説明

偏光板、偏光板の製造方法及び画像表示装置

【課題】長期の過酷な状態に保存された場合、又は高温、高温高湿条件下で保存された場合にも、偏光板の反りを抑制することができ、周辺部光漏れが低減し、耐久性に優れ、容易に液晶セルから剥離できる偏光板とその製造方法、及び画像表示装置を提供する。
【解決手段】偏光板保護フィルム、偏光子、及び粘着剤層2a、2bを有する偏光板1において、該粘着剤層2a、2bが2層以上からなり、少なくとも2層の互いに接する粘着剤層2a、2bの界面に、3次元のパターンが形成された構造を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は偏光板とその製造方法、及び画像表示装置に関するものである。とくに、耐久性、剥離性に優れ、周辺部光漏れが少ない粘着剤付き偏光板とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報産業の著しい発達に伴って、各所で表示装置が活用されるようになっている。特に液晶表示装置の発達はめざましく、様々な機器に搭載されるようになった。
これら液晶表示装置において、設置環境での表示品質の安定性は重要な項目となっている。
【0003】
一般的に、偏光板には片側に粘着剤層が存在し、粘着剤層を介して液晶パネルに固定されている。
従来より、偏光板は高温、又は高温高湿下で保存され場合に寸度変化が生じるため、パネルが偏光板の寸度変化に追随できず反りが生じたり、粘着層と偏光板間で発生した応力により偏光板内に不要な位相差が発現する為光漏れが発生するという課題が存在している。
この場合、全面を柔らかい粘着層とすると応力緩和には都合がよいが、密着性が不足して耐久性に劣り、発泡や剥がれいう問題が生じる。一方で、硬い粘着層では応力緩和が不十分となる。
【0004】
応力緩和と耐久性を両立させるために、弾性率の異なる2種類の粘着剤層を積層することが開示されている。
例えば、2種類のTgの異なる粘着剤層を積層することで低温での反りを抑制し耐久性を向上させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、2層の粘着剤層の接する界面は平滑であるため粘着剤層同士の接着力は非常に弱く、耐久性評価中に粘着剤層の接する界面で剥がれや発泡が生じる場合があった。また、液晶セルに光学部材を貼り合せる工程で、貼り合せ位置がずれたり異物を噛み込んだ場合に、液晶セルから光学部材を剥離し再度貼り合せる必要があるが、液晶セルから光学部材を剥離する際に、粘着剤層の接する界面で剥離してしまう場合があった。さらに、パネルの薄型化が進む中、積層により粘着剤層を厚くすることは望ましくないため、積層する場合、各粘着剤層の厚みを通常の半分以下にする必要があるが、粘着剤層が薄くなることで応力に対する変形量が減り、その結果、2層の粘着剤層の界面、及び粘着剤層とパネルが接する界面に歪が集中して剥がれが生じる場合があった。
【0005】
また、一枚の偏光板の面内で貯蔵弾性率が異なる粘着剤層を、偏光板の縁部分の貯蔵弾性率が中央付近の貯蔵弾性率に対して低くなるようインクジェット法を用いて形成し、周辺部の光漏れを低減する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、インクジェット法は形成パターンを自由にコントロールできるメリットを有する反面、パネルの大型化が進む中、パターンの形成には多量の時間を要することが予想され、コストアップするという欠点が存在する。また、新しい装置を導入するにあたって巨額の設備投資が必要とされる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−53531号公報
【特許文献2】特開2006−47741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、大型TVでも耐久性、再剥離性に優れ、周辺部光漏れが著しく低減された偏光板とその製造方法、及び画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構成により前記目的を達成することに成功した。
即ち、本発明は以下の通りである。
(1)偏光板保護フィルム、偏光子、及び粘着剤層を有する偏光板において、該粘着剤層が2層以上からなり、少なくとも2層の互いに接する粘着剤層の界面に、3次元のパターンが形成された構造を有することを特徴とする偏光板。
(2)前記3次元のパターンが規則的であることを特徴とする上記(1)に記載の偏光板。
(3)界面に3次元のパターンが形成された構造を有する互いに接する2層の粘着剤層において、各粘着剤層を介して接着面積10mm×25mmで基板に固定し、25℃、60%RHの下で1kgの荷重を1時間かけるクリープ試験から得られる各粘着剤層のひずみ量が異なり、その差が、2倍以上1000倍以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)の偏光板。
(4)前記3次元のパターンがライン状パターンの繰り返しであり、ひとつのライン状パターンの幅が1μm以上100mm以下であり、隣り合うパターン間の距離がパターンの高さ以上であることを特徴とする上記(1)〜(3)の偏光板。
(5)前記3次元のパターンが格子状パターンであり、格子のライン幅が1μm以上100mm以下であり、格子中央部の四角形の一辺がパターンの高さ以上であることを特徴とする上記(1)〜(3)の偏光板。
【0009】
(6)上記(1)〜(5)の偏光板を少なくとも1枚用いた画像表示装置。
(7)上記(1)〜(5)の偏光板の製造方法であって、少なくとも一種の粘着剤を3次元パターンが形成された基材に塗工し、該基材のパターンを粘着剤層に転写することにより少なくとも2層の互いに接する粘着剤層の界面の3次元パターンを形成することを特徴とする偏光板の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、大型TVでも耐久性、再剥離性に優れ、周辺部光漏れが著しく低減された偏光板とその製造方法、及び画像表示装置を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の偏光板を図面を参照しながら説明する。図1は、光学フィルム1の片面に粘着剤層2を有する偏光板である。粘着剤層2は2層以上の異なる粘着剤層を有する。図1は粘着剤層が2層の場合であり、光学フィルム1の側から粘着剤層2a及び粘着剤層2bを有する。粘着剤層2aと粘着剤層2bの界面は、凹凸のある3次元パターンが形成された構造を有する。粘着剤層2の光学フィルムから最も離れた面には、離型シート3を設けることができる。
【0012】
粘着剤層は2層以上であればよいが、2層以上の異なる粘着剤層は、それぞれ、クリープ試験から得られるひずみ量、貯蔵弾性率、Tg、ゲル分率、接着力、光弾性といった物性値を最適化することで設計することが出来る。
界面に3次元のパターンが形成された構造を有する互いに接する2層の粘着剤層のひずみ量に関しては、該2層の粘着剤層のそれぞれのひずみ量の差が、2倍以上1000倍以下であることが好ましい。すなわち、粘着剤層が上述の2a及び2bの2層の場合には、ひずみ量の差が、2倍以上1000倍以下であることが好ましい。ここで、本発明における粘着剤層のひずみ量は、各粘着剤層を介して接着面積10mm×25mmで基板に固定し、25℃、60%RHの環境下で1kgの荷重を1時間かけるクリープ試験から得られるひずみ量を意味する。
【0013】
粘着剤層2a及び2bの形成には適宜な粘着剤を用いることができ、その種類について特に制限はない。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などがあげられる。
【0014】
これら粘着剤のなかでも、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく使用される。このような特徴を示すものとしてアクリル系粘着剤が好ましく使用される。
【0015】
アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマーユニットを主骨格とするアクリル系ポリマーをベースポリマーとする。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルはアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基の炭素数2〜20のものを例示できる。例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソミリスチル、(メタ)アクリル酸ラウリル等を例示できる。
【0016】
前記アクリル系ポリマー中には、接着性や耐熱性の改善を目的に、1種類以上の共重合モノマーを共重合により導入することができる。そのような共重合モノマーの具体例としては、例えば、( メタ) アクリル酸2−ヒドロキシエチル、( メタ) アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、( メタ) アクリル酸4−ヒドロキシブチル、( メタ) アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、( メタ) アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、( メタ) アクリル酸10−ヒドロキシデシル、( メタ) アクリル酸12−ヒドロキシラウリルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル) −メチルアクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;( メタ) アクリル酸、カルボキシエチル( メタ)アクリレート、カルボキシペンチル( メタ) アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有モノマーなどがあげられる。
【0017】
また、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドやN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド、N−アクリロイルモルホリンなどのスクシンイミド系モノマーなども改質目的のモノマー例としてあげられる。
【0018】
さらに改質モノマーとして、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマーなども使用することができる。
【0019】
これらの中でも、光学フィルム用途として液晶セルへの接着性、耐久性の点から、ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーが好ましく用いられる。これらモノマーは、架橋剤との反応点になる。
【0020】
アクリル系ポリマーの平均分子量は特に制限されないが、重量平均分子量は、30万〜250万程度であるのが好ましい。前記アクリル系ポリマーの製造は、各種公知の手法により製造でき、たとえば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法等のラジカル重合法を適宜選択できる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用できる。反応温度は通常50〜80℃程度、反応時間は1〜8時間とされる。また、前記製造法の中でも溶液重合法が好ましく、アクリル系ポリマーの溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等が用いられる。溶液濃度は通常20〜80重量%程度とされる。
【0021】
ゴム系粘着剤のベースポリマーとしては、たとえば、天然ゴム、イソプレン系ゴム、スチレン−ブタジエン系ゴム、再生ゴム、ポリイソブチレン系ゴム、さらにはスチレン−イソプレン−スチレン系ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン系ゴム等があげられる。シリコーン系粘着剤のベースポリマーとしては、たとえば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等があげられ、これらベースポリマーもカルボキシル基等の官能基が導入されたものを使用することができる。
【0022】
また前記粘着剤は、架橋剤を含有する粘着剤組成物とするのが好ましい。粘着剤に配合できる多官能化合物としては、有機系架橋剤や多官能性金属キレートがあげられる。有機系架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、イミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、などがあげられる。これら架橋剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。有機系架橋剤としてはイソシアネート系架橋剤が好ましい。多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合又は配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等があげられる。共有結合又は配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等があげられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等があげられる。
【0023】
アクリル系ポリマー等のベースポリマーと架橋剤の配合割合は特に限定されないが、通常、ベースポリマー(固形分)100重量部に対して、架橋剤(固形分)0.001〜20重量部程度が好ましく、さらには0.01〜15重量部程度が好ましい。
【0024】
さらには、前記粘着剤には、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を、また本発明の目的を逸脱しない範囲で各種の添加剤を適宜に使用することもできる。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着剤層などとしても良い。
【0025】
添加剤としては、シランカップリング剤が好適であり、ベースポリマー(固形分)100重量部に対して、シランカップリング剤(固形分)0.001〜10重量部程度が好ましく、さらには0.005〜5重量部程度を配合するのが好ましい。シランカップリング剤としては、従来から知られているものを特に制限なく使用できる。たとえば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミンなどのアミノ基含有シランカップリング剤、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤を例示できる。
【0026】
偏光板は偏光子の片面又は両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
【0027】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、たとえば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0028】
前記偏光子の片面又は両面に設けられる透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護フィルムを形成するポリマーの例としてあげられる。透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0029】
保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄膜性などの点より1〜500μm程度である。特に、5〜200μmが好ましい。
【0030】
保護フィルムとしては、偏光特性や耐久性などの点より、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーが好ましい。特にトリアセチルセルロースフィルムが好適である。なお、偏光子の両側に保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いても良く、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いても良い。前記偏光子と保護フィルムとは通常、水系接着剤等を介して密着している。水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等を例示できる。
【0031】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであっても良い。
【0032】
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は他の部材の隣接層との密着防止を目的に施される。
【0033】
また、アンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性の場合もある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子(ビーズを含む)などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視覚などを拡大するための拡散層(視覚拡大機能など)を兼ねるものであっても良い。
【0034】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0035】
また光学フィルムとしては、例えば反射板や反透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視覚補償フィルム、輝度向上フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものがあげられる。これらは単独で光学フィルムとして用いることができる他、前記偏光板に、実用に際して積層して、1層又は2層以上用いることができる。
【0036】
特に、偏光板に更に反射板又は半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板又は半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板又は円偏光板、偏光板に更に視覚補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0037】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0038】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また、前記透明保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の保護フィルムは、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
【0039】
反射板は前記の偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
【0040】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵電源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵電源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0041】
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板又は円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光又は円偏光に変えたり、楕円偏光又は円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0042】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。
【0043】
位相差板としては、高分子素材を一軸又は二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板の厚さも特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。
【0044】
高分子素材としては、たとえば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース系重合体、ノルボルネン系樹脂、又はこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これらの高分子素材は延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
【0045】
液晶ポリマーとしては、たとえば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどをあげられる。主鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサー部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマーなどがあげられる。側鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサー部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどがあげられる。これらの液晶ポリマーは、たとえば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化ケイ素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
【0046】
位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視覚等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであって良く、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであっても良い。
【0047】
また、上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組合せで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組合せとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0048】
視覚補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視覚補償位相差板としては、例えば位相差板、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視覚補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどがあげられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
【0049】
また、良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコチック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0050】
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合せた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光又は所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性よっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一反反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0051】
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0052】
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0053】
従って、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を透過するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を、位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0054】
可視光域等の広い波長で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差板と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層又は2層以上の位相差層からなるものであってよい。
【0055】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組合せにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0056】
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていても良い。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであっても良い。
【0057】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板と他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などにおうじて適宜な配置角度とすることができる。
【0058】
図1に示した本発明の粘着剤付き偏光板の製造は、前記光学フィルム1に粘着剤層2a、2bを形成することにより行う。粘着剤層の形成方法としては、特に制限されず、一般的方法、例えば、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、コンマコーター、バーコーター、スプレー塗布、インクジェット法等の方法で粘着剤液を塗布する方法等が挙げられる。
【0059】
本発明では、粘着剤層と粘着剤層が接する界面には3次元のパターンが形成されている。3次元パターンの形成方法としては、3次元パターンが形成された基材に粘着剤溶液を塗工し、基材の3次元パターンを粘着剤層に転写することで粘着剤層の3次元パターンを形成する方法が特に好ましい。
粘着剤層に3次元パターンを有する偏光板の作製方法の概念図を図2に示す。本発明の粘着剤付き偏光板は、(1)基材への3次元パターンの形成、(2)粘着剤層2aの塗布、乾燥、熟成(3)粘着剤層2aの基材4からの剥離、(4)粘着剤層2a上に粘着剤層2bを塗布、乾燥、(5)粘着剤層と光学フィルム1との貼り合せ、熟成の工程で作製できる。
粘着剤層2aの乾燥後、続いて熟成させることで、貯蔵弾性率が低い粘着剤層の表面に3次元パターンを形成することが可能となり、形成した3次元パターンは粘着剤層2bの塗布後も維持され、粘着剤層と粘着剤層が接する界面には3次元のパターンが形成される。
【0060】
上記3次元パターン形成方法のメリットは以下の通りである。
(1)既存の粘着剤塗布プロセスを使用できるため、設備投資が不要である。
(2)パターンの種類やパネルサイズを変更する場合は、基材(セパレータ)を変更することで対応可能であるため、切り替え時間が短縮でき、コストを抑えることができる。
(3)パターンを一括に転写できるため、インクジェット法等と比較して製造スピードが速い。
(4)パターン形状やパターン形成場所を容易にコントロールできるため、多品種少量生産にも対応可能である。
(5)インクジェット法や印刷法と比較してパターンのテーパーを高精度でコントロールできる。
【0061】
例えば、パネル短辺方向に平行なパターンを作製する場合、TNモードとVAモードでは偏光板のMD方向に対するパターンの向きが異なるためモード毎にパターンを変える必要があるが、本方式では、基材(セパレータ)の所望の場所に所望のパターンを形成しておくことで、数種類のパターンを一括に転写することが可能であるため、生産性が非常によい。
【0062】
3次元パターンの形状は特に限定されない。パネルサイズや表示モード毎に要求される耐久性が異なる場合は、各々の要求に最適なパターンを形成することができる。また、TV、カーナビ、デジタルカメラなど使用用途が異なる場合は、それぞれに要求される耐久性、密着性、リワーク性、光漏れなどに対応させたパターンを形成することができる。
単一パターンの繰り返しとすることや、偏光板の周辺部から中央部にかけてパターンの周期に変化を持たせること、あるいは、不規則なパターンを一定の周期で並べること等が可能である。
【0063】
例えば、前記3次元パターンをパネル短辺方向に並行なライン状の繰り返しパターンとした場合、偏光板の寸度変化を緩和させることができるため、反り抑制に効果が得られる。ひとつのライン状パターンの幅は1μm以上100mm以下がよい。好ましくは、1μm以上50mm以下であり、より好ましくは1μm以上10mm以下である。隣り合うパターン間の距離はパターンの高さ以上であることが好ましい。隣り合うパターン間の距離がパターンの高さ以上であると、積層する際に、粘着剤の貯蔵弾性率が小さいにもかかわらず、パターン形状を維持することが容易になる。また、ライン状パターンの幅を1μm以上とすることによりパターンの形成が容易になり、ライン状パターンの幅を100mm以下にすることにより、各パターンの面積が大きくなりパターン内部の寸度変化が大きくなることによる効果の低減を抑制できる。
【0064】
前記3次元パターンを、格子状とすることもできる。その場合、格子のライン幅は1μm以上100mm以下がよい。好ましくは、1μm以上50mm以下であり、より好ましくは1μm以上10mm以下である。格子中央部の四角形の一辺はパターンの高さよりも長いことが好ましい。
【0065】
3次元パターンを粘着剤層に転写するための基材の構成材料としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体等があげられる。
【0066】
基材への3次元パターンの形成方法としては、ナノインプリント、切削加工、成型加工、インクジェット、グラビア印刷、サンドブラスト、エンボス加工、スプレー塗布等があげられる。
作製した基材の表面には、粘着剤層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの低接着性の剥離処理が施されていても良い。
【0067】
各粘着剤層の乾燥後の厚みは、1μm以上100μm以下とするのが好ましい。より好ましくは、5μm〜50μmである。適用される粘着剤層の厚みが薄いと、発泡や剥がれなどの不具合を生じやすくなり、反り抑制への効果としても低下する傾向にある。また適用される粘着剤層の厚みが厚すぎると反り抑制への効果が上昇する傾向にはあるが、作業性といった面において糊汚れを生じやすくなり、カット性が低下する傾向がある。なお、粘着剤層に形成にあたり、帯電防止層を形成した後に粘着剤層を形成してもよい。
【0068】
光学フィルムから最も離れた粘着剤層のパネルと貼り合せる面の平滑性は、Rz値で10μm以下がよい。好ましくは5μm以下であり、より好ましくは2μm以下である。粘着剤層の平滑性が低いと、粘着剤層とパネルの密着剤が低下して剥がれや発泡などの不具合が生じる。
【0069】
離型シートの構成材料としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体等があげられる。離型シートの表面には、粘着剤層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの低接着性の剥離処理が施されていても良い。
【0070】
なお、本発明の粘着剤付き偏光板の光学フィルムや粘着剤層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0071】
本発明における、2層以上の粘着剤層の接する界面に形成された3次元のパターンは、粘着剤層の断面を、走査型プローブ顕微鏡の位相測定モードやマイクロ粘弾性測定モードで観察することによって確認することができる。位相測定モードやマイクロ粘弾性測定モードでは、試料の表面形状や粘弾性の分布を観察することができるため、粘着剤層の界面の形状を捉えることが可能である。
【0072】
本発明の使用形態
液晶表示装置
本発明の偏光板は、液晶表示装置等の画像表示装置に有利に用いることができ、ディスプレイの最表層に用いることが好ましい。
液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に配置された二枚の偏光板を有し、液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。さらに、光学異方性層が、液晶セルと一方の偏光板との間に一枚配置されるか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配置されることもある。
【0073】
液晶セルは、TNモード、VAモード、OCBモード、IPSモード又はECBモードであることが好ましい。
【0074】
<TNモード>
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、さらに60〜120゜にねじれ配向している。
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
【0075】
<VAモード>
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of Tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)及び(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
【0076】
<OCBモード>
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルであり、米国特許第4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードと呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
【0077】
<IPSモード>
IPSモードの液晶セルは、ネマチック液晶に横電界をかけてスイッチングする方式であり、詳しくはProc.IDRC(Asia Display ’95),p.577−580及び同p.707−710に記載されている。
【0078】
<ECBモード>
ECBモードの液晶セルは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向している。ECBモードは、最も単純な構造を有する液晶表示モードの一つであって、例えば特開平5−203946号公報に詳細が記載されている。
【0079】
<タッチパネル>
本発明の偏光板は、特開平5−127822号公報、特開2002−48913号公報等に記載されるタッチパネルなどに応用することができる。
【0080】
また、本発明の偏光板は、有機EL素子等に用いることができる。
本発明の偏光板を有機EL素子等に用いる場合には、特開平11−335661号、特開平11−335368号、特開2001−192651号、特開2001−192652号、特開2001−192653号、特開2001−335776号、特開2001−247859号、特開2001−181616号、特開2001−181617号、特開2002−181816号、特開2002−181617号、特開2002−056976号等の各公報記載の内容を応用することができる。また、特開2001−148291号、特開2001−221916号、特開2001−231443号の各公報記載の内容と併せて用いることが好ましい。
【実施例】
【0081】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何等限定されるものではない。
【0082】
(粘着剤組成物の調製)
粘着剤溶液A
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸2−エチルヘキシル99.9部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル0.1部、及び2,2′−アゾビスイソブチロニトリル0.3部を酢酸エチルと共に加えて窒素ガス気流下、60℃で4時間反応させた後、その反応液に酢酸エチルを加えて、固形分濃度30重量%のアクリル系重合体溶液を得た。アクリル系重合体溶液の重量平均分子量は70万であった。当該溶液の固形分100部あたり0.15部のトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製、コロネートL)と0.01部の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを配合してアクリル系粘着剤を得た。前記粘着剤のTgは−60℃であった。
【0083】
粘着剤溶液B
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル95部、アクリル酸5部、及び2,2′−アゾビスイソブチロニトリル0.3部を酢酸エチルと共に加えて窒素ガス気流下、60℃で4時間反応させた後、その反応液に酢酸エチルを加えて、固形分濃度30重量%のアクリル系重合体溶液を得た。アクリル系重合体溶液の重量平均分子量は200万であった。当該溶液の固形分100部あたり0.6部のトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート( 日本ポリウレタン社製, コロネートL )と0.075部の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを配合してアクリル系粘着剤を得た。前記粘着剤のTgは−30℃であった。
【0084】
(偏光子の作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光子を得た。
【0085】
(セルロースアシレートフィルムの表面処理)
市販のセルロースアシレートフィルム「フジタックTD80UL」を、濃度1.5モル/Lで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、濃度0.005モル/Lで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
【0086】
(光学フィルムの作製)
上記のように鹸化処理を行ったセルロースアシレートフィルムを、前記の偏光子を挟むようにポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合せ光学フィルムを作製した。
【0087】
(3次元パターンを有するセパレートフィルムの作製)
熱式ナノインプリントによって、表面に3次元パターンを有するPETを作製した。金型(モールド)はリソグラフィ手法により作製し、圧力:10MPa、温度:150℃にてPETフィルム上に3次元パターンを転写した。作製したパターン形状を以下に示す。
【0088】
パターン(1)
パネル短辺方向に並行な図3に示したライン状パターンであり、ライン幅:0.1mm、パターン間距離:0.1mm、パターン高さ:15μmとした。
パターン(2)
パターン(1)においてライン幅:5μm、パターン間距離:5μm、パターン高さ:5μmとした。
パターン(3)
パターン(1)においてライン幅:10mm、パターン間距離:10mm、パターン高さ:15μmとした。
パターン(4)
パターン(1)においてライン幅:30mm、パターン間距離:30mm、パターン高さ:15μmとした。
パターン(5)
パターン(1)においてライン幅:80mm、パターン間距離:80mm、パターン高さ:15μmとした。
パターン(6)
パターン(1)においてライン幅:150mm、パターン間距離:150mm、パターン高さ:15μmとした。
パターン(7)
パターン(1)においてライン幅:0.8μm、パターン間距離:0.8μm、パターン高さ:0.8μmとした。
パターン(8)
パネル長辺、短辺に並行なラインを繰り返し並べた図4に示した格子状パターンであり、ライン幅:0.1mm、格子中央部の正方形の一辺:0.1mm、パターン高さ:15μmとした。
パターン(9)
パターン(8)においてライン幅:150mm、格子中央部の正方形の一辺:150mm、パターン高さ:15μmとした。
【0089】
(評価方法)<重量平均分子量の測定>
アクリル系重合体溶液の重量平均分子量はゲルパーミェーションクロマトグラフィー法(GPC法)により求めた。
その結果、粘着剤溶液Aに含まれるアクリル系重合体溶液の重量平均分子量は700000で、粘着剤溶液Bに含まれるアクリル系重合体溶液の重量平均分子量は2000000であった。
【0090】
<クリープ試験における粘着剤層のひずみ量測定>
(1)評価用偏光板の作製
粘着剤溶液をシリコーン系剥離剤で表面処理したセパレートフィルムにダイコーターを用いて塗布した後、150℃で5分間加熱して、乾燥後の厚さが25μmの粘着剤層を得た。
次いで、光学フィルムの表面に上記粘着剤層を貼り合せた後、25℃、60%RHで7日間熟成させ偏光板を作製した。
(2)クリープ試験 無アルカリガラス板(コーニング社製、1737 、大きさ:50×100mm 、厚み:1.0mm)に、25mm×50mmにカットした偏光板を接着面積が10mm×25mmとなるように粘着剤を介して貼り合わせ、25℃、65%RHの環境下に1時間放置した。その後、このサンプルを鉛直方向に固定し、25℃、60%RHの下で偏光板の端部に1kgの荷重を1時間かけた。その時の初期状態からのひずみ量を計測した。
(3)試験結果
粘着剤層の厚さが25μmの偏光板における上記クリープ試験でのひずみ量は、粘着剤層Aの場合が670μm、粘着剤層Bが20μmであった。
【0091】
<粘着剤層のTgの測定>
粘着剤層のTgは、DSC法によって求めた。粘着剤層は、前記クリープ試験で使用したサンプルと同様の方法で作製した。Tgは開始温度とした。用いた測定装置は、セイコーインスツルメンツ社製のDSC6220型示差走査熱量計である。
【0092】
<反り量>
偏光板を一辺の長さが270mmの正方形に打ち抜き、その粘着剤層を介して、厚さ0.7mmで280mm×280mmサイズの無アルカリガラス板にラミネーターで貼合し、50℃、5気圧のオートクレーブ中に15分間放置して十分に圧着処理したサンプルを作製した。上記サンプルを、条件(1):−40℃、条件(2):80℃、条件(3):60℃、90%RHの各雰囲気下で、48時間処理した後、23℃、55%RHの雰囲気下において、水平で凹凸のない台の上へ設置し、面内4点の反り量を隙間ゲージを用いて測定した。反り量はその4点の平均値とした。評価基準は次のとおりである。
◎:ガラスの反りが0.5mm未満。
○:ガラスの反りが0.5〜1.0mm。
×:ガラスの反りが1.0mmを超える。
【0093】
<耐久性>
上記同様のサンプルを、条件(1):−40℃、条件(2):80℃、条件(3):60℃、90%RHの各雰囲気下で500時間処理した後における、発泡と剥がれの有無を目視で観察した。評価基準は次のとおりである。
○:発泡と剥がれが認められない。
×:発泡や剥がれが認められ視認性に影響する。
【0094】
<接着力の測定>
作製した偏光板を25mm × 250mmにカットし、無アルカリガラス板(コーニング社製、1737 、大きさ:50 × 200mm 、厚み:1.0mm) に貼り付け(2kgロール、一往復) 、50℃ 、0.5MPaの圧力で30分間オートクレーブ処理を行った。その後、23℃ × 60%RH で3時間保存し、評価用サンプル(a)を得た。
上記評価用サンプル(a)を万能引張試験機にて剥離速度300mm/分剥離角度90°で剥離したときの接着力を測定した。測定は23℃、50%RHの環境下で行った。
また、前記オートクレーブ処理後に、引き続き70℃ で6時間保存し、その後、23℃、60%RH で3時間保存し、評価用サンプル(b)を得た。
上記評価用サンプル(b)を万能引張試験機にて剥離速度300mm/分剥離角度90°で剥離したときの加熱処理後の接着力を測定した。測定は23℃、50%RHの環境下で行った。
なお、一般的に接着力が10N/25mm以下の場合、リワーク性が良好である。
【0095】
<糊残りの評価>
70℃ で6時間保存後の上記評価サンプル(b)の接着力測定後の無アルカリガラス板上に、粘着剤に由来する糊残りの発生の有無を目視にて観測評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎:全く糊残りがない
○:糊残りが一部認められるが、実用上全く問題ない
×:実用上問題ある程度の糊残りが認められる
【0096】
<光漏れの評価>
作製した偏光板を200mm×260mmのサイズにカットし、無アルカリガラス板(コーニング社製、1737 、大きさ:250 × 350mm 、厚み:1.0mm)の両面に、偏光板の吸収軸が直交するように、45°貼り、又は90°貼りで貼り付け、50℃ 、0.5MPaの圧力で30分間オートクレーブ処理を行った。その後、80℃dry又は60℃90%RHにて、100時間保存した後、23℃、50%RHで1時間保存して評価用サンプルを得た。
上記評価用サンプルの周辺の光漏れの有無を目視にて観察評価した。評価基準は以下の通りである。
4:光漏れの発生が認められなかった場合:
3:光漏れの発生がわずかに認められるが実用上問題のない場合
2:光漏れの発生が認められるが実用上問題のない場合 1:実用上問題のあるレベルで光漏れの発生が認められた場合
【0097】
〔実施例1〕 粘着剤溶液Aをシリコーン系剥離剤で表面処理したパターン(1)セパレートフィルムにダイコーターを用いて塗布した後、150℃で3分間加熱して、乾燥後の厚さが20μmの粘着剤層Aを得た。なお粘着剤層の厚さとは、パターンの高さを含んだ厚さを指す。
ここで一旦、粘着剤層付きセパレートフィルムを巻き取り、25℃、60%RHで7日間熟成させた。
次いで、粘着剤層Aをセパレートフィルムから剥離し、粘着剤層Aのパターンが形成された面に、粘着剤溶液Bをダイコーターを用いて塗布した後、150℃で3分間加熱して、乾燥後の厚さが20μmの粘着剤層Bを得た。なお、パターンの高さが15μmであるので粘着剤層全体の厚さは25μmである。
次いで、光学フィルムの表面に、光学フィルム/上記粘着剤層A/上記粘着剤層Bの順になるよう粘着剤層を貼合した後25℃、60%RHで7日間熟成させ偏光板を作製した。
【0098】
〔実施例2〕 セパレートフィルムをパターン(2)セパレートフィルムに変更したこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。
【0099】
〔実施例3〕 セパレートフィルムをパターン(3)セパレートフィルムに変更したこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。
【0100】
〔実施例4〕 セパレートフィルムをパターン(4)セパレートフィルムに変更したこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。
【0101】
〔実施例5〕 セパレートフィルムをパターン(5)セパレートフィルムに変更したこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。
【0102】
〔実施例6〕 粘着剤溶液Bをシリコーン系剥離剤で表面処理したパターン(1)セパレートフィルムにダイコーターを用いて塗布した後、150℃で3分間加熱して、乾燥後の厚さが20μmの粘着剤層Bを得た。なお粘着剤層の厚さとは、パターンの高さを含んだ厚さを指す。
ここで一旦、粘着剤層付きセパレートフィルムを巻き取り、25℃、60%RHで7日間熟成させた。
次いで、粘着剤層Bをセパレートフィルムから剥離し、粘着剤層Bのパターンが形成された面に、粘着剤溶液Aをダイコーターを用いて塗布した後、150℃で3分間加熱して、乾燥後の厚さが20μmの粘着剤層Aを得た。なお、パターンの高さが15μmであるので粘着剤層全体の厚さは25μmである。
次いで、光学フィルムの表面に、光学フィルム/上記粘着剤層B/上記粘着剤層Aの順になるよう粘着剤層を貼合した後25℃、60%RHで7日間熟成させた。
【0103】
〔実施例7〕 セパレートフィルムをパターン(6)セパレートフィルムに変更したこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。
【0104】
〔実施例8〕 セパレートフィルムをパターン(7)セパレートフィルムに変更したこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。
【0105】
〔実施例9〕 セパレートフィルムをパターン(8)セパレートフィルムに変更したこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。
【0106】
〔実施例10〕 セパレートフィルムをパターン(9)セパレートフィルムに変更したこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。
【0107】
〔比較例1〕 実施例1において粘着剤層Aを作製する際、パターンの形成されていないセパレートフィルムを使用したこと、粘着剤層A、Bの乾燥後の厚さを12.5μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。
【0108】
〔比較例2〕 粘着剤溶液Aをシリコーン系剥離剤で表面処理した、パターンの形成されていないセパレートフィルムにダイコーターを用いて塗布した後、150℃で5分間加熱して、乾燥後の厚さが25μmの粘着剤層Aを得た。
次いで、光学フィルムの表面に上記粘着剤層Aを貼り合せた後、25℃、60%RHで7日間熟成させ偏光板を得た。
【0109】
〔比較例3〕 粘着剤溶液Aに代えて粘着剤溶液Bを使用したこと以外は比較例2と同様にして偏光板を得た。
【0110】
上記実施例及び比較例で得られた結果を表1にまとめて示す。
【0111】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】偏光板の構造を示す説明図である。
【図2】3次元パターン作製方法の説明図である。
【図3】ライン状パターンの説明図である。
【図4】格子状パターンの説明図である。
【符号の説明】
【0113】
1 偏光フィルム
2a 粘着剤層
2b 粘着剤層
3 離型シート
4 パターンの形成された基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光板保護フィルム、偏光子、及び粘着剤層を有する偏光板において、該粘着剤層が2層以上からなり、少なくとも2層の互いに接する粘着剤層の界面に、3次元のパターンが形成された構造を有することを特徴とする偏光板。
【請求項2】
前記3次元のパターンが規則的であることを特徴とする請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
界面に3次元のパターンが形成された構造を有する互いに接する2層の粘着剤層において、各粘着剤層を介して接着面積10mm×25mmで基板に固定し、25℃、60%RHの下で1kgの荷重を1時間かけるクリープ試験から得られる各粘着剤層のひずみ量が異なり、その差が、2倍以上1000倍以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記3次元のパターンがライン状パターンの繰り返しであり、ひとつのライン状パターンの幅が1μm以上100mm以下であり、隣り合うパターン間の距離がパターンの高さ以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項5】
前記3次元のパターンが格子状パターンであり、格子のライン幅が1μm以上100mm以下であり、格子中央部の四角形の一辺がパターンの高さ以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の偏光板を少なくとも1枚用いた画像表示装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法であって、少なくとも一種の粘着剤を3次元パターンが形成された基材に塗工し、該基材のパターンを粘着剤層に転写することにより少なくとも2層の互いに接する粘着剤層の界面の3次元パターンを形成することを特徴とする偏光板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−65243(P2008−65243A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245668(P2006−245668)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】