説明

偏光子用組成物、偏光子、偏光子の製造方法、及び画像表示装置

【課題】 本発明は、高い二色比を有する偏光子を形成できる偏光子用組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の偏光子用組成物は、分子中に極性基及び芳香環を有し且つリオトロピック液晶性を示す第1化合物と、分子中にアミド結合及び前記アミド結合の両端部にそれぞれ結合した芳香環を有する第2化合物と、を含む。前記第2化合物は、好ましくは下記一般式(II)で表される化合物である。式(II)において、Qは、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Qは、置換若しくは無置換のアリーレン基を表し、Qは、極性基を有するアリール基を表し、mは、0〜2の整数を表す。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子を形成するために用いられる偏光子用組成物などに関する。
【背景技術】
【0002】
偏光子は、偏光又は自然光から特定の直線偏光を透過させる機能を有する光学部材である。偏光子は、例えば、液晶表示装置の構成部材や、偏光サングラスのレンズなどに使用されている。
特許文献1(特開2006−323377号公報)には、電子不足である(Electron−Deficient)盤状化合物と、電子リッチである(Electron−Rich)化合物と、を含有する偏光子用組成物が開示されている。
特許文献1の偏光子用組成物は、溶液流延法によって偏光子を形成できるので、該組成物の使用は比較的薄い偏光子の形成を可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−323377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、偏光子は偏光特性に優れていることが好ましい。高い二色比を有する偏光子は、偏光特性に優れている。しかしながら、比較的薄く且つ高い二色比を有する偏光子を形成できる材料は、その種類が少ない。従って、市場における偏光子の選択範囲を広げるため、高い二色比を有する偏光子を形成できる偏光子用組成物が求められている。
【0005】
本発明の第1の目的は、高い二色比を有する偏光子を形成できる偏光子用組成物を提供することである。
本発明の第2の目的は、高い二色比を有する偏光子を提供することである。
本発明の第3の目的は、高い二色比を有する偏光子を簡易に製造できる偏光子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の偏光子用組成物は、分子中に極性基及び芳香環を有し且つリオトロピック液晶性を示す第1化合物と、分子中にアミド結合及び前記アミド結合の両端部にそれぞれ結合した芳香環を有する第2化合物と、を含む。
【0007】
本発明の偏光子用組成物は、これを溶媒に溶解させることにより、配向性に優れた会合体を形成し得る。この偏光子用組成物を用いれば、比較的高い二色比を有する偏光子を得ることができる。その理由は、次のように推定される。
極性基及び芳香環を有する第1化合物を溶媒に溶解させた状態においては、隣接する第1化合物の芳香環間のπ−π相互作用によって第1化合物が積み重なるため、第1化合物の会合体が形成される。第1化合物の芳香環間のπ−π相互作用は、一般に弱いため、前記第1化合物の会合体は、比較的小さく、さらに、配向性に劣る(一方向に秩序だって配向する度合いが低い)。なお、上記従来の色素を溶媒に溶解させても、π−π相互作用によって会合体が形成されるが、その会合体は、同様に、比較的小さく、さらに配向性に劣る。
本発明の組成物は、前記第1化合物に加えて、分子中にアミド結合及び前記アミド結合の両端部にそれぞれ結合した結合した芳香環を有する第2化合物を含んでいる。芳香環を有する第2化合物は、π−π相互作用によって第1化合物の芳香環と重なり、大きな会合体を形成し得る。さらに、前記第2化合物は、両芳香環の間にアミド結合を有しているので、そのアミド結合部位が隣接する第1化合物と水素結合し易い。かかるπ−π相互作用及び水素結合によって、第2化合物は、第1化合物の会合体をより大きくし、さらに、この会合体の配向性を十分に向上させる働きがあると推定される。
かかる偏光子用組成物を溶媒に溶解させた塗工液の使用は、比較的薄く且つ高い二色比を有する偏光子の形成を可能とする。
なお、本発明の第2化合物は、−NH−CO−が芳香環内に含まれておらず(つまり、NH−COの窒素原子及び炭素原子が、芳香環の環構造を構成する原子ではない)、−NH−CO−が芳香環から独立している。このため、第2化合物は、上述のように、第1化合物の会合体の配向性を十分に向上させる働きがあると推定される。仮に、NH−COが芳香環内に含まれていると、そのNH−COに起因する水素結合は、芳香環の面内方向にしか作用しない。このため、NH−COが芳香環内に含まれた化合物は、そのNH−COに起因する水素結合作用は局所的である。よって、かかる化合物を使用しても、会合体の配向性を十分に向上させることはできないと推定される。
【0008】
本発明の好ましい偏光子用組成物は、前記第2化合物が、下記一般式(II)で表される化合物である。
【0009】
【化1】

一般式(II)において、Qは、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Qは、置換若しくは無置換のアリーレン基を表し、Qは、極性基を有するアリール基を表し、mは、0〜2の整数を表す。
好ましくは、前記一般式(II)のQが、置換若しくは無置換のフェニル基であり、前記Qが、置換若しくは無置換のナフチレン基であり、前記Qが、極性基を有するナフチル基である。
【0010】
本発明の好ましい偏光子用組成物は、前記第2化合物が、下記一般式(II−I)で表される化合物である。
【0011】
【化2】

一般式(II−I)において、Qは、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Qは、置換若しくは無置換のアリーレン基を表し、Eは、−SOM基以外の置換基を表し、eは、その置換数である0〜2の整数を表し、Mは、対イオンを表し、mは、0〜2の整数を表し、nは、1〜3の整数を表す。
【0012】
本発明の好ましい偏光子用組成物は、前記第2化合物が、1.0モルの前記第1化合物に対して、0.002モル〜0.20モル含まれている。
【0013】
本発明の好ましい偏光子用組成物は、前記第1化合物が、下記一般式(I)で表されるアゾ化合物である。
【0014】
【化3】

一般式(I)において、Yは、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Yは、置換若しくは無置換のアリーレン基を表し、Yは、極性基を有するアリール基を表し、前記アリール基は、隣接しない炭素原子の一部が窒素原子に置換されているアリール基を含み、前記アリーレン基は、隣接しない炭素原子の一部が窒素原子に置換されているアリーレン基を含む。
【0015】
本発明の別の局面によれば、偏光子を提供する。
この偏光子は、上記いずれかの偏光子用組成物を含む。
【0016】
本発明の別の局面によれば、偏光子の製造方法を提供する。
この偏光子の製造方法は、上記いずれかの偏光子用組成物と水系溶媒とを含む塗工液を、基材上に塗工する工程を有する。
好ましくは、前記塗工液中の前記偏光子用組成物の濃度が、0.05質量%〜50質量%である。
【0017】
本発明の別の局面によれば、画像表示装置を提供する。
この画像表示装置は、その構成部材として、上記偏光子を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の偏光子用組成物は、溶液状態で、配向性に優れた会合体を形成する。このため、前記偏光子用組成物を製膜することによって、高い二色比を有する偏光子を得ることができる。
また、本発明の偏光子は、高い二色比を有する。かかる偏光子は、例えば、画像表示装置の構成部材として好適である。
さらに、本発明の偏光子の製造方法によれば、高い二色比を有する偏光子を簡易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】1つの実施形態に係る偏光子を示す部分断面図。
【図2】1つの実施形態に係る偏光板を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の偏光子用組成物は、下記第1化合物と第2化合物とを含んでいる。本発明の偏光子は、前記偏光子用組成物を含む。
なお、本明細書において、「置換若しくは無置換」とは、「置換基を有する、又は、置換基を有しない」ことを意味する。また、本明細書において、「Y〜Z」という表示は、「Y以上Z以下」を意味する。
【0021】
(第1化合物)
第1化合物は、その分子中に極性基及び芳香環を有する化合物であって、リオトロピック液晶性を示す化合物である。
なお、リオトロピック液晶性を示す化合物とは、それを溶媒に溶解させた溶液状態で、溶液の温度や濃度などを変化させることにより、等方相−液晶相の相転移を起こす性質(リオトロピック液晶性)を有する化合物を意味する。
【0022】
第1化合物は、その分子中に極性基及び芳香環を有する化合物であれば、特に限定されない。好ましくは、第1化合物は、波長380nm〜780nm(可視光領域)内において吸収二色性を有する。第1化合物としては、例えば、アゾ化合物、アントラキノン化合物、ペリレン化合物、キノフタロン化合物、ナフトキノン化合物、メロシアニン化合物などが挙げられる。また、第1化合物として、上記特許文献1に開示された各色素から選ばれる少なくとも1種を用いてもよい。第1化合物中の極性基の数は、1以上であり、好ましくは1〜4であり、より好ましくは2又は3である。第1化合物中の芳香環の数は、1以上であり、好ましくは2〜4である。
好ましくは、第1化合物は、下記一般式(I)で表されるアゾ化合物である。
【0023】
【化4】

【0024】
一般式(I)において、Yは、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Yは、置換若しくは無置換のアリーレン基を表し、Yは、極性基を有するアリール基を表す。前記置換若しくは無置換のアリール基及び極性基を有するアリール基は、隣接しない炭素原子の一部が窒素原子に置換されているアリール基を含む。前記隣接しない炭素原子が窒素原子に置換されているアリール基としては、ピリジン環、ピリミジン環などが挙げられる。また、前記置換若しくは無置換のアリーレン基も同様に、隣接しない炭素原子の一部が窒素原子に置換されているアリーレン基を含む。
【0025】
前記Yで表されるアリール基は、フェニル基の他、ナフチル基などのようなベンゼン環が2以上縮合した縮合環基などが挙げられる。前記Yで表されるアリール基が置換基を有する場合、その置換基としては、下記の置換基Aの具体例のような基が挙げられる。
前記Yで表されるアリール基は、好ましくは置換若しくは無置換のフェニル基(隣接しない炭素原子の一部が窒素原子に置換されているフェニル基を含む)又は置換若しくは無置換のナフチル基(隣接しない炭素原子の一部が窒素原子に置換されているナフチル基を含む)であり、より好ましくは置換若しくは無置換のフェニル基又は置換若しくは無置換のナフチル基であり、特に好ましくは置換基を有するフェニル基又は置換基を有するナフチル基(すなわち、置換のフェニル基又は置換のナフチル基)である。
このようなYは、例えば、下記式(a)から(c)からなる群から選ばれる1つである。
【0026】
【化5】

【0027】
式(a)から(c)において、各Aは、それぞれ置換基を表し、各aは、その置換数を表す。前記各Aは、独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、ジヒドロキシプロピル基等の炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、炭素数6〜20のフェニルアミノ基、炭素数1〜6のアシルアミノ基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、アセトアミド基、リン酸基、−SOM基、−COOM基、−NHR基、又は−CONHR基などである。ただし、前記Mは、対イオンを表す。前記−NHR基及び−CONHR基のRは、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアセチル基、置換若しくは無置換のベンゾイル基、置換若しくは無置換のフェニル基、又は下記式(III)で表される基を表す。
【0028】
【化6】

【0029】
一般式(III)において、Xは、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜18のアルキル基(隣接しない炭素原子が酸素原子に置換されているアルキル基を含む)、メタクリル基、又はアクリル基を表す。前記隣接しない炭素原子が酸素原子に置換されている炭素数1〜18のアルキル基としては、例えば、炭素数1〜18のアルキルエーテル基などが挙げられる。前記炭素数1〜18のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状でもよいが、好ましくは直鎖状である。前記アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12であり、より好ましくは1〜8であり、特に好ましくは1〜4である。
式(a)のaは、0〜5の整数であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1又は2である。式(b)及び式(c)のaは、それぞれ0〜6の整数であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1又は2である。前記各aが2以上である場合(すなわち、Aが2以上置換されている場合)、各Aは、独立して、同一又は異なる。
なお、上記式(a)から(c)において、各Aは、ベンゼン環又はナフチル環の炭素原子に結合しているが、その結合位置は任意である。Aの結合位置が前記のように任意であることを表すため、式(a)から(c)において、Aからの直線の一端部がベンゼン環又はナフチル環の中央部にまで記載されている。以下同様に、置換基からの直線の一端部がベンゼン環又はナフチル環の中央部にまで記載されている各式においては、その置換基が、ベンゼン環又はナフチル環の任意の炭素原子に結合していることを表す。
【0030】
前記M(対イオン)としては、例えば、水素原子;Li、Na、K、Csなどのアルカリ金属原子;Ca、Sr、Baなどのアルカリ土類金属原子;金属イオン;アルキル基若しくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩;有機アミンの塩などが挙げられる。前記金属イオンとしては、例えば、Ni2+、Fe3+、Cu2+、Ag、Zn2+、Al3+、Pd2+、Cd2+、Sn2+、Co2+、Mn2+、Ce3+などが挙げられる。有機アミンとしては、炭素数1〜6のアルキルアミン、ヒドロキシル基を有する炭素数1〜6のアルキルアミン、カルボキシル基を有する炭素数1〜6のアルキルアミンなどが挙げられる。上記Mで表される対イオンは、1種単独で、又は2種以上混在していてもよい。
これ以降の説明において表される「M」は、上述のような対イオンであり、「R」は、上述のような基である。このため、以下の説明における「M」及び「R」については、上記記載を参照されたい。
【0031】
式(a)から(c)の各置換基Aは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基及び−SOM基が好ましい。
【0032】
前記Yで表されるアリーレン基は、フェニレン基の他、ナフチレン基などのようなベンゼン環が2以上縮合した縮合環基などが挙げられる。前記Yで表されるアリーレン基が置換基を有する場合、その置換基としては、上記の置換基Aの具体例のような基が挙げられる。
前記Yで表されるアリーレン基は、好ましくは置換若しくは無置換のフェニレン基(隣接しない炭素原子の一部が窒素原子に置換されているフェニル基を含む)又は置換若しくは無置換のナフチレン基(隣接しない炭素原子の一部が窒素原子に置換されているナフチレン基を含む)であり、より好ましくは置換若しくは無置換のフェニレン基又は置換若しくは無置換のナフチレン基であり、特に好ましくは置換基を有するナフチレン基(すなわち、置換のナフチレン基)である。
このようなYは、例えば、下記式(d)から(f)からなる群から選ばれる1つであり、好ましくは式(d)で表される1,4−ナフチレン基である。
【0033】
【化7】

【0034】
式(d)から(f)において、各Bは、それぞれ置換基を表し、各bは、その置換数を表す。式(d)から(f)の各Bの具体例は、上記式(a)の置換基Aとそれぞれ同様であり、式(d)から(f)のbは、上記式(b)の置換数aと同様である。式(d)から(f)の各Bは、好ましくは極性基であり、より好ましくはニトロ基、リン酸基、−SOM基、−COOM基、−OM基、−NHR基、及び−CONHR基であり、特に好ましくは、リン酸基、−SOM基、及び−COOM基である。
【0035】
前記Yで表されるアリール基は、フェニル基の他、ナフチル基などのようなベンゼン環が2以上縮合した縮合環基などが挙げられる。
前記Yで表されるアリール基は、好ましくは極性基を有するフェニル基(隣接しない炭素原子の一部が窒素原子に置換されているフェニル基を含む)又は極性基を有するナフチル基(隣接しない炭素原子の一部が窒素原子に置換されているナフチル基を含む)であり、より好ましくは極性基を有するフェニル基又は極性基を有するナフチル基であり、特に好ましくは極性基を有するナフチル基である。ただし、Yで表されるアリール基は、極性基以外の置換基を有していてもよい。極性基以外の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、ハロゲノ基などが挙げられる。
このようなYは、例えば、下記式(g)又は(h)から選ばれる1つであり、好ましくは式(h)で表される2−ナフチル基である。
【0036】
【化8】

【0037】
式(g)及び(h)において、各Dは、それぞれ極性基を表し、各dは、その置換数を表す。前記極性基としては、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、炭素数6〜20のフェニルアミノ基、炭素数1〜6のアシルアミノ基、ニトロ基、アセトアミド基、リン酸基、−SOM基、−COOM基、−NHR基、及び−CONHR基などが挙げられる。式(g)及び式(h)のdは、1〜7の整数であり、好ましくは2〜6の整数であり、より好ましくは2〜5の整数である。前記dが2以上である場合(すなわち、Dが2以上置換されている場合)、各Dは、独立して、同一又は異なる。水系溶媒に対する第1化合物の溶解性を高めるため、式(g)及び(h)の各Dは、リン酸基、−SOM基、−COOM基、−OM基、−NHR基及び−CONHR基が好ましい。
【0038】
好ましい第1化合物は、下記一般式(I−I)、(I−II)、(I−III)、(I−IV)、(I−V)又は(I−VI)で表される。
【0039】
【化9】

【0040】
一般式(I−I)から(I−VI)において、Y及びYは、一般式(I)のY及びYと同様であり、A、a、M及びRは、式(a)のA、a、M及びRと同様であり、B及びbは、式(d)のB及びbと同様であり、D及びdは、式(g)のD及びdと同様であり、lは、1又は2の整数を表す。
【0041】
上記第1化合物は、例えば、次のようにして合成できる。
置換基を有するアニリン誘導体をジアゾニウム塩化し、これをアミノナフタレン誘導体とカップリング反応させることによって、モノアゾ化合物を得る。このモノアゾ化合物をジアゾニウム塩化した後、ナフタレンスルホン酸誘導体と弱アルカリ性下でカップリング反応させることによって、第1化合物を得ることができる。
【0042】
(第2化合物)
第2化合物は、その分子中にアミド結合及び前記アミド結合の両端部にそれぞれ結合した芳香環を有する化合物である。
すなわち、第2化合物は、独立したアミド結合(−NH−CO−)を有し、その一方の結合手に第1の芳香環が結合し且つ他方の結合手に第2の芳香環が結合している分子構造を有する。なお、独立したアミド結合を有するとは、アミド結合が芳香環内に含まれていないことを意味する。かかる分子構造が、第2化合物の重要な特徴である。
かかる分子構造を有していることを条件として、第2化合物は、特に限定されない。前記第1及び第2の芳香環は、同一又はそれぞれ異なっていてもよい。芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、隣接しない炭素原子の一部が窒素原子に置換されているベンゼン環、隣接しない炭素原子の一部が窒素原子に置換されているナフタレン環、5員環などが挙げられる。前記5員環としては、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾールなどが挙げられる。
【0043】
水系溶媒に対する第2化合物の溶解性を高めるため、好ましくは、第2化合物は、その分子中に極性基を有する。第2化合物が極性基を有する場合、該極性基の数は、1以上であり、好ましくは1〜5であり、より好ましくは1〜4である。前記極性基としては、ニトロ基、リン酸基、−SOM基、−COOM基、−OM基、−NHR基、及び−CONHR基などが挙げられる。
【0044】
好ましくは、第2化合物は、下記一般式(II)で表される化合物である。
【0045】
【化10】

【0046】
一般式(II)において、Qは、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Qは、置換若しくは無置換のアリーレン基を表し、Qは、極性基を有するアリール基を表し、mは、0〜2の整数を表す。
前記Qで表されるアリール基及びQで表されるアリーレン基がそれぞれ置換基を有する場合、その置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、ジヒドロキシプロピル基等の炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、炭素数6〜20のフェニルアミノ基、炭素数1〜6のアシルアミノ基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、アセトアミド基、リン酸基、−SOM基、−COOM基、−NHR基、及び−CONHR基などが挙げられる。
【0047】
前記Qで表されるアリール基は、フェニル基の他、ナフチル基などのようなベンゼン環が2以上縮合した縮合環基などが挙げられる。前記Qで表されるアリール基は、好ましくは置換若しくは無置換のフェニル基又は置換若しくは無置換のナフチル基であり、より好ましくは置換若しくは無置換のフェニル基であり、特に好ましくは無置換のフェニル基である。
【0048】
前記Qで表されるアリーレン基は、フェニレン基の他、ナフチレン基などのようなベンゼン環が2以上縮合した縮合環基などが挙げられる。前記Qで表されるアリーレン基は、好ましくは置換若しくは無置換のフェニレン基又は置換若しくは無置換のナフチレン基であり、より好ましくは置換基を有するフェニレン基又は置換基を有するナフチレン基(すなわち、置換のフェニレン基又は置換のナフチレン基)であり、特に好ましくは置換基を有するナフチレン基である。
前記Qは、例えば、上記式(d)から(f)からなる群から選ばれる1つであり、好ましくは式(d)で表される1,4−ナフチレン基である。
【0049】
前記Qで表されるアリール基は、フェニル基の他、ナフチル基などのようなベンゼン環が2以上縮合した縮合環基などが挙げられる。前記Qで表されるアリール基は、好ましくは極性基を有するフェニル基又は極性基を有するナフチル基であり、より好ましくは極性基を有するナフチル基である。ただし、Qで表されるアリール基は、極性基以外の置換基を有していてもよい。極性基以外の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、ハロゲノ基などが挙げられる。極性基としては、上述のような基が挙げられるが、好ましくは、リン酸基、−SOM基、又は−COOM基である。
前記Qは、例えば、上記式(g)又は(h)から選ばれる1つであり、好ましくは式(h)で表される2−ナフチル基である。
【0050】
好ましい第2化合物は、下記一般式(II−I)、(II−II)、(II−III)又は(II−IV)で表される。
【0051】
【化11】

【0052】
一般式(II−I)から(II−IV)において、Q及びQは、一般式(II)のQ及びQと同様であり、A、a及びMは、式(a)のA、a及びMと同様であり、B及びbは、式(d)のB及びbと同様であり、Eは、−SOM基以外の置換基を表し、eは、Eの置換数である0〜2の整数を表し、mは、0〜2の整数を表し、nは、1〜3の整数を表し、pは、1又は2を表す。
前記−SOM基以外の置換基としては、上記式(a)の置換基Aの具体例のような基が挙げられ、その中でも、−SOM基以外の極性基が好ましい。
【0053】
上記第2化合物は、例えば、次のようにして合成できる。
ナフタレンスルホン酸誘導体とアミノナフタレンスルホン酸誘導体とを、ジアゾ化及びカップリング反応させることによって、モノアゾ化合物を得る。このモノアゾ化合物とベンゾイルクロリドとを反応させることによって、第2化合物を得ることができる。
【0054】
(偏光子用組成物)
本発明の偏光子用組成物は、上記第1化合物と、上記第2化合物と、を含む。第1化合物と第2化合物の含有比は特に限定されない。もっとも、第2化合物は、第1化合物の配向助剤として主として機能している。つまり、第2化合物は、主として第1化合物の配向性を向上させることを促進する助剤として機能する。このため、第1化合物は、通常、第2化合物よりも多く含まれる。具体的には、偏光子用組成物中において、前記第2化合物は、1.0モルの第1化合物に対して、好ましくは0.002モル〜0.20モル含まれ、より好ましくは、0.002モル〜0.150モル含まれ、さらに好ましくは、0.01モル〜0.130モル含まれ、特に好ましくは0.03モル〜0.08モル含まれる。第2化合物の含有量が0.002モル未満である場合、第1化合物に対する第2化合物の量が少なすぎるので、第1化合物の配向性を十分に促進しないおそれがある。第2化合物の含有量が0.20モルを超える場合、第1化合物に対する第2化合物の量が多くなりすぎるため、却って第1化合物の配向性を阻害するおそれがある。
なお、本発明の偏光子用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、第1化合物及び第2化合物以外の成分(他のアゾ化合物、他の有機色素、ポリマー及び/又は添加剤など)が含まれていてもよい。
【0055】
上記偏光子用組成物は、適当な溶媒に溶解させることにより液晶相を示す。偏光子用組成物を含む塗工液を基材上に流延することによって、会合体が所定方向に配向する。
【0056】
前記偏光子用組成物を溶媒に溶解させた状態において、隣接する第1化合物の芳香環間のπ−π相互作用によって第1化合物が積み重なることによって会合体が形成される。この芳香環間のπ−π相互作用は、一般に弱いため、前記第1化合物単独では、その会合体は、比較的小さく、さらに、配向性に劣る。アミド結合及び芳香環を有する上記第2化合物は、その芳香環のπ−π相互作用によって第1化合物の芳香環と重なり、大きな会合体の形成を促進する。さらに、前記第2化合物のアミド結合部位が、第1化合物と水素結合し得る。かかるπ−π相互作用及び水素結合によって、第2化合物が第1化合物に結びつき、第1化合物の会合体をより大きくし、この会合体の配向性を向上させる。
【0057】
(偏光子)
本発明の偏光子は、上記偏光子用組成物を含む。
なお、本発明の偏光子には、本発明の効果を損なわない範囲で、偏光子用組成物以外の成分が含まれていてもよい。
【0058】
本発明の偏光子は、前記偏光子用組成物を含むため、波長380nm〜780nmの間の少なくとも一部で吸収二色性を示す。
本発明の偏光子の二色比は、好ましくは44以上であり、より好ましくは45以上であり、特に好ましくは47以上である。
また、本発明の偏光子の波長550nmにおける単体透過率(T[550])は、好ましくは30%以上であり、より好ましくは35%以上であり、特に好ましくは35%〜65%である。
ただし、前記二色比及び単体透過率は、下記実施例に記載の方法に従って測定できる。
また、本発明の偏光子は、耐熱性も良好である。
【0059】
前記偏光子の偏光度は、好ましくは95%以上であり、より好ましくは98%以上であり、特に好ましくは99%以上である。偏光子の偏光度は、偏光子の厚みを適宜設定することによって上下に調整できる。
ただし、前記偏光度は、下記実施例の二色比の測定方法と同様にしてk及びkを測定し、これを下記式に代入して求めることができる。
式:偏光度=(k−k)/(k+k
なお、kは、最大透過率方向の直線偏光の透過率を表し、kは、最大透過率方向に直交する方向の直線偏光の透過率を表す。
【0060】
前記偏光子の厚みは、特に限定されない。本発明の偏光子は、後述するように溶液流延法によって形成できるので、より薄く形成できる。具体的には、偏光子の厚みは、好ましくは0.05μm〜5μmであり、より好ましくは0.1μm〜1μmである。
【0061】
(偏光子の製造方法)
本発明の偏光子は、例えば、偏光子用組成物を含む塗工液を適当な基材上に薄膜状に塗工し、乾燥することによって得られる。
【0062】
本発明の偏光子は、好ましくは下記工程A及び工程Bを経て製造でき、必要に応じて、工程Bの後、下記工程Cを行ってもよい。
工程A:前記偏光子用組成物を含む塗工液を、基材上に塗工し、塗膜を形成する工程。
工程B:前記塗膜を乾燥する工程。
工程C:工程Bで乾燥させた塗膜の表面に、耐水化処理を施す工程。
前記基材は、塗工液を塗工する面側に配向規制力が付与されていてもよい。
【0063】
<工程A>
工程Aは、上記塗工液を、基材上に塗工し、塗膜を形成する工程である。
本発明の塗工液は、前記偏光子用組成物(第1化合物の少なくとも1種及び第2化合物の少なくとも1種)と、前記偏光子用組成物を溶解させる溶媒と、を含む。
なお、前記溶媒には、必要に応じて、他の成分を溶解させてもよい。
【0064】
前記溶媒は、特に限定されず、従来公知の溶媒を用いることができるが、水系溶媒が好ましい。
水系溶媒は、水、親水性溶媒、及び、水と親水性溶媒の混合溶媒を含む。前記親水性溶媒は、水と略均一に溶解させることができる溶媒である。親水性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、メチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのグリコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;などが挙げられる。前記水系溶媒は、好ましくは、水、又は、水と親水性溶媒の混合溶媒が用いられる。
前記第1化合物及び第2化合物は、極性基を有するので、いずれも水系溶媒に対する溶解性に優れている。
【0065】
上記塗工液は、液温や化合物の濃度などを変化させることにより、液晶相を示す。
この液晶相は、特に限定されず、ネマチック液晶相、ミドル相、スメクチック液晶相、コレステリック液晶相、又はヘキサゴナル液晶相等が挙げられる。液晶相は、偏光顕微鏡で観察される光学模様によって、確認、識別できる。
【0066】
前記塗工液中における偏光子用組成物(第1化合物及び第2化合物の合計)の濃度は、0.05質量%〜50質量%であり、好ましくは0.5質量%〜40質量%であり、より好ましくは2質量%〜30質量%である。本発明の偏光子用組成物は、通常、前記濃度範囲において液晶相を示す。
【0067】
また、塗工液は、適切なpHに調整される。塗工液のpHは、好ましくはpH5〜10程度である。塗工液のpHが前記範囲であれば、塗工液の塗工装置が腐食され難い。
さらに、塗工液の温度は、好ましくは10℃〜40℃、より好ましくは15℃〜30℃に調整される。
【0068】
さらに、上記塗工液には、添加剤が添加されていてもよい。該添加剤としては、例えば、相溶化剤、界面活性剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、増粘剤などが挙げられる。塗工液中における添加剤の濃度は、好ましくは0を超え10質量%以下である。
【0069】
基材は、塗工液を均一に展開するために用いられる。この目的に適していれば基材の種類は特に限定されない。基材としては、例えば、ポリマーフィルム、ガラス板などのシートを用いることができる。また、基材として、金属ドラムを用いてもよい。シート又は金属ドラムなどの上に塗工液を塗工することにより、第1化合物及び第2化合物を含む薄膜状の塗膜を形成できる。
好ましい実施形態においては、前記基材として、配向基材が用いられる。前記配向基材は、少なくとも表面に配向規制力を有する基材である。前記配向基材に塗工液を塗工することにより、第1化合物を容易に配向させることができる。
【0070】
上記ポリマーフィルムとしては、特に限定されないが、透明性に優れているフィルム(例えば、ヘイズ値3%以下)が好ましい。
上記ポリマーフィルムの材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系;ポリカーボネート系;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系;ポリエチレン、ポリプロピレン、環状又はノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系などが挙げられる。前記第1化合物を良好に配向させるためには、オレフィン系フィルムを用いることが好ましく、さらに、ノルボルネン系フィルムを用いることがより好ましい。前記ノルボルネン系フィルムとしては、例えば、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオノア」が挙げられる。
【0071】
前記配向基材は、基材(例えばポリマーフィルム)の表面又は前記基材上に形成された表面層に配向規制力を付与することによって得られる。
前記配向規制力を付与する方法は、特に限定されない。前記方法としては、前記基材の表面にラビング処理を施す方法、前記基材上にポリイミドなどの表面層を形成し、この表面層にラビング処理を施す方法、前記基材上に光反応(光異性化、光二量化又は光分解など)を起こす化合物を含む表面層を形成し、前記表面層に光照射を行うことによって表面層に方向性を付与する方法、などが挙げられる。
また、前記基材の表面(前記塗工液を塗工する面)に、コロナ処理のような親水化処理を施してもよい。
【0072】
上記シートからなる基材の厚みは、強度等に応じて適宜に設計し得る。薄型軽量化の観点から、前記基材の厚みは、好ましくは300μm以下、より好ましくは5μm〜200μm、特に好ましくは10μm〜100μmである。
シートからなる基材の一面に塗工液を塗工する方法としては、適切なコータを用いた塗工方法が採用され得る。該コータとしては、例えば、バーコータ、リバースロールコータ、正回転ロールコータ、グラビアコータ、ロッドコータ、スロットダイコータ、スロットオリフィスコータ、カーテンコータ、ファウンテンコータなどが挙げられる。
【0073】
液晶相状態の塗工液を基材上に塗工すると、塗工液の流動過程で第1化合物の会合体に剪断応力が加わる。よって、会合体が所定方向に配向した塗膜を基材上に形成できる。また、基材が配向基材である場合、その方向性に従って第1化合物が配向する。従って、配向基材を用いる場合、非液晶状態の塗工液を塗工してもよい。つまり、配向基材の使用は、液晶相を示さない状態の塗工液の使用を可能にする。配向基材の表面に、非液晶状態又は液晶状態の塗工液を塗工することによって、会合体が所定方向に配向した塗膜を基材上に形成できる。
なお、前記会合体の配向を高めるため、必要に応じて、前記塗膜を形成した後、磁場又は電場などを印加してもよい。
【0074】
<工程B>
工程Bは、前記塗膜を乾燥する工程である。
基材上に、塗工液を塗工して塗膜を形成した後、これを乾燥する。
乾燥は、自然乾燥、強制的な乾燥などで実施できる。強制的な乾燥としては、減圧乾燥、加熱乾燥、減圧加熱乾燥などが挙げられる。好ましくは、自然乾燥である。
乾燥時間は、乾燥温度や溶媒の種類によって、適宜、選択され得る。例えば、自然乾燥の場合には、乾燥時間は、好ましくは1秒〜120分であり、より好ましくは10秒〜5分である。
【0075】
上記乾燥過程で、塗膜の濃度が上昇し、塗膜中において配向した第1化合物が固定される。塗膜中の第1化合物の配向が固定されることによって、偏光子の特性である、吸収二色性を生じる。得られた乾燥塗膜は、偏光子として使用できる。
得られた乾燥塗膜の厚みは、好ましくは0.05μm〜5μmである。
【0076】
<工程C>
工程Cは、前記乾燥塗膜の表面(基材の接合面と反対面)に、耐水性を付与する工程である。
具体的には、上記工程Bで形成された乾燥塗膜の表面に、アルミニウム塩、バリウム塩、鉛塩、クロム塩、ストロンチウム塩、セリウム塩、ランタン塩、サマリウム塩、イットリウム塩、銅塩、鉄塩、及び分子内に2個以上のアミノ基を有する化合物塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物塩を含む溶液を接触させる。
【0077】
工程Cを行うことにより、前記化合物塩を含む層が前記乾燥塗膜の表面に形成される。かかる層を形成することにより、乾燥塗膜の表面を水に対して不溶化又は難溶化させることができる。よって、乾燥塗膜(偏光子)に、耐水性を付与できる。
なお、必要に応じて、得られた偏光子の表面を水又は洗浄液で洗浄してもよい。
本発明の偏光子の製造方法は、上記工程A、B及びC以外の工程を有していてもよい。
【0078】
(偏光子の用途)
上記塗工液をシートからなる基材上に塗工することによって得られた偏光子1は、図1に示すように、基材2上に積層されている。
本発明の偏光子1は、通常、基材2上に積層された状態で使用される。もっとも、前記偏光子1は、上記基材2から剥離して使用することもできる。
本発明の偏光子1には、さらに、他の光学フィルムを積層してもよい。他の光学フィルムとしては、保護フィルム、位相差フィルムなどが挙げられる。本発明の偏光子に、保護フィルム及び/又は位相差フィルムを積層することにより、偏光板を構成できる。
図2に、本発明の偏光子1に保護フィルム3が積層された偏光板5を示す。この偏光板5は、基材2と、前記基材2上に積層された偏光子1と、前記偏光子1上に積層された保護フィルム3と、を有する。基材2は、偏光子1を保護する機能を有する。このため、前記偏光板5は、偏光子1の一方の面にのみ保護フィルム3が積層されている。
また、特に図示しないが、この偏光板5には、位相差フィルムなどの他の光学フィルムが積層されていてもよい。
【0079】
偏光子に他の光学フィルムを積層する場合、実用的には、これらの間には任意の適切な接着層が設けられる。接着層を形成する材料としては、例えば、接着剤、粘着剤、アンカーコート剤等が挙げられる。
【0080】
本発明の偏光子の用途は、特に限定されない。本発明の偏光子は、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置などの画像表示装置の構成部材として使用できる。
前記画像表示装置が液晶表示装置の場合、その好ましい用途は、テレビ、携帯機器、ビデオカメラなどである。
【実施例】
【0081】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに説明する。ただし、本発明は、下記実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた各分析方法は、以下の通りである。
【0082】
[偏光子の二色比の測定方法]
グラントムソン偏光子を備える分光光度計(日本分光(株)製、製品名「V−7100」)を用いて、直線偏光を偏光子に入射し、視感度補正したY値のk及びkを測定した。このk及びkを下記式に代入して、二色比を求めた。
式:二色比=log(1/k)/log(1/k
なお、前記kは、最大透過率方向の直線偏光の透過率を表し、kは、最大透過率方向に直交する方向の直線偏光の透過率を表す。
[偏光子の単体透過率の測定方法]
グラントムソン偏光子を備える分光光度計(日本分光(株)製、製品名「V−7100」)を用いて、23℃で、単体透過率を測定した。
【0083】
[第1化合物の合成]
4−ニトロアニリン(1当量)を、下記文献に記載の方法に従って、亜硝酸ナトリウム(1当量)及び塩酸(5当量)を用いてジアゾニウム塩化し、弱酸性冷水溶液中にて、これを8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(1当量)とカップリング反応させることによって、モノアゾ化合物を得た。このモノアゾ化合物(1当量)を、亜硝酸ナトリウム(1当量)及び塩酸(2.5当量)を用いてジアゾニウム塩化し、弱塩基性冷水溶液中にて、これを1−アミノ−8−ヒドロキシ−2,4−ナフタレンジスルホン酸(0.95当量)とカップリング反応させることによって、ジスアゾ化合物を得た。このジスアゾ化合物のスルホン酸塩をリチウム塩へ変換するため、ジスアゾ化合物を塩化リチウムで塩析することによって、下記式(I−X)で表されるジスアゾ化合物を含む水溶液を得た。
文献:細田豊著「理論製造 染料化学(5版)」(昭和43年7月15日技報堂発行の135頁〜152頁)。
【0084】
【化12】

【0085】
[第2化合物の合成]
3−アミノ−2,7−ナフタレンジスルホン酸(1当量)と8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(1当量)とを、上記文献に記載の方法に従って、ジアゾ化及びカップリング反応させることによって、モノアゾ化合物を得た。このモノアゾ化合物(1当量)とベンゾイルクロリド(3当量)とを、非極性溶媒中(N−メチルピロリドン)において、ピリジン存在下で反応させることによって、アミド結合を有するアゾ化合物の粗生成物を得た。この粗生成物をイオン交換水に溶解させることにより、5質量%の水溶液を調製した。この水溶液を、イオン交換樹脂(オルガノ(株)製、製品名「アンバーライトIR120B HAG」)を用いて、アゾ化合物を遊離酸とした。この遊離酸の水溶液を、5質量%の水酸化リチウム水溶液を用いて、pH7となるように中和することによって、下記式(II−X)で表されるアゾ化合物を含む水溶液を得た。
【0086】
【化13】

【0087】
[実施例1]
式(I−X)で表される第1化合物を含む水溶液と、式(II−X)で表される第2化合物を含む水溶液とを、第1化合物:第2化合物(モル比)=9.8:0.2となるように混合した(すなわち、1モルの第1化合物に対して、第2化合物が0.020モルの割合となるように混合した)。その後、ロータリーエバポレーターを用いて、この混合液から水を除去することにより、第1化合物及び第2化合物の合計濃度が5質量%の水溶液(塗工液)を得た。
この塗工液を、ラビング処理及びコロナ処理が施されたノルボルネン系ポリマーフィルム(日本ゼオン社製、商品名「ゼオノア」)の前記処理面上に、バーコータ(BUSHMAN社製、製品名「Mayer rot HS4」)を用いて塗工し、23℃の恒温室内で2分間自然乾燥した。乾燥後の塗膜が、偏光子である。この偏光子の光学特性を表1に示す。
【0088】
[実施例2]
式(I−X)で表される第1化合物を含む水溶液と、式(II−X)で表される第2化合物を含む水溶液とを、第1化合物:第2化合物(モル比)=9.5:0.5となるように混合した(すなわち、1モルの第1化合物に対して、第2化合物が0.053モルの割合となるように混合した)。その後、ロータリーエバポレーターを用いて、この混合液から水を除去することにより、第1化合物及び第2化合物の合計濃度が5質量%の水溶液(塗工液)を得た。
この塗工液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、偏光子を作製した。この偏光子の光学特性を表1に示す。
【0089】
[実施例3]
式(I−X)で表される第1化合物を含む水溶液と、式(II−X)で表される第2化合物を含む水溶液とを、第1化合物:第2化合物(モル比)=9.0:1.0となるように混合した(すなわち、1モルの第1化合物に対して、第2化合物が0.111モルの割合となるように混合した)。その後、ロータリーエバポレーターを用いて、この混合液から水を除去することにより、第1化合物及び第2化合物の合計濃度が5質量%の水溶液(塗工液)を得た。
この塗工液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、偏光子を作製した。この偏光子の光学特性を表1に示す。
【0090】
[比較例1]
式(I−X)で表される第1化合物を含む水溶液のみを、ロータリーエバポレーターを用いて水を除去することにより、第1化合物の濃度が5質量%の水溶液(塗工液)を得た。
この塗工液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、偏光子を作製した。この偏光子の光学特性を表1に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
表1から明らかな通り、第1化合物と第2化合物を含む偏光子(実施例1〜3の偏光子)は、第1化合物のみを含む偏光子(比較例1の偏光子)に比して、二色比が高かった。この要因は、第2化合物が第1化合物の配向を促進したためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の偏光子用組成物は、偏光子の形成材料として利用できる。
本発明の偏光子は、例えば、液晶表示装置の構成部材、偏光サングラスなどに利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に極性基及び芳香環を有し且つリオトロピック液晶性を示す第1化合物と、分子中にアミド結合及び前記アミド結合の両端部にそれぞれ結合した芳香環を有する第2化合物と、を含む偏光子用組成物。
【請求項2】
前記第2化合物が、下記一般式(II)で表される化合物である請求項1に記載の偏光子用組成物。
【化1】

は、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Qは、置換若しくは無置換のアリーレン基を表し、Qは、極性基を有するアリール基を表し、mは、0〜2の整数を表す。
【請求項3】
前記一般式(II)のQが、置換若しくは無置換のフェニル基であり、前記Qが、置換若しくは無置換のナフチレン基であり、前記Qが、極性基を有するナフチル基である請求項2に記載の偏光子用組成物。
【請求項4】
前記第2化合物が、下記一般式(II−I)で表される化合物である請求項1に記載の偏光子用組成物。
【化2】

は、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Qは、置換若しくは無置換のアリーレン基を表し、Eは、−SOM基以外の置換基を表し、eは、その置換数である0〜2の整数を表し、Mは、対イオンを表し、mは、0〜2の整数を表し、nは、1〜3の整数を表す。
【請求項5】
前記第2化合物が、1.0モルの第1化合物に対して、0.002モル〜0.20モル含まれている請求項1〜4のいずれかに記載の偏光子用組成物。
【請求項6】
前記第1化合物が、下記一般式(I)で表されるアゾ化合物である請求項1〜5のいずれかに記載の偏光子用組成物。
【化3】

は、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Yは、置換若しくは無置換のアリーレン基を表し、Yは、極性基を有するアリール基を表し、前記アリール基は、隣接しない炭素原子の一部が窒素原子に置換されているアリール基を含み、前記アリーレン基は、隣接しない炭素原子の一部が窒素原子に置換されているアリーレン基を含む。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の偏光子用組成物を含む偏光子。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の偏光子用組成物と水系溶媒とを含む塗工液を、基材上に塗工する工程を有する偏光子の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の偏光子を有する画像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate