説明

偏光板、ならびにそれを用いた液晶パネルおよび液晶表示装置

【課題】過酷な環境下における耐久性、および生産性に優れた拡散フィルムを用いた偏光板、特には液晶セルとバックライトとの間に配置される背面側偏光板、ならびに当該偏光板を用いた液晶パネルおよび液晶表示装置を提供する。
【解決手段】ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルムと、該偏光フィルムの少なくとも一方の面に、接着剤層を介して積層される拡散フィルムとを備え、該拡散フィルムは、透明樹脂からなる少なくとも1つの透明樹脂層と、透明バインダ樹脂および微粒子を含有する少なくとも1つの光拡散層とを含む多層構造を有し、透明樹脂層の表面が接着剤層に接するように偏光フィルムに積層される、液晶表示装置が備える液晶セルとバックライトとの間に配置されるための偏光板、ならびにこれを用いた液晶パネルおよび液晶表示装置である。透明樹脂および透明バインダ樹脂は、いずれもアクリル系樹脂である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルムの片面または両面に積層された光拡散性を有する拡散フィルムを備える偏光板、ならびにそれを用いた液晶パネルおよび液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、液晶テレビ、液晶モニタ、パーソナルコンピュータなど、薄型の表示装置として、用途が急拡大している。特に、液晶テレビの市場拡大は著しく、また、低コスト化の要求も非常に高い。
【0003】
通常の液晶表示装置は、冷陰極管やLEDからなるバックライト、光拡散板、1つまたは複数の光拡散シート、背面側偏光板、液晶セルおよび視認側偏光板から構成されている。大画面液晶テレビ用途においては、薄型化して壁掛けテレビとしてのニーズが顕在化しているが、この場合、液晶テレビの薄型化に対応して使用する部材の薄肉化、部材点数削減が必要となる。このような要請に対し、液晶セルとバックライトとの間に配置される背面側偏光板自体に光拡散性を付与することで、1つまたは複数の光拡散シートを省略し、部品点数を削減する技術が知られている(たとえば、特許文献1〜6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−183712号公報
【特許文献2】特開2000−75133号公報
【特許文献3】特開2000−75134号公報
【特許文献4】特開2000−75135号公報
【特許文献5】特開2000−75136号公報
【特許文献6】特開2000−75137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
背面側偏光板自体に光拡散性を付与する手段としては、上記特許文献1〜6などに開示されるように、偏光フィルムに積層される透明保護フィルムとして、光拡散性が付与された拡散フィルムを用いる手段が知られている。上記特許文献には、このような拡散フィルムの製造方法として、たとえば、トリアセチルセルロースからなる透明基材フィルム上に拡散剤を混合した樹脂をコーティングする方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、透明基材フィルムに拡散剤を混合した樹脂をコーティングして得られる従来の拡散フィルムは、加熱冷却したり、加湿したりすると、コーティングされた樹脂層と透明基材フィルムとの間の熱膨張率や水分膨張率の違いにより、カールが発生して製造加工過程で不具合が生じるという問題があった。また、コーティング工程を必要とすることから、製造コストがかかるなどの問題があった。
【0007】
一方、上記特許文献に開示されるように、透明基材フィルムに拡散剤を含有する樹脂をコーティングするのではなく、透明基材フィルム自体に拡散剤を練り込んだり、あるいは、透明基材フィルム表面をサンドブラストやエンボスロールにて粗面化処理することにより拡散フィルムを製造する方法も知られている。
【0008】
しかしながら、透明基材フィルム自体に拡散剤を練り込んだ単層からなる拡散フィルムは、拡散剤粒子の影響により表面に不要な凹凸形状が生じる場合が多く、このような拡散フィルムを接着剤などを用いて偏光フィルムに貼合する際には、界面に気泡が入りやすいために、外観に劣るなどの問題があった。また、サンドブラスト等で表面が粗面化された拡散フィルムを用いた偏光板では光学特性を制御することが難しいという問題があった。
【0009】
さらには、拡散フィルムを構成する樹脂材料がトリアセチルセルロースである場合、該拡散フィルムを保護フィルムとした偏光板は、しばしば耐湿熱性に劣り、偏光フィルムが損傷を受けたりする場合があった。このような偏光板がしばしば耐湿熱性等に劣るのは、トリアセチルセルロースフィルムの透湿度や吸水率が高いためであると考えられる。
【0010】
そこで本発明の目的は、過酷な環境下における耐久性、および生産性に優れた拡散フィルムを用いた偏光板、特には液晶セルとバックライトとの間に配置される背面側偏光板を提供することである。また、本発明の他の目的は、当該偏光板を用いた液晶パネルおよび液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ヨウ素または二色性染料が吸着配向された一軸延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルムと、該偏光フィルムの少なくとも一方の面に、接着剤層を介して積層されるヘイズが1%以上である拡散フィルムとを備える、液晶表示装置が備える液晶セルとバックライトとの間に配置される背面側偏光板として用いられる偏光板を提供する。ここで、本発明において拡散フィルムは、透明樹脂からなる少なくとも1つの透明樹脂層と、透明バインダ樹脂および該透明バインダ樹脂とは異なる屈折率を有する微粒子を含有する少なくとも1つの光拡散層とを含む多層構造を有しており、該透明樹脂および該透明バインダ樹脂は、いずれもアクリル系樹脂である。また、拡散フィルムは、透明樹脂層の表面が接着剤層に接するように偏光フィルムに積層される。拡散フィルムのヘイズは、好ましくは5%以上である。
【0012】
本発明の偏光板において、透明樹脂層における接着剤層に接する表面の算術平均高さPaは、好ましくは0.5μm以下である。
【0013】
本発明の偏光板の1つ好ましい実施形態において、拡散フィルムは、2つの透明樹脂層と、該2つの透明樹脂層の間に配置される光拡散層との3層構造を有する。このような3層構造の拡散フィルムを用いる場合においては、拡散フィルムは、当該2つの透明樹脂層のうちのいずれかの透明樹脂層の表面(光拡散層側とは反対側の表面)が接着剤層に接するように偏光フィルムに積層される。
【0014】
本発明の偏光板は、偏光フィルムにおける拡散フィルムが積層される面とは反対側の面に積層される光学補償フィルムまたは保護フィルムを備えていてもよい。
【0015】
また、本発明によれば、液晶セルと該液晶セル上に積層される上記本発明の偏光板とを備える液晶パネルであって、該偏光板が、偏光フィルムにおける拡散フィルムが積層される面とは反対側の面が液晶セルに対向するように配置される液晶パネルが提供される。
【0016】
さらに、本発明によれば、バックライト、光拡散板および上記本発明の液晶パネルをこの順で備える液晶表示装置であって、該液晶パネルが、偏光板の拡散フィルムが光拡散板と対向するように配置される液晶表示装置、および、バックライト、光拡散板、光拡散シートおよび上記本発明の液晶パネルをこの順で備える液晶表示装置であって、該液晶パネルが、偏光板の拡散フィルムが光拡散シートと対向するように配置される液晶表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、過酷な環境下における耐久性および生産性に優れた、光拡散性を有する偏光板および液晶パネルを提供することができる。また、本発明によれば、拡散フィルムにおける偏光フィルムに対向する側の表面を平滑にすることができるため、過酷な環境下における耐久性および生産性に優れるとともに、フィルム貼合時の気泡混入が効果的に防止された外観が良好な偏光板および液晶パネルを提供することができる。さらに、本発明によれば、液晶表示装置の薄肉化および部材点数の削減を図ることが可能となる。このような本発明の液晶表示装置は、大画面液晶テレビ用液晶表示装置、特には壁掛け可能な液晶テレビ用液晶表示装置に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の偏光板の好ましい一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の偏光板の他の好ましい一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1および図2は、本発明の偏光板の好ましい例を示す断面模式図である。図1に示される偏光板100は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルム101と、図示しない接着剤層を介して、偏光フィルム101の一方の面に積層された拡散フィルム102とを備える。拡散フィルム102は、2つの透明樹脂層103,103と、これら2つの透明樹脂層103,103の間に配置される光拡散層104との3層構造からなる。光拡散層104には、光拡散層104の基材となる透明バインダ樹脂とは異なる屈折率を有する微粒子105が分散されている。
【0020】
図2に示される偏光板200は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルム201と、図示しない接着剤層を介して、偏光フィルム201の一方の面に積層された拡散フィルム202とを備える。拡散フィルム202は、1つの透明樹脂層203と、透明樹脂層203上に積層された1つの光拡散層204との2層構造を有しており、透明樹脂層203が偏光フィルム201に対向するように偏光フィルム201に積層されている。また、光拡散層204には、光拡散層204の基材となる透明バインダ樹脂とは異なる屈折率を有する微粒子205が分散されている。
【0021】
上記好ましい例によって示されるように、本発明の偏光板は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルムと、偏光フィルムの片面または両面に積層される拡散フィルムとを備え、該拡散フィルムが透明樹脂層と光拡散層とを含む多層構造からなるものである。かかる本発明の偏光板は、液晶表示装置の液晶セルとバックライトとの間に配置される背面側偏光板として用いられる。以下、本発明の偏光板についてより詳細に説明する。
【0022】
(偏光フィルム)
本発明の偏光板に用いられる偏光フィルムは、具体的には、一軸延伸したポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたものである。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体、たとえばエチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体としては、たとえば不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
【0023】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常、85〜100モル%程度であり、98モル%以上が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、たとえば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、およびポリビニルブチラール等も用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常、1000〜10000程度であり、1500〜5000程度が好ましい。
【0024】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の適宜の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムの膜厚は特に限定されるものではないが、たとえば10〜150μm程度である。
【0025】
偏光フィルムは、通常、上記したようなポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムを二色性色素で染色してその二色性色素を吸着させる工程(染色処理工程)、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程(ホウ酸処理工程)、ならびに、このホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程(水洗処理工程)を経て、製造される。
【0026】
また、偏光フィルムの製造に際し、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは一軸延伸されるが、この一軸延伸は、染色処理工程の前に行なってもよいし、染色処理工程中に行なってもよいし、染色処理工程の後に行なってもよい。一軸延伸を染色処理工程の後に行なう場合において、この一軸延伸は、ホウ酸処理工程の前に行なってもよいし、ホウ酸処理工程中に行なってもよい。勿論、これらの複数の段階で一軸延伸を行なうことも可能である。一軸延伸は、周速の異なるロール間で一軸に延伸するようにしてもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸するようにしてもよい。また、大気中で延伸を行なう乾式延伸であってもよいし、溶剤にて膨潤させた状態で延伸を行なう湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3〜8倍程度である。
【0027】
染色処理工程におけるポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬することによって行なわれる。二色性色素としては、たとえばヨウ素、二色性染料などが用いられる。二色性染料には、たとえば、C.I.DIRECT RED 39などのジスアゾ化合物からなる二色性直接染料、トリスアゾ、テトラキスアゾ化合物などからなる二色性直接染料が包含される。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
【0028】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素およびヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、通常、水100重量部あたり0.01〜1重量部であり、ヨウ化カリウムの含有量は、通常、水100重量部あたり0.5〜20重量部である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、染色に用いる水溶液の温度は、通常20〜40℃であり、また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20〜1800秒である。
【0029】
一方、二色性色素として二色性染料を用いる場合は、通常、水溶性二色性染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性染料の含有量は、通常、水100重量部あたり1×10-4〜10重量部、好ましくは1×10-3〜1重量部であり、特に好ましくは1×10-3〜1×10-2重量部である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を染色助剤として含有していてもよい。二色性色素として二色性染料を用いる場合、染色に用いる染料水溶液の温度は、通常20〜80℃であり、また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10〜1800秒である。
【0030】
ホウ酸処理工程は、二色性色素により染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬することにより行なわれる。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は、水100重量部あたり、通常2〜15重量部、好ましくは5〜12重量部である。上述した染色処理工程における二色性色素としてヨウ素を用いた場合には、このホウ酸処理工程に用いるホウ酸含有水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。この場合、ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、水100重量部あたり、通常0.1〜15重量部、好ましくは5〜12重量部である。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常、60〜1200秒、好ましくは150〜600秒、さらに好ましくは200〜400秒である。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、より好ましくは60〜80℃である。
【0031】
続く水洗処理工程では、上述したホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、たとえば水に浸漬することによって水洗処理する。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃であり、浸漬時間は、通常1〜120秒である。水洗処理後は、通常、乾燥処理が施されて、偏光フィルムが得られる。乾燥処理は、たとえば熱風乾燥機、遠赤外線ヒータなどを用いて行なうことができる。乾燥処理の温度は、通常、30〜100℃、好ましくは50〜80℃である。乾燥処理の時間は、通常60〜600秒、好ましくは120〜600秒である。
【0032】
こうして、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、ホウ酸処理および水洗処理を施して、偏光フィルムが得られる。この偏光フィルムの厚みは、通常、5〜40μmの範囲内である。
【0033】
(拡散フィルム)
本発明の偏光板に用いられる拡散フィルムは、光拡散性を有する積層樹脂フィルムである。光拡散性を有する積層樹脂フィルムを偏光フィルムに貼合することにより、得られる偏光板に光拡散機能が付与されるため、これを液晶表示装置の背面側偏光板として用いる場合、液晶セルとバックライトとの間に配置されていた1つまたは複数の光拡散シートを省略することが可能となる。本発明においては、拡散フィルムとして、透明樹脂からなる少なくとも1つの透明樹脂層と、透明バインダ樹脂および該透明バインダ樹脂とは異なる屈折率を有する微粒子を含有する少なくとも1つの光拡散層とを含む多層構造を有する光拡散性積層樹脂フィルムが用いられる。拡散フィルムは、少なくとも一方の外表面が、透明樹脂層表面からなり(すなわち、少なくとも一方の最外層は透明樹脂層であり)、当該透明樹脂層表面が接着剤層に接するように(当該透明樹脂層表面が偏光フィルムに対向するように)、接着剤を用いて偏光フィルムに貼合される。なお、積層樹脂フィルムが「光拡散性を有する」とは、JIS K 7136に準拠して測定されるヘイズが1%以上であることを意味する。
【0034】
拡散フィルムは、上記したように、2つの透明樹脂層によって光拡散層が挟持された3層構造とすることができ(図1参照)、あるいは透明樹脂層とその上に積層された光拡散層とからなる2層構造とすることもできる(図2参照)。3層構造の場合、2つの透明樹脂層のうちのいずれかの透明樹脂層表面が接着剤層に接するように、接着剤を用いて偏光フィルムと拡散フィルムとが貼合される。また、2層構造の場合、透明樹脂層表面が接着剤層に接するように、接着剤を用いて偏光フィルムに貼合される。これらのなかでは、拡散フィルムは、3層構造とすることが好ましい。3層構造とすることにより、光拡散層の表面凹凸の影響を受けることなく、表面が平滑な透明樹脂層を備える拡散フィルムを製造しやすい。一方、2層構造の拡散フィルムの場合、光拡散層の表面凹凸に影響を受けて、透明樹脂層表面の平滑性が比較的低くなることがあり得る。なお、透明樹脂層と光拡散層とを交互に配置して4層以上の積層樹脂フィルムを得ることも可能であるが、コスト等に鑑みると、3層構造とすることが好ましい。
【0035】
拡散フィルムを構成する透明樹脂層に用いられる透明樹脂および光拡散層に用いられる透明バインダ樹脂には、実質的に光学的に透明な樹脂を用いる。そのような樹脂の例として、トリアセチルセルロース;ポリエチレンテレフタレート;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ノルボルネン系化合物をモノマーとする非晶性環状ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂などを挙げることができる。透明樹脂層を構成する透明樹脂と光拡散層に用いられる透明バインダ樹脂とは、同じであってもよいし、異なる材料であってもよい。上記樹脂の中でも、透明樹脂および透明バインダ樹脂としては、透湿性が低く、透明性や耐候性に優れ、表面硬度も高いアクリル系樹脂を用いることが好ましい。透明樹脂および透明バインダ樹脂としてアクリル系樹脂を用いることにより、耐湿熱性に優れた拡散フィルムを得ることができ、過酷な環境下においても高い耐久性を有する偏光板を得ることができる。また、偏光板に優れた耐擦傷性を付与することができる。ここで、本発明においてアクリル系樹脂とは、メタクリル樹脂および必要に応じて添加される添加剤等を混合し、溶融混練して得られた材料のことを意味する。
【0036】
上記メタクリル樹脂とは、メタクリル酸エステルを主体とする重合体である。メタクリル樹脂は、1種類のメタクリル酸エステルの単独重合体であってもよいし、メタクリル酸エステルと他のメタクリル酸エステルやアクリル酸エステル等との共重合体であってもよい。メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキルが挙げられる。メタクリル酸アルキルのアルキル基の炭素数は、通常1〜4程度である。また、メタクリル酸エステルと共重合し得るアクリル酸エステルとしては、アクリル酸アルキルが好ましく、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル等が挙げられる。アクリル酸アルキルのアルキル基の炭素数は、通常1〜8程度である。
【0037】
メタクリル酸エステルを主体とする共重合体は、スチレン等の芳香族ビニル化合物およびアクリロニトリル等のビニルシアン化合物などの分子内に重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも1個有する化合物を共重合体成分として含んでいてもよい。
【0038】
アクリル系樹脂は、フィルムの耐衝撃性や製膜性を向上させるために、アクリルゴム粒子を含有することが好ましい。アクリル系樹脂に含まれ得るアクリルゴム粒子の量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上である。アクリルゴム粒子の量の上限は臨界的ではないが、アクリルゴム粒子の量があまり多いと、フィルムの表面硬度が低下し、またフィルムに表面処理を施す場合、表面処理剤中の有機溶剤に対する耐溶剤性が低下する。したがって、アクリル系樹脂に含まれ得るアクリルゴム粒子の量は、80重量%以下であることが好ましく、より好ましくは60重量%以下である。
【0039】
上記アクリルゴム粒子は、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を必須成分とする粒子であり、実質的にこの弾性重合体のみからなる単層構造のものであってもよいし、この弾性重合体を1つの層とする多層構造のものであってもよい。この弾性重合体として、具体的には、アクリル酸アルキル50〜99.9重量%と、これと共重合可能な他のビニル系単量体を少なくとも1種類0〜49.9重量%と、共重合性の架橋性単量体0.1〜10重量%とからなる単量体混合物の重合により得られる架橋弾性共重合体が、好ましく用いられる。
【0040】
上記アクリル酸アルキルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル等が挙げられる。アクリル酸アルキルのアルキル基の炭素数は、通常1〜8程度である。また、上記アクリル酸アルキルと共重合可能な他のビニル系単量体としては、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を1個有する化合物を挙げることができ、より具体的には、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル;スチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル等のビニルシアン化合物等が挙げられる。また、上記共重合性の架橋性単量体としては、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有する架橋性の化合物を挙げることができ、より具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸アリルおよび(メタ)アクリル酸メタリル等の(メタ)アクリル酸のアルケニルエステル;ジビニルベンゼンなどが挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとはメタクリレートまたはアクリレートをいい、(メタ)アクリル酸とはメタクリル酸またはアクリル酸をいう。
【0041】
アクリル系樹脂には、上記アクリルゴム粒子以外に、通常の添加剤、たとえば、紫外線吸収剤、有機系染料、顔料、無機系色素、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤等を含有させてもよい。中でも紫外線吸収剤は、耐候性を高めるうえで好ましく用いられる。紫外線吸収剤の例としては、2,2’−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールおよび2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−クロロベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンおよび2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等の2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤;p−tert−ブチルフェニルサリチル酸エステルおよびp−オクチルフェニルサリチル酸エステル等のサリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収剤は、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。アクリル系樹脂に紫外線吸収剤が含まれる場合、その量は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上であり、また好ましくは2重量%以下である。
【0042】
光拡散層に分散される微粒子の屈折率は、拡散フィルムに光拡散機能を付与するために、透明バインダ樹脂の屈折率とは異なる値を有していることが必要であり、両者の屈折率差は、0.01以上であるのが好ましい。また、この屈折率差をあまり大きくすると、微粒子の含有量が少量である場合でも強い散乱が起こりやすく、散乱の制御が難しくなる傾向にあることから、たとえば、両者の屈折率差は、0.1以下であるのが好ましい。微粒子の屈折率は、用いられる透明バインダ樹脂の種類等を考慮して適宜選択されるが、上記したような透明バインダ樹脂を用いる場合、微粒子の屈折率は、1.4以上1.6以下の範囲から選択することが好ましい。透明バインダ樹脂に上記アクリル系樹脂を用いる場合には、アクリル系樹脂の屈折率が一般的に1.49程度であることから、微粒子の屈折率は、1.39〜1.59程度の範囲から、上記の条件を満たすように選択することが好ましい。
【0043】
上記微粒子は、散乱の等方性、均一性を考慮すると、球形またはほぼ球形であることが好ましい。また、表面に微細な凹凸があるような形状および無定形である粒子は、粒径より小さい表面の微細凹凸などの構造に起因して予期せぬ散乱が発生する可能性があるため、好ましくない。微粒子の重量平均粒子径は、1μm以上50μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以上20μm以下である。微粒子の重量平均粒子径が1μmを下回る場合には、広角側の散乱光強度が上昇し、偏光板を液晶表示装置に適用したときにコントラストを低下させる傾向にある。また、その重量平均粒子径が50μmを上回る場合には、要求する散乱効果が得られない場合があり、あるいは要求する散乱効果を得るためには拡散フィルムを厚くする必要が生じ得る。
【0044】
上記微粒子としては、無色または白色の有機粒子および無機粒子が使用できる。有機粒子としては、たとえば、メラミンビーズ(屈折率1.57);ポリメタクリル酸メチルビーズ(屈折率1.49)等の(メタ)アクリル系樹脂ビーズ;メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(屈折率1.50〜1.59);ポリカーボネートビーズ(屈折率1.59);ポリエチレンビーズ(屈折率1.53)およびポリプロピレンビーズ等のポリオレフィン系樹脂ビーズ;ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率1.46);シリコーン樹脂ビーズ(屈折率1.46);ポリスチレンビーズなどを挙げることができる。また、エチレン、プロピレン、スチレン、メタクリル酸メチル、ベンゾグアナミン、ホルムアルデヒド、メラミン、ブタジエン等から選ばれる2種以上のモノマーが共重合されてなる共重合体からなる樹脂ビーズを使用することもできる。
【0045】
無機粒子としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、ガラス、タルク、マイカ、ホワイトカーボン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の無機粒子、およびこれら無機粒子に脂肪酸等で表面処理を施したものなどを代表的なものとして挙げることができる。
【0046】
光拡散層において上記微粒子は、透明バインダ樹脂100重量部に対して、5重量部以上40重量部以下含有されることが好ましい。微粒子の含有量が5重量部未満であると、十分な光拡散性が得られない傾向にある。また、微粒子の含有量が40重量部を超えると、拡散フィルムへの成形が難しくなったり、拡散フィルムの機械的強度が低くなる傾向にある。
【0047】
光拡散層を形成するために用いられる樹脂組成物は、上記透明バインダ樹脂(たとえばメタクリル樹脂、アクリルゴム粒子およびその他添加剤など)と上記微粒子とを混合し、溶融混練することにより得ることができる。
【0048】
透明樹脂層を構成する透明樹脂および光拡散層を構成する上記微粒子を含有する樹脂組成物から、本発明に用いる拡散フィルムを得るための方法としては、たとえば、フィードブロックを用いる方法、マルチマニホールドダイを用いる方法等、一般に知られる種々の方法を用いることができる。中でも、たとえばフィードブロックを介して積層し、Tダイから多層溶融押出成形し、得られる積層フィルム状物の少なくとも片面を、ロールまたはベルトに接触させて製膜する方法は、表面性状の良好な、すなわち、透明樹脂層表面が平滑な拡散フィルムが得られる点で好ましい。とりわけ、拡散フィルムの表面平滑性および表面光沢性を向上させる観点からは、上記多層溶融押出成形して得られる積層フィルム状物の両面をロール表面またはベルト表面に接触させてフィルム化する方法が好ましい。この際に用いるロールまたはベルトにおいて、透明樹脂層を構成する透明樹脂と接するロール表面またはベルト表面は、透明樹脂層表面への平滑性付与のために、鏡面となっていることが好ましい。多層溶融押出成形(共押出成形)法によれば、たとえば微粒子を含有する樹脂液を基材フィルム上にコーティングする方法として比較して、生産性良く拡散フィルムを製造できるとともに、透明樹脂層表面が平滑な拡散フィルムを容易に得ることができる。
【0049】
拡散フィルムの透明樹脂層表面(拡散フィルムが3層構造である場合、少なくとも一方の透明樹脂層の表面)を平滑な面にすることにより、当該透明樹脂層表面を、接着剤層を介して偏光フィルムに貼合する際、接着剤層と透明樹脂層との界面に貼合気泡が生じるなどの不具合を防止することができ、外観の良好な偏光板を得ることができる。具体的には、偏光フィルムに貼合される(接着剤層に接する)透明樹脂層表面の、JIS B 0601に準拠して測定される算術平均高さPaは、好ましくは0.5μm以下であり、より好ましくは0.1μm以下である。
【0050】
拡散フィルムの厚みは特に限定されないが、偏光板の薄型軽量化の観点から、20μm以上200μm以下程度であることが好ましく、さらには30μm以上100μm以下であることが一層好ましい。
【0051】
透明樹脂層の厚みは、特に制限されないが、たとえば5μm以上80μm以下とすることができ、好ましくは10μm以上60μm以下である。また、光拡散層の厚みは、特に制限されないが、たとえば5μm以上100μm以下とすることができ、好ましくは10μm以上80μm以下である。
【0052】
拡散フィルムのJIS K 7136に準拠して測定されるヘイズ値は、上記したように1%以上であり、偏光板により良好な光拡散機能を付与するためには、5%以上であることが好ましく、15%以上90%以下であることがより好ましい。さらに好ましくは45%以上90%以下である。また、偏光板を液晶表示装置に配置したときに、表示画面での輝度が十分に高くなるよう、拡散フィルムは、その全光線透過率が高いものほど好ましい。具体的には、拡散フィルムの全光線透過率は70%以上が好ましく、さらには80%以上、とりわけ85%以上であることが一層好ましい。拡散フィルムの全光線透過率は、JIS K 7361に準じて測定される。
【0053】
偏光フィルムにおける上記拡散フィルムが貼合される面とは反対側の面には、液晶セルと偏光板とを貼合するための、接着剤あるいは粘着剤の層が形成されてもよい。また、偏光フィルムにおける上記拡散フィルムが貼合される面とは反対側の面に、保護フィルムや光学補償フィルムなどの透明フィルムを積層し、該透明フィルム上に接着剤あるいは粘着剤の層を形成してもよい。さらに、上記透明フィルム上に、後述する光学機能性フィルムを積層し、該光学機能性フィルム上に接着剤あるいは粘着剤の層を形成することもできる。
【0054】
保護フィルムとしては、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)などのセルロース系樹脂フィルム、オレフィン系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、およびポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルムなどが挙げられる。また、光学補償フィルムとしては、上記保護フィルムとして挙げたフィルムを延伸して屈折率異方性を持たせたもの、光学異方性付与添加剤を配合したもの、および表面に光学異方性層を形成したもの等が挙げられる。
【0055】
上記セルロース系樹脂フィルムを構成するセルロース系樹脂とは、セルロースの部分エステル化物または完全エステル化物を意味し、たとえば、セルロースの酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、および、それらの混合エステルなどを挙げることができる。より具体的には、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどが挙げられる。このようなセルロース系樹脂を製膜してフィルムとする際には、溶剤キャスト法、溶融押出法などの公知の方法が適宜用いられる。セルロース系樹脂フィルムは、市販品を入手することができ、たとえば「フジタックTD80」(富士フィルム(株)製)、「フジタックTD80UF」(富士フィルム(株)製)、「フジタックTD80UZ」(富士フィルム(株)製)、「KC8UX2M」(コニカミノルタオプト(株)製)、「KC8UY」(コニカミノルタオプト(株)製)などが挙げられる。
【0056】
セルロース系樹脂フィルムからなる光学補償フィルムとしては、たとえば、上記セルロース系樹脂フィルムに位相差調整機能を有する化合物を含有させたフィルム;セルロース系樹脂フィルム表面に位相差調整機能を有する化合物を塗布したフィルム;セルロース系樹脂フィルムを一軸延伸または二軸延伸して得られるフィルムなどが挙げられる。市販のセルロース系樹脂フィルムからなる光学補償フィルムとしては、たとえば、富士フィルム(株)製の「WVフィルム Wide View Film ”WV BZ 438”」、「WVフィルム Wide View Film ”WV EA”」、コニカミノルタオプト(株)製の「KC4FR−1」、「KC4HR−1」などが挙げられる。
【0057】
セルロース系樹脂フィルムからなる保護フィルムまたは光学補償フィルムの厚みは特に制限されないが、20〜90μmの範囲内であることが好ましく、30〜90μmの範囲内であることがより好ましい。厚みが20μm未満である場合には、フィルムの取扱いが難しく、一方、厚みが90μmを超える場合には、加工性に劣るものとなり、また、得られる偏光板の薄型軽量化において不利である。
【0058】
上記オレフィン系樹脂フィルムからなる光学補償フィルムとしては、たとえば一軸延伸または二軸延伸されたシクロオレフィン系樹脂フィルムを挙げることができる。大型液晶テレビ用液晶パネル、特に垂直配向(VA)モードの液晶セルを備える液晶パネルに本発明の偏光板を用いる場合には、上記光学補償フィルムとしては、シクロオレフィン系樹脂フィルムの延伸品が、光学特性および耐久性の点からも好適である。ここで、シクロオレフィン系樹脂フィルムとは、たとえば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーなどの環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーのユニットを有する熱可塑性の樹脂からなるフィルムである。シクロオレフィン系フィルムは、単一のシクロオレフィンを用いた開環重合体や2種以上のシクロオレフィンを用いた開環共重合体の水素添加物であってもよく、シクロオレフィンと鎖状オレフィンおよび/またはビニル基を有する芳香族化合物などとの付加共重合体であってもよい。また、主鎖あるいは側鎖に極性基が導入されているものも有効である。
【0059】
市販の熱可塑性シクロオレフィン系樹脂としては、ドイツのTicona社から販売されている「Topas」、JSR(株)から販売されている「アートン」、日本ゼオン(株)から販売されている「ゼオノア(ZEONOR)」および「ゼオネックス(ZEONEX)」、三井化学(株)から販売されている「アペル」(いずれも商品名)などがあり、これらを好適に用いることができる。このようなシクロオレフィン系樹脂を製膜して、シクロオレフィン系樹脂フィルムを得ることができる。製膜方法としては、溶剤キャスト法、溶融押出法など、公知の方法が適宜用いられる。また、たとえば、積水化学工業(株)から販売されている「エスシーナ」および「SCA40」、(株)オプテスから販売されている「ゼオノアフィルム」、JSR(株)から販売されている「アートンフィルム」(いずれも商品名)などの製膜されたシクロオレフィン系樹脂フィルムも市販されており、これらも好適に使用することができる。
【0060】
延伸されたシクロオレフィン系樹脂フィルムからなる光学補償フィルムの厚みは、厚すぎると、加工性に劣るものとなり、また、透明性が低下したり、偏光板の薄型軽量化において不利であることなどから、20〜80μm程度であるのが好ましい。
【0061】
次に、本発明の偏光板の製造方法および本発明の偏光板を構成するフィルムの貼合に用いる接着剤について説明する。本発明の偏光板は、偏光フィルムと拡散フィルムとを、接着剤を用いて貼合することにより製造される。この際、拡散フィルムは、その透明樹脂層表面が接着剤層に接するように(透明樹脂層表面が偏光フィルムに対向するように)、偏光フィルム上に積層される。偏光フィルムにおける拡散フィルムが貼合される面とは反対側の面に、保護フィルムや光学補償フィルムなどの透明フィルムを積層する場合、偏光フィルムと当該透明フィルムとは、同様に、接着剤を用いて貼合される。
【0062】
偏光フィルムと拡散フィルムとの貼合には、エポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物からなる接着剤が好ましく用いられる。このような接着剤を用いることにより、偏光板の外観に悪影響を及ぼすことなく、偏光フィルムと拡散フィルムとを高い接着強度で接着することができる。偏光フィルムと保護フィルムまたは光学補償フィルムとの貼合に用いられる接着剤としては、エポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物からなる接着剤のほか、接着剤成分としてポリビニルアルコール系樹脂またはウレタン樹脂を含有する水系接着剤等の従来公知の接着剤を用いることも可能であるが、偏光フィルムと拡散フィルムとの貼合に用いる接着剤と同種の接着剤を用いると、生産効率の向上および原材料種の削減を図ることができる。
【0063】
ここで、エポキシ樹脂とは、分子内に平均2個以上のエポキシ基を有し、当該エポキシ基を伴う重合反応により硬化する化合物をいう。なお、この分野での慣例に従い、当該化合物がモノマーである場合であってもエポキシ樹脂と称する。
【0064】
上記硬化性樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂としては、耐候性、屈折率、およびカチオン重合性等の観点から、分子内に芳香環を含まないエポキシ樹脂が好適に用いられる。分子内に芳香環を含まないエポキシ樹脂としては、水素化エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂および脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0065】
水素化エポキシ樹脂は、芳香族エポキシ樹脂を触媒の存在下、加圧下で選択的に水素化反応を行なうことにより得ることができる。芳香族エポキシ樹脂としては、たとえば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェールFのジグリシジルエーテルおよびビスフェノールSのジグリシジルエーテル等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂およびヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型のエポキシ樹脂;テトラヒドロキシジフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル、およびエポキシ化ポリビニルフェノール等の多官能型のエポキシ樹脂等が挙げられる。これら芳香族エポキシ樹脂の核水添物が水素化エポキシ樹脂となる。なかでも、水素化エポキシ樹脂として、水素化したビスフェノールAのグリシジルエーテルを用いることが好ましい。
【0066】
また、上記脂肪族エポキシ樹脂としては、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルを挙げることができる。より具体的には、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル;1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル;グリセリンのトリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル;ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル;プロピレングリコールのジグリシジルエーテル;エチレングリコール、プロピレングリコール、およびグリセリンのような脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0067】
また、脂環式エポキシ樹脂とは、脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に少なくとも1個有するエポキシ樹脂を意味する。「脂環式環に結合したエポキシ基」とは、下記式で示される構造を有しており、式中、mは2〜5の整数である。
【0068】
【化1】

【0069】
したがって、脂環式エポキシ樹脂とは、上記式で示される構造を分子内に少なくとも1個有する化合物である。より具体的には、上記式における(CH2m中の1個または複数個の水素を取り除いた形の基が他の化学構造に結合した化合物が、脂環式エポキシ樹脂となり得る。(CH2m中の1個または複数個の水素は、メチル基やエチル基等の直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。
【0070】
以上のような脂環式エポキシ樹脂のなかでも、オキサビシクロヘキサン環(上記式においてm=3のもの)や、オキサビシクロヘプタン環(上記式においてm=4のもの)を有する脂環式エポキシ樹脂は、偏光フィルムと拡散フィルムとの接着強度に優れることからより好ましく用いられる。以下に、本発明において好ましく用いられる脂環式エポキシ樹脂の構造を具体的に例示するが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0071】
(a)次式(I)で示されるエポキシシクロヘキシルメチル エポキシシクロヘキサンカルボキシレート類:
【0072】
【化2】

【0073】
(式中、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表す。)
(b)次式(II)で示されるアルカンジオールのエポキシシクロヘキサンカルボキシレート類:
【0074】
【化3】

【0075】
(式中、R3およびR4は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表し、nは2〜20の整数を表す。)
(c)次式(III)で示されるジカルボン酸のエポキシシクロヘキシルメチルエステル類:
【0076】
【化4】

【0077】
(式中、R5およびR6は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表し、pは2〜20の整数を表す。)
(d)次式(IV)で示されるポリエチレングリコールのエポキシシクロヘキシルメチルエーテル類:
【0078】
【化5】

【0079】
(式中、R7およびR8は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表し、qは2〜10の整数を表す。)
(e)次式(V)で示されるアルカンジオールのエポキシシクロヘキシルメチルエーテル類:
【0080】
【化6】

【0081】
(式中、R9およびR10は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表し、rは2〜20の整数を表す。)
(f)次式(VI)で示されるジエポキシトリスピロ化合物:
【0082】
【化7】

【0083】
(式中、R11およびR12は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表す。)
(g)次式(VII)で示されるジエポキシモノスピロ化合物:
【0084】
【化8】

【0085】
(式中、R13およびR14は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表す。)
(h)次式(VIII)で示されるビニルシクロヘキセンジエポキシド類:
【0086】
【化9】

【0087】
(式中、R15は、水素原子または炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表す。)
(i)次式(IX)で示されるエポキシシクロペンチルエーテル類:
【0088】
【化10】

【0089】
(式中、R16およびR17は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表す。)
(j)次式(X)で示されるジエポキシトリシクロデカン類:
【0090】
【化11】

【0091】
(式中、R18は、水素原子または炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を表す。)
上記例示した脂環式エポキシ樹脂の中でも、次の脂環式エポキシ樹脂は、市販されているか、またはその類似物であって、入手が比較的容易である等の理由から、好ましく用いられる。
【0092】
(A)7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−カルボン酸と(7−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)メタノールとのエステル化物〔上記式(I)において、R1=R2=Hの化合物〕、
(B)4−メチル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−カルボン酸と(4−メチル−7−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)メタノールとのエステル化物〔上記式(I)において、R1=4−CH3、R2=4−CH3の化合物〕、
(C)7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−カルボン酸と1,2−エタンジオールとのエステル化物〔上記式(II)において、R3=R4=H、n=2の化合物〕、
(D)(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)メタノールとアジピン酸とのエステル化物〔上記式(III)において、R5=R6=H、p=4の化合物〕、
(E)(4−メチル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)メタノールとアジピン酸とのエステル化物〔上記式(III)において、R5=4−CH3、R6=4−CH3、p=4の化合物〕、
(F)(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)メタノールと1,2−エタンジオールとのエーテル化物〔上記式(V)において、R9=R10=H、r=2の化合物〕。
【0093】
また、上記脂肪族エポキシ樹脂としては、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルを挙げることができる。より具体的には、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル;1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル;グリセリンのトリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル;ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル;プロピレングリコールのジグリシジルエーテル;エチレングリコール、プロピレングリコール、およびグリセリンのような脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0094】
硬化性樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0095】
硬化性樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂のエポキシ当量は、通常、30〜3,000g/当量、好ましくは50〜1,500g/当量の範囲である。エポキシ当量が30g/当量を下回ると、硬化後の接着剤層の可撓性が低下したり、接着強度が低下したりする可能性がある。一方、3,000g/当量を超えると、他の成分との相溶性が低下する可能性がある。
【0096】
エポキシ樹脂の硬化反応は、反応性の観点から、カチオン重合であることが好ましく、したがって、硬化性樹脂組成物には、カチオン重合開始剤を配合ことが好ましい。カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線の照射もしくは加熱によって、カチオン種またはルイス酸を発生し、エポキシ基の重合反応を開始させる。いずれのタイプのカチオン重合開始剤であっても、潜在性が付与されていることが、作業性の観点から好ましい。カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線の照射によりカチオン種またはルイス酸を発生する光カチオン重合開始剤、および、加熱によりカチオン種またはルイス酸を発生する熱カチオン重合開始剤に大別される。
【0097】
以下、光カチオン重合開始剤について説明する。光カチオン重合開始剤を用いると、常温での接着剤の硬化が可能となるため、偏光フィルムの耐熱性あるいは膨張による歪を考慮する必要が減少し、密着性良く拡散フィルムを偏光フィルムに接着することができる。また、光カチオン重合開始剤は、光で触媒的に作用するため、エポキシ樹脂に混合しても保存安定性や作業性に優れる。光カチオン重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、たとえば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩、および鉄−アレン錯体等を挙げることができる。
【0098】
芳香族ジアゾニウム塩としては、たとえば、ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、およびベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロボレート等が挙げられる。
【0099】
芳香族ヨードニウム塩としては、たとえば、ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、およびジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0100】
芳香族スルホニウム塩としては、たとえば、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4,4’−ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン ヘキサフルオロアンチモネート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−フェニルカルボニル−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、および4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4’−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0101】
また、鉄−アレン錯体としては、たとえば、キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロアンチモネート、クメン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、およびキシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)−トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイド等が挙げられる。
【0102】
これらの光カチオン重合開始剤は、市販品を容易に入手することが可能であり、たとえば、それぞれ商品名で、「カヤラッド PCI−220」、「カヤラッド PCI−620」(以上、日本化薬(株)製)、「UVI−6990」(ユニオンカーバイド社製)、「アデカオプトマー SP−150」、「アデカオプトマー SP−170」(以上、(株)ADEKA製)、「CI−5102」、「CIT−1370」、「CIT−1682」、「CIP−1866S」、「CIP−2048S」、「CIP−2064S」(以上、日本曹達(株)製)、「DPI−101」、「DPI−102」、「DPI−103」、「DPI−105」、「MPI−103」、「MPI−105」、「BBI−101」、「BBI−102」、「BBI−103」、「BBI−105」、「TPS−101」、「TPS−102」、「TPS−103」、「TPS−105」、「MDS−103」、「MDS−105」、「DTS−102」、「DTS−103」(以上、みどり化学(株)製)、「PI−2074」(ローディア社製)等が挙げられる。なかでも、日本曹達(株)製の「CI−5102」は、好ましい光カチオン重合開始剤の一つである。
【0103】
上記光カチオン重合開始剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。中でも、特に芳香族スルホニウム塩は、300nm以上の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械的強度や接着強度を有する硬化物を与えることができるため、好ましく用いられる。
【0104】
光カチオン重合開始剤の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、通常0.5〜20重量部であり、好ましくは1重量部以上、また好ましくは15重量部以下である。配合量がエポキシ樹脂100重量部に対して0.5重量部を下回ると、硬化が不十分になり、機械強度や接着強度が低下する。また、配合量がエポキシ樹脂100重量部に対して20重量部を超えると、硬化物中のイオン性物質が増加することで硬化物の吸湿性が高くなり、偏光板の耐久性能が低下する可能性がある。
【0105】
硬化性樹脂組成物に光カチオン重合開始剤が添加される場合、さらに、必要に応じて光増感剤を併用することができる。光増感剤を使用することで、反応性が向上し、硬化物の機械強度や接着強度を向上させることができる。光増感剤としては、たとえば、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾおよびジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられる。具体的な光増感剤としては、たとえば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルおよびα,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン等のベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンおよび4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;2−クロロチオキサントンおよび2−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノンおよび2−メチルアントラキノン等のアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドンおよびN−ブチルアクリドン等のアクリドン誘導体;その他、α,α−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物およびハロゲン化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの光増感剤はそれぞれ単独で使用してもよいし、混合して使用してもよい。光増感剤の含有量は、硬化性樹脂組成物100重量部中、0.1〜20重量部の範囲であることが好ましい。
【0106】
次に、熱カチオン重合開始剤について説明する。加熱によりカチオン種またはルイス酸を発生する熱カチオン重合開始剤としては、ベンジルスルホニウム塩、チオフェニウム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミドなどを挙げることができる。これらの開始剤は、市販品を容易に入手することが可能であり、たとえば、いずれも商品名で、「アデカオプトン CP77」および「アデカオプトン CP66」(以上、旭電化工業(株)製)、「CI−2639」および「CI−2624」(以上、日本曹達(株)製)、「サンエイド SI−60L」、「サンエイド SI−80L」および「サンエイド SI−100L」(以上、三新化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0107】
以上説明した光カチオン重合と熱カチオン重合を併用することも、有用な技術である。エポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物は、さらにオキセタン類やポリオール類など、カチオン重合を促進する化合物を含有してもよい。
【0108】
オキセタン類は、分子内に4員環エーテル構造を有する化合物であり、たとえば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、およびフェノールノボラックオキセタン等が挙げられる。これらのオキセタン類は、市販品を容易に入手することが可能であり、たとえば、いずれも商品名で、「アロンオキセタン OXT−101」、「アロンオキセタン OXT−121」、「アロンオキセタン OXT−211」、「アロンオキセタン OXT−221」、「アロンオキセタン OXT−212」(いずれも東亞合成(株)製)等を挙げることができる。オキセタン類の配合量は特に制限されるものではないが、硬化性樹脂組成物中、通常5〜95重量%、好ましくは30〜70重量%である。
【0109】
ポリオール類としては、フェノール性水酸基以外の酸性基が存在しないものが好ましく、たとえば、水酸基以外の官能基を有しないポリオール化合物、ポリエステルポリオール化合物、ポリカプロラクトンポリオール化合物、フェノール性水酸基を有するポリオール化合物、ポリカーボネートポリオールなどを挙げることができる。これらのポリオール類の分子量は、通常48以上、好ましくは62以上、さらに好ましくは100以上、また好ましくは1,000以下である。これらポリオール類の配合量は、硬化性樹脂組成物中、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。
【0110】
さらに、本発明の効果を損なわない限り、接着剤として用いられる硬化性樹脂組成物には、その他の添加剤、たとえば、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、増感剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤などを配合することができる。イオントラップ剤には、たとえば、粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、カルシウム系、チタン系及びこれらの混合系などの無機化合物が包含され、酸化防止剤には、たとえば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤などが包含される。
【0111】
偏光フィルムと拡散フィルムとの貼合にあたっては、まず、上記エポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物からなる接着剤を偏光フィルムおよび/または拡散フィルムの貼合面に塗工する。接着剤の塗工方法に特別な限定はなく、たとえば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、コンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式が利用できる。また、各塗工方式には各々最適な粘度範囲があるため、溶剤を用いて粘度調整を行なうことも有用な技術である。このための溶剤には、偏光フィルムの光学性能を低下させることなく、硬化性樹脂組成物を良好に溶解するものが用いられるが、その種類にも特別な限定はない。たとえば、トルエンに代表される炭化水素類、酢酸エチルに代表されるエステル類などの有機溶剤が使用できる。塗工された硬化性樹脂組成物からなる層の厚さは、通常0.1〜20μmであり、好ましくは0.2〜10μm、さらに好ましくは0.5〜5μmである。
【0112】
未硬化の接着剤層を介して偏光フィルムに拡散フィルムが貼合された積層フィルムには、次いで活性エネルギー線を照射するか、または加熱することにより、硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を硬化させ、拡散フィルムを偏光フィルム上に固着させる。硬化後の接着剤層の厚さは、通常0.1〜20μmであり、好ましくは0.2〜10μm、さらに好ましくは0.5〜5μmである。
【0113】
なお、偏光フィルムにおける拡散フィルムが積層される側とは反対側に保護フィルムまたは光学補償フィルムを貼合する場合にも、上記と同様して行なうことができる。
【0114】
拡散フィルム、保護フィルム、光学補償フィルムの偏光フィルムへの貼合に先立ち、これらフィルムの貼合面に、コロナ処理、プライマ処理、アンカーコーティング処理などの易接着処理が施されてもよい。
【0115】
活性エネルギー線の照射により重合硬化を行なう場合、用いる光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する、たとえば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどを用いることができる。硬化性樹脂組成物への光照射強度は、硬化性樹脂組成物毎に決定されるものであって、特に限定されないが、開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜100mW/cm2であることが好ましい。硬化性樹脂組成物への光照射強度が0.1mW/cm2未満であると、反応時間が長くなりすぎ、100mW/cm2を超えると、ランプから輻射される熱および硬化性樹脂組成物の重合時の発熱により、硬化性樹脂組成物の黄変や偏光フィルムの劣化を生じる可能性がある。硬化性樹脂組成物への光照射時間は、硬化性樹脂組成物毎に制御されるものであって、やはり特に限定されないが、照射強度と照射時間の積として表される積算光量が10〜5,000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。硬化性樹脂組成物への積算光量が10mJ/cm2未満であると、開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、接着剤層の硬化が不十分となる可能性があり、一方でその積算光量が5,000mJ/cm2を超えると、照射時間が非常に長くなり、生産性向上には不利なものとなる。
【0116】
熱により重合を行なう場合は、一般的に知られた方法で加熱することができ、その条件なども特に限定されないが、通常、硬化性樹脂組成物に配合された熱カチオン重合開始剤がカチオン種やルイス酸を発生する温度以上で加熱が行なわれ、通常50〜200℃にて実施される。
【0117】
なお、活性エネルギー線の照射または加熱のいずれの条件で硬化させる場合でも、偏光フィルムの偏光度、透過率および色相、また拡散フィルム、保護フィルムおよび光学補償フィルムの透明性といった、偏光板の諸機能が低下しない範囲で硬化させることが好ましい。
【0118】
本発明の偏光板において、偏光フィルムにおける拡散フィルムが積層される側とは反対側の面(保護フィルムまたは光学補償フィルムが積層される場合には、そのフィルム上)には、粘着剤層を有することが好ましい。このような粘着剤層に用いられる粘着剤としては、従来公知の適宜の粘着剤を特に制限なく用いることができ、たとえばアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。中でも、透明性、粘着力、信頼性、リワーク性などの観点から、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。粘着剤層は、このような粘着剤を、たとえば有機溶剤溶液とし、それを基材フィルム(たとえば偏光フィルム等)上にダイコーターやグラビアコーターなどによって塗布し、乾燥させる方法によって設けることができる他、離型処理が施されたプラスチックフィルム(セパレートフィルムと呼ばれる)上に形成されたシート状粘着剤を基材フィルムに転写する方法によっても設けることができる。粘着剤層の厚みについても特に制限はないが、一般に2〜40μmの範囲内であることが好ましい。
【0119】
偏光板の粘着剤層が形成された面に、当該粘着剤層を介して光学機能性フィルムが貼着されていてもよい。光学機能性フィルムとしては、たとえば、基材表面に液晶性化合物が塗布され、配向されている光学補償フィルム;ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光フィルム;ポリカーボネート系樹脂からなる位相差フィルム;環状ポリオレフィン系樹脂からなる位相差フィルム、表面に凹凸形状を有する防眩機能付きフィルム;表面反射防止機能付きフィルム;表面に反射機能を有する反射フィルム;および反射機能と透過機能とを併せ持つ半透過反射フィルムなどが挙げられる。基材表面に液晶性化合物が塗布され、配向されている光学補償フィルムに相当する市販品としては、「WVフィルム」(富士フィルム(株)製)、「NHフィルム」(新日本石油(株)製)、「NRフィルム」(新日本石油(株)製)などが挙げられる。ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光フィルムに相当する市販品としては、たとえば「DBEF」(3M社製、日本では住友スリーエム(株)から入手できる)、「APF」(3M社製、日本では住友スリーエム(株)から入手できる)などが挙げられる。また、環状ポリオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムに相当する市販品としては、たとえば「アートンフィルム」(JSR(株)製)、「エスシーナ」(積水化学工業(株)製)、「ゼオノアフィルム」((株)オプテス製)などが挙げられる。
【0120】
本発明の偏光板は、液晶表示装置が備える液晶セルとバックライトとの間に配置される背面側偏光板として好適に用いることができる。
【0121】
<液晶パネルおよび液晶表示装置>
本発明の液晶パネルは、液晶セルと該液晶セル上に積層される上記本発明の偏光板とを備えるものであり、液晶セルと偏光板とは、偏光フィルムにおける拡散フィルムが積層される面とは反対側の面が液晶セルに対向するように(すなわち、拡散フィルムが液晶パネルの外面を形成するように)、粘着剤層を介して貼合される。このような本発明の液晶パネルは、その拡散フィルムがバックライト側となるように(本発明の偏光板が液晶セルとバックライトとの間に配置されるように)液晶表示装置に適用される。本発明の液晶パネルにおいて、液晶セルの前面側(液晶表示装置に適用した際の視認側であり、本発明の偏光板が積層される側とは反対側)にも偏光板を設けるが、この液晶セルの前面側に設ける偏光板については特に制限されず、従来公知の適宜の偏光板を用いることができる。たとえば、防眩処理、ハードコート処理、反射防止処理が施された偏光板などが挙げられる。また、偏光フィルムの片面にポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリルフィルム、ポリプロピレンフィルムが積層された偏光板でもよい。
【0122】
本発明の液晶表示装置は、偏光板の拡散フィルムがバックライト側となるように配置された液晶パネルを備えるものである。このような本発明の液晶表示装置は、本発明の偏光板が液晶セルの背面側に貼合された液晶パネルを備えることにより、偏光フィルムと拡散フィルムとの密着強度に優れており、過酷な環境下においても高い耐久性を有するとともに、薄肉化に対応しつつ十分な機械的強度を有している。また、液晶パネルの背面側に本発明の偏光板の拡散フィルムを配置させていることから、液晶パネルとバックライトシステムとの密着を防止でき、更に視認性が改善されている。
【0123】
本発明の液晶表示装置において、上記液晶パネル以外の構成については、従来公知の液晶表示装置の適宜の構成を採用することができ、たとえば、バックライト、光拡散板および上記本発明の液晶パネルをこの順で備える構成、および、バックライト、光拡散板、光拡散シートおよび上記本発明の液晶パネルをこの順で備える構成を挙げることができる。前者の場合、液晶パネルは、偏光板の拡散フィルムが光拡散板と対向するように配置され、後者の場合、液晶パネルは、偏光板の拡散フィルムが光拡散シートと対向するように配置される。また、バックライトと液晶パネルとの間に、集光シート等の他の光学部材が必要に応じて配置されていてもよい。
【実施例】
【0124】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、例中、含有量ないし使用量を表す%および部は、特記ない限り、重量基準である。
【0125】
以下の例において、拡散フィルムおよび偏光板のヘイズ、ならびに拡散フィルムにおけ偏光フィルムに貼合される側の表面の算術平均高さPaは、次の方法により測定したものである。
【0126】
(ヘイズ)
拡散フィルムのヘイズは、その透明樹脂層面を光学的に透明な粘着剤またはグリセリンを用いてガラス基板に貼合し、JIS K 7136に準拠した(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメーター「HM−150」型を用いて測定した。光は拡散フィルム側(ガラス基板側とは反対側)より入射した。また、偏光板のヘイズは、その保護フィルム面を光学的に透明な粘着剤またはグリセリンを用いてガラス基板に貼合し、JIS K 7136に準拠した(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメーター「HM−150」型を用いて測定した。光は偏光板(ガラス基板側とは反対側)より入射した。
【0127】
(算術平均高さPa)
拡散フィルムにおける偏光フィルムに貼合される側の表面の形状を、次の方法により測定した。すなわち、拡散フィルムの測定すべき面が表面となるように、粘着剤を用いてガラス基板に貼合した後、共焦点顕微鏡(Sensofar社製「PLμ2300」)を用いて、表面形状の三次元情報を得た。当該測定は、200μm×200μm以上の領域を3点以上行ない、その平均値をもって測定値とした。測定の際、対物レンズの倍率は50倍とした。ついで、当該測定データをもとに、JIS B 0601に準拠した計算により、断面曲線における算術平均高さPaを求めた。
【0128】
<実施例1>
(A)偏光フィルムの作製
平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上のポリビニルアルコールからなる厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬した。引き続き、8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを得た。延伸は、主に、ヨウ素染色およびホウ酸処理の工程で行ない、トータル延伸倍率は5.3倍であった。
【0129】
(B)拡散フィルムの作製
メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=96/4(重量比)の共重合体(屈折率1.49)70重量部にアクリルゴム粒子を30重量部含有させたアクリル系樹脂組成物、ならびにメタクリル酸メチル/スチレン共重合体ビーズ(屈折率1.505、重量平均粒子径8μm)を、該アクリル系樹脂組成物100重量部に対してビーズが15重量部となるようにヘンシェルミキサーで混合した後、第1の押出機(スクリュー径65mm、一軸、ベント付き(東芝機械(株)製))にて溶融混練させ、フィードブロックに供給した。また、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=96/4(重量比)の共重合体(屈折率1.49)70重量部にアクリルゴム粒子を30重量部含有させたアクリル系樹脂組成物を第2の押出機(スクリュー径45mm、一軸、ベント付き(日立造船(株)製))にて溶融混練し、フィードブロックに供給した。第1の押出機からフィードブロックに供給される樹脂が光拡散層(中間層)となり、第2の押出機からフィードブロックに供給される樹脂が透明樹脂層(表層:両面)となるように、265℃で共押出成形を行ない、85℃に設定したロールユニットを介して、厚さ80μm(中間層50μm、表層15μm×2)の3層構造を持つ拡散フィルムを作製した。得られた拡散フィルムのヘイズは、15.0%であった。
【0130】
(C)接着剤の調製
ジャパンエポキシレジン(株)製の水素化エポキシ樹脂である商品名「エピコート YX8000」(核水添ビスフェノールAのジグリシジルエーテルであって、約205g/当量のエポキシ当量を有するもの)10.0g、日本曹達(株)製の光カチオン重合開始剤である商品名「CI5102」4.0g、および、日本曹達(株)製の光増感剤である商品名「CS7001」1.0gを、100mlのディスポカップに量り取り、混合・脱泡して、エポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物からなる接着剤を調製した。
【0131】
(D)偏光板の作製
上記(A)で得られた偏光フィルムの一方の面に上記(B)で作製した拡散フィルムを、また、偏光フィルムのもう一方の面に、保護フィルムとしてのノルボルネン系樹脂フィルム((株)オプテスの「ゼオノアフィルム」)を、それぞれ(C)で得た紫外線硬化性接着剤を介して貼合し、ノルボルネン系樹脂フィルム面より紫外線を照射して、偏光板を得た。得られた偏光板のヘイズは、15.2%であった。
【0132】
<実施例2>
光拡散層に含有させる微粒子として、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体ビーズ(屈折率1.51、重量平均粒子径4μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして偏光板を得た。拡散フィルムのヘイズは、30.7%であり、偏光板のヘイズは、31.3%であった。
【0133】
<比較例1>
拡散フィルムを、光拡散層(厚み30μm)、透明樹脂層(厚み50μm)の2層構造とし、その光拡散層が接着剤層と接するように偏光フィルムに貼合したこと以外は実施例1と同様にして偏光板を得た。拡散フィルムのヘイズは、74.0%であり、偏光板のヘイズは、17.3%であった。
【0134】
<比較例2>
拡散フィルムに、厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルム(フジフィルム製)の片面へサンドブラストにて粗面化処理をしたものを用い、この粗面化処理をした面の逆面に偏光フィルムを接着して偏光板を得た。拡散フィルムのヘイズは、67.9%であり、偏光板のヘイズは、68.0%であった。
【0135】
〔偏光板の評価〕
上記実施例および比較例より得られた偏光板について、外観、耐温水性および液晶表示装置としたときの視認性を評価した。結果を表1に示す。評価方法および評価基準は次のとおりである。また、表1に、拡散フィルムにおけ偏光フィルムに貼合される側の表面の算術平均高さPaを併せて示した。
【0136】
(外観)
接着剤層と拡散フィルムとの界面に貼合気泡が見られない場合をA、貼合気泡が見られる場合をBとした。
【0137】
(耐温水性)
偏光板を60℃に加熱した温水に8時間浸漬させ、著しい変色や変形がないか観察した。変色および変形が見られない場合をA、変色または変形が見られる場合をBとした。
【0138】
(視認性)
偏光板のノルボルネン系樹脂フィルム面に、厚み25μmのアクリル系粘着剤の層を設け、ついで、この偏光板をその粘着剤層を介して液晶セルの背面に配置した。液晶セルの前面には市販の偏光板を配置して液晶パネルを組み立て、これを市販の光拡散板、バックライトと組み合わせて液晶表示装置を作製した。この液晶表示装置の表示を目視にて観察した。表示画像が明るく、視認性は良好である場合をA、表示画像が比較的暗く、視認性が不良である場合をBとした。
【0139】
【表1】

【0140】
表1に示されるように、実施例1および2の偏光板は、接着剤層での貼合気泡が無く、外観が良好であった。また、実施例1および2のいずれの偏光板も耐温水試験にて8時間浸漬させても、偏光フィルムの色が変色したり、偏光板が著しく変形したりすることはなかった。さらに、実施例1および2の偏光板を用いて作製した液晶表示装置の表示を目視にて観察したところ、いずれも正面から見て明るい画像が得られ、視認性は良好であった。
【0141】
一方、比較例1の偏光板は、接着剤層と拡散フィルムとの界面に気泡が多数見られた。また、この偏光板を用いて作製した液晶表示装置は、表示画像が暗く、視認性が著しく不良であった。
【0142】
比較例2の偏光板は、貼合気泡もなく良好な外観であった。しかし、60℃の温水に8時間浸漬すると、トリアセチルセルロースが著しく変形し、偏光フィルムの色も若干変色した。また、この耐温水試験後のサンプルを用いて作製した液晶表示装置の表示を観察すると、黒表示の際に白っぽい表示になり、コントラストが著しく低かった。
【0143】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0144】
100,200 偏光板、101,201 偏光フィルム、102,202 拡散フィルム、103,203 透明樹脂層、104,204 光拡散層、105,205 微粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素または二色性染料が吸着配向された一軸延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルムと、前記偏光フィルムの少なくとも一方の面に、接着剤層を介して積層されるヘイズが1%以上である拡散フィルムとを備え、
前記拡散フィルムは、透明樹脂からなる少なくとも1つの透明樹脂層と、透明バインダ樹脂および前記透明バインダ樹脂とは異なる屈折率を有する微粒子を含有する少なくとも1つの光拡散層とを含む多層構造を有し、
前記透明樹脂および前記透明バインダ樹脂は、いずれもアクリル系樹脂であり、
前記拡散フィルムは、前記透明樹脂層の表面が前記接着剤層に接するように前記偏光フィルムに積層される、液晶表示装置が備える液晶セルとバックライトとの間に配置されるための偏光板。
【請求項2】
前記透明樹脂層における前記接着剤層に接する表面の算術平均高さPaは、0.5μm以下である請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記拡散フィルムは、2つの透明樹脂層と、前記2つの透明樹脂層の間に配置される光拡散層との3層構造を有する請求項1または2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記拡散フィルムのヘイズは、5%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の偏光板。
【請求項5】
前記偏光フィルムにおける前記拡散フィルムが積層される面とは反対側の面に積層される光学補償フィルムまたは保護フィルムを備える請求項1〜4のいずれかに記載の偏光板。
【請求項6】
液晶セルと前記液晶セル上に積層される請求項1〜5のいずれかに記載の偏光板とを備える液晶パネルであって、
前記偏光板は、前記偏光フィルムにおける前記拡散フィルムが積層される面とは反対側の面が、前記液晶セルに対向するように配置される液晶パネル。
【請求項7】
バックライト、光拡散板および請求項6に記載の液晶パネルをこの順で備える液晶表示装置であって、
前記液晶パネルは、前記偏光板の前記拡散フィルムが前記光拡散板と対向するように配置される液晶表示装置。
【請求項8】
バックライト、光拡散板、光拡散シートおよび請求項6に記載の液晶パネルをこの順で備える液晶表示装置であって、
前記液晶パネルは、前記偏光板の前記拡散フィルムが前記光拡散シートと対向するように配置される液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−191090(P2010−191090A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34180(P2009−34180)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】