説明

偏光繊維の製造方法、偏光子、光学フィルムおよび画像表示装置

【課題】 偏光子に好適に適用できる、偏光繊維およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 樹脂に二色性材料を含有させる工程と、樹脂を含む溶液を冷却溶媒中に押出して繊維を得る工程と、繊維を延伸する工程と、を含有することを特徴とする偏光繊維の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光繊維の製造方法に関する。また本発明は当該製造方法により得られた偏光繊維、さらには当該偏光繊維を用いた偏光子の製造方法、さらには当該製造方法により得られた偏光子に関する。また本発明は当該偏光子を用いた偏光板、光学フィルムに関する。さらには当該偏光板、光学フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、CRT、PDP等の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイなどに用いられる偏光子としては、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素や二色性染料などで染色し、一軸延伸して形成された吸収二色性偏光子が広く用いられている。また、近年の液晶ディスプレイの表示性能の向上に伴い、偏光子には、ますます高透過率、高偏光度を有する偏光子が求められている。かかる要求に応えるため、高重合度のポリビニルアルコール系PVA材料を、高い延伸倍率で延伸する手法が広く採用されている(特許文献1)。
【0003】
近年、急成長を遂げている液晶テレビなどでは、30インチを超える非常に大きなサイズも珍しくなくなっており、偏光子にも大きなサイズが必要となってきている。大面積の偏光子を得るためには、延伸前のポリビニルアルコール系フィルムも広幅のフィルムであることが要求される。このような大面積の偏光子の製造には、製造設備などが巨大化するため巨額な設備投資が必要となる。また大面積の偏光子は、液晶パネルのガラス基板に貼り合せた後、高温および低温の過酷な使用環境(環境試験:高温と低温の繰り返し)において、温度や湿度による偏光子の寸法変化挙動(収縮挙動など)によって、偏光子にクラックが発生し、著しく表示性能を損なうなどの問題もある。
【0004】
前記クラックは、一般に延伸ポリビニルアルコール系フィルムの延伸方向(MD方向)に平行に発生する。すなわち、高次に延伸されたフィルムにおいて、MD方向とTD方向(幅方向)の熱収縮挙動や線膨張の違いによって、冷熱衝撃などが加えられた時に発生するものと推察されている。
【0005】
一方、二色性の直接染料等を添加したポリビニルアルコールやビニルアルコール・エチレン共重合体よりなる偏光繊維を用いて形成した偏光織布を、透明樹脂で被覆した構造の偏光フィルターが提案されている(特許文献2)。当該偏光フィルターは、偏光機能を発現する構成材料として偏光繊維を用いているため、大面積化が可能であり、またクラックに係わる問題もない。しかし、前記偏光フィルターは、液晶ディスプレイにおける液晶パネルに適用するものではなく、偏光子としての機能を考慮していないため、これを面内で見たときには、偏光繊維の存在分布などにより、見る場所によって、透過光のムラが顕著に視認される。また、偏光繊維とそれ以外の被覆材料等とに屈折率差があるため、その界面で屈折、反射による散乱が起こり透過率、偏光度とも満足できるレベルのものではない。
【特許文献1】特開平8‐190015号公報
【特許文献2】特開平6‐130223号公報
【特許文献3】特開平10‐130946号公報
【特許文献4】特開平10‐170720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、偏光子に好適に適用できる、偏光繊維およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
また本発明は、前記偏光繊維を用いた偏光子およびその製造方法を提供すること、特に、過酷な使用環境下においてもクラックなどによる外観欠点の問題がなく、かつ高透過率、高偏光度を有する偏光子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また本発明は、前記偏光子を用いた偏光板、光学フィルムを提供することを目的とする。さらには前記偏光子、偏光板、光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す偏光子により前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、樹脂に二色性材料を含有させる工程と、樹脂を含む溶液を冷却溶媒中に押出して繊維を得る工程と、繊維を延伸する工程と、を含有することを特徴とする偏光繊維の製造方法、に関する。
【0011】
前記偏光繊維の製造方法において、繊維を形成する樹脂が、透明樹脂であることが好ましい。
【0012】
前記偏光繊維の製造方法において、樹脂に二色性材料を含有させる工程、次いで、樹脂を含む溶液を冷却溶媒中に押出して繊維を得る工程、次いで繊維を延伸する工程を、この順に各工程を施すことが好ましい。
【0013】
前記偏光繊維の製造方法において、繊維を延伸する工程における延伸温度は、180℃未満であることが好ましい。
【0014】
前記偏光繊維の製造方法において、繊維を延伸する工程における延伸倍率は、7〜40倍であることが好ましい。
【0015】
また本発明は、前記製造方法により得られた、二色性材料を長手方向に配向した状態で含有している偏光繊維、に関する。
【0016】
また本発明は、前記製造方法により、二色性材料を長手方向に配向した状態で含有している偏光繊維を製造した後、得られた偏光繊維を、当該繊維の長手方向が略平行に配置し、シート化することを特徴とする偏光子の製造方法、に関する。
【0017】
また本発明は、前記製造方法により得られた、偏光繊維(1)が、当該繊維の長手方向が略平行に配置され、シート化されていることを特徴とする偏光子、に関する。
【0018】
前記偏光子は、偏光繊維(1)に加えて、二色性材料を含有しない透明樹脂により形成されており、かつ複屈折(△n)が0.03以上の複屈折繊維(2)を含有し、
偏光繊維(1)と複屈折繊維(2)はそれら繊維の長手方向が略平行に配置されているものとすることができる。
【0019】
前記偏光子において、複屈折繊維(2)は、円形または楕円形の断面を有し、かつ直径が0.3〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0020】
前記偏光子において、偏光繊維(1)および複屈折繊維(2)は、体積比で、10:90〜90:10であることが好ましい。
【0021】
前記偏光子は、偏光繊維(1)、または偏光繊維(1)および複屈折繊維(2)は、緯糸を用いて織布の状態としているものとすることができる。
【0022】
前記偏光子は、偏光繊維(1)、または偏光繊維(1)および複屈折繊維(2)は、等方性材料(3)により空隙なく包埋され、シート化されているものとすることができる。
【0023】
前記偏光子において、偏光繊維(1)の断面方向の屈折率:no1は、複屈折繊維(2)の断面方向の屈折率:no2および/または等方性材料(3)の屈折率:no3との屈折率差が0.02以下であることが好ましい。
【0024】
前記偏光子において、緯糸の屈折率は、偏光繊維(1)の断面方向の屈折率:no1との屈折率差が0.02以下であることが好ましい。
【0025】
また本発明は、前記偏光子の少なくとも片面に、透明保護層を設けた偏光板、に関する。
【0026】
また本発明は、前記偏光子または前記偏光板が、少なくとも1枚積層されていることを特徴とする光学フィルム、に関する。
【0027】
また本発明は、前記偏光子、前記偏光板または前記光学フィルムが用いられていることを特徴とする画像表示装置、に関する。
【発明の効果】
【0028】
上記本発明の偏光繊維の製造方法では、いわゆるゲル紡糸により偏光繊維を作成しているため、高強度の偏光繊維が得られる。かかる偏光繊維(1)は、過酷な使用環境下においてもクラックなどによる外観欠点の問題がなく、かつ高透過率、高偏光度を有する偏光子を得るうえで好適である。
【0029】
また上記本発明では、前記製造方法により得られた偏光繊維(1)を配列することにより偏光子を作製しているが、偏光繊維(1)とともに、複屈折繊維(2)を、それらの長手方向が略平行になるように配置することができる。さらには、これらを透明な等方性材料(3)によりシート化することができる。このような偏光子において、偏光繊維(1)は、二色性材料が長手方向に配向した状態にあるため、長手方向と平行な直線偏光は偏光繊維(1)によって吸収される。また、偏光子への進入時に、偏光繊維(1)に吸収されなかった直線偏光も、複屈折繊維(2)およびその周囲の用いた透明な等方性材料(3)との屈折率の不整合により、散乱(屈折または反射)され、進行方向を曲げられる。このように、偏光子への進入時に、偏光繊維(1)に吸収されなかった直線偏光は偏光子中での光路長が増大し、再び偏光繊維(1)に当たる確率が高くなり、その結果、長手方向では直線偏光が効率よく吸収される。かかる原理により、高透過率、高偏光度の偏光子が得られる。
【0030】
前記のような、本発明の偏光子では、長手方向(吸収方向)の直線偏光は複雑に散乱されるため、偏光子を直交状態(直交ニコル状態)で面内の透過率ムラを確認した場合には、透過率ムラは目視では視認しづらく、結局は均一に見えるという利点がある。
【0031】
前記本発明の偏光子では、偏光繊維(1)および複屈折繊維(2)の長手方向では、直線偏光が効率よく吸収されるが、一方、前記繊維の長手方向に対して直行する方向(断面方向)では、直線偏光は透過する。本発明の偏光子において、全ての形成材料の断面方向における屈折率差を小さく制御することにより、断面方向での屈折率を整合させた場合には、この方向においては、直線偏光はほとんど散乱、吸収されることなく偏光子を透過する。これにより、偏光子の高透過率、高偏光度をより向上させることができる。
【0032】
また、本発明の偏光子のように、繊維を束ね合わせたものでは、フィルム形状の偏光子において、温度や湿度による偏光子の寸法変化挙動に起因して生じるクラック現象は生じにくい。また、偏光繊維(1)または、偏光繊維(1)および複屈折繊維(2)は、等方性材料(3)によって、空隙なく包埋してシート化した場合には、耐久性がよく、過酷な使用環境下においてもクラックなどによる外観欠点の問題を抑えることができる。
【0033】
また、かかる構造の偏光子は、大規模な設備を用いなくても製造可能であり、大面積化した偏光子も比較的に容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に本発明の偏光子を、図面を参照しながら説明する。図1(A)および図1(B)は、本発明の偏光子Aの斜視図であり、偏光繊維(1)がそれら繊維の長手方向が略平行に配置されている。図1(B)は、偏光繊維(1)に加えて、複屈折繊維(2)が、それら繊維の長手方向が略平行に配置されている場合である。また、図1(A)では偏光繊維(1)が、図1(B)では偏光繊維(1)と複屈折繊維(2)が、透明な等方性材料(3)により空隙なく包埋され、シート化されている場合の例である。
【0035】
なお、図1(A)では偏光繊維(1)が、図1(B)では偏光繊維(1)に加えて複屈折繊維(2)が2層の繊維層で交互に配置されているが、これら繊維層数は特に制限されない。通常は、複数層でその数に制限はなく、また配置はランダムであってもよい。
【0036】
図2は、偏光繊維(1)の斜視図であり、透明樹脂(1a)中に、二色性材料(1b)を有する。二色性材料(1b)は、長手方向に配向した状態で含有されている。なお、偏光繊維(1)の断面方向は、偏光繊維(1)の長手方向に対する垂直方向であり、その断面における方向はいずれの方向でもよい。
【0037】
図1(A)および図1(B)においては、図示していないが、偏光繊維(1)、または偏光繊維(1)および複屈折繊維(2)は、緯糸を用いて織布の状態とすることができる。緯糸は、繊維の長手方向に対する直交方向(図1の断面方向)に、常法に従って設けることができる。前記繊維を、緯糸を用いて織布の状態とすることで、偏光子の形状安定性を向上することができ、また、これはクラックを抑制する上でも好ましい。
【0038】
図3は、図1(B)に例示した本発明の偏光子Aの断面と偏光性能および均一性向上のメカニズムを模式的に示す図である。長手方向と平行な直線偏光のなかで、偏光子Aにおいて、まず偏光繊維(1)に進入した直線偏光(P1)は、偏光繊維(1)に吸収される。偏光繊維(1)を透過した場合も複屈折繊維(2)や等方性材料(3)により散乱されて、結局は、偏光繊維(1)に吸収される。また、まず複屈折繊維(2)に進入した直線偏光(P1)は、複屈折繊維(2)や等方性材料(3)により散乱された後、偏光繊維(1)に吸収される。偏光繊維(1)を透過した場合も結局は、偏光繊維(1)に吸収される。一方、直線偏光(P1)に直交する直線偏光(P2)は、偏光子Aにおいて、散乱、吸収を殆ど受けることなく透過する。
【0039】
偏光繊維(1)の製造方法は、樹脂に二色性材料を含有させる工程と、樹脂を含む溶液を冷却溶媒中に押出して繊維を得る工程と、繊維を延伸する工程と、を含有する。
【0040】
まず、樹脂に二色性材料を含有させる工程について説明する。偏光繊維(1)を形成する樹脂は、透明樹脂であることが好ましい。二色性材料としては、一般に、吸収二色性偏光子に用いられるものを用いることができる。
【0041】
透明樹脂は、可視光領域において透光性を有し、繊維化が可能で、二色性材料を分散するものを特に制限なく使用できる。透明樹脂としては、水溶性樹脂があげられる。たとえば、従来より偏光子に用いられているポリビニルアルコールまたはその誘導体があげられる。ポリビニルアルコールの誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等があげられる他、エチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸そのアルキルエステル、アクリルアミド等で変性したものがあげられる。また透明樹脂1としては、例えばポリビニルピロリドン系樹脂、アミロース系樹脂等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール、エチレンとビニルアルコールとの共重合体が好適である。
【0042】
また透明樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系樹脂等があげられる。さらには、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂、イミド系樹脂、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ビニルブチラール系樹脂、アリレート系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂等があげられる。これらは1種または2種以上を組み合わせることができる。
【0043】
二色性材料としては、ヨウ素系吸光体、吸収二色性染料や顔料があげられる。二色性材料は、1種類または2種以上が用いられる。
【0044】
ヨウ素系吸光体は、ヨウ素からなる、可視光を吸収する種のことを意味し、一般には、透明な水溶性樹脂(特にポリビニルアルコール系樹脂)とポリヨウ素イオン(I3-,I5-等)との相互作用によって生じると考えられている。ヨウ素系吸光体はヨウ素錯体ともいわれる。ポリヨウ素イオンは、ヨウ素とヨウ化物イオンから生成させると考えられている。ヨウ素系吸収体は、少なくとも400〜700nmの波長帯域に吸収領域を有するものが好適に用いられる。
【0045】
吸収二色性染料としては、染料系偏光子に用いられているものを使用できる。たとえば、ベンジジン系、ジアニリジン系、トリジン系、スチルベン系等の直線染料や、アゾ系、ペリレン系、アントラキノン系等の分散染料があげられる。直線染料は親水性樹脂材料に対して用いるのが、分散染料は、疎水性樹脂材料に対して用いるのが好適である。
【0046】
また、吸収二色性染料としては、例えば、特開平5−296281号公報、特開平5−295282号公報、特開平5−311086号公報、特開平6−122830号公報、特開平6−128498号公報、特開平7−3172号公報、特開平8−67824号公報、特開平8−73762号公報、特開平8−127727号公報などに示されている二色性染料は限定なく使用できる。また、特開平5−53014号公報、特開平5−53015号公報、特開平6−122831号公報、特開平6−265723号公報、特開平6−337312号公報、特開平7−159615号公報、特開平7−318728号公報、特開平7−325215号公報、特開平7−325220号公報、特開平8−225750号公報、特開平8−291259号公報、特開平8−302219号公報、特開平9−73015号公報、特開平9−132726号公報、特開平9−302249号公報、特開平9−302250号公報、特開平10−259311号公報、特開2000−319633号公報、特開2000−327936号公報、特開2001−2631号公報、特開2001−4833号公報、特開2001−108828号公報、特開2001−240762号公報、特開2002−105348号公報、特開2002−155218号公報、特開2002−179937号公報、特開2002−220544号公報、特開2002−275381号公報、特開2002−357719号公報、特開2003−64276号公報、特開平2−13903号公報、特開平2−89008号公報、特開平3−89203号公報、特開2003−313451号公報、特開2003−327858号公報などに示される二色性染料や、特開平9−230142号公報、特開平11−218610号公報、特開平11−218611号公報、特開2001−27708号公報、特開2001−33627号公報、特開2001−56412号公報、特開2002−296417号公報、特開平1−313568号公報、特開平3−12606号公報、特開2003−215338号公報、WO00/37973号パンフレットなどに示される二色性染料も好適に使用できる。無論、本発明において吸収二色性染料はこれらに限定される訳ではなく、透明樹脂を染色できるものや、分散させて二色性を発現できるものであれば、いずれも好適に使用できる。
【0047】
偏光繊維(1)を形成する前記樹脂と二色性材料の組み合わせは、ゲル紡糸によって繊維化が可能な組み合わせが用いられる。偏光繊維(1)においては、二色性材料としては直接染料を用いるのが好適であり、特に、二色性の直接染料と透明樹脂としてポリビニルアルコールまたはエチレンとビニルアルコールとの共重合体を用いるのが好適である。
【0048】
透明樹脂に対する二色性材料の割合は特に制限されないが、二色性材料としてヨウ素を用いる場合、得られる偏光子中におけるヨウ素の割合は、透明樹脂100重量部に対して、0.05〜50重量部程度、さらには0.1〜10重量部となるように制御するのが好ましい。二色性材料として吸収二色性染料を用いる場合、得られる偏光子中における吸収二色性染料の割合は、透明樹脂100重量部に対して、0.01〜100重量部程度、さらには0.05〜50重量部となるように制御するのが好ましい。前記二色性材料の割合は、ヨウ素、吸収二色性染料のいずれの場合にも、透明樹脂100重量部に対して、さらには、0.05〜1.5重量部とするのが好ましく、さらには、0.2〜1重量部とするのが好ましい。二色性材料が少なすぎると、偏光度が低下し、多くなりすぎると透過率が低下して、特性が悪くなる傾向がある。また、二色性材料を多く添加することで、強伸度も低下しやすくなる。
【0049】
なお、偏光繊維(1)には、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、難燃剤、酸化防止剤、可塑剤、離型剤、滑剤、着色剤等の各種の添加剤を本発明の目的を阻害しない範囲で含有させることができる。これらは、前記樹脂とともに用いられ繊維中に含有される。
【0050】
二色性材料を樹脂中に含有させる方法は、特に制限されず、例えば、粉末やペレットの状態で樹脂に二色性材料を予め混合または含浸しておき、これを、次いで説明する繊維化工程に供することができる。また、次いで説明する繊維化工程により繊維化した樹脂に二色性材料を含浸させる方法を採用できる。
【0051】
次いで、樹脂を含む溶液を冷却溶媒中に押出して繊維を得る工程について説明する。このようなゲル紡糸による繊維化については、特公平6−57886号公報、特公平7−59763号公報、特公平7−6085号公報、特公平7−6087号公報などに詳しい。
【0052】
ゲル紡糸を行なう際に、樹脂を溶解するための溶剤は、用いる樹脂を容易に溶解できるものであれば特に制限はない。例えば、樹脂としてポリビニルアルコールを用いる場合は有機溶媒のみよりも水と有機溶媒を適当な割合で混合した溶媒を用いた方がゲル構造の観点から好ましい。また、用いる有機溶媒は水と親和性が良いものが好ましく、さらに任意の割合で水とよく混ざるものが好ましい。例えば、アセトン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、アミノエタノール、フェノール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ジメチルスルホキシドなどがあげられる。これらの有機溶媒の中でも特に、ポリビニルアルコールに対する溶解度や水との混合割合と凝固点降下の関係などから、ジメチルスルホキシドが好ましい。これらの有機溶媒と水との混合割合は任意に選択できるが、水と有機溶媒との割合がゲル形成に密接に関係しているので、通常、水:有機溶媒の比は90:10〜10:90(重量比)、好ましくは70:30〜10:90である。なお、溶剤としてジメチルスルホキシド等の有機溶媒を100%用いたポリビニルアルコール溶液からもゲル紡糸は可能であるが、紡糸後の延伸を高倍率で行なうに当たっては、溶剤として有機溶媒と水との混合物を用いるのが好ましい。
【0053】
前記樹脂を前記溶剤に溶解した溶液の濃度は、用いる樹脂の分子量や紡糸温度、ゲル紡糸により得られた繊維の延伸倍率に応じて適宜に決定されるが、通常は、2〜50重量%程度の範囲にするのが好ましく、3〜10重量%の範囲にするのがより好ましい。
【0054】
前記溶液は、冷却溶媒を含有する凝固浴中に押出して繊維化する。当該冷却溶媒は、樹脂のゲル化と繊維から樹脂を溶解している溶剤の抽出を行なうことができるものであれば特に制限はない。冷却溶媒としては、繊維を形成する樹脂を非溶剤化、すなわち、前記樹脂を溶解している溶剤を移行させることができる溶媒を主成分にするか、または主たる成分の1つとして用いる。例えば、樹脂としてポリビニルアルコールを用い、溶剤としてジメチルスルホキシドを用いた場合には、冷却溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトン等が好適に用いられる。
【0055】
樹脂を含む溶液を、冷却溶媒中に押出して紡糸する際の、凝固浴中の溶媒温度は特に制限されないが、ゲル形成のしやすさから低くければ低いほどよい。通常は、0℃以下、特に−20℃以下の温度にすることが好ましい。
【0056】
次いで、ゲル紡糸により得られた繊維を延伸する工程を施す。これにより、偏光繊維(1)が得られる。得られた偏光繊維は、二色性材料を長手方向に配向した状態で含有している。
【0057】
延伸方法は、特に制限されず、液体中または十分な加湿雰囲気下で延伸する湿式法や、気体中で延伸する乾式法を採用できるが、乾式法を用いるのが作業性のしやすさから好ましい。湿式延伸を採用する場合には、水系浴中に、適宜に添加剤(ホウ酸等のホウ素化合物,二色性材料としてヨウ素を用いる場合にはアルカリ金属のヨウ化物等)を含有させることができる。乾式法で延伸する際の周辺温度は、特に制限されないが、30〜200℃である。樹脂としてポリビニルアルコールを用いる場合には、延伸温度が高すぎると樹脂の分解による着色が生じるとともに、樹脂が柔らかくなりすぎるために、二色性材料が配向しにくくなる。かかる点から、延伸温度は、180℃未満、170℃以下、155℃以下、さらには135℃以下であるのが好ましい。また延伸温度が低すぎると延伸時に繊維が切れやすくなるため、延伸温度は、樹脂のガラス転移点(Tg)以上の温度とすることが好ましい。具体的には、50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。
【0058】
延伸倍率は特に制限されないが、分子鎖の配向のしやすさからすれば、延伸倍率は、高ければ高いほど好ましい。一方、延伸倍率が高すぎると延伸切れが生じやすくなる。用いる樹脂によって、延伸倍率は適宜に調整されるが、かかる観点から、延伸倍率は、通常、8〜40倍程度、さらには15〜35倍、さらには20〜30倍にするのが好ましい。例えば、樹脂として、ポリビニルアルコールを用いる場合には延伸倍率に前記延伸倍率は好適である。
【0059】
偏光繊維(1)の断面形状は、特に制限はないが、円形または楕円形の断面を有することが好ましい。繊維断面に頂角が存在する場合や不定形の場合には、繊維作成時に破断しやすいこと、また散乱が起こりやすい場合があること、等方性樹脂(3)を用いる場合には、繊維間に等方性樹脂(3)を充填する際に空気を抱きこみやすいこ場合がある等の問題がある。特に、楕円形であることが好ましい。楕円形の扁平率(%)は任意であるが、作りやすさの観点から100%に近いほうが好ましい。具体的には、扁平率5〜100%、さらには10〜100%であるのが好ましい。扁平率(%)は、断面の(短径/長径)×100、である。
【0060】
また偏光繊維(1)の断面の直径は0.3〜100μmの範囲であることが好ましい。さらに好ましくは5〜50μmである。直径(最大直径)が小さすぎると、取り扱い時に破断しやすい。また、等方性樹脂(3)を用いる場合には、繊維間に等方性樹脂(3)を充填する際に空気を抱きこみやすい問題がある。逆に直径が大きい場合には、偏光子の全体厚みに対する偏光繊維(1)の占める割合が大きくなりすぎる為、有効な多重散乱がおこらない場合や、偏光繊維(1)の存在分布がまばらになりやすく、透過率のムラが発生してしまう可能性もある。
【0061】
複屈折繊維(2)は、二色性材料を含有しない透明樹脂により形成されている。複屈折繊維(2)に用いる透明樹脂は、可視光領域において透光性を有し、溶融紡糸や溶液紡糸、ゲル紡糸等によって繊維化が可能であり、複屈折性を呈することが可能な、任意の樹脂材料が用いられる。かかる透明樹脂としては、偏光繊維(1)に例示したものと同様のものを例示できる。なお、複屈折繊維(2)に用いる透明樹脂は、偏光繊維(1)と同じでもよく、または異なっていてもよいが、断面方向での屈折率の制御しやすい点で、複屈折繊維(2)に用いる透明樹脂は、偏光繊維(1)と同種のものを用いるのが好ましい。
【0062】
また複屈折繊維(2)は、複屈折(△n)が0.03以上である。複屈折(△n)は、△n(=ne−no)、ne:異常光屈折率(長手方向の屈折率)、no:常光屈折率(断面方向の屈折率)である。複屈折(△n)が0.03未満では、散乱効果が十分ではない。複屈折(△n)は、0.03以上、さらには0.05以上であるのが好ましい。なお、複屈折(△n)が高くなると波長依存性が大きくなり、可使光の全波長域で等方性樹脂(3)との屈折率の調整が困難になる場合があるため、複屈折(△n)は、0.4以下とするのが好ましい。
【0063】
複屈折繊維(2)の製法は特に制限されないが、二色性材料を含有させないこと以外は、偏光繊維(1)と同様の方法で、溶融紡糸や溶液紡糸、ゲル紡糸等によって繊維化した後、延伸する方法があげられる。延伸方法は、空気中での乾式延伸、水系浴中での湿式延伸のいずれでもよい。湿式延伸を採用する場合には、水系浴中に、適宜に添加剤(ホウ酸等のホウ素化合物)を含有させることができる。延伸倍率は特に制限されないが、通常、2〜50倍程度、さらには3〜30倍にするのが好ましい。
【0064】
複屈折繊維(2)の断面形状は、特に制限はないが、円形または楕円形の断面を有することが好ましい。繊維断面に頂角が存在する場合や不定形の場合には、繊維作成時に破断しやすいこと、また好ましくない散乱が起こりやすい場合があること、繊維間に等方性樹脂(3)を充填する際に空気を抱きこみやすいこ場合がある等の問題がある。かかる点から、特に、楕円形であることが好ましい。楕円形の扁平率(%)は任意であるが、作りやすさの観点から100%に近いほうが好ましい。具体的には、扁平率5〜100%、さらには10〜100%であるのが好ましい。
【0065】
また複屈折繊維(2)の断面の直径は0.3〜100μmの範囲であることが好ましい。さらに好ましくは5〜50μmである。断面直径が光の波長よりの短いと散乱が起こらないため好ましくない。直径(最大直径)が小さすぎると、取り扱い時に破断しやすく、また等方性材料(3)を用いる場合には、繊維間に等方性材料(3)を充填する際に空気を抱きこみやすい問題がある。逆に直径が大きい場合には、偏光子の全体厚みに対すると複屈折繊維(2)の占める割合が大きくなりすぎる為、有効な多重散乱がおこらない場合や、偏光繊維(1)の存在分布がまばらになりやすく、透過率のムラが発生してしまう可能性もある。
【0066】
本発明における偏光繊維(1)または、偏光繊維(1)と複屈折繊維(2)を包埋するのに用いる透明な等方性材料(3)としては、偏光繊維(1)または、偏光繊維(1)と複屈折繊維(2)を包理後、適切な処理によってシート状の形態を保持できるものであれば特に制限はない。
【0067】
等方性材料(3)としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ノルボルエン系ポリマー、アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、セルロース系ポリマー、またこれらポリマーの2種又は3種以上を混合したポリマーなどがあげられる。
【0068】
また、等方性材料(3)としては、透明なアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴムなどの適宜なポリマーを用いてなる透明粘着剤やエポキシ系、架橋性アクリル系、ウレタン系、シリコーン系などの接着剤があげられる。等方性材料(3)が、架橋性のモノマーやオリゴマーより形成されるものである場合には、適宜に、電子線や紫外線などのエネルギー線照射や、熱などにより架橋することができる。
【0069】
本発明の偏光子は、上記偏光繊維(1)または、偏光繊維(1)と複屈折繊維(2)をそれら繊維の長手方向が略平行に配置したものである。また、偏光繊維(1)または、偏光繊維(1)と複屈折繊維(2)を透明な等方性材料(3)により空隙なく包埋し、シート化することができる。
【0070】
かかる偏光子において、各材料は、偏光繊維(1)の断面方向の屈折率:no1は、複屈折繊維(2)の断面方向の屈折率:no2および/または等方性材料(3)の屈折率:no3との屈折率差が0.02以下になるように選択するのが好ましい。
【0071】
前記屈折率差が0.02を超えると、それぞれの材料の界面の断面方向において透過する直線偏光が散乱(屈折、反射)するようになる。かかる点から、前記屈折率差は小さいほど好ましい。原理的には完全に一致したとき(屈折率差0)が最も効果が期待できるが、材料の組み合わせによって可能な限り小さくなるような材料を選定することが望ましい。
【0072】
偏光繊維(1)の偏光子に対する割合は、求める光学特性に応じて適宜に調整することができるが、偏光度を高めるためには、その割合が多いほど好ましい。偏光繊維(1)とともに複屈折繊維(2)を用いる場合、偏光繊維(1)と複屈折繊維(2)は任意の比率で用いうる。ただし、偏光性能の観点から、偏光繊維(1)と平行な直線偏光が十分にこの偏光子によって吸収しうるだけの偏光繊維(1)を配置することが好ましい。包理後の全体厚みにもよるが、偏光繊維(1)および複屈折繊維(2)は、体積比で、10:90〜90:10であることが望ましい。偏光繊維(1)が少なすぎると、繊維の長手方向での直線偏光の吸収量が十分でなく、偏光性能が不十分になるおそれがある。逆に偏光繊維(1)の比率が多すぎると十分な散乱の発現が十分ではない場合がある。
【0073】
等方性材料(3)の使用量は、偏光繊維(1)または、偏光繊維(1)と複屈折繊維(2)の合計100重量部に対して、10〜10000重量部程度、さらには15〜1000重量部とするのが好適である。
【0074】
偏光繊維(1)または、偏光繊維(1)および複屈折繊維(2)の等方性材料(3)による包理は、コーティングやディッピング、含浸ラミネーションなどの任意の手法によって実施することができる。例えば、等方性材料(3)を、偏光繊維(1)や複屈折繊維(2)が溶解しない適宜な溶媒に溶解し、前記繊維を並べた状態の上にコーティングし、溶媒を乾燥させることによってシートを形成しうる。
【0075】
なお、等方性材料(3)が粘着剤や接着剤である時には、粘着剤層または接着剤層を形成した適宜な透明支持体を用いることも可能である。透明支持基材は、光学用の透明フィルムや基板であれば特に制限はないが、通常、偏光子の透明保護フィルムとして用いられるものが好適である。透明支持基材には、防眩処理層、反射防止層、帯電防止層、複屈折補償層、光拡散層などが設けられていてもよい。
【0076】
偏光繊維(1)や複屈折繊維(2)を等方性材料(3)で包埋する際、空隙のないようにするため、等方性材料(3)の粘度は、気泡の噛み込みを抑える観点から低いことが望ましい。気泡が噛み込むと、偏光に依存しない等方的な散乱点となるため、気泡の噛み込みは可能な限り防止することが好ましい。なお、本発明の偏光子では、実質的に空隙があると散乱機能を発現しないため、空隙がないようにしているが、本発明で空隙がないとは、散乱機能を阻害する空隙がないことをいう。前記空隙とは、可視光の波長の1/10程度(約50nm)よりも広い隙間を示す。
【0077】
また、偏光繊維(1)または、偏光繊維(1)および複屈折繊維(2)は、緯糸を用いて織布の状態とすることができる。またこれらを等方性材料(3)により包埋して、シート化することができる。この場合にも空隙をなくすことが好ましい。緯糸を用いて織布とすることにより作業性良く偏光子が作成可能となる。ただし、編む際に、偏光繊維(1)および複屈折繊維(2)の平行性が若干低下するため、偏光特性が低下しないようにする。緯糸の材料としては、前記透明樹脂を用いることができるが、その屈折率は、偏光繊維(1)の断面方向の屈折率:no1とほぼ等しいものを用いるのが好ましい。緯糸の屈折率と、偏光繊維(1)の断面方向の屈折率:no1との屈折率差は0.02以下、さらには0.01以下が好ましく、0であるのが最も好ましい。また、偏光特性低下の観点から、緯糸は可能な限り細いものが好ましい。緯糸の強度の観点とのバランスから、緯糸の直径は1〜30μm程度であることが望ましい。緯糸の断面形状は特に制限はないが、楕円形が作りやすさの観点から好ましい。編み方としては、経糸である偏光繊維(1)や複屈折繊維(2)の平行性が損なわれにくい平織りや朱子織りなどの編み方が好ましい。経糸の偏光繊維(1)、複屈折繊維(2)を何本か束ねて織ることも、偏光特性の観点から好ましい。
【0078】
本発明の偏光子の全体厚みは、特に制限されないが、通常、20〜500μm程度であることが望ましい。厚さが薄すぎる場合には、包埋可能な繊維の本数が不足する場合があり、偏光性能が不足することがある。厚くしすぎる場合には、偏光子として取り扱い難いものになってしまったり、包理時に気泡が抜けにくくなったりするなどの問題が生じる場合がある。
【0079】
本発明の偏光子は、常法に従って、その少なくとも片面に透明保護層を設けた偏光板とすることができる。透明保護層ポリマーによる塗布層として、またはフィルムのラミネート層等として設けることができる。透明保護フィルムを形成する、透明ポリマーまたはフィルム材料としては、適宜な透明材料を用いうるが、透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮断性などに優れるものが好ましく用いられる。前記透明保護フィルムを形成する材料としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、二酢酸セルロースや三酢酸セルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、あるいは前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護フィルムを形成するポリマーの例としてあげられる。透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0080】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、たとえば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。これらのフィルムは位相差が小さく、光弾性係数が小さいため偏光板の歪みによるムラなどの不具合を解消することができ、また透湿度が小さいため、加湿耐久性に優れる。
【0081】
保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。
【0082】
また、保護フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。したがって、Rth=(nx−nz)・d(ただし、nxはフィルム平面内の遅相軸方向の屈折率、nzはフィルム厚方向の屈折率、dはフィルム厚みである)で表されるフィルム厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向位相差値(Rth)は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
【0083】
保護フィルムとしては、偏光特性や耐久性などの点より、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーが好ましい。特にトリアセチルセルロースフィルムが好適である。一方、トリアセチルセルロースなどの保護フィルムは、厚み方向の位相差値Rthが大きく、色付きが問題となるが、イソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物等は、厚み方向の位相差値Rthが30nm以下のものを使用可能であり、色付きをほぼ解消することができる。なお、偏光子の両側に保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。
【0084】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
【0085】
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。
【0086】
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
【0087】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護層とは別体のものとして設けることもできる。
【0088】
前記偏光子と透明保護フィルムとの接着処理には、接着剤が用いられる。接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等を例示できる。前記接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5〜60重量%の固形分を含有してなる。
【0089】
本発明の偏光板は、前記透明保護フィルムと偏光子を、前記接着剤を用いて貼り合わせることにより製造する。接着剤の塗布は、透明保護フィルム、偏光子のいずれに行ってもよく、両者に行ってもよい。貼り合わせ後には、乾燥工程を施し、塗布乾燥層からなる接着層を形成する。偏光子と透明保護フィルムの貼り合わせは、ロールラミネーター等により行うことができる。接着層の厚さは、特に制限されないが、通常0.1〜5μm程度である。なお、等方性材料(3)に用いた、粘着剤層または接着剤層を形成した適宜な透明支持体を保護フィルとして用いることができる。
【0090】
本発明の偏光子または偏光板(以下、単に偏光板という)は、実用に際して他の光学層と積層した光学フィルムとして用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、本発明の偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0091】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0092】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また前記透明保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の透明保護フィルムは、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
【0093】
反射板は前記の偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
【0094】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0095】
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0096】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。上記した位相差板の具体例としては、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミドの如き適宜なポリマーからなるフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルムや液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであってもよい。
【0097】
また上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組み合わせで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組み合わせとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0098】
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差フィルム、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
【0099】
また良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0100】
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一旦反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0101】
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、拡散板は偏光を元の自然光状態にもどす。この非偏光状態、すなわち自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光状態にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0102】
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0103】
従って、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を透過するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0104】
可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差層と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層又は2層以上の位相差層からなるものであってよい。
【0105】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0106】
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
【0107】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板やその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0108】
前述した偏光板や、偏光板を少なくとも1層積層されている光学フィルムには、液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0109】
また上記に加えて、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。
【0110】
粘着層は、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着層に添加されることの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層などであってもよい。
【0111】
偏光板や光学フィルムの片面又は両面への粘着層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で偏光板上または光学フィルム上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを偏光板上または光学フィルム上に移着する方式などがあげられる。
【0112】
粘着層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層として偏光板や光学フィルムの片面又は両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、偏光板や光学フィルムの表裏において異なる組成や種類や厚さ等の粘着層とすることもできる。粘着層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、5〜200μmが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。
【0113】
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚さ条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鏡アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
【0114】
なお本発明において、上記した偏光板を形成する偏光子や透明保護フィルムや光学フィルム等、また粘着層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0115】
本発明の偏光板または光学フィルムは液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光板または光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による偏光板または光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0116】
液晶セルの片側又は両側に偏光板または光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による偏光板または光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に偏光板または光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0117】
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
【0118】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0119】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0120】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0121】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
【0122】
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1/4波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0123】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1/4波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
【0124】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【実施例】
【0125】
以下に本発明を実施例および比較例をあげて具体的に説明する。本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の%は重量%である。
【0126】
(屈折率)
屈折率は全て、545nmの波長に対する室温(20℃)での値である。屈折率は、屈折率調整液を用いてベッケ線法や液浸法によって測定したものである。また、複屈折はベレックコンペンセータを用いて測定したものである。
【0127】
実施例1
(偏光繊維(1A)の作成)
ポリビニルアルコール(クラレ社製,重合度2400,完全ケン化)100重量部および二色性染料(キシダ化学社製,コンゴレッド)0.5重量部をジメチルスルホキシド:水=80:20(重量比)の混合溶媒で7%に溶解した溶液を調製した。当該溶液を、−30℃に冷却したメタノール浴中にシリンジから押出し、繊維状物とし、溶媒を完全に取り除くために浴中で1時間放置した。次いで、得られた繊維を、1mm/sec、長手方向に130℃で20倍で乾燥延伸し、直径30μmの偏光繊維(1A)を得た。なお、二色性染料にて染色することなく、同様の方法により作成した繊維の断面方向の屈折率:no1は、1.51であった。これを、偏光繊維(1A)の断面方向の屈折率:no1とした。
【0128】
実施例2
(偏光繊維(1B)の作成)
実施例1の偏光繊維(1A)の作成において、繊維を10倍で乾燥延伸したこと以外は実施例1と同様にして偏光繊維(1B)を作成した。
【0129】
実施例3
(偏光繊維(1C)の作成)
実施例1の偏光繊維(1A)の作成において、繊維を180℃で乾燥延伸したこと以外は実施例1と同様にして偏光繊維(1C)を作成した。
【0130】
比較例1
(偏光繊維(1´)の作成)
エチレン・ビニルアルコール共重合体(クラレ社製,EVOH,エチレン比率27%)100重量部の樹脂ペレットを、90℃に加熱してジメチルスルホキシドに溶解して20%の溶液を調製した。そこへ、予め、二色性染料(キシダ化学社製,コンゴレッド)0.5重量部をジメチルスルホキシドに溶解させておいた溶液を添加して混合した。この混合溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にキャストしてフィルムを数枚作成した。当該フィルムを真空乾燥機にて十分乾燥した後、さらにフィルムを重ねて190℃でプレスし、ペレットを作成した。得られたペレットを、十分乾燥した後、モノフィラメントダイを装着した単軸押出し機(シリンダー温度180℃,220℃,ダイ温度220℃)に投入し、繊維を得た。次いで、得られた繊維を90℃で、長手方向に4倍で乾燥延伸し、直径30μmの偏光繊維(1´)を得た。なお、二色性染料にて染色することなく、同様の方法により作成した繊維の断面方向の屈折率:no1は、1.50であった。
【0131】
比較例2
比較例1の偏光繊維(1´)の作成において、繊維を90℃で6倍乾燥延伸したこと以外は比較例1と同様の操作を行ったが、延伸切れを生じ、偏光繊維を作成できなかった。
【0132】
製造例1
(複屈折繊維(2A))
製造実施例1の偏光繊維(1A)の作成において、二色性染料を用いなかったこと以外は、偏光繊維(1A)と同様の手順にて、直径10μmの複屈折繊維(2A)を作成した。複屈折繊維(2A)断面方向の屈折率:no2は、1.51であり、△n=1.55であった。
【0133】
実施例11
(偏光板の作成)
偏光繊維(1A)および複屈折繊維(2A)を、厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルム上に、偏光繊維(1A):複屈折繊維(2A)の体積比が4:5の割合となるように、ランダムに平行に並べた。次いで、等方性材料(3)として、硬化後の屈折率:no3が1.51の透明液状エポキシ樹脂(脂環式エポキシ樹脂100重量部とメチルヘキサヒドロ無水フタル酸124重量部とトリ−n−ブチルオクチルホスホニウムブロマイド1重量部を含有)を、前記繊維を包埋するようにコーティングし、さらにその上部より気泡が入らないように厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルムで挟み込んだ。その後、100℃で5時間、硬化処理して偏光板を得た。トリアセチルセルロースフィルムに挟まれた部分(偏光子)の厚みは70μmであった。また、偏光繊維(1A)および複屈折繊維(2A)の合計100重量部に対する、等方性材料(3)の使用量は、100重量部であった。
【0134】
実施例12
(偏光板の作成)
偏光繊維(1A)および複屈折繊維(2A)を厚み38μmのシリコン離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に、偏光繊維(1A):複屈折繊維(2A)の体積比が7:3の割合となるようにランダムに平行に並べた。一方、等方性材料(3)として、ブチルアクリレート76重量部とアクリル酸4重量部からなるアクリル系モノマーを共重合して得られた重量平均分子量約70万のアクリル系重合体、キシレン系タッキファイヤー(パインクリスタル,KE‐100,荒川化学工業社製)20重量部およびイソシアネート系架橋剤(コロネートL,日本ポリウレタン工業社製)0.06部とをトルエンに溶解した13%ベースの粘着塗工液を調製した。当該粘着塗工液で、前記繊維を包埋して、かつ気泡が入らないように、アプリケータを用いて、乾燥後の厚みが40μmとなるよう塗工し、130℃で3分間乾燥して、偏光子を得た。偏光子は、離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した部分である。粘着剤の屈折率:no3は1.51であった。偏光繊維(1A)および複屈折繊維(2A)の合計100重量部に対する、等方性材料(3)の使用量は、100重量部であった。偏光子は、乾燥後、厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルムに転写して偏光板とした。
【0135】
実施例13
実施例11において、複屈折繊維(2A)の代わりに、偏光繊維(1A)を用いたこと以外は実施例11に準じて偏光板を得た。偏光繊維は全て偏光繊維(1A)である。
【0136】
実施例14
実施例11において、偏光繊維(1A)および複屈折繊維(2A)の代わりに、偏光繊維(1B)を用いたこと以外は実施例11に準じて偏光板を得た。偏光繊維は全て偏光繊維(1B)である。
【0137】
実施例15
実施例11において、偏光繊維(1A)および複屈折繊維(2A)の代わりに、偏光繊維(1C)を用いたこと以外は実施例11に準じて偏光板を得た。偏光繊維は全て偏光繊維(1C)である。
【0138】
実施例16
(緯糸)
エチレン・ビニルアルコール共重合体(クラレ社製,EVOH,エチレン比率32%)の樹脂ペレットを十分に乾燥した後、モノフィラメントダイを装着した単軸押し出し器(シリンダー温度180℃,220℃,ダイ温度220℃)に投入し、繊維を得た。引き取り時に溶融状態で細径化し、直径10μmとした。作成した繊維は、断面方向の屈折率と長手方向の屈折率がほぼ等しく、n=1.49であった。
【0139】
(偏光板の作成)
偏光繊維(1A)および複屈折繊維(2A)を体積比で4:5となるように、ランダムに準備し、約50本程度を束ねたものを径糸として、緯糸を用いて平織りにて織布を作成した。次いで、この織布を実施例11と同様にしてエポキシ樹脂により包埋するようにコーティングし、さらにその上部より気泡が入らないように厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルムで挟み込んだ。その後、100℃で5時間、硬化処理して偏光板を得た。
【0140】
比較例11(参考例)
実施例11において、偏光繊維(1A)の代わりに、偏光繊維(1´)を用いたこと以外は実施例11に準じて偏光板を得た。
【0141】
比較例12
実施例11において、偏光繊維(1A)および複屈折繊維(2A)の代わりに、偏光繊維(1´)を用いたこと以外は実施例11に準じて偏光板を得た。偏光繊維は全て偏光繊維(1´)である。
【0142】
比較例13
高透過率高偏光度のヨウ素系偏光板(日東電工社製,NPF−SEG1425DU)を用いた。
【0143】
実施例11〜16および比較例11〜13の偏光板について以下の評価を行った。結果を表1に示す。偏光板は、厚み0.7mmのガラス板に貼り付けた形状としたものをサンプルとした。サンプルサイズは5cm×20cm(繊維の長手方向が長軸である。比較例13は延伸軸方向が長軸である。)となるように手芸用のピンキングはさみで切断した。なお、ピンキングはさみでの切断により偏光板のクラックが発生しやすくなる。
【0144】
(単体透過率、偏光度)
偏光板の光学特性を、積分球付分光光度計(日立製作所社製,U−4100)を用いて測定し、波長550nmでの単体透過率、偏光度を算出した。
【0145】
(ムラ)
同じ2枚の偏光板を直交ニコル状態にして、高輝度のバックライト上でムラを目視観察した。ムラが視認されないレベルを「○」、ムラが視認されるレベルを「×」とした。
【0146】
(クラック)
−30℃と80℃の条件を繰り返す、冷熱サイクル試験(60分サイクル100回)を行った後、同じ2枚の偏光板で直交ニコル状態にして、クラックを目視確認した。初期状態と変化がないものを「○」、クラックが発生しているものを「×」とした。
【0147】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1(A)】本発明の偏光子の斜視図の一例である。
【図1(B)】本発明の偏光子の斜視図の一例である。
【図2】偏光繊維(1)の斜視図の一例である。
【図3】本発明の偏光子の断面と偏光性能および均一性向上のメカニズムを模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0149】
1 偏光繊維
1a 繊維形成樹脂
1b 二色性材料
2 複屈折繊維
3 等方性材料
A 偏光子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂に二色性材料を含有させる工程と、樹脂を含む溶液を冷却溶媒中に押出して繊維を得る工程と、繊維を延伸する工程と、を含有することを特徴とする偏光繊維の製造方法。
【請求項2】
繊維を形成する樹脂が、透明樹脂であることを特徴とする請求項1記載の偏光繊維の製造方法。
【請求項3】
樹脂に二色性材料を含有させる工程、次いで、樹脂を含む溶液を冷却溶媒中に押出して繊維を得る工程、次いで繊維を延伸する工程を、この順に各工程を施すことを特徴とする請求項1または2記載の偏光繊維の製造方法。
【請求項4】
繊維を延伸する工程における延伸温度が、180℃未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の偏光繊維の製造方法。
【請求項5】
繊維を延伸する工程における延伸倍率が、7〜40倍であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の偏光繊維の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られた、二色性材料を長手方向に配向した状態で含有している偏光繊維。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により、二色性材料を長手方向に配向した状態で含有している偏光繊維を製造した後、得られた偏光繊維を、当該繊維の長手方向が略平行に配置し、シート化することを特徴とする偏光子の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の製造方法により得られた、偏光繊維(1)が、当該繊維の長手方向が略平行に配置され、シート化されていることを特徴とする偏光子。
【請求項9】
偏光繊維(1)に加えて、二色性材料を含有しない透明樹脂により形成されており、かつ複屈折(△n)が0.03以上の複屈折繊維(2)を含有し、
偏光繊維(1)と複屈折繊維(2)はそれら繊維の長手方向が略平行に配置されていることを特徴とする請求項8記載の偏光子。
【請求項10】
複屈折繊維(2)は、円形または楕円形の断面を有し、かつ直径が0.3〜100μmの範囲であることを特徴とする請求項9記載の偏光子。
【請求項11】
偏光繊維(1)および複屈折繊維(2)は、体積比で、10:90〜90:10であることを特徴とする請求項9または10記載の偏光子。
【請求項12】
偏光繊維(1)、または偏光繊維(1)および複屈折繊維(2)は、緯糸を用いて織布の状態としていることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の偏光子。
【請求項13】
偏光繊維(1)、または偏光繊維(1)および複屈折繊維(2)は、等方性材料(3)により空隙なく包埋され、シート化されていることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の偏光子。
【請求項14】
偏光繊維(1)の断面方向の屈折率:no1は、複屈折繊維(2)の断面方向の屈折率:no2および/または等方性材料(3)の屈折率:no3との屈折率差が0.02以下であることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の偏光子。
【請求項15】
緯糸の屈折率は、偏光繊維(1)の断面方向の屈折率:no1との屈折率差が0.02以下であることを特徴とする請求項12、13または14記載の偏光子。
【請求項16】
請求項8〜15のいずれかに記載の偏光子の少なくとも片面に、透明保護層を設けた偏光板。
【請求項17】
請求項8〜15のいずれかに記載の偏光子または請求項16記載の偏光板が、少なくとも1枚積層されていることを特徴とする光学フィルム。
【請求項18】
請求項8〜15のいずれかに記載の偏光子、請求項16記載の偏光板または請求項17記載の光学フィルムが用いられていることを特徴とする画像表示装置。



【図1(A)】
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【図1(B)】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−215485(P2006−215485A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−30729(P2005−30729)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】