説明

偏光板

【課題】紫外線吸収剤の添加により紫外線カット性能が付与されたプロピレン系樹脂フィルムが接着剤層を介して偏光フィルムの少なくとも片面に積層された偏光板であって、該プロピレン系樹脂フィルムがブリードアウトしない偏光板を提供する。
【解決手段】プロピレン系樹脂フィルムからなる透明保護フィルムと、ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している偏光フィルムと、二軸性位相差フィルムとがこの順に積層されており、前記プロピレン系樹脂フィルムは、トリアジン系紫外線吸収剤を含む紫外線吸収剤を含有し、前記トリアジン系紫外線吸収剤の含有量が前記プロピレン系樹脂フィルム中に1重量%未満であり、波長320〜330nmの間にある光の透過率が1%以下である、偏光板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの少なくとも一方の面にプロピレン系樹脂フィルムからなる透明保護フィルムが積層されている偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、液晶テレビ、液晶モニタ、パーソナルコンピュータなどの液晶表示装置を構成する重要な構成部材の1つである。偏光板は通常、二色性色素が吸着配向したポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの片面または両面に接着剤層を介して、透明保護フィルム、たとえばトリアセチルセルロースに代表される酢酸セルロース系の透明保護フィルムを積層した構成となっている。偏光フィルムの片面には、接着剤層を介してノルボルネン系樹脂などからなる位相差フィルムが積層される場合もある。
【0003】
しかし、トリアセチルセルロースフィルムなどのような親水性の透明保護フィルムを使用すると、高温多湿の条件では、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの水分量に影響を与え、偏光板としての性能が多少なりとも変化してしまうことがあり、そのため、親水性樹脂からなる透明保護フィルムの代わりに、プロピレン系樹脂などの疎水性樹脂で形成された透明保護フィルムを使用し、環境による影響を極力抑制できる構成の偏光板が検討されるようになった(たとえば、特開2009−258588号公報(特許文献1))など)。
【0004】
一方、偏光板は、液晶表示装置内の液晶セルを光から保護する役目も担っており、偏光フィルムに積層される透明保護フィルムなどに、紫外線吸収剤を添加し、400nm以下の紫外線をカットする機能を付与することが多い。しかしながら、上記特許文献1に示されるようなプロピレン系樹脂フィルムに紫外線吸収剤を添加すると、紫外線吸収剤が接着剤層との界面にブリードして溜まり、透明保護フィルムと偏光フィルムとの接着強度が低下してしまう可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−258588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、紫外線吸収剤の添加により紫外線カット性能が付与されたプロピレン系樹脂フィルムが接着剤層を介して偏光フィルムに積層された偏光板であって、該プロピレン系樹脂フィルムからの紫外線吸収剤のブリードアウトが抑制された偏光板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の偏光板は、プロピレン系樹脂フィルムからなる透明保護フィルムと、ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している偏光フィルムと、二軸性位相差フィルムとがこの順に積層されており、前記プロピレン系樹脂フィルムは、少なくとも下式(I):
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1は炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、R2は水素または炭素原子数1〜8のアルキル基を表す)で示されるトリアジン系紫外線吸収剤を含む紫外線吸収剤を含有し、前記トリアジン系紫外線吸収剤の含有量が前記プロピレン系樹脂フィルム中に1重量%未満であり、波長320〜330nmの間にある光の透過率が1%以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明の偏光板における前記プロピレン系樹脂フィルムは、前記式(I)で示されるトリアジン系紫外線吸収剤のみからなる紫外線吸収剤を0.5〜0.8重量%の割合で含有することが好ましい。
【0011】
本発明の偏光板における前記プロピレン系樹脂フィルムは、前記式(I)で示されるトリアジン系紫外線吸収剤を0.3〜0.9重量%およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を0.1〜0.7重量%の割合で含有し、波長310〜350nmの間にある光の透過率が1%以下であることも好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プロピレン系樹脂フィルムからの高温環境下または高温高湿環境下でのブリードアウトがなく、そのフィルムは紫外線カット性能に優れており、また、使用環境による偏光フィルムへの影響が少ない偏光板が提供される。かかる本発明の偏光板を適用した液晶表示装置は、耐久性に優れるとともに、表示性能の安定性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(偏光板)
本発明の偏光板は、プロピレン系樹脂フィルムからなる透明保護フィルムと、ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している偏光フィルムと、二軸性位相差フィルムがこの順で積層されている。二軸性位相差フィルムの外側には通常、さらに粘着剤層が設けられる。
【0014】
(プロピレン系樹脂フィルム)
本発明の偏光板において透明保護フィルムとして用いられるプロピレン系樹脂フィルムは、プロピレンからなる構成単位を90重量%以上含有するプロピレン系樹脂をフィルム状に成形することによって得られる。
【0015】
プロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体であってもよいし、プロピレンとこれに共重合可能な他のモノマーとの共重合体であってもよい。また、これらを併用してもよい。プロピレンに共重合可能な他のモノマーとしては、たとえば、エチレン、α−オレフィンを挙げることができる。α−オレフィンは、炭素数4以上であり、好ましくは、炭素数4〜12のα−オレフィンである。炭素数4〜12のα−オレフィンの具体例を挙げれば、たとえば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセンなどの直鎖状モノオレフィン類;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテンなどの分岐状モノオレフィン類;ビニルシクロヘキサンなどである。プロピレンとこれに共重合可能な他のモノマーとの共重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0016】
プロピレン系樹脂が前記共重合体からなる場合、その共重合体の具体例としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、およびプロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体などプロピレンと前記エチレン、及び炭素数4〜12のα−オレフィンからなる群より選ばれる1種または2種以上のモノマーとの二元ないし三元の共重合体などが挙げられる。
【0017】
プロピレン系樹脂が前記共重合体からなる場合には、プロピレン由来の構成単位は、耐熱性などの特性により選択することができる。高い耐熱性が必要な場合、プロピレン由来の構成単位を多く含むほうが好ましく、具体的には96重量%以上である。なお、共重合体中の当該他のモノマー由来の構成単位の含有率は、「高分子分析ハンドブック」(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法に従い、赤外線(IR)スペクトル測定を行なうことにより求めることができる。
【0018】
また前記プロピレン系単独重合体、及びプロピレン系共重合体の立体規則性はアイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックでも良いが、フィルムに成形した後の剛性や透明性のバランスに優れるという観点では、アイソタクチック性の高いプロピレン系重合体が好ましい。
【0019】
本発明において、プロピレン系樹脂は、公知の重合用触媒を用いて重合された重合体または共重合体であってよく、重合用触媒としては、たとえば、次のようなものを挙げることができる。
【0020】
(A)マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分からなるTi−Mg系触媒、
(B)マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて電子供与性化合物などの第三成分とを組み合わせた触媒系、
(C)メタロセン系触媒など。
【0021】
前記(A)の固体触媒成分としては、たとえば、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平7−216017号公報などに記載の触媒系が挙げられる。また、前記(B)の触媒系における有機アルミニウム化合物の好ましい例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドとの混合物、テトラエチルジアルモキサンなどが挙げられ、電子供与性化合物の好ましい例としては、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、tert−ブチルプロピルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランなどが挙げられる。また、前記(C)のメタロセン系触媒としては、たとえば、特許第2587251号公報、特許第2627669号公報、特許第2668732号公報などに記載の触媒系が挙げられる。
【0022】
プロピレン系樹脂は、たとえば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンのような炭化水素化合物に代表される不活性溶剤を用いる溶液重合法、液状のモノマーを溶剤として用いる塊状重合法、気体のモノマーをそのまま重合させる気相重合法などによって製造することができる。これらの方法による重合は、バッチ式で行なってもよいし、連続式で行なってもよい。
【0023】
本発明に用いられるプロピレン系樹脂フィルムは、上記プロピレン系樹脂を溶融押出法によって押出し、フィルム状に成形されるが、この場合、プロピレン系樹脂は、JIS K7210に準拠して、温度230℃、荷重21.18Nで測定されるメルトフローレイト(MFR)が1〜30g/10分の範囲内であることが好ましく、1〜20g/10分の範囲内であることがより好ましく、1.5〜15g/10分の範囲内であることがさらに好ましい。MFRがこの範囲内にあるプロピレン系樹脂を用いることにより、溶融押出によるフィルム成形において、押出機の負荷を低減しつつ、厚みの均質なフィルムを製造しやすくなる。
【0024】
本発明において、偏光フィルムの一方の面に貼合されるプロピレン系樹脂フィルムは、上で説明したとおり、紫外線吸収剤として、少なくとも下記式(I)で示されるトリアジン系紫外線吸収剤を含有し、波長320〜330nmの間にある光の透過率が1%以下とされたものである。
【0025】
【化2】

【0026】
上記トリアジン系紫外線吸収剤の含有量がプロピレン系樹脂フィルム中で1重量%以上になると、高温高湿下でブリードアウトする可能性が出てくるため、その量はプロピレン系樹脂フィルム中で1重量%未満とする。紫外線吸収剤として、前記式(I)で示されるトリアジン系紫外線吸収剤のみを用いる場合は、プロピレン系樹脂中の当該トリアジン系紫外線吸収剤の量を0.5〜0.8重量%の範囲とすることが好ましい。紫外線吸収剤が前記式(I)で示されるトリアジン系紫外線吸収剤のみの場合、その量が0.5重量%に満たないと、紫外線をカットする能力が足りず、波長320〜330nmの間にある光の透過率を1%以下とすることが難しくなる。一方で、その量が0.8重量%を超えると、高温・高湿度条件下などにおいてブリードをおこし、透明性を損なうことがある。この理由から、紫外線吸収剤が前記式(I)で示されるトリアジン系紫外線吸収剤のみである場合の当該トリアジン系紫外線吸収剤の好ましい配合量は、0.5〜0.8重量%である。
【0027】
式(I)において、R1は炭素原子数1〜12のアルキル基であり、炭素原子数が3以上の場合は、直鎖でも分岐していてもよい。かかるアルキル基の例を挙げると、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−アミル、イソアミル、tert−アミル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、tert−オクチル、2−エチルヘキシル、3−エチルヘキシル、n−ノニル、イソノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシルなどがある。
【0028】
また、式(I)において、R2は水素または炭素原子数1〜8のアルキル基であり、炭素原子数が3以上のアルキル基であれば、やはり直鎖でも分岐していてもよい。かかるアルキル基の例を挙げると、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−アミル、イソアミル、tert−アミル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、tert−オクチル、2−エチルヘキシルなどがある。
【0029】
前記式(I)で示されるトリアジン系紫外線吸収剤の好ましい例として、以下のような化合物を挙げることができる。
【0030】
2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン〔式(I)において、R1=オクチル、R2=Hの化合物〕、
2,4,6−トリス(4−デシルオキシ−2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン〔式(I)において、R1=デシル、R2=3−メチルの化合物〕、
2,4,6−トリス(4−ヘキシルオキシ−2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン〔式(I)において、R1=ヘキシル、R2=3−メチルの化合物〕、
2,4,6−トリス〔4−(3−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル〕−1,3,5−トリアジン〔式(I)において、R1=3−エチルヘキシル、R2=Hの化合物〕など。
【0031】
式(I)で示されるトリアジン系紫外線吸収剤に加えて他の紫外線吸収剤を併用し、波長320〜330nmの間にある光の透過率を1%以下とすることもできる。トリアジン系紫外線吸収剤との併用に好ましい紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾール系化合物を挙げることができる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を併用することにより、300nm以下の短波長領域にある紫外線をカットする能力を付与するとともに、配合された紫外線吸収剤のブリードを抑制する効果も付与することができる。この場合の好ましい配合量は、プロピレン系樹脂に対し、式(I)で示されるトリアジン系紫外線吸収剤が0.3〜0.9重量%であり、ベンゾトリアゾール系化合物からなる紫外線吸収剤が0.1〜0.7重量%の範囲である。
【0032】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール骨格、好ましくは2−(2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール骨格を有し、紫外線吸収能を有する化合物である。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の中でも、分子量が大きめのもの、たとえば350以上の分子量を有するものが好ましく、具体的には、下式(II)の構造を有する2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〕、下式(III)の構造を有する2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、下式(IV)の構造を有する2−(3,5−ジ−tert−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、下式(V)の構造を有する2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミディルメチル)フェノール、下式(VI)の構造を有する6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチル−6’−t−ブチル−4’−メチル−2,2’−メチレンビスフェノールなどが挙げられる。
【0033】
【化3】

【0034】
【化4】

【0035】
【化5】

【0036】
【化6】

【0037】
【化7】

【0038】
式(I)で示されるトリアジン系紫外線吸収剤、場合によってはそれに加えて他の紫外線吸収剤、たとえばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤をプロピレン系樹脂に添加し、プロピレン系樹脂フィルムを製造するためには、たとえば、以下のような方法を採用することができる。
【0039】
(1)プロピレン系樹脂100重量部に対して紫外線吸収剤を1〜10重量部含有する樹脂組成物からなるペレット(「紫外線吸収剤マスターバッチペレット」と呼ぶことがある)を予め製造しておき、これとプロピレン系樹脂ペレットとを溶融混合し、紫外線吸収剤が所定量となるようにしてフィルムに製膜する方法、
(2)プロピレン系樹脂に紫外線吸収剤が所定量配合されたプロピレン系樹脂組成物のペレットを製造しておき、そのペレットを溶融混練して、フィルムに製膜する方法、
(3)プロピレン系樹脂に所定量の紫外線吸収剤を配合した状態で溶融混練し、フィルムに製膜する方法。
【0040】
これらの中でも、得られるプロピレン系樹脂フィルムの均一性と製造コストの観点で、上記(1)のように、予め紫外線吸収剤マスターバッチペレットを製造しておき、これを紫外線吸収剤が配合されていないプロピレン系樹脂ペレットと溶融混練する方法が最も好ましい。
【0041】
紫外線吸収剤マスターバッチペレットの作製は、単軸または二軸の押出機を用いて行うことができるが、せん断速度を上げてより均一に紫外線吸収剤をプロピレン系樹脂中に分散させる観点からは、二軸押出機を用いることが好ましい。押出にあたっては、押出機のダイ部分のプロピレン系樹脂の温度が180〜260℃の範囲になるように設定することが好ましい。その温度が260℃を超えると、樹脂の劣化が懸念されることがある。また、その温度が210℃を超える場合は、樹脂の劣化を抑制する観点から、フェノール系やリン系の酸化防止剤添加することが望ましい。フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤は併用することにより、さらに樹脂の劣化を抑制する効果が向上することもあので、一層好ましい。酸化防止剤を配合する場合、その量は、プロピレン系樹脂100重量部に対して1重量部程度までで十分である。
【0042】
プロピレン系樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、たとえば、酸化防止剤、式(I)で示されるトリアジン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、防曇剤、アンチブロッキング剤などを挙げることができる。酸化防止剤としては、たとえば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられ、また、1分子中にたとえば、フェノール系の酸化防止機構とリン系の酸化防止機構とを併せ持つユニットを有する複合型の酸化防止剤も用いることができる。式(I)で示されるトリアジン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤としては、たとえば、2−ヒドロキシベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート系の紫外線吸収剤などが挙げられる。帯電防止剤は、ポリマー型、オリゴマー型、モノマー型のいずれであってもよい。滑剤としては、エルカ酸アミドやオレイン酸アミドなどの高級脂肪酸アミド、ステアリン酸などの高級脂肪酸およびその塩などが挙げられる。アンチブロッキング剤としては、球状あるいはそれに近い形状の微粒子が、無機系、有機系を問わず使用できる。
【0043】
また、プロピレン系樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲で造核剤が添加されていてもよい。造核剤を添加する場合、無機系造核剤、有機系造核剤のいずれであってもよい。無機系造核剤としては、タルク、クレイ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。また、有機系造核剤としては、カルボン酸の金属塩類、芳香族リン酸の金属塩類などの金属塩類、トリスアミド類、ソルビトール類、高密度ポリエチレン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリシクロペンテン、ポリビニルシクロヘキサンなどが挙げられる。これらの中でも有機系造核剤が好ましく、さらに好ましくは上述したカルボン酸金属塩類、あるいは、トリスアミド類、高密度ポリエチレンである。また、プロピレン系樹脂に対する造核剤の添加量は0.01〜3重量%が好ましく、0.05〜1.5重量%であればさらに好ましい。なお、上述した添加物は、複数種が併用されてもよい。
【0044】
本発明に用いられるプロピレン系樹脂フィルムは、溶融押出法によりフィルム状に成形されることが好ましいが、この溶融押出法は、パウダー形状、あるいはペレット形状のプロピレン系樹脂原料を180〜300℃程度に加熱した押出機に供給し、押出機のスクリューにより溶融混練し、Tダイのスリットよりシート状に溶融押出された後、種々の手段で冷却ロールに接触させ、冷却することでフィルムを製造する方法である。
【0045】
押出される溶融シート状のプロピレン系樹脂の温度は、180〜300℃程度である。このときの溶融シート状の温度が180℃を下回ると、延展性が十分でなく、得られるフィルムの厚みが不均一になり、位相差ムラのあるフィルムとなる可能性がある。また、その温度が300℃を超えると、樹脂の劣化や分解が起こりやすく、シート中に気泡が生じたり、炭化物が含まれたりすることがある。
【0046】
押出機は、単軸押出機であっても2軸押出機であってもよい。たとえば、単軸押出機を用いる場合は、スクリューの長さLと直径Dの比であるL/Dが24〜36程度、樹脂供給部におけるねじ溝の空間容積V1と樹脂計量部におけるねじ溝の空間容積V2との比(V1/V2)である圧縮比が1.5〜4程度であって、フルフライトタイプ、バリアタイプ、さらにマドック型の混練部分を有するタイプなどのスクリューを用いることができる。プロピレン系樹脂の劣化や分解を抑制し、均一に溶融混練するという観点からは、L/Dが28〜36で、圧縮比V1/V2が2〜3であるスクリューを用いることが好ましい。また、プロピレン系樹脂の劣化や分解を抑制するため、窒素パージするなどして押出機内の酸素を追い出すことが好ましい。さらに、押出機の先端に直径1〜5mmφのオリフィスを設け、押出機先端部分の樹脂圧力を高めることも好ましい。オリフィスの設置により押出機先端部分の樹脂圧力を高めることは、当該先端部分での背圧を高めることを意味しており、これにより溶融混練の均一性を高め押出の安定性を向上できる場合がある。用いるオリフィスの直径は、より好ましくは2〜4mmφである。
【0047】
押出に使用されるTダイは、流路がコートハンガー状であり、Tダイスリット部の幅方向において、溶融プロピレン系樹脂の流速、圧力などがなるべく均一でバランスするように設計されたものを用いることが好ましい。また、樹脂の流路表面に微小な段差や傷のないものが好ましく、そのリップ部分は、ハードクロムめっきであってもよいが、フッ素系材料やシリコン系材料を含浸したようなフッ素系、シリコン系材料含有めっきなどの溶融プロピレン系樹脂との摩擦係数の小さいめっきや、タングステンカーバイドなど堅い材料で溶射されていたほうが好ましい。さらに、リップ部分は、研磨され、表面粗さで0.1S以下の極力フラットで凹凸の少ない表面を有することが好ましく、さらにリップ先端が0.3mmφ以下に研磨されたシャープなエッジ形状のものが好ましい。上記のようなリップを有するTダイを用いることにより、目ヤニの発生を抑制でき、同時にダイラインを抑制できるので、外観の均一性に優れる樹脂フィルムが得られやすい。
【0048】
なお、プロピレン系樹脂の押出変動を抑制する観点から、押出機とTダイとの間には、アダプターを介してギアポンプを取り付け、圧力を安定させTダイに樹脂を供給することがこのましい。このときの圧力は、変動値として0.1MPa以内であることが好ましい。この変動値を達成するために、ギアポンプは、直動型の方が好ましく、ギア数も2個より3個で樹脂を送るための位相を消すタイプのギアポンプを用いることが最も好ましい。
さらにプロピレン系樹脂中にある異物を取り除くため、リーフディスクフィルターを取り付けることが好ましい。リーフディスクフィルターの枚数と一枚あたりの濾過面積は、溶融プロピレン系樹脂の粘度と押出量(流量)、及び樹脂の耐熱性により任意に選択できる。濾過精度に関しては、本発明に用いるプロピレン系樹脂フィルムの場合は、異物の捕集率が98%以上である異物サイズが10μm以下のフィルターを用いる方がフィルム中の異物量が少なくでき、フィルムとしての品質を向上できるので好ましい。同様の理由で濾過精度は、5μm以下がより好ましく、さらに3μm以下が最も好ましい。また、リーフディスクフィルターの設置位置は、押出機、ギアポンプ、リーフディスクフィルター、Tダイの順に設置する方が、安定した異物除去が可能であるという観点で好ましい。
【0049】
Tダイから押出された溶融シート状のプロピレン系樹脂は、引き続き金属製の冷却ロール(チルロールまたはキャスティングロールともいう)に接触し、冷却ロールに密着することで冷却される。このとき、冷却ロールへの密着方法が、透明性に影響を与えることがある。冷却ロールへの密着は、たとえば、a)溶融シート状のプロピレン系樹脂に静電気を付与し、表面状態が鏡面の冷却ロールに密着させて冷却する方法、b)溶融シート状のプロピレン系樹脂を、表面状態が鏡面の冷却ロールと表面状態が鏡面の弾性変形可能な金属ロール(タッチロールともいう)または金属ベルトとの間で挟圧し、冷却ロールに密着させて冷却する方法、c)溶融シート状のプロピレン系樹脂を冷却ロールに接触させるときに、エアチャンバーから吹き出されるエアによって冷却ロールに密着させて冷却する方法などの公知の方法で実施できる。
【0050】
a)の方式は静電ピニング方式と呼称されることがある方法であり、Tダイから押出された溶融プロピレン系樹脂のフィルム状物の両端部(耳部と呼称することがある)のみ、または、前記フィルム状物の幅方向前面部に、芯状、糸状、あるいはベルト状の電源を設置し、高周波電源を用いて高電圧を溶融プロピレン系樹脂に付与し、静電気を帯電させ、冷却ロールに接触させ、冷却固化する方法である。この方式では、Tダイのリップ部分から、冷却ロールに溶融プロピレン系樹脂が接するまでの部分(エアギャップと呼称される)でのフィルムのばたつきが生じにくく、また、不安定であるエアギャップの長さを短くすることが出来るのでフィルムの均質性を確保しやすいので好ましい方式である。
【0051】
a)の方式で使用される冷却ロールは、冷却ロール表面がフィルム表面に転写される傾向があるので、ロールの表面は、表面粗度で0.5S以下であることが好ましい。またその表面材質は、ハードクロムめっきや、タングステンカーバイドなどの溶射などの導電材料が使用されるが、電気を通さない酸化クロムなどの溶射表面であるほうが好ましい。
【0052】
b)の方式はタッチロール成形と呼称される方式であり、Tダイから押出された溶融プロピレン系樹脂のフィルム状物を冷却ロールと弾性変形可能な金属ロールまたは金属ベルトとの間で挟圧することで冷却ロールに密着させ、フィルムを冷却固化させ、透明性に優れたフィルムを得る方式である。弾性変形可能な金属ロールとは、厚みが5mm以下のロール表面を有し、冷却ロールとの間で溶融プロピレン系樹脂を挟圧した際、樹脂たまり(バンクと呼称されることもある)を作ることなく挟圧する金属ロールであり、金属ベルトとは、厚み1mm以下の金属無端ベルトであって、ゴムロール、金属ロールに支持され、回転し、冷却ロールとの間で、溶融プロピレン系樹脂のフィルム状物を挟圧するものである。この方式の場合、冷却条件によっては、透明性が損なわれる結晶性樹脂を用いる場合などで、成形速度を高速化しやすいという観点で好ましい方式である。
【0053】
b)の方式でともに使用される冷却ロール、および弾性変形可能な金属ロール、または金属ベルトは、それぞれの表面がそのままフィルム表面に転写されるため、ロールの表面は、表面粗度で0.3S以下であることが好ましい。また、強く挟圧されるため、溶融プロピレン系樹脂のフィルム状物が場合によっては、冷却ロール、あるいは、弾性変形可能な金属ロールまたは、金属ベルト表面に密着しすぎてロール離れが悪くなる場合もあるので、これを防止する観点で、ハードクロムめっきの表面のマイクロクラックを埋める封孔処理としてシリコン系材料、フッ素系材料を使用したり、また、酸化クロム、タングステンカーバイドなどの溶射表面、あるいはその封孔処理表面とすることも好ましい。
【0054】
c)の方式は、「エアチャンバー方式」と呼称される方式であり、Tダイより押出した溶融プロピレン系樹脂のフィルム状物を冷却ロールに接触させるときに、当該冷却ロールとは逆側から溶融プロピレン系樹脂のフィルム状物にエアチャンバーによりエアを吹き付け、これにより、冷却ロールに溶融プロピレン系樹脂のフィルム状物を密着させる。エアチャンバーは、市販の適宜のものを特に制限なく用いることができ、吹き付けるエアはたとえば、製造環境空間の空気をブロアなどで高性能エアフィルター(HEPAフィルター:High Efficiency Particulate Air Filter)を介して吸い込み、エアチャンバー内が50〜300Paの加圧された状態となるようにすることが好ましい。エアチャンバー内の圧力がこの範囲にあれば、フィルムにかかるエアの圧力が適度となるので、Tダイのリップから冷却ロールに溶融シート状の樹脂が接触するまでの距離(エアギャップという)において、ばたつきを起こさず、安定した製膜が可能となり、当然、フィルムの厚み精度などの安定性も向上する。この理由から、エアチャンバー内の圧力は、100〜200Paとなるようにすることがさらに好ましい。
【0055】
c)の方式での冷却ロールは、たとえば表面温度を0〜60℃の範囲に調整されることが好ましい。冷却ロールの表面温度が60℃を超えると、溶融シート状のプロピレン系樹脂の冷却固化に時間がかかるため、プロピレン系樹脂中の結晶成分が成長してしまい、得られるフィルムは透明性に劣るものとなることがある。一方、冷却ロールの表面温度が0℃を下回ると、冷却ロールの表面が結露して水滴が付着し、得られるフィルムの外観を悪化させる傾向がある。
【0056】
c)の方式での冷却ロールは、その表面状態がプロピレン系樹脂フィルムに転写される傾向にはあるが、上記a)の方式、あるいはb)の方式ほどではなく、また、鏡面状態の冷却ロールを用いると溶融プロピレン系樹脂のフィルム状物と冷却ロールの間に含むエアの逃げ場がなくなるため、均一な成形が困難になる。そのためc)の方式の場合、冷却ロールは、0.6〜4S程度の表面粗度のものが使用される。フィルム表面の均一性を高める観点では、0.8〜2S程度が好ましい。
【0057】
a)〜c)の方式での冷却ロールの温度は、たとえば表面温度を0〜60℃の範囲に調整されることが好ましい。冷却ロールの表面温度が60℃を超えると、溶融シート状のプロピレン系樹脂の冷却固化に時間がかかるため、プロピレン系樹脂中の結晶成分が成長してしまい、得られるフィルムは透明性に劣るものとなることがある。一方、冷却ロールの表面温度が0℃を下回ると、冷却ロールの表面が結露して水滴が付着し、得られるフィルムの外観を悪化させる傾向がある。
【0058】
プロピレン系樹脂フィルムを製造するときの加工速度は、溶融シート状のプロピレン系樹脂を冷却固化するために必要な時間により決定される。使用する冷却ロールの径が大きくなると、溶融シート状のプロピレン系樹脂がその冷却ロールと接触している距離が長くなるため、より高速での製造が可能となる。具体的には、600mmφの金属製冷却ロールを用いヘイズ値が1.0以下の透明なプロピレン系樹脂フィルムを製造する場合、加工速度は、最大で50m/分程度となる。
【0059】
本発明の偏光板において透明保護フィルムとして用いられるプロピレン系樹脂フィルムは、前記プロピレン系樹脂を製膜することにより得ることができる。かかるプロピレン系樹脂フィルムは、透明性に優れていることが好ましく、具体的には、JIS K7136に従って測定される全ヘイズ値が10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましい。
【0060】
本発明の偏光板におけるプロピレン系樹脂フィルムの厚さは、5〜200μm程度であることが好ましい。より好ましくは、10μm以上であり、また、より好ましくは150μm以下である。
【0061】
本発明の偏光板におけるプロピレン系樹脂フィルムは、本発明の効果を阻害しない範囲でコロナ処理、プラズマ処理などの表面処理を施すこともできる。また、表面に反射防止層、ハードコート層などをコーティングなどの手法で設けても良い。
【0062】
本発明の偏光板におけるプロピレン系樹脂フィルムを溶融押出法で製造する場合、あるいは、上記した添加剤の高濃度マスターバッチペレットを溶融混練し製造する場合などは、単軸、あるいは二軸押出機のホッパーあるいは、ダイ出口付近を窒素シールすることもプロピレン系樹脂を酸化劣化より保護する観点では好ましい。また、それぞれ、溶融押出、溶融混練される材料を押出機に供給する前に酸素濃度1vol%以下の窒素環境下で保管し、材料中に含む酸素分子を窒素分子など不活性な気体に置換することも樹脂の劣化抑制のためには有効であることが多く、本発明において適用することも好ましい。
【0063】
(ノルボルネン系樹脂フィルム)
本発明の偏光板は、上述した偏光フィルムのプロピレン系樹脂フィルムからなる透明保護フィルムが貼合されたのと反対側の面に、二軸性位相差フィルムが貼合されている。このような二軸性位相差フィルムとしては、面内の位相差、厚み方向の位相差がそれぞれ特定範囲内であるノルボルネン系樹脂からなる位相差フィルムが好ましい。本発明の偏光板に用いられるノルボルネン系樹脂フィルムとしては、たとえば、ノルボルネン、多環ノルボルネン系モノマーなどの環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーのユニットを有する熱可塑性の樹脂からなるフィルムである。ノルボルネン系樹脂フィルムは、前記シクロオレフィンの開環重合体や2種以上のシクロオレフィンを用いた開環共重合体の水素添加物であることができる他、シクロオレフィンと環状オレフィンやビニル基を有する芳香族化合物などとの付加共重合体であってもよい。また、極性基が導入されているものも有効である。
【0064】
シクロオレフィンと鎖状オレフィンまたはビニル基を有する芳香族化合物との共重合体を用いる場合、鎖状オレフィンとしては、エチレン、プロピレンなどが挙げられ、またビニル基を有する芳香族化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、核アルキル置換スチレンなどが挙げられる。このような共重合体において、シクロオレフィンからなるモノマーのユニットが50モル%以下(好ましくは15〜50モル%)であってもよい。特に、シクロオレフィンと鎖状オレフィンとビニル基を有する芳香族化合物との三元共重合体とする場合、シクロオレフィンからなるモノマーのユニットは、上述したように比較的少ない量とすることができる。かかる三元共重合体において、鎖状オレフィンからなるモノマーのユニットは、通常5〜80モル%、ビニル基を有する芳香族化合物からなるモノマーのユニットは、通常5〜80モル%である。
【0065】
シクロオレフィン系樹脂は、適宜の市販品、たとえばTopas(Topas Advanced Polymers GmbH製)、アートン(JSR(株)製)、ゼオノア(ZEONOR)(日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(ZEONEX)(日本ゼオン(株)製)、アペル(三井化学(株)製)などを好適に用いることができる。このようなシクロオレフィン系樹脂を製膜してフィルムとする際には、溶剤キャスト法、溶融押出法などの公知の方法が適宜用いられる。また、たとえばエスシーナ(積水化学工業(株)製)、SCA40(積水化学工業(株)製)、ゼオノアフィルム(日本ゼオン(株)製)、アートンフィルム(JSR(株)製)などの予め製膜されたシクロオレフィン系樹脂製のフィルムの市販品を透明保護フィルムとして用いてもよい。
【0066】
ノルボルネン系樹脂フィルムは、少なくとも一方向に延伸されていることで、液晶の光学補償が行なえ、液晶表示装置の視野角拡大に寄与することができる。本発明に用いられるノルボルネン系樹脂フィルムは、延伸フィルムの面内遅相軸方向の屈折率をnx、面内でそれと直交する方向(進相軸方向)の屈折率をny、および厚み方向の屈折率をnz、フィルムの厚みをdとする場合において、以下の式でそれぞれ表わされるフィルムの面内位相差値R0および厚み方向位相差値Rthは、面内位相差値R0が40〜300nm(好ましくは40〜120nm)の範囲内であり、かつ、厚み方向位相差値Rthが80〜300nm(好ましくは100〜250nm)の範囲内である。
【0067】
0=(nx−ny)×d
th=〔(nx+ny)/2−nz〕×d
面内位相差値R0が40nm未満である場合、または300nmを超える場合には、パネルの視野角補償能が低下してしまう。また、厚み方向位相差値Rthが80nm未満である場合、または300nmを超える場合には、やはりパネルの視野角補償能が低下してしまう。なお、上述した面内位相差値R0および厚み方向位相差値Rthは、たとえばKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて測定することができる。
【0068】
上述したような屈折率特性を有するノルボルネン系樹脂フィルムを得るには、延伸倍率と延伸速度とを適切に調整するほか、延伸時の予熱温度、延伸温度、ヒートセット温度、冷却温度などの各種温度、およびそのパターンを適宜選択すればよい。比較的緩い条件で延伸を行なうことにより、このような屈折率特性が得られるが、たとえば延伸倍率は1.05〜1.6倍の範囲とするのが好ましく、さらには1.1〜1.5倍とするのがより好ましい。二軸延伸の場合には、最大延伸方向の延伸倍率が前記範囲となるようにすればよい。
【0069】
本発明に用いられる延伸が施されたノルボルネン系樹脂フィルムは、その厚みについては特に制限されないが、20〜80μmの範囲内であることが好ましく、40〜80μmの範囲内であることがより好ましい。ノルボルネン系樹脂フィルムの厚みが20μm未満である場合には、フィルムの取扱いが難しく、また所定の位相差値が発現し難くなる傾向にあるためであり、一方、ノルボルネン系樹脂フィルムの厚みが80μmを超える場合には、加工性に劣るものとなり、また、透明性が低下したり、得られた偏光板の重量が大きくなったりするなどの虞がある。
【0070】
(接着剤)
本発明の偏光板は、上述した偏光フィルムの両面に接着剤を介して透明保護フィルムとしてポリプロピレン系樹脂フィルム、二軸性位相差フィルムとしてたとえば上述したノルボルネン系樹脂フィルムがそれぞれ貼合される。本発明の偏光板は、偏光フィルムの両面に同種の接着剤を用いてもよく、また、それぞれ異種の接着剤を用いてもよい。接着剤層を薄くする観点から好ましい接着剤として、水系の接着剤、すなわち、接着剤成分を水に溶解させたものまたは水に分散させたものが挙げられる。また、接着強度の観点から好ましい接着剤として、それ自体が光により硬化する光硬化性接着剤が挙げられる。
【0071】
光硬化性接着剤としては、たとえば光硬化性エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤などの混合物が挙げられる。この接着剤と特定の紫外線吸収剤を添加したプロピレン系樹脂フィルムの組み合わせが、接着強度の点で最も好ましい。この光硬化性接着剤は、活性エネルギー線を照射することによって光硬化性接着剤を硬化させる。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する活性エネルギー線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが好ましい。
【0072】
偏光フィルムに上述した透明保護フィルム、二軸性位相差フィルムを貼合する方法としては、通常一般に知られているものでもよく、たとえば、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、カンマコーター法、ドクターブレード法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法などによって偏光フィルムおよび/またはそこに貼合されるフィルムの接着面に接着剤を塗布し、両者を重ね合わせる方法が挙げられる。上記の塗布方法の中で、塗布膜の厚み精度、塗布厚みや設備のサイズなどの観点からは、グラビアコート法、ダイコート法が好ましく、より好ましくは、同様の観点でグラビアコート法である。グラビアコート法とは、塗布量を考慮し、選択されるグラビアロールを用いる塗布法であり、塗布するフィルムの流れ方向に対し、反対方向に回転するグラビアロールを囲う位置にチャンバーを設置し、チャンバー内に液を供給する方式で塗布される方法である。接着剤を塗布した後、偏光フィルムとそれに接合されるフィルムをニップロールなどにより挟んで、貼り合わせる。
【0073】
また、偏光フィルム、透明保護フィルムおよび/または二軸性位相差フィルムの接着剤塗布面には、接着性を上げるため、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を適宜施してもよい。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬する方法が挙げられる。
【0074】
偏光フィルムの両面に、それぞれ接着剤層を介して透明保護フィルム、二軸性位相差フィルムを積層させた後、水系接着剤を用いた場合は、加熱処理を施して乾燥される。加熱処理は、たとえば熱風を吹き付けることにより行われ、その温度は、通常40〜100℃の範囲内であり、好ましくは60〜100℃の範囲内である。また、乾燥時間は通常、20〜1200秒である。
【0075】
一方、光硬化性接着剤を用いた場合、接着剤層の厚みは、通常0.5〜5μmであり、好ましくは1〜4μm、さらに好ましくは1.5〜4μmである。接着剤層の厚みが0.5μm未満である場合には、接着が不十分である虞があり、また、接着剤層の厚みが5μmを超えると、偏光板の外観不良が生じる虞がある。
【0076】
(粘着剤)
本発明の偏光板において、二軸性位相差フィルムの表面には通常、粘着剤層が設けられる。この粘着剤層は、偏光板を液晶表示装置に適用する場合において、液晶セルへの貼合に好適に用いることができる。粘着剤層に用いられる粘着剤としては、従来公知の適宜の粘着剤を特に制限なく用いることができ、たとえばアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。中でも、透明性、粘着力、信頼性、リワーク性などの観点から、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。粘着剤層は、粘着剤を含む溶液をノルボルネン系樹脂フィルム上にダイコータやグラビアコータなどによって塗布し、乾燥させる方法によって設けることができる他、離型処理が施されたプラスチックフィルム(セパレートフィルムと呼ばれる)上に形成された粘着剤層をノルボルネン系樹脂フィルムに転写する方法によっても設けることができる。粘着剤層の厚みは、一般に2〜40μmの範囲内であることが好ましい。
【0077】
(液晶表示装置)
本発明の偏光板は、液晶表示装置に好適に適用することができる。液晶表示装置において、本発明の偏光板は、粘着剤層を介して液晶パネルの背面側に配置される。この際、本発明の偏光板は、その紫外線吸収剤を含有するプロピレン系樹脂フィルムが液晶セルから遠い側となるように、すなわちバックライトに対向するように配置される。かかる液晶表示装置は、本発明の偏光板を用いているため、耐久性に優れるとともに、表示性能の安定性に優れている。液晶表示装置において、上述した特徴以外の部分については、従来公知の液晶表示装置の適宜の構成を採用することができ、液晶表示装置が液晶パネル以外に通常備える構成部材(光拡散板、バックライトなど)を適宜備えることができる。なお、液晶パネルの「背面側」とは、液晶パネルを液晶表示装置に搭載した際のバックライト側を意味し、一方、液晶パネルの「前面側」とは、液晶パネルを液晶表示装置に搭載した際の視認側を意味する。
【実施例】
【0078】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。ヘイズの測定、光透過率の測定、偏光板の耐久評価(ブリード)は、次に示す方法で行なった。
【0079】
[ヘイズの測定]
(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメータHM150用い、JIS K7136に準拠してヘイズを測定した。
【0080】
[光透過率の測定]
(株)島津製作所製の紫外・可視分光光度計UV−2450を用いて、220〜700nmの波長範囲で1nm毎に光の透過率を測定した後、波長320〜330nmの間の各波長における透過率のうち、最も高い値をもって波長320〜330nmの間の光透過率とした。同じく、波長310〜350nmの間の各波長における透過率のうち、最も高い値をもって波長310〜350nmの間の光透過率とし、以下の基準で分類した。これらの値が小さいほど、各波長範囲の光を遮断する、すなわち紫外線遮蔽性能に優れることを意味する。
【0081】
○:光の透過率が1%以下、
△:光の透過率が1%を超え2%未満、
×:光の透過率が2%以上。
【0082】
[偏光板の耐久性評価]
偏光板を40mm×40mmにカットし、粘着剤を介してソーダガラスに貼合し、80℃乾燥状態のオーブンに入れて1500時間保持した後、プロピレン系樹脂フィルムからブリード物が発生するかを確認した。また、温度60℃、相対湿度90%のオーブンに入れて1500時間保持した後、プロピレン系樹脂フィルムからブリード物が発生するかを確認した。ブリード物が発生したかどうかは、(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメータHM150を用いて、試験前後のヘイズを測定し、その変化率で判断した。
【0083】
○:%表示のヘイズの変化量が1ポイント以内、
△:%表示のヘイズの変化量が1ポイントを超えて2ポイント未満、
×:%表示のヘイズの変化量が2ポイント以上。
【0084】
<実施例1>
エチレン含量が0.4%でMFRが9g/10分のプロピレン−エチレン共重合体に、トリアジン系紫外線吸収剤として、2,4,6−トリス(4−ヘキシルオキシ−2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(分子量:700、(株)ADEKAから入手、「トリアジン1」とする)0.3重量%および、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール(分子量:447、BASFジャパン(株)から入手、「ベンゾトリアゾール1」とする)0.7重量%を配合し、275℃に加熱した50mmφの押出機にて溶融混練し、次いで600mm巾のTダイから溶融状態で押出し、20℃に温度調節した冷却ロールで冷却して、厚さ75μmのフィルムを作製した。得られたプロピレン系樹脂フィルムは、ヘイズが1.2%、波長320〜330nmの光の透過率の最大値が0.7%、波長310〜350nmの光の透過率の最大値が0.8%であった。なお、トリアジン1、ベンゾトリアゾール1の化学構造をそれぞれ以下に示す。
【0085】
【化8】

【0086】
【化9】

【0087】
次に、上で作製したプロピレン系樹脂フィルムの片面にコロナ処理を施した後、コロナ処理面に光硬化性エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤とを含む光硬化性接着剤を厚み4μmで塗工した。一方、二軸延伸され、厚さが50μm、面内位相差値R0が55nm、厚み方向位相差値Rthが124nmであるノルボルネン系樹脂フィルムの片面にコロナ処理を施した後、そのコロナ処理面に上と同じ光硬化性接着剤を厚さ4μmで塗工した。次いで、偏光フィルムの一方の面に、上記プロピレン系樹脂フィルムの接着剤層を貼合するとともに、他方の面に上記ノルボルネン系樹脂フィルムの接着剤層を貼合し、100mmφの一対のニップロールで挟圧した。その後、ノルボルネン系樹脂フィルム側から紫外線を照射し、両方の接着剤層を硬化させて偏光板を作製した。こうして得られた偏光板の耐久性を上に示した方法で評価をしたところ、80℃乾燥条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.0ポイント、温度60℃、相対湿度90%の条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.3ポイントであった。
【0088】
<実施例2>
トリアジン1の配合量を0.4重量%、ベンゾトリアゾール1の配合量を0.6重量%とした以外は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂フィルムを作製した。このプロピレン系樹脂フィルムは、ヘイズが1.0%、波長320〜330nmの光の透過率の最大値が0.4%、波長310〜350nmの光の透過率の最大値が0.5%であった。ここで得られたプロピレン系樹脂フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製し、耐久性を評価したところ、80℃乾燥条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.1ポイント、温度60℃、相対湿度90%の条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.4ポイントであった。
【0089】
<実施例3>
トリアジン1の配合量を0.5重量%、ベンゾトリアゾール1の配合量を0.5重量%とした以外は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂フィルムを作製した。このプロピレン系樹脂フィルムは、ヘイズが0.8%、波長320〜330nmの光の透過率の最大値が0.2%、波長310〜350nmの光の透過率の最大値が0.3%であった。ここで得られたプロピレン系樹脂フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製し、耐久性を評価したところ、80℃乾燥条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.1ポイント、温度60℃、相対湿度90%の条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.7ポイントであった。
【0090】
<実施例4>
トリアジン1の配合量を0.6重量%、ベンゾトリアゾール1の配合量を0.4重量%とした以外は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂フィルムを作製した。このプロピレン系樹脂フィルムは、ヘイズが0.6%、波長320〜330nmの光の透過率の最大値が0.1%、波長310〜350nmの光の透過率の最大値が0.2%であった。ここで得られたプロピレン系樹脂フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製し、耐久性を評価したところ、80℃乾燥条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.3ポイント、温度60℃、相対湿度90%の条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.3ポイントであった。
【0091】
<実施例5>
トリアジン1の配合量を0.7重量%、ベンゾトリアゾール1の配合量を0.3重量%とした以外は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂フィルムを作製した。このプロピレン系樹脂フィルムは、ヘイズが0.7%、波長320〜330nmの光の透過率の最大値が0.1%、波長310〜350nmの光の透過率の最大値が0.1%であった。ここで得られたプロピレン系樹脂フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製し、耐久性を評価したところ、80℃乾燥条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.2ポイント、温度60℃、相対湿度90%の条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.3ポイントであった。
【0092】
<実施例6>
トリアジン1の配合量を0.8重量%、ベンゾトリアゾール1の配合量を0.2重量%とした以外は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂フィルムを作製した。このプロピレン系樹脂フィルムは、ヘイズが0.6%、波長320〜330nmの光の透過率の最大値が0.0%、波長310〜350nmの光の透過率の最大値が0.1%であった。ここで得られたプロピレン系樹脂フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製し、耐久性を評価したところ、80℃乾燥条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.4ポイント、温度60℃、相対湿度90%の条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.6ポイントであった。
【0093】
<実施例7>
トリアジン1の配合量を0.9重量%、ベンゾトリアゾール1の配合量を0.1重量%とした以外は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂フィルムを作製した。このプロピレン系樹脂フィルムは、ヘイズが0.6%、波長320〜330nmの光の透過率の最大値が0.0%、波長310〜350nmの光の透過率の最大値が0.1%であった。ここで得られたプロピレン系樹脂フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製し、耐久性を評価したところ、80℃乾燥条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.1ポイント、温度60℃、相対湿度90%の条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.9ポイントであった。
【0094】
<実施例8>
トリアジン1の配合量を0.5重量%とし、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤については配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂フィルムを作製した。このプロピレン系樹脂フィルムは、ヘイズが0.1%、波長320〜330nmの光の透過率の最大値が0.9%、波長310〜350nmの光の透過率の最大値が2.0%であった。ここで得られたプロピレン系樹脂フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製し、耐久性を評価したところ、80℃乾燥条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.0ポイント、温度60℃、相対湿度90%の条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.2ポイントであった。
【0095】
<実施例9>
トリアジン1の配合量を0.6重量%とし、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤については配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂フィルムを作製した。このプロピレン系樹脂フィルムは、ヘイズが0.1%、波長320〜330nmの光の透過率の最大値が0.1%、波長310〜350nmの光の透過率の最大値が0.4%であった。ここで得られたプロピレン系樹脂フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製し、耐久性を評価したところ、80℃乾燥条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.1ポイント、温度60℃、相対湿度90%の条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.4ポイントであった。
【0096】
<比較例1>
トリアジン1の配合量を0.1重量%、ベンゾトリアゾール1の配合量を0.9重量%とした以外は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂フィルムを作製した。このプロピレン系樹脂フィルムは、ヘイズが1.2%、波長320〜330nmの光の透過率の最大値が38.2%、波長310〜350nmの光の透過率の最大値が42.2%であった。ここで得られたプロピレン系樹脂フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製し、耐久性を評価したところ、80℃乾燥条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.1ポイント、温度60℃、相対湿度90%の条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.7ポイントであった。この偏光板では、波長320〜330nmの光の透過率の最大値は38.2%であり、光配向型の液晶セルの配向を乱すため使用することができなかった。
【0097】
<比較例2>
トリアジン1の配合量を0.2重量%、ベンゾトリアゾール1の配合量を0.8重量%とした以外は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂フィルムを作製した。このプロピレン系樹脂フィルムは、ヘイズが1.0%、波長320〜330nmの光の透過率の最大値が1.4%、波長310〜350nmの光の透過率の最大値が1.4%であった。ここで得られたプロピレン系樹脂フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製し、耐久性を評価したところ、80℃乾燥条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.0ポイント、温度60℃、相対湿度90%の条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.3ポイントであった。この偏光板では、波長320〜330nmの光の透過率の最大値は1.4%であり、光配向型の液晶セルの配向を乱すため使用することができなかった。
【0098】
<比較例3>
トリアジン1の配合量を0.35重量%とし、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤については配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂フィルムを作製した。このプロピレン系樹脂フィルムは、ヘイズが0.1%、波長320〜330nmの光の透過率の最大値が5.1%、波長310〜350nmの光の透過率の最大値が0.7%であった。ここで得られたプロピレン系樹脂フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製し、耐久性を評価したところ、80℃乾燥条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.2ポイント、温度60℃、相対湿度90%の条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.4ポイントであった。この偏光板では、波長320〜330nmの光の透過率の最大値は5.1%であり、光配向型の液晶セルの配向を乱すため使用することができなかった。
【0099】
<比較例4>
トリアジン1の配合量を1.00重量%とし、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤については配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂フィルムを作製した。このプロピレン系樹脂フィルムは、ヘイズが0.1%、波長320〜330nmの光の透過率の最大値が0.0%、波長310〜350nmの光の透過率の最大値が0.1%であった。ここで得られたプロピレン系樹脂フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製し、耐久性を評価したところ、80℃乾燥条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.2ポイント、温度60℃、相対湿度90%の条件下1500時間ではヘイズの変化量が2.8ポイントであった。この偏光板では、60℃90%1500時間でブリードが発生するため使用することができない。
【0100】
<比較例5>
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、下記化学構造で示される2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〕(分子量:664、(株)ADEKAから入手、「ベンゾトリアゾール2」とする)を0.30重量%配合し、トリアジン系紫外線吸収剤については配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂フィルムを作製した。このプロピレン系樹脂フィルムは、ヘイズが2.1%、波長320〜330nmの光の透過率の最大値が15.5%、波長310〜350nmの光の透過率の最大値が15.5%であった。ここで得られたプロピレン系樹脂フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製し、耐久性を評価したところ、80℃乾燥条件下1500時間ではヘイズの変化量が1.1ポイント、温度60℃、相対湿度90%の条件下1500時間ではヘイズの変化量が1.1ポイントであった。この偏光板では、波長320〜330nmの光の透過率の最大値は15.5%であり、光配向型の液晶セルの配向を乱すため使用することができなかった。
【0101】
【化10】

【0102】
<比較例6>
ベンゾトリアゾール2の配合量を1.00重量%としたこと以外は比較例5と同様にして、プロピレン系樹脂フィルムを作製した。このプロピレン系樹脂フィルムは、ヘイズが1.1%、波長320〜330nmの光の透過率の最大値が0.5%、波長310〜350nmの光の透過率の最大値が0.5%であった。ここで得られたプロピレン系樹脂フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製し、耐久性を評価したところ、80℃乾燥条件下1500時間ではヘイズの変化量が21.5ポイント、温度60℃、相対湿度90%の条件下1500時間ではヘイズの変化量が13.5ポイントであった。この偏光板では、80℃乾燥条件下1500時間、60℃90%1500時間でブリードが発生するため使用することができなかった。
【0103】
<比較例7>
トリアジン系紫外線吸収剤として、下記化学構造で示される2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(分子量:509、CYTEC INDUSTRIES INC.から入手、「トリアジン2」とする)を1.00重量%配合し、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤については配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂フィルムを作製した。このプロピレン系樹脂フィルムは、ヘイズが1.0%、波長320〜330nmの光の透過率の最大値が1.2%、波長310〜350nmの光の透過率の最大値が1.2%であった。ここで得られたプロピレン系樹脂フィルムを用いる以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製し、耐久性を評価したところ、80℃乾燥条件下1500時間ではヘイズの変化量が0.2ポイント、温度60℃、相対湿度90%の条件下1500時間ではヘイズの変化量が8.0ポイントであった。この偏光板では、60℃90%1500時間でブリードが発生するため使用することができなかった。
【0104】
【化11】

【0105】
実施例1〜9、比較例1〜7の組成および評価結果を表1に示す。
【0106】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系樹脂フィルムからなる透明保護フィルムと、ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している偏光フィルムと、二軸性位相差フィルムとがこの順に積層されており、
前記プロピレン系樹脂フィルムは、少なくとも下式(I):
【化1】

(式中、R1は炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、R2は水素または炭素原子数1〜8のアルキル基を表す)
で示されるトリアジン系紫外線吸収剤を含む紫外線吸収剤を含有し、
前記トリアジン系紫外線吸収剤の含有量が前記プロピレン系樹脂フィルム中に1重量%未満であり、
波長320〜330nmの間にある光の透過率が1%以下である、偏光板。
【請求項2】
前記プロピレン系樹脂フィルムは、前記式(I)で示されるトリアジン系紫外線吸収剤のみからなる紫外線吸収剤を0.5〜0.8重量%の割合で含有する請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記プロピレン系樹脂フィルムは、前記式(I)で示されるトリアジン系紫外線吸収剤を0.3〜0.9重量%およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を0.1〜0.7重量%の割合で含有し、波長310〜350nmの間にある光の透過率が1%以下である請求項1に記載の偏光板。

【公開番号】特開2012−212080(P2012−212080A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78497(P2011−78497)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】