説明

偏光板用電子線硬化型接着剤

【課題】高湿下および高温下の過酷な環境下における耐久性を満足することができる、偏光板用電子線硬化型接着剤を提供する。
【解決手段】式(I):


で表わされる化合物を含むことを特徴とする、偏光板用電子線硬化型接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子に保護フィルムを接着剤で貼合してなる偏光板用の接着剤に関する。当該接着剤は電子線により硬化し偏光板を形成し、当該偏光板は単独または積層した光学フィルムとして液晶表示装置、有機EL表示装置、CRT、PDP等の画像表示装置を形成しうる。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置(以下「LCD」ということがある。)は、主としてパソコンやテレビなどの屋内で使用する電子機器に幅広く用いられてきたが、最近では、カーナビゲーションシステムや携帯情報端末のように屋外で使用する電子機器に用いられることも多くなってきた。そこで、LCDは、高い表示特性に加えて、高温多湿などの過酷な雰囲気下における信頼性が強く求められている。
【0003】
一般に、LCDには、それを構成する部品として、偏光板が必要不可欠であり、偏光板は、透明電極を形成する2枚の電極基板間に液晶を封入した液晶セルの両面または片面に貼合して用いられる。偏光板は、偏光機能を有する偏光子の両面に透明保護フィルムが接着剤で貼合された積層構造を有する。偏光子の素材としては、主にポリビニルアルコール(以下「PVA」ということがある。)が使用され、例えば、PVAフィルムを一軸延伸してからヨウ素または二色性染料で染色するか、あるいは染色してから延伸し、さらにホウ素化合物で架橋することにより、偏光子が製造される。透明保護フィルムとしては、複屈折性が低く、外観が良好であることから、トリアセチルセルロース(以下「TAC」ということがある。)の溶液流延フィルムが主に使用されている。近年は、TACフィルムより耐湿性の高い(メタ)アクリル系樹脂フィルムが使用されるケースも増えてきている。このような偏光子と透明保護フィルムを接着する接着剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤のような水系接着剤が多く用いられている。
【0004】
しかし、前記のように偏光板を製造する際に、ポリビニルアルコール系接着剤のような水系接着剤を用いた場合(いわゆるウェットラミネーション)には、偏光子と透明保護フィルムを貼り合わせた後に、乾燥工程が必要となる。偏光板の製造工程で乾燥工程が存在することは、偏光板の生産性を向上させるうえで好ましくない。
【0005】
また水系接着剤を使用する場合には、接着剤との接着性を高めるために、偏光子の水分率も相対的に高くしておかないと(通常偏光子の水分率は30%程度)、水系接着剤による接着性が良好な偏光板を得ることができない。しかし、こうして得られた偏光板は、高温や、高温高湿度化では、寸法変化が大きいことなどの問題がある。一方、前記寸法変化を抑えるには、偏光子の水分率を下げたり、透湿度の低い透明保護フィルムを用いたりすることができる。しかし、こうした偏光子と透明保護フィルムを、水系接着剤を用いて貼り合わせると、乾燥工程における能率が下がったり、偏光特性が下がったり、または外観の不具合が発生し実質上有用な偏光板を得ることができない。
【0006】
また、特にTVで代表されるように、近年、画像表示装置の大画面化が進むにつれ、偏光板の大型化も生産性やコストの面(歩留まり、取り数アップ)から非常に重量になっている。しかし、前述の水系接着剤を用いた偏光板では、バックライトの熱により偏光板が寸法変化を引き起こし、それがムラになって画面全体のうち一部分で黒表示が白く見えるといったいわゆる光抜け(ムラ)が顕著になってくるという問題がある。
【0007】
上記のような理由から、水系接着剤の代わりに、活性エネルギー線硬化型(特に紫外線硬化型)接着剤を使用することが多く提案されている。例えば、接着剤として、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等のアクリルオリゴマーに、アクリル又はメタクリル系モノマーを希釈剤とした紫外線硬化型接着剤が提案されている(例えば、特許文献1)。このような活性エネルギー線硬化型接着剤は、乾燥工程が不要であることから生産性を大幅に向上できる。
しかし、偏光板に要求される耐久性能はますます厳しくなっており、前記従来から提案されている活性エネルギー線硬化型接着剤では、過酷な環境下における耐久性の要求を十分に満たすことはできていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−250260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、高湿下および高温下の過酷な環境下における耐久性を満足することができる偏光板用電子線硬化型接着剤、および当該接着剤を使用して得られる偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板製造用の接着剤であって、
接着剤は、式(I):
(1) 式(I):
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Rは水素原子又は1価の有機基を表す。該有機基は、炭化水素で構成され、エーテル基を有していてもよく、該炭化水素の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。)で表わされる化合物を含むことを特徴とする、偏光板用電子線硬化型接着剤、
(2)さらに、偏光子の少なくとも一方の面に、(1)に記載の接着剤を電子線硬化させた接着剤層を介して、透明保護フィルムが設けられている偏光板、に関する。
【0013】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」は「アクリロイル基」および/または「メタクリロイル基」を意味する。「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸」および/または「メタクリル酸」を意味する。また、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および/または「メタクリレート」を意味する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の偏光板用電子線硬化型接着剤により、高湿下および高温下の過酷な環境下における耐久性を満足することができる、耐久性に優れた偏光板を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の電子線硬化型接着剤組成物は、前記したように、式(I):
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、Rは水素原子又は1価の有機基を表す。該有機基は、炭化水素で構成され、エーテル基を有していてもよく、該炭化水素の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。)で表わされる化合物である、α−アリルオキシメチルアクリル酸系単量体〔以下、単にAMA系単量体ともいう〕を含むことを特徴とする。
【0018】
AMA系単量体は低粘度でかつ溶解力が高く希釈性に優れるため、本発明の接着剤は低粘度で塗工性に優れたものとなる。
【0019】
また、AMA系単量体は、例えば、式:
【0020】
【化3】

【0021】
(式中、R1は前記と同じ。X・は開始ラジカルまたは生長ラジカルを示す)
で表わされるように、環化しながら重合して、両隣にメチレン基を配した5員環エーテル構造を繰り返し単位とする主鎖骨格を形成する。両隣にメチレン基を配した5員環エーテル構造は、種々の基材に対する密着性に優れ、適度に高いガラス転移温度を有しながら柔軟で追随性が高く、耐熱分解性が高く、適度な親水性−疎水性バランスを有することから、プラスチックのみならず多くの種類の基材を接着することができ、また高い耐久性を有する。
【0022】
また、例えば、式:
【0023】
【化4】

【0024】
(式中、R1は前記と同じ。X・は開始ラジカルまたは生長ラジカルを示す)
で表わされるように、一部が環化せずに重合して、前記の両隣にメチレン基を配した5員環エーテル構造を繰り返し単位とする主鎖骨格の中に、側鎖にアリルエーテル基を有する単位が一部含まれるような主鎖骨格を形成することが可能である。大抵の場合、側鎖にアリルエーテル基を有する単位が生じる割合は、AMA系単量体100mol%のうち1〜20mol%の間であるが、硬化条件や共重合する成分の種類・量によって変化するため、これに限定されるものではない。生じたアリルエーテル基は電子線に反応し易く架橋の起点となり得る。結果として、前記の両隣にメチレン基を配した5員環エーテル構造を繰り返し単位とする強靭な主鎖骨格どうしが、耐加水分解性の高い結合であるエーテル結合を介して結合・架橋し、さらに耐久性が向上した構造を形成する。
【0025】
式(I)において、Rは水素原子又は1価の有機基を表す。該有機基は、炭化水素で構成され、エーテル基を有していてもよく、該炭化水素の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。該有機基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、また環状構造を含んでいてもよい。炭化水素基としては、例えば、炭素数1以上の鎖状飽和炭化水素基、炭素数3以上の鎖状不飽和炭化水素基、炭素数3以上の脂環式炭化水素基、炭素数6以上の芳香族炭化水素基などが挙げられる。これらのなかでは、炭素数1〜30の鎖状飽和炭化水素基、炭素数3〜30の鎖状不飽和炭化水素基、炭素数4〜30の脂環式炭化水素基および炭素数6〜30の芳香族炭化水素基が好ましい。前記置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、シアノ基、トリメチルシリル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0026】
前記鎖状飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、sec−アミル基、tert−アミル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、sec−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、カプリル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、セチル基、ヘプタデシル基、ステアリル基、ノナデシル基、エイコシル基、セリル基、メリシル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0027】
前記鎖状不飽和炭化水素基としては、例えば、クロチル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基、2−メチル−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、オレイル基、リノール基、リノレン基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0028】
前記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、トリシクロデカニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0029】
前記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基、シンナミル基、ナフチル基、アントラニル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0030】
エーテル結合を有する炭化水素基としては、例えば、メトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、メトキシエトシキエトキシエチル基、3−メトキシブチル基、エトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基などの鎖状エーテル基;シクロペントキシエチル基、シクロヘキシルオキシエチル基、シクロペントキシエトキシエチル基、シクロヘキシルオキシエトキシエチル基、ジシクロペンテニルオキシエチル基などの脂環式炭化水素基と鎖状エーテル基を併せ持つ基;フェノキシエチル基、フェノキシエトキシエチル基などの芳香族炭化水素基と鎖状エーテル基を併せ持つ基;グリシジル基、β−メチルグリシジル基、β−エチルグリシジル基、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル基、2−オキセタンメチル基、3−メチル−3−オキセタンメチル基、3−エチル−3−オキセタンメチル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロフルフリル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキサゾラニル基、ジオキサニル基などの環状エーテル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0031】
AMA系単量体の具体例としては、α−アリルオキシメチルアクリル酸、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−プロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸イソプロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸sec−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸tert−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸sec−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸tert−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ネオペンチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸sec−ヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ヘプチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸sec−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸tert−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−エチルヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸カプリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ノニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸デシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ウンデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ラウリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ミリスチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ペンタデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸セチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ヘプタデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ノナデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エイコシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸セリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メリシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸クロチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸1,1−ジメチル−2−プロペニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−メチルブテニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸3−メチル−2−ブテニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸3−メチル−3−ブテニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−メチル−3−ブテニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸オレイル、α−アリルオキシメチルアクリル酸リノール、α−アリルオキシメチルアクリル酸リノレン、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロペンチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロペンチルメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシルメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸4−メチルシクロヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸4−tert−ブチルシクロヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリシクロデカニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸イソボルニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸アダマンチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンタニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンテニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルフェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジメチルフェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリメチルフェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸4−tert−ブチルフェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ベンジル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジフェニルメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジフェニルエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリフェニルメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シンナミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ナフチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸アントラニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトシキエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸3−メトキシブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エトキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロペントキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシルオキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロペントキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシルオキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸グリシジル、α−アリルオキシメチルアクリル酸β−メチルグリシジル、α−アリルオキシメチルアクリル酸β−エチルグリシジル、α−アリルオキシメチルアクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−オキセタンメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸3−メチル−3−オキセタンメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸3−エチル−3−オキセタンメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフラニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロピラニル、ジオキサゾラニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジオキサニルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのAMA系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのAMA系単量体のなかでは、α−アリルオキシメチルアクリル酸、アルキル基の炭素数が1〜4であるα−アリルオキシメチルアクリル酸アルキルが、希釈性および接着性が特に優れる点で好ましい。
【0032】
本発明の電子線硬化型接着剤におけるAMA系単量体の含有率は、AMA系単量体以外の添加物の種類や、偏光子や保護フィルムの種類、偏光板の製造条件などに応じて異なるので一概には決定することができないことから、適宜決定することが好ましい。塗工性と接着性の観点から、本発明の接着剤組成物におけるAMA系単量体の含有率は10〜100質量%が好ましく、より好ましくは20〜99.9質量%、さらに好ましくは30〜99質量%である。
【0033】
本発明の接着剤には、必要により、他の成分が適量で含まれていてもよい。他の成分としては、例えば、AMA系単量体以外のラジカル重合性化合物、バインダー樹脂(非反応性オリゴマーまたはポリマー)、酸化防止剤、連鎖移動剤、ラジカル重合性以外の重合性化合物、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、溶媒、レベリング剤、スリップ剤、フィラー、色材(染料・顔料)、分散剤、カップリング剤、タッキファイヤー、可塑剤、近赤外線吸収剤、耐光安定剤、難燃化剤、艶消し剤、帯電防止剤、揺変化剤、揺硬化促進剤、揺変助剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの他の成分は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0034】
前記他の成分のなかで主たる成分としては、例えば、AMA系単量体以外のラジカル重合性化合物(A)、バインダー樹脂(B)、酸化防止剤(C)、連鎖移動剤(D)、ラジカル重合性以外の重合性化合物(E)などが挙げられる。
【0035】
<AMA系単量体以外のラジカル重合性化合物(A)>
本発明の接着剤は、諸性能を調整するために、硬化成分として、AMA系単量体以外のラジカル重合性化合物(A)を含有させてもよい。本発明の硬化性組成物において、ラジカル重合性化合物(A)を含む場合、その含有割合は、本発明の硬化性組成物の耐久性向上の観点から、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは0.1〜80質量%、さらに好ましくは1〜70質量%である。
【0036】
ラジカル重合性化合物(A)としては、ラジカル重合性基を同一分子内に1個有する化合物である単官能ラジカル重合性単量体(A−1)と、ラジカル重合性基を同一分子内に2個以上有する化合物である多官能ラジカル重合性化合物(A−2)とに分類できる。
【0037】
〔単官能ラジカル重合性単量体(A−1)〕
単官能ラジカル重合性単量体(A−1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、不飽和モノカルボン酸、不飽和多価カルボン酸、不飽和基とカルボキシル基の間が鎖延長されている不飽和モノカルボン酸、不飽和酸無水物、芳香族ビニル、N置換マレイミド、共役ジエン、ビニルエステル、ビニルエーテル、N−ビニル化合物、不飽和イソシアネートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単官能ラジカル重合性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸sec−アミル、(メタ)アクリル酸tert−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β−エチルグリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリルアミドは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
不飽和モノカルボン酸類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、ビニル安息香酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの不飽和モノカルボン酸は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0041】
不飽和多価カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの不飽和多価カルボン酸は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0042】
不飽和基とカルボキシル基の間が鎖延長されている不飽和モノカルボン酸としては、例えば、コハク酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、コハク酸モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの不飽和基とカルボキシル基の間が鎖延長されている不飽和モノカルボン酸は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
不飽和酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの不飽和酸無水物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0044】
芳香族ビニルとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの芳香族ビニルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
N置換マレイミドとしては、例えば、メチルマレイミド、エチルマレイミド、イソプロピルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのN置換マレイミドは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0046】
共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの共役ジエンは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのビニルエステルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0048】
ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのビニルエーテルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0049】
N−ビニル化合物としては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルモルフォリン、N−ビニルアセトアミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのN−ビニル化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0050】
不飽和イソシアネートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸イソシアナトエチル、アリルイソシアネートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの不飽和イソシアネートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0051】
〔多官能ラジカル重合性化合物(A−2)〕
多官能ラジカル重合性化合物(A−2)は、前記したように、ラジカル重合性基を同一分子内に2個以上有する化合物である。多官能ラジカル重合性化合物におけるラジカル重合性基は、好ましくは炭素−炭素二重結合であり、より好ましくは隣接する官能基により共役活性化された炭素−炭素二重結合である。
【0052】
共役活性化された炭素−炭素二重結合としては、例えば、1,3−ブタジエン構造などの炭素−炭素二重結合が隣接共役している炭素−炭素二重結合、カルボニル基が隣接共役している炭素−炭素二重結合、シアノ基が隣接共役している炭素−炭素二重結合、芳香環が隣接共役している炭素−炭素二重結合などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの共役活性化された炭素−炭素二重結合のなかでは、重合活性を高める観点から、カルボニル基が隣接共役している炭素−炭素二重結合、シアノ基が隣接共役している炭素−炭素二重結合および芳香環が隣接共役している炭素−炭素二重結合が好ましく、カルボニル基が隣接共役している炭素−炭素二重結合がより好ましく、式:
【0053】
【化5】

【0054】
(式中、R2は水素原子またはメチル基を示す)
で表わされる(メタ)アクリロイル基および式:
【0055】
【化6】

【0056】
で表わされるマレイミド基がさらに好ましく、(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。
【0057】
したがって、多官能ラジカル重合性化合物(A−2)のなかでは、(メタ)アクリロイル基を1個以上有する多官能(メタ)アクリル系化合物およびマレイミド基を1個以上有する多官能マレイミド系化合物が好ましく、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリル系化合物およびマレイミド基を2個以上有する多官能マレイミド系化合物がより好ましい。
【0058】
多官能ラジカル重合性化合物(A−2)としては、例えば、多官能(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル、アリル基含有(メタ)アクリル酸エステル、多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート、多官能ウレタン(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリル系化合物;多官能マレイミド系化合物;多官能ビニルエーテル;多官能アリル系化合物;多官能芳香族ビニルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの多官能ラジカル重合性化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0059】
多官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの多官能(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0060】
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5−ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0061】
アリル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アリルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0062】
多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレートとしては、例えば、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0063】
多官能ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの多官能イソシアネートと(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとの反応で得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0064】
多官能マレイミド系化合物としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、フェニルメタンマレイミドオリゴマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの多官能マレイミド系化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0065】
多官能ビニルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの多官能ビニルエーテルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0066】
多官能アリル系化合物としては、例えば、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ブチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジアリルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタアリルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテルなどの多官能アリルエーテル;トリアリルイソシアヌレートなどの多官能アリル基含有イソシアヌレート;フタル酸ジアリル、ジフェン酸ジアリルなどの多官能アリルエステル;ビスアリルナジイミド化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの多官能アリル系化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0067】
多官能芳香族ビニルとしては、例えば、ジビニルベンゼンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0068】
多官能ラジカル重合性化合物(A−2)は、ラジカル重合性基以外の骨格部分が単量体に基づく繰り返し単位を有するオリゴマーまたはポリマーであってもよい。多官能ラジカル重合性化合物の分子量が1000未満である場合にはオリゴマーに分類し、分子量が1000以上である場合にはポリマーに分類することができる。
【0069】
多官能ラジカル重合性化合物(A−2)のオリゴマーまたはポリマーの骨格としては、例えば、ポリエステル系骨格、ポリエーテル系骨格、ポリウレタン系骨格、ポリブタジエンやポリイソプレンなどの共役ジエン系ポリマー骨格、ポリ(メタ)アクリレート系骨格、フェノール樹脂骨格、アニリン樹脂骨格、ポリオレフィン系骨格、ポリアミド系骨格、シクロオレフィン系ポリマー骨格、ポリシロキサン系骨格などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの骨格のなかでは、ポリエステル系骨格、ポリエーテル系骨格、ポリウレタン系骨格、共役ジエン系ポリマー骨格、ポリ(メタ)アクリレート系骨格、フェノール樹脂骨格およびアニリン樹脂骨格が好ましい。
【0070】
骨格部分とラジカル重合性基とは、共有結合で結合していればよいが、エステル結合および/またはウレタン結合を介して結合していることが好ましい。
【0071】
多官能ラジカル重合性化合物(A−2)のオリゴマーまたはポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイル基が骨格部分とウレタン結合を介して結合しているウレタン(メタ)アクリレート系重合性オリゴマー、(メタ)アクリロイル基が骨格部分とウレタン結合を介して結合しているウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー、エポキシ樹脂(エポキシ基を有するオリゴマーまたはポリマー)に(メタ)アクリル酸を付加させた構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート系重合性オリゴマー、エポキシ樹脂(エポキシ基を有するオリゴマーまたはポリマー)に(メタ)アクリル酸を付加させた構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート系ポリマー、(メタ)アクリロイル基がポリエステル系骨格とエステル結合を介して結合しているポリエステル(メタ)アクリレート系重合性オリゴマー、(メタ)アクリロイル基がポリエステル系骨格とエステル結合を介して結合しているポリエステル(メタ)アクリレート系ポリマー、(メタ)アクリロイル基がフェノール樹脂骨格とエステル結合を介して結合しているフェニルメタン(メタ)アクリレート系重合性オリゴマー、(メタ)アクリロイル基がフェノール樹脂骨格とエステル結合を介して結合しているフェニルメタン(メタ)アクリレート系ポリマー、アニリン樹脂骨格にマレイミド基が直接結合しているフェニルメタンマレイミド系重合性オリゴマー、アニリン樹脂骨格にマレイミド基が直接結合しているフェニルメタンマレイミド系ポリマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0072】
多官能ラジカル重合性化合物(A−2)は、商業的に容易に入手することができる。商業的に容易に入手することができる多官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、共栄社化学(株)製、商品名:ライトアクリレート3EG−A、ライトアクリレート4EG−A、ライトアクリレート9EG−A、ライトアクリレート14EG−A、ライトアクリレートNP−A、ライトアクリレート1,6−HX−A、ライトアクリレート1,9ND−A、ライトアクリレートDCP−A、ライトアクリレートBP−4EA、ライトアクリレートBP−4PA、ライトアクリレートTMP−A、ライトアクリレートTMP−3EO−A、ライトアクリレートTMP−6EO−3A、ライトアクリレートPE−3A、ライトアクリレートPE−4A、ライトアクリレートDPE−6A、ライトアクリレートBA−134、ライトアクリレートHPP−A、ライトアクリレートPTMGA−250、ライトアクリレートDTMP−4A、ライトエステルEG、ライトエステル2EG、ライトエステル3EG、ライトエステル4EG、ライトエステル9EG、ライトエステル14EG、ライトエステルNP、ライトエステル1・3BG、ライトエステル1,4−BG、ライトエステル1,6−HX、ライトエステル1,9ND、ライトエステル1・10DC、ライトエステルTMP、ライトエステルG−101P、ライトエステルG−201P、ライトエステルBP−2EM、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA、エポキシエステル400EA、AH−600、AT−600、UA−306H、AI−600、UA−101T、UA−101I、UA−306T、UA−306Iなど;
【0073】
SARTOMER社製、品番:SR212、SR213、SR230、SR238F、SR247、SR259、SR268、SR272、SR306H、SR344、SR349、CD406、SR508、CD536、CD560、CD561、CD562、CD564、CD580、CD581、CD582、SR601、SR602、SR610、CD802、SR833、SR9003、CD9038、CD9043、SR9045、SR9209A、SR101、SR150、SR205、SR206、SR209、SR210、SR214、SR239、SR248、SR252、CD262、SR297、SR348、CD401、SR480、CD540、SR541、CD542、SR603、SR644、SR740、SR9036、SR351S、SR368、SR415、SR444、SR454、SR492、SR499、CD501、SR502、SR9020、9021、SR9035、SR350、SR9009、SR9011、SR295、SR355、SR494、SR399、SR9041、SR9012、CD9051、CD9053、CN929、CN940、CN944B85、CN959、CN961、CN961E75、CN961H81、CN962、CN963、CN963A80、CN963B80、CN963E75、CN963E80、CN963J75、CN964、CN964A85、CN964E75、CN965、CN965A80、CN966、CN966A80、CN966B85、CN966H90、CN966J75、CN966R60、CN968、CN980、CN981、CN981A75、CN981B88、CN982、CN982A75、CN982B88、CN982E75、CN982P90、CN983、CN985B88、CN989、CN991、CN996、CN9001、CN9002、CN9004、CN9005、CN9006、CN9007、CN9008、CN9009、CN9010、CN9011、CN9014、CN9178、CN9788、CN9893、CN902J75、CN970A60、CN970E60、CN970H75、CN971、CN971A80、CN972、CN973、CN973A80、CN973H85、CN973J75、CN975、CN977C70、CN978、CN992、CN994、CN997、CN999、CN9165、CN9782、CN9783、CN1963、CN2901、CN2902、CN2920、CN2921、CN3210、CN3211、CN104、CN104A80、CN104B80、CN104D80、CN111US、CN112C60、CN113D70、CN115、CN116、CN117、CN118、CN119、CN120、CN120A75、CN120B60、CN120B80、CN120C60、CN120C80、CN120D80、CN120E50、CN120M50、CN121、CN132、CN133、CN136、CN137、CN151、CN152、CNUVE151、CNUVE150/80、CN160、CN2100、CN2101、CN2102E、CN292、CN293、CN394、CN296、CN299、CN2200、CN2203、CN2250、CN2251、CN2252、CN2253、CN2254、CN2255、CN2256、CN2257、CN2258、CN2259、CN2260、CN2261、CN2262、CN2270、CN2271E、CN2272、CN2273、CN2276、CN2278、CN2279、CN2280、CN2281、CN2282、CN2285、CN2297A、CN2298、CN2470、CN2300、CN2301、CN2302、CN2303、CN2304、CN147、CN301、CN303、CN307、CN371、CN501、CN550、CN551、CN2201、CN736、CN738、CN9101、CN2600、CN990、CN9800など;
【0074】
大阪有機化学工業(株)製、商品名:ビスコート#195、ビスコート#230、ビスコート#260、ビスコート#310HP、ビスコート#335HP、ビスコート#700、ビスコート#540、ビスコート#295、ビスコート#300、ビスコート#400、ビスコート#360、ビスコート#802、ビスコート#1000、ビスコート#1020、ビスコート#3PA、ビスコート#3PMA、STAR−501、BAC−15、BAC−45、UV−4108F、UV−4117Fなど;
【0075】
日本合成化学工業(株)製、商品名:紫光UV−1700B、紫光UV−6300B、紫光UV−7550B、紫光UV−7600B、紫光UV−7605B、紫光UV−7610B、紫光UV−7620EA、紫光UV−7630B、紫光UV−7640B、紫光UV−7650B、紫光UV−6630B、紫光UV−7000B、紫光UV−7510B、紫光UV−7461TE、紫光UV−2000B、紫光UV−2750B、紫光UV−3000B、紫光UV−3200B、紫光UV−3210EA、紫光UV−3300B、紫光UV−3310B、紫光UV−3500BA、紫光UV−3520TL、紫光UV−3700B、紫光UV−6640Bなど;
【0076】
東亞合成(株)製、商品名:アロニックスM−208、アロニックスM−211B、アロニックスM−215、アロニックスM−220、アロニックスM−225、アロニックスM−270、アロニックスM−240、アロニックスM−309、アロニックスM−310、アロニックスM−321、アロニックスM−350、アロニックスM−360、アロニックスM−313、アロニックスM−315、アロニックスM−306、アロニックスM−305、アロニックスM−303、アロニックスM−452、アロニックスM−450、アロニックスM−408、アロニックスM−403、アロニックスM−400、アロニックスM−402、アロニックスM−404、アロニックスM−406、アロニックスM−405、アロニックスM−460、アロニックスM−510、アロニックスM−520、アロニックスM−1100、アロニックスM−1200、アロニックスM−6100、アロニックスM−6200、アロニックスM−6250、アロニックスM−6500、アロニックスM−7100、アロニックスM−7300K、アロニックスM−8030、アロニックスM−8060、アロニックスM−8100、アロニックスM−8530、アロニックスM−8560、アロニックスM−9050など;
【0077】
(株)日本触媒製、商品名:VEEA、VEEMなど;(株)クラレ製、品番:UC−203;大和化成工業(株)製、品番:BMI−1000、BMI−2000、BMI−2300、BMI−3000、BMI−4000、BMI−5100、BMI−7000、BMI−TMHなど;丸善石油化学(株)製、品番:BANI−M,MANI−Xなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの多官能ラジカル重合性化合物(A−2)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0078】
<バインダー樹脂(B)>
本発明の接着剤には、その粘度調整、塗膜形成性の調整、接着性の向上、耐久性の向上、硬化時の収縮の低減、屈折率の調整など観点から、バインダー樹脂(B)が適量で含まれていてもよい。
【0079】
バインダー樹脂(B)としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、塩素含有樹脂、臭素含有樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、セルロース系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリオキシベンジレン、ポリアミドイミド、シリコーン樹脂などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのバインダー樹脂(B)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0080】
<酸化防止剤(C)>
本発明の接着剤には、安定性を向上させる観点から、酸化防止剤(C)を適量で用いてもよい。酸化防止剤(C)は、ラジカル連鎖防止性を有する1次酸化防止剤と過酸化物分解性を有する2次酸化防止剤とに分類することができる。
【0081】
1次酸化防止剤としては、例えば、ヒドロキノン類、ベンゾキノン類、フェノール類、芳香族アミン類、フェノチアジン類、ジチオカルバミン酸金属塩類、ニトロソ化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。2次酸化防止剤としては、例えば、ホスフィン、ホスファイトなどのリン系化合物、チオエーテルやメルカプトベンズイミダゾール、チオウレアなどのイオウ系化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。1次酸化防止剤は、それ単独で用いるか、または2次酸化防止剤と併用することが好ましく、AMA系単量体を効果的に安定化させる観点から、1次酸化防止剤と2次酸化防止剤とを併用することがより好ましい。
【0082】
酸化防止剤(C)のなかでは、本発明の接着剤を着色させないようにする観点から窒素原子を有しない安定剤が好ましい。また、酸化防止剤(C)のなかでは、AMA系単量体を効果的に安定化させる観点から、例えば、フェノール類、ホスフィン、(チオ)ホスファイト、チオエーテルなどが好ましい。
【0083】
フェノール類としては、例えば、モノエーテル化ヒドロキノン類、ヒンダードフェノール類およびその多量化物(二量化物を含む)または多量化物の誘導体、セミヒンダードフェノール類およびその多量化物(二量化物を含む)または多量化物の誘導体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのフェノール類は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0084】
モノエーテル化ヒドロキノン類としては、例えば、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ヒドロキノンモノn−ブチルエーテル、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、ヒドロキノンモノシクロヘキシルエーテル、4−メトキシ−1−ナフトールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノエーテル化ヒドロキノン類は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0085】
ヒンダードフェノール類としては、例えば、2,6−ビス(tert−ブチル)−4−メチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、イソオクチル−3−(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ヒンダードフェノール類の多量化物または多量化物の誘導体としては、例えば、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリス−(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ヒンダードフェノール類およびその多量化物(二量化物を含む)または多量化物の誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0086】
セミヒンダードフェノール類としては、例えば、6−tert−ブチル−o−クレゾール、6−tert−ブチル−2,4−キシレノール、2,4,8,10−テトラ−tert−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、2,4−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、2,4−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、2−tert−ブチルフェノール、2,4−ジtert−ブチルフェノール、2−tert−アミルフェノール、2,4−ジtert−アミルフェノールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。セミヒンダードフェノールの多量化物または多量化物の誘導体としては、例えば、メチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、トリエチレングリコールビス[β−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ハイドロキシ−5−tertブチルベンジル)スルフィド、テレフタロイル−ジ(2,6−ジメチル−4−tert−ブチル−3−ハイドロキシベンジルスルフィド、3,9−ビス[2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジtert−ペンチルフェニルアクリレート、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。セミヒンダードフェノール類およびその多量化物(二量化物を含む)または多量化物の誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0087】
ホスフィンとしては、例えば、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフィン、トリフェニルホスフィンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのホスフィンは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0088】
(チオ)ホスファイトとしては、例えば、ジエチルハイドロゲンホスファイト、ビス(2−エチルヘキシル)ハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシルホスファイト)、トリオレイルホスファイト、トリステアリルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、ジフェニルメチルホスファイト、2−エチルヘキシルジフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、トリデシルジフェニルホスファイト、ビス(2,4−ジtert−ブチル−6−メチルフェニル)エチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジtert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(イソデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ステアリル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジtert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジtert−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジイソトリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、テトラ(C12〜C15アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、テトラ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、2,4,8,10−テトラ−tert−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイトなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのホスファイトは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0089】
チオエーテルとしては、例えば、3−ラウリルチオプロピオン酸、3−ラウリルチオプロピオン酸メチル、(3−オクチルチオプロピオン酸)ペンタエリスリトールテトラエステル、(3−デシルチオプロピオン酸)ペンタエリスリトールテトラエステル、(3−ラウリルチオプロピオン酸)ペンタエリスリトールテトラエステル、(3−オレイルチオプロピオン酸)ペンタエリスリトールテトラエステル、(3−ステアリルチオプロピオン酸)ペンタエリスリトールテトラエステル、(3−ラウリルチオプロピオン酸)−4,4'−チオジ(3−メチル−5−tert−ブチル−4−フェノール)エステル、ジオクチルチオジプロピオネート、ジデシルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジステアリル−β,β’−チオジブチレート、ジメチルスルフィド、メチルドデシルスルフィド、ジラウリルスルフィド、ジステアリルスルフィド、2,4−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、2,4−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのチオエーテルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0090】
1次酸化防止剤のなかでは、AMA系単量体を安定化させる観点から、セミヒンダードフェノールおよびその多量化物または多量化物の誘導体が好ましく、セミヒンダードフェノールがより好ましい。また、1次酸化防止剤と2次酸化防止剤とを併用する場合、1次酸化防止のなかでは、AMA系単量体を安定化させる観点から、セミヒンダードフェノールおよびその多量化物または多量化物の誘導体が好ましく、セミヒンダードフェノールがより好ましく、2次酸化防止剤のなかでは、(チオ)ホスファイトおよびチオエーテルが好ましい。
【0091】
<連鎖移動剤(D)>
本発明の接着剤には、硬化速度や重合度を調整するために連鎖移動剤(D)が適量で含まれていてもよい。連鎖移動剤(D)のなかでは、チオールが好ましく、本発明の接着剤組成物の硬化速度および架橋度を高める観点から、多官能チオールがより好ましい。
【0092】
多官能チオールとしては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの多官能チオールは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0093】
<ラジカル重合性以外の重合性化合物(E)>
本発明の接着剤には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、ラジカル重合性以外の重合性化合物が含まれていてもよい。
【0094】
ラジカル重合性以外の重合性化合物としては、例えば、カチオン重合性基を有する化合物などが挙げられる。カチオン重合性基としては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基などが挙げられる。
【0095】
また、本発明の接着剤には、硬化性あるいは耐久性向上などの観点から、ラジカル重合開始剤が含まれていてもよい。特に光ラジカル重合開始剤を含む場合、紫外線硬化型接着剤としても好適に使用でき、熱ラジカル重合開始剤を含む場合、熱硬化型接着剤としても好適に使用できる。
【0096】
また、本発明の接着剤には、その粘度調整、塗膜形成性の調整、接着性の向上、耐久性の向上、硬化時の収縮の低減、屈折率の調整などの観点から、有機微粒子、無機の微粒子などの微粒子が適量で含まれていてもよい。
【0097】
また、本発明の接着剤には、その粘度調整、塗膜の厚さの調整、接着剤組成物に含まれる成分の均一性などを向上させる観点から、溶媒が適量で含まれていてもよい。
【0098】
偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂から形成される。偏光子は、ポリビニルアルコール樹脂フィルムを二色性物質(代表的には、ヨウ素、二色性染料)で染色して一軸延伸したものが用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、好ましくは100〜5000、さらに好ましくは1400〜4000である。重合度が低すぎると、所定の延伸を行う際に延伸切れしやすく、また重合度が高すぎると、延伸する際に張力が異常に必要となり、機械的に延伸できなくなるおそれがある。
【0099】
偏光子を構成するポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、任意の適切な方法(例えば樹脂を水または有機溶剤に溶解した溶液を流延製膜する流延法、キャスト法、押出法)で成形され得る。偏光子の厚みは偏光板が用いられるLCDの目的や用途に応じて適宜設定されるが、通常、5〜80μm程度である。
【0100】
偏光子の製造方法としては、目的、使用材料および条件などに応じて任意の適切な方法が採用される。例えば、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、通常、膨潤、染色、架橋、延伸、水洗および乾燥工程を含む一連の製造工程に供する方式が採用される。乾燥工程を除く各処理工程においては、それぞれの工程に用いられる溶液を含む液中にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬することにより処理を行う。膨潤、染色、架橋、延伸、水洗および乾燥の各処理の順番、回数および実施の有無は、目的、使用材料および条件などに応じて適亘設定されえる。例えば、いくつかの処理を1つの工程で同時に行ってもよく、膨潤処理、染色処理および架橋処理を同時に行ってもよい。また例えば、架橋処理を延伸処理の前後に行うことが、好適に採用され得る。また例えば、水洗処理は、全ての処理の後に行ってもよく、特定の処理の後のみに行ってもよい。
【0101】
膨潤工程は、代表的には、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水で満たした処理浴中に浸漬することより行われる。この処理により、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄すると共に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させることで染色ムラ等の不均一性を防止できる。膨潤浴には、グリセリンやヨウ化カリウム等が適宜に添加される。膨潤浴の温度は、通常20〜60℃程度であり、膨潤浴への浸漬時間は、通常0.1〜10分間程度である。
【0102】
染色工程は、代表的には、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、ヨウ素等の二色性物質を含む処理浴中に浸漬することにより行われる。染色浴の溶液に用いられる溶媒は、水が一般的に使用されるが、水と相溶性を有する有機溶媒が適量添加されていてもよい。二色性物質は、溶媒100質量部に対して、通常、0.1〜1質量部の割合で用いられる。二色性物質としてヨウ素を用いる場合は、染色浴の溶液はヨウ化物等の助剤をさらに含有することが好ましい。染色効率が改善されるからである。助剤は、溶媒100質量部に対して、好ましくは0.02〜20質量部、さらに好ましくは2〜10質量部の割合で用いられる。ヨウ化物の具体例としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンなどがあげられる。染色浴の温度は、通常、20〜70℃程度であり、染色浴への浸漬時間は、通常、1〜20分間程度である。
【0103】
架橋工程は、代表的には、上記染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、架橋剤を含む処理欲中に浸漬することによって行われる。架橋割としては任意の適切な架橋剤が採用される。架橋剤の具体例としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等があげられる。これらは、単独で、または組み合わせて使用される。架橋浴の溶液に用いられる溶媒は、水が一般的に使用されるが、水と相溶性を有する有機溶媒が適量添加されていてもよい。架橋剤は、溶媒100質量部に対して、通常、1〜10質量部の割合で用いられる。架橋剤の濃度が1質量部未満の場合は、十分な光学特性を得ることができない。架橋剤の濃度が10質量部を超える場合は、延伸時にフィルムに発生する応力が大きくなり、得られる偏光板が収縮してしまう可能性がある。架橋浴の溶液は、ヨウ化物等の助剤をさらに含有することが望ましい。面内に均一な特性が得られやすいからである。助剤の濃度は好ましくは0.05〜15質量%、さらに好ましくは0.5〜8質量%である。ヨウ化物の具体例は、染色工程の場合と同様である。架橋浴の温度は、通常、20〜70℃程度、好ましくは40〜60℃である。架橋浴への浸漬時間は、通常、1秒間〜15分間程度、好ましくは5秒間〜10分間である。
【0104】
延伸工程は、上記のようにいずれの段階で行ってもよい。具体的には、染色処理の後に行ってもよく、染色処理の前に行ってもよく、膨潤処理、染色処理および架橋処理と同時に行ってもよく、架橋処理の後に行ってもよい。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの累積延伸倍率は、通常、5倍以上にする。好ましくは5〜7倍、さらに好ましくは5〜6.5倍である。累積延伸倍率が5倍未満の場合には、高偏光度の偏光板を得ることが困難となる。累積延伸倍率が7倍を超える場合はポリビニルアルコール系樹脂フィルムが破断しやすくなる場合がある。延伸の具体的な方法としては、任意の適切な方法が採用される。例えば、湿式延伸法を採用した場合には、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを処理浴中で所定の倍率に延伸する。延伸浴の溶液としては、水または有機溶媒(例えばエタノール)などの溶媒中に、各種金属塩、ヨウ素、ホウ素または亜鉛の化合物を添加した溶液が好適に用いられる。
【0105】
水洗工程は、代表的には、上記各種処理を施されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを処理浴中に浸漬することによって行われる。水洗工程によりポリビニルアルコール系樹脂フィルムの不要残存物を洗い流すことができる。水洗浴は、純水であってもよく、ヨウ化物(例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等)の水溶液であってもよい。ヨウ化物水溶液の濃度は、好ましくは0.1〜10質量%である。ヨウ化物水溶液には硫酸亜鉛、塩化亜鉛などの助剤を添加してもよい。水洗浴の温度は好ましくは10〜60℃、さらに好ましくは30〜40℃である。浸漬時間は1秒間〜1分間である。水洗工程は1回だけでもよく、必要に応じて複数回行ってもよい。複数回実施される場合は、各処理に用いられる水洗浴に含まれる添加剤の種類や濃度は適宜に調整される。例えば、水洗工程は上記各種処理を施されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをヨウ化カリウム水溶液(0.1〜10質量%、10〜60℃)に1秒間〜1分間程度浸漬する工程と、純水ですすぐ工程とを含む。また、水洗工程において、偏光子の表面改質や、偏光子の乾燥効率を上げるために、水と相溶性を有する有機溶媒(例えば、エタノ−ルなど)を適宜添加してもよい。
【0106】
乾燥工程は、任意の適切な方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)が採用されうる。例えば、加熱乾燥の場合の乾燥温度は、通常、20〜80℃程度であり、乾燥時間は、通常、1〜10分間程度である。以上のようにして偏光子が得られる。
【0107】
本発明において用いる偏光子は、水分率が好ましくは20質量%以下、より好ましくは0〜15質量%、さらに好ましくは1〜15質量%である。水分率が20質量%より大きいいと、得られた偏光板の寸法変化が大きくなり、高温下あるいは高温高湿下における寸法変化が大きくなってしまうという問題が生じるおそれがある。偏光子の水分率は、任意の適切な方法で調整すればよい。例えば偏光子の製造工程における乾燥工程の条件を調整することにより制御する方法があげられる。
【0108】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物があげられる。なお、偏光子の片側には、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされるが、他の片側には、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などがあげられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは50〜99質量%、さらに好ましくは60〜98質量%、特に好ましくは70〜97質量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50質量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0109】
また、透明保護フィルムとしては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、例えば、側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換および/または非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。これらのフィルムは位相差が小さく、光弾性係数が小さいため偏光板の歪みによるムラなどの不具合を解消することができ、また透湿度が小さいため、加湿耐久性に優れる。
透明保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。透明保護フィルムは、5〜150μmの場合に特に好適である。
【0110】
なお、偏光子の両側に透明保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。
本発明の透明保護フィルムとしては、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂および(メタ)アクリル樹脂から選ばれるいずれか少なくとも1つを用いるのが好ましい。本発明の電子線硬化型偏光板用接着剤は、上記各種の透明保護フィルムに対して、好適な接着性を示す。特に、本発明の電子線硬化型偏光板用接着剤は、接着性を満足することが困難であったアクリル樹脂に対しても良好な接着性を示す。
【0111】
セルロース樹脂は、セルロースと脂肪酸のエステルである。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としでは、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネート等があげられる。これらのなかでも、セルローストリアセテートが特に好ましい。セルローストリアセテートは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。セルローストリアセテートの市販品の例としては、富士写真フイルム社製の商品名「UV−50」、「UV−80」、「SH−80」、「TD−80U」、「TD−TAC」、「UZ−TAC」や、コニカ社製の「KCシリーズ」等があげられる。一般的にこれらセルローストリアセテートは、面内位相差(Re)はほぼゼロであるが、厚み方向位相差(Rth)は、〜60nm程度を有している。
【0112】
なお、厚み方向位相差が小さいセルロース樹脂フィルムは、例えば、上記セルロース樹脂を処理することにより得られる。例えばシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤を塗工したポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ステンレスなどの基材フィルムを、一般的なセルロース系フィルムに貼り合わせ、加熱乾燥(例えば80〜150℃で3〜10分間程度)した後、基材フィルムを剥離する方法;ノルボルネン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂などをシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤に溶解した溶液を一般的なセルロース樹脂フィルムに塗工し加熱乾燥(例えば80〜150℃で3〜10分間程度)した後、塗工フィルムを剥離する方法などがあげられる。
【0113】
また、厚み方向位相差が小さいセルロース樹脂フィルムとしては、脂肪置換度を制御した脂肪酸セルロース系樹脂フィルムを用いることができる。一般的に用いられるトリアセチルセルロースでは酢酸置換度が2.8程度であるが、好ましくは酢酸置換度を1.8〜2.7に制御することによってRthを小さくすることができる。上記脂肪酸置換セルロース系樹脂に、ジブチルフタレート、p−トルエンスルホンアニリド、クエン酸アセチルトリエチル等の可塑剤を添加することにより、Rthを小さく制御することができる。可塑剤の添加量は、脂肪酸セルロース系樹脂100質量部に対して、好ましくは40質量部以下、より好ましくは1〜20質量部、さらに好ましくは1〜15質量部である。
【0114】
環状ポリオレフィン樹脂の具体的としては、好ましくはノルボルネン系樹脂である。環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂があげられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびに、それらの水素化物などがあげられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーがあげられる。
【0115】
環状ポリオレフィン樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学株式会社製の商品名「APEL」があげられる。
【0116】
(メタ)アクリル系樹脂としては、Tg(ガラス転移温度)が好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。Tgが115℃以上であることにより、偏光板の耐久性に優れたものとなりうる。上記(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定きれないが、成形性当の観点から、好ましくは170℃以下である。(メタ)アクリル系樹脂からは、面内位相差(Re)、厚み方向位相差(Rth)がほぼゼロものフィルムを得ることができる。
【0117】
(メタ)アクリル系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)があげられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルがあげられる。より好ましくはメタクリル酸メチルを主成分(50〜100質量%、好ましくは70〜100質量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂があげられる。
【0118】
(メタ)アクリル系樹脂の具体例として、例えば、三菱レイヨン株式会社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル樹脂系があげられる。
【0119】
(メタ)アクリル系樹脂として、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いることもできる。高い耐熱性、高い透明性、二軸延伸することにより高い機械的強度を有するからである。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂があげられる。
【0120】
前記透明保護フィルムは、正面位相差が40nm未満、かつ、厚み方向位相差が80nm未満であるものが、通常、用いられる。正面位相差Reは、Re=(nx−ny)×d、で表わされる。厚み方向位相差Rthは、Rth=(nx−nz)×d、で表される。また、Nz係数は、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)、で表される。[ただし、フィルムの遅相軸方向、進相軸方向及び厚さ方向の屈折率をそれぞれnx、ny、nzとし、d(nm)はフィルムの厚みとする。遅相軸方向は、フィルム面内の屈折率の最大となる方向とする。]。なお、透明保護フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、透明保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向位相差値(Rth)は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
【0121】
一方、前記透明保護フィルムとして、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有する位相差板を用いることができる。正面位相差は、通常、40〜200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80〜300nmの範囲に制御される。透明保護フィルムとして位相差板を用いる場合には、当該位相差板が透明保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
【0122】
位相差板としては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板の厚さも特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。
【0123】
高分子素材としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これらの高分子素材は延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
【0124】
液晶ポリマーとしては、例えば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどをあげられる。主鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサー部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマーなどがあげられる。側鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサー部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどがあげられる。これらの液晶ポリマーは、例えば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化ケイ素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
【0125】
位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであって良く、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであっても良い。
【0126】
位相差板は、nx=ny>nz、nx>ny>nz、nx>ny=nz、nx>nz>ny、nz=nx>ny、nz>nx>ny、nz>nx=ny、の関係を満足するものが、各種用途に応じて選択して用いられる。なお、ny=nzとは、nyとnzが完全に同一である場合だけでなく、実質的にnyとnzが同じ場合も含む。
【0127】
例えば、nx>ny>nz、を満足する位相差板では、正面位相差は40〜100nm、厚み方向位相差は100〜320nm、Nz係数は1.8〜4.5を満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nx>ny=nz、を満足する位相差板(ポジティブAプレート)では、正面位相差は100〜200nmを満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nz=nx>ny、を満足する位相差板(ネガティブAプレート)では、正面位相差は100〜200nmを満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nx>nz>ny、を満足する位相差板では、正面位相差は150〜300nm、Nz係数は0を超え〜0.7を満足するものを用いるのが好ましい。また、上記の通り、例えば、nx=ny>nz、nz>nx>ny、またはnz>nx=ny、を満足する用いることができる。
【0128】
透明保護フィルムは、適用される液晶表示装置に応じて適宜に選択できる。例えば、VA(VerticalAlignment,MVA,PVA含む)の場合は、偏光板の少なくとも片方(セル側)の透明保護フィルムが位相差を有している方が望ましい。具体的な位相差として、Re=0〜240nm、Rth=0〜500nmの範囲である事が望ましい。三次元屈折率で言うと、nx>ny=nz、nx>ny>nz、nx>nz>ny、nx=ny>nz(一軸,二軸,Z化,ネガティブCプレート)の場合が望ましい。液晶セルの上下に偏光板を使用する際、液晶セルの上下共に、位相差を有している、または上下いずれかの透明保護フィルムが位相差を有していてもよい。
【0129】
例えば、IPS(In−Plane Switching,FFS含む)の場合、偏光板の片方の透明保護フィルムが位相差を有している場合、有していない場合のいずれも使用できる。例えば、位相差を有していない場合は、液晶セルの上下(セル側)ともに位相差を有していない場合が望ましい。位相差を有している場合は、液晶セルの上下ともに位相差を有している場合、上下のいずれかが位相差を有している場合が望ましい(例えば、上側にZ化、下側に位相差なしの場合や、上側にAプレート、下側にポジティブCプレートの場合)。位相差を有している場合、Re=−500〜500nm、Rth=−500〜500nmの範囲が望ましい。三次元屈折率で言うと、nx>ny=nz、nx>nz>ny、nz>nx=ny、nz>nx>ny(一軸,Z化,ポジティブCプレート、ポジティブAプレート)が望ましい。
【0130】
なお、前記位相差を有するフィルムは、位相差を有しない透明保護フィルムに、別途、貼り合せて上記機能を付与することができる。
【0131】
前記偏光子、透明保護フィルムは、前記接着剤を塗工する前に、表面改質処理を行ってもよい。具体的な処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理、ケン化処理、カップリング剤による処理などがあげられる。
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
【0132】
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層(例えば、バックライト側の拡散板)との密着防止を目的に施される。
【0133】
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100質量部に対して一般的に2〜70質量部程度であり、5〜50質量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
【0134】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
本発明の偏光板は、透明保護フィルムと偏光子を、前記接着剤を用いて貼り合わせることにより製造する。当該製造方法は、前記接着剤を、偏光子の前記接着剤層を形成する面および/または透明保護フィルムの前記接着剤層を形成する面に、塗工する工程;偏光子と透明保護フィルムとを、前記偏光板用接着剤を介して貼り合わせる工程;および前記偏光板用接着剤を介して貼り合わせた、偏光子と透明保護フィルムに対して、電子線を照射して、接着剤層を形成する工程、を有する。
【0135】
接着剤の塗工方式は、接着剤の粘度や目的とする厚みによって適宜に選択される。塗工方式の例として、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーターなどがあげられる。その他、塗工には、デイッピング方式などの方式を適宜に使用することができる。
上記のように塗工した接着剤を介して、偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせる。偏光子と透明保護フィルムの貼り合わせは、ロールラミネーター等により行う事ができる。
【0136】
偏光子と透明保護フィルムを貼り合わせた後に、電子線を照射して、接着剤を硬化させる。電子線の照射方向は、任意の適切な方向から照射することができる。好ましくは、透明保護フィルム側から照射する。偏光子側から照射すると、偏光子が電子線によって劣化するおそれがある。
【0137】
電子線の照射条件は、前記接着剤を硬化しうる条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。例えば、電子線照射は、加速電圧が好ましくは5kV〜300kVであり、さらに好ましくは10kV〜250kVである。加速電圧が5kV未満の場合、電子線が接着剤まで届かず硬化不足となるおそれがあり、加速電圧が300kVを超えると、試料を通る浸透力が強すぎて電子線が跳ね返り、透明保護フィルムや偏光子にダメージを与えるおそれがある。照射線量としては、5〜100kGy、さらに好ましくは10〜75kGyである。照射線量が5kGy未満の場合は、接着剤が硬化不足となり、100kGyを超えると、透明保護フィルムや偏光子にダメージを与え、機械的強度の低下や黄変を生じ、所定の光学特性を得ることができない。
【0138】
上記のようにして得られる本発明の偏光板における接着剤層の厚みは0.01〜7μmである。好ましくは0.01〜5μm、より好ましくは0.01〜2μm、さらに好ましくは0.01〜1μmである。前記厚みが0.01μmより薄い場合は、接着力自体の凝集力が得られず、接着強度が得られないおそれがある。接着剤層の厚みが7μmを超えると、偏光板が耐久性を満足できない。
【0139】
また、接着剤層は、ゲル分率が50質量%以上であることが、耐久性を満足するうえで好ましい。ゲル分率は、60質量%以上であるのが好ましく、さらには70質量%以上であるのが好ましい。
【0140】
電子線照射は、通常、不活性ガス中で照射を行うが、必要であれば大気中や酸素を少し導入した条件で行ってもよい。透明保護フィルムの材料によるが、酸素を適宜導入することによって、最初に電子線があたる透明保護フィルム面にあえて酸素阻害を生じさせ、透明保護フィルムへのダメージを防ぐことができ、接着剤にのみ効率的に電子線を照射させることができる。
【0141】
前記製造方法を連続ラインで行う場合、ライン速度は、接着剤の硬化時間によるが、好ましくは1〜500m/min、より好ましくは5〜300m/min、さらに好ましくは10〜100m/minである。ライン速度が小さすぎる場合は、生産性が乏しい、または透明保護フィルムへのダメージが大きすぎ、耐久性試験などに耐えうる偏光板が作製できない。ライン速度が大きすぎる場合は、接着剤の硬化が不十分となり、目的とする接着性が得られない場合がある。
【0142】
本発明の偏光板は、実用に際して他の光学層と積層した光学フィルムとして用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、本発明の偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0143】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0144】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また前記透明保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の透明保護フィルムは、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
【0145】
反射板は前記の偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
【0146】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0147】
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0148】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。上記した位相差板の具体例としては、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミドの如き適宜なポリマーからなるフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルムや液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであってもよい。
【0149】
また上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組み合わせで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組み合わせとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0150】
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差フィルム、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
【0151】
また良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0152】
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一旦反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0153】
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、拡散板は偏光を元の自然光状態にもどす。この非偏光状態、すなわち自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光状態にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0154】
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0155】
従って、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を透過するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0156】
可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差層と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層又は2層以上の位相差層からなるものであってよい。
【0157】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0158】
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
【0159】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板やその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0160】
前述した偏光板や、偏光板を少なくとも1層積層されている光学フィルムには、液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0161】
また上記に加えて、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。
【0162】
粘着層は、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着層に添加されることの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層などであってもよい。
【0163】
偏光板や光学フィルムの片面又は両面への粘着層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40質量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で偏光板上または光学フィルム上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを偏光板上または光学フィルム上に移着する方式などがあげられる。
【0164】
粘着層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層として偏光板や光学フィルムの片面又は両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、偏光板や光学フィルムの表裏において異なる組成や種類や厚さ等の粘着層とすることもできる。粘着層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜40μmであり、5〜30μmが好ましく、特に10〜25μmが好ましい。1μmより薄いと耐久性が悪くなり、また40μmより厚いと発泡などによる浮きや剥がれが生じやすく外観不良となる。
【0165】
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚さ条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
【0166】
偏光板と粘着剤層との間の密着性を向上させるために、その層間にアンカー層を設けることもできる。
【0167】
上記アンカー層の形成材としては、好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、分子中にアミノ基を含むポリマー類から選ばれるアンカー剤が用いられ、特に好ましくは、分子中にアミノ基を含んだポリマー類である。分子中にアミノ基を含むポリマー類は、分子中のアミノ基が粘着剤中のカルボキシル基等と反応またはイオン性相互作用などの相互作用を示すため、良好な密着性が確保される。
分子中にアミノ基を含むポリマー類としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリジン、ジメチルアミノエチルアクリレート等の含アミノ基含有モノマーの重合体などをあげることができる。
【0168】
上記アンカー層には、帯電防止性を付与するために、帯電防止剤を添加することもできる。帯電防止性付与のための帯電防止剤としては、イオン性界面活性剤系、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリキノキサリン等の導電性ポリマー系、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム等の金属酸化物系などがあげられるが、特に光学特性、外観、帯電防止効果、および帯電防止効果の加熱、加湿時での安定性という観点から、導電性ポリマー系が好ましく使用される。この中でも、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの水溶性導電性ポリマー、もしくは水分散性導電性ポリマーが特に好ましく使用される。帯電防止層の形成材料として水溶性導電性ポリマーや水分散性導電性ポリマーを用いた場合、塗工に際して有機溶剤による光学フィルム基材への変質を抑えることができる。
【0169】
なお本発明において、上記した偏光板を形成する偏光子や透明保護フィルムや光学フィルム等、また粘着層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0170】
本発明の偏光板または光学フィルムは液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光板または光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による偏光板または光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型、などの任意なタイプのものを用いうる。
【0171】
液晶セルの片側又は両側に偏光板または光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による偏光板または光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に偏光板または光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0172】
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
【0173】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0174】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0175】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0176】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
【0177】
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1/4波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0178】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1/4波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
【0179】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【実施例】
【0180】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
【0181】
調製例1〔α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル(以下、MeAMAという)〕
蒸留塔、相分離器および還流ポンプを備えた5L容の丸底フラスコ内に、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル1625.7g、アリルアルコール1219.7g(1.5当量)、触媒としてトリエチレンジアミン78.5g(0.05当量)、酸として酢酸84.9g(0.1当量)および酢酸亜鉛二水和物30.7g(0.01当量)、水分の共沸剤としてジイソプロピルエーテル429.1g(0.3当量)、重合禁止剤としてヒドロキノンモノメチルエーテル0.8gおよび4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル0.8gを仕込んだ。7%の酸素を含む窒素ガスを毎分5mLの流量で吹き込みながら、常圧でフラスコの内容物を90℃に昇温し、16時間反応させた。なお、反応は、蒸留塔の塔頂液を相分離器で油相と水相とに分け、油相を還流液として蒸留塔の塔頂に戻すとともに水相を抜き出し、脱水しながら行なった。
反応終了後、得られた反応液を水洗し、蒸留した後、反応液における6−tert−ブチル−2,4−キシレノールおよびトリフェニルホスファイトの含有率がそれぞれ、300ppm、500ppmとなるように6−tert−ブチル−2,4−キシレノールおよびトリフェニルホスファイトを反応液に添加することにより、MeAMAを得た。
【0182】
[実施例1]
(接着剤)
調製例1で得たMeAMAを用いた。
【0183】
(偏光子の作製)
ケン化度99%、厚み75μmのポリビニルアルコール未延伸フィルムを室温の水で洗浄した後、縦一軸に5倍延伸を行った。このフィルムをヨウ素0.5質量%、ヨウ化カリウム5質量%からなる水溶液に浸漬し二色性色素を吸着させた。更に、ホウ酸10質量%とヨウ化カリウム10質量%からなる50℃の水溶液で5分間架橋処理し偏光子を得た。
【0184】
(保護フィルムの作製)
ラクトン化ポリメチルメタクリレート(ラクトン環含有量=約20%)のペレットを、単軸押出機にてダイス温度250℃でTダイから押出し、120μmのフィルムを得た。このフィルムを縦方向に140℃で1.5倍延伸したのち、横方向に140℃で1.3倍延伸し、80μm厚のフィルムを得た。
【0185】
(偏光板の作製)
上記保護フィルムの片面にバーコーター(#3)を用いて上記接着剤を塗工した。偏光子の両面に接着剤層が偏光子と接するようにロール機で貼り合わせた。貼り合わせた保護フィルム側(両側)から電子線を照射して接着剤組成物を硬化させ、偏光子の両側に保護フィルムを有する偏光板を得た。
【0186】
(耐久性)
偏光板を2.5×5cmに切断し、65℃の温水に3時間浸漬した。偏光子と保護フィルムとの耐久性は良好であった。
【0187】
[実施例2]
保護フィルムとして80μm厚のトリアセチルセルロースフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製し耐久性を評価したところ、耐久性は良好であった。
【0188】
[実施例3]
接着剤としてMeAMA/アクリロイルモルホリン(興人社製)=5/5(質量比)混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製し耐久性を評価したところ、耐久性性は良好であった。
【0189】
[比較例1]
接着剤としてMeAMAの代わりにアクリロイルモルホリン(興人社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製して耐久性を評価したところ、耐久性は不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明の偏光板用電子線硬化型接着剤によれば、高湿下および高温下の過酷な環境下における耐久性を満足することができる、耐久性に優れた偏光板を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板製造用の接着剤であって、
接着剤は、式(I):
【化1】

(式中、R1は、水素原子又は1価の有機基を表す。該有機基は、炭化水素で構成され、エーテル基を有していてもよく、該炭化水素の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。)で表わされる化合物を含むことを特徴とする、偏光板用電子線硬化型接着剤。
【請求項2】
偏光子の少なくとも一方の面に、請求項1に記載の接着剤を電子線硬化させた接着剤層を介して、透明保護フィルムが設けられている偏光板。

【公開番号】特開2013−92771(P2013−92771A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2012−224792(P2012−224792)
【出願日】平成24年10月10日(2012.10.10)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】