説明

偏光板の製造方法

【課題】水分率が低い偏光子を用いた場合であっても、偏光子と透明保護フィルムの接着性が良好な偏光板を得ることができる、偏光板の製造方法を提供すること。
【解決手段】偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板の製造方法であって、前記透明保護フィルムに偏光板用の水系接着剤を塗工した後に乾燥させて、透明保護フィルム上に、水に対する接触角変化が30秒以内に起こる塗膜状態の接着剤層を形成する工程(1)、前記接着剤層により、水分率が12〜25重量%の偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせる工程(2)、および前記接着剤層を乾燥させる工程(3)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板の製法方法に関する。また本発明は当該偏光子を用いた偏光板、光学フィルム、さらには当該偏光子、偏光板、光学フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、その画像形成方式から液晶パネル表面を形成するガラス基板の両側に偏光子を配置することが必要不可欠である。偏光子は、一般的には、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素などの二色性材料で染色した後、架橋剤を用いて架橋を行い、一軸延伸をすることにより製膜することにより得られる。前記偏光子は延伸により作成されるため、収縮し易い。またポリビニルアルコール系フィルムは親水性ポリマーを使用していることから、特に加湿条件下においては非常に変形し易い。またフィルム自体の機械的強度が弱いため、フィルムが裂けたりする問題がある。そのため、偏光子の両側又は片側にトリアセチルセルロースなどの透明保護フィルムを貼り合わせて、強度を補った偏光板が用いられている。前記偏光板は、偏光子と透明保護フィルムを接着剤で貼り合わせることにより製造されている。
【0003】
例えば、偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせて偏光板を製造するにあたって、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂および架橋剤を含有する水溶液に係る水系接着剤を用いることが用いられている(特許文献1)。当該水系接着剤は耐湿熱性、耐水性の良好であることが記載されている。また、前記水系接着剤として、接着剤液の粘度が3〜20mPa・s(25℃)のものを用いることで、外観の良好な偏光板が得られることが提案されている(特許文献2)。特許文献1、2では、偏光子又は透明保護フィルムに塗工された接着剤溶液に乾燥を施すことなく、塗工状態のままで、偏光子と透明保護フィルムを貼り合わせている。
【0004】
また、偏光子又は透明保護フィルムに塗工された接着剤溶液を乾燥させて接着剤層を形成した後に、これらの貼り合わせ面に水性液を存在させることで、偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせて偏光板を製造方法が提案されている(特許文献3)。特許文献3は、予め接着剤層を形成しておくことで特許文献1、2に比べて外観欠陥の少ない偏光板を製造できることが記載されている。またアセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂に金属化合物コロイドを配合した接着剤は、得られる偏光板のクニック欠陥を改良することができることが提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−189615号公報
【特許文献2】特開2002−365432号公報
【特許文献3】特開2005−128490号公報
【特許文献4】特開2009−122664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、偏光板の製造にあたって、偏光子としては水分率が低い方がポリビニルアルコール系樹脂の配向性が向上するために光学特性(偏光度等)が良好である。しかし、特許文献3では、予め形成された接着剤層の乾燥度合いが高く、接着剤層は水に溶けにくくなっている。そのため、偏光子の水分率が低い場合には、接着剤層が添加される水性液によって十分には溶けにくい場合があり、得られる偏光板において偏光子と透明保護フィルムの接着不良を起こすことがあった。また、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂に金属化合物コロイドを配合した接着剤についても、上記同様の接着不良の問題があった。
【0007】
本発明は、水分率が低い偏光子を用いた場合であっても、偏光子と透明保護フィルムの接着性が良好な偏光板を得ることができる、偏光板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す偏光板の製造方法等により前記目的に達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板の製造方法であって、
前記透明保護フィルムに偏光板用の水系接着剤を塗工した後に乾燥させて、透明保護フィルム上に、水に対する接触角変化が30秒以内に起こる塗膜状態の接着剤層を形成する工程(1)、
前記接着剤層により、水分率が12〜25重量%の偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせる工程(2)、および前記接着剤層を乾燥させる工程(3)を含むことを特徴とする偏光板の製造方法、に関する。
【0010】
前記偏光板の製造方法において、前記水系接着剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂を含有するポリビニルアルコール系接着剤であることが好ましい。前記ポリビニルアルコール系樹脂は、側鎖に親水性の長鎖官能基を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の偏光板の製造方法では、工程(1)において、特許文献3と同様に、透明保護フィルムに接着剤層を形成するが、当該接着剤層は、特許文献3のように、乾燥度合いの高い状態ではなく、塗膜状態である。当該半乾燥の塗膜状態の接着剤層は、例えば、水に対する接触角変化までの時間(水により溶け始める時間)が所定時間内に起こるように満足するように塗膜状態を制御することができる。このように接着剤層の塗膜状態を制御することで、水系接着剤から形成される接着剤層中において水分をある程度確保することができ、偏光子の水分率が低い場合においても、偏光子と透明保護フィルムを良好に接着することができる。
【0012】
また本発明の偏光板の製造方法では、透明保護フィルム上に形成される上記塗膜状態の接着剤層は、接着剤が水系接着剤により形成されており、偏光子中の水分により溶かすことができる。そのため、本発明の偏光板の製造方法では、特許文献3のように水性液を添加することは特に必要ではない。また、上記工程(1)の塗膜状態の接着剤層の形成にあたっては、当該接着剤層中の水分が予め除去されている。そのため、偏光子と透明保護フィルムを高速で行うことができ、乾燥工程(3)を効率よく行うことができ、生産性の点においても有利である。
【0013】
また従来の乾燥度合いの高い状態の接着剤層では、通常、偏光子としては水分率が25重量%を超えるものが必要であったが、本発明の偏光板の製造方法では、水分率が25重量%以下の偏光子を用いることができる。このように、本発明の偏光板の製造方法では、水分率が25重量%以下の偏光子を用いることできるため、得られる偏光板の光学特性(偏光度等)を向上させることができる。かかる偏光板は、面内均一性に優れており、高解像度であり、且つ高コントラストな液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンス表示装置(ELD)等の画像表示装置を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明では、偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板の製造方法を製造する。
【0015】
偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性材料を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。偏光子の厚さは、好ましくは15〜35μmである。偏光子の厚みの厚みが薄すぎると、透明保護フィルムと貼り合わせる際に、ダメージを受けやすくなる。一方、偏光子の厚みが厚すぎると、乾燥効率が悪くなる傾向があり、生産性の点で好ましくない。
【0016】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0017】
また偏光子としては、水分率が12〜25重量%のものが用いられる。本発明では、偏光子の水分率が、25重量%以下の低水分率においても用いることができる。さらには、偏光子の水分率は、23重量%以下においても用いることができる。偏光子の水分率は低い方が、光学特性の良好な偏光板が得られる点で好ましい。また、乾燥工程(3)での乾燥効率が向上して、生産速度をあげることができる生産性の点で好ましい。一方、偏光子の水分率が低すぎると、偏光子のフィルムとしての剛性が高くなって、ダメージを受けやすく外観欠点が発生し易くなる。かかる点から、偏光子の水分率は12重量%以上であるのが好ましく、さらには 重量%以上であるのが好ましい。このような偏光子の水分率は、一般に偏光子の製造工程中の乾燥処理の条件により調整できるが、必要に応じて別途調湿処理工程を設け、水浴中への浸漬や水滴の噴霧又は、再度の加熱乾燥や減圧乾燥を施しても良い。
【0018】
前記偏光子の片面又は両面に設けられる透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護フィルムを形成するポリマーの例として挙げられる。なお、偏光子には、通常、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされるが、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂又は紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0019】
本発明の透明保護フィルムとしては、セルロース樹脂(ポリマー)、ポリカーボネート樹脂(ポリマー)、環状ポリオレフィン樹脂(シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン)および(メタ)アクリル樹脂から選ばれるいずれか少なくとも1つを用いるのが好ましい。特にトリアセチルセルロースからなる保護フィルムを用いた場合に本発明の効果は顕著である。
【0020】
透明保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。
【0021】
なお、偏光子の両側に透明保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる透明保護フィルムを用いてもよい。
【0022】
透明保護フィルムの偏光子と接着する面には、易接着処理を施すことができる。易接着処理としては、プラズマ処理、コロナ処理等のドライ処理、アルカリ処理(ケン化処理)等の化学処理、易接着剤層を形成するコーティング処理等が挙げられる。これらのなかでも、易接着剤層を形成するコーティング処理やアルカリ処理が好適である。易接着剤層の形成には、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、ポリエステル樹脂等の各種の易接着材料を使用することができる。なお、易接着剤層の厚みは、通常、0.001〜10μm程度、さらには0.001〜5μm程度、特に0.001〜1μm程度とするのが好ましい。
【0023】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
【0024】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0025】
前記偏光子と透明保護フィルムを貼り合わせる接着剤層の形成に用いる接着剤としては、水系接着剤が用いられる。
【0026】
水系接着剤としては特に限定されるものではないが、例えば、ビニルポリマー系、ゼラチン系、ビニル系ラテックス系、ポリウレタン系、イソシアネート系、ポリエステル系、エポキシ系等を例示できる。前記水系接着剤としては、ビニルポリマーを含有する接着剤などを用いることが好ましく、ビニルポリマーとしては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。特に偏光子としてポリビニルアルコール系のポリマーフィルムを用いる場合には、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する接着剤を用いることが、接着性の点から好ましい。
【0027】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコール;その誘導体;更に酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のケン化物;ポリビニルアルコールをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコールが挙げられる。前記単量体としては、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらポリビニルアルコール系樹脂は一種を単独で又は二種以上を併用することができる。
【0028】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は特に限定されないが、接着性の点からは、平均重合度100〜5000程度、好ましくは1000〜4000、平均ケン化度85〜100モル%程度、好ましくは90〜100モル%である。
【0029】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、側鎖に親水性の長鎖官能基を有するものが好ましい。前記側鎖に有する親水性の長鎖官能基としては、例えば、アセトアセチル基、カルボニル基等が挙げられる。側鎖に親水性の長鎖官能基(例えば、アセトアセチル基)を有するポリビニルアルコール系樹脂を含む接着剤は、耐久性を向上させる点からより好ましい。また側鎖に親水性の長鎖官能基を有するポリビニルアルコール系樹脂は、親水性を有しするため、膨潤性に優れており水の吸収性が良く、水の存在によって、膨潤し易いため(溶け易いため)、偏光子の水分率が低い場合においても、良好な接着性を得るうえで好ましい。
【0030】
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂とジケテンとを公知の方法で反応して得られる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を酢酸等の溶媒中に分散させておき、これにジケテンを添加する方法、ポリビニルアルコール系樹脂をジメチルホルムアミド又はジオキサン等の溶媒にあらかじめ溶解しておき、これにジケテンを添加する方法等が挙げられる。またポリビニルアルコールにジケテンガス又は液状ジケテンを直接接触させる方法が挙げられる。
【0031】
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂のアセトアセチル基変性度は、0.1モル%以上であれば特に制限はなない。0.1モル%未満では接着剤層の耐水性が不充分であり不適当である。アセトアセチル基変性度は、好ましくは0.1〜40モル%程度、さらに好ましくは1〜20モル%、特に好ましくは2〜7モル%である。アセトアセチル基変性度が40モル%を超えると、耐水性の向上効果が小さい。アセトアセチル基変性度はNMRにより測定した値である。
【0032】
また前記水系接着剤から形成される接着剤層は、その水溶液の調製に際しては、必要に応じて、架橋剤や他の添加剤、酸等の触媒も配合することができる。
【0033】
架橋剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤に用いられているものを特に制限なく使用できる。前記ポリビニルアルコール系樹脂と反応性を有する官能基を少なくとも2つ有する化合物を使用できる。例えば、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレン基とアミノ基を2個有するアルキレンジアミン類;トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタントリイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート及びこれらのケトオキシムブロック物又はフェノールブロック物等のイソシアネート類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジ又はトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等のエポキシ類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等のモノアルデヒド類;グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒド等のジアルデヒド類;メチロール尿素、メチロールメラミン、アルキル化メチロール尿素、アルキル化メチロール化メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物等のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂;酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸塩化ジルコニウム等のジルコニウム化合物;グリオキシル酸金属塩(金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅などの遷移金属、亜鉛、アルミニウムなどが挙げられる。)、グリオキシル酸アミン塩(アミンとしては、例えば、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミンなどが挙げられる。)などのグリオキシル酸塩;1つ以上の塩基性基と1つ以上の酸性基とを有するアミノ酸又は含硫アミノ酸;ジメトキシエタナール、ジエトキシエタナール、ジアルコキシエタナール等のアセタール化合物;更にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル等の二価金属、又は三価金属の塩及びその酸化物が挙げられる。これらは一種単独で又は二種以上を併用することができる。これらのなかでも1つ以上の塩基性基と1つ以上の酸性基とを有するアミノ酸又は含硫アミノ酸を用いることが好ましい。塩基性基としてはアミノ基が好ましく、酸性基としてはカルボキシル基又はスルホ基が好ましい。前記アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、リシン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、チロシン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、アスパルテーム、グルタミン、グルタミン酸、及びこれらアミノ酸と(メタ)アクリル酸との共重合体などが挙げられる。前記含硫アミノ酸としては、例えば、メチオニン、システイン、シスチン、及びタウリンなどが挙げられる。これらのなかでも特に、タウリンなどのスルホ基を有する含硫アミノ酸を用いることが好ましい。また、架橋剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤を用いることができる。
【0034】
前記架橋剤の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂の種類等に応じて適宜設計できるが、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常、0.1〜50重量部程度、好ましくは0.2〜30重量部程度、さらに好ましくは0.5〜20重量部である。かかる範囲において、良好な接着性が得られる。
【0035】
本発明の偏光板の製造方法は、透明保護フィルムに接着剤を塗工し、透明保護フィルム上に接着剤層を形成する工程(1)、前記接着剤層により偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせる工程(2)、および前記接着剤層を乾燥させる工程(3)を含む。かかる製造方法により、偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板が得られる。
【0036】
前記工程(1)では、透明保護フィルムに接着剤を塗工した後に乾燥させて、透明保護フィルム上に塗膜状態の接着剤層を形成する。
【0037】
前記接着剤の透明保護フィルムへの塗工は、乾燥工程(3)後の接着剤層の厚みが10〜300nm程度になるように行なうのが好ましい。接着剤層の厚みは、均一な面内厚みを得ることと、十分な接着力を得る観点から10〜200nmであることがより好ましく、特に好ましくは20〜150nmである。接着剤層の厚みが10nm未満の場合には接着力が十分でなく、300nmを超える場合には光学信頼性及び耐湿接着力が低下する傾向にある。
【0038】
接着剤層の厚みを調整する方法としては、特に制限されるものではないないが、例えば、接着剤溶液の固形分濃度や接着剤の塗工装置を調整する方法が挙げられる。このような接着剤層厚みの測定方法としては、特に制限されるものではないが、SEM(Scanning Electron Microscopy)や、TEM(Transmission Electron Microscopy)による断面観察測定が好ましく用いられる。
【0039】
前記接着剤の塗工操作は特に制限されず、グラビア塗工法、ダイ塗工法、ロール塗工法、噴霧塗工法、浸漬塗工法等の各種手段を採用できるが、均一に接着剤を塗工できることからグラビア塗工法、ダイ塗工法が好ましい。
【0040】
また前記工程(1)では、透明保護フィルム上に形成される粘着剤層が半乾燥の塗膜状態になるように制御がなされる。具体的には、水に対する接触角変化が30秒以内に起こる塗膜状態の粘着剤層を形成する。前記接着剤層の塗膜状態は、接着剤層の水に対する接触角の変化時間を基準として判断される。即ち、前記接着剤層の塗膜状態は、水に対する接着剤層の膨潤時間(接着剤層が溶け始める時間)を表わす指標といえる。前記接着剤層の水に対する接触角の変化時間は、具体的には、接着剤層の水の接触角(初期の接着角)が、接着剤層に水が接触してから、10°変化するまでの時間である。前記接触角の変化時間は、30秒以下であり、15秒以下であることが好ましい。前記接触角の変化時間が30秒以下であれば、偏光子の水分率が低い場合であっても、偏光子中の水分によって接着剤層を膨潤させて接着性を向上させることができる。また前記接触角の変化時間は、短いほど接着剤層が水によって早く溶けることを意味し、高速生産性の観点から好ましい。一方、前記接触角の変化時間が30秒を超えると、偏光子の水分率が低い場合には、偏光子の水分によって接着剤層を膨潤させるのが困難であり、接着不良を発生させてしまう。
【0041】
前記塗膜状態の接着剤層を形成は、例えば、透明保護フィルムに塗工された接着剤を乾燥させることにより行う。乾燥条件は、接着剤の種類等により決定されるが、乾燥温度は30〜100℃が好ましく、さらには40〜90℃が好ましい。また乾燥時間は1〜100秒間であることが好ましく、さらには、20〜80秒間であることが好ましい。
【0042】
前記工程(1)により、透明保護フィルム上に前記塗膜状態の接着剤層を形成した後には、前記接着剤層により偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせる工程(2)を施す。工程(2)における貼り合わせ法は、特に限定されないが、例えば、ロールラミネーター等による貼り合わせ法を採用することができる。なお、偏光子の両面に、透明保護フィルムと設ける場合には、同時または逐次のいずれの貼り合わせ法を採用することができる。
【0043】
次いで、貼り合わせ工程(2)の後には、乾燥工程(3)を施す。乾燥工程(3)によって、前記半乾燥の塗膜状態の接着剤層から、接着剤層が形成され、偏光子の少なくとも一方の面に、当該接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板が得られる。
【0044】
前記乾燥工程(3)の乾燥条件は、乾燥温度40〜100℃で、乾燥時間1〜10分間である。乾燥温度は50〜90℃であることが好ましく、さらには60〜80℃であることが好ましい。また乾燥時間は2〜9分間であることが好ましく、さらには、3〜8分間であることが好ましい。
【0045】
本発明の製造方法により得られる偏光板は、実用に際して他の光学層と積層した光学フィルムとして用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層又は2層以上用いることができる。特に、本発明の偏光板に更に反射板又は半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板又は半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板又は円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0046】
本発明の偏光板又は光学フィルムは液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光板又は光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による偏光板又は光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0047】
液晶セルの片側又は両側に偏光板又は光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による偏光板又は光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に偏光板又は光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【実施例】
【0048】
以下に実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例および比較例によって限定されるものではない。
【0049】
(偏光子の水分率測定方法)
得られた偏光フィルムから、180mm×500mmのサンプルを切り出し、その初期重量(W(g))を測定した。そのサンプルを120℃の乾燥機内で2時間放置した後、乾燥後重量(D(g))を測定した。これらの測定値より、下記式により水分率を求めた。
水分率(%)={(W−D)/W}×100
【0050】
(偏光子の作製)
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム((株)クラレ製:VF−PS7500,幅1000mm)を用いて、30℃の純水中に60秒間浸漬しながら延伸倍率2.5倍まで延伸し、30℃のヨウ素水溶液(重量比:純水/ヨウ素(I)/ヨウ化カリウム(KI)=100/0.01/1)中で45秒間染色し、4重量%ホウ酸水溶液中で延伸倍率が5.8倍になるように延伸し、純水中に10秒間浸漬した後、フィルムの張力を保ったまま60℃で3分間乾燥して偏光子を得た。この偏光子の厚さは25μm、水分率は12重量%であった。これを偏光子(1)とする。
【0051】
上記偏光子(1)の作製において、乾燥条件を変えたこと以外は偏光子(1)と同様にして、水分率の異なる偏光子(2)乃至(5)を作製した。乾燥条件と、水分率が下記に示す。
偏光子(2):乾燥条件(40℃で30秒)、水分率20重量%。
偏光子(3):乾燥条件(40℃で20秒)、水分率25重量%。
偏光子(4):乾燥条件(40℃で60秒)、水分率10重量%。
【0052】
(接着剤Aの調製)
PVA樹脂(日本合成化学工業(株)製:エコマティ)100重量部と架橋剤(大日本インキ化学工業(株)製:ウォーターゾール)35重量部を純水3760重量部中に溶解して接着剤Aを調製した。
【0053】
(接着剤Bの調製)
PVA樹脂(日本合成化学工業(株)製:ゴーセファイマーZ:アセトアセチル基含有)100重量部と架橋剤(大日本インキ化学工業(株)製:ウォーターゾール)35重量部を純水3760重量部中に溶解して接着剤Bを調製した。
【0054】
(接着剤Cの調製)
上記接着剤B(水溶液)100重量部に対して、アルミナコロイド水溶液(平均粒子径15nm,固形分濃度10重量%,正電荷)18重量部を加えて、接着剤Cを調製した。
【0055】
実施例1
(偏光板の作製)
上記接着剤Aを、厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士写真フィルム社製:UZ−80T,水分率1.4重量%)の片面側にスロットダイにて塗工後、65℃で1分間乾燥して、厚さ0.1μmの塗膜状態の接着剤層を有する、接着剤層付のTACフィルムを得た。次いで、上記偏光子の両面に接着剤層付きのTACフィルムをロール機で貼り合せた。その後、80℃で5分間の乾燥工程を施して偏光板を作成した。
【0056】
実施例2〜4及び比較例1〜5
実施例1において、接着剤の種類、偏光子の種類(水分率)を表1に示すように変えたこと以外は実施例1と同様の方法により、偏光板を作成した。
【0057】
上記実施例および比較例で得られた、偏光板について以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0058】
<水の接触角変化時間>
透明保護フィルムに形成した、半乾燥の塗膜状態の粘着剤層について、水を接触させて、水の接触角を経時観察した。前記接着剤層に対する水が接触した時点の接触角(初期角度)から、接触角が10°変化するまでの時間を測定した。接触角の測定、接触角の変化の確認(時間の測定)は、液滴法による動的接触角法(協和科学製、接触角計)により行った。
【0059】
<接着性>
得られた偏光板の端から、偏光子と透明保護フィルムの界面剥離を行い、剥がれたものは「×」、剥がれなかったものは「○」とした。
【0060】
<偏光度の測定>
偏光板の偏光度は、380〜780nmの波長光における分光透過率を積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製のV7100)を用いて測定した。
なお、偏光度は、2枚の同じ偏光板を両者の透過軸が平行となるように重ね合わせた場合の透過率(平行透過率:Tp)および、両者の透過軸が直交するように重ね合わせた場合の透過率(直交透過率:Tc)を以下の式に適用することにより求められるものである。
偏光度(%)={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
各透過率は、これらの透過率は、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値である。表には単体透過率が42.8%の時の偏光度を示す。
【0061】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板の製造方法であって、
前記透明保護フィルムに偏光板用の水系接着剤を塗工した後に乾燥させて、透明保護フィルム上に、水に対する接触角変化が30秒以内に起こる塗膜状態の接着剤層を形成する工程(1)、
前記接着剤層により、水分率が12〜25重量%の偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせる工程(2)、および前記接着剤層を乾燥させる工程(3)を含むことを特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項2】
前記水系接着剤が、ポリビニルアルコール系樹脂を含有するポリビニルアルコール系接着剤であることを特徴とする請求項1記載の偏光板の製造方法。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコール系樹脂が、側鎖に親水性の長鎖官能基を有することを特徴とする請求項2記載の偏光板の製造方法。