説明

偏光解析システム

【課題】小型化及びそれに伴う低価格化を実現することが可能な光断層画像形成システム及びそれに用いる検出ユニットを提供することにある。
【解決手段】光断層画像形成システム100は、光学偏光素子250を有し、物体反射光ビームと参照反射光ビームを干渉させた干渉偏光ビームを波長毎に分離しつつ、各波長毎の各偏光成分を検出する検出ユニット200を備えている。また、偏光用光学素子250は、分離された各波長の干渉偏光ビームが波長順に並列に入射されるとともに、所定の条件を具備する第1屈折率及び第2屈折率を有する複屈折の特性を有し、当該入射された各波長の干渉偏光ビームを透過しつつ偏光成分毎に分離して当該分離した各波長における各偏光成分を同一方向にそれぞれ異なる光軸によって出射するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光を用いて被測定物を解析する偏光解析システム及びそれに用いる検出ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光の干渉効果を利用して生体内部の奥行き構造を可視化する光断層画像形成システム(以下、「OCT:Optical Coherence Tomograph」という。)の研究が進んでいる。
【0003】
特に、最近では、光断層画像形成システムは、生体に対して無侵襲性を有するとともに高分解能を有することから、眼の網膜の断層撮影に利用されるだけでなく、網膜以外の他の生体器官またはその他の構造の断層撮影にも適用が試みられている。
【0004】
このような状況下において、光断層画像形成システムに偏光検出を組み合わせた偏光OCTシステムが知られている。
【0005】
例えば、このような偏光OCTシステムは、45度に偏光された光ビームを生体器官などの検体(測定物)に対して照射しつつ、検体にて反射された偏光ビーム(以下、「物体反射偏光ビーム」という。)と、参照光と、を合成するようになっている。そして、この偏光OCTシステムは、合成された光ビームを、それぞれの偏光成分、すなわち、垂直偏光及び水平偏光に分離して解析することによって検体の内部構造を画像かするなど解析を行うことができるようになっている(例えば、特許文献1、2及び3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−157710号公報
【特許文献2】US特許公報 US2007/0038040A1
【特許文献3】特表2008−538612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の各特許文献に記載された偏光OCTシステムにあっては、物体反射偏光ビームと参照光とを分離するために、偏光ビームスプリッタ及びそれぞれの偏光成分を検出するための光ラインセンサを用いる必要がある。特に、これらの偏光OCTシステムは、偏光ビームスプリッタの構造上、2つの光ラインセンサを、それぞれの光軸が直角となるように配置しなければならず、小型化及びそれに伴う低価格化が難しい。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、その目的は、小型化及びそれに伴う低価格化を実現することが可能な偏光を用いた偏光解析システム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するため、本発明の偏光解析システムは、偏光を用いて被測定物を解析する偏光解析システムであって、光源を有するとともに、当該光源から出射された出射光ビームに基づいて所定の偏光ビームを生成する偏光ビーム生成ユニットと、前記生成された偏光ビームを第1偏光ビームと第2偏光ビームに分割する偏光ビームスプリッタと、前記第1偏光ビームから前記断層画像を生成する際に参照光として用いられる参照偏光ビームを生成する参照偏光ビームユニットと、前記第2偏光ビームを前記被測定物に照射しつつ、当該照射に基づいて前記被測定物から反射された物体反射偏光ビームを出力する測定ユニットと、前記参照偏光ビームと前記物体反射偏光ビームとを干渉させた干渉偏光ビームが入射され、当該干渉偏光ビームを異なる偏光成分毎に検出する検出ユニットと、前記検出された偏光成分毎の偏光ビームに基づいて被測定物における断層画像を生成する生成ユニットと、を備え、前記検出ユニットが、前記干渉偏光ビームを波長毎に分離する回折格子と、前記分離された各波長の干渉偏光ビームが波長順に並列に入射されるとともに、所定の条件を具備する第1屈折率及び第2屈折率を有する複屈折の特性を有し、当該入射された各波長の干渉偏光ビームを透過しつつ偏光成分毎に分離して当該分離した各波長における各偏光成分を同一方向にそれぞれ異なる光軸によって出射する偏光用光学素子と、前記分離された各波長の各偏光成分毎の干渉偏光ビームを検出する2つのセンサアレイを有し、当該2つのセンサアレイが所定の距離間隔にて並設されることによって形成される検出手段と、を有し、前記偏光用光学素子における前記干渉偏光ビームが透過する透過方向の厚さが当該干渉偏光ビームの波長毎に異なる構成を有している。
【0010】
この構成により、本発明の偏光解析システムは、偏光用光学素子において、断層画像を生成する際に用いる各波長の干渉偏光ビームを偏光成分毎に分離しつつ、それぞれの偏光成分をそれらの光軸が同一方向となるように出射させることができるので、2つのセンサアレイが所定の距離間隔にて並設された検出手段によって各波長の偏光成分毎の干渉偏光ビームを検出することができる。
【0011】
したがって、本発明の偏光解析システムは、異なる場所に2つのラインセンサを別々に配設させ、各ラインセンサに向けて直角となる光軸によって各偏光成分を出射させることが必要な偏光ビームスプリッタを偏光用光学素子として用いる場合に比べて、検出手段を保持する保持部材などの部品点数を減少させることができるので、小型化することができるとともに、小型化に伴う低価格化をも実現することができる。
【0012】
(2)また、本発明の偏光解析システムは、前記偏光用光学素子における透過方向の厚さが、波長の短い干渉偏光ビームが入射される側から波長の長い干渉偏光ビームが入射される側に、徐々に厚くなっている構成を有している。
【0013】
この構成により、本発明の偏光解析システムは、偏光用光学素子において、波長毎に偏光成分を分離する際の分離間隔を簡易にかつ的確に調整することができるので、各偏光成分を正確に検出することができる。
【0014】
(3)また、本発明の偏光解析システムは、前記偏光用光学素子の前記干渉偏光ビームの入射面が曲面であってもよい。
【0015】
この構成により、本発明の偏光解析システムは、波長毎に的確に偏光成分を分離する際の分離間隔を調整することができるので、波長毎に偏光成分を分離する際の分離間隔を的確に調整することができる。
【0016】
(4)また、本発明の偏光解析システムは、前記偏光用光学素子の前記干渉偏光ビームの入射面が矩形であってもよい。
【0017】
この構成により、本発明の偏光解析システムは、偏光用光学素子を簡易に製造することができるので、低価格化を実現することができる。
【0018】
(5)また、前記検出手段における2つのセンサアレイの距離間隔(d)、前記第1屈折率(n)、前記第2屈折率(n)、入射される入射光ビームの光軸に対する第1屈折率における軸との角度(θ)及び少なくとも最小波長または最大波長の何れか一方における前記透過方向の厚さLとの関係が(式1)を満たす構成を有している。
【0019】
【数1】

【0020】
この構成により、本発明の偏光解析システムは、速軸及び遅軸など複屈折における2つ屈折率、並びに、速軸の入射光ビームに対する傾斜角度を規定することによって、偏光用光学素子を形成することができるので、材質などを特定することなく、偏光用光学素子を形成することができるとともに、当該偏光用光学素子の形状を変形させれば、種々のセンサアレイも用いることができる。
【0021】
(6)上記課題を解決するため、本発明の検出ユニットは、偏光を用いて被測定物を解析する偏光解析システムに用いる検出ユニットにおいて、前記断層画像を生成する際に参照光として用いられ、所定の偏光ビームに基づいて生成された参照偏光ビームと、一部の前記偏光ビームの前記被測定物への照射に基づいて当該被測定物から反射された物体反射偏光ビームと、を干渉させた干渉偏光ビームを、異なる偏光成分毎に検出する検出ユニットであって、前記干渉偏光ビームを波長毎に分離する回折格子と、前記分離された各波長の干渉偏光ビームが波長順に並列に入射されるとともに、第1屈折率及び第2屈折率を有する複屈折の特性を有し、当該入射された各波長の干渉偏光ビームを透過しつつ偏光成分毎に分離して当該分離した各波長における各偏光成分を同一方向にそれぞれ異なる光軸によって出射する偏光用光学素子と、前記分離された各波長の各偏光成分毎の干渉偏光ビームを検出する2つのセンサアレイを有し、当該2つのセンサアレイが所定の距離間隔にて並設されることによって形成される検出手段と、を備え、前記偏光用光学素子における前記干渉偏光ビームが透過する透過方向の厚さが当該干渉偏光ビームの波長毎に異なる構成を有している。
【0022】
この構成により、本発明の検出ユニットは、偏光用光学素子において、断層画像を生成する際に用いる各波長毎の干渉偏光ビームを偏光成分毎に分離しつつ、それぞれの偏光成分をそれらの光軸が同一方向となるように出射させることができるので、2つのセンサアレイが所定の距離間隔にて並設された検出手段によって各波長の偏光成分毎の干渉偏光ビームを検出することができる。
【0023】
したがって、本発明の検出ユニットは、直角となる光軸によって各偏光成分を出射させ、異なる場所に2つのラインセンサを別々に配設させることが必要な偏光ビームスプリッタを偏光用光学素子として用いる場合に比べて、部品点数を減少させることができるので、小型化することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の偏光解析システム及び検出ユニットは、直角となる光軸によって各偏光成分を出射させ、異なる場所に2つのラインセンサを別々に配設させることが必要な偏光ビームスプリッタを偏光用光学素子として用いる場合に比べて、部品点数を減少させることができるので、当該システム自体または当該検出ユニット自体を小型化することができるとともに、小型化に伴う低価格化をも実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る偏光を用いた光断層画像形成システムの一の実施形態における構成を示すブロック図である。
【図2】一実施形態における検出ユニットの一部の構成を示す平面図及び側面図である。
【図3】一実施形態の検出装置におけるラインセンサを説明するための図である。
【図4】速軸がθ=45度傾いて形成された一般的な光学素子において、偏光成分の分離について説明するための図である。
【図5】ビーム分離間隔と波長の関係を示すグラフである。
【図6】一実施形態の偏光用光学素子の構造を示す構造図である。
【図7】一実施形態における偏光用光学素子の透過方向の厚さと波長の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
なお、以下に説明する実施形態は、偏光を利用しつつ、眼底の断層画像を生成する光断層画像形成システム及びそれに用いる検出ユニットについて、本発明の偏光解析システム及び検出ユニットを適用したものである。
【0028】
[光断層画像形成システムの概要]
まず、図1を用いて本実施形態の光断層画像形成システム100の概略構成について説明する。なお、図1は、本実施形態の光断層画像形成システム100の構成を示すブロック図である。
【0029】
本実施形態の光断層画像形成システム100は、適応制御光学システム(AO)技術を用いるとともに、偏光を用いつつ当該偏光の干渉効果を利用して検査対象の物体(本実施形態においては眼球EYであり、具体的には、網膜R)の断層画像を取得するOCT測定装置である。
【0030】
光断層画像形成システム100は、光源111から出射された光ソースビーム(すなわち、光出射ビーム)を偏光し、検査対象に照射する物体走査光ビーム(以下、「物体走査用偏光ビーム」という。)と、基準となる参照光ビーム(以下、「参照用偏光ビーム」という。)と、に分割するとともに、当該物体走査用偏光ビームが物体に照射されて反射された物体反射光ビーム(以下、「物体反射偏光ビーム」という。)と、参照用偏光ビームが所定のミラーで反射された参照反射光ビーム(以下、「参照反射偏光ビーム」という。)と、を干渉させるようになっている。
【0031】
そして、光断層画像形成システム100は、物体反射偏光ビームと参照反射偏光ビームとを干渉させた干渉偏光ビームを、波長毎に分離しつつ、各波長における水平偏光成分及び垂直偏光成分の異なる偏光成分毎に光強度を検出し、検出した各偏光成分の光強度に基づいて網膜Rの奥行き方向を含めた網膜Rの断層画像を生成するようになっている。
【0032】
具体的には、光断層画像形成システム100は、図1に示すように、光源111から出射された光ソースビームから所定の偏光ビーム(以下、「ソース偏光ビーム」という。)を生成する偏光ビーム生成ユニット110と、ソース偏光ビームを参照用偏光ビームと物体走査用偏光ビームとに分配するとともに参照反射偏光ビームと物体反射偏光ビームを干渉させる光分配結合器120と、を有している。
【0033】
また、光断層画像形成システム100は、参照用偏光ビームを反射させて参照反射偏光ビームを光分配結合器120に入射させる参照光ユニット(以下、「参照偏光ビームユニット」ともいう。)130と、物体走査用偏光ビームを物体に照射させて物体反射偏光ビームを光分配結合器120に入射させる検査ユニット(以下、「測定ユニット」ともいう。)140と、を有している。
【0034】
そして、光断層画像形成システム100は、物体反射光ビームと参照反射光ビームを干渉させた干渉偏光ビームを波長毎に分離しつつ、各波長の偏光成分毎を検出する検出ユニット200と、検出された各波長の各偏光成分の光強度に基づいて物体の断層画像を生成し出力する画像生成ユニット(以下、「生成ユニット」ともいう。)150と、を有している。
【0035】
[光断層画像形成システムの構成]
次に、上述の図1及び図2を用いて本実施形態の光断層画像形成システム100の構成について説明する。なお、図2は、本実施形態における検出ユニット200の一部の構成を示す平面図及び側面図である。
【0036】
偏光ビーム生成ユニット110は、時間的に、かつ、部分的にコヒーレントである光を光ソースビームに基づいてソース偏光ビームを生成するようになっている。
【0037】
例えば、本実施形態の偏光ビーム生成ユニット110は、スーパールミネセンスダイオード(SLD)または超短パルスレーザによって構成され、光ソースビームを照射する光源111と、偏光状態を制御するインライン型の偏光コントローラ112と、ファイバーベンチ113上に設けられ、所定のキャリブレーションを実行する光アイソレータ114と、ファイバーベンチ113上に設けられ、照射された光ソースビームを所定の駆動波形(例えば、最大周波数29,300Hzの矩形波)に変調しつつ、ソース偏光ビームを生成する偏光変調器115と、を有している。
【0038】
光分配結合器(すなわち、偏光ビームスプリッター)120は、光ファイバーやビーム分割プリズムなどによって、入射された光ソースビームを物体走査用偏光ビームと参照用偏光ビームに分割し、それぞれ、参照光ユニット130及び検出ユニット200に出力するようになっている。
【0039】
例えば、本実施形態の光分配結合器120は、所定の分配比(例えば50:50〜80:20程度の分配比)を有しており、入射した光ソースビームを当該分配比に基づいて分割してそれぞれに出力するようになっている。
【0040】
また、この光分配結合器120には、検査ユニット140の物体にて反射された物体反射偏光ビームと、参照光ユニット130で反射された参照反射偏光ビームとが入射されるようになっている。
【0041】
そして、この光分配結合器120は、入射された物体反射偏光ビーム及び参照反射偏光ビームを波長毎に干渉させ、当該干渉させた干渉偏光ビームを検出ユニット200に出力するようになっている。
【0042】
例えば、本実施形態の光分配結合器120は、所定の結合比(例えば50:50〜80:20程度の分配比)、入射された物体反射偏光ビームと参照反射偏光ビームを当該結合比に基づいて結合して干渉させ、当該結合されて干渉された干渉偏光ビームを検出ユニット200に出力するようになっている。
【0043】
参照光ユニット130は、基本的には、物体走査用偏光ビーム(物体反射偏光ビーム)ビームの光路と同一の長さを有する光路にて基準となる参照反射光ビームを生成するためのユニットである。
【0044】
具体的には、参照光ユニット130は、偏光状態を制御するインライン型の偏光コントローラ131と、参照光ビームを平行光に変換するとともに平行光である参照反射光ビームを集光ビームに変換する変換レンズ132と、可変減光フィルタ(NDフィルタ)133と、検光子134と、平行光である参照光ビームを集光ビームに変換しつつ、反射された参照反射光ビームを平行光に変換する変換レンズ135と、参照反射光を反射させる反射鏡136と、を有している。
【0045】
検査ユニット140は、物体走査用偏光ビームに基づいて眼球EY(具体的には、網膜R)を走査し、当該走査後に眼球EYで反射した物体反射偏光ビームを光分配結合器120に出力するようになっている。
【0046】
具体的には、検査ユニット140は、偏光状態を制御するインライン型の偏光コントローラ141と、物体走査用偏光ビームに基づいて、CCDカメラ142を有し、眼球EYを走査するスリットランプ装置143と、眼球に物体捜査用偏光ビームを走査させるための各種のレンズ144、145と、を有している。
いる。
【0047】
検出ユニット200は、物体反射偏光ビームと参照反射偏光ビームとが結合された干渉光ビーム(以下、「干渉偏光ビーム」という。)を、波長毎に分離しつつ、異なる偏光成分毎に分離し、波長毎及び偏光成分毎の光ビームの光強度を検出するようになっている。
【0048】
具体的には、検出ユニット200は、図1及び図2に示すように、偏光状態を制御するインライン型の偏光コントローラ210と、入力された干渉偏光ビームを所定の光に変換する第1変換レンズ220と、変換された干渉偏光ビームを波長毎に分離する回折格子230と、各波長をそれぞれの位置に集光するための第2変換レンズ240と、を有している。
【0049】
また、検出ユニット200は、分離した各波長の干渉偏光ビームを、偏光成分毎に分離し、分離した光を同一方向に異なる光軸によって出射する偏光用光学素子250と、分離された各波長の偏光成分毎の干渉偏光ビームにおける光強度を検出する2つのセンサアレイ261及び262を備えた検出装置260を有している。
【0050】
なお、本実施形態における検出ユニット200の回折格子230、偏光用光学素子250、及び、検出装置260の各部の詳細については後述する。
【0051】
画像生成ユニット150は、モニタなどの画像表示装置を有し、検出ユニット200によって検出された波長毎及び偏光成分毎の光ビームの変化(すなわち、光強度の変化)に基づいて、眼球の網膜における三次元の光断層画像(すなわち、三次元網膜断層画像)を生成して画像表示装置に生成した光断層画像を表示させる。
【0052】
[検出ユニットの構成]
次に、上述の図2及び図3を用いて本実施形態における検出ユニット200の詳細について説明する。なお、図3は、本実施形態の検出装置260におけるラインセンサを説明するための図である。
【0053】
第1変換レンズ220は、例えば、コリメータレンズによって形成されており、検出ユニット200に入力された干渉偏光ビームを、平行光に変換し、当該平行光を回折格子230に出力するようになっている。
【0054】
回折格子230は、スリットによって生ずる回折により、入射された平行光の干渉偏光ビームを波長毎に分離し、当該干渉偏光ビームの1次光が第2変換レンズ240に入射可能に、当該スリットが形成されているスリット面が所定の角度傾いて配置されている。すなわち、本実施形態の回折格子230は、入射された干渉偏光ビームの0次光が出射する角度を基準に、スリット面が所定の角度に傾くように配置されている。
【0055】
第2変換レンズ240は、回折格子230から出力された1次光である各波長に分離された干渉偏光ビームを、偏光用光学素子250の入光面の第1端(例えば、図2(a)の紙面上部の端)から第1の端と異なる第2端(例えば、図2(a)の紙面下部)に、第1端から第2端へ向かって波長の順に並んで偏光用光学素子250に入光するように、所定のレンズによって形成されている。
【0056】
例えば、本実施形態では、第2変換レンズ240は、非球面レンズによって構成されている。そして、第2変換レンズ240は、波長の短い青色の干渉偏光ビームについては、偏光用光学素子250の第1端側を透過してセンサアレイ261及び262に集光させるとともに、波長の長い赤色の干渉偏光ビームについては、偏光用光学素子250の第2端側を透過してセンサアレイ261及び262に集光させることができように構成されている。
【0057】
なお、第2変換レンズ240は、波長の短い青色の干渉偏光ビームについては、偏光用光学素子250の第1端側を透過してセンサアレイ261及び262に集光させるとともに、波長の長い赤色の干渉偏光ビームについては、偏光用光学素子250の第2端側を透過してセンサアレイ261及び262に集光させることができれば、非球面レンズに代えて、平面レンズ及び球面レンズなど種々のレンズによって構成されていてもよい。
【0058】
偏光用光学素子250は、分離された各波長の干渉偏光ビームが波長順に並列に入射されるとともに、所定の条件を具備する第1屈折率及び第2屈折率を有する複屈折の特性を有している。また、この偏光用光学素子250は、当該入射された各波長の干渉偏光ビームを透過しつつ、偏光成分毎に分離し、当該分離した各波長における各偏光成分を同一方向に、それぞれ異なる光軸によって、出射するようになっている。
【0059】
なお、本実施形態の偏光用光学素子250における構造の詳細については、後述する。
【0060】
検出装置260は、分離された各波長の偏光成分毎の干渉偏光ビームを検出する2つのセンサアレイ261及び262を有し、当該2つのセンサアレイが所定の距離間隔にて並設されることによって形成されている
【0061】
具体的には、検出装置260は、図3に示すように、同一面上に所定の距離(以下、「センサ間隔」という。)で離隔されて並設され、各波長の偏光成分毎の干渉偏光ビームを検出する2つのセンサアレイ(以下、「第1ラインセンサ及び第2ラインセンサ」ともいう。)261及び262を有している。
【0062】
第1ラインセンサ261及び第2ラインセンサ262は、CCD素子を有するラインスキャンカメラであり、それぞれのCCD素子に受光した各波長における偏光成分毎の光強度の情報を出力するようになっている。
【0063】
例えば、本実施形態に検出装置260は、中心軸を基準に10μm離隔されて並設された2つのラインセンサから形成されている。
【0064】
[偏光用光学素子の構造]
次に、図4〜図7を用いて本実施形態の偏光用光学素子250における構造及びその原理について説明する。
【0065】
なお、図4は、速軸がθ=45度傾いて形成された一般的な光学素子Pにおいて、偏光成分の分離について説明するための図であり、図5は、ビーム分離間隔と波長の関係を示すグラフである。また、図6は、本実施形態の偏光用光学素子250の構造を示す構造図であり、図7は、本実施形態における偏光用光学素子250の透過方向の厚さと波長の関係を示すグラフである。
【0066】
通常、水晶などの複屈折の特性を有する光学素子においては、入射された光ビーム(以下、「入射光ビーム」といい、本実施形態の場合には、偏光用光学素子250に入光する干渉偏光ビーム)においては、速軸及び遅軸に対してそれぞれ屈折率が異なるので、速軸及び遅軸と入射光ビームの光軸との関係に基づいて、それぞれの偏光成分は、光学素子内を異なる方向に透過することなる。
【0067】
例えば、図4に示すように、速軸と遅軸が直角に形成された矩形の複屈折の特性を有する光学素子Pにおいて、当該速軸が入射面に対してθ=45度の場合には、すなわち、速軸がθ=45度傾いて形成される場合には、垂直偏光成分と水平偏光成分を含む入射光ビームは、当該光学素子P内において、WALK−OFFと呼ばれる現象によって、図4に示すように異なる方向に進むこととなる。したがって、当該光学素子Pの出射面においては、入射光ビームは、同一方向に出射することになるものの、所定の距離(以下、「ビーム分離間隔」ともいう。)において離隔されて異なる光軸によって出射することになる。
【0068】
また、このような光学素子Pにおいては、同一の偏光成分であっても、波長によって速軸及び遅軸それぞれにおける屈折率が異なるので、同一の偏光成分の異なる波長の光ビームは、光学素子P内を異なる方向に透過することなる。
【0069】
一般的に、偏光特性を有する光学素子においては、波長毎に屈折率が変化することが知られており、波長の変化に伴って速軸及び遅軸の屈折率も変化する。したがって、図5に示すように、WALK−OFFの現象によって偏光成分毎に分離された入射光ビームの分離間隔も波長によって異なるので、図4のような矩形の偏光用光学素子250にあっては、出射される際の光ビームにおける他の偏光成分と離隔距離を波長毎に同一にすることができない。
【0070】
そこで、本実施形態の偏光用光学素子250は、速軸及び遅軸と入射光ビーム(すなわち、波長毎の干渉偏光ビーム)の光軸との関係について後述するような所定の条件を具備させて形成させ、入射光ビームを偏光成分毎に分離し、当該分離した各波長における各偏光成分を同一方向に所定の距離によって離隔して出射することができるように構成されている。
【0071】
特に、本実施形態の偏光用光学素子250は、波長毎に透過する距離、すなわち、透過方向の厚さを変化させた構造を備え、出射する際の各偏光成分において同一の波長における他の偏光成分との離隔距離を同一の距離(ほぼ同一も含む)に維持しつつ、分離した偏光成分を同一方向に、かつ、異なる光軸によって出射することができるように構成されている。
【0072】
すなわち、本実施形態の偏光用光学素子250は、透過方向の厚さを調整することによって、当該偏光用光学素子250の出射面から出射される偏光成分の出射方向を波長毎に調整し、出射する際の各偏光成分において同一の波長における他の偏光成分との離隔距離を同一の距離(ほぼ同一も含む)に維持しつつ、分離した偏光成分を同一方向に、かつ、異なる光軸によって出射することができるようになっている。
【0073】
具体的には、本実施形態の偏光用光学素子250は、所定の条件として、互いに直角となる速軸(第1屈折率の光軸)と遅軸(第2屈折率の光軸)を有し、干渉偏光ビームの光軸と速軸の角度(θ)=45度となるように形成されている。
【0074】
なお、本実施形態の偏光用光学素子250においては、速軸と遅軸が直角に限らず、速軸と遅軸によって形成されるなす角度(α)が「0度<α<180度」であればよい。また、速軸と干渉偏光ビームの光軸とが45度に限らず、干渉偏光ビームが偏光用光学素子250に入射する際の光軸と非平行であればよい。
【0075】
また、偏光用光学素子250は、波長毎の干渉偏光ビームが透過する透過方向の厚さにおいて第1側面側から第2側面側に向かって徐々に厚くなり、各波長毎にその厚さが異なるように、形成されている。そして、本実施形態の偏光用光学素子250には、入射面における第1側面側に波長の短い干渉偏光ビームが入射し、第2側面側に向かって徐々に波長の長い干渉偏光ビームが入射し、及び、第2側面側に波長の長い干渉偏光ビームが入射するようになっている。
【0076】
特に、本実施形態の偏光用光学素子250は、図6に示すように、各波長の干渉偏光ビームが入射する入射面251と、当該入射面251に対して垂直で、かつ、くさび形の形状(平面視においてくさび形の形状)からなる上面252及び底面253と、干渉偏光ビームの光軸と平行で、くさび形の短い一端を含む第1側面254及び当該くさび形の長い一端を含むと第2側面255の2つの側面と、入射面251に対向配置されるとともにセンサアレイ261及び262が形成された面に対向配置される出射面256と、を有する六面体の光学素子として形成されている。
【0077】
また、本実施形態の偏光用光学素子250は、速軸が傾斜している角度θ、すなわち、速軸が出射面256に対してθ=45度傾いて形成され、分離する偏光成分の離隔距離(すなわち、センサアレイの距離間隔)(d)、速軸における屈折率(第1屈折率(nmax1)及び(nmin1))、遅軸における屈折率(第2屈折率(nmax2)及び(nmin2))、最小波長における透過方向の厚さ(第1側面側の厚さ)Lminおよび最大波長における透過方向の厚さ(第2側面側の厚さ)Lmaxとの関係が(式2)及び(式3)を満たす第1側面の長さ及び第2側面の長さを有している。
【0078】
【数2】

【0079】
【数3】

【0080】
なお、(式2)及び(式3)は、複屈折の特性を有する偏光光学素子において、WALK−OFFにおける各偏光成分が分離される離隔距離、速軸及び遅軸の各屈折率、及び透過距離(透過方向の厚さ)との関係を示す式である。
【0081】
例えば、本実施形態の偏光用光学素子250がSiOから構成され、速軸がθ=45度に傾斜して形成されており、センサアレイの距離間隔d=10μm、最小(青色)波長450nmにおける速軸の屈折率nmax1=1.5394441及び遅軸の屈折率(nmax2)=1.54687209、及び、最大(赤色)波長900nmにおける速軸の屈折率nmax1=1.53685918及び遅軸の屈折率(nmax2)=1.54323161の場合には、第1側面側の厚さLmin≒1.65mm及び第2側面側の厚さLmax=2.3mmとなる。
【0082】
また、本実施形態においては、センサアレイの距離間隔d、速軸の角度θ、偏光用光学素子250の材質に基づくそれぞれの屈折率を調整することによって、偏光用光学素子250の第1側面及び第2側面の長さLを規定することができるようになっている。したがって、材質などを特定することなく、偏光用光学素子を形成することができるとともに、第1側面の長さ及び第2側面の長さなど形状を変形させれば、種々のセンサアレイをも用いることができる。
【0083】
さらに、上述の(式2)及び(式3)に基づいて、各波長における偏光用光学素子250の厚さLを算出すると、基本的には、偏光用光学素子250は、図7に示された厚さをそれぞれの波長で有するように曲面によって形成された入射面を有していればよい。
【0084】
その一方で、本実施形態においては、偏光用光学素子250の加工を容易にするために、入射面を矩形によって、すなわち、第1側面から第2側面に向かって直線的に形成するようになっている。
【0085】
なお、図7に示すように、第1側面と第2側面の長さLを適切にすれば、入射面が矩形によって形成されたとしても、各波長における分離間隔をほぼ同一にすることができるようになっている。
【0086】
以上、本実施形態の光断層画像形成システム100は、直角となる光軸によって各偏光成分を出射させ、異なる場所に2つのラインセンサを別々に配設させることが必要な偏光ビームスプリッタを偏光用光学素子250として用いる場合に比べて、検出装置260を保持する保持部材などの部品点数を減少させることができるので、小型化することができるとともに、小型化に伴う低価格化をも実現することができる。
【0087】
また、本実施形態の光断層画像形成システム100は、速軸と遅軸とによって形成される鋭角のなす角度(α)が「0度<α<180度」であるとともに(例えば、直角90度)、速軸と遅軸が、それぞれ、干渉偏光ビームが偏光用光学素子250に入射する際の光軸と非平行であり(例えば、45度)、偏光用光学素子250における透過方向の厚さが、波長の短い干渉偏光ビームが入射される側から波長の長い干渉偏光ビームが入射される側に、徐々に厚くなっている構成を有しているので、偏光用光学素子250において、波長
【0088】
また、本実施形態の光断層画像形成システム100は、偏光用光学素子250の前記干渉偏光ビームの入射面が矩形であるので、当該偏光用光学素子250を簡易に製造することができるので、低価格化を実現することができる。
【符号の説明】
【0089】
100 光断層画像形成システム
110 偏光ビーム生成ユニット
120 光分配結合器
130 参照光ユニット
140 検査ユニット
150 画像生成ユニット
200 検出ユニット
210 偏光コントローラ
220 変換レンズ
230 回折格子
240 変換レンズ
250 偏光用光学素子
260 検出装置
261 第1ラインセンサ
262 第2ラインセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光を用いて被測定物を解析する偏光解析システムであって、
光源を有するとともに、当該光源から出射された出射光ビームに基づいて偏光ビームを生成する偏光ビーム生成ユニットと、
前記生成された偏光ビームを第1偏光ビームと第2偏光ビームに分割する偏光ビームスプリッタと、
前記第1偏光ビームから前記断層画像を生成する際に参照光として用いられる参照偏光ビームを生成する参照偏光ビームユニットと、
前記第2偏光ビームを前記被測定物に照射しつつ、当該照射に基づいて前記被測定物から反射された物体反射偏光ビームを出力する測定ユニットと、
前記参照偏光ビームと前記物体反射偏光ビームとを干渉させた干渉偏光ビームが入射され、当該干渉偏光ビームを異なる偏光成分毎に検出する検出ユニットと、
前記検出された偏光成分毎の偏光ビームに基づいて被測定物における断層画像を生成する生成ユニットと、
を備え、
前記検出ユニットが、
前記干渉偏光ビームを波長毎に分離する回折格子と、
前記分離された各波長の干渉偏光ビームが波長順に並列に入射されるとともに、所定の条件を具備する第1屈折率及び第2屈折率を有する複屈折の特性を有し、当該入射された各波長の干渉偏光ビームを透過しつつ偏光成分毎に分離して当該分離した各波長における各偏光成分を同一方向にそれぞれ異なる光軸によって出射する偏光用光学素子と、
前記分離された各波長の各偏光成分毎の干渉偏光ビームを検出する2つのセンサアレイを有し、当該2つのセンサアレイが所定の距離間隔にて並設されることによって形成される検出手段と、
を有し、
前記偏光用光学素子における前記干渉偏光ビームが透過する透過方向の厚さが当該干渉偏光ビームの波長毎に異なることを特徴とする偏光解析システム。
【請求項2】
請求項1に記載の偏光解析システムにおいて、
前記偏光用光学素子における透過方向の厚さが、波長の短い干渉偏光ビームが入射される側から波長の長い干渉偏光ビームが入射される側に、徐々に厚くなっている、偏光解析システム。
【請求項3】
請求項2に記載の偏光解析システムにおいて、
前記偏光光学素子の前記干渉偏光ビームの入射面が曲面である、偏光解析システム。
【請求項4】
請求項2に記載の偏光解析システムにおいて、
前記偏光光学素子の前記干渉偏光ビームの入射面が矩形である、偏光を用いた光偏光解析システム。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の偏光解析システムにおいて、
前記検出手段における2つのセンサアレイの距離間隔(d)、前記第1屈折率(n)、前記第2屈折率(n)、入射される入射光ビームの光軸に対する第1屈折率における軸との角度(θ)及び少なくとも最小波長または最大波長の何れか一方における前記透過方向の厚さLとの関係が(式4)を満たす、偏光解析システム。
【数4】

【請求項6】
偏光を用いて被測定物を解析する偏光解析システムに用いる検出ユニットにおいて、
前記断層画像を生成する際に参照光として用いられ、所定の偏光ビームに基づいて生成された参照偏光ビームと、一部の前記偏光ビームの前記被測定物への照射に基づいて当該被測定物から反射された物体反射偏光ビームと、を干渉させた干渉偏光ビームを、異なる偏光成分毎に検出する検出ユニットであって、
前記干渉偏光ビームを波長毎に分離する回折格子と、
前記分離された各波長の干渉偏光ビームが波長順に並列に入射されるとともに、第1屈折率及び第2屈折率を有する複屈折の特性を有し、当該入射された各波長の干渉偏光ビームを透過しつつ偏光成分毎に分離して当該分離した各波長における各偏光成分を同一方向にそれぞれ異なる光軸によって出射する偏光用光学素子と、
前記分離された各波長の各偏光成分毎の干渉偏光ビームを検出する2つのセンサアレイを有し、当該2つのセンサアレイが所定の距離間隔にて並設されることによって形成される検出手段と、
を備え、
前記偏光用光学素子における前記干渉偏光ビームが透過する透過方向の厚さが当該干渉偏光ビームの波長毎に異なることを特徴とする検出ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−19812(P2013−19812A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154241(P2011−154241)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【Fターム(参考)】