説明

偏光子を付設したデジタルカメラシステム

【課題】被写体の表面の凹凸、起伏、曲面を視覚的に認識できる画像を得ることが出来る、偏光子を付設したデジタルカメラシステムを提供すること。
【解決手段】この偏光子を付設したデジタルカメラシステムは、デジタルカメラと、前記デジタルカメラの光学系レンズの前方に配置された偏光子ユニットとを備え、前記偏光子ユニットは、透過軸を変えた複数の偏光子を有し、前記デジタルカメラは、前記偏光子ユニットを透過した複数の画像から、画素単位で偏光情報及び輝度情報を抽出する手段と、前記偏光情報及び輝度情報から、偏光データ及び輝度データを再構築する手段と、再構築された前記偏光データ及び輝度データを表示する手段とを有している。なお、デジタルカメラを新たに製造する場合には、偏光子ユニットを光学系レンズの後段に配置してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体の表面の凹凸、起伏、曲面を視覚的に認識できる画像を生成する、偏光子を付設したデジタルカメラシステムに関する。
【0002】
本発明に係る偏光子を付設したデジタルカメラシステムは、例えば、ゴルファーが携帯可能で、ゴルフコースのグリーンやフェアウェイ(被写体)が波のようにうねっている起伏(「アンジュレーション(undulation)」という。)を視覚的に認識できる画像を生成するカメラシステムとして利用される。その他、表面粗さ表示装置、曲面表示装置としても利用される。
【背景技術】
【0003】
被写体をデジタルカメラで撮影した画像は、三次元で表現されている。しかし、被写体によっては、例え三次元で表現されていても、その被写体の表面の凹凸、起伏、曲面が明瞭でない場合がある。
【0004】
例えば、デジタルカメラを使用してボウリングの黒色のボールを撮影した場合、画像によっては球体として明瞭に表現されていない場合がある。或いは、デジタルカメラを使用して重なって見える2個の物体を撮影した場合、物体の重なった部分に輝度差が無いと、境界が明瞭に表現されない場合がある。
【0005】
或いは、ゴルファーにとって、一般に、ゴルフコースのグリーン上のアンジュレーションを正確に読み切ることは大変難しい。
【0006】
なお、本発明者は、後述する様な偏光作用を利用して被写体の表面の起伏を視覚的に認識できる画像を再構築するカメラシステムを開示又は示唆する先行技術文献の存在を知らない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、被写体の表面の凹凸、起伏、曲面を視覚的に認識できる画像を得ることが出来るデジタルカメラシステムの開発が望まれていた。このようなデジタルカメラが実現できれば、球体の物体であれば直ちに球体として認識することが出来るし、また、輝度差が無い2個の物体でもその境界を認識することが出来る。
【0008】
或いは、このようなデジタルカメラが実現できれば、ゴルファーにとって、パッティングの練習の際に、グリーンのアンジュレーションを視覚的に認識できるので、ゴルフ練習支援カメラとして利用することが出来る。
【0009】
デジタルカメラは、既に世の中に非常に多数普及している。更に、デジタルカメラは、部品として、携帯電話、パーソナルコンピュータ等に組み込まれている。従って、既存のデジタルカメラ及びデジタルカメラ部品に対して、後付けで付属品(アタッチメント)を付設したり、内部メモリに記録されたプログラムを書き換えたりするだけで、被写体の表面の凹凸、起伏、曲面を視覚的に認識できる画像を得ることが出来るカメラシステムに変更する技術の開発も望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる状況に鑑みて、本発明は、被写体の表面の凹凸、起伏、曲面を視覚的に認識できる画像を得ることが出来る、偏光子を付設したデジタルカメラシステムを提供することを目的とする。
【0011】
更に、本発明は、既存のデジタルカメラ及びデジタルカメラ部品を、大幅に改造することなく、被写体の表面の凹凸、起伏、曲面を視覚的に認識できる画像を得ることが出来る、偏光子を付設したデジタルカメラシステムとして実現することを目的とする。
【0012】
上記目的に鑑みて、本発明に係る偏光子を付設したデジタルカメラシステムは、デジタルカメラと、前記デジタルカメラの光学系レンズの前方に配置された偏光子ユニットとを備え、前記偏光子ユニットは、透過軸を変えた複数の偏光子を有し、前記デジタルカメラは、前記偏光子ユニットを透過した複数の画像から、画素単位で偏光情報及び輝度情報を抽出する手段と、前記偏光情報及び輝度情報から、偏光データ及び輝度データを再構築する手段と、再構築された前記偏光データ及び輝度データを表示する手段とを有している。
【0013】
更に、本発明に係る偏光子を付設したデジタルカメラシステムは、光学系レンズの後段に配置された偏光子ユニットを備え、前記偏光子ユニットは、透過軸を変えた複数の偏光子を有し、前記偏光子ユニットを透過した複数の画像から、画素単位で偏光情報及び輝度情報を抽出する手段と、前記偏光情報及び輝度情報から、偏光データ及び輝度データを再構築する手段と、再構築された前記偏光データ及び輝度データを表示する手段とを有している。
【0014】
更に、上記偏光子を付設したデジタルカメラシステムでは、前記デジタルカメラは、携帯電話、パーソナルコンピュータ等に組み込まれたデジタルカメラ部を含んでいてもよい。
【0015】
更に、上記偏光子を付設したデジタルカメラシステムでは、前記偏光子ユニットは、円板状の偏光子プレートを有し、該偏光子プレートには円周方向に沿って透過軸を変えた複数の偏光子が形成され、前記偏光子ユニットは、回転駆動手段を有し、前記デジタルカメラは、各偏光子を透過した画像を逐次取り込む手段を有していてもよい。
【0016】
更に、上記偏光子を付設したデジタルカメラシステムでは、前記偏光子ユニットは、円板状の偏光子プレートを有し、該偏光子プレートには1方向の透過軸をもつ偏光子が形成され、前記偏光子ユニットは、回転駆動手段を有し、前記デジタルカメラは、前記偏光子の所定の角度毎に、該偏光子を透過した画像を逐次取り込む手段を有していてもよい。
【0017】
更に、上記偏光子を付設したデジタルカメラシステムでは、前記偏光データ及び輝度データを再構築する手段は、画素単位の輝度データを決定する手段に加えて、或る程度の画素ブロック単位で偏光データ決定し、それを法線ベクトルで表示する手段を有していてもい。
【0018】
更に、上記偏光子を付設したデジタルカメラシステムでは、前記偏光データ及び輝度データを再構築する手段は、画素単位の輝度データを決定する手段に加えて、画素単位で偏光角度に可視光線スペクトルを対応させて、偏光データを色違いで区分けする手段を有していてもよい。
【0019】
更に、上記偏光子を付設したデジタルカメラシステムでは、前記カメラシステムは、被写体の表面粗さを可視化する表面粗さ表示装置として利用してもよい。
【0020】
更に、上記偏光子を付設したデジタルカメラシステムでは、前記カメラシステムは、被写体の表面の曲面を可視化する曲面表示装置として利用してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、被写体の表面の凹凸、起伏、曲面を視覚的に認識できる画像を得ることが出来る、偏光子を付設したデジタルカメラシステムを提供することが出来る。
【0022】
更に、本発明によれば、既存のデジタルカメラ及びデジタルカメラ部品を、これらを大幅に改造することなく、被写体の表面の凹凸、起伏、曲面を視覚的に認識できる画像を得ることが出来る、偏光子を付設したデジタルカメラシステムとして実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、既存のデジタルカメラ付き携帯電話に対して、後付けで偏光子ユニットを付設したカメラシステムの外観を示す図である。
【図2】図2は、図1の偏光子ユニットに内蔵された偏光子プレートを説明する図である。ここで、図2(A)は、透過軸の異なる4種類の偏光子を組み合わせた偏光子プレートを示し、図2(B)は各々の偏光子を説明する図である。
【図3】図3は、図1の別の偏光子プレートを説明する図である。
【図4】図4は、図1の偏光子を付設したカメラシステムの概略ブロック図である。
【図5】図5は、図4のカメラシステムのブロック図の偏光子プレートとカメラ本体を接続する部分を説明する図である。
【図6】図6は、図4の偏光子を付設したカメラシステムの輝度及び偏光成分検出部で実行される処理を説明する図である。
【図7】図7は、画像を再構築する第1の方法で処理された画像を説明する図である。図7(A)は、丸い物体(被写体)を示し、図7(B)は、この物体を従来のカメラで撮影した画像を示し、図7(C)は、この偏光子を付設したカメラシステムで処理した輝度情報に法線ベクトルを重ねて表示した画像を示す図である。
【図8】図8は、画像を再構築する第2の方法で処理された画像を説明する図である。図8(A)は、重なり合う部分に輝度差がない2つの物体を従来のカメラで撮影した画像を示し、図8(B)は、この偏光子を付設したカメラシステムで処理した、輝度情報に加えて、偏光情報を色違いで表示する画像を示す図である。
【図9】図9は、ゴルフのグリーンの映像に、法線ベクトルを追加表示する第1の方法で画像を再構築した画像を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る偏光子を付設したカメラシステムの実施形態に関して、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図面において同じ要素に対しては同じ参照符号を付して、重複した説明を省略する。
【0025】
図1は、既存のデジタルカメラ付き携帯電話20に対して、後付けで偏光子ユニット12を付設したカメラシステム1の外観を示す図である。
【0026】
デジタルカメラ付き携帯電話20は、シャッター20s、レンズ21等を備えている。レンズ21の前方に、後付けで偏光子ユニット12が取り付けられる。偏光子ユニット12は、典型的には、円板状(ディスク状)であり、内部の偏光子プレートは回転駆動される。
【0027】
なお、偏光子ユニット12を取り付ける対象は、デジタルカメラ付き携帯電話20に限定されない。デジタルカメラ機能を内蔵しているパーソナルコンピュータ等、或いはデジタルカメラ自体であってもよい。
【0028】
更に、本実施形態は、既存のデジタルカメラ、パーソナルコンピュータ等に、後付けで偏光子を付設する場合に限定されない。最初から生産する偏光子を付設したカメラシステムをも対象とする。この場合、偏光子ユニット12は、光学系レンズの後段に配置してもよい。
【0029】
図2は、図1の偏光子ユニット12を説明する図である。ここで、図2(A)は、偏光子ユニット12に内蔵された透過軸の異なる4種類の偏光子を組み合わせた偏光子プレート12pを示し、図2(B)は各々の偏光子を説明する図である。
【0030】
図2(A)に示すように、偏光子プレート12pは、典型的には、円板状(ディスク状)に形成されている。偏光子プレート12pは、例えば、円周方向に沿って4分割され、各領域は透過軸の異なる4種類の偏光子12−1〜12−4を有している。偏光子プレート12pは、中心軸12sの周りを回転駆動される。
【0031】
図2(B)に示すように、第1の偏光子12−1は、垂直線に対して透過軸が角度ゼロである。第2の偏光子12−2は、垂直線に対して透過軸が角度45度である。第3の偏光子12−3は、垂直線に対して透過軸が角度90度である。第4の偏光子12−4は、垂直線に対して透過軸が角度135度である。
【0032】
偏光子ユニット12は、偏光子プレート12p以外に、偏光子プレートを回転駆動するモータ、このモータの回転を制御するコントローラを有するが、これらについては後述する。
【0033】
図3は、図1の別の偏光子プレート12p−1を説明する図である。この偏光子プレート12p−1は、図2(B)に示す4種類の偏光子のいずれか1つ(例えば、第1の偏光子12−1)を使用し、中心軸を設けずに、リング部材(円環部材)12rを使って回転駆動される。
【0034】
図4は、図1の偏光子を付設したカメラシステム1の概略ブロック図である。このカメラシステム1は、偏光子ユニット12と、例えばデジタルカメラ機能付き携帯電話20から成る。携帯電話20は、カメラ機能に関する部分として、光学系レンズ21と、CMOS/CCD22と、前処理部24と、輝度及び偏光成分検出部26と、画像処理部28と、表示部30と、入出力インターフェース32と、CPU34と、プログラムメモリ36と、画像メモリ38と、バッテリ40とを有している。
【0035】
CPU34は、全体の動作の制御を行い、プログラムメモリ36に記録されたプログラムは、既存のカメラ撮影動作に加えて、本実施形態で説明する偏光データ及び輝度データを処理できるように書き換えられており、バッテリ40は、各要素に給電する。
【0036】
図4のカメラシステムのブロック図の偏光子ユニット12とカメラ本体20を接続する部分を説明する。図5に示すように、偏光子ユニット12は、偏光子プレート12pと、その回転軸12sと、モータ16と、コントローラ18とを有している。
【0037】
図2に示す偏光子プレート12pを使用した場合には、その回転軸12sを回転駆動するモータ16に接続され、モータ18はその回転を制御するコントローラ18に接続されている。図3に示す偏光子プレート12p−1を使用した場合には、リング部材12rを利用して回転駆動される。
【0038】
モータ16は、小形サイズのステッピングモータ、マイクロモータを利用することが出来る。コントローラ18とカメラ本体20の入出力インターフェース32(図4参照)との接続19は、有線又は無線で行われる。例えば、有線接続ではUSB等、無線接続ではブルートゥース等を利用することが出来る。
【0039】
図4を再び参照すると、CMOS/CCD22は、CMOSイメージセンサでも、CCDイメージセンサでもよい。CCDイメージセンサは、電荷結合デバイスとよばれ、ホトダイオードである受光部で入射光を信号電荷に変換して、この信号電荷をCCDによって転送するデバイスである。CMOSイメージセンサは、マトリクス状に配置された夫々の画素からの信号を水平方向のラインを選択するYアドレス回路からのスイッチング信号によって選択し、Xアドレス回路によって、画素からの信号を順次1画素ずつ出力信号に読み出して検出するデバイスである。
【0040】
前処理部24は、主として、CMOS/CCD22からの画素毎の輝度情報及び偏光情報をA−D変換する。
【0041】
輝度及び偏光成分検出部26は、CCD又はCMOS22が感知したデジタル輝度データに加えて、偏光成分を抽出して偏光データを生成する。
【0042】
図2で説明した4種類の偏光子から成る偏光子プレート12pを採用した場合について説明する。図4のプログラムメモリ36のプログラム手順に従って、CPU34から入出力インターフェース32及び接続19(図5)を介し、コントローラ18に回転制御の信号が送られる。偏光子プレート12pの回転に同期して、第1の偏光子12−1を通過した映像が取り込まれ、次に第2の偏光子12−2を通過した映像が取り込まれ、次に第3の偏光子12−3を通過した映像が取り込まれ、次に第4の偏光子12−4を通過した映像が取り込まれる。
【0043】
図6に示すように、画像メモリ38(図4参照)に、5個のフレームメモリ領域が用意される。第1〜第4の偏光子を透過した各偏光情報のフレームメモリ14−1〜14−4と、偏光情報及び輝度情報のフレームメモリ15である。
【0044】
偏光データの生成方法は、次の通りである。第1の偏光子12−1を透過した角度ゼロ偏光画像は第1の偏光情報のフレームメモリ14−1に、第2の偏光子12−2を透過した角度45度偏光画像は第1の偏光情報のフレームメモリ14−2に、第3の偏光子12−3を透過した角度90度偏光画像は第3の偏光情報のフレームメモリ14−3に、第4の偏光子12−4を透過した角度135度偏光画像は第4の偏光情報のフレームメモリ14―4に、夫々記録される。
【0045】
これら4個のフレームメモリの画像から、偏光データ及び輝度データの画像がフレームメモリ15に生成される。具体的には、4個のフレームメモリの各々の最初の画素(1,1)の偏光画像を比較して、最大値を選択して、偏光及び輝度情報のフレームメモリ15の最初の画素位置(1,1)に偏光データ(透過軸情報,振動方向)及び輝度データ(振幅値)を記録する。次に、2番目の画素(1,2)に関しても同じように処理し、この処理を全画素に対して行う。これにより、偏光データ及び輝度データの画像がフレームメモリ15に生成される。
【0046】
次に、図3で説明した1種類の偏光子から成る偏光子プレートを採用した場合を説明する。同様に、図4のプログラムメモリ36の手順に従って、CPU34から入出力インターフェース32及び接続19(図5)を介し、コントローラ18に回転制御の信号が送られる。偏光子プレート12pの回転に同期して、所定の角度毎(例えば、0度、30度、60度、90度、120度、150度)の画像が、夫々取り込まれる。例えば、角度30度毎に画像を取り込んだ場合は、第1〜6の偏光情報のフレームメモリ14−1〜14−6を用意して、同様の処理を行う。
【0047】
画像処理部28は、フレームメモリ15に記録された輝度データと偏光データを使用して、画像を再構築する。画像の再構築には二通りある。
【0048】
第1の方法は、画素単位の輝度情報に加えて、偏光データを法線ベクトルで表示する方法である。例えば、2×2画素、3×3画素、4×4画素等の或る程度の画素ブロック毎に近傍処理を行い、法線ベクトルを決定する。この近傍処理では、画素ブロック毎に、最も強い偏光データの透過軸(振動方向)を矢印表示(ベクトル表示)する。
【0049】
第2の方法は、画素単位で、偏光角度に可視光線スペクトルを対応させて、特定の偏光角度には1つの色彩(可視光)が定まるように規定し、偏光角度に対応して色分けして各画素を再構築する方法である。可視光線スペクトルと偏光角度の対応は、画像処理部又はメモリにテーブルとして用意して、特定の偏光角度に対する色彩(RGB値)を決定することが出来るようにする。
【0050】
これら輝度データ及び偏光データは、出力コントローラ(図示せず。)で所定のタイミングで出力され、D−A変換器(図示せず。)でアナログデータに変換され、表示部30に表示される。
【0051】
なお、カメラ本体20の各ブロックに関しては、例えば、携帯電話のカメラ部、パーソナルコンピュータのカメラ部、デジタルカメラ等の夫々の仕様によって、変わることを承知されたい。
【0052】
また、最初から偏光子を付設したデジタルカメラシステムを生産する場合は、偏光子ユニット12は、光学系レンズ21の後段に配置してもよい。
【0053】
次に、本実施形態に係る偏光子を付設したカメラシステム1で撮像した例を挙げて説明する。
【0054】
第1の方法の画像再構築の例としては、図7(A)の丸い物体(被写体)42を従来のデジタルカメラで処理すると、図7(B)に示すように、物体42は輝度情報44のみで表示される。しかし、図7(C)に示すように、この偏光子を付設したカメラシステム1で処理すると、輝度情報に加えて、画素ブロック単位で決定された法線ベクトルを重ねて表示することにより偏光情報も表示する画像46とすることが出来る。
【0055】
第2の方法の画像再構築の例としては、図8(A)の重なり合った境界部分の輝度差が少ない2個の物体は、従来のカメラで撮影すると画像48となり、この偏光子を付設したカメラシステム1で撮影処理すると、図8(B)に示すように、輝度情報に加えて、色彩の相違(色違い)で偏光情報も表示する画像50とすることが出来る。(なお、出願図面はモノクロに制限されているので、ここではモノクロ表示となっていることをご理解願いたい。)。物体表面の向きによって反射光の偏光方向が変わるため、2個の物体の境界は、色違いで明瞭に識別できる画像50が得られる。
【0056】
図9は、ゴルフのグリーン52の映像を、法線ベクトルを追加表示する第1の方法で画像再構築した例である。グリーンのアンジュレーションは、その傾斜によって太陽の反射光が変化して、偏光方向も変化する。グリーンの輝度情報に加えて、偏光情報をも加えることにより、グリーンのアンジュレーションを視覚的に明瞭に認識することができる画像が再構築できる。
【0057】
以上説明した偏光子を付設したカメラシステムの実施形態は、例示であって、本発明はこれに限定されない。
【0058】
偏光子を付設したカメラシステム1は、種々の用途がある。例えば、この偏光子を付設したカメラシステム1は、表面粗さを可視化する表面粗さ表示装置としても利用できる。例えば、機械加工の工業製品の表面粗さ、人間の肌の荒さ等を可視化できる。
【0059】
或いは、この偏光子を付設したカメラシステム1は、曲面を可視化する曲面表示装置としても利用できる。例えば、機械加工の工業製品の曲面加工の精度評価、光学系レンズの曲面加工仕上げの評価等に利用することが出来る。
【0060】
当業者が容易に想起できる、この実施形態に対する追加・削除・変更・改良等は本発明の範囲内である。本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の記載によって定められる。
【符号の説明】
【0061】
1:偏光子を付設したカメラシステム、 12:偏光子ユニット、 12p:偏光子プレート、 12−1,12−2,12−3,12−4:偏光子、 12r:リング部材、 12s:中心軸、 14−1,14−2,14−3,14−4,15:フレームメモリ、 16:モータ、 18:コントローラ、 19:接続、 20:携帯電話,カメラ本体、 21:光学系レンズ、 22:CMOS/CCD、 24:前処理部、 26:輝度及び偏光成分検出部、 28:画像処理部、 30:表示部、 32:入出力インターフェース、 34:CPU、 36:プログラムメモリ、 38:画像メモリ、 40:バッテリ、 52:ゴルフのグリーン、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルカメラと、
前記デジタルカメラの光学系レンズの前方に配置された偏光子ユニットとを備え、
前記偏光子ユニットは、透過軸を変えた複数の偏光子を有し、
前記デジタルカメラは、
前記偏光子ユニットを透過した複数の画像から、画素単位で偏光情報及び輝度情報を抽出する手段と、
前記偏光情報及び輝度情報から、偏光データ及び輝度データを再構築する手段と、
再構築された前記偏光データ及び輝度データを表示する手段とを有している、偏光子を付設したデジタルカメラシステム。
【請求項2】
光学系レンズの後段に配置された偏光子ユニットを備え、
前記偏光子ユニットは、透過軸を変えた複数の偏光子を有し、
前記偏光子ユニットを透過した複数の画像から、画素単位で偏光情報及び輝度情報を抽出する手段と、
前記偏光情報及び輝度情報から、偏光データ及び輝度データを再構築する手段と、
再構築された前記偏光データ及び輝度データを表示する手段とを有している、偏光子を付設したデジタルカメラシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の偏光子を付設したデジタルカメラシステムにおいて、
前記デジタルカメラは、携帯電話、パーソナルコンピュータ等に組み込まれたデジタルカメラ部を含む、デジタルカメラシステム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の偏光子を付設したデジタルカメラシステムにおいて、
前記偏光子ユニットは、円板状の偏光子プレートを有し、該偏光子プレートには円周方向に沿って透過軸を変えた複数の偏光子が形成され、
前記偏光子ユニットは、回転駆動手段を有し、
前記デジタルカメラは、各偏光子を透過した画像を逐次取り込む手段を有している、デジタルカメラシステム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の偏光子を付設したデジタルカメラシステムにおいて、
前記偏光子ユニットは、円板状の偏光子プレートを有し、該偏光子プレートには1方向の透過軸をもつ偏光子が形成され、
前記偏光子ユニットは、回転駆動手段を有し、
前記デジタルカメラは、前記偏光子の所定の角度毎に、該偏光子を透過した画像を逐次取り込む手段を有している、デジタルカメラシステム。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の偏光子を付設したデジタルカメラシステムにおいて、
前記偏光データ及び輝度データを再構築する手段は、画素単位の輝度データを決定する手段に加えて、或る程度の画素ブロック単位で偏光データ決定し、それを法線ベクトルで表示する手段を有している、デジタルカメラシステム。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の偏光子を付設したデジタルカメラシステムにおいて、
前記偏光データ及び輝度データを再構築する手段は、画素単位の輝度データを決定する手段に加えて、画素単位で偏光角度に可視光線スペクトルを対応させて、偏光データを色違いで区分けする手段を有している、デジタルカメラシステム。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の偏光子を付設したデジタルカメラシステムにおいて、
前記カメラシステムは、被写体の表面粗さを可視化する表面粗さ表示装置として利用される、デジタルカメラシステム。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の偏光子を付設したデジタルカメラシステムにおいて、
前記カメラシステムは、被写体の表面の曲面を可視化する曲面表示装置として利用される、デジタルカメラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−29903(P2011−29903A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173237(P2009−173237)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(304017867)株式会社アートレイ (6)
【Fターム(参考)】