説明

偏光板

【課題】ポリビニルアルコールシートとの接着性が優れた、作業上安全で環境に悪影響を及ぼさない加工で生産できる偏光板用保護フィルム等の光学フィルムおよびこれらを用いた偏光板、液晶ディスプレイ更に画像表示材料を提供する。
【解決手段】少なくとも水酸基、カルボキシル基、エポキシ基から選ばれる置換基および、不飽和結合を有する有機化合物を含有する反応性ガス存在下で、20〜200kPaの圧力にてプラズマ放電処理が施されたフィルムのプラズマ放電処理面を、ポリビニルアルコール系フィルムに沃素あるいは2色性色素を吸着させ配向させた偏光子に貼合して得られたことを特徴とする偏光板。また、プラズマ放電処理が施された表面エネルギーの極性項成分が10.0mN/m以上とすることを特徴とする偏光板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用フィルム、特に液晶ディスプレイなどに用いられる偏光板用保護フィルム、偏光板および基材表面の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイなどにはさまざまな光学用フィルムが用いられている。液晶ディスプレイには偏光板(フィルム)、位相差フィルム、視野角拡大フィルムなどの機能性フィルムが用いられており、これらのフィルムは主に塗工や貼り合わせ等により生産されている。なかでも偏光板はセルロースエステル等からなる偏光板用保護フィルムをヨウ素や染料を吸着配向させたポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子の両側に積層した構成をしている。しかし偏光板を製造する工程でセルロースエステルフィルムを強アルカリでケン化する工程が行われており、工程の保持、工程の安全性、工程からでる廃液にかかわる環境の問題等種々の問題を有している。特開平6−94915号、同6−118252号、同7−333436号、同8−96801号公報には基材フィルムに易接着層を塗布して上記問題を解決する方法が提案されている。しかし、塗布で易接着層を形成する方法ではホコリ、異物等による塗布欠陥による収率の問題や塗布ライン、乾燥ライン等の設備が必要でありコストが高くなってしまうという問題点を有していた。
【0003】
一方、プラズマ処理でフィルムの表面改質やフィルムの表面に薄膜を形成する技術は、連続処理が可能であり処理が簡便なため、近年注目されつつある技術である。特許文献1には、放電プラズマにより基材表面エネルギーを制御し、接着性等を改良する点が記載されている。本発明者らは種々検討した結果、反応性ガスの存在下でプラズマ放電処理を行うことで表面改質やフィルムの表面に薄膜を形成する技術が偏光板用保護フィルムおよび偏光板(フィルム)等の光学フィルムにおいて特に有効であることを見出した。
【特許文献1】特開平10−130851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、偏光子などに用いられるポリビニルアルコールフィルム乃至ポリビニルアルコール含有層を有するシートとの接着性が優れ、作業上安全で環境に悪影響を及ぼさない工程で生産できる偏光板用保護フィルムや帯電防止フィルム等の光学フィルムおよびこれらを用いた偏光板、液晶ディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記目的は以下の手段により達成される。
【0006】
(1)少なくとも水酸基、カルボキシル基、エポキシ基から選ばれる置換基および、不飽和結合を有する有機化合物を含有する反応性ガス存在下で、20〜200kPaの圧力にてプラズマ放電処理が施されたフィルムのプラズマ放電処理面を、ポリビニルアルコール系フィルムに沃素あるいは2色性色素を吸着させ配向させた偏光子に貼合して得られたことを特徴とする偏光板。
【0007】
(2)前記プラズマ放電処理が施されたフィルムのプラズマ放電処理面と、前記偏光子の間に、ポリビニルアルコール接着剤を用いて接着したことを特徴とする(1)に記載の偏光板。
【0008】
(3)前記不飽和結合を有する有機化合物が、下記一般式I〜IVで表される化合物であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の偏光板。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R、Rは各々水素、アルキル基又はアリール基を表し、アルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよく、分子中に少なくとも水酸基、カルボキシル基、エポキシ基から選ばれる置換基を有する。)
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、R〜Rは各々水素又はアルキル基を表し、アルキル基は置換基を有していてもよく、分子中に少なくとも水酸基、カルボキシル基、エポキシ基から選ばれる置換基を有する。nは0〜4の整数を表す。)
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、R〜Rは各々水素又はアルキル基を表し、アルキル基は置換基を有していてもよい。XはCHまたはCH−Yを表す。Yはヒドロキシル基、エポキシ基、複素環基、脂環式炭化水素基又はアルキル基を表し、エポキシ基、複素環基、脂環式炭化水素基及びアルキル基は置換基を有していてもよく、分子中に少なくとも水酸基、カルボキシル基、エポキシ基から選ばれる置換基を有する。nは0〜4の整数を表す。)
【0015】
【化4】

【0016】
(式中、R〜Rは各々水素又はアルキル基を表し、アルキル基は置換基を有してもよい。Raは水素又はヒドロキシル基を表し、nは1から3の整数を表す。)
(4)前記不飽和結合を有する有機化合物が窒素原子を有する化合物であることを特徴とする(3)に記載の偏光板。
【0017】
(5)前記窒素原子を有する化合物が下記一般式Vで表される化合物であることを特徴とする(4)記載の偏光板。
【0018】
【化5】

【0019】
(式中、Rbは水素又は1価の置換基を表す。またRbは結合する窒素原子Nとそれに隣接する炭素原子Cとを結合し、該窒素原子Nと該炭素原子Cが2重結合を形成するための単なる結合手となってもよい。Zは複素環を完成するのに必要な原子群であり置換基が結合していてもよく、Rb又はZで完成する複素環の何れかに不飽和結合を有し、分子中に少なくとも水酸基、カルボキシル基、エポキシ基から選ばれる置換基を有する。)
(6)前記プラズマ放電処理が、大気圧近傍の圧力で、不飽和結合を有する有機化合物を含む反応ガスが存在する雰囲気下で、1kHz〜150MHzの高周波電圧を印加してプラズマ放電処理であることを特徴とする(1)〜(5)の何れか1項に記載の偏光板。
【0020】
(7)前記プラズマ放電処理が施された表面エネルギーの極性項成分を10mN/m以上とすることを特徴とする(6)記載の偏光板。
【発明の効果】
【0021】
作業上安全で環境に悪影響を及ぼさず、基材フィルム上にポリビニルアルコール乃至ポリビニルアルコール含有層等の親水性層との接着性に優れた層を形成が可能な表面処理加工により、偏光板用保護フィルムや帯電防止フィルム等に適した光学フィルムを得ることが出来、またこれらを用いた偏光板、液晶ディスプレイを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明に用いられる透明基材フィルムとしては特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートフタレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルローストリアセテート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体からなるフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム(例えば、ARTON(JSR社製)、ゼオネックス、ゼオノア(日本ゼオン社製))、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、アクリルフィルムあるいはポリアクリレート系フィルムなどを挙げることができる。本発明にはセルローストリアセテートフィルム(TACフィルム)等のセルロースエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエステルフィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム又はポリアクリルフィルムが透明性、機械的性質、光学的異方性がない点などで特に好ましい。またこれらの樹脂を積層したフィルムであっても混合したフィルムであってもよく、これらの基材に用途に応じて樹脂層や無機層が塗工されていてもよい。上記記載のフィルム中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルはセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。更に、ベース強度の観点から、特に重合度250〜400、結合酢酸量54.0〜62.5%のセルロースアセテートが好ましく用いられ、また重量平均分子量は70,000〜120,000が好ましく、80,000〜100,000がより好ましい。更に好ましいのは、結合酢酸量が58〜62.5%のセルローストリアセテートである。このセルロースアセテートにセルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースジアセテートを1:99から99:1に混合したフィルムも好ましく用いられる。
【0024】
また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnは1.0〜5.0であることが好ましく、特に1.4〜3.0であることが好ましい。
【0025】
本発明に係るセルローストリアセテートは、綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートと木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを単独あるいは混合して用いることができる。流延による製膜の際に、ベルトやドラムからの剥離性がもし問題になれば、ベルトやドラムからの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートを多く使用すれば生産性が高く好ましい。木材パルプから合成されたセルローストリアセテートを混合し用いた場合、綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートの比率が40質量%以上で、剥離性の効果が顕著になるため好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、単独で使用することが最も好ましい。
【0026】
これらセルロースエステルについては、流延によるセルロースエステルの製造方法及びセルロースエステルの添加剤等について多くのものが公知であり、マット剤、可塑剤、UV吸収剤等の添加剤や、流延によるフィルムの製造方法等、例えば特開平10−237186号、特願平11−238290号、同11−353162号等に記載されており、これらの技術を用いることが出来る。
【0027】
本発明に用いられる偏光子とは、ポリビニルアルコール系フィルムに沃素や2色性色素を吸着させ配向させたフィルム、偏光板用保護フィルムとは、偏光子を貼り合わせるフィルム、偏光板とは偏光子に、保護フィルムとして、例えばトリアセチルセルロースフィルム等を貼り合わせた構造を有したフィルムのことをいう。
【0028】
偏光板用保護フィルムにはハードコート層、防眩層、反射防止層、防汚層、保護層、粘着層、配向膜、液晶層等が設けられることが好ましく、これらの層を設ける前又は後にプラズマ処理することが好ましい。
【0029】
偏光板用保護フィルムとして用いられる本発明の光学フィルムにおいては、その表面層の表面エネルギーが偏光子との接着性に関わりがあることが判った。即ち、本発明において、反応性ガスの存在下においてプラズマ放電処理を表面に行うことで基材フィルム表面に形成された重合皮膜は層表面の表面エネルギーの極性項成分を10mN/m以上とすることにより偏光子との接着性が良好であった。おそらく表面または表面近傍の極性基と偏光子を構成するポリビニルアルコールとの水素結合の寄与が大きいと推定できる。表面エネルギーの極性項成分の値は10mN/m以上であり、15mN/m以上が好ましく20mN/m以上がさらに好ましい。表面エネルギーの極性項成分の値は40mN/m程度が上限である。一般に、表面を作る物質の表面エネルギー(表面張力)γは、次式(1)で示すように、主に分散力成分γと極性項成分γの和である。
【0030】
γ=γ+γ (1)
さらに固体表面の表面エネルギーと溶媒の表面エネルギーとの間には次の関係式があり、
(1+COSθ)γ
=2(γ・γ1/2+2(γ+γ1/2 (2)
θは接触角(°)、γは、溶媒の表面エネルギー、γは、溶媒の表面エネルギーの分散力成分、γは、溶媒の表面エネルギーの極性項成分、γは、固体表面の表面エネルギーの分散力成分、γは、固体の表面エネルギーの極性項成分を示す。エネルギーの単位はいずれもmN/mである。
【0031】
(2)式から、分散力成分と極性項成分が既知の2種類の溶媒を用いて接触角を測定して連立方程式を解けば、固体表面のγとγ成分が求められる。例えば、後述する実施例で表面改質膜の分散力成分と極性項成分を求めるのに用いた水とヨウ化メチレンのそれぞれの分散力成分と極性項成分を次に示す(J.Adhesion,Vol.2,p66(1970))。
【0032】
溶媒 γ γ γ
水 21.5 51.0 72.5
ヨウ化メチレン 48.5 2.3 50.8
本発明においては水およびヨウ化メチレンの接触角の測定はエルマ工業(株)製ゴニオメーターG1を用い、基材フィルムの表面に5μl垂らして5回測定し、その平均を接触角とし表面エネルギーを算出する。
【0033】
本発明に係るプラズマ放電処理により形成された層を有する光学フィルムの接着性は下記のポリビニルアルコールをフィルム上に塗布してみることができる。ここで用いられるポリビニルアルコールは、一般に市販されているものを用いることができ重合度1500以上、ケン化度98〜99mol%のものを使用する。ポリビニルアルコール層は、ポリビニルアルコールを水または温水に溶解後、偏光板用保護フィルムのテスト面上にバーコーターなどで塗布し、80℃で30分乾燥する。形成されたポリビニルアルコール層の膜厚は0.5μm±10%に調整する。このポリビニルアルコール層の密着性の評価は、JIS K−5400の碁盤目テープ法に準拠し、規定のカッターナイフ、カッターガイドを用いて1mm間隔で10×10の100個のます目を作製し、規定のセロハン粘着テープをはりつけ消しゴムでこすって塗膜に付着する。テープを付着後2分後に塗面に直角方向に瞬間的に引き剥がす。残っている碁盤目の数が90個以上ならば、偏光板用保護フィルムは偏光子との密着性がよく、耐久性も優れていることが判る。
【0034】
本発明の親水性層は前記透明基材フィルムを反応性ガスのもとでプラズマ放電処理して作製することができる。
【0035】
プラズマ放電処理とは、反応性ガス中での放電によりプラズマ状態を発生させ、このプラズマによりフィルム等の表面を処理することである。これらは特開平6−123062号、特開平11−293011号、特開平11−5857号公報に記載された方法を用いることができ、少なくとも2つの対向する電極に電圧を印加することによって行なうプラズマ放電処理が好ましい。
【0036】
本発明において反応性ガスとして用いられる有機化合物としてはプラズマ放電処理により基材上に重合皮膜を形成する化合物が用いられる。プラズマ放電処理で重合皮膜を形成する化合物としては、ラジカルを経由するため気化が可能な有機化合物はすべて重合可能なモノマーとなり得るが、化学構造や官能基によって重合の度合いが異なり、またプラズマの処理条件によっても差がみられるので色々な特性の皮膜を作製することができる。本発明では、不飽和結合を有する化合物は飽和化合物よりも重合皮膜の形成速度が速く、しかも膜が強い(傷がつきにくい)ので好ましく用いられる。
【0037】
本発明において反応性ガスとして用いられる有機化合物としては不飽和結合を有する化合物であれば、プラズマ放電処理の条件を選択することで使用可能であり、これらのうち特に好ましい化合物は、特に水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、エポキシ基から選ばれる置換基を有する化合物である。
【0038】
本発明において反応性ガスとして好ましく用いられる不飽和結合を有する有機化合物は、前記の一般式I〜IVで表される化合物であり、本発明の目的においては、これらのうちでも特に水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、エポキシ基から選ばれる置換基を有する化合物が好ましい。
【0039】
前記一般式Iにおいて、R、Rは水素、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。具体的な化合物の例としては、末端にアセチレン(エチニル)基を持つ化合物としてはアセチレン、プロピン、ブチン−1、ヘキシン−1、オクテン−1、分子内にエチニレン基(−C≡C−)を有する化合物の例としては、ブチン−2、ヘキシン−2、ヘキシン−3及びオクチン−4を挙げることができる。 アリール基を有する化合物の例としては、フェニルアセチレン、3−フェニルプロピン−1及び4−フェニルブチン−1を挙げることができる。
【0040】
一般式Iで表される化合物がO,N,F,Cl,Br,Si,Sから選ばれる原子を含んでいる場合の例としては、含酸素アセチレン系化合物、例えば3−メチル−1−ブチン−3−オール及び3−フェニル−1−ブチン−3−オール;含ケイ素アセチレン系化合物、例えば1−ブチン−3−オールのO−トリメチルシリル化物(HC≡C−CH(CH)−O−Si(CH)及び3−フェニル−1−プロピン−3−オールのO−トリメチルシリル化物(HC≡C−CH(C)−O−Si(CH)などを挙げることができる。
【0041】
不飽和結合を有する化合物としてはエチレン性不飽和化合物を含むが、例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、1,4−ジオキセン、1,4−ジオキシンが好ましく、特に前記一般式IIで表される化合物が好ましい。
【0042】
前記一般式IIにおいて、R〜Rは水素、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、nは0〜4迄の整数を表す。
【0043】
又、置換基を有するエチレン性化合物としてはまた、前記一般式IIIで表される化合物が好ましい。前記一般式IIIにおいて、R〜Rは水素、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Xは−CH−または−CH(Y)−を表す。Yはヒドロキシル基、エポキシ基、複素環基、脂環式炭化水素基、アルキル基を表し、エポキシ基、複素環基、脂環式炭化水素基及びアルキル基は置換基を有していてもよい。nは0〜4の整数を表す。
【0044】
複素環式エチレン性不飽和化合物の例としてはモルホリン(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの複素環式(メタ)アクリレートなど、アルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート[例えば、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなど]、アルキルフェノキシエチル(メタ)アクリレート[例えば、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートなど]、フェノキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート[例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなど]、アルキル(メタ)アクリレート[例えば、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなど]、シクロアルキル(メタ)アクリレート[例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなど]、アラルキル(メタ)アクリレート[例えば、ベンジル(メタ)アクリレートなど]、脂環式炭化水素基を有するジ(メタ)アクリレート[例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレートなど]、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート[例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、3−アクリロキシグリセリン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパン、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、N,N,N−トリメチルN−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)アンモニウムクロライドなど]、エポキシ基含有(メタ)アクリレート[例えば、グリシジル(メタ)アクリレート]、ハロゲン含有(メタ)アクリレート[例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートなど]などが含まれる。Yはヒドロキシル基、エポキシ基が特に接着性の面で特に好ましい。
【0045】
前記一般式IVで表される2官能性以上の化合物も好ましく用いることができる。
【0046】
一般式IVにおいて、R〜Rは水素、置換基を有してもよいアルキル基を表し、Raは水素、ヒドロキシル基を表し、nは1から3の整数を表す。具体的な化合物として2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネートのジ(メタ)アクリレート、(ポリオキシ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリレートなど]、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなど)付加物のジ(メタ)アクリレート[例えば、2,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンのジ(メタ)アクリレートなど]、架橋脂環式炭化水素基を有するジ(メタ)アクリレート[例えば、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレートなど]、2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物[例えば、2,2−ビス(グリシジルオキシフェニル)プロパンの(メタ)アクリル酸付加物など]などが含まれる。n=3の化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリット酸、トリアリルイソシアヌレートなど例示できる。これらエチレン性不飽和化合物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0047】
これらエチレン性不飽和化合物のなかでも、酸素原子を有する置換基、たとえば水酸基、カルボキシル基およびエポキシ基等を含む化合物雰囲気中でプラズマ放電処理して形成した重合皮膜は偏光子との接着性が良好であり、また放電処理のエネルギーが小さくても重合被膜が形成できる点で好ましく、そのため処理時間を短くできるので生産性を上げることが可能となる。また水酸基、カルボキシル基およびエポキシ基等の親水性基を含む不飽和化合物で形成した重合被膜は偏光子と接着した時に気泡が入り難く均一な接着面が得られたことは予想外であった。推測であるが表面エネルギーと膜の柔軟性によるものと考えている。これらの特に好ましい化合物の例として、アクリル酸、メタクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0048】
本発明で好ましく用いられるもう一つの化合物例として窒素を含有する有機化合物が挙げられる。窒素を含有する化合物としては、アミノ基、アミド基、イミノ基、シアノ基などの置換基やピリジン環、ピリミジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピラジン環、トリアゾール環などの含窒素芳香環を含有する化合物が好ましく、特に前記一般式Vで表される化合物が好ましい。
【0049】
式中、RbはHまたは1価の種々の置換基を表し、またRbは結合する窒素原子Nとそれに隣接する炭素原子Cと結合し、窒素原子Nと該炭素原子Cとが2重結合を形成するための単なる結合手となってもよい。Zは複素環を完成するのに必要な原子群であり置換基が結合していてもよく、Rb又はZで完成する複素環の何れかに不飽和結合を有する。
【0050】
窒素を含有する有機化合物の例としてはトリシクロヘキシルアミン、トリベンジルアミン、オクタデシルベンジルアミン、ステアリルアミン、アリル尿素、チオ尿素、メチルチオ尿素、アリルチオ尿素、エチレンチオ尿素、2−ベンジルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾリン、2,4,5−トリフリル−2−イミダゾリン、1,2−ジフェニル−4,4−ジメチル−2−イミダゾリン、2−フェニル−2−イミダゾリン、1,2,3−トリフェニルグアニジン、1,2−ジシクロヘキシルグアニジン、1,2,3−トリシクロヘキシルグアニジン、N,N’−ジベンジルピペラジン、4,4’−ジチオモルホリン、2−アミノベンゾチアゾール、2−ベンゾイルヒドラジノベンゾチアゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルカプロラクタムなどのN−ビニル複素環化合物、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルフォルムアミド、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレートやジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N′−ジメチルアクリルアミド、などがある。これらは、2種以上併用することができる。これらのなかで不飽和結合を有する含窒素化合物を用いた場合にプラズマ放電処理のエネルギーが少なくても重合皮膜の形成が可能であり、偏光子との接着性、さらに偏光子との接着において気泡が入りづらい点で特に好ましい。
【0051】
又、更に本発明においては、揮発性を有するリンを含有する化合物(例えばビニルホスホン酸等)も好ましく用いられる。
【0052】
本発明においては反応性ガス中でのプラズマ放電処理により重合皮膜を透明基材フィルム上に形成する時には反応性ガスが酸素原子を含むガスを含有することが好ましい。酸素原子は、プラズマ放電処理中に形成される重合皮膜に取り込まれ、水酸基、カルボニル基として膜の内部および表面に取り込まれ、ポリビニルアルコール等の親水性樹脂との水素結合が増加し接着性および接着耐久性が向上するので好ましい。酸素原子を含むガスとは酸素、オゾン、一酸化炭素、二酸化炭素、過酸化水素、水であり、酸素、オゾン、二酸化炭素が好ましい。また、酸素原子を含むガスと不飽和結合を有する化合物を同時に含有する反応性ガスを用いプラズマ放電処理すると不飽和結合を含有する化合物の重合皮膜を形成後に酸素含有ガスでプラズマ放電処理するよりも多くの重合皮膜上または内部に酸素原子を含有する置換基を付与することができる。したがって同時に処理することで接着性の向上とプロセスの簡略化が可能となる。この酸素原子を含むガスと同時に用いられる不飽和化合物の好ましい例としては、ブタジエン、イソプレン等が特に重合皮膜の生成速度の点で好ましい。
【0053】
本発明の不飽和化合物および含窒素化合物のプラズマ放電処理雰囲気中へ反応性ガスとして供給する方法としては、加熱して気化させて導入する方法、溶媒に溶解させたものを加熱または減圧等により気化させ導入する方法が用いられる。
【0054】
本発明で形成される重合皮膜の膜厚は1μm以下、特に0.1μm以下が生産性の面で好ましい。膜厚が厚くなると処理する時間が長くなり生産性が劣ってしまう。さらに好ましくは0.05μm以下である。偏光子との接着性や接着耐久性については更に薄くても性能に差はでず、むしろ薄いほうが接着の作業性や気泡が入りにくく、折り曲げた時にクラックが入りづらいので好ましい。さらに好ましい膜厚は0.01μm以下であり、膜が薄いほど透明性が高くなるので光学用フィルムとして好ましい。本発明では可視光における透過率は90%以上であることが好ましい。
【0055】
プラズマ放電とは、放電によりプラズマ状態を発生させることである。少なくとも2つの対向する電極に電圧を印加することによって行なうプラズマ放電処理が好ましい。本発明に係るプラズマ放電処理系とは、反応性ガス存在下プラズマ放電を行なう処理空間のことであり、具体的には壁等で仕切りを設けて隔離した処理室のことである。前記処理室の気圧を真空に近い0.007hPa〜27hPaで行なう真空プラズマ放電処理の場合には、反応性ガスの導入を調整する必要がある。処理速度を増加させるためには、電極に印加する電圧を高くする必要があるが、電界強度を上げすぎると被処理体(例えば、基材フィルム等)にダメージを与える場合があるので注意が必要である。
【0056】
また、好ましい態様として、前記処理室の気圧を大気圧もしくは大気圧近傍で行なう大気圧プラズマ処理が生産性を上げる点で好ましい。処理室に導入する気体として、前記反応性ガス以外に不活性ガス又は窒素を導入することが、安定な放電を発生させる上で好ましい。大気圧もしくは大気圧近傍とは、20〜200kPaの圧力下のことであり、好ましくは93〜107kPaの範囲である。不活性ガスはプラズマ放電により自身は反応しない気体のことであり、アルゴンガス、ヘリウムガス、キセノンガス、クリプトンガスがある。この中で好ましいガスはアルゴンガスとヘリウムガスである。大気圧プラズマ処理時に処理室に導入する不活性ガスは60%以上、特に好ましくは90〜99.9%とすることによって放電を安定に発生させることができて好ましい。印加する電圧を高くすると処理速度を上げることができるが、電界強度を上げすぎると被処理体にダメージを与えることになるので注意が必要である。
【0057】
また、プラズマ放電のために電界の周波数は1kHz〜150MHzが好ましく、特に100kHzを超えて150MHz以下であることが好ましい。
【0058】
この高周波電界はサイン波形であっても、パルス化された電界であってもよく、ON/OFFのデューティ比を変化させることでプラズマガス温度を調整することもできる。
【0059】
反応ガスの温度は室温〜200℃が好ましく、更に室温〜120℃であることが好ましく、更に50〜100℃であることが好ましい。
【0060】
また、大気圧プラズマ処理に用いる少なくとも2つの対向する電極は、固体誘電体をその対向面側に設けることが好ましい。固体誘電体としては、焼結セラミックスを用いることが好ましく、その体積固有抵抗値は10Ω・cm以上が好ましい。
【0061】
本発明において用いることのできる大気圧プラズマ放電処理装置の一例としては、図1に示すような装置を挙げることができる。図1において、Fは長尺状の基材である。12は大気圧もしくはその近傍の圧力下、連続的にプラズマ処理する処理室であり、13、14は一対の電極である。
【0062】
処理室12は前記基材Fの入口12Aと出口12Bを有する間仕切りされた処理室によって構成されている。以下処理部を処理室として説明する。
【0063】
図示の例では、処理室12に隣接して基材の入口側に予備室10が設けられ、その予備室10に隣接して予備室11が設けられている。出口側にも処理室12に隣接して予備室17が設けられている。
【0064】
予備室を設ける場合、図1で示すように、基材Fの入口側に二つ、出口側に一つを設ける態様であってもよいが、これに限定されず、基材Fの出入口側に一つづつ設ける態様、入口側に二つ設け、出口側に設けない態様、あるいは入口側に二つ以上、出口側に二つ以上設ける態様でもよい。
【0065】
いずれの態様であっても、処理室12内の内圧が、処理室12と隣接する予備室の内圧より高いことが好ましく、より好ましくは0.30Pa以上高いことである。このように処理室12と予備室の間でも圧力差を設けることにより、外部空気の混入を防止し、反応ガスの有効使用が可能となり、処理効果も更に向上する。
【0066】
また、処理室12に隣接して入口側に二つ以上、出口側に二つ以上予備室を設けた場合、その予備室と隣り合う予備室の間の差圧は、処理室12に近い側の予備室の内圧が高く設定されることが好ましく、0.30Pa以上高く設定されることが好ましい。このように複数の予備室同士の間でも圧力差を設けることによって、外部空気の混入をより効率的に防止し、反応ガスの有効使用がより可能となり、処理効果も更に向上する。
【0067】
予備室には、処理ガスの少なくとも1成分、好ましくは希ガスを有していることが反応ガスの効率的な使用と処理効果の向上の観点から好ましい。
【0068】
前記処理室12と予備室、予備室同士の部屋には間仕切りされていることが必要であり、かかる間仕切り手段としては、図示のように、入口側に一対のニップローラ8、出口側に一対のニップローラ9を設ける形態も好ましい。
【0069】
かかるニップローラは、基材Fに対して接触しながら閉鎖ないし間仕切りする機能を有するが、部屋同士を完全に間仕切りできないので、本実施の形態例の様な圧力差を設ける手段が有効に機能するのである。
【0070】
また間仕切り手段としては、基材Fに対して所定の間隙を保ち、且つ非接触である態様であってもよい。かかる態様としては図示しないエアーカーテン方式等を採用できる。
【0071】
なお、予備室を設けない場合には、処理室と外部の間に間仕切りがされればよい。
【0072】
図示の例で、一対の電極13、14は、金属母材と固体誘電体で構成され、該金属母材へライニングにより無機性物質の誘電体を被覆した組み合わせ、または同母材に対しセラミックス溶射後、無機性物質により封孔処理した誘電体を被覆した組み合わせで構成されている。ここで金属母材は、銀、白金、ステンレス、アルミニウム、鉄、チタン等の金属が使えるが、ステンレスが加工し易い。
【0073】
また、ライニング材としては、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラス等が用いることができるが、この中でもホウ酸塩系ガラスが加工し易い。
【0074】
また溶射に用いるセラミックスとしては、アルミナが良く、封孔材としては、アルコキシシラン等をゾルゲル反応させて無機化させたものが用いられる。
【0075】
また、図1では一対の電極13、14のように平板電極を用いてあるが、一方もしくは双方の電極を円筒状電極、角柱状電極、ロール状電極としてもよい。
【0076】
この一対の電極13、14のうち一方の電極13に高周波電源15が接続され、他方の電極14は、アース16により接地されており、一対の電極13、14間に電界を印加できるように構成されている。
【0077】
また、本手段により、被処理基材が帯電することやそれに伴うゴミ付着等を引き起こすこともあるが、以下の解決手段により、特に問題とはならない。例えば、除電手段としては、特開平7−263173号に記載されている、通常のブロアー式、接触式以外に、複数の正負のイオン生成用除電電極と基材を挟むようにイオン吸引電極を対向させた除電装置と、その後正負の直流式除電装置を設けた高密度除電システムを用いることも好ましい。また、このときの基材の帯電量は±500V以下が好ましい。また、除電処理後のゴミ除去手段としては、特開平7−60211号等に記載されている非接触式のジェット風式減圧型ゴミ除去装置が好ましいが、これに限定される訳ではない。
【0078】
図1に示す装置を用いて処理するには、先ず搬送される基材Fが処理室12内に入り、その処理室12内で、高周波電界により発生させられたプラズマにより、その表面が連続処理される。更に処理前に、予め基材表面の除電処理を行い、更にゴミ除去を行うことによって、表面処理の均一性が更に向上するので好ましい。除電手段及び除電処理後のゴミ除去手段としては、上記装置で記載したのと同様の手段を用いることができる。
【0079】
図2は、本発明で用いられるプラズマ放電処理装置に設置されるプラズマ放電処理容器の一例を示す概略図であり、基材Fを巻回して搬送回転するロール型の電極25に対して、複数の円筒で固定型の電極26を対向させた一例であり、ロール型の電極25に巻回してニップローラ65、66で押圧され、基材Fはガイドローラ64、67を介して放電処理室30内に搬送され、電極25の回転に同期して、搬送及び処理される。
【0080】
図3は、本発明で用いられるプラズマ放電処理装置に設置されるプラズマ放電処理容器の他の一例を示す概略図であり、図2に対し固定型電極として角柱型の電極36に変更した装置の一例であり、円柱に比べ放電範囲を広げる効果がある。
【0081】
更に、図4は、本発明に係るプラズマ放電処理に用いられる円筒型のロール電極の一例を示す斜視図であり、図5は、本発明に係るプラズマ放電処理に用いられる固定型の円筒型電極の一例を示す斜視図であり、図6は、本発明に係るプラズマ放電処理に用いられる固定型の角柱型電極の一例を示す斜視図である。
【0082】
電極25は、図4に示すように金属等の導電性のある母材25aへライニングにより無機性物質の誘電体25bを被覆した組み合わせ、または同母材25Aに対しセラミックス溶射後、無機性物質により封孔処理した誘電体25Bを被覆した組み合わせで構成されている。電極26及び36も同様の組み合わせで構成される。
【0083】
ここでも金属等の導電性のある母材25aは、銀、白金、ステンレス、アルミニウム、鉄、チタン等の金属が使えるが、ステンレスが加工し易い。
【0084】
図7は、本発明に係る放電プラズマによる放電処理装置の一例を示す概略図である。図7において、放電処理装置部は図4と同様で、それにガス充填手段50、電源40、電極冷却ユニット60、61等で構成されている。
【0085】
また電極25、36は、図3、4、5等に示すもので、対向する電極25、36間のギャップは、例えば0.5〜20mm程度となっている。
【0086】
ガス充填手段50は、希ガス及び反応ガスの混合ガスを放電処理室30に送気して充填する手段であり、混合ガスはヘリウム(He)またはアルゴン(Ar)の希ガスと酸素、水素、有機フッ素化合物のいずれかまたはその混合ガスとを用いることが好ましい。なお、比較的安価なアルゴンガスでの放電が望ましい。
【0087】
なお、図示していないが、混合ガスは電極36の間隙より基材Fへと送気されることが好ましく、又、別の間隙より放電処理後の排ガスを除去することが好ましい。
【0088】
電源40は、図3、4及び5に示した導電性の電極部分25a、25A、または26a、26A、または36a、36Aに電圧を印加する。放電処理室30は、パイレックス(登録商標)ガラス製の処理容器31で構成され、処理容器31内に混合ガスが充填される。なお、実施形態では、処理容器31はパイレックス(登録商標)ガラス製であるが、電極と絶縁がとれていれば金属製であってもよく、例えば、アルミまたは、ステンレスのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても良く、金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとっても良い。
【0089】
処理容器31内にロール状の電極25、角柱型の電極36を所定位置に配置し、ガス発生装置51で発生させた混合ガスを流量制御して、給気口52より放電処理室30の処理容器31内に入れ、該処理容器31内を混合ガスで充填し排気口53より排出するようにする。このとき、電源40により電極36に電圧を印加し、電極25はアースに接地し、放電プラズマを発生させる。ここでロール状のフィルム68より基材Fを供給し、ガイドローラ64、67を介して、放電処理室30内の電極25、36間を片面が電極25に接触する状態で搬送される。基材Fは搬送中に放電プラズマにより表面が放電処理されるようになっている。ここで基材Fは、電極25に接触していない面に放電処理がなされる。
【0090】
図8は大気圧下でプラズマを含む励起活性種を被処理体(フィルム基材)に吹き付けることにより処理する表面処理装置の一例を示す概略図である。外側に外部電極72、内側に内部電極73(電極は冷却用の冷却水導入口73aおよび排出口73bを有する)を備えた筒状の反応管71の電極間に電源74により交流を印加し、反応管71の内部にグロー放電を発生させることで、導入口76から導入された処理ガスをプラズマを含む励起活性種とし下部の吹きつけ口77から被処理物に吹き付けるものである。このような放電処理方法によっても本発明の光学フィルムを得ることができる。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0092】
実施例1
〈樹脂フィルム1の作製〉
(ドープ組成物)
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度2.0、
プロピオニル基置換度0.8) 100kg
トリフェニルフォスフェート 5kg
エチルフタリルエチルグリコレート 2kg
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 0.5kg
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 0.5kg
チヌビン326(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 0.3kg
超微粒子シリカ(アエロジルR972V:日本アエロジル(株)製)
0.15kg
メチレンクロライド 430kg
メタノール 90kg
上記組成物を密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温し撹伴しながら完全に溶解してドープ組成物を得た。次にこのドープ組成物を濾過し、冷却して35℃に保ちステンレスバンド上に均一に流延し、剥離が可能になるまで溶媒を蒸発させたところで、ステンレスバンド上から剥離した。剥離後の残留溶媒量50質量%〜5質量%の間の乾燥ゾーン内でテンターによって幅保持しながら乾燥を進行させ、さらに、多数のロールで搬送させながら残留溶媒量0.01質量%以下となるまで乾燥させ、膜厚80μmの樹脂フィルム1を得た。
【0093】
〈樹脂フィルム2〉
ノルボルネン系樹脂フィルム(ARTON、ジェイエスアール(株)製)
〈樹脂フィルム3〉
コニカタックKC4UX2MW(コニカ(株)製)
上記樹脂フィルム1〜3を用い以下表1に示す条件でプラズマ放電処理(処理に用いた反応性ガスおよび不活性ガスについては表1に記載)し、得られたフィルム試料のプラズマ処理面のポリビニルアルコール(PVA)層との接着性を以下に示す方法により評価した。
【0094】
〈PVA接着性〉
日本合成化学(株)社製のポリビニルアルコールNH−17(重合度1500以上、ケン化度98〜99mol%)を温水に溶解後、透明基材フィルム(樹脂フィルム1〜3)のプラズマ処理面上にバーコーターで塗布し、80℃で30分乾燥する。形成されたポリビニルアルコール層の膜厚は0.5μm±10%に調整する。このポリビニルアルコール層の密着性の評価は、JIS K−5400の碁盤目テープ法に準拠し、規定のカッターナイフ、カッターガイドを用いて1mm間隔で縦横にきずを付け、100個のます目を作製し、規定のセロハン粘着テープをはりつけ消しゴムでこすって塗膜に付着する。テープを付着後2分後に塗面に直角方向に瞬間的に引き剥がす。100個のます目のうち剥がれずに残った碁盤目の数で表した。結果を表1に示した。
【0095】
(プラズマ放電処理条件1)
電源出力:0.8W/m
処理ガス:不活性ガス(アルゴン又はヘリウム)99.4%、酸素0.3%、不飽和結合を有する化合物0.3%の割合となるようにマスフローコントローラで流量を制御し、ミキサーで混合したものを処理室へ導入した。なお、酸素を添加しない場合は、不活性ガスを99.7%とした(詳細は表1参照)。
【0096】
処理時間:35秒
装置1:連続大気圧プラズマ放電処理装置(図7に概略図を示す)
電源:ハイデン研究所製インパルス電源PHF−6K
電源周波数:100kHz
(プラズマ放電処理条件2)
電源出力:1W/m
処理ガス:プラズマ放電処理条件1と同じ
処理時間:30秒
装置2:連続大気圧プラズマ放電処理装置(図7に概略図を示す)
電源:パール工業製高周波電源
電源周波数:800kHz
(プラズマ放電処理条件3)
電源出力:1W/m
処理ガス:プラズマ放電処理条件1と同じ
処理時間:20秒
装置3:連続大気圧プラズマ放電処理装置(図7に概略図を示す)
電源:パール工業製高周波電源
電源周波数:800kHz
【0097】
【表1】

【0098】
表面エネルギー極性項成分の値が10mN/m以上であるとPVAとの接着性が良好となることがわかる。したがって偏光板保護フィルムとした場合に偏光子との接着性が良好である。
【0099】
実施例2
実施例1の試料No.101〜117をそれぞれ2枚使用し、これら2枚のフィルムの、プラズマ処理面に3%ポリビニルアルコール接着剤1μmを塗布し、以下に示す様に作製した偏光子を貼合して偏光板を作製した。No.101〜114の試料から作製した偏光板の接着性は良好であった。また80℃、90%で2週間、100℃ドライ条件で偏光板を保存しても偏光板の接着性に変化は見られなかった。
【0100】
〈偏光子の作製〉
厚さ75μmのPVAフィルム(クラレビニロン#7500;クラレ株式会社製)を縦一軸延伸(延伸倍率4倍)して偏光子基材とした。この基材をヨウ素0.2g/l、ヨウ化カリ30g/lよりなる水溶液に30℃にて4分間浸漬した。次いでホウ酸70g/l、ヨウ化カリ30g/lの組成の水溶液に55℃にて5分間浸漬し、さらに20℃の水で30秒洗浄後、乾燥して偏光子を得た。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明で用いられる大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す断面図。
【図2】本発明で用いられるプラズマ放電処理装置に設置されるプラズマ放電処理容器の一例を示す概略図である。
【図3】本発明で用いられるプラズマ放電処理装置に設置されるプラズマ放電処理容器の他の一例を示す概略図である。
【図4】本発明に係るプラズマ放電処理に用いられる円筒型のロール電極の一例を示す斜視図である。
【図5】本発明に係るプラズマ放電処理に用いられる固定型の円筒型電極の一例を示す斜視図である。
【図6】本発明に係るプラズマ放電処理に用いられる固定型の角柱型電極の一例を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る放電プラズマによる放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図8】プラズマを含む励起活性種を被処理体に吹き付けるための装置の一形態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0102】
F 基材
8、9 ニップローラ
10、11、17 予備室
12 処理室
13、14 電極
15 高周波電源
25、26、36 電極
25a、25A、26a、26A、36a、36A 金属等の導電性母材
25b、26b、36b ライニング処理誘電体
25B、26B、36B セラミック被覆処理誘電体
30 放電処理室
31 処理容器
40 高周波電源
50 ガス充填手段
51 ガス発生装置
52 給気口(反応ガス導入口)
53 排気口
54 仕切板
60、61 電極冷却ユニット
65、66 ニップローラ
64、67 ガイドローラ
68 フィルム
71 反応管
72 外部電極
73 内部電極
73a 冷却水導入口
73b 冷却水排出口
74 電源
75 アース
76 処理ガスの導入口
77 励起活性種吹きつけ口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水酸基、カルボキシル基、エポキシ基から選ばれる置換基および、不飽和結合を有する有機化合物を含有する反応性ガス存在下で、20〜200kPaの圧力にてプラズマ放電処理が施されたフィルムのプラズマ放電処理面を、ポリビニルアルコール系フィルムに沃素あるいは2色性色素を吸着させ配向させた偏光子に貼合して得られたことを特徴とする偏光板。
【請求項2】
前記プラズマ放電処理が施されたフィルムのプラズマ放電処理面と、前記偏光子の間に、ポリビニルアルコール接着剤を用いて接着したことを特徴とする請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記不飽和結合を有する有機化合物が、下記一般式I〜IVで表される化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の偏光板。
【化1】

(式中、R、Rは各々水素、アルキル基又はアリール基を表し、アルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよく、分子中に少なくとも水酸基、カルボキシル基、エポキシ基から選ばれる置換基を有する。)
【化2】

(式中、R〜Rは各々水素又はアルキル基を表し、アルキル基は置換基を有していてもよく、分子中に少なくとも水酸基、カルボキシル基、エポキシ基から選ばれる置換基を有する。nは0〜4の整数を表す。)
【化3】

(式中、R〜Rは各々水素又はアルキル基を表し、アルキル基は置換基を有していてもよい。XはCHまたはCH−Yを表す。Yはヒドロキシル基、エポキシ基、複素環基、脂環式炭化水素基又はアルキル基を表し、エポキシ基、複素環基、脂環式炭化水素基及びアルキル基は置換基を有していてもよく、分子中に少なくとも水酸基、カルボキシル基、エポキシ基から選ばれる置換基を有する。nは0〜4の整数を表す。)
【化4】

(式中、R〜Rは各々水素又はアルキル基を表し、アルキル基は置換基を有してもよい。Raは水素又はヒドロキシル基を表し、nは1から3の整数を表す。)
【請求項4】
前記不飽和結合を有する有機化合物が窒素原子を有する化合物であることを特徴とする請求項3に記載の偏光板。
【請求項5】
前記窒素原子を有する化合物が下記一般式Vで表される化合物であることを特徴とする請求項4記載の偏光板。
【化5】

(式中、Rbは水素又は1価の置換基を表す。またRbは結合する窒素原子Nとそれに隣接する炭素原子Cとを結合し、該窒素原子Nと該炭素原子Cが2重結合を形成するための単なる結合手となってもよい。Zは複素環を完成するのに必要な原子群であり置換基が結合していてもよく、Rb又はZで完成する複素環の何れかに不飽和結合を有し、分子中に少なくとも水酸基、カルボキシル基、エポキシ基から選ばれる置換基を有する。)
【請求項6】
前記プラズマ放電処理が、大気圧近傍の圧力で、不飽和結合を有する有機化合物を含む反応ガスが存在する雰囲気下で、1kHz〜150MHzの高周波電圧を印加してプラズマ放電処理であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の偏光板。
【請求項7】
前記プラズマ放電処理が施された表面エネルギーの極性項成分を10mN/m以上とすることを特徴とする請求項6記載の偏光板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−116337(P2009−116337A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300647(P2008−300647)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【分割の表示】特願2002−58674(P2002−58674)の分割
【原出願日】平成14年3月5日(2002.3.5)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】