説明

偏光板、それを用いた液晶表示装置、及び耐湿熱性偏光板用保護フィルム

【課題】耐湿熱性が改善された偏光板の提供。
【解決手段】偏光膜(12)、その一方の表面上に、厚みが77μm以下のセルロースアシレートフィルム(16)、及び光弾性係数が負である層(14)を少なくとも有する偏光板(10)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板及びそれを用いた液晶表示装置に関し、さらに詳細には、湿熱等の歪みによる光漏れなどが生じ難い偏光板、及び該偏光板を用いた、画像表示品位の高い液晶表示装置に関する。また、本発明は、耐湿熱性偏光板用保護フィルムにも関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板には、ポリビニルアルコールにヨウ素等を吸着させて、延伸してなる偏光膜が広く利用されている。偏光板は、通常、ポリビニルアルコール膜等からなる偏光膜と、該偏光膜の両面に、それを保護するための保護膜が接着された積層構造になっている。保護膜としては、汎用性の高いトリアセチルセルロースフィルムが種々利用されている。
【0003】
一方、偏光板が利用される液晶表示装置等の画像表示装置については、薄型化が進み、バックライトユニットと表示パネルユニットとの距離が短くなる傾向にある。その結果、バックライトユニットの近くに配置される偏光板がバックライトからの熱で歪み、表示特性を低下させる一因となっている。また、画像表示装置の使用環境も多様になり、偏光板についても、高温・高湿度環境下における使用にも対応できることへの要求が高まっている。
【0004】
高温下における耐久性を改善した偏光板として、所定の浸漬処理を施したポリビニルアルコールを偏光子として用い、保護フィルムとの接着に、所定の接着剤層用いた偏光板が提案されている(特許文献1)。特許文献1の[0047]に記載されている通り、特許文献1では、偏光子の水分率を低下させることで、偏光板の高温下における耐久性を改善している。
また、耐湿熱性を改善した偏光板として、偏光フィルムに、所定の接着剤層を介して、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを積層した偏光板が提案されている(特許文献2)。比較的透湿性の高いトリアセチルセルロースフィルムに替えて、比較的透湿性の低い延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとして用いることで、偏光板の耐湿熱性を改善している。
また、熱等による歪みによる光漏れが軽減された偏光板として、偏光膜と、粘着剤層と、光学補償シートとを有する偏光板であって、粘着剤層の光弾性係数と光学補償シートの弾性率が所定の関係を満足する偏光板が提案されている(特許文献3)。特許文献3の図1及び図2に示されている通り、この粘着剤層は、偏光子膜及び光学補償シートを含む積層体を、液晶セル等の他の部材に貼合するために用いられる層である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−282137号公報
【特許文献2】特開2010−91602号公報
【特許文献3】特開2008−181105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から偏光板の保護フィルムとして用いられているトリアセチルセルロースフィルム等のセルロースアシレートフィルムは、安価に入手可能で、取り扱い性にも優れている。従って、セルロースアシレートフィルムを保護フィルムとして利用したままで、偏光板の耐湿熱性を改善できることは、当技術分野の産業において非常に有益である。
本発明は、セルロースアシレートフィルムを保護フィルムとして有する偏光板の耐湿熱性を改善する技術を提供することを課題とする。
より具体的には、本発明は、耐熱性又は耐湿熱性が改善されたセルロースアシレートフィルムを有する偏光板を提供すること、熱又は湿熱による輝度ムラが軽減された液晶表示装置を提供すること、及びセルロースアシレートフィルムを利用した耐湿熱性偏光板用保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 偏光膜、その一方の表面上に、厚みが77μm以下のセルロースアシレートフィルム、及び光弾性係数が負である層を少なくとも有する偏光板。
[2] 前記セルロースアシレートフィルムの横方向及び縦方向の平均弾性率が、3800MPa以上である[1]の偏光板。
[3] 前記光弾性係数が負である層が、前記セルロースアシレートフィルムと偏光膜とを接着する接着剤層である[1]又は[2]の偏光板。
[4] 前記接着剤層が、アクリル系接着剤組成物からなる[3]の偏光板。
[5] 前記接着剤層の厚みが1〜20μmである[4]の偏光板。
[6] 前記光弾性係数が負である層が、環状オレフィン系樹脂又はアクリル系樹脂を含有するポリマーフィルムである[1]又は[2]の偏光板。
[7] [1]〜[6]のいずれかの偏光板と、液晶セルとを少なくとも有する液晶表示装置。
[8] 前記偏光板が、液晶セルの光源側に配置されている[7]の液晶表示装置。
[9] 前記偏光板が有する前記セルロースアシレートフィルム及び前記光弾性係数が負の層が、前記液晶セルと偏光膜との間に配置されている[7]又は[8]の液晶表示装置。
[10] 厚みが77μm以下のセルロースアシレートフィルムと、光弾性係数が負である層とを少なくとも有する耐湿熱性偏光板用保護フィルム。
[11] 前記セルロースアシレートフィルムの横方向及び縦方向の平均弾性率が、3800MPa以上である[10]の耐湿熱性偏光板用保護フィルム。
[12] 前記光弾性係数が負である層が、環状オレフィン系樹脂又はアクリル系樹脂を含有するポリマーフィルムである[10]又は[11]の耐湿熱性偏光板用保護フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セルロースアシレートフィルムを保護フィルムとして有する偏光板の耐湿熱性を改善する技術を提供することができる。
より具体的には、本発明によれば、耐熱性又は耐湿熱性が改善されたセルロースアシレートフィルムを有する偏光板を提供すること、熱又は湿熱による輝度ムラが軽減された液晶表示装置を提供すること、及びセルロースアシレートフィルムを利用した耐湿熱性偏光板用保護フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の偏光板の一例の断面模式図である。
【図2】本発明の偏光板の他の例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
なお、本明細書では、「接着剤」と「粘着剤」の用語は区別して用いるものとする。「接着剤」は、化学反応等によって固化することにより、2つの部材を接合し、一体化する剤を意味する。一方、「粘着剤」は、固化の過程を経ることなく、その高粘性によって、2つの部材を接合する剤を意味する。接着剤は、接合の前後で状態が変化するが、粘着剤は接合の前後で状態は変化しない。
1.偏光板
本発明は、偏光膜、その一方の表面上に、厚みが77μm以下のセルロースアシレートフィルム、及び光弾性係数が負である層を少なくとも有する偏光板に関する。本発明では、光弾性係数が正であるセルロースアシレートフィルムと光弾性係数が負である層とを、偏光膜の一方の表面上に配置している。バックライト等からの熱や湿熱で偏光板に歪みが生じた場合も、それぞれに生じる複屈折は相殺する関係にあるので、歪みによる偏光板特性の変動を軽減できる。但し、セルロースアシレートフィルムの厚みが77μmを越えてしまうと、負の光弾性係数の層による複屈折の補正が不十分になり、偏光特性の変動として実用上認識されるようになる。また、負の光弾性係数の層の厚みを厚くする必要が生じ、コスト及び薄型化の弊害になる点でも不利である。なお、従来は、偏光板の耐湿熱性を改善するためには、セルロースアシレートフィルム等の保護膜を厚くすることが好ましいとされていた。本発明は、従来の偏光板の耐湿熱性改善技術とは反対に、保護膜として用いるセルロースアシレートフィルムの厚みを77μm以下にすることで、及び光弾性係数が負の層と組み合わせることで、耐湿熱性を改善している。
【0011】
図1及び図2に、本発明の偏光板の第1及び第2の例の断面模式図を示す。なお、各層の厚みの相対的関係は実際の偏光板の相対的関係と必ずしも一致するものではない。図2においても同様である。
図1に示す偏光板10は、偏光膜12、その一方の表面上に、光弾性係数が負の層14、及びセルロースアシレートフィルム16を有し、他方の表面に、任意のポリマーフィルムからなる保護フィルム18を有する。図2に示す偏光板10’は、光弾性係数が負の層14、及びセルロースアシレートフィルム16の位置を入れ替えた以外が同一の構成の偏光板である。
【0012】
図1及び図2の偏光板10及び10’のいずれについても、セルロースアシレートフィルム16の厚みは77μm以下である。セルロースアシレートフィルム16は、偏光膜12の保護膜として、又は保護膜の一部として機能している。セルロースアシレートフィルム16は、光弾性係数が正である。熱又は湿熱によって歪みが生じると、複屈折が生じ、輝度漏れの一因となるが、偏光板10及び10’には、負の光弾性係数の層14が存在しているので、セルロースアシレート16の歪み等によって発生した複屈折を補正することができる。本発明に利用可能なセルロースアシレートフィルムの詳細については後述する。
【0013】
図1に示す第1の例の偏光板10は、負の光弾性係数の層14を、偏光膜12とセルロースアシレートフィルム16との間に有する。本例では、負の光弾性係数の層14は、例えば、セルロースアシレートフィルム16を、偏光膜12に接着するための接着剤層であってもよい。負の光弾性係数の層14が、接着剤層であると、偏光板を薄型化できるので好ましい。負の光弾性係数の接着剤層の形成に利用可能な材料の一例は、アクリル系接着剤である。負の光弾性係数の接着剤層の形成に利用可能な材料の詳細については後述する。
【0014】
勿論、図1に示す第1の例において、負の光弾性係数の層14が、光弾性係数が負のポリマーフィルムであってもよい。
【0015】
図2に示す第2の例の偏光板10’は、負の光弾性係数の層14を、セルロースアシレートフィルム16の上に有する。本例では、負の光弾性係数の層14は、例えば、光弾性係数が負のポリマーフィルムであってもよい。光弾性係数が負のポリマーフィルムの作製に利用可能な材料の例には、環状ポリオレフィン、及びアクリル樹脂が含まれる。これらの材料の詳細については後述する。
【0016】
なお、本発明の偏光板は、図1及び図2に示す構成に限定されるものではない。必要であれば、他の機能層(例えば、反射防止層、光学異方性層、帯電防止層、ハードコート層等)を有していてもよい。また、各層間には、接着剤層が別途配置されていてもよい。また、液晶セルと接合するための粘着剤層を、最表面に有していてもよい。
【0017】
次に、本発明の偏光板の作製に利用可能な種々の材料、及び方法について説明する。
(1) セルロースアシレートフィルム
本発明の偏光板は、偏光膜の保護フィルムとして、又は保護フィルムの一部として、セルロースアシレートフィルムを有する。本明細書では、「セルロースアシレートフィルム」とは、セルロースアシレートの1種又は2種以上を、主成分として含有するフィルムをいう。また、「主成分として含有する」とは、原料となる成分が1種である態様ではその成分を、2種以上である態様では、最も質量分率の高い成分をいうものとする。
【0018】
本発明に利用するセルロースアシレートフィルムの光弾性係数は、正である。前記セルロースアシレートフィルムの光弾性係数は、例えば、5×10-12Pa-1〜25×10-12Pa-1程度であり、また10×10-12Pa-1〜20×10-12Pa-1程度であり、また12×10-12Pa-1〜18×10-12Pa-1程度である。セルロースアシレートフィルムの光弾性係数は、主成分として用いるセルロースアシレートの種類及びその含有量、添加剤及びその含有量、膜厚、その製造方法及びその条件等の複数の要因によって決定される。これらを決定することで、光弾性係数が上記範囲のセルロースアシレートフィルムが得られる。
なお、セルロースアシレートフィルムの光弾性係数は、フイルムサンプルに加重をかけながら日本分光社製エリプソメーターM−150で位相差測定することによって知ることができる。以下の光弾性係数が負の層についても同様である。
【0019】
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムは、その厚みが77μm以下であり、好ましくは60μm以下であり、さらに好ましくは45μm以下である。本発明では、光弾性係数が負の層によって、光弾性係数が正のセルロースアシレートフィルムが歪むことによって発生する複屈折を補正している。セルロースアシレートフィルムの厚みが上記範囲を超えてしまうと、補正が不十分になり、光漏れによる表示特性の低下が認識できるようになり、実用にそぐわない。セルロースアシレートフィルムの厚みの下限値については制限ないが、自己支持性のあるフィルムの厚みは、一般的には、20μm以上である。
【0020】
前記セルロースアシレートフィルムの原料として用いられるセルロースアシレートとしては、特に制限はない。透明なフィルムを形成可能であれば、いずれも使用することができる。綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などの何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
【0021】
原料セルロースアシレートは、1種のアシル基によってアシル化されたものであっても、2種類以上のアシル基によってアシル化されたものであってもよい。炭素数2〜4のアシル基を置換基として有することが好ましい。2種類以上のアシル基を用いるときは、そのひとつがアセチル基であることが好ましく、炭素数2〜4のアシル基としてはプロピオニル基またはブチリル基が好ましい。これらのアシル基を有するセルロースアシレートは、溶解性が良好であり、特に非塩素系有機溶媒を用いることにより、良好な溶液を調製することができる。さらに粘度が低く、ろ過性の良好な溶液の調製が可能となる。
【0022】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりアシル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位に位置するセルロースの水酸基がアシル化している割合(各位における100%のアシル化は置換度1)の合計を意味する。
【0023】
炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブタノイル基、tert−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、tert−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくはアセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基(アシル基が炭素原子数2〜4である場合)であり、より特に好ましくはアセチル基(セルロースアシレートが、セルロースアセテートである場合)である。
【0024】
セルロ−スのアシル化において、アシル化剤としては、酸無水物や酸クロライドを用いた場合、反応溶媒である有機溶媒としては、有機酸、例えば、酢酸、メチレンクロライド等が使用される。
【0025】
触媒としては、アシル化剤が酸無水物である場合には、硫酸のようなプロトン性触媒が好ましく用いられ、アシル化剤が酸クロライド(例えば、CH3CH2COCl)である場合には、塩基性化合物が用いられる。
【0026】
最も一般的なセルロ−スの混合脂肪酸エステルの工業的合成方法は、セルロ−スをアセチル基および他のアシル基に対応する脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、吉草酸等)またはそれらの酸無水物を含む混合有機酸成分でアシル化する方法である。
本発明に使用可能なセルロースアシレートの製造方法の例には、例えば、特開平10−45804号公報に記載されている方法が含まれる。
【0027】
本発明に利用可能なセルロースアシレートフィルムの一例は、下記式(I)を満たすセルロースアシレートを主成分として含む低置換度層からなる、又は有するセルロースアシレートフィルムである。
(1) 2.0<Z1<2.7
(式(1)中、Z1は低置換度層のセルロースアシレートの総アシル置換度を表す。)
【0028】
前記低置換度層は、その少なくとも一方の面に下記式(2)を満たすセルロースアシレートを主成分として含む高置換度層を有していてもよい。
(2) 2.7<Z2
(式(2)中、Z2は高置換度層のセルロースアシレートの総アシル置換度を表す。)
【0029】
前記低置換度層の形成に用いるアセロースアシレートの例には、下記式(3)及び(4)を満たすセルロースアシレートが含まれる。
式(3) 1.0<X1<2.7
(式(3)中、X1は低置換度層のセルロースアシレートのアセチル基の置換度を表す。)
式(4) 0≦Y1<1.5
(式(4)中、Y1は低置換度層のセルロースアシレートの炭素数3以上のアシル基の置換度の合計を表す。)
なおX1とY1は前記式(1)の前記Z1との間にX1+Y1=Z1の関係が成り立つ。
【0030】
また、前記高置換度層の形成に用いるセルロースアシレートの例には、下記式(5)及び(6)を満たすセルロースアシレートが含まれる。
式(5) 1.2<X2<3.0
(式(5)中、X2は高置換度層のセルロースアシレートのアセチル基の置換度を表す。)
式(6) 0≦Y2<1.5
(式(6)中、Y2は高置換度層のセルロースアシレートの炭素数3以上のアシル基の置換度の合計を表す。)
なおX2とY2は前記式(2)の前記Z2との間にX2+Y2=Z2の関係が成り立つ。
【0031】
前記セルロースアシレートフィルムは、所望により、1種以上の添加剤を含有していてもよい。添加剤の例には、可塑剤、光学特性調整剤(波長分散調整剤、レターデーション上昇剤、レターデーション軽減剤等)、微粒子、UV吸収剤、酸化防止剤等が含まれる。
【0032】
前記セルロースアシレートフィルムは、溶液製膜法及び溶融製膜法等のいずれの方法により製造されたフィルムであってもよい。また、厚みが前記範囲である限りは、市販品であってもよい。また、前記セルロースアシレートフィルムは、延伸処理を施された延伸フィルムであってもよい。具体的には、一軸延伸、又は二軸延伸処理等を施された延伸処理であってもよい。延伸により、厚みを上記範囲に調整することができる。又、セルロースアシレートフィルムを、液晶セルの複屈折の光学補償に利用する態様では、セルロースアシレートフィルムが光学補償に寄与するレターデーションを示しているのが好ましく、延伸によってレターデーションを所望の範囲とすることができる。
【0033】
また、本発明に使用するセルロースアシレートフィルムは、弾性率が高いほうが熱又は湿熱による歪みを軽減できるので好ましい。より具体的には、前記セルロースアシレートフィルムの横方向及び縦方向の平均弾性率が、3800MPa以上であるのが好ましく、4000MPa以上であるのがより好ましく、4200MPa以上であるのがさらに好ましい。上限値については特に制限はないが、一般的には、6000MPa未満になる。なお、セルロースアシレートフィルムの「横方向及び縦方向の平均弾性率」は、以下の方法により測定することができる。
まず、フィルム試料10mm×150mmを準備する。この試料を、温度25℃・相対湿度60%で2時間以上調湿した後、引張り試験機(ストログラフ―R2(東洋精機製))を用いて、チャック間距離50mm、温度25℃、延伸速度10mm/分の条件で弾性率を測定する。横方向の弾性率は横150mm・縦10mmの試料を横方向に引っ張ることにより測定し、縦方向の弾性率は横10mm・縦150mmの試料を縦方向に引っ張ることにより測定し、それらの値から、平均値弾性率が算出できる。
例えば、長尺状のセルロースアシレートフィルムを連続的に搬送しつつ製造する際の搬送方向(MD方向)と、それに直交する方向(TD方向)とでは、弾性率に差異が生じる場合が多いが、本発明に利用するセルロースアシレートフィルムは、MD方向及びTD方向の平均弾性率が、上記範囲であるのが好ましい。
【0034】
本発明に利用する前記セルロースアシレートフィルムの光学特性については特に制限はない。本発明の偏光板を、前記セルロースアシレートフィルムを液晶セルと偏光膜との間にして配置する態様では、該セルロースアシレートフィルムの位相差が、表示特性に影響するので、液晶セルのモードに応じて、面内レターデーションRe及び厚み方向レターデーションRthを所望の範囲に調整するのが好ましい。以下に、本発明の偏光板を、前記セルロースアシレートフィルムを液晶セルと偏光膜との間にして配置する態様において、液晶セルのモード別に、前記セルロースアシレートフィルムのRe及びRthの好ましい範囲を例示する。但し、以下の範囲に限定されるものではない。
VAモード液晶セルのバックライト側のみに、本発明の偏光板を配置する態様では、前記セルロースアシレートフィルムは、Reが20〜100nm(より好ましくは40〜80nm)、且つRthが100〜300nm(より好ましくは150〜250nm)であるのが好ましい。なお、本態様では、他方の偏光板が有する保護膜のうち、液晶セルと偏光膜との間に配置される保護膜は、光学的に等方性であるのが好ましい。
VAモード液晶セルの表示面側及びバックライト側の双方に、本発明の偏光板を配置する態様では、前記セルロースアシレートフィルムは、Reが20〜80nm(より好ましくは30〜60nm)、且つRthが80〜200nm(より好ましくは110〜170nm)であるのが好ましい。
IPSモード液晶セルの表示面側及びバックライト側の双方に、本発明の偏光板を配置する態様では、前記セルロースアシレートフィルムは、Reが0〜10nm(より好ましくは0〜6nm)、且つRthが0〜50nm(より好ましくは0〜20nm)であるのが好ましい。
【0035】
なお、セルロースアシレートフィルムは、光弾性係数が負の層との接着性、及び/又は偏光膜との接着性を改善するために、表面処理等が施されていてもよい。表面処理の例には、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理又は紫外線照射処理が含まれる。
【0036】
(2)光弾性係数が負の層
本発明の偏光板は、光弾性係数が負の層を有する。該層の光弾性係数は、−20×10-12Pa-1〜−2×10-12Pa-1であるのが好ましく、また−15×10-12Pa-1〜−2×10-12Pa-1であるのがより好ましく、また−10×10-12Pa-1〜−3×10-12Pa-1であるのがさらに好ましい。光弾性係数がこの範囲であると、セルロースアシレートフィルムの変形によって生じる複屈折を十分に補正することができる。
【0037】
前記光弾性係数が負の層の形成に利用する材料については、透明で、且つ光弾性が負を示す層を形成可能な限り特に制限はない。接着剤層のような塗布によって形成される層であってもよいし、自己支持性のあるポリマーフィルムであってもよい。
以下、それぞれの例について説明する。
【0038】
接着剤層:
前記光弾性係数が負の層は、接着剤層であってもよい。前記光弾性係数が負の層は、偏光膜と前記セルロースアシレートフィルムとの間に配置され、2つを接合するための接着剤層であるのが好ましい。光弾性係数が負の接着剤層の例には、アクリル系接着剤からなる接着剤層が含まれる。なお、従来、セルロースアシレートフィルムと偏光膜との接合に頻繁に用いられていた、ポリビニルアルコール系接着剤は、光弾性係数が負の層を形成することができない。
【0039】
アクリル系接着剤とは、アクリル酸もしくはメタクリル酸(以下総称して「(メタ)アクリル酸」という)又はそれらの誘導体(誘導体の例には(メタ)アクリル酸エステルが含まれる)、あるいは(メタ)アクリル酸又はそれらの誘導体の重合体を主成分とする、反応系接着剤を意味する。一例は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、さらに少量の、官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを含有するアクリル系単量体組成物を、重合開始剤の存在下でラジカル重合してなるアクリル系樹脂と、架橋剤とを含有するアクリル系接着剤が挙げられる。前記アクリル系樹脂の主成分となる(メタ)アクリル酸エステルは、下記式:
CH2=C(R1)COOR2
で表すことができる。式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素数1〜14のアルキル基、またはアラルキル基を表し、R2のアルキル基の水素原子、またはアラルキル基の水素原子は、炭素数1〜10のアルコキシ基によって置換されていてもよい。
前記(メタ)アクリル酸エステルの具体例には、R1がHであり、R2がn−ブチル基であるアクリル酸ブチル;R1がHであり、R2が2−エチルヘキシル基であるアクリル酸2−エチルヘキシル;が含まれる。
【0040】
また、前記アクリル系樹脂の製造に用いられる、前記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーは、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基などの極性官能基と、一つのオレフィン性二重結合(通常は(メタ)アクリロイル基)を分子内に有する単量体である。その具体例には、水酸基を有するものとして、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル;カルボキシル基を有するものとして、アクリル酸が含まれる。
【0041】
さらに、前記アクリル系樹脂の製造には、分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを少量共重合させることもでき、その例として、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0042】
前記接着剤の主成分となるアクリル系樹脂の製造では、上記の(メタ)アクリル酸エステルおよび官能基を有する(メタ)アクリルモノマーは、それぞれ一種類のみが用いられてもよいし、複数種類が併用されてもよい。また、(メタ)アクリル酸エステルと官能基を有する(メタ)アクリルモノマーとの共重合体であるアクリル系樹脂を複数種類組み合わせたり、当該共重合体であるアクリル系樹脂に、他のアクリル系樹脂、たとえば官能基を有しない(メタ)アクリルモノマーの単独または共重合体からなるアクリル系樹脂を配合したりして、アクリル系樹脂組成物としたものを粘着剤の樹脂成分として用いることもできる。
【0043】
アクリル系接着剤に配合される架橋剤の例には、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、金属キレート系化合物、アジリジン系化合物などであることができる。イソシアネート系化合物は、分子内にイソシアナト基(−NCO)を少なくとも2個有する化合物それ自体のほか、それをポリオール等に反応させたアダクト体、その2量体、3量体などの形で用いることができる。架橋剤の具体例を挙げれば、ジイソシアネート系化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体などがあり、それぞれ酢酸エチル等の有機溶剤に溶かした溶液として用いることが多い。これらの架橋剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
アクリル系接着剤に含有されるアクリル系樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算で、通常、60万〜200万程度であり、80万〜180万が好ましい。
【0045】
上記アクリル系樹脂は、酢酸エチル等の有機溶剤に溶解され、さらに架橋剤が加えられることにより、アクリル系接着剤溶液が得られる。また、必要に応じて、シランカップリング剤、耐候安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、顔料、および無機フィラーの一種または二種以上、さらには有機ビーズ等の光拡散性微粒子を含有させることができる。
【0046】
前記接着剤層は、塗布液として調製されたアクリル系接着剤等を含む接着剤組成物を、前記セルロースアシレートフィルム又は偏光膜の表面に塗布して、所望により加熱下で、有機溶媒を留去し、固化することで形成される。一旦、仮支持体上に接着剤層を形成し、その後、セルロースアシレートフィルム上又は偏光膜上に転写してもよい。
【0047】
接着剤層の厚みについては、特に制限はないが、一般的には0.1〜40μmであるのが好ましく、特には1〜20μmであるのが好ましく、また3〜15μmであるのがより好ましい。
【0048】
ポリマーフィルム:
本発明に利用する光弾性係数が負の層は、ポリマーフィルムであってもよい。光弾性係数が負であるポリマーフィルムの例には、(1)環状オレフィン系樹脂を含有するポリマーフィルム、及び(2)ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、及びグルタル酸無水物単位から選ばれる少なくとも1種の単位を含むアクリル系樹脂を含有するポリマーフィルムが含まれる。但し、これらに限定されるものではない。
【0049】
(1)環状オレフィン系樹脂を含有するポリマーフィルム
本発明に利用可能な環状オレフィン系樹脂を主成分として含有するポリマーフィルム(以下、「環状オレフィン系ポリマーフィルム」という場合がある)の作製に用いられる環状オレフィン系樹脂の例には、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィンの重合体、環状共役ジエンの重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれら重合体の水素化物などが含まれる。好ましい例には、下記一般式(II)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含む付加(共)重合体環状オレフィン系樹脂、及び必要に応じ、一般式(I)で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上を更に含んでなる付加(共)重合体環状オレフィン系樹脂が含まれる。また、他の好ましい例には、一般式(III)で表される環状繰り返し単位を少なくとも1種含む開環(共)重合体が含まれる。
【0050】
【化1】

【0051】
【化2】

【0052】
【化3】

【0053】
式中、mは0〜4の整数を表す。R1〜R6は水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基、X1〜X3、Y1〜Y3は水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH2nCOOR11、−(CH2nOCOR12、−(CH2nNCO、−(CH2nNO2、−(CH2nCN、−(CH2nCONR1314、−(CH2nNR1314、−(CH2nOZ、−(CH2nW、またはX1とY1あるいはX2とY2あるいはX3とY3から構成された(−CO)2O、(−CO)2NR15を示す。なお、R11,R12,R13,R14,R15は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、Zは炭化水素基またはハロゲンで置換された炭化水素基、WはSiR16p3-p(R16は炭素数1〜10の炭化水素基、Dはハロゲン原子−OCOR16または−OR16、pは0〜3の整数を示す)、nは0〜10の整数を示す。
【0054】
ノルボルネン系付加(共)重合体は、特開平10−7732号、特表2002−504184号、US2004229157A1号あるいはWO2004/070463A1号等に開示されている。ノルボルネン系多環状不飽和化合物同士を付加重合する事によって得られる。また、必要に応じ、ノルボルネン系多環状不飽和化合物と、エチレン、プロピレン、ブテン;ブタジエン、イソプレンのような共役ジエン;エチリデンノルボルネンのような非共役ジエン;アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの線状ジエン化合物とを付加重合することもできる。このノルボルネン系付加(共)重合体は、三井化学(株)よりアペルの商品名で発売されており、ガラス転移温度(Tg)の異なる例えばAPL8008T(Tg70℃)、APL6013T(Tg125℃)あるいはAPL6015T(Tg145℃)などのグレードがある。ポリプラスチック(株)よりTOPAS8007、同6013、同6015などのペレットが発売されている。更に、Ferrania社よりAppear3000が発売されている。
【0055】
ノルボルネン系重合体水素化物は、特開平1−240517号、特開平7−196736号、特開昭60−26024号、特開昭62−19801号、特開2003−1159767号あるいは特開2004−309979号等に開示されているように、多環状不飽和化合物を付加重合あるいはメタセシス開環重合した後、水素添加することにより製造できる。
前記式中、R5〜R6が水素原子又は−CH3が好ましく、X3及びY3が水素原子、Cl、−COOCH3が好ましく、その他の基は適宜選択される。このノルボルネン系樹脂は、JSR(株)からアートン(Arton)GあるいはアートンFという商品名で発売されており、また日本ゼオン(株)からゼオノア(Zeonor)ZF14、ZF16、ゼオネックス(Zeonex)250あるいはゼオネックス280という商品名で市販されており、これらを使用することができる。
【0056】
前記環状オレフィン系ポリマーフィルムは、溶液製膜法及び溶融製膜法のいずれによって製造されたポリマーフィルムであってもよい。一例は、前記環状オレフィン系樹脂を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を調製し、該溶液を用いた溶液製膜法により製造されたポリマーフィルムである。前記ドープ中には、微粒子を分散させてもよい。微粒子の例には、無機化合物の微粒子及び高分子化合物の微粒子が含まれる。無機化合物としては、例えば、硫酸バリウム、マンガンコロイド、二酸化チタン、硫酸ストロンチウムバリウム、二酸化ケイ素、などの無機物の微粉末があるが、さらに例えば湿式法やケイ酸のゲル化より得られる合成シリカ等の二酸化ケイ素やチタンスラッグと硫酸により生成する二酸化チタン(ルチル型やアナタース型)等が挙げられる。また、粒径の比較的大きい、例えば20μm以上の無機物から粉砕した後、分級(振動濾過、風力分級など)することによっても得られる。無機微粒子はケイ素を含むものが、濁度が低くなる点、フィルムのヘイズを低下できる点で好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子は有機物により表面処理されているものがおおいが、このようなものはフィルムの表面ヘイズを低下できるため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどを挙げることができる。また、高分子化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレンカーボネート、澱粉等があり、またそれらの粉砕分級物も挙げられる。また、懸濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法あるいは分散法等により球型にした高分子化合物、又は無機化合物の微粒子も用いることができる。
【0057】
前記ドープの調製方法、該ドープを使用した溶液製膜法によるポリマーフィルムの製造方法については、特開2007−77243号公報に詳細な記載があり、参照することができる。
【0058】
(2)アクリル系樹脂を含有するポリマーフィルム
本発明に利用可能なアクリル系樹脂を主成分として含有するポリマーフィルム(以下、「アクリル系ポリマーフィルム」という場合がある)の作製に用いられるアクリル系樹脂の例には、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、及びグルタル酸無水物単位から選ばれる少なくとも1種の単位を含むアクリル系樹脂を含有するポリマーフィルムが含まれる。
【0059】
アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分として含有する単量体組成物を重合した樹脂であれば特には限定されない。また、2種類以上のアクリル系重合体を主成分とするものでもよい。上記(メタ)アクリル酸エステルの例には、下記一般式(10)で表される化合物が含まれる。
【0060】
【化4】

【0061】
式中、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を示す。上記一般式で表される構造を有する化合物としては、例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ノルマルブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ターシャリーブチルなどが挙げられる。これらの中でも、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましく、耐熱性向上効果が高い点で、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが特に好ましい。一般式(2)で表される化合物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
また、(メタ)アクリル酸エステルの他の例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル;などが含まれる。これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
これらの中でも特に、耐熱性、透明性が優れる点から、上記一般式(10)で表される構造を有する化合物、メタクリル酸メチルがより好ましい。また、正の複屈折性(正の位相差)を大きくしたい場合には、(メタ)アクリル酸ベンジルが好ましい。
【0064】
上記アクリル系樹脂は、上述した(メタ)アクリル酸エステルから誘導される単位とともに、それ以外の単位を有していてもよい。具体的には、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、下記一般式(11)で表される単量体から誘導される単位が挙げられる。
【0065】
【化5】

【0066】
式中、R6は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R7基、または−C−O−R8基を表し、Ac基はアセチル基を表し、R7およびR8は水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。
【0067】
前記水酸基含有単量体としては、前記一般式(10)で表される単量体以外の水酸基含有単量体であれば特に限定されないが、例えば、メタリルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシメチル−1−ブテンなどのアリルアルコール、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル;2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸;などが挙げられ、これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−置換アクリル酸、α−置換メタクリル酸などが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0069】
一般式(11)で表される化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0070】
前記アクリル系ポリマーフィルムは、溶液製膜法及び溶融製膜法のいずれによって製造されたポリマーフィルムであってもよい。一例は、溶融製膜法により製造されたポリマーフィルムである。前記アクリル系ポリマーフィルムの原料として使用可能なアクリル系ポリマーの詳細、及びそれを用いた溶融製膜法によるアクリル系ポリマーフィルムの製造方法の詳細については、特開2008−9378号公報に記載があり、参照することができる。
【0071】
光弾性係数が負の層に利用するポリマーフィルムの厚みについては特に制限はないが、一般的には、20〜55μmであるのが好ましく、30〜45μmであるのがより好ましい。
【0072】
光弾性係数が負の層に利用するポリマーフィルムは、主成分ポリマーとともに、所望により1種以上の添加剤を含有していてもよい。使用可能な添加剤の例は、前記セルロースアシレートフィルムに添加可能な添加剤の例と同様である。
【0073】
光弾性係数が負の層に利用するポリマーフィルムは、光学的に等方性であっても光学的に異方性であってもよい。光学的に異方性のポリマーフィルムを用いる場合は、配置によっては光学補償に影響するので、併用する前記セルロースアシレートフィルムの光学特性を考慮した上で、前記ポリマーフィルムの光学特性の好ましい範囲を決定することができる。
【0074】
偏光膜:
本発明の偏光板が有する偏光膜については特に制限はない。ヨウ素系偏光膜、二色性染料を利用した染料系偏光膜、及びポリエン系偏光膜のいずれも用いることができる。ヨウ素系偏光膜、及び染料系偏光膜は、一般に、ポリビニルアルコールにヨウ素又は二色性染料を吸着させ、延伸することで作製される。
【0075】
保護膜:
本発明の偏光板では、偏光膜の一方の表面上に、前記セルロースアシレートフィルム及び光弾性係数が負の層が配置された構成であり、前記セルロースアシレートフィルムは単独で、又は光弾性係数が負のポリマーフィルムとともに、偏光膜の保護膜として作用する。偏光膜の他方の表面にも保護膜が配置されているのが好ましい。本発明の偏光板を液晶表示装置に組み込む際に、偏光膜と液晶セルとの間に、前記セルロースアシレートフィルム及び光弾性係数が負の層が配置されるのが好ましい。
【0076】
偏光膜の他方の表面に配置される保護膜については特に制限はない。用途に応じて種々のポリマーフィルムから選択することができる。用途によっては、光学性能透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるポリマーフィルムを用いることが要求される。保護膜の主成分ポリマーの例には、セルロースアシレート、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマーが含まれる。また、市販されているポリマーフィルムを用いてもよい。
【0077】
偏光板の製造方法:
本発明の偏光板の製造方法については特に制限はない。長尺状に連続的に製造してもよい。前記光弾性係数が負の層が接着剤層である態様については、前記セルロースアシレートフィルム又は偏光膜の表面に接着剤層を形成した後に、該セルロースアシレートフィルムと偏光膜とを接着剤層を介して接合することで製造できる。前記セルロースアシレートフィルムと偏光膜との接合と同時に、又はその後もしくはその前に、偏光膜の他方の面に、保護膜を接合してもよい。また、前記光弾性係数が負の層がポリマーフィルムからなる態様については、前記セルロースアシレートフィルムを偏光膜と接合した後に、光弾性係数が負のポリマーフィルムを、セルロースアシレートフィルムの表面に接合してもよいし、またセルロースアシレートフィルムと光弾性係数が負のポリマーフィルムとを接合した後に、偏光膜と接合してもよい。後者の態様では、セルロースアシレートフィルム側を偏光膜と接合してもよいし、光弾性係数が負のポリマーフィルム側と偏光膜と接合してもよい。
【0078】
2.液晶表示装置
本発明は、本発明の偏光板を有する液晶表示装置にも関する。本発明の偏光板は、熱又は湿熱による偏光特性の変動が軽減されているので、熱の影響を受け易い、光源側に配置されるのが好ましい。また、偏光板が有する前記セルロースアシレートフィルム及び光弾性係数が負の層は、液晶セルと偏光膜との間に配置されるのが好ましい。本発明の液晶表示装置のモードについては特に制限はなく、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)等、いずれの表示モードの液晶表示装置であっても、熱又は湿熱による輝度漏れの軽減効果が得られる。
【0079】
3. 耐湿熱性偏光板用保護フィルム
本発明は、厚みが77μm以下のセルロースアシレートフィルムと、光弾性係数が負である層とを少なくとも有する耐湿熱性偏光板用保護フィルムにも関する。本発明の保護フィルムを用いることで、偏光板の熱又は湿熱による偏光特性の変動を軽減することができる。本発明の耐湿熱性偏光板用保護フィルムに使用可能な、厚みが77μm以下のセルロースアシレートフィルム、及び光弾性係数が負である層については、前記本発明の偏光板に用いられるそれぞれの例と同一であり、好ましい例も同様である。
【実施例】
【0080】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
下記特性についてはそれぞれ、以下の方法で測定した。
(Re及びRth)
Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。なお、この測定方法は、後述する光学異方性層中のディスコティック液晶分子の配向膜側の平均チルト角、その反対側の平均チルト角の測定においても一部利用される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(B)よりRthを算出することもできる。
【0081】
【数1】

なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・式(B)
【0082】
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0083】
(アセチル置換度)
アセチル置換度はASTM D−817−91に準じて測定した。粘度平均重合度は宇田らの極限粘度法{宇田和夫、斉藤秀夫、「繊維学会誌」、第18巻第1号、105〜120頁(1962年)}により測定した。
【0084】
1.セルロースアシレートフィルムの準備
1−1 セルロースアシレートフィルム1(VAモード液晶表示装置用)の製造
下記の組成の内層用及び外層用ドープをそれぞれ調製した。
内層用ドープの組成:
セルロースアセテートC−1
(アセチル置換度2.81、数平均分子量88000) 100質量部
下記構造の光学発現剤A 7質量部
下記の重合体P−2 9.0質量部
下記構造のブルーイング染料B 0.000078質量部
ジクロロメタン 423.9質量部
メタノール 63.3質量部
【0085】
外層用ドープの組成:
セルロースアセテートC−1
(アセチル置換度2.81、数平均分子量88000) 100質量部
下記構造の光学発現剤A 7質量部
下記の重合体P−2 9.0質量部
下記構造のブルーイング染料B 0.000078質量部
平均粒径16nmのシリカ粒子
(「aerosol R972」日本アエロジル(株)製) 0.14質量部
ジクロロメタン 424.5質量部
メタノール 63.4質量部
【0086】
【化6】

重合体P−2:TPA/PA/SA/AA(=45/5/30/20(モル%))のジカルボン酸残基と、エチレングリコール(100モル%)のジオール残基とからなる重縮合体であって、両末端がアセチルエステル残基で封止されている、数平均分子量が900の重縮合体
【0087】
【化7】

【0088】
上記組成の外層及び内層ドープ液をバンド流延装置を用い、支持体面側外層、内層、空気界面側外層の3層構造となるように、2000mm幅でステンレスバンド支持体上に均一に同時積層共流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶媒量が40質量%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離の際に張力をかけて縦(MD)延伸倍率が1.02倍となるように延伸し、ついで、テンターで両端部を把持し、幅手(TD)方向の延伸倍率が1.22倍となるように、45%/分の速度で横方向に延伸(横延伸)した。延伸開始時の残留溶剤量は30質量%であった。延伸後に搬送しながら115℃の乾燥ゾーンで35分間乾燥させた。乾燥後に1340mm幅にスリットし、膜厚78μmで、各層の膜厚比が支持体面側外層:内層:空気界面側外層=3:94:3のセルロースアシレートフィルムを得た。これを、セルロースアシレートフィルム1として用いた。
【0089】
1−2 セルロースアシレートフィルム2(VAモード液晶表示装置用)の製造
・微粒子分散液の調製
以下の成分を攪拌混合して、微粒子分散液を調製した。
微粒子(R972V(日本アエロジル(株)製)) 11質量部
エタノール 89質量部
【0090】
・微粒子添加液の調製
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに、下記の割合でセルロースアシレートを添加し、加熱して完全に溶解させた後、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。濾過後のセルロースアシレート溶液を充分に撹拌しながら、ここに、上記で調製した微粒子分散液を、下記の割合でゆっくりと添加した。更に、アトライタ一にて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
セルロースアシレート(下記表参照) 4質量部
微粒子分散液 11質量部
【0091】
・ 主ドープ液の調製
下記組成の主ドープ液を調製した。まず、加圧溶解タンクに、メチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースアシレートを撹拌しながら投入した。これを加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、更に下記表1に記載の可塑剤及び紫外線吸収剤を、添加及び溶解させた。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
〈主ドープ液の組成〉
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 60質量部
セルロースアシレート(下記表参照) 73質量部
添加剤(化合物は表1参照) 表1に記載
【0092】
・ セルロースアシレートフィルム2の作製
主ドープ液100質量部と微粒子添加液2質量部とを、インラインミキサー(東レ社製静止型管内混合機Hi−Mixer、SVII)で十分に混合してドープを調製し、これをベルト流延装置を用い、幅2mのステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体上で、残留溶媒量が110%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体から剥離した。剥離の際に張力をかけて縦(MD)延伸倍率が1.0倍となるように延伸し、次いで、テンターでウェブ両端部を把持し、延伸開始時の残留溶剤量20質量%、温度130℃にて幅手(TD)方向の延伸倍率が1.3倍となるように延伸した。延伸後、その幅を維持したまま数秒間保持し、幅方向の張力を緩和させた後幅保持を解放し、更に125℃に設定された第3乾燥ゾーンで30分間搬送させて乾燥を行い、幅1.5m、かつ端部に幅1cm、高さ8μmのナーリングを有するセルロースアシレートフィルムを作製した。これを、セルロースアシレートフィルム2として用いた。
【0093】
【表1】

*1: アセチル基置換度
*2: プロピオニル基置換度
*3: (a)はメチルアクリレートの単独オリゴマー(平均分子量1000)の市販品;(b)はWO2007/125764号公報の[0058]欄に記載の化合物3;及び(c)は混合ジカルボン酸(テレフタル酸/アジピン酸/コハク酸の混合モル比が10/30/60である混合ジカルボン酸)と混合ジオール(エチレングリコール/1,2−プロパンジオールの混合モル比が50/50)との重縮合エステルであって、両末端がアセチルエステル残基で封止されている分子量1000の重縮合エステル系可塑剤;である。
*4: 流延方向に直交する幅方向における延伸倍率
【0094】
1−3 セルロースアシレートフィルム3(VAモード液晶表示装置用)の製造
下記の組成の内層用及び外層用ドープ液をそれぞれ調製した。
内層用ドープ液の組成:
・セルロースアセテート(置換度2.45) 100.0質量部
・化合物D*1 19質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
*1:化合物Dはテレフタル酸/コハク酸/プロピレンクリコール/エチレングリコール共重合体(共重合比[モル%]=27.5/22.5/25/25)である。
内層用ドープ液の固形分濃度は22質量%、及び粘度は60Pa・sであった。
【0095】
外層用ドープ液の組成:
・セルロースアセテート(置換度2.79) 100.0質量部
・化合物D 11質量部
・シリカ微粒子 R972(日本エアロジル製) 0.15質量部
・メチレンクロライド 395.0質量部
・メタノール 59.0質量部
なお、外層用ドープ液の固形分濃度は19.7質量%、及び粘度は40Pa・sであった。
【0096】
前記内層用ドープを膜厚56μmのコア層になるように、前記外層用ドープを膜厚2μmのスキンA層およびスキンB層になるように、それぞれ流延した。得られたウェブ(フィルム)をバンドから剥離し、クリップに挟み、フィルム全体の質量に対する残留溶媒量が20〜5%の状態のときに、温度140℃、延伸倍率1.08でテンターを用いて横延伸した。その後にフィルムからクリップを外して130℃で20分間乾燥させた後、更にさらに、温度180℃、延伸倍率1.2で再度横延伸した。
なお、残留溶媒量は下記の式にしたがって求めた。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを測定したウェブを120℃で2時間乾燥させた時の質量である。
この様にして製造したセルロースアシレートフィルムを、セルロースアシレートフィルム3として用いた。
【0097】
1−4 セルロースアシレートフィルム4(IPSモード液晶表示装置用)の製造
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
・セルロースアセテート(置換度2.86) 100.0質量部
・ポリエステルジオール*1 10質量部
*1:アジピン酸とエチレングリコールとからなり、水酸基価が113のポリエステルジオールである。
なお、溶媒組成は、以下の通りであった。
メチレンクロライド (第1溶媒) 100質量部
メタノール (第2溶媒) 19質量部
1−ブタノール 1質量部
【0098】
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤分散液を調製した。上前記セルロースアシレート溶液に、このマット剤分散液を1.3質量部加え、ドープD−1を調製した。
マット剤分散液B−1の組成:
・シリカ粒子分散液(平均粒径16nm) 10.0質量部
(“AEROSIL R972”、日本アエロジル(株)製)
・メチレンクロライド 72.8質量部
・メタノール 3.9質量部
・ブタノール 0.5質量部
・セルロースアシレート溶液*1 10.3質量部
*1:上記セルロースアシレート溶液の調製において、アジピン酸とエチレングリコールとからなり、水酸基価が156のポリエステルジオールを、セルロースアセテート(置換度2.86)100質量部に対して20質量部添加した以外は、同様にして調製されたセルロースアシレート溶液である。
【0099】
ドープD−1を流延口から−5℃に冷却したドラム上に流延した。溶媒含有率略70質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの巾方向の両端をピンテンター(特開平4−1009号公報の図3に記載のピンテンター)で固定し、溶媒含有率が3〜5質量%の状態で、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が約3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み約60μmのセルロースアシレートフィルムを製造した。これをセルロースアシレートフィルム4として用いた。
【0100】
1−5 セルロースアシレートフィルム5(IPSモード液晶表示装置用)の製造
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液A−55を調製した。
セルロースアシレート溶液A−5の組成
・セルロースアシレート
(アセチル置換度2.86、粘度平均重合度310) 100質量部
・前記重縮合エステルP−37 12質量部
・メチレンクロライド 384質量部
・メタノール 69質量部
・ブタノール 9質量部
なお、重縮合エステルP−37は、混合ジカルボン酸(テレフタル酸/アジピン酸の混合モル比が50/50である混合ジカルボン酸)と混合ジオール(エチレングリコール/1,2−プロパンジオールの混合モル比が50/50)との重縮合エステルであって、両末端がアセチルエステル残基で封止されている分子量1000の重縮合エステル系可塑剤である。
【0101】
(マット剤分散液B−5の調製)
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤分散液B−5を調製した。
マット剤分散液B−5の組成
・シリカ粒子分散液(平均粒径16nm)
“AEROSIL R972”、日本アエロジル(株)製 10.0質量部
・メチレンクロライド 72.8質量部
・メタノール 3.9質量部
・ブタノール 0.5質量部
・セルロースアシレート溶液A−5 10.3質量部
【0102】
(紫外線吸収剤溶液C−5の調製)
下記の組成物を別のミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、紫外線吸収剤溶液C−5を調製した。
紫外線吸収剤溶液C−5の組成
・紫外線吸収剤(下記UV−1) 4.0質量部
・紫外線吸収剤(下記UV−2) 8.0質量部
・紫外線吸収剤(下記UV−3) 8.0質量部
・メチレンクロライド 55.7質量部
・メタノール 10質量部
・ブタノール 1.3質量部
・セルロースアシレート溶液A−5 12.9質量部
【0103】
【化8】

【0104】
(セルロースアシレートフィルム5の作製)
セルロースアシレート溶液A−5を94.6質量部、マット剤分散液B−5を1.3質量部とした混合物に、セルロースアシレート100質量部当たり、紫外線吸収剤(UV−2)及び紫外線吸収剤(UV−3)がそれぞれ0.4質量部、紫外線吸収剤(UV−1)が0.2質量部、重縮合エステルP−37が12質量部となるように、紫外線吸収剤溶液C−5を加え、加熱しながら充分に攪拌して各成分を溶解し、ドープを調製した。得られたドープを30℃に加温し、流延ギーサーを通して直径3mのドラムである鏡面ステンレス支持体上に流延した。支持体の表面温度は−5℃に設定し、塗布幅は1470mmとした。流延部全体の空間温度は、15℃に設定した。そして、流延部の終点部から50cm手前で、流延して回転してきたセルロースアシレートフィルムをドラムから剥ぎ取った後、両端をピンテンターでクリップした。剥ぎ取り直後のセルロースアシレートウェブの残留溶媒量は70%およびセルロースアシレートウェブの膜面温度は5℃であった。
【0105】
ピンテンターで保持されたセルロースアシレートウェブは、乾燥ゾーンに搬送した。初めの乾燥では45℃の乾燥風を送風した。次に110℃で5分、さらに140℃で10分乾燥し、巻き取り直前に両端(全幅の各5%)を耳切りした後、両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた後、3000mのロール状に巻き取った。このようにして得たセルロースアシレートフィルムの幅は1.45mであった。これを、セルロースアシレートフィルム5として用いた。
【0106】
1−6 比較例用セルロースアシレートフィルム6(VAモード液晶表示装置用)の製造
アセチル基置換度が2.81のセルロースアシレート、可塑剤(トリフェニルフォスフェート(TPP)とビフェニルジフェニルフォスフェート(BDP)との混合物(TPP/BDP(セルロースアシレート100質量部に対する割合)=7.8質量部/3.9質量部))、紫外線吸収剤(UV1:2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール)、UV2:2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール)、下記レターデーション発現剤(1)(セルロースアシレート100質量部に対する割合で6.4質量部)を、ジクロロメタン/メタノール(87/13質量部)に、セルロースアシレートの質量濃度が15質量%となるように攪拌しながら投入して加熱攪拌し溶解させた。このとき、同時にセルロースアシレート100質量部に対して微粒子であるマット剤(AEROSIL R972、日本エアロジル(株)製)0.05質量部、下記染料(1)を0.0009質量部を投入し、加熱しながら攪拌させた。
【0107】
【化9】

【0108】
【化10】

【0109】
(流延)
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が25〜35質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、延伸温度が約Tg−5〜Tg+5℃の範囲の条件で、剥ぎ取りからテンターまでに区間で3%の延伸倍率で縦方向に延伸し、ついでテンターを用いて32%の延伸倍率で幅方向に延伸し、横延伸直後に7%の倍率で幅方向に収縮させた後にフィルムをテンターから離脱し、セルロースアシレートフィルムを製膜した。巻取り部前で両端部を切り落とし幅2000mmとし、長さ4000mのロールフィルムとして巻き取った。これを、比較例用フィルム6として用いた。
【0110】
1−7 比較例用セルロースアシレートフィルム7
市販のトリアセチルセルロースフィルム(「TD80」富士フイルム社製)を準備した。これをセルロースアシレートフィルム7として用いた。
【0111】
2.光弾性係数が負の層の準備
2−1 光弾性係数が負のポリマーイルムN1の製造
環状オレフィン系樹脂P−1の合成:
精製トルエン180質量部とノルボルネン−5−メタノールアセテート100質量部を反応釜に投入した。次いでトルエン80質量部中に溶解したパラジウム(II)アセチルアセトネート0.04質量部、トリシクロヘキシルフォスフィン0.04質量部、及びジメチルアルミニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩0.20質量部を反応釜に投入した。90℃で攪拌しながら18時間反応させた。反応終了後、過剰のエタノール中に反応混合物を投入し、重合物沈殿を生成させた。沈殿を精製し得られた重合体(P−1)を真空乾燥で65℃24時間乾燥した。
得られた重合体(P−1)をテトラヒドロフランに溶解し、ゲルパーエミションクロマトグラフによる分子量を測定したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量は79,000、質量平均分子量は205,000であった。
【0112】
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過して環状オレフィン系樹脂溶液を得た。
(環状オレフィン系樹脂溶液)
環状オレフィン系樹脂P−1 150質量部
ジクロロメタン 380質量部
メタノール 70質量部
【0113】
次に上記方法で調製した環状オレフィン系樹脂溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、微粒子分散液M−1を調製した。
(微粒子分散液)
1次平均粒径16nmのシリカ粒子 2質量部
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製)
ジクロロメタン 73質量部
メタノール 10質量部
環状オレフィン系樹脂溶液 10質量部
【0114】
上記環状オレフィン系樹脂溶液を100質量部、微粒子分散液を1.43質量混合し、製膜用ドープを調製した。上述のドープを、バンド流延機を用いて、製造速度20m/分で流延した。残留溶剤量が約25質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターを用いて2%の延伸率で幅方向に延伸して、フィルムに皺が入らないように保持しながら、熱風を当てて乾燥した。
その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し巻き取り、環状オレフィン系ポリマーフィルムを得た。このフィルムを、ポリマーフィルムN1として用いた。
【0115】
2−2 光弾性係数が負のポリマーフィルムN2の製造
アクリル樹脂(旭化成ケミカルズ(株)80N)を準備し、これをテクノベル製Tダイ装着押し出し機(KZW15TW−25MG−NH型/幅150mmTダイ装着/リップ厚0.5mm)を用いて、押し出し機のシリンダー内樹脂温度を247℃、Tダイの温度を250℃に調整し、押し出し成形をすることにより未延伸フィルムを得た。これを、ポリマーフィルムN2として用いた。
【0116】
2−3 光弾性係数が負の接着剤層N3の形成
紫外線硬化型アクリル接着剤UV−3400(東亜合成社製)をPENフィルム上に、所定の厚みとなるように塗布し、その後、各セルロースアシレートフィルムでラミネートして、セルロースアシレートフィルム側から400mJ/cm2の紫外線光を照射して接着剤を硬化させた後、PENフィルムを剥離した。得られたフィルムは剥離不良部はなかった。この様にして形成された接着剤層を接着剤層N3とする。
【0117】
上記で作製したフィルム等の特性を以下の表にまとめた。なお、接着剤層N3の光弾性係数については、接着剤に対して接着性の低いシート(シリコンシート、離型フイルム等)の上に接着剤を40μm程度の厚みで製膜し、シートから剥離して、他のフィルムと同様にして光弾性係数を求めた。なお、下記表に記載の接着剤層N3の厚みは、後述する実施例及び比較例の偏光板の作製時に形成した接着剤層N3の厚みである。
【0118】
【表2】

【0119】
【表3】

*1:接着剤層N3の厚みは、実施例によって異なり10μm、0.5μm及び30μmでそれぞれ形成した。
【0120】
セルロースアシレートフィルム1〜7については、以下のアルカリ鹸化処理を行った後、偏光板の作製に用いた。
アルカリ鹸化処理:
各フィルムを、55℃に保った1.5mol/LのNaOH水溶液(鹸化液)に2分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、25℃の0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した。その後、さらに水洗浴を30秒流水下に通して、フィルムを中性の状態にした。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥した。この様にして各セルロースアシレートフィルムについて鹸化処理を実施した。
【0121】
2. 偏光板の作製
2−1 偏光板1N1〜1N4の製造
偏光子の製造:
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて厚み20μmの偏光子を作製した。
【0122】
偏光板1N1の作製:
ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の片側にセルロースアシレートフィルム1を、もう片側にセルロースアシレートフィルム7を貼り付け、70℃で10分以上乾燥し、積層体1を得た。この積層体1のセルロースアシレートフィルム1の表面に、さらに粘着剤(総研化学社製SK2057)を用いて、ポリマーフィルムN1を接合した。この様にして、偏光板1N1を作製した。
【0123】
偏光板1N2の作製:
上記と同様にして作製した積層体1のセルロースアシレートフィルム1の表面に、さらに粘着剤(総研化学社製SK2057)を用いて、ポリマーフィルムN2を接合した。この様にして、偏光板1N2を作製した。
【0124】
偏光板1N3の作製:
接着剤層N3用接着剤を用いて、偏光子の片側にセルロースアシレートフィルム1を接合し、もう片側にポリビニルアルコール系接着剤を用いてセルロースアシレートフィルム7を貼り付け、70℃で10分以上乾燥し、偏光板を作製した。この様にして、偏光板1N3を作製した。なお、接着剤層N3の厚みは10μmとした。
【0125】
偏光板1N4の作製:
上記と同様にして、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の片側にセルロースアシレートフィルム1を、もう片側にセルロースアシレートフィルム7を貼り付け、70℃で10分以上乾燥し、積層体1を得た。この積層体1を、偏光板1N4として使用した。
【0126】
2−2 偏光板2N1〜2N4の製造
セルロースアシレートフィルム1をセルロースアシレートフィルム2に替えた以外は、偏光板1N1〜1N4のそれぞれと同様にして、偏光板2N1〜2N4をそれぞれ製造した。
【0127】
2−3 偏光板3N1〜3N4の製造
セルロースアシレートフィルム1をセルロースアシレートフィルム3に替えた以外は、偏光板1N1〜1N4のそれぞれと同様にして、偏光板3N1〜3N4をそれぞれ製造した。
偏光板3N3の製造においては、接着剤層N3の厚みが10μmとしたが、それ以外に、接着剤層N3の厚みが0.5μmの偏光板3N3(0.5)、及び接着剤層N3の厚みが30μmの偏光板3N3(30)も製造した。
【0128】
2−4 偏光板4N1〜4N4の製造
セルロースアシレートフィルム1をセルロースアシレートフィルム4に替えた以外は、偏光板1N1〜1N4のそれぞれと同様にして、偏光板4N1〜4N4をそれぞれ製造した。
【0129】
2−5 偏光板5N1〜5N4の製造
セルロースアシレートフィルム1をセルロースアシレートフィルム5に替えた以外は、偏光板1N1〜1N4のそれぞれと同様にして、偏光板5N1〜5N4をそれぞれ製造した。
【0130】
2−6 偏光板6N1〜6N4の製造
セルロースアシレートフィルム1をセルロースアシレートフィルム6に替えた以外は、偏光板1N1〜1N4のそれぞれと同様にして、偏光板6N1〜6N4をそれぞれ製造した。
【0131】
2−7 偏光板7N1〜7N4の製造
セルロースアシレートフィルム1をセルロースアシレートフィルム7に替えた以外は、偏光板1N1〜1N4のそれぞれと同様にして、偏光板7N1〜7N4をそれぞれ製造した。
【0132】
2−8 偏光板0の製造
ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の両側にセルロースアシレートフィルム7を貼り付け、70℃で10分以上乾燥し、偏光板を作製した。これを偏光板0として用いた。
【0133】
3.液晶表示装置の作製と評価
3−1 VAモード液晶表示装置(1枚型)の作製と評価
VAモード液晶セルの作製:
基板間のセルギャップを3.6μmとし、負の誘電率異方性を有する液晶材料(「MLC6608」、メルク社製)を基板間に滴下注入して封入し、基板間に液晶層を形成して作製した。液晶層のレターデーション(即ち、液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・d)を300nmとした。なお、液晶材料は垂直配向するように配向させた。この様にしてVAモード液晶セルを作製した。
【0134】
液晶セルと偏光板との接合:
上記のVAモード液晶セルを使用した液晶表示装置の、上側偏光板(表示面側)偏光板として偏光板0を、下側偏光板(バックライト側)として偏光板1N1〜1N4及び偏光板6N1〜6N4のいずれかを接合した。なお、偏光板1N1〜1N4又は偏光板6N1〜6N4を接合する際は、セルロースアシレートフィルム1又はセルロースアシレートフィルム6を液晶セル側にして接合した。上側偏光板及び下側偏光板は粘着剤(総研化学社製SK2057)を介して液晶セルに貼りつけた。上側偏光板の透過軸が上下方向に、そして下側偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。この様にしてVAモード液晶表示装置1N1〜1N4及び液晶表示装置6N1〜6N4をそれぞれ作製した。
【0135】
評価:
作製した各液晶表示装置の液晶セルに、55Hzの矩形波電圧を印加した。白表示5V、黒表示0Vのノーマリーブラックモードとした。
各液晶表示装置を温度50℃湿度95%の環境下に24時間放置後、連続して24時間点灯させた。その後、黒表示時に画面中央に楕円状に生じる光漏れについて、正面方向(表示面に対して法線方向)から観察し、以下の基準で評価した。以下の表に結果を示す。
9:光漏れの程度が非常に弱く実使用に耐えうる。表示品質良好である。
8:光漏れの程度が弱く実使用に耐え得る。
7:光漏れの程度が弱く実使用に耐え得る。光漏れの程度は8よりも程度悪い。
6:光漏れの程度が弱く実使用に耐え得る。光漏れの程度は7よりも程度悪い。
5:光漏れの程度が弱く実使用に耐え得る。光漏れの程度は6よりも程度悪い。
4:光漏れの程度が弱く実使用に耐え得る。光漏れの程度は許容下限である。
3:光漏れが強く実使用に耐えない。
2:光漏れが強く実使用に耐えない。光漏れの程度は3よりも程度悪い。
1:光漏れが強く実使用に耐えない。光漏れの程度は2よりも程度悪い。
【0136】
【表4】

【0137】
上記表に示す結果から、厚みが76μmのセルロースアシレートフィルム1を有する偏光板1N1〜1N3を使用したVAモード液晶表示装置1N1〜1N3は、光弾性係数が負であるフィルムN1、フィルムN2又は接着剤層N3を付加されているので、光弾性係数が負の層を付加されていない偏光板1N4を使用したVAモード液晶表示装置1N4と比較して、光漏れが顕著に軽減されていることが理解できる。
一方、厚みが82μmのセルロースアシレートフィルム6を有する偏光板6N1〜6N3を使用したVAモード液晶表示装置6N1〜6N3は、光弾性係数が負であるフィルムN1、フィルムN2又は接着剤層N3を付加しても、光漏れは軽減できず、実用上満足いくものではなかった。
【0138】
3−2 VAモード液晶表示装置(2枚型)の作製と評価
上側偏光板(表示面側)偏光板及び下側偏光板(バックライト側)の双方に、偏光板2N1〜1N4及び偏光板3N1〜3N4から選ばれる同一の偏光板を接合した。なお、偏光板2N1〜1N4又は偏光板3N1〜3N4を接合する際は、セルロースアシレートフィルム2又はセルロースアシレートフィルム3を液晶セル側にして接合した。上側偏光板及び下側偏光板は粘着剤(総研化学社製SK2057)を介して液晶セルに貼りつけた。それ以外は、VAモード液晶表示装置1N1〜1N4と同様にして、液晶表示装置2N1〜2N4及び液晶表示装置3N1〜3N4をそれぞれ作製した。また、液晶表示装置3N3については、接着剤層N3の厚みが0.5μmである偏光板3N3(0.5)、及び接着剤層N3の厚みが30μmである偏光板3N3(30)をそれぞれ用いたVAモード液晶表示装置3N3(0.5)及び3N3(30)についても同様に作製した。
各液晶表示装置を温度50℃湿度95%の環境下に24時間放置後、連続して24時間点灯させた。その後、黒表示時に画面中央に楕円状に生じる光漏れについて、正面方向(表示面に対して法線方向)から観察し、上記と同一の基準で評価した。以下の表に結果を示す。
【0139】
【表5】

*1:括弧内は接着剤層N3の厚み
【0140】
上記表に示す結果から、厚みが43μmのセルロースアシレートフィルム2を有する偏光板2N1〜2N3、及び厚みが59μmのセルロースアシレートフィルム3を有する偏光板3N1〜3N3を使用したVAモード液晶表示装置は、光弾性係数が負であるフィルムN1、フィルムN2又は接着剤層N3を付加されているので、光弾性係数が負の層を付加されていない偏光板2N4又は3N4を使用したVAモード液晶表示装置2N4又は3N4と比較して、光漏れが顕著に軽減されていることが理解できる。
【0141】
3−3 IPSモード液晶表示装置の作製と評価
IPSモード液晶セルの作製:
市販のIPS−TVの偏光板を注意して剥がして、IPSモード液晶セルを準備した。
【0142】
液晶セルと偏光板との接合:
上記のIPSモード液晶セルを使用した液晶表示装置の、上側偏光板(表示面側)偏光板及び下側偏光板(バックライト側)の双方に、偏光板4N1〜4N4、偏光板5N1〜5N4及び偏光板7N1〜7N4から選ばれる同一の偏光板を接合した。なお、偏光板4N1〜4N4、偏光板5N1〜5N4又は偏光板7N1〜7N4を接合する際は、セルロースアシレートフィルム4、セルロースアシレートフィルム5又はセルロースアシレートフィルム7を液晶セル側にして接合した。上側偏光板及び下側偏光板は粘着剤(総研化学社製SK2057)を介して液晶セルに貼りつけた。上側偏光板の透過軸が上下方向に、そして下側偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。この様にしてIPSモード液晶表示装置4N1〜4N4、5N1〜5N4及び7N1〜7N4をそれぞれ作製した。
【0143】
各液晶表示装置を温度50℃湿度95%の環境下に24時間放置後、連続して24時間点灯させた。その後、黒表示時に画面中央に楕円状に生じる光漏れについて、正面方向(表示面に対して法線方向)から観察し、上記と同一の基準で評価した。以下の表に結果を示す。
【0144】
【表6】

【0145】
上記表に示す結果から、厚みが60μmのセルロースアシレートフィルム4を有する偏光板4N1〜4N3、及び厚みが40μmのセルロースアシレートフィルム5を有する偏光板5N1〜5N3を使用したIPSモード液晶表示装置5N1〜5N3は、光弾性係数が負であるフィルムN1、フィルムN2又は接着剤層N3を付加されているので、光弾性係数が負の層を付加されていない偏光板4N4又は偏光板5N4を使用したIPSモード液晶表示装置4N4又は5N4と比較して、光漏れが顕著に軽減されていることが理解できる。
一方、厚みが80μmのセルロースアシレートフィルム7を有する偏光板7N1〜7N3を使用したIPSモード液晶表示装置7N1〜7N3は、光弾性係数が負であるフィルムN1、フィルムN2又は接着剤層N3を付加しても、光漏れは軽減できず、実用上満足いくものではなかった。
【符号の説明】
【0146】
10、10’ 偏光板
12 偏光膜
14 光弾性係数が負の層
16 厚みが77μm以下のセルロースアシレートフィルム
18 保護フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光膜、その一方の表面上に、厚みが77μm以下のセルロースアシレートフィルム、及び光弾性係数が負である層を少なくとも有する偏光板。
【請求項2】
前記セルロースアシレートフィルムの横方向及び縦方向の平均弾性率が、3800MPa以上である請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記光弾性係数が負である層が、前記セルロースアシレートフィルムと偏光膜とを接着する接着剤層である請求項1又は2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記接着剤層が、アクリル系接着剤組成物からなる請求項3に記載の偏光板。
【請求項5】
前記接着剤層の厚みが1〜20μmである請求項4に記載の偏光板。
【請求項6】
前記光弾性係数が負である層が、環状オレフィン系樹脂又はアクリル系樹脂を含有するポリマーフィルムである請求項1又は2に記載の偏光板。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の偏光板と、液晶セルとを少なくとも有する液晶表示装置。
【請求項8】
前記偏光板が、液晶セルの光源側に配置されている請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記偏光板が有する前記セルロースアシレートフィルム及び前記光弾性係数が負の層が、前記液晶セルと偏光膜との間に配置されている請求項7又は8に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
厚みが77μm以下のセルロースアシレートフィルムと、光弾性係数が負である層とを少なくとも有する耐湿熱性偏光板用保護フィルム。
【請求項11】
前記セルロースアシレートフィルムの横方向及び縦方向の平均弾性率が、3800MPa以上である請求項10に記載の耐湿熱性偏光板用保護フィルム。
【請求項12】
前記光弾性係数が負である層が、環状オレフィン系樹脂又はアクリル系樹脂を含有するポリマーフィルムである請求項10又は11に記載の耐湿熱性偏光板用保護フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−73429(P2012−73429A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218302(P2010−218302)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】