説明

偏光板用保護フィルムの製造方法、偏光板用保護フィルム、複合偏光板、偏光板及び液晶表示装置

【課題】偏光子保護部材として適当かつ十分な接着性を発現する偏光板用保護フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る偏光板用保護フィルムの製造方法は、結晶性樹脂と多官能不飽和化合物とを含む材料により形成されたフィルムを、加熱しながら長手方向及び幅方向の内の少なくとも一方向に延伸し、延伸フィルムを得る加熱延伸工程と、延伸終了後に、該延伸フィルムに電子線を照射する電子線照射工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子保護部材として適当かつ十分な接着性を発現する偏光板用保護フィルムの製造方法及び偏光板用保護フィルムに関する。更に、本発明は、該偏光板用保護フィルムの製造方法により得られた偏光板用保護フィルムを用いた複合偏光板、偏光板及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:以下、LCDと記載する)は、車両積載機器及び携帯情報機器等として広く用いられている。LCDでは、高温環境下及び高温多湿環境下における高い信頼性が強く要望されている。
【0003】
従来、LCDに用いられる偏光板として、偏光子の両面に、保護フィルムが接着剤により接着されている偏光板が知られている。上記偏光子として、延伸配向したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色染料を吸着させた偏光子が用いられている。上記接着剤として、ポリビニルアルコール系及びポリエーテル系等の水系接着剤等が用いられている。上記保護フィルムとして、光学等方性を有するフィルムが用いられている。該フィルムの材料として、複屈折率が小さいトリアセチルセルロース(以下、TACと記載する)が一般的に用いられている。
【0004】
しかし、ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子とTACフィルムとを貼り合わせた偏光板では、以下のような問題点がある。
【0005】
TACフィルムの耐熱性及び耐湿性は充分でない。このため、偏光子とTACフィルムとが剥離したり、TACの加水分解により透明性が低下して偏光板の偏光度などの性能が低下したりするという欠点がある。従って、短期間でLCDの表示品位が低下することがある。また、TACの吸水率は高いので、高温多湿環境下において偏光度の低下、及び変色による透過率の低下が起こる。さらに、高温環境下でポリビニルアルコールの配向緩和が起きて、TACフィルムに応力が加わったときに大きな複屈折が生じて偏光度が低下することにより、LCDに表示むら及びコントラストの低下が生じることがある。
【0006】
そこで、新規な上記保護フィルムの開発が行われている。下記の特許文献1では、上記保護フィルムとして、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムが提案されている。さらに、特許文献1では、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを、アクリル系接着剤を介して偏光子に積層し、加熱及び加圧して接着した複合シートが記載されている。この複合シートは、偏光板として用いることができる。
【0007】
下記の特許文献2,3では、上記保護フィルムとして、ポリプロピレン系樹脂フィルムが提案されている。
【0008】
特許文献2では、延伸フィルムである上記ポリプロピレン系樹脂フィルムが、水系又は無溶剤型のエポキシ系接着剤により偏光子に接着されている偏光板が記載されている。さらに、特許文献2では、ポリプロピレン系樹脂フィルムの光弾性係数及び透湿度は低いので、延伸後の上記ポリプロピレン系樹脂フィルムに位相差が発現しやすいこと、並びに上記ポリプロピレン系樹脂フィルムの偏光子に対する接着性が比較的良好になることが記載されている。
【0009】
特許文献3では、二軸延伸してポリプロピレン系樹脂フィルムを得る際に、小さい延伸倍率方向の延伸倍率に対する大きい延伸倍率方向の延伸倍率の比を1.5以上とすることにより、所望のレターデーションを発現させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−5836号公報
【特許文献2】特開2007−316603号公報
【特許文献3】特開2008−216416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムでは、接着性が十分に発現しにくい。このため、該熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを接着剤により偏光子に十分に接着させることは困難である。また、特許文献1に記載の複合シートの製造方法では、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを偏光子と接着させるために、接着時にフィルム全体を均一に加熱及び加圧する必要がある。このため、偏光板の製造設備が高価になり、かつ偏光板の生産効率が悪くなる。さらに、得られた偏光板は加熱圧着されているので、偏光子が退色して偏光機能が低下し、更に、加熱加圧の際の加熱温度又は圧力がばらつくと接着むらが生じて偏光性能が低下するという欠点がある。
【0012】
特許文献2,3に記載のポリプロピレン系樹脂フィルムでも、接着性が十分に発現しないことがある。また、特許文献3に記載の延伸方法では、分子配向効果が十分に発現しないことがある。さらに、特許文献3に記載の延伸方法では、複屈折性を得るために延伸倍率に敢えて異方性を付与することから、フィルム剛性に関しても異方性が生じる。このため、ポリプロピレン系樹脂フィルムが偏光子から剥離した場合に、ポリプロピレン系樹脂フィルムと偏光子との界面で剥離するのではなく、凝集破壊を起こしてポリプロピレン系樹脂フィルムの表層部分が薄膜となって偏光子側に付着して剥離することがある。従って、ポリプロピレン系樹脂フィルムと偏光子との接着性が実用要求性能に至っていないという欠点がある。
【0013】
本発明の目的は、偏光子保護部材として適当かつ十分な接着性を発現する偏光板用保護フィルムの製造方法及び偏光板用保護フィルムを提供することである。本発明の他の目的は、該偏光板用保護フィルムの製造方法により得られた偏光板用保護フィルムを用いた複合偏光板、偏光板及び液晶表示装置を提供することである。
【0014】
本発明の限定的な目的は、偏光子保護部材として適当かつ十分な接着性を発現するだけでなく、高温下での光学補償性能の劣化を抑制でき、液晶表示装置の表示画像を長期間にわたって高品位に保つことを可能とする偏光板用保護フィルムの製造方法及び偏光板用保護フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の広い局面によれば、結晶性樹脂と多官能不飽和化合物とを含む材料により形成されたフィルムを、加熱しながら長手方向及び幅方向の内の少なくとも一方向に延伸し、延伸フィルムを得る加熱延伸工程と、延伸終了後に、該延伸フィルムに電子線を照射する電子線照射工程とを備える、偏光板用保護フィルムの製造方法が提供される。
【0016】
本発明に係る偏光板用保護フィルムの製造方法のある特定の局面では、上記結晶性樹脂としてポリプロピレン系樹脂が用いられる。
【0017】
本発明に係る偏光板用保護フィルムの製造方法の他の特定の局面では、上記ポリプロピレン系樹脂として、メルトフローレートが5g/10分以上、30g/10分以下であるポリプロピレン系樹脂が用いられる。
【0018】
本発明に係る偏光板用保護フィルムの製造方法のさらに他の特定の局面では、接着剤層を少なくとも一方の表面に有する偏光板用保護フィルムの製造方法であって、電子線が照射されたフィルムの少なくとも一方の表面に、接着剤層を積層する工程がさらに備えられる。
【0019】
本発明に係る偏光板用保護フィルムは、上記偏光板用保護フィルムの製造方法により得られる。
【0020】
本発明に係る偏光板用保護フィルムのある特定の局面では、接着剤層を有さない偏光板用保護フィルム又は接着剤層を少なくとも一方の表面に有する偏光板用保護フィルムであり、接着剤層を有さない偏光板用保護フィルムを接着剤層を有する偏光子の接着剤層に貼り付けるか、又は接着剤層を有する偏光板用保護フィルムを接着剤層側から偏光子に貼り付けたときに、偏光板用保護フィルムの偏光子に対する23℃での剥離強力が25N/25mm幅以上である。
【0021】
本発明に係る偏光板用保護フィルムの他の特定の局面では、偏光板用保護フィルム(接着剤層を有する場合には接着剤層を除く)の下記式(1)で定義される正面レタ−デーションR0が20nm以上、200nm以下であり、80℃の熱風で1000時間処理した後の偏光板用保護フィルム(接着剤層を有する場合には接着剤層を除く)の上記R0の変化率が、熱風処理前の初期値に対して−5%以上、+5%以下である。
【0022】
R0(nm)=|nx−ny|×d ・・・式(1)
nx:フィルム面内の最大屈折率
ny:フィルム面内のnx方向と直交する方向の屈折率
d:フィルムの平均厚み(nm)
本発明に係る複合偏光板は、本発明に係る偏光板用保護フィルムの製造方法により得られた偏光板用保護フィルムと、該偏光板用保護フィルムの一方の表面側に配置された偏光板とを備える。
【0023】
本発明に係る偏光板は、本発明に係る偏光板用保護フィルムの製造方法により得られた偏光板用保護フィルムと、該偏光板用保護フィルムの一方の表面側に配置された偏光子とを備える。
【0024】
本発明に係る液晶表示装置は、液晶セルを構成している一対の基板と、該一対の基板の少なくとも一方の外表面に積層されており、かつ本発明に従って構成された複合偏光板又は偏光板とを備える。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る偏光板用保護フィルムの製造方法では、結晶性樹脂と多官能不飽和化合物とを含む材料により形成されたフィルムを、加熱しながら長手方向及び幅方向の内の少なくとも一方向に延伸した後、延伸フィルムに電子線を照射するので、得られる偏光板用保護フィルムでは、偏光子保護部材として適当かつ十分な接着性を発現する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0027】
本発明に係る偏光板用保護フィルムの製造方法は、結晶性樹脂と多官能不飽和化合物とを含む材料により形成されたフィルムを、加熱しながら長手方向及び幅方向の内の少なくとも一方向に延伸し、延伸フィルムを得る加熱延伸工程と、延伸終了後に、該延伸フィルムに電子線を照射する電子線照射工程とを備える。上記加熱延伸工程において得られる延伸フィルムは、一軸延伸フィルムであってもよく、2軸延伸フィルムであってもよい。
【0028】
本発明では、延伸されるフィルムとして、結晶性樹脂と多官能不飽和化合物とを含む材料により形成されたフィルム(以下、フィルムAと記載することがある)が用いられる。フィルムAは、長手方向と幅方向とを有する。フィルムAは、長尺状のフィルムであることが好ましい。
【0029】
結晶性樹脂と多官能不飽和化合物とを含む材料により形成されたフィルムを延伸した後に、延伸フィルムに電子線を照射することにより、得られる偏光板用保護フィルムでは、偏光子保護部材として適当かつ十分な接着性を発現する。さらに、得られる偏光板用保護フィルム及び該偏光板用保護フィルムを用いた複合偏光板及び偏光板では、偏光度が低下し難く、退色が起こり難く、かつ耐久性及び光学特性も良好になる。さらに、得られた偏光板用保護フィルムを液晶表示装置に用いると、液晶パネルの表示画像を長期間にわたって安定させることができる。
【0030】
さらに、本発明に係る偏光板用保護フィルムの製造方法によれば、特に延伸フィルムへの電子線の照射により、高温下での光学補償性能が劣化し難い偏光板用保護フィルムを得ることができる。従って、液晶表示装置内での熱暴露に対して、偏光板用保護フィルムの光学補償性能が劣化し難くなる。このため、得られた偏光板用保護フィルムの使用により、液晶表示装置の表示画像を長期間にわたって高品位に保つことができる。
【0031】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0032】
(結晶性樹脂と多官能不飽和化合物とを含む材料により形成されたフィルムA)
フィルムAは、結晶性樹脂と多官能不飽和化合物とを含む材料により形成されたフィルムである。
【0033】
結晶性樹脂:
上記結晶性樹脂は特に限定されない。上記結晶性樹脂として、実質的に結晶性を有する樹脂が用いられる。該結晶性樹脂は、透明性が高く、固有複屈折が低く、かつ光弾性係数が小さく光学部材として適当な特性を有することが好ましく、更に高い機械特性及び高い剛性を有することが好ましい。該結晶性樹脂は、輝点欠点となり得る架橋物及び劣化物がフィルムに生じにくい樹脂であることが好ましい。このような特性を有するので、上記結晶性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましく、ポリプロピレン系樹脂であることがより好ましい。ポリプロピレン系樹脂は、ラジカル付加重合により得ることが可能である。ポリプロピレン系樹脂は、高湿環境下でもフィルムの各特性が低下し難いように適度な疎水性を有し、しかも安価で容易に製造及び入手可能である。
【0034】
上記ポリプロピレン系樹脂の主成分は、ホモポリプロピレンであることが好ましい。上記ポリプロピレン系樹脂100重量%中、ホモポリプロピレンの割合は好ましくは90重量%以上、より好ましくは99重量%以上、100重量%以下である。一般に、ブロックポリプロピレンコポリマー及びランダムポリプロピレンコポリマーに比べて、ホモポリプロピレンの立体規則性は高い。立体規則性の高い材料は、結晶化度及び同一分子間の親和性が高く、高い力学的特性を主に得るために好適な材料である。さらに、立体規則性の高い材料では、一定の結晶性を得ることができるため、高い剛性の発現を期待できる。上記ホモポリプロピレンは、アイソタクチックホモポリプロピレンであることが好ましい。アイソタクチックホモポリプロピレンは、立体規則性が高く、結晶化しやすい。
【0035】
また、ホモポリプロピレンの立体規則性の指標として、一般に、ヘプタンにより抽出されないホモポリプロピレンの割合であるヘプタン不溶分の割合が用いられる。ヘプタン不溶分の割合は、ヘプタンにより抽出されないアイソタクチックポリプロピレンの割合の指標でもある。ヘプタン不溶分が多いほど、立体規則性が高いことを示す。従って、ポリプロピレン系樹脂のヘプタン不溶分は好ましくは90重量%以上、より好ましくは99重量%以上、100重量%以下である。ヘプタン不溶分の割合が高いポリプロピレン系樹脂を用いることで、結晶性が比較的高く、延伸後の分子配向が緻密なフィルムを得ることができる。このヘプタン不溶分は、例えば、特開平10−330706号公報に記載の方法に準拠して測定できる。
【0036】
アイソタクチックホモポリプロピレンの選択指標のひとつとして、メソペンタッド分率(mmmm)が用いられる。メソペンタッド分率は、ポリプロピレン中のプロピレンモノマー単位中に含まれるメチル基が互いに同方向に5つ連続している割合を示し、ポリプロピレンの立体規則性を表す。メソペンタッド分率が高いほど、立体規則性が高い。メソペンタッド分率は、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、100%以下である。メソペンタッド分率は、例えば、特開平3−14851号公報に記載の方法に準拠して測定できる。
【0037】
フィルムの成形性及びフィルムの延伸性、並びに偏光板用保護フィルムの品位を高める観点からは、上記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(以下、「MFR」と記載する)は、好ましくは5g/10分以上、より好ましくは10g/10分以上、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下である。上記MFRは、JIS K6760に規定されたプラストメータを用い、JIS K7120に規定された測定方法に従って測定できる。
【0038】
上記ポリプロピレン系樹脂の光弾性係数は、好ましくは2.0×10−11Pa−1以下、より好ましくは1.0×10−11Pa−1以下である。偏光子の収縮応力、偏光子への貼り付け時の歪み、LCDへの組み込み時の歪みによる応力等の種々の外力が偏光板用保護フィルムかかり、該偏光板用保護フィルムの内部に応力が発生する。特に高温高湿環境下では、偏光板の収縮応力が大きい。上記光弾性係数は、下記式(11)により定義され、フィルム内部に発生した応力に対する複屈折の変化を表す値である。
【0039】
C=Δn/σ ・・・式(11)
C:光弾性係数(Pa−1
Δn:発現複屈折
σ:フィルム内部応力(Pa)
【0040】
上記光弾性係数が小さいほど、外力による複屈折率の変化量が小さくなる。上記光弾性係数が上記上限以下であると、外力による変形により光学性能が大きく変化し難くなるため、偏光板用保護フィルムを光学フィルムの用途に好適に用いることができる。
【0041】
フィルムAを得るための材料100重量%中、上記結晶性樹脂の含有量は好ましくは60重量%以上、好ましくは99.95重量%以下、より好ましくは99.9重量%以下、更に好ましくは95重量%以下である。結晶性樹脂の含有量が上記下限以上であると、フィルムAの透明性及び機械的強靭性が良好になる。
【0042】
(多官能不飽和化合物)
フィルムAを得るための材料は、多官能不飽和化合物を含む。多官能不飽和化合物は、電子線の照射の際に架橋助剤として作用する。従って、多官能不飽和化合物の使用により、反応性の高い多官能不飽和化合物が架橋反応起点となって、電子線の照射の際に分子間の架橋が促進される。
【0043】
上記多官能不飽和化合物は、多官能性モノマーであることが好ましく、電子線に対する活性が高いことが好ましい。多官能不飽和化合物は特に限定されない。電子線の照射により分子間の架橋を効果的に進行させ、偏光板用保護フィルムの偏光子に対する接着性及び偏光板用保護フィルムの耐熱性をより一層高める観点からは、多官能不飽和化合物は、ビニル基、アリル基又は(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基とメタクリロイル基とを示す。
【0044】
上記多官能不飽和化合物としては、ビニル基又はアリル基を2個以上有する芳香族化合物又は脂肪族化合物、並びに(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物等が挙げられる。多官能化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0045】
上記多官能化合物の具体例としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジアリルベンゼン、ジビニルナフタレン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチルビニルベンゼン、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールメタクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、1,2−ベンゼンジカルボン酸ジアリルエステル、1,3−ベンゼンジカルボン酸ジアリルエステル、及び1,4−ベンゼンジカルボン酸ジアリルエステル等が挙げられる。これら以外の多官能化合物を用いてもよい。
【0046】
フィルムAを得るための材料100重量%中、多官能化合物の含有量は好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。多官能不飽和化合物の含有量が上記下限以上であると、電子線照射による架橋がより一層効果的に進行して、接着性、寸法安定性及び剛性等の分子配向の固定による効果を十分に得ることができる。多官能不飽和化合物の含有量が上記上限以下であると、架橋密度が適度にあがり、成形性が良好になり、更に未反応の多官能不飽和化合物がフィルムの表面に残存し難くなるので、接着性、剛性及び透明性がより一層良好になる。
【0047】
他の成分:
フィルムAを得るために、本発明の目的を阻害しない範囲で必要に応じて、添加剤を用いてもよい。該添加剤として、酸化防止剤、紫外線吸収剤、架橋剤、滑剤及び帯電防止剤等が挙げられる。
【0048】
上記酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−(1−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,2−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)及びトリス(ジ−ノニルフェニルホスファイト)等が挙げられる。上記紫外線吸収剤としては、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン及び2−(2’−ジヒドロキシ−4’−m−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。上記架橋剤としては、トリメチロールプロパン等が挙げられる。上記滑剤としては、パラフィンフェノス及び硬化油等が挙げられる。上記帯電防止剤としては、ステアロアジトプロピルジメチル−β−ヒドロキシエチルアンモニウムトレート等が挙げられる。
【0049】
フィルムAの詳細:
延伸前のフィルムAの製造方法は特に限定されない。該製造方法として、溶融押出法及び溶液流延法等の従来公知の任意の成形法を用いることができる。溶融押出法としては、例えば、上記結晶性樹脂と多官能化合物とを含む材料を押出機に供給して溶融し、混練し、押出機の先端に取り付けられた金型からフィルム状に押し出した後、静電印荷キャスト法、タッチロール法又はエアーナイフキャスト法により、冷却した回転ドラム上で冷却固化し、長尺状のフィルムに成膜する方法等が挙げられる。上記溶液流延法としては、上記結晶性樹脂を有機溶媒に溶解した溶液を、ドラム又は無端ベルト等の上に流延した後、有機溶媒を蒸発させて、長尺状のフィルムに成膜する方法等が挙げられる。厚み80μm以上の無配向フィルムを得る場合に、溶液流延法では有機溶媒を充分に蒸発、除去することが困難になるので、溶融押出法が好ましい。
【0050】
なお、得られるフィルムAは、一般的には、実質的に無配向のフィルムである。フィルムAは実質的に無配向であることが好ましく、光学的に等方であることが好ましい。すなわち、フィルムAのフィルム面内方向及びフィルム厚み方向のレターデーション値がゼロに近いことが好ましい。具体的には、フィルム面内方向のレターデーション値は、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下である。
【0051】
(偏光板用保護フィルムの製造方法)
本発明に係る偏光板用保護フィルムの製造方法では、フィルムAを、加熱しながら長手方向及び幅方向の内の少なくとも一方向に延伸し、延伸フィルムを得る。延伸には、例えば、テンター延伸機等が用いられる。
【0052】
上記フィルムは、長手方向及び幅方向の内の一方向のみに一軸延伸してもよく、長手方向及び幅方向に二軸延伸してもよい。
【0053】
二軸延伸法としては、長手方向又は幅方向に延伸した後、前段の延伸方向と直交する方向に延伸する逐次二軸延伸法、並びに長手方向及び幅方向に同時に延伸する同時二軸延伸法が挙げられる。二軸延伸法は、光学補償性能及び生産性を考慮して、適宣選択できる。設備費を低くし、かつ操作性及び光学補償性能を高める観点からは、逐次二軸延伸法が好ましい。フィルム面内物性の等方性を高める観点からは、同時二軸延伸法が好ましい。
【0054】
フィルムAを延伸する際には、長手方向及び幅方向に、フィルムを加熱しながら延伸する加熱延伸工程と、延伸されたフィルムを熱処理する熱処理工程とが行われることが好ましい。また、上記フィルムの延伸の際には、予熱工程と、上記加熱延伸工程と、上記熱処理工程と、冷却工程とが行われることがより好ましい。
【0055】
各工程におけるフィルム加熱法としては、熱ロール接触加熱法、及びエアーフローティング加熱方式を利用した空気対流加熱法等が挙げられる。これら以外のフィルム加熱法を用いてもよく、これらのフィルム加熱法を併用してもよい。フィルム加熱法は、延伸形態に応じて適宣選択される。
【0056】
上記予熱工程は、フィルムAを延伸可能なフィルム温度まで加熱する工程であり、さらには、特にテンタークリップ方式の延伸形態において発生する分子配向の湾曲パターン(いわゆるボーイング)を低減し、配向を揃えるための機能を担っている。
【0057】
上記予熱工程では、無配向フィルムを延伸可能な温度付近まで加熱する。上記予熱工程では、例えば、加熱延伸工程における延伸温度付近まで加熱する。予熱工程における上記フィルムの温度は、次工程となる加熱延伸工程でのフィルム温度と等しい温度以上であることが好ましい。一方で、延伸前にフィルムAを加熱することにより結晶化が進行し、続く加熱延伸工程でフィルムが破断し、延伸変形が困難になることがある。従って、予熱工程における予熱温度は、結晶性樹脂の融点をTm(℃)としたとき、(Tm−50)℃以上、(Tm)℃以下であることが好ましい。予熱温度が上記下限以上であると、加熱延伸工程において延伸応力が大きくなりすぎず、フィルムが切断し難くなる。予熱温度が上記上限以下であると、フィル延伸応力が十分に高くなり、延伸効果を十分に得ることができ、更に結晶化が進行し難くなって延伸による切断が生じ難くなる。
【0058】
上記加熱延伸工程では、上記フィルムを加熱しながら、フィルムの長手方向及び幅方向に延伸することにより、実質的に無配向であったフィルム構成分子を特定方向に配向させる。これにより、延伸による分子配向によってフィルムに機械特性及び接着性を付与し、偏光板用保護フィルムの機能を発現させる。
【0059】
長手方向への縦一軸延伸方法として、従来公知の方法を採用できる。縦一軸延伸方法としては、ロール間延伸法及びクリップテンター法等が挙げられる。操作性を高め、設備費を低くする観点からは、ロール間延伸法がより好ましい。ロール間延伸法は、上流側設置ロールを低速度、下流側設置ロールを高速度として、異なる回転速度で回転される複数のロールが長手方向に任意の間隔で配置されており、ロールの間隙を介して加熱下でフィルムを搬送することで、ロール速度差に応じてフィルムを延伸する手法である。ロールの配置距離により事実上定義される延伸距離がフィルム幅よりも短いと、長手方向への分子配向は不十分となる。上記延伸距離が長すぎると、フィルムの折れ、フィルムのしわ、及び加熱炉パーツ等への接触傷等が発生しやすくなる。上記延伸距離は、フィルムの走行性に応じて適宣設定できる。ロールに対するフィルムの保持力を高め、グリップを良くし、さらに加熱延伸工程における応力の影響を前後の工程に波及させないことを目的として、上記ロールは、ニップ機構を備えることが好ましい。
【0060】
幅方向への横一軸延伸方法、及び長手方向と幅方向への同時二軸延伸方法として、従来公知の任意のテンター延伸法を採用できる。横一軸延伸方法及び同時二軸延伸方法としては、例えば、無配向フィルムの幅方向の両端部をテンタークリップで把持し、テンタークリップの幅方向の間隔を次第に離間させ、フィルムを幅方向に拡幅し、延伸する方法が挙げられる。さらに、上記幅方向延伸手法に加え、パンタグラフ構造、スクリュー構造又はリニアモータ方式によるクリップリンク機構を利用して、長手方向に互いに隣接するクリップを次第に離間させ、フィルムを長手方向に延伸する方法が挙げられる。
【0061】
上記加熱延伸工程における長手方向及び幅方向の各延伸倍率は、偏光板用保護フィルムの剛性及びボーイング現象による分子配向の湾曲などを制御するために適宜決定できる。延伸倍率が低すぎると、所望の分子配向効果が得られないことがある。延伸倍率が高すぎると、過大な延伸応力により延伸時にフィルムが切断したり、テンタークリップがはずれたりして加熱延伸工程におけるフィルム走行安定性を損なうことがある。従って、長手方向及び幅方向の各延伸倍率は、好ましくは1.10倍以上、より好ましくは1.50倍以上、好ましくは6.00倍以下、より好ましくは5.00倍以下である。
【0062】
また、上記加熱延伸工程における延伸歪み速度は、好ましくは50%/分以上、より好ましくは100%/分以上、好ましくは2000%/分以下である。上記歪み速度が上記下限以上であると、延伸による分子配向に追従することによる配向緩和が生じ難くなり、十分な分子配向効果を得やすい。上記歪み速度が上記上限以下であると、フィルムが切断し難くなり、テンタークリップがはずれ難くなる。また、高い歪み速度で延伸することにより、特にテンタークリップ方式による延伸では、クリップレール開き角度を大きく取り、延伸ゾーンの炉長を極力短くすることができる。
【0063】
上記加熱延伸工程における加熱延伸温度Tsは、上記結晶性樹脂の融点をTm(℃)としたとき、(Tm−30)℃以上、(Tm)℃以下であることが好ましい。この温度範囲内で延伸することにより、フィルムの変形は無配向フィルムの厚み極小部で選択的に進行することがないため、原反の厚み不良の影響を受けにくい延伸を実施することが可能となる。
【0064】
上記加熱延伸温度Tsが上記上限以下であると、延伸応力が十分に高くなり、更に延伸による分子配向効果を十分に得ることができ、配向緩和が優先し難く、所望の機械物性及び接着性を得ることができる。上記加熱延伸温度Tsが上記下限以上であると、延伸むらによる不均一変形が生じ難くなり、フィルムの厚み精度が高くなる。このため、偏光板用保護フィルムの商品価値が向上し、LCDの表示品位が高くなる。
【0065】
上記加熱延伸工程における加熱延伸開始から終了までの延伸時間は、好ましくは10秒以上、より好ましくは20秒以上、好ましくは100秒以下、より好ましくは60秒以下である。上記延伸時間が上記上限以下であると、加熱による配向緩和が生じ難くなり、延伸による分子配向効果を充分に得ることができる。上記延伸時間が上記下限以上であると、ボーイング現象が抑制され、分子配向がより一層均一になり、フィルム特性がより一層向上する。さらに、過大な延伸応力が加わり難くなって延伸時にフィルムが切断し難くなり、かつテンタークリップがはずれ難く、加熱延伸工程におけるフィルム走行安定性が良好になる。
【0066】
上記熱処理工程は、延伸後のフィルムの残留歪みを除去又は低減し、アニール処理するための工程である。上記熱処理工程により、延伸フィルムのボーイングを低減し、配向を揃えることができる。したがって、機械物性の異方性を低減し、寸法安定特性を高めかつ厚みを揃えることができる。
【0067】
上記熱処理工程における加熱温度が高すぎると、延伸により得られた分子配向が緩和し、特に機械強度が低下することがある。上記結晶性樹脂の融点をTm(℃)としたとき、上記熱処理工程における加熱温度は、(Tm−100)℃以上、(Tm−10)℃以下であることが好ましい。上記加熱温度を上記範囲内とすることにより、ボーイングを制御して、分子配向精度を高めることが可能となり、更に結晶性を高めることによって、フィルム剛性を向上させることができる。
【0068】
上記熱処理工程における加熱時間は、主に連続生産性に基づいて決定されるフィルム走行速度に応じて適宣設定できる。上記加熱時間は、好ましくは5秒以上、より好ましくは10秒以上、好ましくは60秒以下、より好ましくは30秒以下である。熱処理工程における加熱時間が上記下限以上及び上記上限以下であるとことにより、ボーイング現象を抑制し、分子配向精度を高めることが可能となる。上記加熱時間が上記下限以上であると、十分なアニール効果が得られ、結果としてフィルム流れの下流側に配向がせり出し難く、逆ボーイングが生じ難くなる。上記加熱時間が上記上限以下であると、フィルム流れの上流側に配向がせり出し難く、正ボーイングが生じ難くなる。このため、主にフィルムの寸法安定性が高くなり、偏光板用保護フィルムの商品価値が向上し、LCDの表示品位が高くなる。
【0069】
上記冷却工程は、フィルムを急冷することにより、フィルムに形成された結晶相及び分子配向をフィルム固定するための工程である。上記結晶性樹脂の融点Tm(℃)としたとき、上記冷却工程における冷却温度は、好ましくは(Tm−100)℃以上、好ましくは(Tm−50)℃以下である。
【0070】
本発明に係る偏光板用保護フィルムの製造方法は、延伸終了後に、上記延伸フィルムに電子線を照射する電子線照射工程を備える。
【0071】
電子線照射工程は、延伸フィルムの分子内に架橋構造を形成し、延伸により得られた分子配向を拘束固定することで、配向緩和を抑止し、光学特性等の経時変化を防止し、かつフィルム剛性を向上させるための工程である。上記電子線照射工程における電子線の照射量は好ましくは1kGy以上、より好ましくは5kGy以上、好ましくは100kGy以下、より好ましくは30kGy以下である。電子線の照射量が上記下限以上であると、架橋密度がより一層高くなり、分子配向の固定効果が十分に得られる。電子線の照射量が上記上限以下であると、分子間架橋の進行よりも分子主鎖の切断が進行し難くなり、結果として剛性に優れたフィルムが得られ、かつ寸法安定性及び耐久性もより一層良好になる。
【0072】
また、一定の厚みを有する延伸フィルムに電子線を照射する際には、フィルムの表面からの電子線の浸透距離がある程度長く、延伸フィルムの厚み方向に均質に電子線照射処理されることが重要である。上記浸透距離は、電子線の加速電圧により決まる。上記加速電圧は好ましくは50kV以上、より好ましくは100kV以上である。
【0073】
上記電子線を照射するために、エレクトロキュア型又はエレクトロカーテン型などの従来公知の方式及び装置を採用できる。
【0074】
本発明に係る偏光板用保護フィルムの製造方法は、電子線が照射されたフィルムの少なくとも一方の表面に、接着剤層を積層する工程をさらに備えることが好ましい。この工程により、接着剤層を少なくとも一方の表面に有する偏光板用保護フィルムを得ることができる。本発明に係る偏光板用保護フィルムの製造方法により得られる偏光板用保護フィルムは、接着剤層を有さない偏光板用保護フィルムであってもよく、接着剤層を有する偏光板用保護フィルムであってもよい。本明細書では、接着剤層を有する偏光板用保護フィルムも、偏光板用保護フィルムと呼ぶ。
【0075】
(偏光板用保護フィルム)
偏光板用保護フィルムの偏光子に対する接着性は、剥離強力により示される。上記剥離強力は、JIS K6854−4に記載の「接着剤―はく離接着強さ試験方法―第4部:浮動ローラ法」に準拠して測定される。偏光板用保護フィルムの偏光子に対する23℃での上記剥離強力は、5N/25mm幅以上であることが好ましい。上記剥離強力が上記下限以上であると、偏光板用保護フィルムと偏光子とを貼り合わせた偏光板が、LCDに実装された後でも、剥離せずに一体化した状態を保持し、偏光板の実用性能を充分に維持できる。なお、接着剤層を有さない偏光板用保護フィルムを接着剤層を有する偏光子の接着剤層に貼り付けるか、又は接着剤層を有する偏光板用保護フィルムを接着剤層側から偏光子に貼り付けることにより、上記剥離強力を測定するための偏光板用保護フィルムと偏光子とが貼り合わされた積層体が得られる。
【0076】
上記偏光板用保護フィルムの偏光子に対する接着力を十分に得るためには、偏光板用保護フィルムは、少なくとも一方の表面に接着剤層を有することが好ましい。該接着剤層は、特に限定されない。該接着剤層は、光学特性を阻害しないことが好ましい。上記接着剤層は、公知の接着剤及び粘着剤などを用いて形成できる。該接着剤として、PVA系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、ポリエステル系又はポリアクリル系等の水系接着剤が好適に用いられる。該粘着剤としては、ポリエステル系、アクリル系、シリコン系又はゴム系の粘着剤が挙げられる。
【0077】
上記接着剤層を形成する方法としては、乾燥後の厚み及び塗工の円滑性等を考慮して、適当な濃度(例えば0.01〜50重量%)となるように接着成分が配合された塗工液を調製した後、延伸フィルムに該塗工液を公知の方法で塗布し、熱風等で乾燥させる方法が挙げられる。上記塗工の方法としては、例えば、グラビアコーターを用いる方法、マイクログラビアコーターを用いる方法及びマイヤーバーコート法等が挙げられる。
【0078】
上記塗工液を調製するために、溶媒として水以外のアルコールが用いられてもよく、水とアルコールとの混合溶媒が用いられてもよい。上記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール及びイソプロパノール等が挙げられる。
【0079】
上記接着層の厚みは特に限定されない。上記接着剤層の厚みは、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下である。厚みが上記下限以上であると、接着力がより一層良好になる。上記厚みが上記上限以下であると、多湿条件下でも偏光板の退色が起きにくくなる。
【0080】
なお、偏光板用保護フィルムにおける延伸フィルムと接着剤層との接着性を確保するため、延伸フィルムは表面改質処理されていることが好ましい。表面改質の方法としては、通常の方法が利用できる。表面改質する化学処理方法としては、接着剤分子と反応可能な官能基を有するモノマー又はポリマーとを表面に付ける表面グラフト化法、表面に別のポリマー又はモノマーをコーティングする方法、カップリング剤による処理方法、酸化力の強い薬品による処理方法、表面層を除去する薬品処理方法、表面層を強化するCASING処理方法、及び表面粗化手法である薬品処理方法等が挙げられる。表面改質する物理的処理方法としては、紫外線照射処理方法、グロー放電処理方法、コロナ放電処理方法、プラズマ処理方法、並びに表面粗化手法であるエスパッタ処理方法等が挙げられる。
【0081】
熱風処理前の偏光板用保護フィルム(接着剤層を有する場合には接着剤層を除く)の下記式(1)により定義される正面レターデーションR0は、好ましくは20μm以上、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下である。正面レターデーションR0を制御することによって、偏光板用保護フィルムを液晶表示装置に組み込むと、表示画像を安定して高品位に保つことができる。レターデーションR0が上記下限以上及び上記上限以下であると、液晶を通過する際の複屈折を十分に補償することが可能であり、偏光板用保護フィルムの商品価値が向上する。
【0082】
R0(nm)=|nx−ny|×d ・・・式(1)
nx:フィルム面内の最大屈折率
ny:フィルム面内のnx方向と直交する方向の屈折率
d:フィルムの平均厚み(nm)
80℃の熱風で1000時間処理した後の偏光板用保護フィルム(接着剤層を有する場合には接着剤層を除く)の上記正面レターデーションR0の変化率は、熱風処理前の初期値に対して−5%以上、+5%以下であることが好ましい。R0の変化率は、下記式(2)で定義される。
【0083】
η0の変化率(%)=(R0[1000]―R0[0])/R0[0]×100 ・・・式(2)
η0:正面レターデーションR0の変化率
R0[0]:熱風処理前のフィルムのR0(nm)
R0[1000]:80℃の熱風で1000時間処理した後のフィルムのR0(nm)
【0084】
80℃の熱風で1000時間処理した後の正面レターデーションR0の熱風処理前のフィルムのR0に対する変化量が小さいほど、偏光板用保護フィルムを用いた液晶表示装置では、液晶表示装置が本来有する広視野角及び高コントラストといった高品位の表示画像を、安定して長期間にわたって保持できる。なお、耐久性評価の熱風の温度を80℃としたのは、液晶表示装置に偏光板用保護フィルムを組み込むと、パネル装備のバックライト光に偏光板用保護フィルムが常時露光され、このとき偏光板用保護フィルムが80℃程度に加熱昇温されるためである。
【0085】
偏光板用保護フィルムにおける延伸フィルム(電子線が照射されたフィルム)の平均厚みは特に制限されないが、好ましくは5μm以上、より好ましくは20μm以上、好ましくは200μm以下、より好ましくは80μm以下である。上記延伸フィルムの平均厚みは、偏光板用保護フィルムが接着剤層を有さない場合には偏光板用保護フィルムの平均厚みを示し、偏光板用保護フィルムが接着剤層を有する場合には接着剤層を除く偏光板用保護フィルムの平均厚みを示す。上記平均厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、偏光板用保護フィルムが一定の機械的強度を有し、更にLCDへ積層される際に重視される部材を軽量化できる。延伸フィルムの厚みが上記下限以上であると、偏光板用保護フィルムの強度が高くなり、得られる偏光板の耐久性が向上し、経時的に反り等の不具合が起こり難くなる。延伸フィルムの厚みが上記上限以下であると、偏光板用保護フィルムの透明性が高くなり、保護フィルムの透湿度が向上して、水性接着剤などを用いて偏光子に延伸フィルムをウエットラミネートした後に乾燥効率が高くなり、初期接着性の発現が速くなる。
【0086】
上記延伸フィルム(電子線が照射されたフィルム)の透湿度は特に限定されないが、好ましくは5g/m・24h以上、より好ましくは7g/m・24h以上、更に好ましくは10g/m・24h以上、好ましくは200g/m・24h以下、より好ましくは180g/m・24h以下、更に好ましくは150g/m・24h以下である。なお、上記透湿度は、JIS Z0208に準拠して測定された延伸フィルムの単位厚みにおける透湿度を意味する。延伸フィルムの上記透湿度が上記下限以上であると、水系接着剤を用いて偏光子に偏光板用保護フィルムをウエットラミネートした後に乾燥効率が高くなり、初期接着力の発現が速くなり、高温環境下において変色等の偏光板の不具合が生じ難くなる。上記透湿度が上記上限以下であると、高温高湿環境下において、偏光板の退色及び光学特性の低下等の不具合が生じ難くなる。
【0087】
上記延伸フィルム(電子線が照射されたフィルム)のヘイズ値は、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。上記ヘイズ値が上記上限以下であると、LCDにおいて光洩れ等が生じ難くなる。
【0088】
延伸フィルム(電子線が照射されたフィルム)の表面に、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射処理又は各種薬品処理等の表面活性処理を施してもよい。さらに、延伸フィルムの表面に、塗布加工又は蒸着による各種の機能コーティング又はラミネート等を行うことにより諸性能を付加し、利用価値を更に向上させてもよい。
【0089】
(複合偏光板、偏光板及び液晶表示装置)
本発明に係る複合偏光板は、上記偏光板用保護フィルムと、該偏光板用保護フィルムの一方の表面側に配置された偏光板とを備える。該偏光板用保護フィルムは接着剤層を有し、該偏光板用保護フィルムは接着剤層側から偏光板に積層されていることが好ましい。上記偏光板用保護フィルムと上記偏光板とは一体化されていることが好ましい。上記偏光板が接着剤層を有し、該偏光板が接着剤層側から偏光板用保護フィルムに積層されていてもよい。
【0090】
本発明に係る液晶表示装置は、液晶セルを構成している一対の基板と、該一対の基板の少なくとも一方の外表面に積層された上記複合偏光板とを備える。
【0091】
本発明に係る偏光板は、上記偏光板用保護フィルムと、該偏光板用保護フィルムの一方の表面側に配置された偏光子とを備える。該偏光板用保護フィルムは接着剤層を有し、該偏光板用保護フィルムは接着剤層側から偏光子に積層されていることが好ましい。上記偏光板用保護フィルムと上記偏光子とは一体化されていることが好ましい。上記偏光子が上記接着剤層を有し、該偏光子が接着剤層側から偏光板用保護フィルムに積層されていてもよい。
【0092】
また、本発明に係る他の液晶表示装置は、液晶セルを構成している一対の基板と、該一対の基板の少なくとも一方の外表面に積層された上記偏光板とを備える。
【0093】
上記偏光板用保護フィルムは、液晶表示装置の部品として好適に用いられる。液晶表示装置は、液晶ディスプレイ(LCD)である。上記偏光板用保護フィルムは、LCDにおいて単独で用いられてもよく、予め偏光板の片面に積層されて複合偏光板として用いられてもよい。
【0094】
上記偏光板用保護フィルムを単独で用いた液晶表示装置を製造する方法としては、液晶セルを構成している一対の基板のそれぞれの外表面に偏光板を配設し、上記液晶セルの基板のうちの少なくとも一方の基板と該基板に対向する偏光板との間に上記偏光板用保護フィルムを配置し、更に、液晶セルにおける液晶表示面とは反対側の基板側に配設した偏光板上に、バックライト型又はサイドライト型の公知の照明システムを配設し、駆動回路を組み込む方法等が挙げられる。上記偏光板用保護フィルムは、液晶表示面側の基板の外表面に配置されることが好ましい。
【0095】
また、上記偏光板として、従来汎用されている偏光板が用いられる。上記偏光板では、例えば、偏光子の両面に保護フィルムが積層一体化されている。この偏光子としては、ポリビニルアルコール−ヨウ素偏光膜、ポリビニルアルコール系フィルムに二色性染料を吸着配向させた染料系偏光膜、ポリビニルアルコール系フィルムより脱水反応を誘起させることにより、又はポリ塩化ビニルフィルムの脱塩酸反応により、ポリエンを形成させたポリエン系偏光膜、分子内にカチオン基を有する変性ポリビニルアルコールにより形成されたポリビニルアルコール系フィルムの表面及び内部の内の一方に二色性染料を有する偏光膜等が挙げられる。
【0096】
上記液晶セルは特に限定されない。上記液晶セルとして、従来公知の液晶セルを使用できる。大型画面として表示性能に優れるVAモード及びIPSモードに、本発明に係る偏光板用保護フィルムを適用すると優れた効果が得られる。これらの液晶モードに対し、正又は負の固有複屈折を有する樹脂材料を表示方式に応じて適切に選択して用いた無配向フィルムを適度に延伸することによって、パネル平行面内又は厚み方向の屈折率が制御された偏光板用保護フィルムを提供できる。これによって、液晶セルの屈折率を効果的に補償して、液晶表示装置の正コントラスト又は見込み角度によるコントラストの変化又は視野角依存性を大幅に改善可能である。
【0097】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例に限定されない。
【0098】
(無配向のポリプロピレン系樹脂フィルムの製造例1)
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、グレード:S136)を用意した。このポリプロピレン樹脂の融点は165℃、密度は0.90g/cm、MFRは20g/10分(測定条件:温度230℃、加重20N)である。
【0099】
上記ポリプロピレン系樹脂90重量部と、1・9ノナンジオール(以下、NDと記載する)(共栄社化学社製、グレード:ライトエステル1・9ND)5重量部と、トリメチロールプロパントリメタクリレート(以下、TMPと記載する)(共栄社化学社製、グレード:ライトエステルTMP)5重量部とを混合して、シリンダー温度260℃に設定した二軸押出機に供給し、充填し、押出して、押出されたストランドをペレタイザーにてカットし混合樹脂ペレット(A)を作製した。
【0100】
上記ポリプロピレン系樹脂90重量部と、上記混合樹脂ペレット(A)10重量部とを単軸押出機に供給し、シリンダー温度230〜245℃で溶融混練した後、Tダイからクロムメッキロール上に、引取速度10m/分で溶融押出しした後、冷却固化させてフィルム状に連続して成膜し、幅が600mm、幅方向平均厚みが150μmである実質的に無配向のポリプロピレン系樹脂フィルム(1)を製造した。
【0101】
(無配向のポリプロピレン系樹脂フィルム製造例2)
NDを配合せず、TMPの配合量を5重量部から10重量部に変更したこと以外は製造例1と同様にして、混合樹脂ペレット(B)を作製した。混合樹脂ペレット(A)を混合樹脂ペレット(B)に変更したこと以外は、製造例1と同様にして無配向のポリプロピレン系樹脂フィルム(2)を得た。
【0102】
(無配向のポリプロピレン系樹脂フィルム製造例3)
TMPを配合せず、NDの配合量を5重量部から10重量部に変更したこと以外は製造例1と同様にして、混合樹脂ペレット(C)を作製した。混合樹脂ペレット(A)を混合樹脂ペレット(C)に変更したこと以外は、製造例1と同様にして無配向のポリプロピレン系樹脂フィルム(3)を得た。
【0103】
(無配向のポリプロピレン系樹脂フィルム製造例4)
混合樹脂ペレット(A)を用いずに、上記製造例1に記載の上記ポリプロピレン系樹脂のみを単軸押出機に供給し、シリンダー温度230〜245℃で溶融混練した後、Tダイからクロムメッキロール上に、引取速度10m/分で溶融押出しした後、冷却固化させてフィルム状に連続して成膜し、幅が600mm、幅方向平均厚みが150μmである実質的に無配向のポリプロピレン系樹脂フィルム(4)を製造した。
【0104】
(偏光子の製造例)
厚さが75μm、鹸化度が99%であるポリビニルアルコールフィルムを用意した。該ポリビニルアルコールフィルムを縦一軸に5.0倍で延伸し、緊張状態を保持したまま沃素0.5重量%と沃化カリウム5.0重量%とを含有する水溶液に浸漬し、二色性色素を吸着させた。次いで、ほう酸10重量%と沃化カリウム10.0重量%とを含有する50℃の水溶液で5分間架橋処理を行い、偏光子を得た。
【0105】
(実施例1〜3及び比較例1)
実施例1〜3及び比較例1では、逐次二軸延伸法により、無配向のポリプロピレン系樹脂フィルムを延伸した二軸延伸フィルムを製造した。
【0106】
上記製造例によって得られた下記表1に記載の無配向のポリプロピレン系樹脂フィルムを連続的に巻き出し、複数の加熱ロールを備えた予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱処理ゾーン及び冷却ゾーンを有するロール式延伸機横一軸テンター延伸機の予熱ゾーン入口に、フィルム搬送速度10m/分で供給した。
【0107】
フィルムを予熱ゾーンで115℃に加温した。その後、延伸ゾーンの前後に配置されたフィルム流れ方向の上流側ニップロールと下流側ニップロールとに回転速度比を付け、下流側ロール速度の上流側ロール速度に対する回転速度比を延伸倍率とし、延伸倍率1.5倍で、延伸ゾーンでフィルムを長手方向に115℃で加熱延伸した。次に、熱処理ゾーンにおいて100℃でアニール処理した。更に、冷却ゾーンで、60℃に冷却して配向固定し、一軸延伸フィルムを得た。さらに、得られた一軸延伸フィルムを、予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱処理ゾーン及び冷却ゾーンを有する横一軸テンター延伸機に連続的に供給した。フィルム端部をテンタークリップで把持し、予熱ゾーンで一軸延伸フィルムを140℃に加温した。その後、延伸倍率2.8倍で、155℃に加熱しながら幅方向に延伸した。次に、熱処理ゾーンにおいて130℃でアニール処理した。更に、冷却ゾーンで、80℃に冷却して配向固定した。次いで、延伸機出口において、フィルム端部をクリップ把持より解放した。その後、スリット工程でクリップ掴み痕の残存するフィルム端部を、フィルム中心から左右対称に設置したシェア刃でスリットして除去した。
【0108】
次に、得られた二軸延伸フィルムの両面にそれぞれ、加速電圧150kV及び線量15kGyの条件で電子線を照射した。また、巻取張力100N/mで塩化ビニル樹脂製コアにロール状に巻き取り、下記の表1に示す平均厚みの偏光板用保護フィルム(接着剤層を有さない偏光板用保護フィルム)を得た。
【0109】
また、電子線が照射された二軸延伸フィルムの表面を、40W/m/分の条件でコロナ放電処理した。次に、二軸延伸フィルムのコロナ放電処理された表面に、接着剤をバーコート法により塗布し、二軸延伸フィルムの片面に接着剤層を積層し、偏光板用保護フィルム(接着剤層を有する偏光板用保護フィルム)を得た。
【0110】
次いで、上記製造例により得られた偏光子の両面に、得られた偏光板用保護フィルムを接着剤層側から積層し、積層体を得た。得られた積層体の表面に常温(23℃)で荷重5Kgのロールを1往復させることにより、積層体を圧着し、偏光板を得た。
【0111】
(実施例4及比較例2)
実施例4及び比較例2では、同時二軸延伸法により、無配向のポリプロピレン系樹脂フィルムを延伸した二軸延伸フィルムを製造した。
【0112】
上記製造例によって得られた下記表1に記載の無配向のポリプロピレン系樹脂フィルムを連続的に巻き出し、予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱処理ゾーン及び冷却ゾーンを有するパンタグラフ式クリップリンク機構を有する同時二軸延伸機の予熱ゾーン入口に、フィルム搬送速度10m/分で供給した。
【0113】
フィルム端部をテンタークリップで把持し、予熱ゾーンで無配向フィルムを140℃に加温した。その後、長手方向の延伸倍率1.5倍、幅方向の延伸倍率2.8倍で、延伸ゾーンでフィルムを155℃に加熱しながら長手方向及び幅方向に同時に延伸した。次に、熱処理ゾーンにおいて135℃でアニール処理した。更に、冷却ゾーンで80℃に冷却して配向固定した。次いで、延伸機出口において、フィルム端部をクリップ把持より解放した。その後、スリット工程でクリップ掴み痕の残存するフィルム端部を、フィルム中心から左右対称に設置したシェア刃でスリットして除去した。
【0114】
次に、得られた二軸延伸フィルムの両面にそれぞれ、電子線を加速電圧150kV及び線量15kGyの条件で照射した。また、巻取張力100N/mで塩化ビニル樹脂製コアにロール状に巻き取り、下記の表1に示す平均厚みの偏光板用保護フィルム(接着剤層を有さない偏光板用保護フィルム)を得た。
【0115】
(比較例3)
二軸延伸フィルムに電子線を照射しなかったこと以外は実施例1と同様にして、偏光板用保護フィルム及び偏光板を作製した。
【0116】
(評価)
(1)接着剤層を有さない偏光板用保護フィルムの平均厚み
フィルム幅方向を基準軸とし、その基準軸に対して長手方向50mm、幅方向は全幅で、接着剤層を有さない偏光板用保護フィルムから帯状フィルム片を採取した。フィルム厚さ測定器(セイコーEM社製、商品名「Millitron1240」)を用いて、フィルム片の幅方向に平行に10mm間隔で厚みを測定し、測定値の総平均を算出し、接着剤層を有さない偏光板用保護フィルムの平均厚み(μm)とした。
【0117】
(2)偏光板用保護フィルム偏光子に対する剥離強力(接着性)
上記二軸延伸フィルムを幅25mmの帯状に切り取り、複数枚のフィルム試料片を得た。フィルム試料片は、接着剤層を有さない偏光板用保護フィルムの幅方向の一端側と他端側とからそれぞれ採取した。そして、上記製造例で得られた偏光子の両面に、接着剤を介して該フィルム試料片を接着し、上記接着剤を80℃で5分間乾燥し硬化させて、偏光板試料片を作製した。接着剤として、以下の成分を含むポリビニルアルコール系水性接着剤を用いた。
【0118】
クラレ社製「クラレポバールPVA217」を水に溶解した20重量%水溶液を95.0重量%以上含む接着剤。接着剤におけるメタノールの含有量5.0重量%未満かつ酢酸メチルの含有量1.0重量%未満。
【0119】
得られた偏光板試料片の23℃での剥離強力を、JIS K6854−4に記載の「接着剤―はく離接着強さ試験方法―第4部:浮動ローラ法」に準拠して求めた。
【0120】
(3)接着剤層を有さない偏光板用保護フィルムの正面レターデーションR0の測定方法]
自動複屈折測定装置(王子計測機器社製、商品名「KOBRA−WR」)を用いて測定光の波長を550nmとして、接着剤層を有さない偏光板用保護フィルムの長手方向に直交する軸を基準軸とし、偏光板用保護フィルムを幅方向に50mm間隔で測定して、総平均値を算出し、フィルムの正面レターデーションR0とした。
【0121】
(4)接着剤層を有さない偏光板用保護フィルムの熱風処理方法及びR0加熱経時変化評価方法
接着剤層を有さない偏光板用保護フィルムの中央部分から、40mm×40mmの正方形状にフィルム片を切り出し、下記の手順で正面レターデーションR0を測定し、測定値をR0[0]とした。
【0122】
次いで、フィルム片を無塵紙で、実質的に無負荷で軽く挟み、80℃に保温した乾燥熱風式オーブンに入れて、1000時間放置し、フィルム片を加熱処理した。熱風処理後に、上記と同様にフィルム片の正面レターデーションR0を測定し、測定値をR0[1000]とした。正面レターデーションR0の変化率を、上記式(2)で算出した。
【0123】
結果を下記の表1に示す。
【0124】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性樹脂と多官能不飽和化合物とを含む材料により形成されたフィルムを、加熱しながら長手方向及び幅方向の内の少なくとも一方向に延伸し、延伸フィルムを得る加熱延伸工程と、
延伸終了後に、前記延伸フィルムに電子線を照射する電子線照射工程とを備える、偏光板用保護フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記結晶性樹脂としてポリプロピレン系樹脂を用いる、請求項1に記載の偏光板用保護フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記ポリプロピレン系樹脂として、メルトフローレートが5g/10分以上、30g/10分以下であるポリプロピレン系樹脂を用いる、請求項2に記載の偏光板用保護フィルムの製造方法。
【請求項4】
接着剤層を少なくとも一方の表面に有する偏光板用保護フィルムの製造方法であって、
電子線が照射されたフィルムの少なくとも一方の表面に、接着剤層を積層する工程をさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光板用保護フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光板用保護フィルムの製造方法により得られた偏光板用保護フィルム。
【請求項6】
接着剤層を有さない偏光板用保護フィルム又は接着剤層を少なくとも一方の表面に有する偏光板用保護フィルムであり、
接着剤層を有さない偏光板用保護フィルムを接着剤層を有する偏光子の接着剤層に貼り付けるか、又は接着剤層を有する偏光板用保護フィルムを接着剤層側から偏光子に貼り付けたときに、偏光板用保護フィルムの偏光子に対する23℃での剥離強力が25N/25mm幅以上である、請求項5に偏光板用保護フィルム。
【請求項7】
偏光板用保護フィルム(接着剤層を有する場合には接着剤層を除く)の下記式(1)で定義される正面レタ−デーションR0が20nm以上、200nm以下であり、
80℃の熱風で1000時間処理した後の偏光板用保護フィルム(接着剤層を有する場合には接着剤層を除く)の前記R0の変化率が、熱風処理前の初期値に対して−5%以上、+5%以下である、請求項5又は6に記載の偏光板用保護フィルム。
R0(nm)=|nx−ny|×d ・・・式(1)
nx:フィルム面内の最大屈折率
ny:フィルム面内のnx方向と直交する方向の屈折率
d:フィルムの平均厚み(nm)
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光板用保護フィルムの製造方法により得られた偏光板用保護フィルムと、
前記偏光板用保護フィルムの一方の表面側に配置された偏光板とを備える、複合偏光板。
【請求項9】
液晶セルを構成している一対の基板と、
前記一対の基板の少なくとも一方の外表面に積層された請求項8に記載の複合偏光板とを備える、液晶表示装置。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光板用保護フィルムの製造方法により得られた偏光板用保護フィルムと、
前記偏光板用保護フィルムの一方の表面側に配置された偏光子とを備える、偏光板。
【請求項11】
液晶セルを構成している一対の基板と、
前記一対の基板の少なくとも一方の外表面に積層された請求項10に記載の偏光板とを備える、液晶表示装置。

【公開番号】特開2012−103354(P2012−103354A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250035(P2010−250035)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】