偏向板を有する排気装置
【課題】 漏れを防ぎながら、キャビネットから効果的に煤や有害ガスを排出する。
【解決手段】 偏向板を有する排気装置であって、その内部にキャビネットが備えられている。そのキャビネットの正面には開口部が形成されている。キャビネットの頂に位置する排気フードは、その底に、背面板に対して平行で下方に面する細長排気スロットを備えている。左偏向板が、左側板に対して相対的に斜めになるよう、前記空間に垂直に配置される一方で、右偏向板が、右側板に対して相対的に斜めになるよう、前記空間に垂直に配置される。それによって、キャビネットの正面の開口部からの汚染物質の漏れを防止するよう、細長排気スロットに向かうエアの引き込みが左右の偏向板を通してキャビネットの中へ流れ込む。
【解決手段】 偏向板を有する排気装置であって、その内部にキャビネットが備えられている。そのキャビネットの正面には開口部が形成されている。キャビネットの頂に位置する排気フードは、その底に、背面板に対して平行で下方に面する細長排気スロットを備えている。左偏向板が、左側板に対して相対的に斜めになるよう、前記空間に垂直に配置される一方で、右偏向板が、右側板に対して相対的に斜めになるよう、前記空間に垂直に配置される。それによって、キャビネットの正面の開口部からの汚染物質の漏れを防止するよう、細長排気スロットに向かうエアの引き込みが左右の偏向板を通してキャビネットの中へ流れ込む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、偏向板を有する排気装置に関し、特に、汚染物質の漏れを防ぐようキャビネット内の気流を導くような偏向板を有する排気装置に関するもので、工場や実験室のキャビネットや商業的なキッチンの排気キャビネットに適したものである。
【背景技術】
【0002】
従来の排気キャビネットでは、その機能を果たすため、キャビネットの上端に開口部を有する保護板が設けられており、特に設計された開口部を有する導流板がキャビネットの後部に垂直に配置されていた。排気装置やダクトを用いることによって、保護板の開口部やキャビネットの後部における導流板の開口部を通して、有毒ガスは排気されることになる。
【0003】
排気キャビネットを用いるとき、相応して排気を続けるためには排気装置を運転しなければならない。この間、キャビネットのドアを完全には閉めるべきではなく、さもなければ、エア供給の失敗のないよう、前もって敷居のところに開口部を設け、モータの焼き付きを防ぐ必要がある。そして、通常、キャビネットを用いるときには、操作者が実験操作のためにキャビネットの内部へと容易に手を伸ばすことのできる、大凡の高さまでキャビネットのドアをあける必要がある。
【0004】
しかし、従来の排気キャビネットのドアが開いているとき、キャビネット内の有毒ガスは、空気力学の原理に基づいて、ドアの周囲に容易に逃げ出す。さらに、操作者がドアを開閉したり、実験操作のためにオープンキャビネットの正面に立ったり、周囲の通風があったり、周囲を歩き回る人々がいたりするときには、有毒ガスの漏れは、よりひどくなるかもしれない。
【0005】
有毒ガスの漏れの主な原因は、旋風や乱気流がキャビネットドアや操作者の胸の周囲では容易に生じることである。旋風や乱気流は、キャビネット内外の質量や運動量を交換することによって生じるのかもしれない。それゆえ、キャビネット内の汚染物質の漏れはほとんど不可避である。
【0006】
不幸にも、従来の排気キャビネットがドアの開け閉めなしに用いられることはほとんど無い。換言すれば、操作者は、キャビネットを開いているときだけ、実験操作をすることができる。そのうえ、排気キャビネットは、旋風や乱気流がなく、周囲に歩く人々がいない環境に置かれることはほとんど無い。結果として、実験室や工場や従来の排気キャビネットを用いるビルディングでは、汚染物質がキャビネットから漏れ続けるので、人々は、化学物質から不快な臭気を常に感じることになる。操作者やそこで働く人々は、臭気に慣れるかもしれないが、長期に渡って化学汚染が発生することになる。
【0007】
上記従来の排気キャビネットによる有毒ガスの漏れの問題を解決するため、斜めのデュアルエアカーテンを用いる排気キャビネットとして、図17や図18のようなものが開発されてきた。両図において、キャビネット(a)の前後には、開口部がそれぞれ設けられている。吹き付け部(b,b1)は、キャビネット(a)の底板の前後にそれぞれ設けられている。2つの吹き付け部(b,b1)を通して、互いに反対となる斜めの方向において、エアジェットが上方向に吹き上げられる。排気フード(c)は、底板の上方の空間に設けられている。排気フード(c)は、排気部(c1)を備えている。排気部(c1)は、二つの吹き付け部(b,b1)と平行になっている。排気部(c1)は、二つの吹き付け部(b,b1)の間のちょうど上に位置している。それゆえ、吹き付け部(b,b1)が吹き付けながら、排気部(c1)がエアを引くと、2つの斜めのエアカーテン(d,d1)が、その間に汚染物質を閉じ込めて排気するように、底から天井に向かって形成される。
【0008】
デュアルエアカーテン構造の排気キャビネットにおいては、キャビネットの前側と後側とには、それぞれ操作者が操作を実行するためのオープンスペースが形成される一方、有毒ガスを内部に閉じ込めるために左側と右側とは閉じられている。実際の使用では、新鮮なエアを供給するため、各細長吹き付け部(b,b1)の二つの端部は、左右の側板(e,e1)から所定の間隔(f,f1)だけ離さなければならない。
【0009】
しかしながら、デュアルエアカーテン構造の排気キャビネットにおいても、左右の側板(e,e1)が完全に周囲を取り囲んでいるので、実験結果によると、各吹き付け部(b,b1)の両端と左右の側板(e,e1)との間の隙間を通してエアが流れた後、不安定な旋風が、キャビネット内に生じる。その結果、気流が部分的に有害ガスの漏れを引き起こすように2つの隙間を通して流れ出すことがわかった。
【0010】
上記欠点を克服するために、発明者は、本願発明を研究発展させる動機を持つに至り、懸命の研究開発の結果、偏向板を有する排気装置を完成させ、これにより、使用に際して安全を保証し、汚染物質の漏れを効果的に防ぐことに成功した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明の目的は、高温の汚染物質や煤を効果的に排出することであり、汚染物質や煤の漏れを防止するよう、細長排気スロットが排気フードの底に設けられ、左右の偏向板が、キャビネットの基の空間に設けられている、偏向板を有する排気装置を提供することである。
【0012】
本願発明の更なる目的は、細長吹き付け部がキャビネットの底板の前部に備えられ、キャビネット内部に気流を閉じ込め、汚染物質の漏れを防止するように、左右の偏向板がそれぞれ、細長吹き付けスロットの左右側面に位置するエア供給空間を供給するような、偏向板を有する排気装置を提供することである。
【0013】
本願発明の更なる目的は、汚染物質が漏れる可能性を低減するために、キャビネットに流れ込む気流を円滑にし、逆流領域の大きさを減少させることを目的として、ガイド板がそれぞれ左右の側板の前端に設けられ、さらに、ガイド部が前板の底に設けられている、偏向板を有する排気装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本願発明は、キャビネットと左偏向板と右偏向板とを含む、偏向板を有する排気装置を提供する。キャビネットは、排気フードと底板と左側板と右側板と背面板とを含み、それらは空間を仕切っている。キャビネットの正面は開口部が設けられている。排気部は、下方に面する細長排気スロットを有し、前記細長排気スロットは、前記背面板に平行となっている。排気部は、エアを上方に引き上げるための排気装置と接続されている。
【0015】
左偏向板は、左側板に対して相対的に斜めになり、左偏向板と左側板との間の第1の挟角を形成するように、前記空間に垂直に置かれている。右偏向板は、左偏向板に対して対称的となっており、右側板に対して相対的に斜めになり、右偏向板と右側板との間の第2の挟角を形成するように、前記空間に垂直に置かれている。それによって、キャビネット内の気流を導き、その漏れを防止することができる。
【0016】
実施にあたって、左偏向板の前端は、左側板の右側面に対して近い位置にあり、右偏向板の前端は、右側板の左側面に対して近い位置にある。そのうえ、前記第1の挟角と第2の挟角とは背面板に向かって開いている。
【0017】
実施にあたって、湾曲した第1のガイド部が、前記排気フードの前端の底に設けられる一方で、湾曲した第2のガイド部が、前記底板の前端の頂に設けられる。さらに、前記空間に気流を導くために、湾曲した第1のガイド板が、キャビネットの左側板の前端に設けられる一方、湾曲した第2のガイド板が、キャビネットの右側板の前端に設けられる。
【0018】
実施にあたって、細長吹き付け部が底板の前面に設けられる。前記細長吹き付け部は、上方向またはキャビネットの背面板に向かって垂直にエアジェットを吹き付けるよう、上方向または斜め上方向に垂直に面する開口部を有する細長吹き付けスロットを有している。第1のエア供給空間は、細長吹き付け部の左端と左側板との間に形成される。第2のエア供給空間は、細長吹き付け部の右端と右側板との間に形成される。細長吹き付けスロットは、排気装置が作動している間、細長排気部と細長吹き付け部との間に、略二次元の斜めのエアカーテンを形成するよう、細長排気スロットに対して平行となっている。
【0019】
実施にあたって、本願発明に係る偏向板を有する排気装置は、キャビネットと、前部及び後部の左偏向板と、前部及び後部の右偏向板とを備えてもよい。この場合、キャビネットは、排気フードと底板と左側板と右側板とを備えており、これらは空間を仕切っている。開口部は、キャビネットの正面と背面とにそれぞれ設けられている。
【0020】
排気部は、排気フードの底に設けられている。排気部は、下方に面する細長排気スロットを有しており、前記細長排気スロットは、左右の側板に対して垂直となっている。排気部は、エアを上方に引くために、排気装置と接続されている。
【0021】
前部と後部の左偏向板は、各左偏向板と左側板との間に第1の挟角を形成するよう、左側板に対して相対的に斜めになるように、前記空間内に垂直に配置されている。前部の右偏向板は、前部の左偏向板と対称的になっている一方で、後部の右偏向板は、後部の左偏向板と対称的になっている。前部と後部の右偏向板は、各右偏向板と右側板との間に第2の挟角を形成するよう、右側板に対して相対的に斜めになるように、前記空間内に垂直に配置されている。
【0022】
次なる詳細な説明では、図面を伴う例示や具体的な実施態様によって、本願発明が最良に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本願発明の第1の実施形態を示す、正面側の断面図である。
【図2】本願発明の第1の実施形態を示す、側面側の断面図である。
【図3】本願発明の第1の実施形態を示す、装置上方の断面図である。
【図4】本願発明の排気フードの更なる態様を示す説明図である。
【図5】本願発明の排気フードの更なる態様を示す説明図である。
【図6】本願発明の第1の実施形態の使用を示す説明図である。
【図7】本願発明の第1の実施形態の使用を示す説明図である。
【図8】本願発明の第2の実施形態を示す、側面側の断面図である。
【図9】可動キャビネットドアが設けられた本願発明の側面側の断面図である。
【図10】本願発明の第2の実施形態を示す、装置上方の断面図である。
【図11】本願発明の第2の実施形態の使用を示す説明図である。
【図12】本願発明の第2の実施形態の使用を示す説明図である。
【図13】本願発明の第2の実施形態の使用を示す説明図である。
【図14】本願発明の第3の実施形態の使用を示す説明図である。
【図15】可動キャビネットドアの底上に設けられた吹き付け装置を有する本願発明の側面側の断面図である。
【図16】本願発明の第4の実施形態を示す、装置上方の断面図である。
【図17】従来のエアカーテンタイプの排気キャビネットの正面の断面図である。
【図18】従来のエアカーテンタイプの排気キャビネットの側面側の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1〜図3を参照しながら、キャビネット2と左偏向板3と右偏向板4とを含む、偏向板を有する排気装置1の実施形態について説明する。
【0025】
キャビネット2は、実質的に長方形か正方形をしている。キャビネット2の下側部分には、貯蔵目的の貯蔵キャビネット29が備えられている。貯蔵キャビネット29は脚を持っており、キャビネット2を支持することができる。キャビネット2は、排気フード21、底板22、左側板23、右側板24、背面板26を備えている。これらのパーツを一緒に組み立てると、キャビネット2内の空間27が規定される。
【0026】
開口部251(図2参照)は、排気フード21の前端の下に備えられる。そのうえ、湾曲した第1のガイド部252は、排気フード21の前端の底に備えられ、湾曲した第2のガイド部226は底板22の前端の頂に備えられる。
【0027】
キャビネット2の左側板23、右側板24の前端には、それぞれ、湾曲した第1のガイド板231(図3参照)、湾曲した第2のガイド板241(図3参照)を備えている。それによって、エアが開口部251に引き込まれたときに生じる乱気流や攪拌の程度を低くすることができる。
【0028】
実施にあたって、第1のガイド部252(図2参照)、第2のガイド部226(図2参照)、第1のガイド板231(図3参照)、第2のガイド板241(図3参照)は、円の四分弧または大きな曲率半径を有する曲面形状をしており、いずれも、気流を導く効果を生み出す能力を持っている。
【0029】
排気フード21は、その底に排気部211を備えている。排気部211は、下方に面する細長排気スロット212を有している。細長排気スロット212は、実質的には長方形である。細長排気スロット212は、背面板26に対して、縦方向に平行になっている。複数の排気アウトレット213(図1参照)は、排気フード21の頂に備えられている。各排気アウトレット213は、エアコレクタ214に接続されており、エアコレクタ214は、排気装置215(図2参照)に接続されている。それによって、排気装置215が作動すると、細長排気部212は、キャビネット2内のエアを引き、上方に導き流す能力を備える。実施にあたって、排気装置215としては、ドローイングファン(drawing-fan)、エアブロア(air-blower)、その他の排気能力を有する流体機構を用いることができる。
【0030】
さらに、排気フード21の底216には、防液枠217が設けられている。防液枠217は、底板216の表面から上方に突き出ており、細長排気スロット212の周囲を取り囲んでいる。液体コレクタ218は、排気フード21の底板216の後端の下に設けられている。あるいは、液体コレクタ218は、底板216の側端や前端の下に設けられてもよい。
【0031】
実施にあたって、排気フード21は、実質的にL字形の囲いである。図4に示すように、細長排気スロット212は下方向を向いており、ある角度で斜めになっている。あるいは、図5に示すように、細長排気スロット212は、背面板26から離れるような方向を向いている。
【0032】
左右の偏向板3,4は、それぞれ長方形の直立板である。左偏向板3は、左側板23に対して相対的に斜めになるように、空間27内に垂直に配置されている。そのうえ、左偏向板3の前端は、左偏向板3と左側板23との間の第1の挟角θ1を形成するように、左側板23の右側面に対して近い位置にある。第1の挟角θ1は、背面板26に向かって開いている。
【0033】
右偏向板4は、左偏向板と対称的である。右偏向板4は、右側板24に対して相対的に斜めになるように、空間27内に垂直に配置されている。そのうえ、右偏向板4の前端は、右偏向板4と右側板24との間の第2の挟角θ2を形成するように、右側板24の左側面に対して近い位置にある。第2の挟角θ2も、背面板26に向かって開いている。
【0034】
図6〜図7に示すように、台上にいかなるアイテムや設備があったとしても、温熱装置9(例えば、温熱炉や温熱板など)から発生する高温の汚染物質や煤は高温ガスの特質である浮力のために上方に舞い上がる。排気装置215が作動しているときは、高温の汚染物質や煤は、排気スロット212の中へと上方に引き上げられる。結果として、キャビネット2の外部エアは、開口部251を通して、キャビネット空間へと引き込まれる。
【0035】
気流は、高温の汚染物質や煤をしっかりと上方に運び、排気スロット212を通して排気されるよう、左偏向板3と右偏向板4とによって、きっちりと並んだしっかりとした旋風の対(図6参照)を形成するように導かれる。キャビネット2において、気流が左側板23の右側面や右側板24の左側面に沿って流れているとき、キャビネット2に流れ込む気流は、左右の偏向板3,4の案内と妨げによって、元の入り口であった開口部251には戻ってこない。結果として、高温の汚染物質や煤の漏れを防止することができる。
【0036】
図8〜図10を参照しながら、偏向板を有する排気装置1の第2の実施形態について説明する。この実施形態は、次の面で第1の実施形態と異なっている。前板25が、キャビネット2の前端の下に設けられていること、開口部251が前板25の下に備えられていること、そして、第1のガイド部252は、前板25の底の内側に設けられた、断面が半円の棒であることである。
【0037】
もしくは、実施にあたって、図9に示されるように、前板25は、可動キャビネットドア255と重ねられる側部を有してもよい。この場合、第1のガイド部252は、可動キャビネットドア255の底の内側に設けられる。そして、可動キャビネットドア255の開度を調整するために、可動キャビネットドア255は、前板25に対して相対的に上下にスライドさせることができる。
【0038】
加えて、細長吹き付け部221は、キャビネット2の底板22の前面に設けられている。第1のエア供給空間222(図10参照)は、細長吹き付け部221の左端と左側板23との間に形成されている。第2のエア供給空間223(図10参照)は、細長吹き付け部221の右端と右側板24との間に形成されている。そのうえ、細長吹き付け部221は、細長吹き付けスロット224を有し、細長吹き付けスロット224は、細長排気スロット212に平行となっている。さらに、細長吹き付け部221は、エアブロア225(図8参照)と接続されている。エアブロア225を用いることによって、吹き付けスロット224を通して、上方垂直にまたは上方斜めに、二次元のエアジェットが吹き上がる。
【0039】
実施にあたって、二次元のエアジェットは、吹き付けスロット224を通して、キャビネット2の背面板26に向かっても吹きうる。なお、エアブロア225も、クロスフローファンや他の流体機構によって置き換えうる。
【0040】
ところで、図11〜図13に示すように、気流スロット224がエアジェットを上方に吹き上げ、排気スロット212がエアジェットを引き込むように、排気装置215やエアブロア225は、同時に作動される(特に図13参照)。結果として、エアは、第1のエア供給空間222と第2のエア供給空間223とを通して供給される。そのうえ、左偏向板3と右偏向板4とは、細長吹き付けスロット224と細長排気スロット212との間の略2次元の斜めのエアカーテン8(図13参照)を形成するよう、気流を導くために用いられる。
【0041】
それによって、キャビネット2においては、斜めのエアカーテン8と後部プレート26と左右側板23,24との間で、閉じ込められた汚染物質を、排気フードの上方まで運ぶことが可能となる。これらの汚染物質は、結局は、エアコレクタ214を通して排気される。
【0042】
図14を参照すると、同図には、偏向板を有する排気装置1の第3の実施形態が示されている。この実施形態では、ストリップ形状(strip-shape)の吹き付け装置253が、前板25の底のキャビネット内外に備え付けられている。キャビネット外部の新鮮なエアを引き込み、汚染物質や高温の煤の漏れを防止する能力を高めるよう、ストリップ形状の吹き付け装置253は、下方に向かって吹き付ける。
【0043】
実施にあたって、二つの吹き付け装置253を、前板25の底の両端部それぞれに設けてもよい。もしくは、図15に示すように、前板25の側面部分が可動キャビネットドア255と重なっているとき、吹き付け装置253は、可動キャビネットドア255の底に設けられてもよい。
【0044】
さらに、図16は、偏向板31,32,41,42を有する排気装置1の第4の実施形態を示している。この実施形態では、二つの開口部251,253は、それぞれ、キャビネット2の前後に設けられている。換言すれば、二つの開口部は、キャビネット2を貫くような形となっている。
【0045】
空間27には、前部および後部の左偏向板31,32が、それぞれ、左側板23に対して相対的に斜めになるように、そして、前部および後部の右偏向板41,42が、それぞれ、右側板24に対して相対的に斜めになるように設けられている。第1の挟角θ1は、前部および後部の左偏向板31,32と左側板23との間の角を形成している。第2の挟角θ2は、前部および後部の右偏向板41,42と右側板24との間の角を形成している。そのうえ、前部の右偏向板41は、前部の左偏向板31と対称的になっており、後部の右偏向板42は、後部の左偏向板32と対称的になっている。それによって、利用者がキャビネット2の前後において、実験を行ったり、料理をしたりすることができるよう、キャビネット2の前後からの汚染物質や高温の煤の漏れを防止することができる。
【0046】
それゆえ、本願発明は、次の利点を備えている。
【0047】
本願発明によれば、左右の偏向板は、エア供給を保証するために気流を導き、キャビネットに逆流したエアが入ることを防止するのに用いられるだけでなく、キャビネット内の気流を効果的に導くことにも用いられる。それによって、汚染物質や高温の煤を効果的に排出し、汚染物質の漏れを低減することができる。
【0048】
本願発明によれば、第1のガイド板、第2のガイド板、第1のガイド部、第2のガイド部を利用することによって、エアが開口部に引き込まれる際に逆流の発生を低減するように円滑に導くことができる。それによって、汚染物質や高温の煤が逆流によって開口部から運び出されるのを防止することが可能となる。
【0049】
上記の詳細な説明と添付図面とで開示したように、本願発明は、使用の安全性を保証するよう、汚染物質や高温の煤の漏れを効果的に減少させる、偏向板を有する排気装置を提供するものである。本願発明は、新規性と産業上の利用性を備えている。
【0050】
本願発明の具体的態様について詳細に説明したが、多くの改変やバリエーションは、上記に開示された教示内容から当業者がなし得るものである。それゆえ、いかなる改変やバリエーションも、特許請求の範囲によって定義される技術的範囲に属し、本願発明の精神と均等とみなされるべきである。
【符号の説明】
【0051】
1 偏向板を有する排気装置
2 キャビネット
3 左偏向板
4 右偏向板
【技術分野】
【0001】
本願発明は、偏向板を有する排気装置に関し、特に、汚染物質の漏れを防ぐようキャビネット内の気流を導くような偏向板を有する排気装置に関するもので、工場や実験室のキャビネットや商業的なキッチンの排気キャビネットに適したものである。
【背景技術】
【0002】
従来の排気キャビネットでは、その機能を果たすため、キャビネットの上端に開口部を有する保護板が設けられており、特に設計された開口部を有する導流板がキャビネットの後部に垂直に配置されていた。排気装置やダクトを用いることによって、保護板の開口部やキャビネットの後部における導流板の開口部を通して、有毒ガスは排気されることになる。
【0003】
排気キャビネットを用いるとき、相応して排気を続けるためには排気装置を運転しなければならない。この間、キャビネットのドアを完全には閉めるべきではなく、さもなければ、エア供給の失敗のないよう、前もって敷居のところに開口部を設け、モータの焼き付きを防ぐ必要がある。そして、通常、キャビネットを用いるときには、操作者が実験操作のためにキャビネットの内部へと容易に手を伸ばすことのできる、大凡の高さまでキャビネットのドアをあける必要がある。
【0004】
しかし、従来の排気キャビネットのドアが開いているとき、キャビネット内の有毒ガスは、空気力学の原理に基づいて、ドアの周囲に容易に逃げ出す。さらに、操作者がドアを開閉したり、実験操作のためにオープンキャビネットの正面に立ったり、周囲の通風があったり、周囲を歩き回る人々がいたりするときには、有毒ガスの漏れは、よりひどくなるかもしれない。
【0005】
有毒ガスの漏れの主な原因は、旋風や乱気流がキャビネットドアや操作者の胸の周囲では容易に生じることである。旋風や乱気流は、キャビネット内外の質量や運動量を交換することによって生じるのかもしれない。それゆえ、キャビネット内の汚染物質の漏れはほとんど不可避である。
【0006】
不幸にも、従来の排気キャビネットがドアの開け閉めなしに用いられることはほとんど無い。換言すれば、操作者は、キャビネットを開いているときだけ、実験操作をすることができる。そのうえ、排気キャビネットは、旋風や乱気流がなく、周囲に歩く人々がいない環境に置かれることはほとんど無い。結果として、実験室や工場や従来の排気キャビネットを用いるビルディングでは、汚染物質がキャビネットから漏れ続けるので、人々は、化学物質から不快な臭気を常に感じることになる。操作者やそこで働く人々は、臭気に慣れるかもしれないが、長期に渡って化学汚染が発生することになる。
【0007】
上記従来の排気キャビネットによる有毒ガスの漏れの問題を解決するため、斜めのデュアルエアカーテンを用いる排気キャビネットとして、図17や図18のようなものが開発されてきた。両図において、キャビネット(a)の前後には、開口部がそれぞれ設けられている。吹き付け部(b,b1)は、キャビネット(a)の底板の前後にそれぞれ設けられている。2つの吹き付け部(b,b1)を通して、互いに反対となる斜めの方向において、エアジェットが上方向に吹き上げられる。排気フード(c)は、底板の上方の空間に設けられている。排気フード(c)は、排気部(c1)を備えている。排気部(c1)は、二つの吹き付け部(b,b1)と平行になっている。排気部(c1)は、二つの吹き付け部(b,b1)の間のちょうど上に位置している。それゆえ、吹き付け部(b,b1)が吹き付けながら、排気部(c1)がエアを引くと、2つの斜めのエアカーテン(d,d1)が、その間に汚染物質を閉じ込めて排気するように、底から天井に向かって形成される。
【0008】
デュアルエアカーテン構造の排気キャビネットにおいては、キャビネットの前側と後側とには、それぞれ操作者が操作を実行するためのオープンスペースが形成される一方、有毒ガスを内部に閉じ込めるために左側と右側とは閉じられている。実際の使用では、新鮮なエアを供給するため、各細長吹き付け部(b,b1)の二つの端部は、左右の側板(e,e1)から所定の間隔(f,f1)だけ離さなければならない。
【0009】
しかしながら、デュアルエアカーテン構造の排気キャビネットにおいても、左右の側板(e,e1)が完全に周囲を取り囲んでいるので、実験結果によると、各吹き付け部(b,b1)の両端と左右の側板(e,e1)との間の隙間を通してエアが流れた後、不安定な旋風が、キャビネット内に生じる。その結果、気流が部分的に有害ガスの漏れを引き起こすように2つの隙間を通して流れ出すことがわかった。
【0010】
上記欠点を克服するために、発明者は、本願発明を研究発展させる動機を持つに至り、懸命の研究開発の結果、偏向板を有する排気装置を完成させ、これにより、使用に際して安全を保証し、汚染物質の漏れを効果的に防ぐことに成功した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明の目的は、高温の汚染物質や煤を効果的に排出することであり、汚染物質や煤の漏れを防止するよう、細長排気スロットが排気フードの底に設けられ、左右の偏向板が、キャビネットの基の空間に設けられている、偏向板を有する排気装置を提供することである。
【0012】
本願発明の更なる目的は、細長吹き付け部がキャビネットの底板の前部に備えられ、キャビネット内部に気流を閉じ込め、汚染物質の漏れを防止するように、左右の偏向板がそれぞれ、細長吹き付けスロットの左右側面に位置するエア供給空間を供給するような、偏向板を有する排気装置を提供することである。
【0013】
本願発明の更なる目的は、汚染物質が漏れる可能性を低減するために、キャビネットに流れ込む気流を円滑にし、逆流領域の大きさを減少させることを目的として、ガイド板がそれぞれ左右の側板の前端に設けられ、さらに、ガイド部が前板の底に設けられている、偏向板を有する排気装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本願発明は、キャビネットと左偏向板と右偏向板とを含む、偏向板を有する排気装置を提供する。キャビネットは、排気フードと底板と左側板と右側板と背面板とを含み、それらは空間を仕切っている。キャビネットの正面は開口部が設けられている。排気部は、下方に面する細長排気スロットを有し、前記細長排気スロットは、前記背面板に平行となっている。排気部は、エアを上方に引き上げるための排気装置と接続されている。
【0015】
左偏向板は、左側板に対して相対的に斜めになり、左偏向板と左側板との間の第1の挟角を形成するように、前記空間に垂直に置かれている。右偏向板は、左偏向板に対して対称的となっており、右側板に対して相対的に斜めになり、右偏向板と右側板との間の第2の挟角を形成するように、前記空間に垂直に置かれている。それによって、キャビネット内の気流を導き、その漏れを防止することができる。
【0016】
実施にあたって、左偏向板の前端は、左側板の右側面に対して近い位置にあり、右偏向板の前端は、右側板の左側面に対して近い位置にある。そのうえ、前記第1の挟角と第2の挟角とは背面板に向かって開いている。
【0017】
実施にあたって、湾曲した第1のガイド部が、前記排気フードの前端の底に設けられる一方で、湾曲した第2のガイド部が、前記底板の前端の頂に設けられる。さらに、前記空間に気流を導くために、湾曲した第1のガイド板が、キャビネットの左側板の前端に設けられる一方、湾曲した第2のガイド板が、キャビネットの右側板の前端に設けられる。
【0018】
実施にあたって、細長吹き付け部が底板の前面に設けられる。前記細長吹き付け部は、上方向またはキャビネットの背面板に向かって垂直にエアジェットを吹き付けるよう、上方向または斜め上方向に垂直に面する開口部を有する細長吹き付けスロットを有している。第1のエア供給空間は、細長吹き付け部の左端と左側板との間に形成される。第2のエア供給空間は、細長吹き付け部の右端と右側板との間に形成される。細長吹き付けスロットは、排気装置が作動している間、細長排気部と細長吹き付け部との間に、略二次元の斜めのエアカーテンを形成するよう、細長排気スロットに対して平行となっている。
【0019】
実施にあたって、本願発明に係る偏向板を有する排気装置は、キャビネットと、前部及び後部の左偏向板と、前部及び後部の右偏向板とを備えてもよい。この場合、キャビネットは、排気フードと底板と左側板と右側板とを備えており、これらは空間を仕切っている。開口部は、キャビネットの正面と背面とにそれぞれ設けられている。
【0020】
排気部は、排気フードの底に設けられている。排気部は、下方に面する細長排気スロットを有しており、前記細長排気スロットは、左右の側板に対して垂直となっている。排気部は、エアを上方に引くために、排気装置と接続されている。
【0021】
前部と後部の左偏向板は、各左偏向板と左側板との間に第1の挟角を形成するよう、左側板に対して相対的に斜めになるように、前記空間内に垂直に配置されている。前部の右偏向板は、前部の左偏向板と対称的になっている一方で、後部の右偏向板は、後部の左偏向板と対称的になっている。前部と後部の右偏向板は、各右偏向板と右側板との間に第2の挟角を形成するよう、右側板に対して相対的に斜めになるように、前記空間内に垂直に配置されている。
【0022】
次なる詳細な説明では、図面を伴う例示や具体的な実施態様によって、本願発明が最良に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本願発明の第1の実施形態を示す、正面側の断面図である。
【図2】本願発明の第1の実施形態を示す、側面側の断面図である。
【図3】本願発明の第1の実施形態を示す、装置上方の断面図である。
【図4】本願発明の排気フードの更なる態様を示す説明図である。
【図5】本願発明の排気フードの更なる態様を示す説明図である。
【図6】本願発明の第1の実施形態の使用を示す説明図である。
【図7】本願発明の第1の実施形態の使用を示す説明図である。
【図8】本願発明の第2の実施形態を示す、側面側の断面図である。
【図9】可動キャビネットドアが設けられた本願発明の側面側の断面図である。
【図10】本願発明の第2の実施形態を示す、装置上方の断面図である。
【図11】本願発明の第2の実施形態の使用を示す説明図である。
【図12】本願発明の第2の実施形態の使用を示す説明図である。
【図13】本願発明の第2の実施形態の使用を示す説明図である。
【図14】本願発明の第3の実施形態の使用を示す説明図である。
【図15】可動キャビネットドアの底上に設けられた吹き付け装置を有する本願発明の側面側の断面図である。
【図16】本願発明の第4の実施形態を示す、装置上方の断面図である。
【図17】従来のエアカーテンタイプの排気キャビネットの正面の断面図である。
【図18】従来のエアカーテンタイプの排気キャビネットの側面側の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1〜図3を参照しながら、キャビネット2と左偏向板3と右偏向板4とを含む、偏向板を有する排気装置1の実施形態について説明する。
【0025】
キャビネット2は、実質的に長方形か正方形をしている。キャビネット2の下側部分には、貯蔵目的の貯蔵キャビネット29が備えられている。貯蔵キャビネット29は脚を持っており、キャビネット2を支持することができる。キャビネット2は、排気フード21、底板22、左側板23、右側板24、背面板26を備えている。これらのパーツを一緒に組み立てると、キャビネット2内の空間27が規定される。
【0026】
開口部251(図2参照)は、排気フード21の前端の下に備えられる。そのうえ、湾曲した第1のガイド部252は、排気フード21の前端の底に備えられ、湾曲した第2のガイド部226は底板22の前端の頂に備えられる。
【0027】
キャビネット2の左側板23、右側板24の前端には、それぞれ、湾曲した第1のガイド板231(図3参照)、湾曲した第2のガイド板241(図3参照)を備えている。それによって、エアが開口部251に引き込まれたときに生じる乱気流や攪拌の程度を低くすることができる。
【0028】
実施にあたって、第1のガイド部252(図2参照)、第2のガイド部226(図2参照)、第1のガイド板231(図3参照)、第2のガイド板241(図3参照)は、円の四分弧または大きな曲率半径を有する曲面形状をしており、いずれも、気流を導く効果を生み出す能力を持っている。
【0029】
排気フード21は、その底に排気部211を備えている。排気部211は、下方に面する細長排気スロット212を有している。細長排気スロット212は、実質的には長方形である。細長排気スロット212は、背面板26に対して、縦方向に平行になっている。複数の排気アウトレット213(図1参照)は、排気フード21の頂に備えられている。各排気アウトレット213は、エアコレクタ214に接続されており、エアコレクタ214は、排気装置215(図2参照)に接続されている。それによって、排気装置215が作動すると、細長排気部212は、キャビネット2内のエアを引き、上方に導き流す能力を備える。実施にあたって、排気装置215としては、ドローイングファン(drawing-fan)、エアブロア(air-blower)、その他の排気能力を有する流体機構を用いることができる。
【0030】
さらに、排気フード21の底216には、防液枠217が設けられている。防液枠217は、底板216の表面から上方に突き出ており、細長排気スロット212の周囲を取り囲んでいる。液体コレクタ218は、排気フード21の底板216の後端の下に設けられている。あるいは、液体コレクタ218は、底板216の側端や前端の下に設けられてもよい。
【0031】
実施にあたって、排気フード21は、実質的にL字形の囲いである。図4に示すように、細長排気スロット212は下方向を向いており、ある角度で斜めになっている。あるいは、図5に示すように、細長排気スロット212は、背面板26から離れるような方向を向いている。
【0032】
左右の偏向板3,4は、それぞれ長方形の直立板である。左偏向板3は、左側板23に対して相対的に斜めになるように、空間27内に垂直に配置されている。そのうえ、左偏向板3の前端は、左偏向板3と左側板23との間の第1の挟角θ1を形成するように、左側板23の右側面に対して近い位置にある。第1の挟角θ1は、背面板26に向かって開いている。
【0033】
右偏向板4は、左偏向板と対称的である。右偏向板4は、右側板24に対して相対的に斜めになるように、空間27内に垂直に配置されている。そのうえ、右偏向板4の前端は、右偏向板4と右側板24との間の第2の挟角θ2を形成するように、右側板24の左側面に対して近い位置にある。第2の挟角θ2も、背面板26に向かって開いている。
【0034】
図6〜図7に示すように、台上にいかなるアイテムや設備があったとしても、温熱装置9(例えば、温熱炉や温熱板など)から発生する高温の汚染物質や煤は高温ガスの特質である浮力のために上方に舞い上がる。排気装置215が作動しているときは、高温の汚染物質や煤は、排気スロット212の中へと上方に引き上げられる。結果として、キャビネット2の外部エアは、開口部251を通して、キャビネット空間へと引き込まれる。
【0035】
気流は、高温の汚染物質や煤をしっかりと上方に運び、排気スロット212を通して排気されるよう、左偏向板3と右偏向板4とによって、きっちりと並んだしっかりとした旋風の対(図6参照)を形成するように導かれる。キャビネット2において、気流が左側板23の右側面や右側板24の左側面に沿って流れているとき、キャビネット2に流れ込む気流は、左右の偏向板3,4の案内と妨げによって、元の入り口であった開口部251には戻ってこない。結果として、高温の汚染物質や煤の漏れを防止することができる。
【0036】
図8〜図10を参照しながら、偏向板を有する排気装置1の第2の実施形態について説明する。この実施形態は、次の面で第1の実施形態と異なっている。前板25が、キャビネット2の前端の下に設けられていること、開口部251が前板25の下に備えられていること、そして、第1のガイド部252は、前板25の底の内側に設けられた、断面が半円の棒であることである。
【0037】
もしくは、実施にあたって、図9に示されるように、前板25は、可動キャビネットドア255と重ねられる側部を有してもよい。この場合、第1のガイド部252は、可動キャビネットドア255の底の内側に設けられる。そして、可動キャビネットドア255の開度を調整するために、可動キャビネットドア255は、前板25に対して相対的に上下にスライドさせることができる。
【0038】
加えて、細長吹き付け部221は、キャビネット2の底板22の前面に設けられている。第1のエア供給空間222(図10参照)は、細長吹き付け部221の左端と左側板23との間に形成されている。第2のエア供給空間223(図10参照)は、細長吹き付け部221の右端と右側板24との間に形成されている。そのうえ、細長吹き付け部221は、細長吹き付けスロット224を有し、細長吹き付けスロット224は、細長排気スロット212に平行となっている。さらに、細長吹き付け部221は、エアブロア225(図8参照)と接続されている。エアブロア225を用いることによって、吹き付けスロット224を通して、上方垂直にまたは上方斜めに、二次元のエアジェットが吹き上がる。
【0039】
実施にあたって、二次元のエアジェットは、吹き付けスロット224を通して、キャビネット2の背面板26に向かっても吹きうる。なお、エアブロア225も、クロスフローファンや他の流体機構によって置き換えうる。
【0040】
ところで、図11〜図13に示すように、気流スロット224がエアジェットを上方に吹き上げ、排気スロット212がエアジェットを引き込むように、排気装置215やエアブロア225は、同時に作動される(特に図13参照)。結果として、エアは、第1のエア供給空間222と第2のエア供給空間223とを通して供給される。そのうえ、左偏向板3と右偏向板4とは、細長吹き付けスロット224と細長排気スロット212との間の略2次元の斜めのエアカーテン8(図13参照)を形成するよう、気流を導くために用いられる。
【0041】
それによって、キャビネット2においては、斜めのエアカーテン8と後部プレート26と左右側板23,24との間で、閉じ込められた汚染物質を、排気フードの上方まで運ぶことが可能となる。これらの汚染物質は、結局は、エアコレクタ214を通して排気される。
【0042】
図14を参照すると、同図には、偏向板を有する排気装置1の第3の実施形態が示されている。この実施形態では、ストリップ形状(strip-shape)の吹き付け装置253が、前板25の底のキャビネット内外に備え付けられている。キャビネット外部の新鮮なエアを引き込み、汚染物質や高温の煤の漏れを防止する能力を高めるよう、ストリップ形状の吹き付け装置253は、下方に向かって吹き付ける。
【0043】
実施にあたって、二つの吹き付け装置253を、前板25の底の両端部それぞれに設けてもよい。もしくは、図15に示すように、前板25の側面部分が可動キャビネットドア255と重なっているとき、吹き付け装置253は、可動キャビネットドア255の底に設けられてもよい。
【0044】
さらに、図16は、偏向板31,32,41,42を有する排気装置1の第4の実施形態を示している。この実施形態では、二つの開口部251,253は、それぞれ、キャビネット2の前後に設けられている。換言すれば、二つの開口部は、キャビネット2を貫くような形となっている。
【0045】
空間27には、前部および後部の左偏向板31,32が、それぞれ、左側板23に対して相対的に斜めになるように、そして、前部および後部の右偏向板41,42が、それぞれ、右側板24に対して相対的に斜めになるように設けられている。第1の挟角θ1は、前部および後部の左偏向板31,32と左側板23との間の角を形成している。第2の挟角θ2は、前部および後部の右偏向板41,42と右側板24との間の角を形成している。そのうえ、前部の右偏向板41は、前部の左偏向板31と対称的になっており、後部の右偏向板42は、後部の左偏向板32と対称的になっている。それによって、利用者がキャビネット2の前後において、実験を行ったり、料理をしたりすることができるよう、キャビネット2の前後からの汚染物質や高温の煤の漏れを防止することができる。
【0046】
それゆえ、本願発明は、次の利点を備えている。
【0047】
本願発明によれば、左右の偏向板は、エア供給を保証するために気流を導き、キャビネットに逆流したエアが入ることを防止するのに用いられるだけでなく、キャビネット内の気流を効果的に導くことにも用いられる。それによって、汚染物質や高温の煤を効果的に排出し、汚染物質の漏れを低減することができる。
【0048】
本願発明によれば、第1のガイド板、第2のガイド板、第1のガイド部、第2のガイド部を利用することによって、エアが開口部に引き込まれる際に逆流の発生を低減するように円滑に導くことができる。それによって、汚染物質や高温の煤が逆流によって開口部から運び出されるのを防止することが可能となる。
【0049】
上記の詳細な説明と添付図面とで開示したように、本願発明は、使用の安全性を保証するよう、汚染物質や高温の煤の漏れを効果的に減少させる、偏向板を有する排気装置を提供するものである。本願発明は、新規性と産業上の利用性を備えている。
【0050】
本願発明の具体的態様について詳細に説明したが、多くの改変やバリエーションは、上記に開示された教示内容から当業者がなし得るものである。それゆえ、いかなる改変やバリエーションも、特許請求の範囲によって定義される技術的範囲に属し、本願発明の精神と均等とみなされるべきである。
【符号の説明】
【0051】
1 偏向板を有する排気装置
2 キャビネット
3 左偏向板
4 右偏向板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気フードと底板と左側板と右側板と背面板とによって仕切られた空間を有し、前記空間の正面は開口し、前記排気フードの底には排気部が設けられ、前記排気部は下方に面する細長排気スロットを有し、前記細長排気スロットは、前記背面板に平行となっており、前記排気部はエアを上方に引くための排気装置と接続されている、キャビネットと、
左偏向板と前記左側板との間の第1の挟角を形成するように、前記左側板に対して相対的に斜めになるように前記空間内に垂直に配置される前記左偏向板と、
前記左偏向板と対称的に配置され、右偏向板と右側板との間の第2の挟角を形成するように、前記右側板に対して相対的に斜めになるように前記空間内に垂直に配置される前記右偏向板とを含むことを特徴とする偏向板を有する排気装置。
【請求項2】
前記左偏向板の前端は、前記左側板の右側面に近い位置にある一方、前記右偏向板の前端は、前記右側板の左側面に近い位置にあり、前記第1の挟角および第2の挟角は、前記背面板に向かって開いていることを特徴とする請求項1に記載の偏向板を有する排気装置。
【請求項3】
前記排気フードの底の前端には、湾曲した第1のガイド部が設けられる一方、前記底板の前端の頂には湾曲した第2のガイド部が設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の偏向板を有する排気装置。
【請求項4】
前記キャビネットの正面には、その下に開口部が形成されている前板が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の偏向板を有する排気装置。
【請求項5】
エアを下方に吹き付けるための細長吹き付け装置が、前記前板の底に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の偏向板を有する排気装置。
【請求項6】
細長吹き付け部が前記底板の前部に設けられるとともに、前記細長吹き付け部は、上方に向かって開口部を有する細長吹き付けスロットを有しており、
第1のエア供給空間は、前記細長吹き付け部の左端と前記左側板との間に形成される一方、第2のエア供給空間は、前記細長吹き付け部の右端と前記右側板との間に形成され、
前記細長吹き付けスロットは、前記排気装置が作動している間、細長の前記排気部分と前記細長吹き付け部との間に、略2次元の斜めのエアカーテンを形成するよう、前記細長排気スロットと平行であることを特徴とする請求項1または2に記載の偏向板を有する排気装置。
【請求項7】
気流を前記空間に導くために、
湾曲した第1のガイド板が前記キャビネットの前記左側板の前端に設けられ、
湾曲した第2のガイド板が前記キャビネットの前記右側板の前端に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の偏向板を有する排気装置。
【請求項8】
排気フードと底板と左側板と右側板とによって仕切られた空間を有し、キャビネットの前面と背面とは開口しており、排気部が前記排気フードの底に設けられ、前記排気部は、下方に面する細長排気スロットを有し、前記細長排気スロットは、前記左右側板に垂直であり、前記排気部は、エアを上方に引くための排気装置と接続されている、キャビネットと、
前後部の左偏向板と前記左側板との間の第1の挟角を形成するように、前記左側板に対して相対的に斜めになるように前記空間内に垂直に配置される前記前後部の各左偏向板と、
前部の右偏向板は、前記前部の左偏向板と対称的である一方、後部の右偏向板は、前記後部の左偏向板と対称的であり、前後部の右偏向板と右側板との間の第2の挟角を形成するように、前記右側板に対して相対的に斜めになるように前記空間内に垂直に配置される前記前後部の各右偏向板とを含むことを特徴とする偏向板を有する排気装置。
【請求項1】
排気フードと底板と左側板と右側板と背面板とによって仕切られた空間を有し、前記空間の正面は開口し、前記排気フードの底には排気部が設けられ、前記排気部は下方に面する細長排気スロットを有し、前記細長排気スロットは、前記背面板に平行となっており、前記排気部はエアを上方に引くための排気装置と接続されている、キャビネットと、
左偏向板と前記左側板との間の第1の挟角を形成するように、前記左側板に対して相対的に斜めになるように前記空間内に垂直に配置される前記左偏向板と、
前記左偏向板と対称的に配置され、右偏向板と右側板との間の第2の挟角を形成するように、前記右側板に対して相対的に斜めになるように前記空間内に垂直に配置される前記右偏向板とを含むことを特徴とする偏向板を有する排気装置。
【請求項2】
前記左偏向板の前端は、前記左側板の右側面に近い位置にある一方、前記右偏向板の前端は、前記右側板の左側面に近い位置にあり、前記第1の挟角および第2の挟角は、前記背面板に向かって開いていることを特徴とする請求項1に記載の偏向板を有する排気装置。
【請求項3】
前記排気フードの底の前端には、湾曲した第1のガイド部が設けられる一方、前記底板の前端の頂には湾曲した第2のガイド部が設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の偏向板を有する排気装置。
【請求項4】
前記キャビネットの正面には、その下に開口部が形成されている前板が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の偏向板を有する排気装置。
【請求項5】
エアを下方に吹き付けるための細長吹き付け装置が、前記前板の底に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の偏向板を有する排気装置。
【請求項6】
細長吹き付け部が前記底板の前部に設けられるとともに、前記細長吹き付け部は、上方に向かって開口部を有する細長吹き付けスロットを有しており、
第1のエア供給空間は、前記細長吹き付け部の左端と前記左側板との間に形成される一方、第2のエア供給空間は、前記細長吹き付け部の右端と前記右側板との間に形成され、
前記細長吹き付けスロットは、前記排気装置が作動している間、細長の前記排気部分と前記細長吹き付け部との間に、略2次元の斜めのエアカーテンを形成するよう、前記細長排気スロットと平行であることを特徴とする請求項1または2に記載の偏向板を有する排気装置。
【請求項7】
気流を前記空間に導くために、
湾曲した第1のガイド板が前記キャビネットの前記左側板の前端に設けられ、
湾曲した第2のガイド板が前記キャビネットの前記右側板の前端に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の偏向板を有する排気装置。
【請求項8】
排気フードと底板と左側板と右側板とによって仕切られた空間を有し、キャビネットの前面と背面とは開口しており、排気部が前記排気フードの底に設けられ、前記排気部は、下方に面する細長排気スロットを有し、前記細長排気スロットは、前記左右側板に垂直であり、前記排気部は、エアを上方に引くための排気装置と接続されている、キャビネットと、
前後部の左偏向板と前記左側板との間の第1の挟角を形成するように、前記左側板に対して相対的に斜めになるように前記空間内に垂直に配置される前記前後部の各左偏向板と、
前部の右偏向板は、前記前部の左偏向板と対称的である一方、後部の右偏向板は、前記後部の左偏向板と対称的であり、前後部の右偏向板と右側板との間の第2の挟角を形成するように、前記右側板に対して相対的に斜めになるように前記空間内に垂直に配置される前記前後部の各右偏向板とを含むことを特徴とする偏向板を有する排気装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−198008(P2012−198008A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158644(P2011−158644)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(503378235)国立台湾科技大学 (32)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(503378235)国立台湾科技大学 (32)
【Fターム(参考)】
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