説明

偏光板と位相差板による可動式建築構造物。

【課題】直線偏光板だけの建築構造物に可動式の位相差板を加える事によって、遮光あるいは透過光の恒常的な空間を演出する構造物が任意に透過したり遮光したり出来る変動式の光空間を演出する事ができる建築構造物を提供する。
【解決手段】偏光機能を有する第1の偏光板1と、第1の直線偏光板1側から入射する光の光軸を検光する第2の直線偏光板3と、第1の直線偏光板1と第2の直線偏光板3が構成する光路上の光の位相を変位させる可動な位相差板2と、を備える可動式建築用構造物であって、第1の直線偏光板1側から入射する光を位相差板2を介して第2の直線偏光板3で検光する第2の直線偏光板3を介する光路と、第1の直線偏光板1側から入射する光を直接、第2の直線偏光板3で検光する光路とを切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は偏光板によって偏光された光を位相差板と偏光板の組み合わせからなる可動式建築構造物によって透過・遮光と切り替え可能な建築構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
自然光は光の進行方向に対してあらゆる角度に振動しているが、そのベクトルは縦
波と横波に集約できる。偏光板は光の振動の一方向の光を透過し、他の一方向を吸収する機能を持っている。又近年はワイヤーグリットのように導電帯で構成され、ワイヤーの配向によって透過・反射分離するものもある。
これらの偏光板によって偏光された光は位相差板を通す事によって円偏光や楕円偏光、または直角にねじれた直線偏光に変換することが知られている。
【0003】
また位相差板の材質や厚みによっては選択的に限られた波長範囲の光を位相変換する材料があり、これらの位相差板の中でもポリカーボ、ポリプロピレンやセロファンなどは安価なバンドセレクト位相差板と言える。
【0004】
従来、このような偏光板の偏光作用は液晶プロジェクターや液晶モニターの光源やバックライトに使われてきたが、偏光を建築物に応用した例は少ない。さらに構造物として偏光板を使用した例(たとえば特許文献1及び特許文献2参照)はあるが、位相差板と組み合わせて可動状態にした建築物、構造物は見ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4279804
【特許文献2】特開2008−261211
【特許文献3】特開2008−275976
【特許文献4】特開平08−250846
【0006】
従来の偏光板を使用した建築物によれば、2枚の直線偏光板の光軸を直交させると光路を遮断し、該偏光板の光軸を同方向に揃えると光路が開かれる。このような直線偏光板の組み合わせによってできる建築物や建造物あるいは室内の家具、パーテーション、衝立など空間を一定の視角において光路を遮断するかあるいは開放する、という作用を応用した建築物であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の建築物に使用された偏光板の構築物は、光路を遮断あるいは開放する手段が恒常的な空間であるため、オブジェとして外から見る人や、閉じられた空間内でも視線方向の変化によって見えたり見えなかったりする仕切られた空間を楽しむ事が出来たが、実際の建具として、あるいは仕事や生活の空間内部の人間が主体的に外界を見たり、外界から空間を遮断したりする変化、切り替えの要求に対しては対応できないという問題があった。
【0008】
また可視光域の光の中から一定の色を選択的に取り込む事や、書画等を浮かび上がらせた変化のある光を楽しむという事を満足させるものではなかった。
【0009】
そこで従来の建築構造物に設置された直線偏光板だけを使った、恒常的な光の透過機能や、不透過機能をデザインする静的な建築物を越えて、可動式の直線偏光板と位相差板を組み合わせた構造物をさまざまな角度や位置に装置する事によって、主体者が任意に透過させたり遮光させたり変動的演出をする事ができる可動式建築構造物を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
・ 本発明は上記の課題を解決しようとするもので、
偏光機能を有する第1の偏光板と、
前記第1の直線偏光板側から入射する光の光軸を検光する第2の直線偏光板と
前記第1の直線偏光板と前記第2の直線偏光板が構成する光路上の光の位相を変位させる可動な位相差板と、
を備える可動式建築用構造物であって、
前記第1の直線偏光板側から入射する光を前記位相差板を介して前記第2の直線偏光板で検光する前記第2の直線偏光板を介する光路と、
前記第1の直線偏光板側から入射する光を直接、前記第2の直線偏光板で検光する光路とを切り替える手段を有する特徴を備えた可動式建築用構造物。
【0011】
〔2〕本発明は上記〔1〕に記載の可動式建築用構造物において、前記第2の直線偏光板と前記位相差板を搭載するさらにブラインドの羽根の形状をした透明基材を有し、該透明基材の表裏面が回転する事によって、前記第2の直線偏光板と前記位相差板との配列が変更され、前記第1の直線偏光板から入射する光の光路が切り替わる事を特徴とする。
【0012】
〔3〕本発明の可動式建築用構造物は上記〔1〕に記載の可動な建築用構造物において、前項第2の偏光板と第1の位相差板を搭載する駆動ローラーに支えられたスクロールカーテン形状をした第1の透明基材を有し、該透明基材がスクロールする事によって、前記第2の偏光板と前記第1の位相差板との配列を変更し、前記第1の偏光板から入射する光の光路が切り変る事を特徴とする。
【0013】
〔4〕本発明の可動式建築用構造物において、前記位相差板は位相差変位の波長依存性を持った位相差板であり、所定の波長帯の光のみを偏光させ、前記所定の波長帯の光を第2の直線偏光板から透過させ、他の波長帯の光を遮断する事を特徴とする。
【0014】
〔5〕本発明の可動式建築用構造物において前記第1の位相差板に書画を描画したものであり、該位相差板が前記第1の直線偏光板と前記第2の直線偏光板の間にあって、光路上の前記第2の直線偏光板を透過したときに前記位相差板に描かれた書画を映し出すことが出来る事を特徴とする。
【0015】
〔6〕本発明の可動式建築用構造物において、2重窓の1面に前記第1の偏光板を搭載し、前記2重窓の他の1面を横方向に1/2に分け、半面に前記第2の偏光板を貼合するとともに残りの半面に第2の直線偏光板と異なる偏光軸を有する第2の直線偏光板を貼合し、前記位相差板が2重窓の内部にあって、該位相差板が左右に動く事によって窓に入射した光が2重窓における光の透過領域を制御する事を特徴とする。
【0016】
〔7〕本発明の可動式建築用構造物において、前記2重窓は同心円の2重の筒状窓であって、第1の直線偏光板が円筒形であり、他の同心円の円周面を1/2に分け、半周に貼合した前記第2の直線偏光板と、さらに半周に貼合した、第2の直線偏光板と異なる偏光軸の第2の直線偏光板と、さらに2重の同心円の窓の間に装置した可動式の前記位相差板を備えた事を特徴とする。
【0017】
〔8〕本発明の可動式建築用構造物において、形状が多角形の2重の窓であって、多角形の窓の1面が前記第1の直線偏光板であり、他の1面の多角形の面を上下1/2に分け、半面前記第2の直線偏光板を貼合し、さらに残りの半面に第2の直線偏光板と異なる偏光軸の第2の直線偏光板を貼合し、さらに2重の多角形の窓の内部に装置した上下に可動式の前記位相差板を備えた事を特徴とする。
【0018】
尚、偏光板には、ヨウ素の化合物分子を吸着配向させたポリビニルアルコールのほかにも、アルミニウムを列状に配向させて蒸着したワイヤーグリッドフィルムやガラスにアルミニウムを配向蒸着させたワイヤーグリッドもある。偏光させる波長範囲によってもその使途は異なる。
【0019】
また位相差板についても分子配向を起こしたフィルムについては複屈折を起こすものがある。この複数の屈折率は光の透過速度が異なる事によって光の振動が干渉し合い、振動方向が偏位する。可視光全域を位相変換するλ板もあるが、雲母や水晶のような鉱物結晶はスライスした結晶の厚みによって一定の波長帯のみの光に対して偏光を偏位させる。フィルムによってもセロファン、ノルボルネンサン樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレンなどが製造過程で延伸するため、複屈折を持っている。
【0020】
前記の波長依存性を持ったプラスチックフィルムは可視光の一定の波長帯を位相偏位させる事によって、2枚の直線偏光板によって光を制御すれば、白色光(可視光)から任意の色を発色させる事が出来る。これらの発色した光は我々が自然から受ける色合いと同じく、自然で、心の沈静、癒しに効果的である。
【0021】
前記のように波長依存性のある位相差板を直線偏光板と組み合わせて装置した窓や衝立など、発色及び書画等のデザインを施した造形を演出できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】直線偏光板と位相差板の可動図
【図2】偏光板窓と横型ブラインドの動きと偏光板と位相差板を搭載した平面図
【図3】廊下ブラインドの効果例図 パターン1、2、3、4
【図4】複数の直線偏光板と波長依存性を持つ位相差板を含む複数の位相差板図
【図5】位相差板に描画された書画と複数の直線偏光板と位相差板図
【図6】偏光板窓と縦型ブラインドの動きと偏光板と位相差板を搭載した平面図
【図7】偏光板窓とロール型ブラインド図
【図8】位相差板スライド式窓図
【図9】円筒形仕切り窓図
【図10】方形仕切り窓
【符号の説明】
【0023】
1 第1の直線偏光板
2位相差板
3、3´ 第2の直線偏光板
4 透明な基材
5 サッシフレーム
6 窓
7 波長依存性を有する位相差板


































【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0025】
図1はAより入る光を第1の直線偏光板1によって縦振動の光のみが透過し、第1の直線偏光板の光軸と45°の角度をなす光軸のλ/2位相差板2によって横振動に位相変換され、横振動の光のみが透過する第2の直線偏光板3を通過する(図1左)。次に、前記第2の直線偏光板3と前記の位相差板2を搭載した可変建築用構造物が回転した場合(図2右)Aから入射した光は第1直線偏光板1を経た縦振動の光は隣接して横振動のみを透過させる第2の直線偏光板3に遮られ、前記位相差板2へ届かない。
【0026】
図2は窓に第1の直線偏光板1を貼合し、鎧型のブラインドの透明基材4に片面には位相差板2を貼合し裏面には第1の直線偏光板1の光軸と直交する光軸の第2の直線偏光板3を貼合した建造物である。例えば該ブラインドと窓との各々の偏光子の配列が第1の直線偏光板1、該位相差板2、第2の直線偏光板3であるとき光は該位相差板によって偏光が90°ねじれ、双方から光は双方の直線偏光板を通過する。よって上記窓は透明となる。次に、該ブラインドの羽根を180度回転させた場合、ブラインドと窓との各々の偏光子の配列が第1の直線偏光板1、第2の直線偏光板3、λ/2位相差板2であるとき、光は第1と第2の直線偏光板1、3によって遮断され、ブラインドを通過することは無い。
【0027】
上記鎧型ブラインドの第1の直線偏光板1と第2の直線偏光板3との光軸が平行であった場合は、λ/2位相差板2が第1と第2の直線偏光板1,3の間にある場合には光は遮断され、第1と第2の直線偏光板1,3が隣接した場合には光は透過する。
【0028】
図3のブラインドの構造を説明する。ABの空間を仕切っているブラインドと衝立は例えば窓は縦振動を透過する直線偏光板1を装置し、ブラインド透明基材の凹面にλ/2位相差板2、ブラインド透明基材の凸面に横振動を透過する直線偏光板3を貼合したものである。さらに外側にスクリーン状の上下巻き込み式のλ/2位相差板を配置した。
BC空間を仕切るブラインドと衝立の窓には横振動の光を透過する直線偏光板3を貼合し、ブラインドの透明基材4の凹面にはλ/2位相差板2を貼合し、凸面には縦振動のみを透過する直線偏光板1を貼合したものである。
図1のパターン1においてAから入ってBに向う光は、第1の直線偏光板1で縦振動のみが透過し、ブラインド凹面でλ/2位相差板2を経て横振動になり、透明基材4を通過し、横振動が透過する直線偏光板3を通過し、次にスクリーン状のλ/2位相差板2を通過して縦振動になる。(B空間)さらに進んでブラインドの透明基材上の凸面の縦振動を透過の直線偏光板1を通過し透明基材の凹面に貼合されたλ/2位相差板2によって横振動に変換され衝立の窓に貼合された横振動を透過する直線偏光板3を透過する。光は双方向同じの為、A、B、C間は透明になる。
【0029】
次に図1パターン2はブラインドの羽根を180度回転した状態である。この時、Aから入った縦振動の光はブラインドの透明基材の凸面に貼合されている横振動のみ透過する偏光板3に遮断される。一方、B,C間の衝立においては、C方向から入る光は衝立の窓に貼合された横振動の光を透過する直線偏光板3を透過して、ブラインドの透明基材の凸面に貼合された縦振動のみを透過する直線偏光板1によって遮断される。
【0030】
図1パターン3は、ブラインドの羽根をたたんだ状態である。これは従来の直線偏光板の仕切りのパターンである。Aの部屋の窓とCの部屋の窓は直線偏光板の光軸が互いに直行している。Bの廊下をA及びCの部屋から見ることは出来るが、A,Cの空間は互いに見ることは出来ない。
さらにスクリーン状の上下巻き込み式のλ/2位相差板2を介する事によって、A,B,C間は図1パターン1同様透明になる。
【0031】
図1パターン4は、Aから入った縦振動の光はλ/2位相差板2を介する事によって横振動となり、透明基材4を経て横振動のみを透過する直線偏光板3を経てB空間を進み、B,C間にあるブラインドのλ/2位相差板によって縦振動になり、透明基材の凸面にある縦振動のみを透過する直線偏光板1を経て衝立の窓に貼合されている横振動のみを透過する直線偏光板3に遮断される。
このように複数のパーテーションとブラインドの透過、遮断機能を組み合わせる事によってさまざまな可視空間を創出できる。
【実施例2】
【0032】
図4にあるように、縦振動のみを透過する直線偏光板1を搭載した衝立窓に、横振動のみを透過する直線偏光板3と、λ/2位相差板2と、波長依存性を持った位相差板7とを装置したブラインドについて説明する。
図4左はAから進む光は窓に搭載した縦振動の光のみを透過する直線偏光板1を透過して縦振動の光だけになる。そして横振動のみを透過する直線偏光板で遮断される。
図2右図は 衝立が180度回転した状態である。Aから入射してくる光を縦振動だけを透過する直線偏光板1を透過して縦振動のみとなった光は、波長依存性のある位相差板7によって、例えば青色だけ偏光が変位したとする、次にλ/2位相差板によって光の振動方向は可視息全体が90°ねじれたとすると。横振動する光は青色以外の色、すなわち緑と赤の合波である黄色が透過してくる。前記ブラインドにおいて、λ/2位相差板が無い場合は青色が透過してくる。
この作用を搭載した実施形態1のブラインドの位相差板に前記波長依存性のある位相差板を使う事によって、透過してくる光が発色する。これは図6、図7における位相差板2を波長依存性を持つ位相差板7と置き換えることもできる。また図5にあるように、書画等描画する位相差板2に波長依存性をもつ位相差板を使う事によって、書画の背景を発色させる事が出来る。
さらに図9の場合は円周が透明になった時半周は無色透明、残りの半周は発色する。
図10の場合においてもλ/2位相差板2の代わりに波長依存性の位相差板7をおくことが出来る。そして波長依存性のある位相差板7が移動して窓の上半分と下半分は双方とも補色対比の発色をする。
【実施例3】
【0033】
図5にあるように縦振動の光を透過する直線偏光板1を搭載した衝立窓に、横振動のみを透過する直線偏光板3と、書画等を描画したλ/2位相差板2とを搭載したブラインドについて説明する。
Aから進む光は窓を透過して縦振動の光だけになる。そして横振動のみを透過する直線偏光板で遮断される。図3左図は 衝立が180度回転した状態である。縦振動の光は透過し、書画等描画したλ/2位相差板によって、偏光軸が変位し画像を写した横振動する光は横振動のみを透過する直線偏光板を透過してくる。
図3のA側にバックライトをおいて透過するλ/2位相差板に描いた書画を浮き立たせる事が出来る。
またこの機能を搭載したブラインド(図2、図6、図7)におけるλ/2位相差板2にも書画を描画する事が出来る。そしてブラインドが透明になったとき、前記λ/2位相差板2に描かれた書画は浮き立って見える。
図9、図10の閉じられたパーテーションの場合も位相差板の移動によって窓が透明になった瞬間に窓に書画が浮かび上がって見える。
【実施例4】
【0034】
図6はブラインドの形状が短冊のように窓を上部からぶら下げた状態の形状をしていて、短冊状の羽根が上部にある軸によって回転して裏表に切り替わる方式で、裏返る事によって前記0037項と同様の光の透過乃至遮断を実現する。
【実施例5】
【0035】
図7は窓の内側にロール状のスクリーンを装置した図である。透明な基材をベルト状につなげ、ベルト全長の半分にλ/2位相差板、残り半分直線偏光板を貼合して、窓に装置した例えば縦振動の光を透過する直線偏光板と直交する光軸の直線偏光板が隣接した時は光が遮断され。次にベルトがロールされ、窓に装置された縦振動のみを透過する直線偏光板とλ/2位相差板、横振動のみの光を透過する直線偏光板の配列の時に光路が開かれる。
【実施例6】
【0036】
図8において2重ガラスの窓の一面のガラスに例えば、縦振動の光のみを透過する直線偏光板を装置し、他面のガラスは2分割して左半面には横振動の光のみを透過する直線偏光板3を装置し、右側半面には縦振動の光のみ透過する直線偏光板3´を装置し、2重ガラスの間にさらに1枚のλ/2位相差板2がスライドするように装置しされたものである。
図8は上から段階的にλ/2位相差板2が左の位置から中間、右へと移動してゆく時の窓全体の見え方を表している。斜線は黒く遮断される領域を示す。
該位相差板2が左側にいる時は縦振動光透過、λ/2位相差板、横振動光透過となり、同時に右半面は縦振動光透過、縦振動光透過の配列となるため、窓一面は光路が開放され、該位相差板が右側へ移動すると縦振動光のみを透過する直線偏光板1を透過した光は横振動の光のみを透過する直線偏光板3に遮られ、窓の右半面は縦振動の光のみを透過する直線偏光板1を経てλ/2位相差板2によって横振動の光に変位し、縦振動の光のみを透過する直線偏光板窓3´に同じく遮断され、窓は全面光路が遮断される。
【実施例7】
【0037】
図9においては前項図8の円筒形状の2重ガラスの窓が同心円状になった場合である。
2重ガラスの窓の一面のガラスに、縦振動の光のみを透過する直線偏光板1を全面に装置し、内側の円周のガラスは2分割して半周には横振動の光のみを透過する偏光板3を装置し、残り半周には縦振動の光のみ透過する直線偏光板3´を装置し、2重ガラスの間にさらに半周にわたってλ/2位相差板2が同心円状にスライドするように装置しされたものである。
該位相差板2が内側のガラスに搭載された横振動光のみを透過する直線偏光板3と重なる時、縦振動光透過、λ/2位相差板、横振動光透過となり、その時、位相差板の無い半面は縦振動光透過、縦振動光透過の配列となるため、窓一面は光路が開放される。該位相差板2が移動して、内側のガラスに搭載された縦振動のみを透過する直線偏光板3´と重なる位置に来ると、縦振動光透過、λ/2位相差板、縦振動光透過となり光は遮断される。同時に残りの半面は縦振動光透過、横振動光透過となり、円筒状の窓は全面光路が遮断される。
【実施例8】
【0038】
図10は四角柱状のパーテーションについての形状の例である。
2重構造になった窓の外側4面に例えば縦振動の光のみ透過する直線偏光板1を貼合し、内側窓4面は上下に2分割して、下半分に横振動のみの光を通す直線偏光板3を貼合し、内側窓4面の上半分に縦振動のみの光を通す直線偏光板3′を貼合する。2重ガラスの中に4面で構成された1/2の高さの上下可動の窓を装置し、λ/2位相差板2を貼合する。
該位相差板2が下半分の位置にあって、内側のガラスに搭載された横振動光のみを透過する直線偏光板3と重なる時と重なる時、縦振動光が入射し、λ/2位相差板で位相が付与され横振動光となり横振動の光のみ透過する直線偏光板3を透過し、同時に上半面は縦振動光のみ透過する直線偏光板1、縦振動光のみ透過する直線偏光板3´の配列となるため、窓は4面とも全面、光路が開放される。該位相差板2が上に移動して、内側のガラスに搭載された縦振動のみを透過する直線偏光板と重なる位置に来ると、縦振動光透過1、λ/2位相差板2、縦振動光透過となり光は遮断される。その時下の半面は縦振動光のみを透過する直線偏光板1、横振動光のみを透過する直線偏光板3となり、4角柱状の窓は全面光路が遮断される。
これは図8を上下にスライドする形にしたもので、壁面の数は3面以上いくらでも増やす事が出来る。(3角柱、4角柱、5角柱…)
【産業上の利用可能性】
【0039】
これらの可変式建築構造物はビルの窓やパーテーションの窓のほかに、電車の車窓や車の車窓、航空機の窓、観覧車の窓などに用いる事が出来る。また空間内の動物がストレスを感じないよう、時と場合によって可動式遮光によって容易に透過面を増減できる。また監視の必要な空間の可視(刑務所、留置所の独房や廊下の遮断も容易になる。さらに美術品や宝石などを展示するショーケースなどに使える。またエステティックサロンなどのヒーリングのための遮へいにも使える。喫茶店の空間演出や銀行の仕切りとして、普段は解放的な空間を印象付け、重要案件の会議には空間を仕切る、というように状況に応じた空間の遮蔽開放を容易にでき、駆動部分に動力をつけて自動開閉にする事で大規模な空間、例えば国際展示場、劇場やコンサートホールの舞台の暗転などにも使える。
水槽、水族館に多角形の上下駆動式可動建築構造物など、色の波長依存性のある位相差板を利用した発色水槽などは変化に富み、デザインで観覧者を飽きさせない。











【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光機能を有する第1の偏光板と、
前記第1の直線偏光板側から入射する光の光軸を検光する第2の直線偏光板と
前記第1の直線偏光板と前記第2の直線偏光板が構成する光路上の光の位相を変位させる可動な位相差板と、
を備える可動式建築用構造物であって、
前記第1の直線偏光板側から入射する光を前記位相差板を介して前記第2の直線偏光板で検光する前記第2の直線偏光板を介する光路と、
前記第1の直線偏光板側から入射する光を直接、前記第2の直線偏光板で検光する光路とを切り替える手段を有する特徴を備えた可動な建築用構造物。
【請求項2】
請求項1に記載の可動式建築用構造物において、前記第2の直線偏光板と前記位相差板を搭載するさらにブラインドの羽根の形状をした透明基材を有し、該透明基材の表裏面が回転する事によって、前記第2の直線偏光板と前記位相差板との配列が変更され、前記第1の直線偏光板から入射する光の光路が切り替わる事を特徴とした可動式建築用構造物。
【請求項3】
請求項1に記載の建築用可動構造物において、前項第2の偏光板と第1の位相差板を搭載する駆動ローラーに支えられたスクロールカーテン形状をした第1の透明基材を有し、該透明基材がスクロールする事によって、前記第2の偏光板と前記第1の位相差板との配列を変更し、前記第1の偏光板から入射する光の光路が切り変る事を特徴とした可動式建築用構造物。
【請求項4】
請求項1に記載の建築用構造物において、前記位相差板は位相差変位の波長依存性を持った位相差板であり、所定の波長帯の光のみを偏光させ、前記所定の波長帯の光を第2の直線偏光板から透過させ、他の波長帯の光を遮断する特徴を持った可動式建築用構造物。
【請求項5】
請求項1に記載の可動式建築用構造物において、前記第1の位相差板に書画を描画したものであり、該位相差板が前記第1の直線偏光板と前記第2の直線偏光板の間にあって、光路上の前記第2の直線偏光板を透過したときに前記位相差板に描かれた書画を映し出すことが出来る事を特徴とした可動式建築用構造物。
【請求項6】
請求項1に記載の可動式建築用構造物において2重窓の1面に前記第1の偏光板を搭載し、前記2重窓の他の1面を横方向に1/2に分け、半面に前記第2の偏光板を貼合するとともに残りの半面に第2の直線偏光板と異なる偏光軸を有する第2の直線偏光板を貼合し、前記位相差板が2重窓の内部にあって、該位相差板が左右に動く事によって窓に入射した光が2重窓における光の透過領域を制御する事を特徴とする可動式建築用構造物。
【請求項7】
請求項6に記載の可動式建築構造物において前記2重窓は同心円の2重の筒状窓であって、第1の直線偏光板が円筒形であり、他の同心円の円周面を1/2に分け、半周に貼合した前記第2の直線偏光板と
さらに半周に貼合した、第2の直線偏光板と異なる偏光軸の第2の直線偏光板と
さらに2重の同心円の窓の間に装置した可動式の前記位相差板を備えた事を特徴とする可動式建築用構造物。
【請求項8】
請求項6に記載の可動式建築用構造物においてにおいて形状が多角形の2重の窓であって、多角形の窓の1面が前記第1の直線偏光板であり、他の1面の多角形の面を上下1/2に分け、半面前記第2の直線偏光板を貼合し、さらに残りの半面に第2の直線偏光板と異なる偏光軸の第2の直線偏光板を貼合し、
さらに2重の多角形の窓の内部に装置した上下に可動式の前記位相差板を備えた事を特徴とする可動式建築用構造物。






















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−102496(P2012−102496A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250504(P2010−250504)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(504081626)
【Fターム(参考)】