説明

偏光板保護用ポリエステルフィルム

【課題】偏光板のクロスニコル法による検査で精密な検査を実施し、透明性と帯電防止性とに優れながらも、テープ剥離力及び防汚能に優れる偏光板保護用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステル基材フィルムと、ポリエステル基材フィルムの少なくとも一面に導電性高分子樹脂、ポリウレタン樹脂、架橋剤及びフッ素樹脂を含む帯電防止コーティング液で塗布された帯電防止層と、を含むことを特徴とし、望ましくは、帯電防止コーティング液は、導電性高分子樹脂100重量部に対して、ポリウレタン樹脂100〜1000重量部、架橋剤100〜2000重量部、及びフッ素樹脂30〜300重量部を含むことを特徴とする偏光板保護用ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板保護用ポリエステルフィルムに係り、より詳細には、偏光板のクロスニコル法による検査で精密な検査を実施し、透明性と帯電防止性とに優れながらも、テープ剥離力及び防汚能に優れる偏光板保護用ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、携帯電話や個人用コンピュータの急速な普及によって、従来のディスプレイであるCRTに比べて、軽量化、薄膜化、低消費電力化、高画質化が可能な液晶ディスプレイ(LCD)の需要が顕著に増えており、LCDの大型画面に対しても、その技術の成長は眩しい。LCDの大型画面の一例として、最近、40インチ以上のTV用途としてLCD使用が急増している。大型化されたLCDにおいては、LCD内に組み立てられたバックライトの輝度を高めるものと、輝度を向上させるフィルムをバックライトユニットに組み立てるものなどによって明るい大画面LCDを具現している。
【0003】
このような、いわゆる大型高輝度型のLCDでは、視認性の向上のために、表示画面の輝度をさらに高める傾向があるが、それによって、ディスプレイ内に存在する小さな輝点が問題になる場合が多く、ディスプレイに組み立てられる偏光板、位相差板または位相差偏光板のような構成部材においては、従来の低輝度型LCDでは、問題にならない微細な異物が問題になり始めている。したがって、製造工程で異物の混入を防止すると同時に、もし、異物が混入された場合にも、欠陷で確実に認知することができる検査の精密度の向上が重要になっている。
【0004】
例えば、偏光板の欠陷検査としては、クロスニコル法による肉眼検査が一般的であり、また他の例としては、40インチ以上の大型TV用途として使われる偏光板などでは、クロスニコル法を利用した自動異物検査装置による検査も実施されている。このようなクロスニコル法は、2枚の偏光板をその配向主軸を直交させて消光状態にし、異物や欠陷があれば、その所が輝点で表われるので、欠陷検査が可能な方法であるが、特に、40インチ以上の大面積偏光板をクロスニコル法で自動検査を実施する時には、偏光板の表面にポリエステル保護フィルムが貼り付けられている状態であるので、このポリエステル保護フィルムの配向角が制御されていない時には、消光状態が崩れ、光漏れ現象が発生して異物や欠陷を逃しやすくなる不良が度々発生する問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記のような問題点を解決するために案出されたものであって、本発明の目的は、偏光板のクロスニコル法による検査で精密な検査を実施し、透明性と帯電防止性とに優れながらも、テープ剥離力及び防汚能に優れる偏光板保護用ポリエステルフィルムを提供することである。
【0006】
本発明の前記及び他の目的と利点は、望ましい実施例を説明した下記の説明からより明白になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的は、ポリエステル基材フィルムと前記ポリエステル基材フィルムの少なくとも一面に導電性高分子樹脂、ポリウレタン樹脂、架橋剤及びフッ素樹脂を含む帯電防止コーティング液で塗布された帯電防止層と、を含むことを特徴とする偏光板保護用ポリエステルフィルムによって達成される。
【0008】
ここで、前記帯電防止コーティング液は、前記導電性高分子樹脂100重量部に対して、前記ポリウレタン樹脂100〜1000重量部、前記架橋剤100〜2000重量部、及び前記フッ素樹脂30〜300重量部を含むことを特徴とする。
【0009】
望ましくは、前記導電性高分子樹脂は、ポリ陰イオンとポリチオフェンとの水分散体またはポリ陰イオンとポリチオフェン誘導体との水分散体であることを特徴とする。
【0010】
望ましくは、前記ポリウレタン樹脂は、水分散型であり、ヒドロキシル基、アミン基、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基、アクリル基、ウレタン基、アミド基、イミド基、カルボン酸、無水マレイン酸、マレイン酸のうちから選択された少なくとも一つの官能基が含まれている樹脂であることを特徴とする。
【0011】
望ましくは、前記硬化剤は、イソシアネート系化合物、カルボニルイミド化合物、オキサゾリン系化合物、メラミン系化合物、アジリジン系化合物で構成される群から選択される少なくとも一つの硬化剤であることを特徴とする。
【0012】
望ましくは、前記フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン系樹脂であることを特徴とする。
【0013】
望ましくは、前記帯電防止コーティング液は、固形分が0.5〜10重量%であることを特徴とする。
【0014】
望ましくは、前記帯電防止コーティング液は、インラインコーティング法でコーティングされることを特徴とする。
【0015】
望ましくは、前記ポリエステル基材フィルムは、フィルムの幅方向に2m以内の主配向軸の角度範囲が3°以内であり、フィルム面内方向で主配向軸に対する直角方向の屈折率が1.6400以下であり、主配向方向と直角方向との屈折率差である複屈折率が0.050以上であることを特徴とする。
【0016】
望ましくは、前記偏光板保護用ポリエステルフィルムは、フィルムの少なくとも一面の水接触角が80°以上であり、表面抵抗値が9.9×10Ω/□以下であり、300g/in以上のテープ剥離力を有する単層あるいは多層からなることを特徴とする。
望ましくは、前記偏光板保護用ポリエステルフィルムは、下記の数式1を満足するが、
(数1)
a≦b×30
であり、“b”は、二枚の偏光板を直交させた状態で測定された輝度値であり、“a”は、前記二枚の直交偏光板の間に主配向軸を偏光板の一配向軸と一致するように、前記偏光板保護用ポリエステルフィルムを入れた状態で測定された輝度値であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、偏光板のクロスニコル法による検査で精密な検査を実施し、透明性と帯電防止性とに優れながらも、テープ剥離力及び防汚能に優れるなどの効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を参照して、本発明を詳しく説明する。これら実施例は、単に本発明をより具体的に説明するために例示的に提示したものであって、本発明の範囲が、これら実施例によって制限されないということは、当業者に自明である。
【0019】
本発明による偏光板保護用ポリエステルフィルムは、ポリエステル基材フィルムと、前記ポリエステル基材フィルムの少なくとも一面に導電性高分子樹脂、ポリウレタン樹脂、架橋剤及びフッ素樹脂を含む帯電防止コーティング液で塗布された帯電防止層とを含むことを特徴とする。
【0020】
前記ポリエステル基材フィルムは、ジカルボン酸の第1成分とエチレングリコールジオール成分とに重合された組成物を使い、ポリエステルを構成するジカルボン酸の成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びオルトフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸及びセバシン酸及びデカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸などが挙げられ、また、ポリエステルを構成するジオール成分としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペングリコール、ヘキサンジオールなどの脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオール、芳香族ジオールなどが挙げられうる。前記の組成物で公知の技術であるTPA法やDMT法を使って、ポリエステルチップを作ることができる。合成されたポリエステルチップは、次の製造方法によってフィルムに成形されうるが、このような製造方法に限定されるものではない。
【0021】
まず、前記の組成で合成されたポリエステルチップをホッパー乾燥機またはパドル乾燥機などの乾燥機または真空乾燥機を使って乾燥し、200〜300℃の温度で溶融した後、フィルム型に押出する。押出においては、Tダイ法、管形法など既存の方法を利用する。押出後、急冷して未延伸フィルムを得る。このように得られた未延伸フィルムをTg以上、Tg+15℃未満の温度で、望ましくは、Tg以上、Tg+10℃未満の温度で縦方向に2.0〜5.0倍の比率、望ましくは、2.5〜4.5倍の比率で延伸する。縦方向に延伸されたフィルムを横方向に3.0〜7.0倍、望ましくは、3.5〜6.5比率で延伸する。このように延伸されたフィルムに熱収縮安定性及び熱的安定性を付与するために、200〜250℃の温度で熱処理を行って、ポリエステルフィルムが得られる。
【0022】
また、本発明によるポリエステル基材フィルムは、幅方向に2m以内の配向主軸の傾斜(配向角)が3°以内であることが重要である。2m幅に3°を超えれば、偏光板をクロスニコル法で検査する時、偏光板の配向軸とポリエステルフィルムの配向軸との反れるによって、光漏れ現象が発生して、偏光板の品質検査に差し支えを与える。
【0023】
また、本発明によるポリエステル基材フィルムは、主配向軸に対してフィルムの面内方向で直角方向の屈折率が1.6400以下であることが望ましい。屈折率が1.6400を超過する場合には、フィルム配向角の変動が大きくなる傾向があって、偏光板のクロスニコル検査時に障害として作用する。またポリエステルフィルムの複屈折率は、0.050以上であることが望ましい。0.050未満である場合、2枚の偏光板クロスニコル検査時に光沢が激しくて、検査の障害を誘発して異物や欠点検査が漏れることができるためである。
【0024】
一方、基材フィルムの透明性を向上させるために、2層以上の積層フィルムで構成し、表層にのみ粒子を配合する方法も望ましく利用されうる。この場合の表層とは、少なくとも内外の何れか一層を意味し、もちろん、表裏面の両層のいずれもに粒子を配合することができる。
【0025】
また、本発明による偏光板保護用ポリエステルフィルムは、前記ポリエステル基材フィルムの一面または両面に導電性高分子樹脂(導電性ポリマー)とポリウレタン樹脂、架橋剤及びフッ素樹脂とを含む帯電防止コーティング液で塗布された帯電防止層とを含むが、前記帯電防止コーティング液をポリエステル基材フィルムの表面に塗布乾燥することによって、透明性、耐溶剤性、撥水防汚性及び帯電防止性に優れたポリエステルフィルムを提供する。
【0026】
前記帯電防止コーティング液の構成は、次の通りである。
【0027】
(A)導電性ポリマー
前記帯電防止コーティング液に含まれる導電性ポリマー樹脂は、帯電防止性を付与するために、望ましくは、ポリ陰イオンとポリチオフェンとの水分散体またはポリ陰イオンとポリチオフェン誘導体との水分散体を使う。ポリ陰イオンは、酸性ポリマーであり、高分子カルボン酸または高分子スルホン酸、ポリビニルスルホン酸などがある。高分子カルボン酸としては、ポリアクリル、ポリメタクリル酸、ポリマイレン酸などがあり、高分子スルホン酸としては、ポリスチレンスルホン酸などがある。ポリチオフェンまたはポリチオフェン誘導体に対してポリ陰イオンは、固形分重量比で過剰に存在させる方が導電性の点で望ましく、ポリチオフェンまたはポリチオフェン誘導体1重量%に対して、ポリ陰イオンは1重量%よりは多く、5重量%以下が望ましい。より望ましくは、1重量%以上5重量%以下である。一方、本発明では、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)0.5重量%とポリスチレンスルホン酸(分子量Mn=150,000)0.8重量%とを含有する重合体の水分散体を使う。
【0028】
(B)ポリウレタン樹脂
前記帯電防止コーティング液に含まれるポリウレタン樹脂は、ポリエステルフィルムのテープ剥離力を増大させるために使うものであって、望ましくは、前記ポリウレタン樹脂は、水分散型であり、ヒドロキシル基、アミン基、カルボキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、オキサゾリン基などの官能基が少なくとも1種以上含まれている樹脂を使う。一方、添加されるポリウレタン樹脂の量は、導電性高分子樹脂100重量部に対して、ポリウレタン樹脂100〜1000重量部を添加することができる。ポリウレタン樹脂の添加量が100重量部未満であれば、テープ剥離力が低下して機能を発現することができなくなり、1000重量部を超過すれば、テープ剥離力は十分に確保されるが、帯電防止能が落ちるか、水接触角が低くなって異物などの汚染防止に露出されやすくなる問題が発生する。
【0029】
(C)架橋剤
前記帯電防止コーティング液に含まれる架橋剤は、帯電防止層の塗布層と基材フィルムであるポリエステルフィルムとの耐溶剤性を向上させるために使われ、望ましくは、イソシアネート系化合物、カルボニルイミド化合物、アジリジン系化合物、オキサゾリン系化合物、及びメラミン係化合物からなる群から選択された何れか一つを使う。添加される量は、導電性高分子樹脂100重量部に対して、架橋剤樹脂100〜2000重量部を使うことが望ましい。もし、100重量部未満であれば、塗布層の耐溶剤性が落ち、2000重量部を超えれば、帯電防止性が低くなる問題が発生することがある。
【0030】
(D)フッ素樹脂
前記帯電防止コーティング液に含まれるフッ素樹脂は、塗布層の防汚性、水接触角及び耐溶剤性を向上させるために添加されるものであって、ポリ四フッ化エチレン、四フッ化エチレン、ペルフッ化アルキルビニルエテル共重合体、三フッ化エチレン、六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレン共重合体、三フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなどがあり、望ましくは、テトラフルオロエチレン樹脂を使う。一方、添加されるフッ素樹脂の量は、前記導電性高分子樹脂100重量部に対して、フッ素樹脂30〜300重量部を添加することができる。もし、フッ素樹脂の添加量が30重量部未満であれば、防汚性が低下し、300重量部を超過すれば、フィルムの透明性が低下し、帯電防止能が落ちる問題が発生することがある。
【0031】
前記帯電防止コーティング液は、全体コーティング液100重量%に対して、固形分の含量が0.5〜10重量%になるように製造することが望ましく、さらに望ましくは、固形分含量が1.0〜5.0重量%である。前記固形分の含量が0.5重量%未満であれば、コーティング層の皮膜形成及び帯電防止機能発現に十分ではなく、10重量%を超過すれば、フィルムの透明性が低下し、コーティング欠点が発生するなどの問題が生じる。
【0032】
一方、前記帯電防止コーティング液に使われる溶媒は、望ましくは、実質的に水を主媒体とする水性コーティング液である。本発明に使われるコーティング液は、塗布性の向上、透明性の向上などの目的で、本発明の効果を阻害しない範囲で適当な有機溶媒を含有しても良い。例えば、イソプロピルアルコール、ブチルセルソルブ、t−ブチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、エタノール、メタノールなどを使うことができる。しかし、コーティング液中に多量の有機溶媒を含有させれば、インラインコーティング法に適用する場合、乾燥、延伸及び熱処理工程で爆発の危険性があるので、その含有量は、コーティング液中に10重量%以下であり、望ましくは、5重量%以下である。
【0033】
前記の導電性高分子樹脂、ポリウレタン樹脂、架橋剤及びフッ素樹脂が混合された帯電防止コーティング液は、固形分として0.5〜10.0重量%を含むことでポリエステルフィルムの単面あるいは両面に塗布及び乾燥させ、撥水防汚性及び帯電防止性を備えたポリエステル保護フィルムを提供する。前記ポリエステル保護フィルムは、透明でありながらも塗布層に対する水の接触角が80°以上の撥水性を表わし、表面抵抗値が9.0×10Ω/□以下であり、300g/in以上のテープ剥離力を有することを特徴とする。
【0034】
また、本発明による偏光板保護用ポリエステルフィルムは、下記の数式1を満足するが、
(数1)
a≦b×30
であり、“b”は、二枚の偏光板を直交させた状態で測定された輝度値であり、“a”は、前記二枚の直交偏光板の間に主配向軸を偏光板の一配向軸と一致するように、前記偏光板保護用ポリエステルフィルムを入れた状態で測定された輝度値であることを特徴とする。
【0035】
以下、実施例と比較例とを通じて、本発明の構成及びそれによる効果をより詳しく説明する。しかし、本実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲が、これら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
[ポリエステル(A)の製造]
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料にし、触媒として酢酸マグネシウム塩を加えて反応器に入れ、反応開始温度を150℃にし、メタノールの蒸溜除去と共に徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃にした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチル酸ホスフェートを添加した後、重縮合槽に移した後、三酸化アンチモン0.04重量部を加えた後、4時間重縮合反応を実施した。すなわち、温度を230℃から徐々に上昇して280℃にした。
【0037】
一方、圧力は常圧から徐々に下げ、最終的には、0.3mmHgにした。反応開始後、反応槽の撹拌動力の変化によって極限粘度0.625dl/gに相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下で重合体を吐き出させ、ポリエステルチップを得た。このようなポリエステルの極限粘度は、0.625dl/gであった。
【0038】
[ポリエステル(B)の製造]
前述したポリエステル(A)の製造方法で、エチル酸ホスフェートを添加した後、平均粒子径0.8μm、粒径分布値1.6の合成弾性カルシウム粒子のエチレングリコースラリーを粒子のポリエステルに対する含有量が1重量%になるように添加したことの以外には、ポリエステル(A)の製造方法と同じ方法を用いてポリエステル(B)を得た。該得られたポリエステル(B)は、極限粘度0.625dl/gであった。
【0039】
[実施例1−3]
前記ポリエステル(A)と(B)チップで、下記の表1に表わしたような比率で混合した原料をa層の原料にし、ポリエステル(A)チップ100%の原料をb層にして、a:b:aの3層積層フィルムになるように、2台の押出機からそれぞれ供給し、290℃で溶融押出した後、a層を外層、b層を内層にして、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、縦方向に下記の表1のように延伸し、フィルムの断面にコロナ放電処理を行った後、#5メイヤーバーを用いて、下記の表1のように準備されたコーティング液を塗布した。そして、横延伸温度、横延伸倍率、熱処理温度を、下記の表1のような条件で実施して、幅1,000mmのポリエステルフィルムをそれぞれ得た。該得られたフィルムの全体厚さは、38μmであり、a:b:a層の厚さは、2μm:34μm:2μmであった。
【0040】
[比較例1−5]
前記ポリエステル(A)と(B)チップで、下記の表2、3に表わしたような比率で混合した原料をa層の原料にし、ポリエステル(A)チップ100%の原料をb層にして、a:b:aの3層積層フィルムになるように、2台の押出機からそれぞれ供給し、290℃で溶融押出した後、a層を外層、b層を内層にして、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、縦方向に下記の表2、3のように延伸し、フィルムの断面にコロナ放電処理を行った後、#5メイヤーバーを用いて、下記の表2、3のように準備されたコーティング液を塗布した。そして、横延伸温度、横延伸倍率、熱処理温度を、下記の表2、3のような条件で実施して、幅1,000mmのポリエステルフィルムをそれぞれ得た。該得られたフィルムの全体厚さは、38μmであり、a:b:a層の厚さは、2μm:34μm:2μmであった。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
前記実施例1ないし実施例3及び比較例1ないし比較例5による偏光板保護用ポリエステルフィルムを使って、次のような実施例を通じて物理的特性を測定した。
【0045】
[実験例]
(1)ポリエステルの極限粘度の測定
ポリエステル1gを正確に秤量した後、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0046】
(2)配向角
製造されたフィルムの幅方向2m以内の端部位置とセンター位置とをA4サイズでサンプリングした後、MOA(分子配向計)を用いて配向角を測定した。
○:配向角が3°以下
×:配向角が3°超過
【0047】
(3)フィルムの主配向軸の直角方向屈折率(nβ)
製造されたフィルムの幅方向の端部位置とセンター位置とをA4サイズでサンプリングした後、アタゴ光学株式会社製Abbe屈折計を使って、フィルム面内の主配向軸に対して直角方向の屈折率を測定して平均値を求め、nβにした。
○:nβが1.6400以下
×:nβが1.6400超過
【0048】
(4)複屈折率
製造されたフィルムの幅方向の端部位置とセンター位置とをA4サイズでサンプリングした後、アタゴ光学株式会社製Abbe屈折計を使って、可視光(λ=589nm)によるフィルム幅方向の屈折率(nx)とその直角方向の屈折率(ny)との差で、下記の式から得られる絶対値である。
△n=l(nx)−(ny)l
○:△nが0.050以上
×:△nが0.050未満
【0049】
(5)水接触角
製造されたフィルムのコーティング面の上に、接触角測定器(Kyowa Interface Science社製)を使って、イオン交換水を蒸溜して得た精製水で液滴法(sessile drop method)によって測定し、総5回測定後、平均値を取った。
【0050】
(6)表面抵抗
製造されたフィルムのコーティング面の上に、表面抵抗測定器(三菱社製)を使って、温度23℃、相対湿度45%の環境下で試料を設置した後、JIS K7149に基づいて表面抵抗を測定し、総5回測定後、平均値を取った。
【0051】
(7)テープ剥離力
剥離力測定器AR1000(Chem Instruments社製)を使って、温度23℃、相対湿度45%環境下で、製造されたフィルムのコーティング面の上に日東電工製テープNO.31B(厚度25μm、幅25mm)を付けた後、2kg荷重のゴムローラーで1回往復して圧着した後、剥離速度0.3mpmで180°剥離する。この際、得られた剥離力値を測定した。
【0052】
(8)肉眼検査性
製造されたフィルムを横縦10cm大きさでサンプリング後、配向軸を直交させた二枚の偏光板の間に挟みこむ。2軸延伸ポリエステルフィルムの長手方向を何れか一つの偏光板の配向軸と一致させた状態でコニカミノルタ社製CA2000輝度測定器を用いて、サンプル内の一定間隔範囲の9ヶ所の輝度を測定し、その平均値(a)を求めた。二枚の偏光板を直交させた状態で測定された輝度平均値(b)を基準に、下記のような式で肉眼検査性を評価した。
【0053】
○:a≦b×30
×:a>60
前述したように、本発明による偏光板保護用ポリエステルフィルムによれば、偏光板のクロスニコル法による検査で精密な検査を実施し、透明性と帯電防止性とに優れながらも、テープ剥離力及び防汚能に優れるなどの効果があるということを確認することができる。
【0054】
本明細書では、本発明者が行った多様な実施例のうち何個の例のみを挙げて説明するが、本発明の技術的思想は、これに限定するか、制限されず、当業者によって変形されて多様に実施されうるということはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明による偏光板保護用ポリエステルフィルムは、特に、40インチ以上の大型LCD TV用偏光板のクロスニコル法による検査で精密な検査を実施し、表面汚染防止及び帯電防止特性に優れた偏光板保護用ポリエステルフィルムを提供することができて、本発明による商業的及び工業的価値は非常に高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光板保護用ポリエステルフィルムにおいて、
ポリエステル基材フィルムと、
前記ポリエステル基材フィルムの少なくとも一面に導電性高分子樹脂、ポリウレタン樹脂、架橋剤及びフッ素樹脂を含む帯電防止コーティング液で塗布された帯電防止層と、を含むことを特徴とする偏光板保護用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記帯電防止コーティング液は、前記導電性高分子樹脂100重量部に対して、前記ポリウレタン樹脂100〜1000重量部、前記架橋剤100〜2000重量部、及び前記フッ素樹脂30〜300重量部を含むことを特徴とする請求項1に記載の偏光板保護用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記導電性高分子樹脂は、ポリ陰イオンとポリチオフェンとの水分散体またはポリ陰イオンとポリチオフェン誘導体との水分散体であることを特徴とする請求項1に記載の偏光板保護用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂は、水分散型であり、ヒドロキシル基、アミン基、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基、アクリル基、ウレタン基、アミド基、イミド基、カルボン酸、無水マレイン酸、マレイン酸のうちから選択された少なくとも一つの官能基が含まれている樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の偏光板保護用ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記硬化剤は、イソシアネート系化合物、カルボニルイミド化合物、オキサゾリン系化合物、メラミン系化合物、アジリジン系化合物で構成される群から選択される少なくとも一つの硬化剤であることを特徴とする請求項1に記載の偏光板保護用ポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の偏光板保護用ポリエステルフィルム。
【請求項7】
前記帯電防止コーティング液は、固形分が0.5〜10重量%であることを特徴とする請求項1に記載の偏光板保護用ポリエステルフィルム。
【請求項8】
前記帯電防止コーティング液は、インラインコーティング法でコーティングされることを特徴とする請求項1に記載の偏光板保護用ポリエステルフィルム。
【請求項9】
前記ポリエステル基材フィルムは、フィルムの幅方向に2m以内の主配向軸の角度範囲が3°以内であり、フィルム面内方向で主配向軸に対する直角方向の屈折率が1.6400以下であり、主配向方向と直角方向との屈折率差である複屈折率が0.050以上であることを特徴とする請求項1に記載の偏光板保護用ポリエステルフィルム。
【請求項10】
前記偏光板保護用ポリエステルフィルムは、フィルムの少なくとも一面の水接触角が80°以上であり、表面抵抗値が9.9×10Ω/□以下であり、300g/in以上のテープ剥離力を有する単層あるいは多層からなることを特徴とする請求項1に記載の偏光板保護用ポリエステルフィルム。
【請求項11】
前記偏光板保護用ポリエステルフィルムは、下記の数式1を満足するが、
(数1)
a≦b×30
であり、“b”は、二枚の偏光板を直交させた状態で測定された輝度値であり、“a”は、前記二枚の直交偏光板の間に主配向軸を偏光板の一配向軸と一致するように、前記偏光板保護用ポリエステルフィルムを入れた状態で測定された輝度値であることを特徴とする請求項1ないし請求項10のうち何れか一項に記載の偏光板保護用ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2012−133317(P2012−133317A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187785(P2011−187785)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(501380081)東レ先端素材株式会社 (22)
【Fターム(参考)】