説明

偏光板の製造方法および偏光板

【課題】基材フィルムをそのまま保護フィルムとして用いることができる偏光板の製造方法、ならびにそれで得られた偏光板を提供する。
【解決手段】ポリエチレン樹脂からなる表面層を有する基材フィルムの表面層側にポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層を直接形成する樹脂層形成工程と、前記基材フィルムと樹脂層とを備える積層フィルムを、基材フィルムごと一軸延伸する一軸延伸工程と、前記一軸延伸後のフィルムを二色性色素で染色する染色工程とを含む、偏光板の製造方法、ならびに、ポリエチレン樹脂からなる表面層を有する配向した基材フィルムと、前記基材フィルムの前記表面層に積層される配向したポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層とを備える積層フィルムであって、前記基材フィルムの配向方向と前記樹脂層の配向方向とが同じであり、前記樹脂層が、ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向された偏光子層である偏光板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板の製造方法およびそれで得られた偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、液晶表示装置における偏光の供給素子として、また偏光の検出素子として、広く用いられている。かかる偏光板として、従来より、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの片面または両面にトリアセチルセルロースなどからなる保護フィルムを接着したものが使用されているが、近年、液晶表示装置のノート型パーソナルコンピュータや携帯電話などモバイル機器への展開、さらには大型テレビへの展開などに伴い、偏光板の薄型軽量化が求められている。
【0003】
10μm以下の超薄型の偏光板を得る方法として、たとえば特開2000−338329号公報(特許文献1)には、基材となる熱可塑性樹脂フィルム上にポリビニルアルコール水溶液を塗布してポリビニルアルコール系樹脂層を形成し、熱可塑性樹脂フィルムごと延伸・染色するような方法が開示されている。特許文献1には、基材となる熱可塑性樹脂フィルムとして、エチレン−酢酸ビニル共重合体の表面層を有するポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルムを用いた場合などが例示されている。しかしながら、このような特許文献1に開示された方法では、基材となる熱可塑性樹脂フィルムとポリビニルアルコール系樹脂との密着性が十分ではない場合が多く、延伸、染色、架橋、乾燥などの後工程で剥離が生じてしまう場合がある。特に、高い偏光性能を引き出そうとして高倍率で延伸を実施した場合には剥離を生じやすい。
【0004】
また、特許文献1に開示された方法では、基材となる熱可塑性樹脂フィルムをそのまま保護膜として用いようとした場合には密着力が足りない。これを避けるためにプライマー層などの下塗り処理を別工程で塗布する方法も挙げられるが、それでも密着性は十分ではなく、他の基材への転写が必要となってしまい、工程が煩雑となりコスト増のため好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−338329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、基材フィルムとその上に積層されたポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層とが上述した剥離を抑制し得る密着性を得ることができ、基材フィルムをそのまま保護フィルムとして用いることができる偏光板の製造方法を提供することにあり、ならびに前記密着性を有する偏光板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の偏光板の製造方法は、ポリエチレン樹脂からなる表面層を有する基材フィルムの表面層側にポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層を直接形成する樹脂層形成工程と、前記基材フィルムと樹脂層とを備える積層フィルムを、基材フィルムごと一軸延伸する延伸工程と、前記一軸延伸後のフィルムを二色性色素で染色する染色工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の偏光板の製造方法において、前記ポリエチレン樹脂は、低密度ポリエチレンであることが好ましい。
【0009】
本発明はまた、ポリエチレン樹脂からなる表面層を有する配向した基材フィルムと、前記基材フィルムの前記表面層に積層される配向したポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層とを備える積層フィルムであって、前記基材フィルムの配向方向と前記樹脂層の配向方向とが同じであり、前記樹脂層が、ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向された偏光子層である偏光板についても提供する。
【0010】
本発明の偏光板において、前記ポリエチレン樹脂は、低密度ポリエチレンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基材フィルムとその上に積層されたポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層とが上述した剥離を抑制し得る密着性を得ることができ、他の基材に転写したりすることなく、基材フィルムをそのまま保護フィルムとして用いることができ、材料や工程を合理化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の偏光板の製造方法の好ましい一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<偏光板の製造方法>
図1は、本発明の偏光板の製造方法の好ましい一例を示すフローチャートである。本発明の偏光板の製造方法は、図1に示すように、ポリエチレン樹脂からなる表面層を有する基材フィルムの表面層側にポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層を直接形成する樹脂層形成工程(S10)、前記基材フィルムと樹脂層とを備える積層フィルムを、基材フィルムごと一軸延伸する延伸工程(S20)、前記一軸延伸後のフィルムを二色性色素で染色する染色工程(S30)をこの順番に実施するものである。この製造方法により、延伸された基材フィルム上に、厚さ10μm以下の偏光子層を備えた偏光板を得ることができる。以下、図1におけるS10〜S30の各工程について、詳しく説明する。
【0014】
〔1〕樹脂層形成工程(S10)
樹脂層形成工程では、基材フィルムの一方の表面上にポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層を形成する。
【0015】
(基材フィルム)
本発明における基材フィルムは、ポリエチレン樹脂からなる表面層を有することを特徴とする。ここで、表面層を構成する「ポリエチレン樹脂」とは、ホモポリエチレン、およびエチレンとα−オレフィンとの共重合体を指す。α−オレフィンの例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。エチレンとα−オレフィンとの共重合体においてα−オレフィンの量があまりに増えると密着性を損ねるため、α−オレフィンの含有量は15重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることが最も好ましい。
【0016】
ポリエチレン樹脂の密度は、高密度ポリエチレンであっても、低密度ポリエチレンであっても構わないが、透明性の観点から低密度ポリエチレンであることが好ましい。また、例密度ポリエチレンには、JIS K 6899−1:2000にて定義されるように、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)がある。LDPEの例としては、住友化学(株)などから販売されているスミカセン:F208−1などが挙げられる。LLDPEの例としては、スミカセンE:FV401、スミカセン:F411−0などが挙げられる。これらの中でも、とりわけ延伸性に優れるLLDPEが好ましい。
【0017】
表面層の厚みは、密着に支障がない厚み以上あれば特に限定されるものではなく、1μm以上であることが好ましい。厚みの上限については特に限定はなく、表面層が基材フィルムの大部分を占めていてもよい。さらには、基材フィルムそのものがポリエチレン樹脂で形成されていてもよい。
【0018】
基材フィルムの表面層を除く支持体部分は特に限定されるものではなく、ポリビニルアルコール系樹脂を延伸するのに都合の良い樹脂から形成されるものでよい。ポリビニルアルコール系樹脂の延伸は通常90〜180℃の範囲で実施されるため、この範囲で高倍率に延伸ができる樹脂を支持体として選べばよい。このような樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂)、(メタ)アクリル系樹脂、セルロースエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、およびこれらの混合物、共重合物などが挙げられる。
【0019】
基材フィルムの支持体は、上述の樹脂1種類のみを用いた単層であっても構わないし、樹脂を2種類以上をブレンドしたものであっても構わない。もちろん、単層でなく多層であっても構わない。
【0020】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられ、安定的に高倍率に延伸しやすく好ましい。また、プロピレンにエチレンを共重合することで得られるエチレン−ポリプロピレン共重合体なども用いることもできる。共重合は他の種類のモノマーでも可能であり、プロピレンに共重合可能な他種のモノマーとしては、たとえば、エチレン、α−オレフィンを挙げることができる。α−オレフィンとしては、炭素数4以上のα−オレフィンが好ましく用いられ、より好ましくは、炭素数4〜10のα−オレフィンである。炭素数4〜10のα−オレフィンとしては、たとえば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセンなどの直鎖状モノオレフィン類;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテンなどの分岐状モノオレフィン類;ビニルシクロヘキサンなどである。プロピレンとこれに共重合可能な他のモノマーとの共重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。共重合体中の当該他のモノマー由来の構成単位の含有率は、「高分子分析ハンドブック」(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法に従い、赤外線(IR)スペクトル測定を行なうことにより求めることができる。
【0021】
上述した中でも、プロピレン系樹脂フィルムを構成するプロピレン系樹脂として、プロピレンの単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、および、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体が好ましく用いられる。
【0022】
また、プロピレン系樹脂フィルムを構成するプロピレン系樹脂の立体規則性は、実質的にアイソタクチックまたはシンジオタクチックであることが好ましい。実質的にアイソタクチックまたはシンジオタクチックの立体規則性を有するプロピレン系樹脂からなるプロピレン系樹脂フィルムは、その取扱い性が比較的良好であるとともに、高温環境下における機械的強度に優れている。
【0023】
ポリエステル系樹脂は、エステル結合を有するポリマーであり、主に、多価カルボン酸と多価アルコールの重縮合体である。用いられる多価カルボン酸は、主に2価のジカルボン酸が用いられ、たとえば、イソフタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチルなどがある。また、用いられる多価アルコールも主に2価のジオールが用いられ、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。具体的な樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリシクロへキサンジメチルテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレートなどが挙げられる。これらのブレンド樹脂や、共重合体も好適に用いることができる。
【0024】
環状ポリオレフィン系樹脂としては、好ましくはノルボルネン系樹脂が用いられる。環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、たとえば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報などに記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンなどのα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、およびこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびにそれらの水素化物などが挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。
【0025】
環状ポリオレフィン系樹脂としては種々の製品が市販されている。具体例としては、Topas(登録商標)(Ticona社製)、アートン(登録商標)(JSR(株)製)、ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)(日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(ZEONEX)(登録商標)(日本ゼオン(株)製)、アペル(登録商標)(三井化学(株)製)が挙げられる。
【0026】
(メタ)アクリル系樹脂としては、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。たとえば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(たとえば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルが挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂として、より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が用いられる。
【0027】
セルロースエステル系樹脂は、セルロースと脂肪酸のエステルである。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネートなどが挙げられる。また、これらの共重合物や、水酸基の一部を他種の置換基などで修飾された物なども挙げられる。これらの中でも、セルローストリアセテートが特に好ましい。セルローストリアセテートは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。セルローストリアセテートの市販品の例としては、フジタック(登録商標)TD80(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD80UF(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD80UZ(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD40UZ(富士フィルム(株)製)、KC8UX2M(コニカミノルタオプト(株)製)、KC4UY(コニカミノルタオプト(株)製)などが挙げられる。
【0028】
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合されたポリマーからなるエンジニアリングプラスチックであり、高い耐衝撃性、耐熱性、難燃性を有する樹脂である。また、高い透明性を有することから光学用途でも好適に用いられる。光学用途では光弾性係数を下げるためにポリマー骨格を修飾したような変性ポリカーボネートと呼ばれる樹脂や、波長依存性を改良した共重合ポリカーボネートなども市販されており、好適に用いることができる。このようなポリカーボネート樹脂は広く市販されており、たとえば、パンライト(登録商標)(帝人化成(株))、ユーピロン(登録商標)(三菱エンジニアリングプラスチック(株))、SDポリカ(登録商標)(住友ダウ(株))、カリバー(登録商標)(ダウケミカル(株))などが挙げられる。
【0029】
基材フィルムの支持体には、上述した熱可塑性樹脂の他に、任意の適切な添加剤が添加されていてもよい。このような添加剤としては、たとえば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、および着色剤などが挙げられる。基材フィルムの支持体中の前記にて例示した熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。基材フィルムの支持体中の熱可塑性樹脂の含有量が50重量%未満の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性などが十分に発現されないおそれがあるからである。
【0030】
支持体を形成する樹脂はポリエチレン樹脂との密着性に優れるものが好ましいが、ポリエチレン樹脂との密着に劣る樹脂であっても、表面層と支持体との間に接着層を介在させることで密着を高めることもできる。この場合、支持体、表面層、および接着層などは、多層溶融押出などによって共押出成形して一度にフィルム成形することができる。
【0031】
基材フィルムの厚みは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性などの作業性の点から1〜500μmが好ましく、1〜300μmがより好ましく、5〜200μmがさらに好ましい。基材フィルムの厚みは、5〜150μmが最も好ましい。
【0032】
本発明では、ポリエチレン樹脂からなる表面層を有する基材フィルムを用いるが、基材フィルムとポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層との間に優れた密着性をもたすために、表面層にコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理などを行ってもよい。
【0033】
本発明における基材フィルムは、後述する延伸工程で延伸された後には、下記式(1)で表わされる位相差値を有する。この位相差値が大きい場合には、液晶表示装置に実装した際に干渉ムラが見える不具合を生じる場合がある。このような位相差値は、たとえば、基材フィルムをポリビニルアルコール樹脂を塗布せずに延伸を実施することで測定することができる。位相差値の測定には、王子計測機器(株)などから販売されているような位相差測定装置(KOBRA−WPR:商品名)などを使用することができる。また、積層フィルムを延伸処理した後においても、同フィルムを80〜90℃の熱水中に浸しながら、ポリビニルアルコール樹脂層のみを擦り落とすことで、基材フィルムだけを取り出すことができる。このようにして取り出された基材フィルムは、上述の位相差測定装置などで位相差値を測定することができる。
【0034】
詳しくは、バックライトから基材フィルムに光が入射する際に生じる偏光と偏光子との間に存在する位相差値による虹模様が観察される不具合である。このような虹模様は、基材フィルムとバックライトとの間に輝度向上フィルムなどを挟んだ場合には特に顕著となり、表示不良となる。
【0035】
延伸後の基材フィルムの位相差値は延伸倍率に応じて高くなり、倍率が低い領域でも10nm以上の位相差値を有する。支持体に位相差値を発現しやすい樹脂を用いたり、延伸倍率を上げたり、基材厚みを増やしたりすることで、この位相差値が4000nm以上になってしまうと、液晶表示装置に実装した際に虹模様が顕著となる。これを回避するために、基材フィルムの位相差値は3000nm以下であるようにすることが好ましく、2000nm以下であることがより好ましく、1000nm以下であることが最も好ましい。
【0036】
また、下記式(2)で定義されるNZ係数については、低い方が斜視時の位相差値が小さいため低い方が好ましい。NZ係数は、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは1.8以下、最も好ましくは1.6以下である。
【0037】
R=(nx−ny)×d………(1)
NZ=(nx−nz)/(nx−ny)………(2)
ここで、Rは位相差値、dは基材フィルムの厚み、NZはNZ係数を表す。また、nxはフィルム面内において屈折率が最大となる方向の屈折率であり、通常は延伸方向の屈折率に相当する。nyはフィルム面内において、nxと直交する方向の屈折率である。nzはnxおよびnyと直交する方向の屈折率であり、基材フィルムの厚み方向の屈折率に相当する。
【0038】
(樹脂層)
基材フィルムの表面層側に積層される樹脂層を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、完全ケン化品であることが好ましい。ケン化度の範囲は、80.0〜100.0モル%であるものが好ましく、90.0〜99.5モル%の範囲であるものがより好ましく、さらには94.0〜99.0モル%の範囲であるものが最も好ましい。ケン化度が80.0モル%未満であると、得られた偏光板において耐水性・耐湿熱性に著しく劣る不具合がある。また、ケン化度が99.5モル%を超えるポリビニルアルコール系樹脂を使用した場合には、著しく染色速度が遅くなり、十分な偏光性能を有する偏光板が得られない場合があり、また製造において通常の数倍もの時間を要する不具合を生じる場合がある。
【0039】
ここでいうケン化度とは、ポリビニルアルコール系樹脂の原料であるポリ酢酸ビニル系樹脂に含まれる酢酸基がケン化工程により水酸基に変化した割合をユニット比(モル%)で表したものであり、下記式で定義される数値である。JIS K 6726(1994)で規定されている方法で求めることができる。
【0040】
ケン化度(モル%)=(水酸基の数)÷(水酸基の数+酢酸基の数)×100
ケン化度が高いほど、水酸基の割合が高いことを示しており、すなわち結晶化を阻害する酢酸基の割合が低いことを示している。
【0041】
また、本発明に用いるポリビニルアルコール系樹脂は、一部が変性されている変性ポリビニルアルコールでもよい。たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂をエチレン、プロピレンなどのオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のアルキルエステル、アクリルアミドなどで変性したものなどが挙げられる。変性の割合は30モル%未満であることが好ましく、10モル%未満であることがより好ましい。30モル%を超える変性を行った場合には、二色性色素を吸着しにくくなり、偏光性能が低くなってしまう不具合を生じる。
【0042】
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度も特に限定されるものではないが、100〜10000が好ましく、1500〜8000がより好ましく、さらには2000〜5000であることが最も好ましい。ここでいう平均重合度もJIS K 6726(1994)によって定められた方法によって求められる数値である。
【0043】
このような特性を有するポリビニルアルコール系樹脂としては、たとえば(株)クラレ製のPVA124(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、PVA117(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、PVA624(ケン化度:95.0〜96.0モル%)およびPVA617(ケン化度:94.5〜95.5モル%);たとえば日本合成化学工業(株)製のAH−26(ケン化度:97.0〜98.8モル%)、AH−22(ケン化度:97.5〜98.5モル%)、NH−18(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、およびN−300(ケン化度:98.0〜99.0モル%);たとえば日本酢ビ・ポバール(株)のJC−33(ケン化度:99.0モル%以上)、JM−33(ケン化度:93.5〜95.5モル%)、JM−26(ケン化度:95.5〜97.5モル%)、JP−45(ケン化度:86.5〜89.5モル%)、JF−17(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、JF−17L(ケン化度:98.0〜99.0モル%)およびJF−20(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、などが挙げられ、本発明において好適に用いることができる。
【0044】
形成する樹脂層の厚みは、3μm超かつ30μm以下であることが好ましく、さらには5〜20μmが好ましい。3μm以下であると延伸後に薄くなりすぎて染色性が著しく悪化してしまい、30μmを超えると、最終的に得られる偏光子層の厚みが10μmを超えてしまうことがあり好ましくない。
【0045】
樹脂層は、好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂の粉末を良溶媒に溶解させて得たポリビニルアルコール系樹脂溶液を基材フィルムの一方の表面上に塗工し、溶剤を蒸発させて乾燥することにより形成される。樹脂層をこのように形成することにより、薄く形成することが可能となる。ポリビニルアルコール系樹脂溶液を基材フィルムに塗工する方法としては、ワイヤーバーコーティング法、リバースコーティング、グラビアコーティングなどのロールコーティング法、ダイコート法、カンマコート法、リップコート法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法、などを公知の方法から適宜選択して採用できる。乾燥温度は、たとえば50〜200℃であり、好ましくは60〜150℃である。乾燥時間は、たとえば2〜20分である。
【0046】
〔2〕延伸工程(S20)
続く延伸工程では、前記基材フィルムと樹脂層とを備える積層フィルムを、基材フィルムごと一軸延伸し、延伸フィルムを得る。好ましくは、5倍超かつ17倍以下の延伸倍率となるように一軸延伸する。さらに好ましくは5倍超かつ8倍以下の延伸倍率となるように一軸延伸する。延伸倍率が5倍以下だと、ポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層が十分に配向しないため、結果として、偏光子層の偏光度が十分に高くならない不具合を生じることがある。一方、延伸倍率が17倍を超えると延伸時の積層フィルムの破断が生じ易くなると同時に、延伸フィルムの厚みが必要以上に薄くなり、後工程での加工性・ハンドリング性が低下する虞がある。延伸工程(S20)における延伸処理は、一段での延伸に限定されることはなく多段で行うこともできる。多段で行う場合は、延伸処理の全段を合わせて5倍超の延伸倍率となるように延伸処理を行う。
【0047】
本実施形態における延伸工程(S20)においては、積層フィルムの長手方向に対して行なう縦延伸処理や、幅方向に対して延伸する横延伸処理などを実施することができる。縦延伸方式としては、ロール間延伸方法、圧縮延伸方法などが挙げられ、横延伸方式としてはテンター法などが挙げられる。
【0048】
また、延伸処理は、湿潤式延伸方法と乾式延伸方法のいずれも採用できるが、乾式延伸方法を用いる方が、積層フィルムを延伸する際の温度を広い範囲から選択することができる点で好ましい。
【0049】
〔3〕染色工程(S30)
染色工程では、一軸延伸後のフィルム(延伸フィルム)を二色性色素で染色する。二色性色素としては、たとえば、ヨウ素や有機染料などが挙げられる。有機染料としては、たとえば、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンイエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、イエロー3G、イエローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラックなどが使用できる。これらの二色性物質は、一種類でも良いし、二種類以上を併用して用いても良い。
【0050】
染色工程は、たとえば、前記二色性色素を含有する溶液(染色溶液)に、延伸フィルム全体を浸漬することにより行う。染色溶液としては、前記二色性色素を溶媒に溶解した溶液を使用できる。染色溶液の溶媒としては、一般的には水が使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒がさらに添加されても良い。二色性色素の濃度としては、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.02〜7重量%であることがより好ましく、0.025〜5重量%であることが特に好ましい。
【0051】
二色性色素としてヨウ素を使用する場合、染色効率をより一層向上できることから、さらにヨウ化物を添加することが好ましい。このヨウ化物としては、たとえば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンなどが挙げられる。これらヨウ化物の添加割合は、染色溶液において、0.01〜10重量%であることが好ましい。ヨウ化物の中でも、ヨウ化カリウムを添加することが好ましい。ヨウ化カリウムを添加する場合、ヨウ素とヨウ化カリウムの割合は重量比で、1:5〜1:100の範囲にあることが好ましく、1:6〜1:80の範囲にあることがより好ましく、1:7〜1:70の範囲にあることが特に好ましい。
【0052】
染色溶液への延伸フィルムの浸漬時間は、特に限定されないが、通常は15秒間〜15分間の範囲であることが好ましく、1分間〜3分間であることがより好ましい。また、染色溶液の温度は、10〜60℃の範囲にあることが好ましく、20〜40℃の範囲にあることがより好ましい。
【0053】
染色工程において、染色に次いで架橋処理を行うことができる。架橋処理は、たとえば架橋剤を含む溶液(架橋溶液)中に延伸フィルムを浸漬することにより行うことができる。架橋剤としては、従来公知の物質を使用することができる。たとえば、ホウ酸、ホウ砂などのホウ素化合物や、グリオキザール、グルタルアルデヒドなどが挙げられる。これらは一種類でも良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0054】
架橋溶液として、架橋剤を溶媒に溶解した溶液を使用できる。溶媒としては、たとえば水が使用できるが、さらに、水と相溶性のある有機溶媒を含んでも良い。架橋溶液における架橋剤の濃度は、これに限定されるものではないが、1〜20重量%の範囲にあることが好ましく、6〜15重量%であることがより好ましい。
【0055】
架橋溶液中には、ヨウ化物を添加してもよい。ヨウ化物の添加により、樹脂層の面内における偏光特性をより均一化させることができる。ヨウ化物としては、たとえば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンが挙げられる。ヨウ化物の含有量は、0.05〜15重量%、より好ましくは0.5〜8重量%である。
【0056】
架橋溶液への延伸フィルムの浸漬時間は、通常、15秒間〜20分間であることが好ましく、30秒間〜15分間であることがより好ましい。また、架橋溶液の温度は、10〜80℃の範囲にあることが好ましい。
【0057】
最後に洗浄工程および乾燥工程を行なうことが好ましい。洗浄工程としては、水洗浄処理を施すことができる。水洗浄処理は、通常、イオン交換水、蒸留水などの純水に延伸フィルムを浸漬することにより行なうことができる。水洗浄温度は、通常3〜50℃、好ましくは4〜20℃の範囲である。浸漬時間は通常2秒間〜300秒間、好ましくは3秒間〜240秒間である。
【0058】
洗浄工程は、ヨウ化物溶液による洗浄処理と水洗浄処理を組み合わせてもよく、適宜にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、プロパノールなどの液体アルコールを配合した溶液を用いることもできる。
【0059】
洗浄工程の後に、乾燥工程を施すことが好ましい。乾燥工程として、任意の適切な方法(たとえば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)を採用しうる。たとえば、加熱乾燥の場合の乾燥温度は、通常、20〜95℃であり、乾燥時間は、通常、1分間〜15分間程度である。以上の染色工程(S30)により、樹脂層が偏光子としての機能を有することになる。本明細書においては、偏光子としての機能を有する樹脂層を「偏光子層」という。
【0060】
上述したような本発明の偏光板の製造方法によれば、基材フィルムとその上に積層されたポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層とが良好な密着性を得ることができる。これによって、他の基材に転写したりすることなく、基材フィルムをそのまま保護フィルムとして用いることができ、材料や工程を合理化することができる。
【0061】
<偏光板>
本発明は、ポリエチレン樹脂からなる表面層を有する配向した基材フィルムと、前記基材フィルムの前記表面層に積層される配向したポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層とを備える積層フィルムであって、前記基材フィルムの配向方向と前記樹脂層の配向方向とが同じであり、前記樹脂層が、ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向された偏光子層である偏光板についても提供する。このような本発明の偏光板は、上述した本発明の偏光板の製造方法で好適に製造することができる。本発明の偏光板では、上述したように、基材フィルムとその上に積層されたポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層とが良好な密着性を有するため、他の基材に転写したりすることなく、基材フィルムをそのまま保護フィルムとして用いている。本発明の偏光板においても、基材フィルムの表面層を構成するポリエチレン樹脂は、低密度ポリエチレンであることが、好ましい。
【実施例】
【0062】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、例中、含有量ないし使用量を表す%および部は、特記ない限り、重量基準である。
【0063】
<実施例1>
[基材フィルムの作成方法]
ポリプロピレン樹脂(住友化学(株)製「住友ノーブレンFLX80E4」)からなる支持体にポリエチレン樹脂(住友化学(株)製「住友スミカセンF411−0」)からなる表面層を配置した基材フィルムを、多層押出成形機を用いた共押出成形により作製した。得られた基材フィルムの合計厚みは90μmであり、各層の厚み比は支持体/表面層=4/1の比率とした。該基材フィルムの表面層側にはコロナ放電処理を実施した。
【0064】
[ポリビニルアルコール系樹脂層の形成]
ポリビニルアルコール粉末(クラレ(株)製「PVA124」、平均重合度2400、平均ケン化度98.0〜99.0モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度8重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液を、前記基材フィルムの表面層上にリップコーターを用いて塗工し、80℃で2分間、70℃で2分間、ついで60℃で4分間の条件下で乾燥させることにより、基材フィルム/ポリビニルアルコール系樹脂層からなる積層フィルムを作製した。乾燥後のポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは10.3μmであった。
【0065】
[延伸フィルムの作成]
前記積層フィルムを160℃の延伸温度で5.8倍に自由端縦一軸延伸し、延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの厚みは29μmであり、ポリビニルアルコール樹脂層の厚みは4.8μmであった。延伸工程での基材フィルムとポリビニルアルコール樹脂層の間の剥離は起こらず、良好な密着状態を保った。延伸フィルム(延伸された積層フィルム)を80℃の熱水に浸して樹脂層を擦り落とすことで、延伸された基材フィルムを取り出した。この基材フィルムの位相差値を王子計測機器(株)製:KOBRA−WPRにて測定したところ、331nmであった。
【0066】
[染色・架橋]
(染色工程)
その後、延伸フィルムを60℃の温浴に60秒浸漬し、30℃のヨウ素とヨウ化カリウムの混合水溶液である染色溶液に150秒ほど浸漬して染色した後、10℃の純水で余分なヨウ素液を洗い流した。次いで76℃のホウ酸とヨウ化カリウムの混合水溶液に600秒浸漬させた。その後10℃の純水で4秒間洗浄し、最後に50℃で300秒間乾燥させた。以上の工程により樹脂層から偏光子層を形成し、偏光板を得た。染色・架橋工程での基材フィルムとポリビニルアルコール樹脂層の間の剥離は起こらず、良好な密着状態を保った。
【0067】
[密着確認]
得られた偏光板を感圧式接着剤を用いてソーダガラス板に貼合し、JIS D0202−1988に準拠したクロスハッチ試験(JISでは「碁盤目付着性試験」と記載されているもの)を行い、碁盤目100個あたりの剥がれずに残った碁盤目の数で密着力を評価した。その結果、剥がれずに残った碁盤目は82/100であった。
【0068】
[実装評価]
得られた偏光板の偏光子層側にλ/4位相差板を、感圧式接着剤層を用いて貼合した。この際、λ/4位相差値の遅相軸と偏光子の吸収軸が45度となるように貼合して、円偏光板とした。NTTdocomo社から市販されている携帯電話(P−01A)を分解して、液晶セルを取り出した。バックライト側の偏光板を剥がして液晶セル表面をむき出しにした後、このセル表面に上述の円偏光板を感圧式接着剤を用いて貼合した。この際、作成した円偏光板と視認側の円偏光板(もともと市販品に貼ってあったもの)との関係は、位相差板の遅相軸が直交し、かつ、偏光子の吸収軸も直交するような配置とした。これにより、この液晶表示装置は、ノーマリーブラックの状態となった。携帯電話を再び組み立て、白表示、黒表示、グレー表示など様々な表示をさせた状態で目視評価したが、いずれの角度から表示装置を観察しても、特に虹模様は確認されなかった。
【0069】
<実施例2>
表面層をポリエチレン樹脂(住友化学(株)製「住友スミカセンE FV401」)に変えた以外は、実施例1と同じ方法で偏光板を得た。延伸フィルム(延伸された積層フィルム)を80℃の熱水に浸して樹脂層を擦り落とすことで、延伸された基材フィルムを取り出した。この基材フィルムの位相差値を王子計測機器(株)製:KOBRA−WPRにて測定したところ、322nmであった。
【0070】
[密着確認]
得られた偏光板を感圧式接着剤を用いてソーダガラス板に貼合し、JIS D0202−1988に準拠したクロスハッチ試験(JISでは「碁盤目付着性試験」と記載されているもの)を行い、碁盤目100個あたりの剥がれずに残った碁盤目の数で密着力を評価した。その結果、剥がれずに残った碁盤目は79/100であった。
【0071】
[実装評価]
得られた偏光板の偏光子層側にλ/4位相差板を、感圧式接着剤層を用いて貼合した。この際、λ/4位相差値の遅相軸と偏光子の吸収軸が45度となるように貼合して、円偏光板とした。NTTdocomo社から市販されている携帯電話(P−01A)を分解して、液晶セルを取り出した。バックライト側の偏光板を剥がして液晶セル表面をむき出しにした後、このセル表面に上述の円偏光板を感圧式接着剤を用いて貼合した。この際、作成した円偏光板と視認側の円偏光板(もともと市販品に貼ってあったもの)との関係は、位相差板の遅相軸が直交し、かつ、偏光子の吸収軸も直交するような配置とした。これにより、この液晶表示装置は、ノーマリーブラックの状態となった。携帯電話を再び組み立て、白表示、黒表示、グレー表示など様々な表示をさせた状態で目視評価したが、いずれの角度から表示装置を観察しても、特に虹模様は確認されなかった。
【0072】
<実施例3>
表面層をポリエチレン樹脂(住友化学(株)製「住友スミカセン F208−1」)に変えた以外は、実施例1と同じ方法で偏光板を得た。延伸フィルム(延伸された積層フィルム)を80℃の熱水に浸して樹脂層を擦り落とすことで、延伸された基材フィルムを取り出した。この基材フィルムの位相差値を王子計測機器(株)製:KOBRA−WPRにて測定したところ、297nmであった。
【0073】
[密着確認]
得られた偏光板を感圧式接着剤を用いてソーダガラス板に貼合し、JIS D0202−1988に準拠したクロスハッチ試験(JISでは「碁盤目付着性試験」と記載されているもの)を行い、碁盤目100個あたりの剥がれずに残った碁盤目の数で密着力を評価した。その結果、剥がれずに残った碁盤目は98/100であった。
【0074】
[実装評価]
得られた偏光板の偏光子層側にλ/4位相差板を、感圧式接着剤層を用いて貼合した。この際、λ/4位相差値の遅相軸と偏光子の吸収軸が45度となるように貼合して、円偏光板とした。NTTdocomo社から市販されている携帯電話(P−01A)を分解して、液晶セルを取り出した。バックライト側の偏光板を剥がして液晶セル表面をむき出しにした後、このセル表面に上述の円偏光板を感圧式接着剤を用いて貼合した。この際、作成した円偏光板と視認側の円偏光板(もともと市販品に貼ってあったもの)との関係は、位相差板の遅相軸が直交し、かつ、偏光子の吸収軸も直交するような配置とした。これにより、この液晶表示装置は、ノーマリーブラックの状態となった。携帯電話を再び組み立て、白表示、黒表示、グレー表示など様々な表示をさせた状態で目視評価したが、いずれの角度から表示装置を観察しても、特に虹模様は確認されなかった。
【0075】
<実施例4>
基材フィルムの厚みについて、合計厚みを110μmとし、各層の厚み比を支持体/表面層=5/1の比率とした以外は、実施例3と同じ方法で偏光板を得た。表面層や支持体の樹脂も実施例3と同じものを用いた。延伸フィルム(延伸された積層フィルム)を80℃の熱水に浸して樹脂層を擦り落とすことで、延伸された基材フィルムを取り出した。この基材フィルムの位相差値を王子計測機器(株)製:KOBRA−WPRにて測定したところ、889nmであった。
【0076】
[密着確認]
得られた偏光板を感圧式接着剤を用いてソーダガラス板に貼合し、JIS D0202−1988に準拠したクロスハッチ試験(JISでは「碁盤目付着性試験」と記載されているもの)を行い、碁盤目100個あたりの剥がれずに残った碁盤目の数で密着力を評価した。その結果、剥がれずに残った碁盤目は99/100であった。
【0077】
[実装評価]
得られた偏光板の偏光子層側にλ/4位相差板を、感圧式接着剤層を用いて貼合した。この際、λ/4位相差値の遅相軸と偏光子の吸収軸が45度となるように貼合して、円偏光板とした。NTTdocomo社から市販されている携帯電話(P−01A)を分解して、液晶セルを取り出した。バックライト側の偏光板を剥がして液晶セル表面をむき出しにした後、このセル表面に上述の円偏光板を感圧式接着剤を用いて貼合した。この際、作成した円偏光板と視認側の円偏光板(もともと市販品に貼ってあったもの)との関係は、位相差板の遅相軸が直交し、かつ、偏光子の吸収軸も直交するような配置とした。これにより、この液晶表示装置は、ノーマリーブラックの状態となった。携帯電話を再び組み立て、白表示、黒表示、グレー表示など様々な表示をさせた状態で目視評価したが、いずれの角度から表示装置を観察しても、特に虹模様は確認されなかった。
【0078】
<比較例1>
基材フィルムに、90μm厚のポリプロピレン樹脂(住友化学(株)製「住友ノーブレンFLX80E4」)の単層フィルムを用いた以外は、実施例1と同じ方法で偏光性積層フィルムを作製した。延伸工程では不具合を生じなかったものの、架橋工程でポリビニルアルコール樹脂層の剥離が起こり、安定的に均一な偏光板が得られなかった。延伸フィルム(延伸された積層フィルム)を80℃の熱水に浸して樹脂層を擦り落とすことで、延伸された基材フィルムを取り出した。この基材フィルムの位相差値を王子計測機器(株)製:KOBRA−WPRにて測定したところ、924nmであった。
【0079】
[密着確認]
得られた偏光性積層フィルムを感圧式接着剤を用いてソーダガラス板に貼合し、JIS D0202−1988に準拠したクロスハッチ試験(JISでは「碁盤目付着性試験」と記載されているもの)を行い、碁盤目100個あたりの剥がれずに残った碁盤目の数で密着力を評価した。その結果、剥がれずに残った碁盤目は0/100であった。
【0080】
[実装評価]
得られた偏光板の偏光子層側にλ/4位相差板を、感圧式接着剤層を用いて貼合した。この際、λ/4位相差値の遅相軸と偏光子の吸収軸が45度となるように貼合して、円偏光板とした。NTTdocomo社から市販されている携帯電話(P−01A)を分解して、液晶セルを取り出した。バックライト側の偏光板を剥がして液晶セル表面をむき出しにした後、このセル表面に上述の円偏光板を感圧式接着剤を用いて貼合した。この際、作成した円偏光板と視認側の円偏光板(もともと市販品に貼ってあったもの)との関係は、位相差板の遅相軸が直交し、かつ、偏光子の吸収軸も直交するような配置とした。これにより、この液晶表示装置は、ノーマリーブラックの状態となった。携帯電話を再び組み立て、白表示、黒表示、グレー表示など様々な表示をさせた状態で目視評価したが、いずれの角度から表示装置を観察しても、特に虹模様は確認されなかった。
【0081】
<比較例2>
比較例1で使用した基材フィルムの表面にプライマー層を塗布した以外は、比較例1と同じ方法で偏光性積層フィルムを作製した。プライマー層の作成は以下のとおり。ポリビニルアルコール粉末(日本合成化学工業(株)製、平均重合度1100、ケン化度99.5モル%、商品名:Z−200)を95℃の熱水に溶解させ濃度3重量%の水溶液を調製した。得られた水溶液にポリビニルアルコール粉末6重量部に対して5重量部の架橋剤(住友化学(株)製、商品名:スミレーズ(登録商標)レジン650)を混ぜた。得られた混合水溶液をコロナ処理を施した比較例1の基材フィルム上にマイクログラビアコーターを用いて塗工し、80℃で10分間乾燥させ厚み0.2μmのプライマー層を形成した。この方法では、延伸工程・染色工程・剥離工程では剥離は生じなかった。
【0082】
[密着確認]
得られた偏光性積層フィルムを感圧式接着剤を用いてソーダガラス板に貼合し、JIS D0202−1988に準拠したクロスハッチ試験(JISでは「碁盤目付着性試験」と記載されているもの)を行い、碁盤目100個あたりの剥がれずに残った碁盤目の数で密着力を評価した。その結果、剥がれずに残った碁盤目は0/100であった。
【0083】
<比較例3>
基材フィルムに、厚みが70μmのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムの単層フィルムを用いた以外は、比較例1と同じ方法で偏光性積層フィルムを作製した。延伸工程では不具合が生じなかったものの、架橋工程でポリビニルアルコール樹脂層の剥離が起こり、安定的に均一な偏光板が得られなかった。延伸フィルム(延伸された積層フィルム)を80℃の熱水に浸して樹脂層を擦り落とすことで、延伸された基材フィルムを取り出した。この基材フィルムの位相差値を王子計測機器(株)製:KOBRA−WPRにて測定したところ、4840nmであった。
【0084】
[実装評価]
得られた偏光板の偏光子層側にλ/4位相差板を、感圧式接着剤層を用いて貼合した。この際、λ/4位相差値の遅相軸と偏光子の吸収軸が45度となるように貼合して、円偏光板とした。NTTdocomo社から市販されている携帯電話(P−01A)を分解して、液晶セルを取り出した。バックライト側の偏光板を剥がして液晶セル表面をむき出しにした後、このセル表面に上述の円偏光板を感圧式接着剤を用いて貼合した。この際、作成した円偏光板と視認側の円偏光板(もともと市販品に貼ってあったもの)との関係は、位相差板の遅相軸が直交し、かつ、偏光子の吸収軸も直交するような配置とした。これにより、この液晶表示装置は、ノーマリーブラックの状態となった。携帯電話を再び組み立て、白表示、黒表示、グレー表示など様々な表示をさせた状態で目視評価したが、虹模様が観察され、表示が不明瞭であった。この虹模様は、特に白表示の状態で斜めの角度から観察した際に、顕著であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン樹脂からなる表面層を有する基材フィルムの表面層側にポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層を直接形成する樹脂層形成工程と、
前記基材フィルムと樹脂層とを備える積層フィルムを、基材フィルムごと一軸延伸する延伸工程と、
前記一軸延伸後のフィルムを二色性色素で染色する染色工程とを含む、偏光板の製造方法。
【請求項2】
前記ポリエチレン樹脂は、低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の偏光板の製造方法。
【請求項3】
ポリエチレン樹脂からなる表面層を有する配向した基材フィルムと、前記基材フィルムの前記表面層に積層される配向したポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層とを備える積層フィルムであって、前記基材フィルムの配向方向と前記樹脂層の配向方向とが同じであり、前記樹脂層が、ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向された偏光子層である、偏光板。
【請求項4】
前記ポリエチレン樹脂は、低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項3に記載の偏光板。

【図1】
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【公開番号】特開2012−103595(P2012−103595A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253853(P2010−253853)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】