説明

偏光子保護用光学フィルム、偏光板及び画像表示装置

【課題】貼り付けた状態でも偏光板の品質検査を可能とし、より低コストで偏光板の品質と生産性を高めうる、表面保護シート層を有する偏光子保護用光学フィルムを提供することにある。また、これを用いた高性能の偏光板及び画像表示装置を提供することにある。
【解決手段】表面保護シート層と偏光子保護膜層とが接して積層してなり、該表面保護シート層と偏光子保護膜層との接着強度が0.01〜5N/25mmであり、該表面保護シート層及び偏光子保護膜層がメタロセン触媒により合成されたプロピレン系重合体で構成されるものである偏光子保護用光学フィルム、ならびにこれを用いた偏光板及び表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に用いられる光学部材、より詳しくは、偏光子保護用光学フィルムに関する。また、本発明は該偏光子保護用光学フィルムが設けられた偏光板、及び該偏光板が用いられた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、特定の振動方向をもつ光のみを透過させ、その他の光を遮蔽する機能を有する光学部材であり、上記のような画像表示装置に広く使用されている。このような偏光板としては、偏光子の片面又は両面に偏光子保護用の光学フィルムが設けられた構成をもつものが一般に使用されている。このうち偏光子は、特定の振動方向をもつ光のみを透過させる機能を有するものであり、ヨウ素や二色性染料などで染色した一軸延伸型のポリビニルアルコール(以下「PVA」という)系フィルムが多く使用され、最近では塗布型のフィルムも使用されているが、一般に薄く強度面で弱いという問題がある。
【0003】
偏光子に設けられた偏光子保護用光学フィルムは、偏光子を支持して偏光板全体に実用的な強度を付与し、また、偏光子の表面を物理的に保護するなどの機能を担うものであり、面内位相差が小さい、すなわち低複屈折性を有するなどの光学的な均一性に優れていることのほか、実用的な物理的強度を有することや、透明性が良好なことなど、低複屈折性を求められるフィルムのなかでもより厳しい性能が求められる。このような偏光子保護用の光学フィルムとしては一般に、セルロース系フィルムであるトリアセチルセルロースフィルム(以下、TACフィルムということがある。)が多く使用されている。また、トリアセチルセルロースフィルム以外にも、特定の(メタ)アクリル酸重合体とラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物とを含有する電離放射線硬化性樹脂組成物とを架橋硬化してなる光学フィルム(特許文献1参照)やメタロセン触媒により合成されたポリプロピレンを用いてなる光学フィルム(特許文献2参照)などが提案されている。
【0004】
ところで、最近の画像表示装置においては、薄型軽量化や高品位化が強く要請されている。そのため、偏光子保護膜についても可能な限り薄くすることが要請されているが、偏光子保護膜を薄膜化すると、偏光子保護膜だけではフィルム状態で取り扱う際の強度が不足してくる。そのため、基体支持を目的としたシートを偏光子保護膜と剥離可能な状態で貼り合わせて強度を補う必要が生じる場合がある。この基体支持を目的としたシートは、最終的には偏光子保護膜から剥がされて廃棄されるものである。
【0005】
一方、画像表示装置の品位を高めるためには、光学フィルムの流通過程、光学フィルムと偏光子を貼り合わせて偏光板を製造する過程、偏光板の流通過程、あるいは偏光板を使用する画像表示装置の製造過程などにおいて、偏光子保護膜の表面ないし偏光板の表面を物理的に保護することが求められている。このような状況下、偏光子保護膜の支持基体及び表面保護シートの機能を兼ね備えるフィルム(以下、単に表面保護シートということがある。)が用いられており、該フィルムとしては、一般に、ポリオレフィンやポリエチレンテレフタレート等が用いられている(特許文献3参照)。
【0006】
しかし、これらの偏光子保護膜に表面保護シートを設ける場合、該表面保護シートを偏光子保護膜に貼りあわせる工程が別途必要であり、コストが増大するという問題点があった。また、これらの表面保護シートは接着剤を介して、偏光子保護膜に貼りあわせることを要するため、接着剤の影響により積層して得られるフィルムの複屈折が増大してしまうという問題点もあった。
【0007】
不良品の発生と流出を防止して品質の維持向上を図るためには、上記の過程において、偏光板の複屈折等の光学的性能の欠陥を繰り返し検査すること望ましい。しかし、表面保護シートとして用いられるフィルム、とりわけポリエチレンテレフタレートのシートは、光弾性定数が大きく、外部応力の作用によって位相差の変化が生じるため、複屈折が大きい。そのため、ポリエチレンテレフタレートを偏光板の表面保護シートとして用いて、それを貼り付けたままで偏光板の品質検査を行うと、欠陥検出精度が劣ってしまうという問題がある。また、ポリエチレンテレフタレートの表面保護シートを剥がして品質検査をおこなった場合は、検査後に、偏光板の表面を保護するために表面保護シートを再度貼り付けなければならず、生産性を損なうこととなってしまう。
【0008】
このような問題を解決するために、表面保護シートのポリプロピレンに電離放射線硬化性樹脂組成物を塗工し硬化して形成した偏光子保護用光学フィルムなども提案されているが(特許文献4参照)、さらなる表面保護シートつきの偏光子保護用光学用フィルムの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−129212号公報
【特許文献2】特開2008−146023号公報
【特許文献3】特開2007−206669号公報
【特許文献4】特開2010−72111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる事情によりなされたものであり、本発明の課題は、貼り付けた状態でも偏光板の品質検査を可能とし、より低コストで偏光板の品質と生産性を高めうる、表面保護シート付き偏光子保護用光学フィルムを提供することにある。また、これを用いた偏光板及び画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、所定の接着強度を有する二層からなる偏光子保護用光学フィルムが、その課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
【0012】
1.表面保護シート層と偏光子保護膜層とが接して積層してなり、該表面保護シート層と偏光子保護膜層との接着強度が0.01〜5N/25mmであり、該表面保護シート層及び偏光子保護膜層がメタロセン触媒により合成されたプロピレン系重合体で構成されるものである偏光子保護用光学フィルム。
2.前記プロピレン系重合体が、プロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体である前記1に記載の偏光子保護用光学フィルム。
3.下記の工程を順に含む水冷式インフレーション成形法による光学フィルムの製造方法。
工程(I)溶融された熱可塑性樹脂を環状ダイから下方向に押し出した管状体に、空気を吹き込んで所定の大きさに膨張させバブルとする工程
工程(II)バブルの外周面に空気を吹き付けて空冷し、次いで冷却水により冷却固化させる冷却工程
工程(III)バブルを折りたたみ、二層のフィルムが積層してなるフィルムを得る工程
工程(IV)二層のフィルムを60〜110℃の温度条件で乾燥し、密着する乾燥密着工程
工程(V)乾燥し、密着された二層積層フィルムを切断する切断工程
4.工程(IV)の温度条件が70〜90℃である請求項3に記載の製造方法。
5.熱可塑性樹脂が、プロピレン系重合体からなるものである上記3又は4に記載の製造方法。
6.偏光子の少なくとも片面に、前記1又は2に記載の偏光子保護用光学フィルムが設けられていることを特徴とする偏光板。
7.前記6に記載の偏光板が使用されていることを特徴とする画像表示装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、貼り付けた状態でも偏光板の品質検査を可能とし、より低コストで偏光板の品質と生産性を高めうる、表面保護シート層を有する偏光子保護用光学フィルムを得ることができる。また、本発明の光学フィルムを用いることで、高性能の偏光板及び画像表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の製造方法に用いられる装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明の偏光板の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[偏光子保護用光学フィルム]
本発明の偏光子保護用光学フィルムは、表面保護シート層と偏光子保護膜層とが接して積層してなり、該表面保護シート層と偏光子保護膜層との接着強度が0.01〜5N/25mmであり、該表面保護シート層及び偏光子保護膜層がメタロセン触媒により合成されたプロピレン系重合体で構成されるものである光学フィルムである。
以下に、本発明の偏光子保護用光学フィルムについて、詳細に説明する。
【0016】
《(A)メタロセン触媒により合成されたプロピレン系重合体》
本発明の偏光子保護用光学フィルムの表面保護シート層及び偏光子保護膜層は、メタロセン触媒により合成されたプロピレン系重合体で構成されるものである。メタロセン触媒により合成されたプロピレン系重合体とは、後述するメタロセン触媒を用いて合成されたものである。メタロセン触媒により合成されたプロピレン系重合体は、汎用されているチーグラー系触媒により合成されたプロピレン系重合体よりも、透明性が高いため、本発明では、メタロセン触媒により合成されたプロピレン系重合体を用いる。
【0017】
本発明において、透明性やその他光学特性を考慮すると、プロピレン系重合体のなかでもプロピレン系共重合体が好ましく、該プロピレン系共重合体としては、プロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体であることが好ましい。
α−オレフィンとしては、エチレン、炭素数4〜18のα−オレフィンが好ましく、より好ましくは炭素数4〜12のα−オレフィンが挙げられ、共重合性の観点から、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1などが好ましく、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン及び1−オクテンがより好ましく、1−ブテン及び1−ヘキセンがさらに好ましい。共重合体中のプロピレン単位の割合は、透明性と耐熱性のバランスの観点から、好ましくは80モル%以上100モル%未満であり、コモノマーは0超〜20モル%以下である。コモノマーとして、前記のα−オレフィンは1種類に限られず、2種類以上を用いることができ、共重合体をターポリマーのような多元系共重合体とすることもできる。なお、共重合体におけるコモノマー由来の構成単位の含量は、赤外線(IR)吸収スペクトルの測定により求めることができる。
【0018】
(メタロセン触媒)
メタロセン触媒としては、公知のものを適宜用いることができる。一般的には、Zr、Ti、Hfなどの4〜6族遷移金属化合物、特に4族遷移金属化合物と、シクロペンタジエニル基あるいはシクロペンタジエニル誘導体の基を有する有機遷移金属化合物を使用することができる。
【0019】
シクロペンタジエニル誘導体の基としては、ペンタメチルシクロペンタジエニルなどのアルキル置換体基、あるいは2以上の置換基が結合して飽和もしくは不飽和の環状置換基を構成した基を使用することができ、代表的にはインデニル基、フルオレニル基、アズレニル基、あるいはこれらの部分水素添加物を挙げることができる。また、複数のシクロペンタジエニル基がアルキレン基、シリレン基、ゲルミレン基などで結合されたものも好適に挙げることができる。
【0020】
(助触媒)
プロピレン重合体の製造において、メタロセン触媒とともに、助触媒を使用することができる。助触媒としては、アルミニウムオキシ化合物、メタロセン化合物と反応してメタロセン化合物成分をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物もしくはルイス酸、固体酸、あるいは、層状ケイ酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を用いることができる。また、必要に応じてこれらの化合物と共に有機アルミニウム化合物を添加することができる。
【0021】
(メタロセン触媒を用いたプロピレン重合体の重合方法)
前記メタロセン触媒を用いてプロピレン系重合体を合成する方法(重合方法)としては、これらの触媒の存在下、不活性溶媒を用いたスラリー法、実質的に溶媒を用いない気相法、溶液法、あるいは重合モノマーを溶媒とするバルク重合法などが挙げられる。
【0022】
(プロピレン系重合体の物性)
本発明で用いられるプロピレン系重合体は、その融点(Tm)が120〜170℃であることが好ましい。融点(Tm)が上記範囲内であれば、光学フィルムの耐熱性が向上し、偏光板のような耐熱を要する用途への使用が可能となるので好ましい。ここで融点は、示差走査型熱量計(DSC)によって測定された融解曲線において最高強度のピークが現われている温度で評価され、プロピレン系重合体のプレスフィルム10mgを、窒素雰囲気下、230℃で5分間熱処理後、降温速度10℃/分で30℃まで冷却して30℃において5分間保温し、さらに30℃から230℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際の融解ピーク温度として求めた値である。
【0023】
プロピレン系重合体は、メルトフローレート(MFR)が、0.5〜50g/10分であることが好ましく、より好ましくは7g/10分以上である。プロピレン系重合体のMFRが上記範囲内であれば、未延伸フィルム製膜時にひずみが発生しにくいので、複屈折が小さい光学フィルムを得ることができるからである。また、光学フィルムとして十分な強度が得られ、後加工を容易に行うことができるからである。さらに、MFR調整剤などの添加剤の添加量をおさえることができるので、物性に悪影響を与えることがないからである。なお、混合物のMFRの調整は、例えば有機過酸化物などの一般的なMFR調整剤などによって行うこともできる。
なお、MFRの値は、JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定する。
【0024】
プロピレン系重合体の曲げ弾性率は、700MPa以上であることが好ましく、900MPa以上であることがより好ましい。曲げ弾性率が上記範囲内であると、光学フィルムとして十分な強度が得られ、後加工を容易に行うことができる。ここで、本発明において、曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠して測定されるものとする。
【0025】
《その他の成分》
本発明で用いられるプロピレン系重合体は、所望に応じて各種の添加剤や添加樹脂を、ポリプロピレン樹脂混合物の任意成分として添加することができる。
例えば、フィルムの所望物性に応じて、偏光子保護用シートとして必要な複屈折や透明性を損なわない範囲で、メタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレン以外の各種オレフィン樹脂を添加樹脂として配合することができ、また、耐候性改善剤、光安定剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤などを添加することができる。
【0026】
また、本発明で用いられるプロピレン系重合体は、紫外線吸収剤を好ましく含有する。紫外線吸収剤としては、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、具体的には、2−[2−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルなどが好ましく挙げられる。
【0027】
《光学フィルム》
本発明の偏光子保護用光学フィルムは、上記のプロピレン系重合体で構成される表面保護シート層と偏光子保護膜層とが接して積層してなるものであり、該表面保護シート層と偏光子保護膜層との接着強度は0.01〜5N/25mmである。ここで、接着強度はフィルムの製膜方向を長手方向にとり、幅25mm、長さ90mmに切断し、引張強度50mm/分、引き剥がし角度180°にて25mm幅あたりの接着強度を測定したときの測定値である。ここで、本明細書の偏光子保護膜用光学フィルムにおいて、表面保護シート層と偏光子保護膜層とは、「接して積層」しており、接着剤あるいは粘着剤といった二つの層を貼り付けしうる剤(単に接着剤と称することがある。)を用いることなく、所定の接着強度を有して積層した状態となっている。
接着強度が0.01N/25mm未満であると、表面保護シート層と偏光子保護層との層間で容易に剥離しやすくなりすぎてしまい、貼り付けた状態で偏光板の品質検査が行えるという本発明の効果を奏することができず、また取り扱いにくくなり作業性が極めて低下してしまう。また、接着強度が5N/25mmを超えると、表面保護シート層と偏光子保護層とがブロッキングしてしまい、容易に剥離することができなくなり、無理に剥離しようとするといずれかの層が破けてしまうといった不都合が生じやすくなる。このような観点から、本発明の偏光子保護用光学フィルムの接着強度は、0.05〜3N/25mmが好ましく、0.05〜1N/25mmがより好ましく、0.05〜0.5N/mmがさらに好ましい。
【0028】
このように、本発明の偏光子保護用光学フィルムは、表面保護シート層と偏光子保護膜層とを接着剤を一切用いずに積層しているにもかかわらず、これらの層が上記特定の接着強度で積層した状態となっているものである。そして、該特定の接着強度で積層した状態となっていることから、これらの層が剥離しやすくなりすぎることがなく、かつ剥離しにくくなりすぎることがないので、本発明の偏光子保護用光学フィルムは貼り付けた状態でも偏光板の品質検査ができ、より低コストで偏光板の品質と生産性を高めることを可能とするものである。
【0029】
本発明の表面保護シート層及び偏光子保護膜層の厚さは、10〜200μmが好ましく、40〜100μmがより好ましい。各層の厚さが10μm以上であると、光学フィルムの透明基材としての強度が十分に確保され、200μm以下であると十分な可撓性が得られ、また軽量であることからハンドリングが容易であり、かつコスト的にも有利である。
【0030】
また、偏光子保護用光学フィルムの表面には、機能層を積層して、各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
【0031】
本発明の偏光子保護用光学シートは、表面保護シート層が物理的なダメージに対する耐擦過性を有しかつ透明性が高く複屈折が小さいという特性を有することから、偏光子に貼り付けられたままでも、偏光板の品質検査を可能とするものである。すなわち、本発明の偏光子保護用光学シートの表面保護シート層は、偏光子に貼り付ける前は基体支持と表面保護シートとしての機能を有し、偏光子に貼り付けた後は表面保護シートとしての機能を有する。
【0032】
さらに、表面保護シート層は最終的には偏光板から剥がされることとなるが、剥離した表面保護シート層は偏光子保護膜として再利用が可能であり、コスト面・環境対応面で優れている。また本発明の偏光子保護用光学フィルムは、メタロセン触媒により合成されたポリプロピレンが他の樹脂よりも比較的安価に入手し得るため、材料コスト的にも優れている。そのため、本発明の偏光子保護用光学フィルムによれば、偏光板の品質と生産性を低コストで高めることができる。
【0033】
《偏光子保護用光学フィルムの製造方法》
本発明の偏光子保護用光学フィルムは、上記したプロピレン系重合体と、所望に応じて各種の添加剤や添加樹脂とを混合し、加熱溶融させた後、水冷式インフレーション成形法、多層空冷式インフレーション成形法などのインフレーション成形法のほか、押出しコーティング成形法、キャスト法、Tダイ押出し成形法、射出成形法などの各種成形法で、フィルム形状に成形加工して、製造することができる。本発明においては、偏光子上に設けられる光学フィルムが配向しないことが好ましいため、延伸のかからない未延伸のTダイ押出し成形法、インフレーション成形法が好ましい。とりわけ、インフレーション成形においては、フィルムを冷却固化した後にバブル状のフィルムを折りたたむことによってフィルムの積層を容易に行えることから、インフレーション成形法が特に好ましい。上記したようにインフレーション成形法には水冷式と空冷式とがあるが、製膜時の冷却効率を高めるためには、水冷式が好ましい。
【0034】
[光学フィルムの製造方法]
本発明の光学フィルムの製造方法は、下記の工程を順に含む水冷式インフレーション成形法による光学フィルムの製造方法である。
工程(I)溶融された熱可塑性樹脂を環状ダイから下方向に押し出した管状体に、空気を吹き込んで所定の大きさに膨張させバブルとする工程
工程(II)バブルの外周面に空気を吹き付けて空冷し、次いで冷却水により冷却固化させる冷却工程
工程(III)バブルを折りたたみ、二層のフィルムが積層してなるフィルムを得る工程
工程(IV)二層のフィルムを70〜90℃の温度条件で乾燥し、密着する乾燥密着工程
工程(V)乾燥し、密着された二層積層フィルムを切断する切断工程
【0035】
上記したように、本発明の偏光子保護用光学フィルムは、インフレーション成形法により好ましく製造され、特に好ましくは本発明の製造方法により製造することができる。以下、本発明の光学フィルムの製造方法について図1を用いて説明する。
【0036】
《工程(I)》
図1は水冷式インフレーション成形法による光学フィルムの製造方法を示す説明図である。本発明の方法は、まず、溶融された熱可塑性樹脂を環状ダイから下方向に押し出した管状体に、空気を吹き込んで所定の大きさに膨張させバブルとする工程(I)(インフレーション工程)を有する。なお、膨張した管状体をバブルという。
すなわち、溶融された熱可塑性樹脂は、原料ホッパー1より供給され、押出機2により、環状ダイ4から下方向に押し出される。該押し出しにより得られる管状体の先端をニップロール15で挟んで、その中に一定量の空気3を吹き込んで、所定の大きさに膨張させバブル5とする。
環状ダイによる下向きのインフレーション成形法を用いることで、管状に成形された溶融樹脂を巻き取る前に、配向が発生しにくくなり、位相差が小さく、かつ、幅方向において位相差にムラがほとんどない光学フィルムを製造することが可能となる。
【0037】
ここで、押出機2は、原料ホッパー1より供給された熱可塑性樹脂を溶融、混練しつつ押し出して、溶融混練した熱可塑性樹脂を環状ダイ4へと搬送するものである。また、環状ダイ4としては、インフレーション成形に用いられる各種の環状ダイを用いることができるが、ウエルドの発生が少なく、厚みの均一性に優れた、特許第3568524号や特許4050771号に記載されるようなスパイラルダイを用いることが好ましい。
【0038】
また、熱可塑性樹脂の溶融温度としては、熱可塑性樹脂の吐出量、所望のフィルムの厚さなどによって適宜決定され、特に制限はないが、通常は、成形材料のガラス転移温度(Tg)を基準として、Tg+30℃〜Tg+180℃の範囲であることが好ましい。この範囲内であると、フィルムの成形加工性、得られるフィルムの表面の平滑さ、透明性のバランスがよい良好なフィルムが得られる。以上の観点から熱可塑性樹脂の溶融温度は、さらに好ましくはTg+50℃〜Tg+150℃、特に好ましくはTg+60℃〜Tg+140℃の範囲である。
例えば、熱可塑性樹脂として、プロピレン系重合体からなる樹脂を使用した場合には、200℃以下で溶融させることが好ましく、140〜200℃の範囲が特に好適である。
【0039】
《工程(II)》
次に、該バブルの外周面に冷却空気3’を吹き付けて冷却(空冷工程)し、次いで冷却水7により冷却固化(水冷工程)させる冷却工程を有する。水冷工程では、冷却水槽に浸漬する方法、冷却水をシャワー等により吹きかける方法などがある。図1に示す方法では、前記バブル5を冷却水槽6に浸漬する方法を示しており、該水槽6には、図1に示すように冷却水7が供給される。冷却水槽6で用いられた冷却水は、冷却水受け皿9で回収され、循環利用される。
【0040】
本発明においては、該水冷工程において、バブル5の外面を、冷却水を含有する吸水性材料8を巻いて冷却することが好ましい。すなわち、バブル5は、その内面は空気に、外面は、吸水性材料8を支持材とした冷水流によって挟圧されることとなる。このように、管状に成形された溶融樹脂(バブル5)は、外面から冷水流によって冷却されるので、溶融樹脂を素早く冷却固化することができる。その結果、結晶が成長する前に溶融樹脂を冷却固化することができるので、高い透明性を有する光学フィルムを製造することが可能となる。
【0041】
また、バブル5は、十分に冷却水を含んだ吸水性材料8上の水流に接して移動するため、ニップロール15で、強制的に折りたたまれるまでに十分な冷却がなされる。したがって、後の工程において、フィルムがピンチロールからはがれやすく、また、折りたたまれたフィルムの分離が容易となる。また、バブル5は、ダイヘッドの直下の部分より、上から下に向けて製膜され、フィルム自身が引っ張られることがないため、シワ等の欠陥が入らない。さらに、バブル5の外表面は吸水性材料8に直接的に接するものではなく、冷却水を介して接するため、該外表面はほぼ鏡面状態に近い、良好な面状態を有するものとすることができる。
【0042】
上記水冷工程で用いる吸水性材料としては、水を吸収し放出するものであれば、特に限定されるものではないが、バブル5が振動する際にも、冷却水7を介してバブル5に接触できるように、柔軟性がある材料であることが好ましい。このような吸水性材料としては、布、不織布、綿、フェルト、キルト、スポンジ、吸水性シートなどがあげられる。また、バブル5の表面の平滑性の点から、毛羽立ちのない材料であることが好ましい。
取り扱いの容易性、水の保水性などの観点から、綿、絹、合成繊維等の布が好適であり、バブル5の表面に鏡面状に近い外観をもたらす、目地の細かい、具体的には繊維径が10〜20μmのものが好適に使用される。
【0043】
前記吸水性材料は、十分な冷却を行うとの観点から、バブル5全面に円筒状に巻かれていることが好ましく、その材料はフィルムと接する面につなぎ目がないことが望ましい。
また、該吸水性材料を巻く位置については、バブル5を急冷することが肝要であることから、上記空冷工程の直後に冷却水槽6などにより水冷を行い、その直下に吸水性材料8が巻かれていることが好ましい。
【0044】
水冷に用いる水の温度については、熱可塑性樹脂の種類、吐出量、所望のフィルムの厚さなどによって適宜決定されるが、0〜50℃であることが好ましい。冷却水の温度が0℃以上であると、冷却水が凍結することがなく作業上有利である。一方、冷却水が50℃以下であると、得られるフィルムの透明性が確保される。以上の点から、冷却水の温度は、5〜40℃の範囲が好ましい。なお、冷却水槽6及び吸水性材料8に供給される冷却水の流量については、上述の冷却水の温度が維持される範囲内で適宜決定されるものである。
【0045】
《工程(III)》
工程(III)は、バブルを折りたたみ、二層のフィルムが積層してなるフィルムを得る工程であり、冷却固化されたバブル5は、安定板14及びニップロール15によって強制的に折りたたまれて、二層のフィルムが積層してなるフィルムが形成される。
【0046】
《工程(IV)》
工程(IV)は、工程(III)で得られた二層のフィルムが積層してなるフィルムを乾燥し、該フィルムを構成する二層のフィルムを密着する乾燥密着工程であり、乾燥密着は乾燥密着ゾーン10で行われる。ここで、乾燥密着ゾーン10の温度条件は、60〜110℃であることを要し、好ましくは70〜90℃であり、より好ましくは75〜85℃である。60℃未満であると、フィルム表面の水分除去が不十分であり、一方110℃以上であると、二層のフィルムがブロッキングしてしまい、後述する二層のフィルムの接着強度が過剰となり、該二層のフィルムを容易に剥離することができなくなってしまう。また、必要に応じて表面処理装置11においても、乾燥密着を行うことができる。
【0047】
《工程(V)》
工程(V)は、上記工程(IV)で得られた、乾燥密着されたフィルムを切断する切断工程である。上記のように乾燥密着されたフィルムは、その両端の袋状部分をスリッター12により切断され、2層のフィルムが所定の接着強度で積層してなる光学フィルムが得られる。通常、2層の光学フィルムは、図1に示すように、それぞれ巻き上げロール13によって巻き取られる。
【0048】
本発明の方法における成形速度は、製造するフィルムの厚さと幅、及び熱可塑性樹脂の押出し量により決定され、安定的に製造できる範囲で特に制限はなく、通常は、1〜150m/分、好ましくは5〜100m/分、特に好ましくは10〜50m/分の範囲である。
【0049】
本発明の製造方法によれば、安定して薄肉成形が可能で、得られる二層のフィルムからなる光学フィルムは、各層の厚みが10〜200μmまで成形可能であり、好ましく40〜100μmで成形される。各層の厚さが10μm以上であると、光学フィルムの透明基材としての強度が十分に確保され、200μm以下であると十分な可撓性が得られ、また軽量であることからハンドリングが容易であり、かつコスト的にも有利である。
【0050】
また、本発明の製造方法で得られる光学フィルムは、該光学フィルムを構成する二層のフィルムの接着強度が0.01〜5N/25mmの範囲内となる。この接着強度の測定方法は、上記と同じである。
このように、本発明の製造方法によれば、二層のフィルムが接着剤を介することなく、所定の接着強度を有しながら、接して積層してなる光学フィルムが得られる。
【0051】
[偏光板]
本発明の光学フィルムは、偏光子保護膜として、偏光子の少なくとも片面に設けて用いることができる。偏光子に光学フィルムを設ける方法としては、偏光子の上に偏光子保護用光学フィルムを直接成形して設ける方法や、偏光子保護用光学フィルムを先に作製しておき、その後、接着剤層を介して偏光子に貼り合わせる方法が挙げられ、いずれの方法であってもよい。
図2に、本発明の偏光板の構成例を示す。図2において、25は本発明の偏光子保護用フィルムであり、表面保護シート層21と偏光子保護層22とが積層された多層フィルムである。23は偏光子であり、その片面側に接着剤層(図示しない。)を介して、偏光子保護用のTACフィルム24が貼り合わされ、全体として偏光板26を構成している。このように、本発明の偏光板は、本発明の偏光子保護用光学フィルムが用いられ、用途に応じた特性が付与された高性能の偏光板である。
【0052】
《偏光子》
偏光板で用いる偏光子としては、特定の振動方向をもつ光のみを透過する機能を有する偏光子であればいかなるものでもよく、例えばPVA系フィルムなどを延伸し、ヨウ素や二色性染料などで染色したPVA系偏光子;PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物などのポリエン系偏光子;コレステリック液晶を用いた反射型偏光子;薄膜結晶フィルム系偏光子等が挙げられ、その中でもPVA系偏光子が好ましく用いられる。
PVA系偏光子としては、例えばPVA系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料などの二色性物質を吸着させて一軸延伸したものが挙げられる。これらのなかでもPVA系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適に用いられる。これら偏光子の厚さは特に制限されず、一般的に、1〜100μm程度である。
【0053】
《偏光板の製造方法》
偏光板は、例えば、上述のようなPVA系フィルムを一軸延伸する工程、PVA系樹脂フィルムを二色性色素で染色して、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたPVA系フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程、及びこれらの工程が施されて二色性色素が吸着配向された一軸延伸PVA系フィルムに偏光子保護用光学フィルムを貼り付ける工程を経て、製造される。
【0054】
偏光子保護用光学フィルムの貼り付けは、該偏光子保護用光学フィルムか偏光子のいずれかの側又は両側に接着剤を塗布して設けた接着剤層により行うことができる。接着剤層の形成には、公知のPVA系接着剤を用いることが好ましい。
上記接着剤層は、偏光子保護用光学フィルム又は偏光子のいずれかの側または両側に、接着剤を塗布することにより形成する。接着剤層の厚みは、乾燥後の厚みで厚くなりすぎると偏光子保護用光学フィルムの接着性の点で好ましくないことから、好ましくは0.01〜10μm、さらに好ましくは0.03〜5μmである。
【0055】
また、偏光子保護用光学フィルムを偏光子と接着させるに際し、該偏光子保護用光学フィルムの偏光子と接する面に接着性向上のためにコロナ処理、プラズマ処理、低圧UV処理、ケン化処理などの表面処理やアンカー層を形成する方法などの易接着処理を施すことができる。なかでもコロナ処理、アンカー層を形成する方法、およびこれらを併用する方法が好ましい。
【0056】
次いで、上記のようにして易接着処理を行った面に接着剤層を形成し、前記接着剤層を介して、偏光子と偏光子保護用光学フィルムとを貼り合せる。
偏光子と偏光子保護用光学フィルムとの貼り合わせは、ロールラミネーターなどにより行うことができる。なお、加熱乾燥温度、乾燥時間は接着剤の種類に応じて適宜決定される。
【0057】
(その他)
本発明の偏光子保護用光学フィルムが偏光子の一方の面に形成された偏光板には、必要に応じて偏光子の他方の面に、本発明の偏光子保護用光学フィルムを形成することもできるし、その他の樹脂からなるフィルムを形成することもできる。その他の樹脂からなるフィルムとしては、例えばセルロース系フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、マレイミド系樹脂フィルム、フッ素系樹脂フィルムなどが挙げられる。なかでもトリアセチルセルロースなどのセルロース系フィルムは水蒸気透過度が高いため水抜けが良いことが知られており、また、本発明のポリプロピレン樹脂を用いた偏光子保護用光学フィルムの水蒸気透過度は低く水を通しにくいため、他方の面にセルロース系フィルムを貼りあわせると、偏光板製造時の乾燥工程での水の除去が容易となるため望ましい。なお、上記その他の樹脂からなるフィルムは特定の位相差を持つ位相差フィルムであってもよい。
【0058】
[画像表示装置]
本発明の偏光子保護用光学フィルムを用いた偏光板は、表示用の各種装置に好ましく使用することができる。
画像表示装置としては、偏光板を使用するものであれば、種類の限定はなく、例えば液晶セルを含む液晶表示装置、有機EL表示装置、タッチパネルなどが挙げられ、なかでも本発明の光学フィルムの特長をいかす観点からは、該光学フィルムを用いた偏光板は、液晶表示装置に用いることが好ましい。また、液晶ディスプレイの場合、画像表示装置は、一般に、液晶セル、光学フィルム、及び必要に応じての照明システムなどの構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては、上記した偏光板を使用する点を除いて、画像表示装置の構成には特に限定はない。例えば、液晶セルの片側又は両側に偏光板を配置した画像表示装置や、照明システムとしてバックライト又は反射板を用いたものなどの適宜な画像表示装置が例示される。また、液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。なお、画像表示装置を構成するに際しては、例えば、拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
下記に、液晶セルを含む液晶表示装置の例を説明する。
【0059】
《液晶セルを含む液晶表示装置》
本発明の偏光板は、例えば液晶セルなどに積層して好適に使用される。偏光板と液晶セルとを積層する粘着剤としては特に限定されず、例えばアクリル系粘着剤が、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れているので好ましく挙げられる。
前記粘着剤には、光学的透明性、適度な濡れ性、凝集性、接着性などの粘着特性、耐候性、耐熱性などに優れることが求められる。さらに吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差などによる光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる画像表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着剤層が求められる。
【0060】
偏光板への上記粘着剤の塗工は、例えば、トルエンや酢酸エチルなどの適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒に、ベースポリマー又はその組成物を溶解又は分散させた10〜40質量%程度の粘着剤溶液を調製し、それをグラビアコート、バーコート、ロールコートなどの塗工方式や流延方式などの適宜な展開方式で偏光板上に直接塗工する方法、あるいはこの方法に準じ離型性ベースフィルム上に粘着剤層を形成してそれを偏光板に移着する方法などが挙げられる。
【0061】
粘着剤層は、異なる組成又は種類などのものの重畳層として偏光板の片面側又は両面側に設けることもできる。また、両面側に設ける場合、偏光板の表裏において、粘着剤が同一組成である必要はなく、また同一の厚さである必要もない。異なる組成、異なる厚さの粘着剤層とすることもできる。
また、粘着剤層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1μm〜500μmであり、5μm〜200μmが好ましく、特に10μm〜100μmが好ましい。
【0062】
粘着剤層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止などを目的に、プラスチックフィルムなどの適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系などの適宜な剥離剤でコート処理した離型性フィルムが仮着されてカバーされることが好ましい。これにより、通例の取扱状態で粘着剤層に接触することを防止できる。
【実施例】
【0063】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
(1)面内位相差の評価
位相差測定機(王子計測機器(株)製「KOBRA−WR」)を用いて、波長589.3nm、入射角0度で、面内位相差を測定した。
(2)接着強度の評価
フィルムの製膜方向を長手方向にとり、幅25mm、長さ90mmに切断し、引張強度50mm/分、引き剥がし角度180°にて25mm幅あたりの接着強度を測定した。
【0064】
実施例1
プロピレン系共重合体(メタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン系共重合体(「ウィンテック(登録商標)」,日本ポリプロ(株)製,曲げ弾性率:900MPa,融点:142℃,MFR:30g/10分)であり、以下「PP−A」と表記する。)を原料とし、図1に示すような、吸水性材料8を備えた装置を用いて、ダイヘッドの設定温度を170℃、冷却水7(温度:20℃)の条件で、水冷インフレーション成形し、フィルム(厚さ:60μm,幅:700mm)を得た。次いで、該フィルムを80℃に加熱した乾燥密着ゾーン10を通過させ、スリッター12にて該フィルムの両端を10mmづつ切断し、表面保護シート層及び偏光子保護膜層(いずれも厚さ60μm)の二層のフィルムからなる偏光子保護用光学シート(厚さ:120μm,幅:680mm)を得た。ここで、吸水性材料8は、筒状の木綿の布であり、冷却水槽6の直下から、バブル5が安定板14内に入るまでの長さを有するものである。製造されたフィルムについての評価結果を第1表に示す。
【0065】
実施例2〜3
実施例1において、乾燥密着ゾーンの温度条件を60℃、110℃とした以外は、実施例1と同様にして実施例2及び3のフィルムを得た。得られたフィルムについての評価結果を第1表に示す。
【0066】
比較例1
ポリエチレンフィルム(「PAC4−60(商品名)」,サンエー化研株式会社製,厚さ:60μm,以下、「PE」と表記する。)を、実施例で得られた偏光子保護用光学シートの表面保護シート層を剥離した後の偏光子保護膜層(厚さ:60μm)の上に貼りあわせ、厚み120μmとなる2層のフィルムを得た。得られたフィルムについての評価結果を第1表に示す。
【0067】
比較例2
実施例1において、チーグラー触媒により合成したポリプロピレン樹脂(「プライムポリプロ(商品名)」,株式会社プライムポリマー製,曲げ弾性率:1,100MPa,融点:135℃,以下「チーグラーPP」と表記する。)を原料とした以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムについての評価結果を第1表に示す。
【0068】
比較例3
実施例1において、乾燥密着ゾーンの温度条件を120℃とした以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムについての評価結果を第1表に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
実施例で得られたフィルムは、面内位相差が小さい、すなわち優れた低複屈折性を有し、かつ接着剤を介さずに所定の接着強度を有しており、二つの層を貼り付けた状態でも偏光板の品質検査しうるものとなった。一方、表面保護シートをポリエチレンフィルムとした比較例1のフィルムは、面内位相差が60と大きく、低複屈折性の点で満足しうるものではなかった。チーグラーPPを用いた比較例2のフィルムも低複屈折性の点で満足しうるものではないうえ、接着強度が小さく、表面保護シート層と偏光子保護層とが容易に剥離しやすくなりすぎてしまい、作業中に剥離してしまうなど、取り扱いにくいものとなった。また、比較例3のフィルムは、面内位相差は小さく優れたものであったが、接着強度が大きく、表面保護シート層と偏光子保護層とがブロッキングしてしまった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の偏光子保護用光学フィルムは、貼り付けた状態でも偏光板の品質検査ができ、より低コストで偏光板の品質と生産性を高めうる、表面保護シート層を有する偏光子保護用光学フィルムである。本発明の光学フィルムと偏光子とを組み合わせて得られる偏光板は、液晶セルを含む液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、タッチパネルといった画像表示装置に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1.原料ホッパー
2.押出機
3.空気
3'.冷却空気
4.環状ダイ
5.バブル
6.冷却水槽
7.冷却水
8.吸水性材料
9.冷却水受け皿
10.乾燥密着ゾーン
11.表面処理装置
12.スリッター
13.巻き上げロール
14.安定板
15.ニップロール
21.表面保護シート層
22.偏光子保護層
23.偏光子
24.TACフィルム
25.偏光子保護用光学フィルム
26.偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面保護シート層と偏光子保護膜層とが接して積層してなり、該表面保護シート層と偏光子保護膜層との接着強度が0.01〜5N/25mmであり、該表面保護シート層及び偏光子保護膜層がメタロセン触媒により合成されたプロピレン系重合体で構成されるものである偏光子保護用光学フィルム。
【請求項2】
前記プロピレン系重合体が、プロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体である請求項1に記載の偏光子保護用光学フィルム。
【請求項3】
下記の工程を順に含む水冷式インフレーション成形法による光学フィルムの製造方法。
工程(I)溶融された熱可塑性樹脂を環状ダイから下方向に押し出した管状体に、空気を吹き込んで所定の大きさに膨張させバブルとする工程
工程(II)バブルの外周面に空気を吹き付けて空冷し、次いで冷却水により冷却固化させる冷却工程
工程(III)バブルを折りたたみ、二層のフィルムが積層してなるフィルムを得る工程
工程(IV)二層のフィルムを60〜110℃の温度条件で乾燥し、密着する乾燥密着工程
工程(V)乾燥し、密着された二層積層フィルムを切断する切断工程
【請求項4】
工程(IV)の温度条件が70〜90℃である請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
熱可塑性樹脂が、プロピレン系重合体からなるものである請求項3又は4に記載の製造方法。
【請求項6】
偏光子の少なくとも片面に、請求項1又は2に記載の偏光子保護用光学フィルムが設けられていることを特徴とする偏光板。
【請求項7】
請求項6に記載の偏光板が使用されていることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−22044(P2012−22044A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157943(P2010−157943)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】