において緑色光が反射されて無偏光クロスダイクロイックプリズム13の上側の一表面から出光するように、光源11gおよび反射体12gを配置することが必要である。また、光源11r、11g、11bの配置は、無偏光クロスダイクロイックプリズム13の反射面の構成に応じて、適宜変更することができる。
【0026】
偏光分離体14は、無偏光クロスダイクロイックプリズム13から出光された合成光が入光するように、無偏光クロスダイクロイックプリズム13の出光面(第四面)側に配置されている。また、偏光分離体14は、偏光分離体14に入光した合成光の一方の偏光成分(以下、第一の偏光)を透過し、もう一方の偏光成分(以下、第二の偏光)を反射するように構成されている。このため、合成光の第一の偏光は偏光分離体14を透過して出光し、第二の偏光は偏光分離体14において反射される。なお、偏光分離体14は平面形状であっても良いし、曲面形状であっても良い。曲面形状とすることで、偏光分離体14にレンズの機能を付加することができる。
【0027】
上述のように構成された偏光変換光源装置1において、光源11r、11g、11bからの光は、無偏光クロスダイクロイックプリズム13に入光し、無偏光クロスダイクロイックプリズム13の出光面から合成光として取り出される。当該合成光は、偏光分離体14に入光し、偏光分離体14からは第一の偏光が出光する。また、偏光分離体14において反射された第二の偏光は、無偏光クロスダイクロイックプリズム13の出光面である上側の一表面から無偏光クロスダイクロイックプリズム13に入光し、二つの反射面13r、13bによって再び各色光に分離される。すなわち、反射された合成光のうちの赤色光成分は出光面(第四面)に入光し、反射面13rにおいて反射されると共に反射面13bを透過して第一面から出光する。また、青色光成分は出光面(第四面)に入光し、反射面13rを透過すると共に反射面13bにおいて反射されて第二面から出光する。そして、緑色光成分は出光面(第四面)に入光し、反射面13rおよび反射面13bを透過して第三面から出光する。このように分離された各色光は、反射体12r、12g、12bによって集光され、再度、無偏光クロスダイクロイックプリズム13に入光する。
【0028】
ここで、例えば、偏光方向をランダム化するランダム偏光化素子や、位相を所定分量だけ変化させる位相差板などの偏光回転体15を、光源11r、11g、11b(または反射体12r、12g、12b)から偏光分離体14までの間の光路内に配置することで、偏光分離体14において反射された第二の偏光の偏光状態を変化させることができる。このため、偏光分離体14において反射され、再度、無偏光クロスダイクロイックプリズム13に入光された光の一方の偏光成分は、偏光分離体14を透過することができるようになり、偏光変換光源装置1からの出力光として利用することができる。なお、位相差板を用いる場合は、ランダム偏光化素子を用いる場合と比較して、少ない反射回数で、偏光分離体14からの反射光の偏光を揃え、出力光として取り出すことが可能である。つまり、位相差板を用いる場合には、ランダム偏光化素子を用いる場合と比較して、反射による光の散逸を抑制し、損失を低減できる。
【0029】
より詳細には、例えば、光源11rからの赤色光は、図1Aに示されるように出力光として取り出される。まず、光源11rから発せられた赤色光は、無偏光クロスダイクロイックプリズム13に入光し、反射面13rにおける反射を経て、出光面から赤色光R1として取り出される。取り出された赤色光R1は、偏光分離体14に入光し、偏光分離体14からは、第一の方向に偏光された赤色光R2が出光する。また、偏光分離体14において反射された第二の方向に偏光された赤色光は、偏光回転体15を透過することにより、第二の方向とは異なる方向の偏光を含む赤色光R3となる。赤色光R3は、無偏光クロスダイクロイックプリズム13に入光し、反射面13rによって再び反射される。反射面13rによって反射された光は、反射体12rによって集光され、再度、無偏光クロスダイクロイックプリズム13に入光する。そして、無偏光クロスダイクロイックプリズム13に入光した光は、反射面13rによって反射して、赤色光R4として取り出され、赤色光R4は、偏光回転体15を経て、偏光分離体14に入光する。偏光分離体14からは、第一の方向に偏光された赤色光R5が出光する。
【0030】
また、光源11bからの青色光は、図1Bに示されるように出力光として取り出される。まず、光源11bから発せられた青色光は、無偏光クロスダイクロイックプリズム13に入光し、反射面13bにおける反射を経て、出光面から青色光B1として取り出される。取り出された青色光B1は、偏光分離体14に入光し、偏光分離体14からは、第一の方向に偏光された青色光B2が出光する。また、偏光分離体14において反射された第二の方向に偏光された青色光は、偏光回転体15を透過することにより、第二の方向とは異なる方向の偏光を含む青色光B3となる。青色光B3は、無偏光クロスダイクロイックプリズム13に入光し、反射面13bによって再び反射される。反射面13bによって反射された光は、反射体12bによって集光され、再度、無偏光クロスダイクロイックプリズム13に入光する。そして、無偏光クロスダイクロイックプリズム13に入光した光は、反射面13bによって反射して、青色光B4として取り出され、青色光B4は、偏光回転体15を経て、偏光分離体14に入光する。偏光分離体14からは、第一の方向に偏光された青色光B5が出光する。
【0031】
また、光源11gからの緑色光は、図1Cに示されるように出力光として取り出される。まず、光源11gから発せられた緑色光は、無偏光クロスダイクロイックプリズム13に入光し、反射面13rおよび反射面13bを透過して、出光面から緑色光G1として取り出される。取り出された緑色光G1は、偏光分離体14に入光し、偏光分離体14からは、第一の方向に偏光された緑色光G2が出光する。また、偏光分離体14において反射された第二の方向に偏光された緑色光は、偏光回転体15を透過することにより、第二の方向とは異なる方向の偏光を含む緑色光G3となる。緑色光G3は、無偏光クロスダイクロイックプリズム13に入光し、反射面13rおよび反射面13bを透過する。反射面13rおよび反射面13bを透過した光は、反射体12gによって集光され、再度、無偏光クロスダイクロイックプリズム13に入光する。そして、無偏光クロスダイクロイックプリズム13に入光した光は、反射面13rおよび反射面13bを透過して、緑色光G4として取り出され、緑色光G4は、偏光回転体15を経て、偏光分離体14に入光する。偏光分離体14からは、第一の方向に偏光された緑色光G5が出光する。
【0032】
上述の光源11r、11g、11bとしては、例えば、LEDを用いることができる。なお、光源11r、11g、11bの先端にはレンズを取り付けて出光角度を制御してもよい。
【0033】
光源11r、11g、11bの周囲に配置される反射体12r、12g、12bとしては、例えば、凹面鏡を用いることができる。反射体12r、12g、12bの反射層は、例えば、反射体の主面に、真空蒸着やスパッタリングなどの方法を用い、アルミニウム等の金属を積層することで形成することができる。なお、反射層に用いる材料は、光を反射する材料であれば特に限定されず、アルミニウム、銀などの各種金属材料をはじめとする各種材料を用いることができる。光の反射率、吸光による光量低下を抑制する観点からは、アルミニウムや、SiO、TiO等の誘電体の多層膜を用いることが好ましい。生産性の観点からは、アルミニウムを用いることが好ましい。アルミニウムとSiO、TiOなどの層構造を用いても良い。
【0034】
反射層の厚みは、5nmから300nmが好ましく、10nmから200nmがより好ましい。5nm以上であれば、反射効率の低下が起きず、300nm以下であれば生産性に優れる。
【0035】
反射体12r、12g、12bおよび反射層は、少なくとも偏光分離体14から反射された光を再度反射させる機能を有していれば良く、その形状は制限されない。再度反射された光が平行光となるように、シミュレーション等を用いて設計するとより好ましい。
【0036】
無偏光クロスダイクロイックプリズム13は、赤色光、青色光、緑色光の分解、合成が可能であれば特に限定されない。例えば、国際公開2009/041038号パンフレットなどに開示のある無偏光クロスダイクロイックプリズムを用いることができる。
【0037】
偏光分離体14は、偏光分離可能な反射型の部材であれば特に限定されず、例えば、ワイヤグリッド偏光板や、複屈折材料を用いた多層フィルムなどを用いることができる。特に、ワイヤグリッド偏光板は、可視光における良好な反射特性および透過特性が得られるため好ましい。ワイヤグリッド偏光板としては、例えば、WGF(旭化成社製)などが挙げられる。複屈折材料を用いた多層フィルムとしては、例えば、D−BEF(スリーエム社製)などが挙げられる。
【0038】
偏光回転体15として用いるランダム偏光化素子としては、例えば、拡散フィルムやレンズフィルムを挙げることができる。このようなランダム偏光化素子を用いることによって、偏光分離体14を透過可能とし、光の利用効率を高めることができる。
【0039】
偏光回転体15として用いる位相差板としては、例えば、1/4波長位相差フィルムなどの位相差フィルムを挙げることができる。当該位相差フィルムとしては、COP、TAC基材の延伸品を用いることができる。また、各色の波長に対応した位相差フィルムを用いることが好ましい。また、複数の位相差フィルムを組み合わせて使用することもできる。なお、波長位相差フィルムに、レンズフィルムや拡散フィルムを組み合わせて用いる場合は、レンズフィルムや拡散フィルムが、位相差回転機能や複屈折を有さないことが好ましい。
【0040】
なお、位相差フィルムは、第二の偏光を第一の偏光に変換できればよく、位相差フィルムの数や、位相差フィルムの位相回転角度は限定されない。例えば、1枚の1/4位相差フィルムを用いる場合、変換効率がピークとなる波長を調整するために、1/4位相差フィルム1枚と、1/2位相差フィルム1枚と、を組み合わせて用いる構成としても良い。この場合、2枚の位相差フィルムを積層しても良く、2枚の位相差フィルム間に中間層を介在させてもよい。また、1/8位相差フィルムを2枚用いても良い。
【0041】
また、上記位相差板としては、複数の複屈折結晶を組み合わせて位相差の波長依存性を抑えた広帯域波長板を用いることもできる。広帯域波長板を用いる場合には、無偏光クロスダイクロイックプリズム13の出光面から偏光分離体14の間に一枚配置するのみで各色の位相変換が可能となる。なお、これらの広帯域波長板の中でも、広帯域1/4波長板を用いることがより好ましい。
【0042】
なお、光源11r、11g、11b(または反射体12r、12g、12b)から偏光分離体14までの間の光路内に配置される偏光回転体15は、偏光方向を回転できるものであれば特に限定されず、ランダム偏光化素子や位相差板以外の各種偏光回転素子を用いることもできる。
【0043】
本実施の形態に係る上述の偏光変換光源装置1は、投射型表示装置、直視型ディスプレイ、液晶表示装置、液晶プロジェクタなどの光源装置として用いることができる。
【0044】
図2は、本実施の形態に係る偏光変換光源装置1と透過型液晶バルブ(LCD)21を用いた液晶プロジェクタ2の構成を示す模式図である。
【0045】
図2に示すように、本実施の形態に係る透過型液晶プロジェクタ2は、上記偏光変換光源装置1を用いるものである。当該透過型液晶プロジェクタ2は、偏光変換光源装置1に加え、透過型液晶バルブ21と、偏光板22と、投射レンズ23と、を有する。偏光変換光源装置1における光路等の詳細は、上述の通りである。透過型液晶バルブ21は、偏光変換光源装置1の偏光分離体14から出光される光が入光するように配置されている。偏光板22は、透過型液晶バルブ21を透過した光が入射するように配置されている。また、投射レンズ23は、偏光板22を透過した光が入光するように配置されている。偏光変換光源装置1からの光強度が大きく、偏光の揃った偏光光は、透過型液晶バルブ21、偏光板22、投射レンズ23を経由して投影される。なお、偏光分離体14の透過型液晶バルブ21側に偏光板を備えていても良い。
【0046】
図3は、本実施の形態に係る偏光変換光源装置1と反射型液晶バルブ(Lcos)31を用いた液晶プロジェクタ3の概念図である。
【0047】
図3に示すように、本実施の形態に係る反射型液晶プロジェクタ3は、上記偏光変換光源装置1を用いるものである。当該反射型液晶プロジェクタ3は、偏光変換光源装置1に加え、反射型液晶バルブ31と、PBSまたは反射型偏光板32と、投射レンズ33と、を有する。偏光変換光源装置1における光路等の詳細は、上述の通りである。反射型液晶バルブ31は、偏光変換光源装置1の偏光分離体14から出光される光が、PBSまたは反射型偏光板32において反射され、入光するように配置されている。また、投射レンズ33は、反射型液晶バルブ31において変調され、反射された光が入光するように配置されている。偏光変換光源装置1からの光強度が大きく、偏光の揃った偏光光は、PBSまたは反射型偏光板32で反射され、反射型液晶バルブ31に投影されて変調、反射される。そして、PBSまたは反射型偏光板32を透過し、投射レンズ33を経由して投影される。偏光分離体14のPBSまたは反射型偏光板32側に偏光板を備えていても良い。
【0048】
上述のように、本発明に係る偏光変換光源装置1においては、三つの光源を用いると共に、各光源に対応する反射板を設けることによって、偏光分離体からの反射光を有効に利用することができる。このため、偏光変換光源装置からの出力光の強度を十分に確保することができる。また、白色光源を用いずに異なる波長の光を発する複数の光源を用いるため、光学系の設計が容易になり、また、偏光変換光源装置を小型化することができる。
【0049】
また、本発明に係る偏光変換光源装置1においては、無偏光ダイクロイックプリズムを用いることにより、無偏光ダイクロイックプリズムから出光する光が無偏光となるため、光を分離し、別途の偏光回転体によって偏光方向を揃える必要がない。つまり、出光する光を分離する必要がなくなるため、光の利用効率を高めることができる。また、出光する光の分離が不要となるため、偏光変換光源装置を小型化することができる。また、各波長の光に対して、光源と、反射体と、無偏光ダイクロイックプリズムと、反射型の偏光分離体とが、同一の軸線上に配置されているため、同一軸線上において偏光変換が実現される。つまり、光を分離して、偏光変換を行う必要がないため、偏光変換光源装置を小型化することができる。
【0050】
このように、本発明によって、光の利用効率を高く保ちつつ小型化された偏光変換光源装置が提供される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の偏光変換光源装置は、液晶ディスプレイや、液晶表示装置など、各種光学機器に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 偏光変換光源装置
2 透過型液晶プロジェクタ
3 反射型液晶プロジェクタ
11r、11g、11b 光源
12r、12g、12b 反射体
13 無偏光クロスダイクロイックプリズム
13r、13b 反射面
14 偏光分離体
15 偏光回転体
21 透過型液晶バルブ
22 偏光板
23 投射レンズ
31 反射型液晶バルブ
32 PBSまたは反射型偏光板
33 投射レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに略直交し、所定の波長の光を反射する二つの反射面を有する無偏光クロスダイクロイックプリズムと、互いに異なる波長の光をそれぞれ発する三つの光源と、各光源に対応する三つの反射体と、反射型の偏光分離体と、を有し、
第一の光源は、当該光源からの光が前記無偏光クロスダイクロイックプリズムの第一面に入光するように前記第一面側に配置され、
第二の光源は、当該光源からの光が前記無偏光クロスダイクロイックプリズムの前記第一面と対向する第二面に入光するように前記第二面側に配置され、
第三の光源は、当該光源からの光が前記無偏光クロスダイクロイックプリズムの前記第一面および前記第二面に隣接する第三面に入光するように前記第三面側に配置され、
前記偏光分離体は、前記無偏光クロスダイクロイックプリズムの前記第三面と対向する第四面から出光した光が入光するように前記第四面側に配置され、
第一の反射体は、前記偏光分離体において反射され、前記第一面から出光した光が入光するように前記第一面側に配置され、
第二の反射体は、前記偏光分離体において反射され、前記第二面から出光した光が入光するように前記第二面側に配置され、
第三の反射体は、前記偏光分離体において反射され、前記第三面から出光した光が入光するように前記第三面側に配置されたことを特徴とする偏光変換光源装置。
【請求項2】
前記第一面に入光した前記第一の光源からの光は、前記無偏光クロスダイクロイックプリズムの第一反射面において反射されると共に第二反射面を透過して前記第四面から出光し、その一部が前記偏光分離体において反射され、当該反射された光は前記第四面に入光し、前記第一反射面において反射されると共に前記第二反射面を透過して前記第一面から出光し、前記第一の反射体において反射されて再度前記第一面に入光し、
前記第二面に入光した前記第二の光源からの光は、前記第一反射面を透過すると共に前記第二反射面において反射されて前記第四面から出光し、その一部が前記偏光分離体において反射され、当該反射された光は前記第四面に入光し、前記第一反射面を透過すると共に前記第二反射面において反射されて前記第二面から出光し、前記第二の反射体において反射されて再度前記第二面に入光し、
前記第三面に入光した前記第三の光源からの光は、前記第一反射面を透過すると共に前記第二反射面を透過して前記第四面から出光し、その一部が前記偏光分離体において反射され、当該反射された光は前記第四面に入光し、前記第一反射面を透過すると共に前記第二反射面を透過して前記第三面から出光し、前記第三の反射体において反射されて再度前記第三面に入光することを特徴とする請求項1に記載の偏光変換光源装置。
【請求項3】
前記反射体と前記偏光分離体との光路間に、偏光回転体を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の偏光変換光源装置。
【請求項4】
前記偏光回転体が、広帯域1/4波長位相差フィルムであることを特徴とする請求項3に記載の偏光変換光源装置。
【請求項5】
前記偏光回転体が、少なくとも1枚の1/4波長位相差フィルムと少なくとも1枚の1/2位相差フィルムとの積層体であることを特徴とする請求項3に記載の偏光変換光源装置。
【請求項6】
前記偏光分離体が、ワイヤグリッド偏光板であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の偏光変換光源装置。
【請求項7】
前記偏光分離体が、複屈折材料を有する多層フィルムであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の偏光変換光源装置。
【請求項8】
前記光源と前記無偏光ダイクロイックプリズムの間にレンズを具備することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の偏光変換光源装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の偏光変換光源装置と、透過型液晶素子と、投射レンズと、を具備し、
前記透過型液晶素子は、前記偏光変換光源装置から出光した光が前記透過型液晶素子に入光するように配置され、
前記投射レンズは、前記透過型液晶素子から出光した光が前記投射レンズに入光するように配置されたことを特徴とする投射型液晶表示装置。
【請求項10】
前記偏光変換光源装置の出光側に吸収型偏光板を具備することを特徴とする請求項9に記載の投射型液晶表示装置。
【請求項11】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の偏光変換光源装置と、反射型液晶素子と、ポーラライジングビームスプリッターと、投射レンズと、を具備し、
前記反射型液晶素子および前記ポーラライジングビームスプリッターは、前記偏光変換光源装置から出光した光が前記ポーラライジングビームスプリッターを通じて前記反射型液晶素子に入光するように配置され、
前記投射レンズは、前記反射型液晶素子から出光した光が前記ポーラライジングビームスプリッターを通じて前記投射レンズに入光するように配置されたことを特徴とする投射型液晶表示装置。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−118452(P2012−118452A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270398(P2010−270398)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【出願人】(502388781)有限会社ハイメック (5)
【Fターム(参考)】