説明

偏光板の製造方法

【課題】 本発明は、打痕、異物、又はキズによる外観欠陥がなく、偏光子とシクロオレフィン系樹脂フィルムとの接着力を向上させることができる偏光板の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の偏光板の製造方法は、シクロオレフィン系樹脂フィルムの偏光子が設けられる面に、出力強度0.9〜2.5kWにてコロナ放電処理を施す工程、コロナ放電処理を施したシクロオレフィン系樹脂フィルムを水洗する工程、及び偏光子とシクロオレフィン系樹脂フィルムとを接着剤を介して貼り合わせる工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板の製造方法に関する。また本発明は当該製造方法により得られた偏光板に関する。当該偏光板はこれ単独で、またはこれを積層した光学フィルムとして液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置、CRT、PDP等の画像表示装置を形成しうる。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、液晶のスイッチングによる偏光状態を可視化させたものであり、その表示原理から、偏光子の両面に透明保護フィルムを接着剤層により貼り合わせた偏光板が用いられている。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、延伸した構造のヨウ素系偏光子が一般的に用いられている。透明保護フィルムとしては、トリアセチルセルロース系フィルム、シクロオレフィン系樹脂フィルム等が一般的に用いられている。
【0003】
しかし、従来の偏光板は、高温高湿環境下に長時間晒されると、偏光子と透明保護フィルムとの間で剥離しやすくなるという問題があった。
【0004】
上記問題を解決する方法として、以下の技術が提案されている。
【0005】
特許文献1では、偏光子との接着性を向上させるために、熱可塑性飽和ノルボルネン樹脂フィルムの表面をコロナ放電処理することが提案されている。
【0006】
特許文献2及び3では、密着性を上げるため、偏光フィルム及び/又は保護フィルムの接着表面に、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理などの表面処理を施すことが提案されている。
【0007】
特許文献4では、偏光フィルムとシクロオレフィン系樹脂フィルムとの接着性を向上させるために、シクロオレフィン系樹脂フィルムの偏光フィルムを貼り合せる側の面に、800W以下の出力強度でコロナ放電処理を施すことが提案されている。
【0008】
特許文献5では、接着強度を安定させるために、TACフィルム等の難接着性フィルムをプラズマ処理した後、表面に生じた難接着性のブリード物を水等で洗浄して除去することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−241627号公報
【特許文献2】特開2005−70140号公報
【特許文献3】特開2005−181817号公報
【特許文献4】特開2007−279621号公報
【特許文献5】特開2010−150373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、打痕、異物、又はキズによる外観欠陥がなく、偏光子とシクロオレフィン系樹脂フィルムとの接着力を向上させることができる偏光板の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
また本発明は、前記製造方法により得られる偏光板を提供することを目的とする。さらに本発明は、当該偏光板を積層した光学フィルムを提供すること、及び当該偏光板、光学フィルムを用いた液晶表示装置等の画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す偏光板の製造方法により前記目的に達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介してシクロオレフィン系樹脂フィルムが設けられている偏光板の製造方法であって、
シクロオレフィン系樹脂フィルムの偏光子が設けられる面に、出力強度0.9〜2.5kWにてコロナ放電処理を施す工程、
コロナ放電処理を施したシクロオレフィン系樹脂フィルムを水洗する工程、及び
偏光子とシクロオレフィン系樹脂フィルムとを接着剤を介して貼り合わせる工程、を含む偏光板の製造方法、に関する。
【0014】
シクロオレフィン系樹脂フィルムの表面にコロナ放電処理を施すと、シクロオレフィン系樹脂由来の微粉末状物質(カルボン酸誘導体)が発生し、工場レベルでのロングランを続ける間にその微粉末状物質が蓄積して工場内を汚染する。また、この微粉末状物質が原因となって偏光板の性能や外観が損なわれるという問題もある。例えば、搬送ロールに微粉末状物質が付着すると、偏光子やシクロオレフィン系樹脂フィルムに打痕が付いたり、微粉末状物質がシクロオレフィン系樹脂フィルムの表面に残ると、異物によって偏光板に製品欠陥が生じる。
【0015】
本発明者らは、この微粉末状物質を水等を用いた洗浄処理によって除去することにより、打痕又は異物による外観欠陥がなく、偏光子とシクロオレフィン系樹脂フィルムとの接着性に優れる偏光板が得られることを見出した。
【0016】
コロナ放電の出力強度は、0.9〜2.5kWであることが必要である。出力強度が0.9kW未満の場合には、微粉末状物質の発生を抑制することができるが、フィルムの幅方向において均一にコロナ放電処理することができないため、改質斑が生じて接着力が向上しない。一方、出力強度が2.5kWを超える場合には、フィルム表面にコロナキズが発生しやすくなり、偏光板に製品欠陥が生じやすくなる。
【0017】
また本発明は、前記製造方法により得られる偏光板に関する。
【0018】
また本発明は、前記偏光板が少なくとも1枚積層されている光学フィルム、に関する。
【0019】
さらに本発明は、前記偏光板または前記光学フィルムを含む画像表示装置、に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、偏光子とシクロオレフィン系樹脂フィルムとを接着剤で貼り合わせる前に、シクロオレフィン系樹脂フィルムにコロナ放電処理を施している。コロナ放電処理によって、フィルムの表面には、親水性官能基(−COOHや−OH)やラジカル活性種が導入されたり、フィルムの表面が粗面化される。また、コロナ放電処理によって発生した微粉末状物質を水等を用いた洗浄処理により除去している。それにより、偏光子とシクロオレフィン系樹脂フィルムとの接着力が向上し、高温高湿環境下に長時間晒されても偏光子とシクロオレフィン系樹脂フィルムとの間で剥離しにくい偏光板を得ることができる。また、コロナ放電処理における出力強度を0.9〜2.5kWに調整することにより、フィルム表面にコロナキズを発生させることなく均一に表面改質することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の偏光板の製造方法に用いる偏光子は、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等があげられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。
【0022】
ポリビニルアルコール系偏光子は、ポリビニルアルコール樹脂フィルムを二色性物質(代表的には、ヨウ素、二色性染料)で染色して一軸延伸したものが用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、好ましくは100〜10000、さらに好ましくは1000〜5000である。重合度が低すぎると、所定の延伸を行う際に延伸切れしやすく、また重合度が高すぎると、延伸する際に張力が異常に必要となり、機械的に延伸できなくなるおそれがある。
【0023】
偏光子を構成するポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、任意の適切な方法(例えば樹脂を水または有機溶剤に溶解した溶液を流延製膜する流延法、キャスト法、押出法)で成形され得る。偏光子の厚みは偏光板が用いられるLCDの目的や用途に応じて適宜設定されるが、通常、10〜300μm程度である。好ましくは20〜100μmである。
【0024】
偏光子の製造方法としては、目的、使用材料および条件などに応じて任意の適切な方法が採用される。例えば、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、通常、膨潤、染色、架橋、延伸、水洗および乾燥工程を含む一連の製造工程に供する方式が採用される。乾燥工程を除く各処理工程においては、それぞれの工程に用いられる溶液を含む液中にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬することにより処理を行う。膨潤、染色、架橋、延伸、水洗および乾燥の各処理の順番、回数および実施の有無は、目的、使用材料および条件などに応じて適亘設定されえる。例えば、いくつかの処理を1つの工程で同時に行ってもよく、膨潤処理、染色処理および架橋処理を同時に行ってもよい。また例えば、架橋処理を延伸処理の前後に行うことが、好適に採用され得る。また例えば、水洗処理は、全ての処理の後に行ってもよく、特定の処理の後のみに行ってもよい。
【0025】
本発明の偏光板の製造方法に用いるシクロオレフィン系樹脂フィルムは、公知のものを特に制限なく使用できる。シクロオレフィン系樹脂は、シクロオレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂があげられる。具体例としては、シクロオレフィンの開環(共)重合体、シクロオレフィンの付加重合体、シクロオレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、及びそれらの水素化物などが挙げられる。シクロオレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーがあげられる。
【0026】
シクロオレフィン系樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学株式会社製の商品名「APEL」などが挙げられる。
【0027】
前記シクロオレフィン系樹脂フィルムは、透明保護フィルムとして偏光子の片面又は両面に設けられるが、これを偏光子の片面に設ける場合、他面には公知の透明保護フィルムを設けることができる。
【0028】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物があげられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いてもよい。
【0029】
シクロオレフィン系樹脂フィルム及び透明保護フィルムの厚さは適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度であり、好ましくは1〜300μmであり、より好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは5〜150μmである。
【0030】
透明保護フィルムとして、正面位相差が40nm以上および/または厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有する位相差板を用いることができる。正面位相差は、通常40〜200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常80〜300nmの範囲に制御される。透明保護フィルムとして位相差板を用いる場合には、当該位相差板が透明保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
【0031】
位相差板としては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板の厚さも特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。
【0032】
なお、前記位相差を有するフィルムは、位相差を有しない透明保護フィルムに、別途、貼り合せて上記機能を付与することができる。
【0033】
シクロオレフィン系樹脂フィルム及び透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施してもよい。
【0034】
なお、ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層、及びアンチグレア層等を、シクロオレフィン系樹脂フィルム又は透明保護フィルム上に別途積層してもよい。
【0035】
偏光子とシクロオレフィン系樹脂フィルムとの貼り合わせに用いる接着剤は光学的に透明であれば、特に制限されず水系、溶剤系、ホットメルト系、ラジカル硬化型の各種形態のものが用いられるが、水系接着剤が好適である。
【0036】
水系接着剤としては、ポリビニルアルコール系、ゼラチン系、ビニル系ラテックス系、ポリウレタン系、イソシアネート系、ポリエステル系、エポキシ系等を例示できる。前記接着剤には各種架橋剤を含有することができる。また前記接着剤には、触媒、カップリング剤、各種粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などの安定剤等を配合することもできる。接着剤の固形分は一般に0.1〜20重量%で用いられる。
【0037】
前記接着剤のなかでも、ポリビニルアルコール系接着剤が好ましい。ポリビニルアルコール系接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤を含有する。
【0038】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコール;その誘導体;更に酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のケン化物;ポリビニルアルコールをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコールがあげられる。前記単量体としては、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体等があげられる。これらポリビニルアルコール系樹脂は一種を単独でまたは二種以上を併用することができる。
【0039】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は特に限定されないが、接着性の点からは、平均重合度100〜3000程度、好ましくは500〜3000、平均ケン化度85〜100モル%程度、好ましくは90〜100モル%である。
【0040】
またポリビニルアルコール系樹脂としては、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール樹脂を用いることができる。アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール樹脂は、反応性の高い官能基を有するポリビニルアルコール系接着剤であり、偏光板の耐久性が向上し好ましい。
【0041】
架橋剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤に用いられているものを特に制限なく使用できる。架橋剤は、ポリビニルアルコール系樹脂と反応性を有する官能基を少なくとも2つ有する化合物を使用できる。たとえば、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレン基とアミノ基を2個有するアルキレンジアミン類;トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物等のイソシアネート類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジまたはトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等のエポキシ類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等のモノアルデヒド類;グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒド等のジアルデヒド類;メチロール尿素、メチロールメラミン、アルキル化メチロール尿素、アルキル化メチロール化メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物等のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂;更にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル等の二価金属、又は三価金属の塩及びその酸化物があげられる。架橋剤としては、メラミン系架橋剤が好ましく、特にメチロールメラミンが好適である。
【0042】
前記架橋剤の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常、0.1〜35重量部程度、好ましくは10〜25重量部である。一方、耐久性をより向上させるには、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、架橋剤を30重量部を超え46重量部以下の範囲で配合することができる。特に、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合には、架橋剤の使用量を30重量部を超えて用いるのが好ましい。架橋剤を30重量部を超え46重量部以下の範囲で配合することにより、耐水性が向上する。
【0043】
前記接着剤には、さらにシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤、各種粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などの安定剤等を配合することもできる。
【0044】
また前記接着剤には、金属化合物フィラーを含有させることができる。金属化合物フィラーにより、接着剤の流動性を制御することができ、膜厚を安定化して良好な外観を有し、面内が均一で接着性のバラツキのない偏光板が得られる。
【0045】
金属化合物フィラーは、各種のものを用いることができる。金属化合物としては、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等の金属酸化物;炭酸亜鉛、炭酸バリウム、リン酸カルシウム等の金属塩;セライト、タルク、クレイ、カオリン等の鉱物があげられる。また、これら金属化合物フィラーは、表面改質されたものを用いることができる。
【0046】
金属化合物フィラーの平均粒子径は、通常、1〜1000nm程度であり、1〜500nm、さらには10〜200nm、さらには10〜100nmであるのが好ましい。金属化合物フィラーの平均粒子径が前記範囲であれば、接着剤層中において、金属化合物を略均一に分散させることができ、接着性を確保し、かつ良好な外観で、面内の均一な接着性を得られる。
【0047】
金属化合物フィラーの配合量は、硬化性成分100重量部に対して、100重量部以下の割合で配合するのが好ましい。また金属化合物フィラーの配合割合を前記範囲とすることで、偏光子と透明保護フィルムとの接着性を確保しながら、かつ良好な外観で、面内の均一な接着性を得られる。金属化合物フィラーの配合割合は、1〜100重量部であるのが好ましく、さらには2〜50重量部、さらには5〜30重量部であるのが好ましい。金属化合物フィラーの配合割合が、硬化性成分100重量部に対して、100重量部を超えると、接着剤中における、硬化性成分の割合が小さくなり、接着性の点から好ましくない。なお、金属化合物フィラーの配合割合は、特に制限されないが、接着性を確保しながら、かつ良好な外観で、面内の均一な接着性を得るには、前記範囲の下限値とするのが好ましい。
【0048】
偏光板は、偏光子とシクロオレフィン系樹脂フィルムとを接着剤を介して貼り合わせることにより製造するが、本発明は、これらを貼り合わせる前に、シクロオレフィン系樹脂フィルムの偏光子が設けられる面に、出力強度0.9〜2.5kWにてコロナ放電処理を施し、その後、コロナ放電処理を施したシクロオレフィン系樹脂フィルムを水洗することを特徴としている。
【0049】
コロナ放電処理は、シクロオレフィン系樹脂フィルムを電極間に配置し、常圧空気中で電極間に高電圧をかけて放電することにより行われる。出力強度以外の処理条件は特に制限されないが、電極間隔は1〜5mm程度であり、フィルムの移動速度は3〜20m/分程度である。また、出力強度は0.9〜2.0kWであることが好ましい。
【0050】
偏光子の他面に透明保護フィルムを設ける場合には、透明保護フィルムに表面改質処理を行ってもよい。具体的な処理としてば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線照射処理、フレーム処理、プライマー処理、及びケン化処理などが挙げられる。
【0051】
水洗処理としては、例えば、コロナ放電処理を施したシクロオレフィン系樹脂フィルムを水性洗浄液の浴中に浸漬する方法、シクロオレフィン系樹脂フィルムのコロナ放電処理面に水性洗浄液を塗布又はスプレーする方法などが挙げられる。
【0052】
水性洗浄液としては、純水、イオン交換水、及び酵素系洗浄剤を含む水溶液などが挙げられる。水性洗浄液の温度は特に制限されないが、5〜80℃であることが好ましく、より好ましくは10〜50℃である。温度が5℃未満の場合は、水洗処理工程後にフィルム表面に結露が生じやすくなり、80℃を超える場合には、熱によりフィルムに皺が生じてハンドリング性が悪くなる傾向にある。水洗処理時間は特に制限されないが、3〜180秒程度であり、好ましくは5〜120秒である。処理時間が短すぎるとフィルム表面の微粉末状物質を十分に除去することが難しく、処理時間が長すぎると製造効率が低下するため好ましくない。
【0053】
水洗処理後、ニップロール、ガラスバー、エアーナイフなどを用いてフィルム表面に残存する水滴を除去することが好ましい。
【0054】
その後、前記シクロオレフィン系樹脂フィルムと偏光子を接着剤を用いて貼り合わせることにより偏光板を製造する。接着剤の塗布は、シクロオレフィン系樹脂フィルムのコロナ放電処理面、又は偏光子のいずれに行ってもよく、両者に行ってもよい。貼り合わせ後に、乾燥して接着剤層を形成する。水系接着剤を用いる場合、乾燥は温度20〜80℃程度、好ましくは40〜80℃で、1〜10分間程度、好ましくは1〜5分間行うことが好ましい。シクロオレフィン系樹脂フィルムと偏光子の貼り合わせは、ロールラミネーター等により行うことができる。接着剤層の厚さは、特に制限されないが、通常30〜1000nm程度である。
【0055】
本発明の偏光板は、実用に際して他の光学層と積層した光学フィルムとして用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、本発明の偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0056】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板やその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0057】
前述した偏光板や、偏光板を少なくとも1層積層されている光学フィルムには、液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0058】
偏光板や光学フィルムの片面又は両面への粘着層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で偏光板上または光学フィルム上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを偏光板上または光学フィルム上に移着する方式などがあげられる。
【0059】
粘着層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層として偏光板や光学フィルムの片面又は両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、偏光板や光学フィルムの表裏において異なる組成や種類や厚さ等の粘着層とすることもできる。粘着層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、5〜200μmが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。
【0060】
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚さ条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
【0061】
なお本発明において、上記した偏光板を形成する偏光子や透明保護フィルムや光学フィルム等、また粘着層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0062】
本発明の偏光板または光学フィルムは液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光板または光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による偏光板または光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0063】
液晶セルの片側又は両側に偏光板または光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による偏光板または光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に偏光板または光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【実施例】
【0064】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明の実施形態はこれらに限定されない。
【0065】
実施例1
(偏光子)
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%、厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に60秒間浸漬して膨潤させた。次いで、ヨウ素/ヨウ化カリウム(重量比=0.5/8)を含む濃度0.3%のヨウ素溶液中に前記フィルムを浸漬し、3.5倍まで延伸させながらフィルムを染色した。その後、65℃のホウ酸エステル溶液中で、前記フィルムを総合延伸倍率が6倍になるまで延伸した。その後、40℃のオーブンで3分間乾燥を行って偏光子を得た。
【0066】
(透明保護フィルム)
厚さ73μmのノルボルネン系樹脂フィルムであるゼオノアフィルム(ゼオン社製、ZB14フィルム)と、ケン化処理を施した厚さ80μmのTACフィルム(富士フィルム社製、TD80UL)とを用いた。
【0067】
(水系接着剤)
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂(平均重合度:1200、ケン化度:98.5モル%、アセトアセチル基変性度:5モル%)100重量部に対し、メチロールメラミン50重量部を、30℃の温度条件下に、純水に溶解し、固形分濃度3.7重量%に調整した水溶液を調製した。前記水溶液100重量部に対し、アルミナコロイド水溶液(平均粒子径15nm、固形分濃度10%、正電荷)18重量部を加えて水系接着剤を調製した。水系接着剤の粘度は9.6mPa・s、pHは4〜4.5であった。
【0068】
(コロナ放電処理)
コロナ照射機(春日電機社製,CT‐0212)を用いて、前記ゼオノアフィルムの片面にコロナ放電処理を行った。処理条件は、電極間隔2mm、フィルム移動速度13m/分、出力強度0.9kWとした。
【0069】
(水洗処理)
コロナ放電処理を施したゼオノアフィルムを30℃の水洗浴中に30秒間浸漬し、その後、ニップロールを用いてフィルム表面の水滴を除去した。
【0070】
(偏光板の作成)
ゼオノアフィルムのコロナ放電処理面、及びTACフィルムのケン化処理面に、前記水系接着剤を乾燥後の厚さが100nmとなるように塗布した。次いで、これらを前記偏光子の両面にロール機で貼り合わせた。その後、70℃で10分間乾燥して偏光板を作製した。
【0071】
実施例2〜5、比較例1〜10
表1に記載のとおり、コロナ放電における出力強度を変更するか、又は水洗処理を省略した以外は実施例1と同様の方法で偏光板を作製した。
【0072】
[評価]
実施例および比較例で作製したゼオノアフィルム及び偏光板について下記評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
(放電状態)
ゼオノアフィルムのコロナ放電処理面の状態を目視にて観察した。均一に放電処理されている場合を○、放電処理にバラツキがある場合を×とした。
【0074】
(接着性)
偏光板の端部において、偏光子とゼオノアフィルムとの間にカッターの刃先を挿入した。当該挿入部において、偏光子とゼオノアフィルムとを掴み、それぞれ反対方向に引っ張った。このとき、偏光子および/またはゼオノアフィルムが破断して剥離できなかった場合は、密着性が良好:「○」と判断し、偏光子とゼオノアフィルムとの間で一部剥離した場合は、密着性にやや乏しい:「△」と判断し、偏光子とゼオノアフィルムとの間で全部剥離した場合は、密着性に乏しい:「×」と判断した。
【0075】
(外観評価)
作製した偏光板を1000mm×1000mmに切断してサンプルを得た。サンプルを蛍光灯下に置き、打痕の個数(個/m)、異物欠点の個数(個/m)、キズの有無を目視にて測定した。
【0076】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介してシクロオレフィン系樹脂フィルムが設けられている偏光板の製造方法であって、
シクロオレフィン系樹脂フィルムの偏光子が設けられる面に、出力強度0.9〜2.5kWにてコロナ放電処理を施す工程、
コロナ放電処理を施したシクロオレフィン系樹脂フィルムを水洗する工程、及び
偏光子とシクロオレフィン系樹脂フィルムとを接着剤を介して貼り合わせる工程、を含む偏光板の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の製造方法により得られる偏光板。
【請求項3】
請求項2記載の偏光板が少なくとも1枚積層されている光学フィルム。
【請求項4】
請求項2記載の偏光板または請求項3記載の光学フィルムを含む画像表示装置。


【公開番号】特開2012−155147(P2012−155147A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14357(P2011−14357)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】