偏向素子および偏向素子のアライメント方法
【課題】より正確なアライメントを行うことができる偏向素子およびアライメント方法を提供する。
【解決手段】アライメントパタン6は、X軸に平行な軸から離れるにつれて波長分離方向の反射面の幅が変化する形状を有する。これにより、そのアライメントパタン6に入力光を照射したときに、そのアライメントパタン6による反射光の帯域幅が、MEMSミラーアレイチップ5がY軸に位置ずれしていない場合に極値をとるようにすることが可能となる。結果として、その反射光の帯域幅に基づいてMEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置を調整するだけで、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向におけるアライメントを行うことができる。
【解決手段】アライメントパタン6は、X軸に平行な軸から離れるにつれて波長分離方向の反射面の幅が変化する形状を有する。これにより、そのアライメントパタン6に入力光を照射したときに、そのアライメントパタン6による反射光の帯域幅が、MEMSミラーアレイチップ5がY軸に位置ずれしていない場合に極値をとるようにすることが可能となる。結果として、その反射光の帯域幅に基づいてMEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置を調整するだけで、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向におけるアライメントを行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏向素子および偏向素子のアライメント方法に関し、特に、アライメントパタンを有する偏向素子および偏向素子のアライメント方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信の分野では、1つの波長に1つの光信号を対応させ、波長多重して伝送するWDM(Wavelength Division Multiplexing)技術により、一本の光ファイバにより大容量の光伝送を行うことが実現されている。このような光通信技術の発展に伴って、光信号を電気信号等に変換することなく経路を切り替える装置として、偏向素子を備えた光スイッチが脚光を浴びている。例えば、数十もの波長から任意の波長を選択して複数の出力ファイバのうちの何れかへ出力可能な波長選択型光スイッチ(例えば、特許文献1参照)が提案されている。この波長選択型光スイッチ(WSS:Wavelength Selective Switch)の一例を図11に示す。
【0003】
図11に示す波長選択型光スイッチは、複数の光ファイバからなるファイバアレイ1と、マイクロレンズアレイ2と、集光レンズ3と、4f光学系4と、複数のMEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラー素子を有し、偏向素子として機能するMEMSミラーアレイチップ100とがこの順番で1の方向(以下、「Z軸方向」という)に沿って配列された構成を有する。
【0004】
ファイバアレイ1は、Z軸に平行な光軸を有する複数の光ファイバ(図11の場合7本)を、Z軸と直交するY軸方向に並設した構成を有しており、1つの光ファイバ1aが入力ポートとして用いられ、他の6つの光ファイバ1bが出力ポートとして用いられる。なお、上述した光ファイバアレイ1は、複数の光ファイバのうち中央に位置する光ファイバ1aを入力ポートとして用いているが、入力ポートの位置はこれに限定されず、例えば光ファイバアレイの端に位置するポートを用いてもよい。
【0005】
マイクロレンズアレイ2は、複数のマイクロレンズをファイバアレイ1の各光ファイバ端面と対向するように、Y軸方向に沿って並設したものである。なお、マイクロレンズは入出力光ファイバのモードフィールド半径を拡大するために用いているが、その必要がなければ省略しても構わない。
【0006】
4f光学系4は、それぞれ焦点距離がfの第1レンズ41および第2レンズ42と、透過型の回折格子43とから構成され、第1レンズ41、回折格子43、第2レンズ42の順序で集光レンズ3からZ軸方向の正の側に互いにfの間隔で配設される。このうち、第1レンズ41は、集光レンズ3から、集光レンズ3の焦点距離と第1レンズ41の焦点距離fとを合計した距離だけ離間した位置に配設される。
【0007】
MEMSミラーアレイチップ100は、図12に示すように、平面視略矩形の基部101と、この基部101内部に配設され、X軸方向に所定の間隔で配列された複数のMEMSミラー素子102とを備える。MEMSミラー素子102は、X軸方向およびY軸方向に回動可能とされたミラー102aを備えている。なお、各MEMSミラー素子102の構成は、例えば特許文献1に記載されているので、本明細書ではその詳細な説明を省略する。また、上述した波長選択型光スイッチは、1入力多出力の構成を例に説明したが、他入力1出力の構成であってもよい。さらに、回折格子43については、透過型に限定されず、反射型であってもよい。
【0008】
このような波長選択型光スイッチにおいて、所定の波長間隔で所定のチャネル数だけ波長分離されたWDM信号光がファイバアレイ1の入力ポート1aに入力されると、そのWDM信号光は、マイクロレンズアレイ2、集光レンズ3を介して4f光学系4に到達し、第1レンズ41を介して回折格子43に入射して、所定の波長チャネル数に分波される。分波された光は、それぞれ第2レンズ42の反対側の焦点面のX軸上に整列してビームウェストを形成する。このビームウェスト位置には、各チャネルに対応して適切なピッチでMEMSミラー素子102が配置されたMEMSミラーアレイチップ100が配置される。分波された光のビームウェストの配列と、各波長チャネルに対応して適切なピッチでX軸方向に配列された各MEMSミラー素子102は空間的に一致するように配設される。この状態で、MEMSミラー素子102をミラー102aをX軸回りに所定の角度だけ回動させると、そのMEMSミラー素子102に照射された光をその所定の角度に対応する方向に反射させ、4f光学系4、集光レンズ3およびマイクロレンズアレイ2を介して所定の出力ポート1bから出力させることができる。このように、MEMSミラー素子102のミラー102aをX軸回りに選択的に回動させることにより、チャネル毎の出力ポートの切り替え、いわゆるスイッチングを選択的に行うことができる。
なお、波長選択光スイッチにおいては、波長チャネルの間隔を便宜上、周波数で表示することが多いため、以下においては、波長チャネルやその間隔、帯域について周波数を用いて表現することとする。
【0009】
このような波長選択型光スイッチを組み立てる場合、分波された光のビームウェストが対応するMEMSミラー素子102のミラー102a上に位置するように、MEMSミラーアレイチップ100と他の光学系との高精度なアライメントを行うことが重要となる。
【0010】
仮に、分波方向(X軸方向)にMEMSミラーアレイチップ100が位置ずれしていると、周波数分離された信号光のビームウェスト位置が、それぞれの周波数チャネルに対応するミラー102aの中心位置からX軸方向にずれるために、実効的な通過帯域が狭くなり、高速信号を通過させることが困難となる。
そこで、このようなX軸方向の位置ずれを抑制するため、MEMSミラーアレイチップ100のアライメントにおいては、ASE(Amplified Spontaneous Emission)等の広帯域光源からモニタ光を入力ポート1aに入力し、MEMSミラー素子102のミラー102aで反射されて入力ポート1aから出力される光のスペクトル形状を観察している。具体的には、ASE光源から入力ポート1aを介して入力された広帯域光(以下、「ASE光」と言う。)は、集光レンズ3および4f光学系4によって周波数分離され、X軸に平行な周波数軸を有する帯状の光となってMEMSミラーアレイチップ100に照射される。MEMSミラーアレイチップ100上の各ミラー102aは、その反射領域のX軸方向の幅が、各チャネルで透過させる信号の周波数帯域に対応するため、この帯状の光を所定の帯域幅で矩形のスペクトル形状に切り取って反射させ、この反射光を4f光学系4および集光レンズ3を通して入力ポート1aに入射させる。光スペクトルアナライザによりその反射光の光スペクトル形状を観察すると、周波数軸と光強度軸とから構成される座標平面上において、各ミラー102aにより所定の周波数帯域で切り取られた矩形のスペクトルが全チャネル分表示され、櫛歯状のスペクトル形状となって観測される。この櫛歯状のスペクトルは、MEMSミラーアレイチップ100をX軸方向に移動させると、周波数軸方向に移動する。したがって、櫛歯状のそれぞれのスペクトルの中央が所望する周波数位置に一致するようにMEMSミラーアレイチップ100をX軸方向に移動させることにより、X軸方向のMEMSミラーアレイチップ100の位置を調整することができる。また、この櫛歯状のスペクトルの頂部が全チャネルにわたり同程度の光強度となるように、Z軸を中心にMEMSミラーアレイチップ100を回転させることにより、MEMSミラーアレイチップ100のZ軸を中心とする回転方向の位置ずれを補正することもできる。
【0011】
一方、MEMSミラー素子102の配列方向(X軸方向)に垂直なY軸方向にMEMSミラーアレイチップ100が位置ずれすると、ビームの一部がMEMSミラーサイズによりクリッピングされ、反射光量が減少してしまう。このようなY軸方向の位置ずれは、上述したような櫛歯状のスペクトルを観察しても、その周波数軸方向の位置が変わるわけではないので、検出することが困難である。
そこで、従来では、図12に示すように、MEMSミラーアレイチップ100において、基部101の両側辺と、X軸方向に配列されたMEMSミラー素子102のうち両端部に位置するMEMSミラー素子102との間の基部101上の2つの領域にアライメントパタン110を設け、これらのアライメントパタン110から反射される光のスペクトル形状を観察することにより、Y軸方向のアライメントを行っている(特許文献2参照。)。
そのアライメントパタン110は、例えば金やアルミなど周囲の基部101の領域よりも高い反射率を有する材料から構成され、対向する一対の辺がX軸に平行で、かつ一方の対角線がY軸に沿った略平行四辺形の平面形状を有している。また、この平行四辺形は、その重心が各ミラー52aの中心と同一直線上に位置するように形成されている。
【0012】
このようなアライメントパタン110を用いたMEMSミラーアレイチップ100のY軸方向のアライメントは、上述したX軸方向のアライメントと同様、ASE等の広帯域光源から光を入力ポート1aに入力し、その入力ポート1aから出力される光のスペクトル形状を観察することにより行っている。具体的には、入力ポート1aを介して入力されたASE光を、マイクロレンズアレイ2、集光レンズ3および4f光学系4を通して周波数分離してX軸に平行な周波数軸を有する帯状の光とし、この帯状の光をアライメントパタン110で反射させ、この反射光を4f光学系4、集光レンズ3およびマイクロレンズアレイ2を通して入力光ファイバ1aに入射させ、光スペクトルアナライザによりその反射光の光スペクトル形状を観察する。
【0013】
MEMSミラーアレイチップ100がY軸方向に位置ずれしていない場合には、帯状の光が、アライメントパタン110からY軸方向にはみ出さずに平行四辺形のアライメントパタン110全体に照射される。すると、光スペクトルアナライザによって観察されるアライメントパタン110の反射光の光スペクトル形状は、二等辺三角形となる。
一方、MEMSミラーアレイチップ100がY軸方向に位置ずれした場合には、帯状の光が、アライメントパタン110からY軸方向にはみ出すので、平行四辺形のアライメントパタン110の一部に照射されることとなる。すると、光スペクトルアナライザによって観察されるアライメントパタン110の反射光の光スペクトル形状は、三角形の頂点が削れた、いわゆる台形状となる。そこで、スペクトル形状が二等辺三角形状になるように、そのスペクトル形状を観察しながらMEMSミラーアレイチップ100をY軸方向に移動させることによって、そのY軸方向のアライメントを行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−229916号公報
【特許文献2】特開2009−104081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、第2レンズ42のMEMSミラーアレイチップ100側の焦点面において、ビームウェスト径がアライメント精度よりも大きい場合は、MEMSミラーアレイチップ100がミラーアレイチップ100をY軸方向に移動させても、反射光のスペクトル形状の変化が鋭敏に現れないことがある。例えば、Y軸方向のビームウェスト径がアライメント精度の5〜10倍ある場合、ビームがアライメントパタン110の一方の端部からY軸方向にアライメント精度の2倍はみ出したとしても、損失は0.2〜0.5dBという僅かな量しか変化せず、スペクトル形状の二等辺三角形から台形への変化を判別しにくい。このように、ビームウェスト径と要求されるアライメント精度、アライメントパタン形状の組み合わせによっては、アライメント工程において光スペクトルアナライザによって観察される反射光のスペクトル形状の変化は、MEMSミラーアレイチップ100のY軸方向の移動に対して必ずしも鋭いピークを有するとは限らない。このため、従来の方法では、Y軸方向のアライメントを正確に調整することが困難であった。
【0016】
そこで、本願発明は、より正確なアライメントを行うことができる偏向素子およびアライメント方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述したような課題を解決するために、本発明に係る偏向素子は、波長に応じて分離された入力光を偏向する偏向素子であって、周囲と異なる反射率を有し、入力光の波長分離方向に平行な所定の第1の軸から、この第1の軸と直交し入力光の光軸と交わる第2の軸に沿って離れるにつれて波長分離方向の幅が変化し、第1の軸上に波長分離方向の幅の極値を有する形状のアライメントパタンを備えることを特徴とするものである。
【0018】
上記偏向素子において、アライメントパタンは、上記第1の軸と上記第2の軸との交点に対して点対称な形状を有するようにしてもよい。ここで、アライメントパタンは、対角線の一方が第1の軸、他方が第2の軸に平行な菱形の形状を有するようにしてもよい。また、アライメントパタンは、第2の軸の方向の中央部における波長分離方向の幅が極値となる鼓型の形状を有するようにしてもよい。アライメントパタンは、上記第2の軸に対して対称な形状を有するようにしてもよい。ここで、その形状としては、五角形としてもよい。さらに、アライメントパタンは、上記第2の軸に対して非対称な形状を有するようにしてもよい。ここで、その形状としては、かまぼこ形としてもよい。
【0019】
また、上記偏向素子において、アライメントパタンは、このアライメントパタンの極値となる幅の中心が、光周波数グリッドに対応する位置と一致するように配置されているようにしてもよい。
【0020】
また、本発明に係るアライメント方法は、波長に応じて分離された入力光を偏向する偏向素子のアライメント方法であって、偏向素子に設けられ、周囲と異なる反射率を有し、入力光の波長分離方向に平行な所定の第1の軸から離れるにつれて波長分離方向の幅が変化する形状のアライメントパタンに対して第1の軸方向に波長分離された光を照射する第1のステップと、アライメントパタンからの反射光の周波数帯域の幅を測定し、この幅が極値となるように第1の軸に直交し、入力光の光軸と交わる第2の軸の方向における偏向素子の位置を調整する第2のステップとを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、アライメントパタンの形状を、入力光の波長分離方向に平行な所定の第1の軸から、これと直交する第2の軸に沿って離れるにつれて波長分離方向の幅が変化し、かつ第1の軸上に波長分離方向の幅の極値を有する形状とすることにより、そのアライメントパタンに入力光を照射したときに、アライメントパタンによる反射光の周波数帯域の幅が、偏向素子が第2の軸方向に位置ずれしていない場合に極値となるようにすることが可能となる。これにより、その反射光の周波数帯域の幅に基づいて偏向素子の第2の軸方向の位置を調整するだけで、偏向素子の第2の軸方向におけるアライメントを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る波長選択型光スイッチの構成を模式的に示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係るMEMSミラーアレイチップの構成を模式的に示す平面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係るアライメントパタンの構成を模式的に示す平面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係るMEMSミラーアレイチップをアライメントする際の装置構成を模式的に示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係るMEMSミラーアレイチップのアライメント方法を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の実施の形態に係るアライメントパタンとビームウェストの位置関係による反射光の波長スペクトルおよび帯域幅の変化を説明するための図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態に係る変形例のアライメントパタンとビームウェストの位置関係による反射光の波長スペクトルおよび帯域幅の変化を説明するための図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態に係る変形例のアライメントパタンとビームウェストの位置関係による反射光の帯域幅の変化を説明するための図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態に係る変形例のアライメントパタンとビームウェストの位置関係による反射光の帯域幅の変化を説明するための図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態に係る変形例のアライメントパタンとビームウェストの位置関係による反射光の帯域幅の変化を説明するための図である。
【図11】図11は、波長選択型光スイッチの構成を模式的に示す図である。
【図12】図12は、MEMSミラーアレイチップの構成を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0024】
<波長選択型光スイッチの構成>
図1に示すように、本実施の形態に係る偏向素子を備えた波長選択型光スイッチは、入出力光学系として機能するファイバアレイ1と、マイクロレンズアレイ2と、集光レンズ3と、分離集光光学系として機能する4f光学系4と、上述した偏向素子として機能するMEMSミラーアレイチップ5とがこの順番でZ軸方向に沿って配列されたものである。なお、本実施の形態において、図11を参照して説明した従来の波長選択型光スイッチと同一の構成要素については、同一の名称および同一の符号を用い、その詳細な説明を省略する。
【0025】
なお、図1において、第1レンズ41および第2レンズ42の焦点距離がf1[mm]、回折格子43の分散能力がdθ/dv[rad/GHz]、入力ポート1aより入力されるWDM信号光の周波数グリッド間隔がνch[GHz]の場合、回折格子43で分波されてMEMSミラーアレイチップ5上に結像される各波長(チャネル)のビームウェストは、約f1・tan(dθ/dv・νch)[mm]ピッチで整列する。ここで、θは回折角度、vは波長である。MEMSミラーアレイチップ5におけるミラーピッチPch、すなわち後述するMEMSミラー素子52の間隔は、その各チャネルのビームウェストが整列するピッチと整合するように設定される。なお、第1レンズ41の集光レンズ3側の焦点面におけるビームウェストのサイズが幅Wx[μm]、高さWy[μm]であるとすれば、4f光学系4の特性から、第2レンズ42のMEMSミラーアレイチップ5側の焦点面においても同じビームウェストの形状が再現される。
【0026】
≪MEMSミラーアレイチップの構成≫
ミラーアレイチップ5は、図2に示すように、平面視略矩形の基部51と、この基部51内部に配設され、X軸方向に周波数に応じたミラーピッチPchで配列された複数のMEMSミラー素子52と、これらのMEMSミラー素子52のうちの1つに設けられたアライメントパタン6とを備える。
【0027】
基部51は、例えばSOI(Silicon-On-Insulator)基板など平面視略矩形の基板から構成される。このような基部51には、X軸方向に延在する平面視略矩形の開口が形成されており、その開口内には、MEMSミラー素子52の後述するミラー52aがX軸方向に配列されている。
【0028】
MEMSミラー素子52は、可撓性を有するばね(図示せず)と、このばねによって基部51に連結されたミラー52aと、このミラー52aとZ軸方向に対向配置された電極(図示せず)とを備えている。そのミラー52aは、その電極に電圧を印加することで生じる静電引力によってX軸およびY軸回りに回動可能となっている。また、ミラー52aの第2レンズ42と対向する側の面(以下、「上面」と言う。)には、例えば金やアルミなどの高い反射率を有する材料が全体に亘って形成されている。したがって、ミラー52aをX軸回りに回動させると、ミラー52aに入射してそのミラー52aにより反射された反射光の光軸がY軸方向に変化する。これにより、出力ポートの選択を実現することができる。また、ミラー52aをY軸回りに回動させると、ミラー52aによる反射光の光軸がX軸方向に変化する。これにより、アッテネーションレベルの制御を実現することができる。本実施の形態において、各MEMSミラー素子52のミラー52aの中心は、X軸に沿った一直線上に位置している。なお、MEMSミラー素子52は、上述した平行平板型に限定されず、例えば、垂直櫛歯構造などを適用することもできる。また、アッテネーションレベルの制御としては、Y軸回りの回動に限定されず、X軸回りの回動によって制御するようにしてもよい。
【0029】
アライメントパタン6は、図2,図3に示すように、MEMSミラーアレイチップ5に形成された複数のMEMSミラー素子52のうちの1つに設けられ、そのMEMSミラー素子52のミラー52aの上面に設けられる。また、そのアライメントパタン6は、例えば金やアルミなど周囲の材料よりも反射率が高い材料から構成され、菱形に形成されている。このアライメントパタン6の菱形は、その対角線の一方がX軸、他方がY軸に平行で、これらの対角線の交点に対して点対称に形成されている。また、そのX軸に平行な対角線は、各MEMSミラー素子52のミラー52aの中心と同一直線上に位置している。 なお、ミラー52aの上面におけるアライメントパタン6の周囲には、このアライメントパタン6よりも反射率が低い低反射領域6aが形成されている。この低反射領域6bは、例えばSi,SiO2,Ti,Crなどアライメントパタン6よりも低い反射率を有する材料から構成される。
【0030】
このようなMEMSミラーアレイチップ5は、公知のMEMS技術によって形成することができる。また、アライメントパタン6は、公知のフォトリソグラフィ技術によって形成することができる。本実施の形態において、アライメントパタン6は、ミラー52aの上面に高い反射率を有する材料を菱形に配置することによって形成される。この場合、アライメントパタン6は、その高い反射率を有する材料が配置された領域から構成され、低反射領域6bは、ミラー52aの下地、すなわちその高い反射率を有する材料が配置されていない、基部51の構成材料が露出した領域から構成される。なお、アライメントパタン6の製造方法はこれに限定されず、各種方法を定義自由に適用することができる。例えば、金やアルミなどの高い反射率を有する材料が全体に亘って形成されたミラー52aの上面に、上述した低い反射率を有する材料を所定のパターンで形成することにより製造してもよい。また、MEMSミラー素子52のうちの1つの反応性イオンエッチング等により例えば上述したような菱形に加工し、高い反射率を有する材料でその上面を覆うことにより、アライメントパタンとするようにしてもよい。この場合、フォトリソグラフィの工程において、他のMEMSミラー素子52と同時にアライメントパタン6を形成できるため、MEMSミラー素子とアライメントパタン6のX軸上の中心位置を高い精度で一致させることができる。
【0031】
<アライメント方法>
次に、図4,図5を参照して、MEMSミラーアレイチップ5と光学系とのアライメント方法を説明する。
【0032】
まず、MEMSミラーアレイチップ5のX軸方向およびY軸方向のアライメントを行うには、図4に示すように、入力光ファイバ1aに対してASE光や所定の波長帯域の光を出力する光源7と、MEMSミラーアレイチップ5を保持するホルダならびにこのホルダをX軸、Y軸およびZ軸方向に移動させるステージを備えた調心ステージ8と、その入力光ファイバ1aから出力される光のスペクトルを測定する光スペクトルアナライザ9とを用意する。なお、ここで光源は、ASE光の他、所望の波長帯域を有し、かつ光スペクトルアナライザの周波数掃引の速度と同期して波長を変化させることが可能であれば、波長可変光源を用いるようにしてもよい。また、同様に、光スペクトルアナライザの代わりにパワーセンサを用いるようにしてもよい。
【0033】
次に、X軸方向のアライメントを行うために、図5に示すように、従来と同様に光源7からASE光を波長選択型光スイッチに入力し、MEMSミラー素子52からの反射光のスペクトルを光スペクトルアナライザ9により観測する(ステップS1)。このとき、光源7から入力ポート1aを介して入力されたASE光は、集光レンズ3および4f光学系4によって周波数分離され、X軸に平行な帯状の光となって複数のMEMSミラー素子52に照射される。このMEMSミラー素子52は、照射された光が入力ポート1aに入射されるように、ミラー52aの角度が制御されている。したがって、その帯状の光はMEMSミラー素子52で反射され、この反射光は4f光学系4および集光レンズ3を通して入力ポート1aに結合し、光サーキュレータ等を介して入力光と分離され、光スペクトルアナライザ9によりその光スペクトル形状が観測される。光スペクトルアナライザ9では、周波数軸と光強度軸とから構成される座標平面上において、各MEMSミラー素子52によって反射される光の周波数でフィルタリングされた櫛歯状のスペクトル形状となって観測される。
【0034】
櫛歯状のスペクトルが出力されると、従来と同様、そのスペクトルを観測しながら、各ミラー素子52による透過帯域の中心が、それぞれに割り当てられた信号チャネルの中心周波数と一致するように、調心ステージ8によりMEMSミラーアレイチップ5のX軸方向の位置を調整する(ステップS2)。これにより、MEMSミラーアレイチップ5のX軸方向のアライメントが完了する。なお、MEMSミラーアレイチップ5のZ軸方向のアライメントは、上述したように反射光のスペクトル形状を観測し、その通過帯域が広くなり、かつ損失が低くなるようにMEMSミラーアレイチップ5のZ軸方向の位置を調整することにより行うことができる。これらの操作により、各MEMSミラー素子52のミラー中心位置と、各ミラーに対応する中心周波数の光が4f光学系4を介して形成するビームウェストの中心位置が、X軸とZ軸について合致することとなる。また、アライメントパタン6は、このアライメントパタンの上記極値を持つ幅の中心が、光周波数グリッドに対応する位置と一致するように、MEMSミラー素子52から離間して配置されるため、同様に、アライメントパタン6に対応する中心周波数の光が4f光学系4を介して形成するビームウェストの中心位置が、X軸とZ軸について合致することとなる。
【0035】
X軸方向のアライメントを完了すると、Y軸方向のアライメントを行うために、引き続き光スペクトルアナライザ9により反射光の光スペクトル形状を観察しながら、その反射光の周波数帯域の幅(以下、「帯域幅」と言う。)が極大となるように調心ステージ8によりMEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置を調整する(ステップS3)。このY軸方向のアライメントを行う原理について、図6を参照して説明する。なお、図6は、MEMSミラーアレイチップ5をY軸方向に移動させたときの、ビームウェストとアライメントパタン6との位置関係、このときの各波長の光強度および帯域幅を示すグラフである。ここでは、帯域幅を、透過スペクトルの頂部から所定の光強度(例えば0.5dB)が低下した領域の周波数の幅と定義する。
【0036】
入力ポート1aを介して入力されたASE光は、各MEMSミラー素子52において、ビームウェストがミラー素子52をX軸方向に波長掃引した形で光スペクトルアナライザに透過スペクトルを出力する。MEMSミラーアレイチップ5をY軸方向に移動させると、アライメントパタン6に照射されるビームウェストの位置関係(6−1〜6−3)に伴って、そのアライメントパタン6による反射光のスペクトル形状(6−1’〜6−3’)が変化する。本実施の形態に係るアライメントパタン6は、反射領域の面積がY軸に沿って変化する。このため、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の移動に伴って、そのアライメントパタン6により反射される光の帯域幅(w1〜w3,6−1”〜6−3”)が変化する。これは、回折格子43による波長分離方向がX軸方向であるので、アライメントパタン6のX軸方向の幅がY軸を動かすことによって変化するのにしたがって、ビームウェストがクリッピングされる割合が波長毎に変化し、周波数に対して光強度が変化するためである。
【0037】
図6に示すように、菱形のアライメントパタン6における一方の対角線は、各MEMSミラー素子52のミラー52aの中心と同一直線上に位置するように形成されている。このため、アライメントパタン6による反射光の帯域幅が極大(w2)になるとき、すなわち、その一方の対角線がX軸上に位置するとき、MEMSミラーアレイチップ5に含まれる各MEMSミラー素子52のミラー52aの中心も、X軸上に位置することとなる。そこで、本実施の形態では、調心ステージ8によりMEMSミラーアレイチップ5をY軸方向に移動させ、スペクトルアナライザ9によりこのときの波長スペクトル形状における帯域幅を観察し、この帯域幅が最大となるようにMEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置を調整することにより、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向のアライメントを実現することができる。
【0038】
Y軸方向のずれ量と帯域幅の変化との関係は、アライメントパタン6の形状とアライメントパタン6に照射される光ビームのプロファイルに依存する。本実施の形態においては、アライメントパタン6が菱形に形成されており、かつ、このアライメントパタン6の反射領域の面積の極値がX軸上に存在し、その帯域幅はビームウェストとアライメントパタンの中心位置が合致したときに極値となる。アライメントパタン6に照射されるビームウェストのビームプロファイルが楕円形であるので、MEMSミラーアレイチップ5をY軸方向に移動させたとき、アライメントパタン6の反射領域の面積の変化に対する透過スペクトル形状の変化は、急峻なものとなる。このため、図6の符号αで示す曲線のように、帯域幅の変化も急峻なものとなる。具体的には、アライメントパタン6の一方の対角線がX軸上に位置したときが極大となり、Y軸方向のずれが大きくなるにつれてその極大からY軸方向の正負それぞれの側に下に凸の二次関数のように減少する、いわゆる裾広がり状に変化することとなる。このように、帯域幅が極大値に向かって鋭く変化するので、その極大値を容易に識別することが可能となり、結果として、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置についてより正確なアライメントを実現することができる。
なお、反射される光の強度はビーム形状とアライメントパタン形状に依存するため、ビームウェストが照射するアライメントパタン6の反射面の面積が、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の移動に伴って顕著に変化するような場合は、透過スペクトル頂部の光強度も変化することがある。この場合も、光強度の変化によらず、帯域幅の極値を検出することは可能である。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態によれば、アライメントパタン6の形状を、X軸に平行な軸から離れるにつれて波長分離方向の幅(長さ)が変化する、すなわちその波長分離方向の長さが短くなる形状とすることにより、そのアライメントパタン6に入力光を照射したときに、そのアライメントパタン6による反射光の帯域幅が、MEMSミラーアレイチップ5がY軸に位置ずれしていない場合に極大となるようにすることが可能となる。これにより、その反射光の帯域幅に基づいてMEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置を調整するだけで、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向におけるアライメントを行うことができる。
【0040】
なお、本実施の形態では、菱形のアライメントパタン6を設ける場合を例に説明したが、そのアライメントパタン6と同様、X軸上に位置するときにアライメントパタンやこのアライメントパタンの周囲による反射光の帯域幅がピークとなるアライメントパタンであるならば、その形状は菱形に限定されず、適宜自由に設定することができる。言い換えると、X軸方向に平行な所定の軸から離れるにつれて波長分離方向の幅が変化し、かつ第1の軸上に波長分離方向の幅に極値を有する形状であれば、アライメントパタンの形状を適宜自由に設定することができる。その変形例について以下に示す。
【0041】
<第1の変形例>
図7に示すアライメントパタン10は、周囲よりも低い反射率の材料から構成され、菱形に形成されている。この菱形のアライメントパタン10における一方の対角線は、X軸に平行に形成されるとともに、各MEMSミラー素子52のミラー52aの中心と同一直線上に位置するように形成されている。また、アライメントパタン10の周囲には、アライメントパタン10よりも反射率が高い材料から構成される矩形の高反射領域10aが形成されている。このような構成を採ることによっても、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置を変化させると、アライメントパタン10に照射されるビームウェストの位置関係に伴って、反射光のスペクトル形状が変化する。このとき、アライメントパタン10に照射されるビームウェストのX軸方向における長さの変化に伴って、反射光の帯域幅も変化する。
ここでは、帯域幅を、透過スペクトルの頂部から所定の光強度(例えば0.5dB)が低下した領域の周波数の幅と定義する。本実施例のように、透過帯域の中央部に窪みができるようなスペクトル形状の場合は、左右の平坦部の頂部から所定の光強度が低下した領域の周波数の幅を足し合わせたものを帯域幅とする。
【0042】
例えば、ビームウェストBの短軸が、菱形に形成されたアライメントパタン10におけるX軸に平行な対角線上に位置する場合、ビームウェストBの外縁部(領域10−2)のみが高反射領域10aに照射される。このため、その高反射領域10aによる反射光のスペクトル形状10−2’は、ビームウェストBの周波数帯域における中央部において光強度が小さく、その中央部の両脇に光強度が検出される2つの山状のプロファイルとなる。このとき、高反射領域10aに照射されるビームウェストBのX軸方向の長さが極小となるので、反射光の帯域幅も極小となる。
一方、ビームウェストBの短軸が、菱形に形成されたアライメントパタン10におけるX軸に平行な対角線上に位置しない場合、そのビームウェストBは、外縁部以外の部分も高反射領域10aに照射される(領域10−1,10−3)。このため、反射光のスペクトル形状10−1’、10−3’は、スペクトル形状10−2’の場合よりも、ビームウェストBの周波数帯域における中央部寄りに光強度が検出されることとなる。このとき、高反射領域10aに照射されるビームウェストBのX軸方向の長さは、上述した領域10−2の場合よりも大きな値となるので、反射光の帯域幅もその領域10−2の場合よりもよりも大きな値となる。
【0043】
したがって、光スペクトルアナライザ9により測定される高反射領域10aによる反射光の帯域幅は、図7の符号βで示す曲線のように、アライメントパタン10の一方の対角線がX軸上に位置したときが極小となり、この極小値からY軸方向の正負それぞれの側に上に凸の二次関数のように増大することとなる。言い換えると、図6の符号αで示したアライメントパタン6による反射光の帯域幅と上下逆の曲線を描くように変化する。このように帯域幅が極小値に向かって鋭く変化するので、その極小値を容易に識別することが可能となり、結果として、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置についてより正確なアライメントを実現することができる。
【0044】
<第2の変形例>
また、図8に示すアライメントパタン11は、周囲よりも高い反射率の材料から構成され、五角形に形成されている。このアライメントパタン11の周囲には、アライメントパタン11よりも低い反射率の材料から構成された矩形の低反射領域11aが形成されている。このような構成を採ると、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置を変化させたとき、光スペクトルアナライザ9により測定されるアライメントパタン11による反射光の帯域幅は、図8の符号γで示す曲線のように、アライメントパタン11に照射されるビームウェストのX軸方向の長さが極大となるときに極大となり、Y軸方向のずれが大きくなるにつれて、その極大からY軸方向の正負それぞれの側に非対称に減少することとなる。このように、アライメントパタンをX軸に対称な形状とすることによっても、帯域幅が極大に向かって鋭く、かつ、Y軸方向に非対称に変化するので、その極大を容易に識別することが可能となり、結果として、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置についてより正確なアライメントを実現することができる。
【0045】
<第3の変形例>
また、図9に示すアライメントパタン12は、周囲よりも高い反射率の材料から構成され、半円形またはかまぼこ型に形成されている。このアライメントパタン11の周囲には、アライメントパタン12よりも低い反射率の材料から構成された矩形の低反射領域12aが形成されている。このような構成を採ると、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置を変化させたとき、光スペクトルアナライザ9により測定されるアライメントパタン12による反射光の帯域幅は、図9の符号γで示す曲線のように、アライメントパタン12に照射されるビームウェストのX軸方向の長さが極大となるときが極大となり、Y軸方向のずれが大きくなるにつれてその極大からY軸方向の正負それぞれの側に非対称に減少することとなる。このようにY軸に非対称な形状とすることによっても、帯域幅が極大に向かって鋭く変化するので、その極大を容易に識別することが可能となり、結果として、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置についてより正確なアライメントを実現することができる。
【0046】
<第4の変形例>
また、図10に示すアライメントパタン13は、周囲よりも高い反射率の材料から構成され、Y軸方向のほぼ中央部がくびれた鼓型に形成されている。この鼓型とは、例えば、底辺が互いに平行で、かつ、その底辺を構成しない頂点または頂点近傍が接続されるように配置された2つの三角形を組み合わせた形状から構成される。アライメントパタン13の周囲には、アライメントパタン13よりも低い反射率の材料から構成された略三角形の低反射領域13aが形成されている。このような構成を採ると、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置を変化させたとき、光スペクトルアナライザ9により測定されるアライメントパタン13による反射光の帯域幅は、図10の符号εで示す曲線のように、アライメントパタン13に照射されるビームウェストのX軸方向の長さが極小となるときが極小となり、Y軸方向のずれが大きくなるにつれてその極小からY軸方向の正負それぞれの側に対象に増加することとなる。このように、鼓型に形成することによっても、帯域幅が極小へ向かって鋭く変化するので、その極小を識別することが可能となり、結果押して、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置についてより正確なアライメントを実現することができる。
【0047】
なお、上述したアライメントパタン10〜13は、ビームウェストの短軸が、各アライメントパタンが形成されたミラー52aの中心を通るときに、そのアライメントパタンによる反射光の帯域幅が最大または最小となるように形成されることは言うまでもない。このとき、MEMEミラーアレイチップ5に含まれる各MEMSミラー素子52のミラー52aの中心は、アライメントパタン10〜13が形成されたミラー52aの中心と同一直線上に位置するように形成されている。
【0048】
また、本実施の形態では、一端のMEMSミラー素子52にアライメントパタン6を設ける場合を例に説明したが、MEMSミラーアレイチップ5に設けられたMEMSミラー素子52であるならばアライメントパタン6を設ける位置は端部のMEMSミラー素子52に限定されず、適宜自由に設定することができる。
【0049】
また、本実施の形態では、アライメントパタンをMEMSミラー素子52に設ける場合を例に説明したが、そのアライメントパタンを設ける位置はMEMSミラー素子52に限定されず、例えば、MEMSミラーアレイチップ5の基部51に設けるようにしてもよい。
【0050】
また、本実施の形態では、ミラー52aの表面に高反射領域または低反射領域からなるアライメントパタンと、この周囲に設けられた高反射領域または低反射領域とを備える場合を例に説明したが、Y軸上に帯域幅のピークが形成されるのであればアライメントパタン等の構成はそのような構成に限定されず、適宜自由に設定することができる。例えば、全面が高反射領域からなるミラー52aの外形自体を、上述したような菱形や五角形などに形成するようにしてもよい。また、ミラー52aに開口を設け、この開口を低反射領域として用いるようにしてもよい。ただし、ミラー52a自体を加工する場合、平行平板としての面積が小さくなるので、発生する静電引力は小さくなる。ミラー52aを支持するばねのばね定数(硬さ)が外形を加工しない場合と同じであるとすると、ミラー駆動電圧を大きくしなければ、ミラー52aを回動させることができなくなる。このため、ミラー52aの最大回動角度に制約が生じ、また、駆動電圧と回動角度の線形性も保ちにくくなるため、精密な角度制御が難しくなる。このため、ミラー52aの外形自体を加工してアラインメントパターンを形成する場合は、実施の第2の変形例や第3の変形例のように、ミラー52aの面積が加工前と較べて大幅に減少しないように設計することが望ましい。
【0051】
また、本実施の形態では、MEMSミラーアレイチップ5に適用した場合を例に説明したが、例えば透過型および反射型液晶スイッチアレイなど、他の微小スイッチアレイを用いたWSSにも適用することができる。
【0052】
また、本実施の形態では、ミラー素子52が一次元に配列されたMEMSミラーアレイチップ5について説明したが、二次元に配列されたMEMSミラーアレイについても適用できることは言うまでもない。この場合、回折格子により分波されたチャネルの何れかの位置に上述したアライメントパタンを配置することにより、本実施の形態と同等の作用効果を実現することができる。
【0053】
さらに、本実施の形態では、波長選択型光スイッチに適用した場合を例に説明したが、波長分離された入力光を偏向する素子やこの素子を備える光学系であるならば、適宜自由に適用できることは言うまでもない。また、その素子は、所定の軸回りに回動可能であるか否かを問わず、適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、波長分離された入力光を偏向する素子やこの素子を備える各種光学系に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…ファイバアレイ、1a…入力ポート、1b…出力ポート、2…マイクロレンズアレイ、3…集光レンズ、4…4f光学系、5…MEMSミラーアレイチップ、6,10〜13…アライメントパタン、6a,11a,12a,13a…低反射領域、10a…高反射領域、6−1〜6−3,10−1〜10−3…領域、6−1’〜6−3’,10−1’〜10−3’…スペクトル形状、6−1”〜6−3”…帯域幅、7…広帯域光源、8…調心ステージ、9…スペクトルアナライザ、41…第1レンズ、42…第2レンズ、43…回折格子、51…基部、52…MEMSミラー素子、52a…ミラー。
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏向素子および偏向素子のアライメント方法に関し、特に、アライメントパタンを有する偏向素子および偏向素子のアライメント方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信の分野では、1つの波長に1つの光信号を対応させ、波長多重して伝送するWDM(Wavelength Division Multiplexing)技術により、一本の光ファイバにより大容量の光伝送を行うことが実現されている。このような光通信技術の発展に伴って、光信号を電気信号等に変換することなく経路を切り替える装置として、偏向素子を備えた光スイッチが脚光を浴びている。例えば、数十もの波長から任意の波長を選択して複数の出力ファイバのうちの何れかへ出力可能な波長選択型光スイッチ(例えば、特許文献1参照)が提案されている。この波長選択型光スイッチ(WSS:Wavelength Selective Switch)の一例を図11に示す。
【0003】
図11に示す波長選択型光スイッチは、複数の光ファイバからなるファイバアレイ1と、マイクロレンズアレイ2と、集光レンズ3と、4f光学系4と、複数のMEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラー素子を有し、偏向素子として機能するMEMSミラーアレイチップ100とがこの順番で1の方向(以下、「Z軸方向」という)に沿って配列された構成を有する。
【0004】
ファイバアレイ1は、Z軸に平行な光軸を有する複数の光ファイバ(図11の場合7本)を、Z軸と直交するY軸方向に並設した構成を有しており、1つの光ファイバ1aが入力ポートとして用いられ、他の6つの光ファイバ1bが出力ポートとして用いられる。なお、上述した光ファイバアレイ1は、複数の光ファイバのうち中央に位置する光ファイバ1aを入力ポートとして用いているが、入力ポートの位置はこれに限定されず、例えば光ファイバアレイの端に位置するポートを用いてもよい。
【0005】
マイクロレンズアレイ2は、複数のマイクロレンズをファイバアレイ1の各光ファイバ端面と対向するように、Y軸方向に沿って並設したものである。なお、マイクロレンズは入出力光ファイバのモードフィールド半径を拡大するために用いているが、その必要がなければ省略しても構わない。
【0006】
4f光学系4は、それぞれ焦点距離がfの第1レンズ41および第2レンズ42と、透過型の回折格子43とから構成され、第1レンズ41、回折格子43、第2レンズ42の順序で集光レンズ3からZ軸方向の正の側に互いにfの間隔で配設される。このうち、第1レンズ41は、集光レンズ3から、集光レンズ3の焦点距離と第1レンズ41の焦点距離fとを合計した距離だけ離間した位置に配設される。
【0007】
MEMSミラーアレイチップ100は、図12に示すように、平面視略矩形の基部101と、この基部101内部に配設され、X軸方向に所定の間隔で配列された複数のMEMSミラー素子102とを備える。MEMSミラー素子102は、X軸方向およびY軸方向に回動可能とされたミラー102aを備えている。なお、各MEMSミラー素子102の構成は、例えば特許文献1に記載されているので、本明細書ではその詳細な説明を省略する。また、上述した波長選択型光スイッチは、1入力多出力の構成を例に説明したが、他入力1出力の構成であってもよい。さらに、回折格子43については、透過型に限定されず、反射型であってもよい。
【0008】
このような波長選択型光スイッチにおいて、所定の波長間隔で所定のチャネル数だけ波長分離されたWDM信号光がファイバアレイ1の入力ポート1aに入力されると、そのWDM信号光は、マイクロレンズアレイ2、集光レンズ3を介して4f光学系4に到達し、第1レンズ41を介して回折格子43に入射して、所定の波長チャネル数に分波される。分波された光は、それぞれ第2レンズ42の反対側の焦点面のX軸上に整列してビームウェストを形成する。このビームウェスト位置には、各チャネルに対応して適切なピッチでMEMSミラー素子102が配置されたMEMSミラーアレイチップ100が配置される。分波された光のビームウェストの配列と、各波長チャネルに対応して適切なピッチでX軸方向に配列された各MEMSミラー素子102は空間的に一致するように配設される。この状態で、MEMSミラー素子102をミラー102aをX軸回りに所定の角度だけ回動させると、そのMEMSミラー素子102に照射された光をその所定の角度に対応する方向に反射させ、4f光学系4、集光レンズ3およびマイクロレンズアレイ2を介して所定の出力ポート1bから出力させることができる。このように、MEMSミラー素子102のミラー102aをX軸回りに選択的に回動させることにより、チャネル毎の出力ポートの切り替え、いわゆるスイッチングを選択的に行うことができる。
なお、波長選択光スイッチにおいては、波長チャネルの間隔を便宜上、周波数で表示することが多いため、以下においては、波長チャネルやその間隔、帯域について周波数を用いて表現することとする。
【0009】
このような波長選択型光スイッチを組み立てる場合、分波された光のビームウェストが対応するMEMSミラー素子102のミラー102a上に位置するように、MEMSミラーアレイチップ100と他の光学系との高精度なアライメントを行うことが重要となる。
【0010】
仮に、分波方向(X軸方向)にMEMSミラーアレイチップ100が位置ずれしていると、周波数分離された信号光のビームウェスト位置が、それぞれの周波数チャネルに対応するミラー102aの中心位置からX軸方向にずれるために、実効的な通過帯域が狭くなり、高速信号を通過させることが困難となる。
そこで、このようなX軸方向の位置ずれを抑制するため、MEMSミラーアレイチップ100のアライメントにおいては、ASE(Amplified Spontaneous Emission)等の広帯域光源からモニタ光を入力ポート1aに入力し、MEMSミラー素子102のミラー102aで反射されて入力ポート1aから出力される光のスペクトル形状を観察している。具体的には、ASE光源から入力ポート1aを介して入力された広帯域光(以下、「ASE光」と言う。)は、集光レンズ3および4f光学系4によって周波数分離され、X軸に平行な周波数軸を有する帯状の光となってMEMSミラーアレイチップ100に照射される。MEMSミラーアレイチップ100上の各ミラー102aは、その反射領域のX軸方向の幅が、各チャネルで透過させる信号の周波数帯域に対応するため、この帯状の光を所定の帯域幅で矩形のスペクトル形状に切り取って反射させ、この反射光を4f光学系4および集光レンズ3を通して入力ポート1aに入射させる。光スペクトルアナライザによりその反射光の光スペクトル形状を観察すると、周波数軸と光強度軸とから構成される座標平面上において、各ミラー102aにより所定の周波数帯域で切り取られた矩形のスペクトルが全チャネル分表示され、櫛歯状のスペクトル形状となって観測される。この櫛歯状のスペクトルは、MEMSミラーアレイチップ100をX軸方向に移動させると、周波数軸方向に移動する。したがって、櫛歯状のそれぞれのスペクトルの中央が所望する周波数位置に一致するようにMEMSミラーアレイチップ100をX軸方向に移動させることにより、X軸方向のMEMSミラーアレイチップ100の位置を調整することができる。また、この櫛歯状のスペクトルの頂部が全チャネルにわたり同程度の光強度となるように、Z軸を中心にMEMSミラーアレイチップ100を回転させることにより、MEMSミラーアレイチップ100のZ軸を中心とする回転方向の位置ずれを補正することもできる。
【0011】
一方、MEMSミラー素子102の配列方向(X軸方向)に垂直なY軸方向にMEMSミラーアレイチップ100が位置ずれすると、ビームの一部がMEMSミラーサイズによりクリッピングされ、反射光量が減少してしまう。このようなY軸方向の位置ずれは、上述したような櫛歯状のスペクトルを観察しても、その周波数軸方向の位置が変わるわけではないので、検出することが困難である。
そこで、従来では、図12に示すように、MEMSミラーアレイチップ100において、基部101の両側辺と、X軸方向に配列されたMEMSミラー素子102のうち両端部に位置するMEMSミラー素子102との間の基部101上の2つの領域にアライメントパタン110を設け、これらのアライメントパタン110から反射される光のスペクトル形状を観察することにより、Y軸方向のアライメントを行っている(特許文献2参照。)。
そのアライメントパタン110は、例えば金やアルミなど周囲の基部101の領域よりも高い反射率を有する材料から構成され、対向する一対の辺がX軸に平行で、かつ一方の対角線がY軸に沿った略平行四辺形の平面形状を有している。また、この平行四辺形は、その重心が各ミラー52aの中心と同一直線上に位置するように形成されている。
【0012】
このようなアライメントパタン110を用いたMEMSミラーアレイチップ100のY軸方向のアライメントは、上述したX軸方向のアライメントと同様、ASE等の広帯域光源から光を入力ポート1aに入力し、その入力ポート1aから出力される光のスペクトル形状を観察することにより行っている。具体的には、入力ポート1aを介して入力されたASE光を、マイクロレンズアレイ2、集光レンズ3および4f光学系4を通して周波数分離してX軸に平行な周波数軸を有する帯状の光とし、この帯状の光をアライメントパタン110で反射させ、この反射光を4f光学系4、集光レンズ3およびマイクロレンズアレイ2を通して入力光ファイバ1aに入射させ、光スペクトルアナライザによりその反射光の光スペクトル形状を観察する。
【0013】
MEMSミラーアレイチップ100がY軸方向に位置ずれしていない場合には、帯状の光が、アライメントパタン110からY軸方向にはみ出さずに平行四辺形のアライメントパタン110全体に照射される。すると、光スペクトルアナライザによって観察されるアライメントパタン110の反射光の光スペクトル形状は、二等辺三角形となる。
一方、MEMSミラーアレイチップ100がY軸方向に位置ずれした場合には、帯状の光が、アライメントパタン110からY軸方向にはみ出すので、平行四辺形のアライメントパタン110の一部に照射されることとなる。すると、光スペクトルアナライザによって観察されるアライメントパタン110の反射光の光スペクトル形状は、三角形の頂点が削れた、いわゆる台形状となる。そこで、スペクトル形状が二等辺三角形状になるように、そのスペクトル形状を観察しながらMEMSミラーアレイチップ100をY軸方向に移動させることによって、そのY軸方向のアライメントを行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−229916号公報
【特許文献2】特開2009−104081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、第2レンズ42のMEMSミラーアレイチップ100側の焦点面において、ビームウェスト径がアライメント精度よりも大きい場合は、MEMSミラーアレイチップ100がミラーアレイチップ100をY軸方向に移動させても、反射光のスペクトル形状の変化が鋭敏に現れないことがある。例えば、Y軸方向のビームウェスト径がアライメント精度の5〜10倍ある場合、ビームがアライメントパタン110の一方の端部からY軸方向にアライメント精度の2倍はみ出したとしても、損失は0.2〜0.5dBという僅かな量しか変化せず、スペクトル形状の二等辺三角形から台形への変化を判別しにくい。このように、ビームウェスト径と要求されるアライメント精度、アライメントパタン形状の組み合わせによっては、アライメント工程において光スペクトルアナライザによって観察される反射光のスペクトル形状の変化は、MEMSミラーアレイチップ100のY軸方向の移動に対して必ずしも鋭いピークを有するとは限らない。このため、従来の方法では、Y軸方向のアライメントを正確に調整することが困難であった。
【0016】
そこで、本願発明は、より正確なアライメントを行うことができる偏向素子およびアライメント方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述したような課題を解決するために、本発明に係る偏向素子は、波長に応じて分離された入力光を偏向する偏向素子であって、周囲と異なる反射率を有し、入力光の波長分離方向に平行な所定の第1の軸から、この第1の軸と直交し入力光の光軸と交わる第2の軸に沿って離れるにつれて波長分離方向の幅が変化し、第1の軸上に波長分離方向の幅の極値を有する形状のアライメントパタンを備えることを特徴とするものである。
【0018】
上記偏向素子において、アライメントパタンは、上記第1の軸と上記第2の軸との交点に対して点対称な形状を有するようにしてもよい。ここで、アライメントパタンは、対角線の一方が第1の軸、他方が第2の軸に平行な菱形の形状を有するようにしてもよい。また、アライメントパタンは、第2の軸の方向の中央部における波長分離方向の幅が極値となる鼓型の形状を有するようにしてもよい。アライメントパタンは、上記第2の軸に対して対称な形状を有するようにしてもよい。ここで、その形状としては、五角形としてもよい。さらに、アライメントパタンは、上記第2の軸に対して非対称な形状を有するようにしてもよい。ここで、その形状としては、かまぼこ形としてもよい。
【0019】
また、上記偏向素子において、アライメントパタンは、このアライメントパタンの極値となる幅の中心が、光周波数グリッドに対応する位置と一致するように配置されているようにしてもよい。
【0020】
また、本発明に係るアライメント方法は、波長に応じて分離された入力光を偏向する偏向素子のアライメント方法であって、偏向素子に設けられ、周囲と異なる反射率を有し、入力光の波長分離方向に平行な所定の第1の軸から離れるにつれて波長分離方向の幅が変化する形状のアライメントパタンに対して第1の軸方向に波長分離された光を照射する第1のステップと、アライメントパタンからの反射光の周波数帯域の幅を測定し、この幅が極値となるように第1の軸に直交し、入力光の光軸と交わる第2の軸の方向における偏向素子の位置を調整する第2のステップとを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、アライメントパタンの形状を、入力光の波長分離方向に平行な所定の第1の軸から、これと直交する第2の軸に沿って離れるにつれて波長分離方向の幅が変化し、かつ第1の軸上に波長分離方向の幅の極値を有する形状とすることにより、そのアライメントパタンに入力光を照射したときに、アライメントパタンによる反射光の周波数帯域の幅が、偏向素子が第2の軸方向に位置ずれしていない場合に極値となるようにすることが可能となる。これにより、その反射光の周波数帯域の幅に基づいて偏向素子の第2の軸方向の位置を調整するだけで、偏向素子の第2の軸方向におけるアライメントを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る波長選択型光スイッチの構成を模式的に示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係るMEMSミラーアレイチップの構成を模式的に示す平面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係るアライメントパタンの構成を模式的に示す平面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係るMEMSミラーアレイチップをアライメントする際の装置構成を模式的に示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係るMEMSミラーアレイチップのアライメント方法を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の実施の形態に係るアライメントパタンとビームウェストの位置関係による反射光の波長スペクトルおよび帯域幅の変化を説明するための図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態に係る変形例のアライメントパタンとビームウェストの位置関係による反射光の波長スペクトルおよび帯域幅の変化を説明するための図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態に係る変形例のアライメントパタンとビームウェストの位置関係による反射光の帯域幅の変化を説明するための図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態に係る変形例のアライメントパタンとビームウェストの位置関係による反射光の帯域幅の変化を説明するための図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態に係る変形例のアライメントパタンとビームウェストの位置関係による反射光の帯域幅の変化を説明するための図である。
【図11】図11は、波長選択型光スイッチの構成を模式的に示す図である。
【図12】図12は、MEMSミラーアレイチップの構成を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0024】
<波長選択型光スイッチの構成>
図1に示すように、本実施の形態に係る偏向素子を備えた波長選択型光スイッチは、入出力光学系として機能するファイバアレイ1と、マイクロレンズアレイ2と、集光レンズ3と、分離集光光学系として機能する4f光学系4と、上述した偏向素子として機能するMEMSミラーアレイチップ5とがこの順番でZ軸方向に沿って配列されたものである。なお、本実施の形態において、図11を参照して説明した従来の波長選択型光スイッチと同一の構成要素については、同一の名称および同一の符号を用い、その詳細な説明を省略する。
【0025】
なお、図1において、第1レンズ41および第2レンズ42の焦点距離がf1[mm]、回折格子43の分散能力がdθ/dv[rad/GHz]、入力ポート1aより入力されるWDM信号光の周波数グリッド間隔がνch[GHz]の場合、回折格子43で分波されてMEMSミラーアレイチップ5上に結像される各波長(チャネル)のビームウェストは、約f1・tan(dθ/dv・νch)[mm]ピッチで整列する。ここで、θは回折角度、vは波長である。MEMSミラーアレイチップ5におけるミラーピッチPch、すなわち後述するMEMSミラー素子52の間隔は、その各チャネルのビームウェストが整列するピッチと整合するように設定される。なお、第1レンズ41の集光レンズ3側の焦点面におけるビームウェストのサイズが幅Wx[μm]、高さWy[μm]であるとすれば、4f光学系4の特性から、第2レンズ42のMEMSミラーアレイチップ5側の焦点面においても同じビームウェストの形状が再現される。
【0026】
≪MEMSミラーアレイチップの構成≫
ミラーアレイチップ5は、図2に示すように、平面視略矩形の基部51と、この基部51内部に配設され、X軸方向に周波数に応じたミラーピッチPchで配列された複数のMEMSミラー素子52と、これらのMEMSミラー素子52のうちの1つに設けられたアライメントパタン6とを備える。
【0027】
基部51は、例えばSOI(Silicon-On-Insulator)基板など平面視略矩形の基板から構成される。このような基部51には、X軸方向に延在する平面視略矩形の開口が形成されており、その開口内には、MEMSミラー素子52の後述するミラー52aがX軸方向に配列されている。
【0028】
MEMSミラー素子52は、可撓性を有するばね(図示せず)と、このばねによって基部51に連結されたミラー52aと、このミラー52aとZ軸方向に対向配置された電極(図示せず)とを備えている。そのミラー52aは、その電極に電圧を印加することで生じる静電引力によってX軸およびY軸回りに回動可能となっている。また、ミラー52aの第2レンズ42と対向する側の面(以下、「上面」と言う。)には、例えば金やアルミなどの高い反射率を有する材料が全体に亘って形成されている。したがって、ミラー52aをX軸回りに回動させると、ミラー52aに入射してそのミラー52aにより反射された反射光の光軸がY軸方向に変化する。これにより、出力ポートの選択を実現することができる。また、ミラー52aをY軸回りに回動させると、ミラー52aによる反射光の光軸がX軸方向に変化する。これにより、アッテネーションレベルの制御を実現することができる。本実施の形態において、各MEMSミラー素子52のミラー52aの中心は、X軸に沿った一直線上に位置している。なお、MEMSミラー素子52は、上述した平行平板型に限定されず、例えば、垂直櫛歯構造などを適用することもできる。また、アッテネーションレベルの制御としては、Y軸回りの回動に限定されず、X軸回りの回動によって制御するようにしてもよい。
【0029】
アライメントパタン6は、図2,図3に示すように、MEMSミラーアレイチップ5に形成された複数のMEMSミラー素子52のうちの1つに設けられ、そのMEMSミラー素子52のミラー52aの上面に設けられる。また、そのアライメントパタン6は、例えば金やアルミなど周囲の材料よりも反射率が高い材料から構成され、菱形に形成されている。このアライメントパタン6の菱形は、その対角線の一方がX軸、他方がY軸に平行で、これらの対角線の交点に対して点対称に形成されている。また、そのX軸に平行な対角線は、各MEMSミラー素子52のミラー52aの中心と同一直線上に位置している。 なお、ミラー52aの上面におけるアライメントパタン6の周囲には、このアライメントパタン6よりも反射率が低い低反射領域6aが形成されている。この低反射領域6bは、例えばSi,SiO2,Ti,Crなどアライメントパタン6よりも低い反射率を有する材料から構成される。
【0030】
このようなMEMSミラーアレイチップ5は、公知のMEMS技術によって形成することができる。また、アライメントパタン6は、公知のフォトリソグラフィ技術によって形成することができる。本実施の形態において、アライメントパタン6は、ミラー52aの上面に高い反射率を有する材料を菱形に配置することによって形成される。この場合、アライメントパタン6は、その高い反射率を有する材料が配置された領域から構成され、低反射領域6bは、ミラー52aの下地、すなわちその高い反射率を有する材料が配置されていない、基部51の構成材料が露出した領域から構成される。なお、アライメントパタン6の製造方法はこれに限定されず、各種方法を定義自由に適用することができる。例えば、金やアルミなどの高い反射率を有する材料が全体に亘って形成されたミラー52aの上面に、上述した低い反射率を有する材料を所定のパターンで形成することにより製造してもよい。また、MEMSミラー素子52のうちの1つの反応性イオンエッチング等により例えば上述したような菱形に加工し、高い反射率を有する材料でその上面を覆うことにより、アライメントパタンとするようにしてもよい。この場合、フォトリソグラフィの工程において、他のMEMSミラー素子52と同時にアライメントパタン6を形成できるため、MEMSミラー素子とアライメントパタン6のX軸上の中心位置を高い精度で一致させることができる。
【0031】
<アライメント方法>
次に、図4,図5を参照して、MEMSミラーアレイチップ5と光学系とのアライメント方法を説明する。
【0032】
まず、MEMSミラーアレイチップ5のX軸方向およびY軸方向のアライメントを行うには、図4に示すように、入力光ファイバ1aに対してASE光や所定の波長帯域の光を出力する光源7と、MEMSミラーアレイチップ5を保持するホルダならびにこのホルダをX軸、Y軸およびZ軸方向に移動させるステージを備えた調心ステージ8と、その入力光ファイバ1aから出力される光のスペクトルを測定する光スペクトルアナライザ9とを用意する。なお、ここで光源は、ASE光の他、所望の波長帯域を有し、かつ光スペクトルアナライザの周波数掃引の速度と同期して波長を変化させることが可能であれば、波長可変光源を用いるようにしてもよい。また、同様に、光スペクトルアナライザの代わりにパワーセンサを用いるようにしてもよい。
【0033】
次に、X軸方向のアライメントを行うために、図5に示すように、従来と同様に光源7からASE光を波長選択型光スイッチに入力し、MEMSミラー素子52からの反射光のスペクトルを光スペクトルアナライザ9により観測する(ステップS1)。このとき、光源7から入力ポート1aを介して入力されたASE光は、集光レンズ3および4f光学系4によって周波数分離され、X軸に平行な帯状の光となって複数のMEMSミラー素子52に照射される。このMEMSミラー素子52は、照射された光が入力ポート1aに入射されるように、ミラー52aの角度が制御されている。したがって、その帯状の光はMEMSミラー素子52で反射され、この反射光は4f光学系4および集光レンズ3を通して入力ポート1aに結合し、光サーキュレータ等を介して入力光と分離され、光スペクトルアナライザ9によりその光スペクトル形状が観測される。光スペクトルアナライザ9では、周波数軸と光強度軸とから構成される座標平面上において、各MEMSミラー素子52によって反射される光の周波数でフィルタリングされた櫛歯状のスペクトル形状となって観測される。
【0034】
櫛歯状のスペクトルが出力されると、従来と同様、そのスペクトルを観測しながら、各ミラー素子52による透過帯域の中心が、それぞれに割り当てられた信号チャネルの中心周波数と一致するように、調心ステージ8によりMEMSミラーアレイチップ5のX軸方向の位置を調整する(ステップS2)。これにより、MEMSミラーアレイチップ5のX軸方向のアライメントが完了する。なお、MEMSミラーアレイチップ5のZ軸方向のアライメントは、上述したように反射光のスペクトル形状を観測し、その通過帯域が広くなり、かつ損失が低くなるようにMEMSミラーアレイチップ5のZ軸方向の位置を調整することにより行うことができる。これらの操作により、各MEMSミラー素子52のミラー中心位置と、各ミラーに対応する中心周波数の光が4f光学系4を介して形成するビームウェストの中心位置が、X軸とZ軸について合致することとなる。また、アライメントパタン6は、このアライメントパタンの上記極値を持つ幅の中心が、光周波数グリッドに対応する位置と一致するように、MEMSミラー素子52から離間して配置されるため、同様に、アライメントパタン6に対応する中心周波数の光が4f光学系4を介して形成するビームウェストの中心位置が、X軸とZ軸について合致することとなる。
【0035】
X軸方向のアライメントを完了すると、Y軸方向のアライメントを行うために、引き続き光スペクトルアナライザ9により反射光の光スペクトル形状を観察しながら、その反射光の周波数帯域の幅(以下、「帯域幅」と言う。)が極大となるように調心ステージ8によりMEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置を調整する(ステップS3)。このY軸方向のアライメントを行う原理について、図6を参照して説明する。なお、図6は、MEMSミラーアレイチップ5をY軸方向に移動させたときの、ビームウェストとアライメントパタン6との位置関係、このときの各波長の光強度および帯域幅を示すグラフである。ここでは、帯域幅を、透過スペクトルの頂部から所定の光強度(例えば0.5dB)が低下した領域の周波数の幅と定義する。
【0036】
入力ポート1aを介して入力されたASE光は、各MEMSミラー素子52において、ビームウェストがミラー素子52をX軸方向に波長掃引した形で光スペクトルアナライザに透過スペクトルを出力する。MEMSミラーアレイチップ5をY軸方向に移動させると、アライメントパタン6に照射されるビームウェストの位置関係(6−1〜6−3)に伴って、そのアライメントパタン6による反射光のスペクトル形状(6−1’〜6−3’)が変化する。本実施の形態に係るアライメントパタン6は、反射領域の面積がY軸に沿って変化する。このため、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の移動に伴って、そのアライメントパタン6により反射される光の帯域幅(w1〜w3,6−1”〜6−3”)が変化する。これは、回折格子43による波長分離方向がX軸方向であるので、アライメントパタン6のX軸方向の幅がY軸を動かすことによって変化するのにしたがって、ビームウェストがクリッピングされる割合が波長毎に変化し、周波数に対して光強度が変化するためである。
【0037】
図6に示すように、菱形のアライメントパタン6における一方の対角線は、各MEMSミラー素子52のミラー52aの中心と同一直線上に位置するように形成されている。このため、アライメントパタン6による反射光の帯域幅が極大(w2)になるとき、すなわち、その一方の対角線がX軸上に位置するとき、MEMSミラーアレイチップ5に含まれる各MEMSミラー素子52のミラー52aの中心も、X軸上に位置することとなる。そこで、本実施の形態では、調心ステージ8によりMEMSミラーアレイチップ5をY軸方向に移動させ、スペクトルアナライザ9によりこのときの波長スペクトル形状における帯域幅を観察し、この帯域幅が最大となるようにMEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置を調整することにより、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向のアライメントを実現することができる。
【0038】
Y軸方向のずれ量と帯域幅の変化との関係は、アライメントパタン6の形状とアライメントパタン6に照射される光ビームのプロファイルに依存する。本実施の形態においては、アライメントパタン6が菱形に形成されており、かつ、このアライメントパタン6の反射領域の面積の極値がX軸上に存在し、その帯域幅はビームウェストとアライメントパタンの中心位置が合致したときに極値となる。アライメントパタン6に照射されるビームウェストのビームプロファイルが楕円形であるので、MEMSミラーアレイチップ5をY軸方向に移動させたとき、アライメントパタン6の反射領域の面積の変化に対する透過スペクトル形状の変化は、急峻なものとなる。このため、図6の符号αで示す曲線のように、帯域幅の変化も急峻なものとなる。具体的には、アライメントパタン6の一方の対角線がX軸上に位置したときが極大となり、Y軸方向のずれが大きくなるにつれてその極大からY軸方向の正負それぞれの側に下に凸の二次関数のように減少する、いわゆる裾広がり状に変化することとなる。このように、帯域幅が極大値に向かって鋭く変化するので、その極大値を容易に識別することが可能となり、結果として、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置についてより正確なアライメントを実現することができる。
なお、反射される光の強度はビーム形状とアライメントパタン形状に依存するため、ビームウェストが照射するアライメントパタン6の反射面の面積が、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の移動に伴って顕著に変化するような場合は、透過スペクトル頂部の光強度も変化することがある。この場合も、光強度の変化によらず、帯域幅の極値を検出することは可能である。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態によれば、アライメントパタン6の形状を、X軸に平行な軸から離れるにつれて波長分離方向の幅(長さ)が変化する、すなわちその波長分離方向の長さが短くなる形状とすることにより、そのアライメントパタン6に入力光を照射したときに、そのアライメントパタン6による反射光の帯域幅が、MEMSミラーアレイチップ5がY軸に位置ずれしていない場合に極大となるようにすることが可能となる。これにより、その反射光の帯域幅に基づいてMEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置を調整するだけで、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向におけるアライメントを行うことができる。
【0040】
なお、本実施の形態では、菱形のアライメントパタン6を設ける場合を例に説明したが、そのアライメントパタン6と同様、X軸上に位置するときにアライメントパタンやこのアライメントパタンの周囲による反射光の帯域幅がピークとなるアライメントパタンであるならば、その形状は菱形に限定されず、適宜自由に設定することができる。言い換えると、X軸方向に平行な所定の軸から離れるにつれて波長分離方向の幅が変化し、かつ第1の軸上に波長分離方向の幅に極値を有する形状であれば、アライメントパタンの形状を適宜自由に設定することができる。その変形例について以下に示す。
【0041】
<第1の変形例>
図7に示すアライメントパタン10は、周囲よりも低い反射率の材料から構成され、菱形に形成されている。この菱形のアライメントパタン10における一方の対角線は、X軸に平行に形成されるとともに、各MEMSミラー素子52のミラー52aの中心と同一直線上に位置するように形成されている。また、アライメントパタン10の周囲には、アライメントパタン10よりも反射率が高い材料から構成される矩形の高反射領域10aが形成されている。このような構成を採ることによっても、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置を変化させると、アライメントパタン10に照射されるビームウェストの位置関係に伴って、反射光のスペクトル形状が変化する。このとき、アライメントパタン10に照射されるビームウェストのX軸方向における長さの変化に伴って、反射光の帯域幅も変化する。
ここでは、帯域幅を、透過スペクトルの頂部から所定の光強度(例えば0.5dB)が低下した領域の周波数の幅と定義する。本実施例のように、透過帯域の中央部に窪みができるようなスペクトル形状の場合は、左右の平坦部の頂部から所定の光強度が低下した領域の周波数の幅を足し合わせたものを帯域幅とする。
【0042】
例えば、ビームウェストBの短軸が、菱形に形成されたアライメントパタン10におけるX軸に平行な対角線上に位置する場合、ビームウェストBの外縁部(領域10−2)のみが高反射領域10aに照射される。このため、その高反射領域10aによる反射光のスペクトル形状10−2’は、ビームウェストBの周波数帯域における中央部において光強度が小さく、その中央部の両脇に光強度が検出される2つの山状のプロファイルとなる。このとき、高反射領域10aに照射されるビームウェストBのX軸方向の長さが極小となるので、反射光の帯域幅も極小となる。
一方、ビームウェストBの短軸が、菱形に形成されたアライメントパタン10におけるX軸に平行な対角線上に位置しない場合、そのビームウェストBは、外縁部以外の部分も高反射領域10aに照射される(領域10−1,10−3)。このため、反射光のスペクトル形状10−1’、10−3’は、スペクトル形状10−2’の場合よりも、ビームウェストBの周波数帯域における中央部寄りに光強度が検出されることとなる。このとき、高反射領域10aに照射されるビームウェストBのX軸方向の長さは、上述した領域10−2の場合よりも大きな値となるので、反射光の帯域幅もその領域10−2の場合よりもよりも大きな値となる。
【0043】
したがって、光スペクトルアナライザ9により測定される高反射領域10aによる反射光の帯域幅は、図7の符号βで示す曲線のように、アライメントパタン10の一方の対角線がX軸上に位置したときが極小となり、この極小値からY軸方向の正負それぞれの側に上に凸の二次関数のように増大することとなる。言い換えると、図6の符号αで示したアライメントパタン6による反射光の帯域幅と上下逆の曲線を描くように変化する。このように帯域幅が極小値に向かって鋭く変化するので、その極小値を容易に識別することが可能となり、結果として、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置についてより正確なアライメントを実現することができる。
【0044】
<第2の変形例>
また、図8に示すアライメントパタン11は、周囲よりも高い反射率の材料から構成され、五角形に形成されている。このアライメントパタン11の周囲には、アライメントパタン11よりも低い反射率の材料から構成された矩形の低反射領域11aが形成されている。このような構成を採ると、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置を変化させたとき、光スペクトルアナライザ9により測定されるアライメントパタン11による反射光の帯域幅は、図8の符号γで示す曲線のように、アライメントパタン11に照射されるビームウェストのX軸方向の長さが極大となるときに極大となり、Y軸方向のずれが大きくなるにつれて、その極大からY軸方向の正負それぞれの側に非対称に減少することとなる。このように、アライメントパタンをX軸に対称な形状とすることによっても、帯域幅が極大に向かって鋭く、かつ、Y軸方向に非対称に変化するので、その極大を容易に識別することが可能となり、結果として、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置についてより正確なアライメントを実現することができる。
【0045】
<第3の変形例>
また、図9に示すアライメントパタン12は、周囲よりも高い反射率の材料から構成され、半円形またはかまぼこ型に形成されている。このアライメントパタン11の周囲には、アライメントパタン12よりも低い反射率の材料から構成された矩形の低反射領域12aが形成されている。このような構成を採ると、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置を変化させたとき、光スペクトルアナライザ9により測定されるアライメントパタン12による反射光の帯域幅は、図9の符号γで示す曲線のように、アライメントパタン12に照射されるビームウェストのX軸方向の長さが極大となるときが極大となり、Y軸方向のずれが大きくなるにつれてその極大からY軸方向の正負それぞれの側に非対称に減少することとなる。このようにY軸に非対称な形状とすることによっても、帯域幅が極大に向かって鋭く変化するので、その極大を容易に識別することが可能となり、結果として、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置についてより正確なアライメントを実現することができる。
【0046】
<第4の変形例>
また、図10に示すアライメントパタン13は、周囲よりも高い反射率の材料から構成され、Y軸方向のほぼ中央部がくびれた鼓型に形成されている。この鼓型とは、例えば、底辺が互いに平行で、かつ、その底辺を構成しない頂点または頂点近傍が接続されるように配置された2つの三角形を組み合わせた形状から構成される。アライメントパタン13の周囲には、アライメントパタン13よりも低い反射率の材料から構成された略三角形の低反射領域13aが形成されている。このような構成を採ると、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置を変化させたとき、光スペクトルアナライザ9により測定されるアライメントパタン13による反射光の帯域幅は、図10の符号εで示す曲線のように、アライメントパタン13に照射されるビームウェストのX軸方向の長さが極小となるときが極小となり、Y軸方向のずれが大きくなるにつれてその極小からY軸方向の正負それぞれの側に対象に増加することとなる。このように、鼓型に形成することによっても、帯域幅が極小へ向かって鋭く変化するので、その極小を識別することが可能となり、結果押して、MEMSミラーアレイチップ5のY軸方向の位置についてより正確なアライメントを実現することができる。
【0047】
なお、上述したアライメントパタン10〜13は、ビームウェストの短軸が、各アライメントパタンが形成されたミラー52aの中心を通るときに、そのアライメントパタンによる反射光の帯域幅が最大または最小となるように形成されることは言うまでもない。このとき、MEMEミラーアレイチップ5に含まれる各MEMSミラー素子52のミラー52aの中心は、アライメントパタン10〜13が形成されたミラー52aの中心と同一直線上に位置するように形成されている。
【0048】
また、本実施の形態では、一端のMEMSミラー素子52にアライメントパタン6を設ける場合を例に説明したが、MEMSミラーアレイチップ5に設けられたMEMSミラー素子52であるならばアライメントパタン6を設ける位置は端部のMEMSミラー素子52に限定されず、適宜自由に設定することができる。
【0049】
また、本実施の形態では、アライメントパタンをMEMSミラー素子52に設ける場合を例に説明したが、そのアライメントパタンを設ける位置はMEMSミラー素子52に限定されず、例えば、MEMSミラーアレイチップ5の基部51に設けるようにしてもよい。
【0050】
また、本実施の形態では、ミラー52aの表面に高反射領域または低反射領域からなるアライメントパタンと、この周囲に設けられた高反射領域または低反射領域とを備える場合を例に説明したが、Y軸上に帯域幅のピークが形成されるのであればアライメントパタン等の構成はそのような構成に限定されず、適宜自由に設定することができる。例えば、全面が高反射領域からなるミラー52aの外形自体を、上述したような菱形や五角形などに形成するようにしてもよい。また、ミラー52aに開口を設け、この開口を低反射領域として用いるようにしてもよい。ただし、ミラー52a自体を加工する場合、平行平板としての面積が小さくなるので、発生する静電引力は小さくなる。ミラー52aを支持するばねのばね定数(硬さ)が外形を加工しない場合と同じであるとすると、ミラー駆動電圧を大きくしなければ、ミラー52aを回動させることができなくなる。このため、ミラー52aの最大回動角度に制約が生じ、また、駆動電圧と回動角度の線形性も保ちにくくなるため、精密な角度制御が難しくなる。このため、ミラー52aの外形自体を加工してアラインメントパターンを形成する場合は、実施の第2の変形例や第3の変形例のように、ミラー52aの面積が加工前と較べて大幅に減少しないように設計することが望ましい。
【0051】
また、本実施の形態では、MEMSミラーアレイチップ5に適用した場合を例に説明したが、例えば透過型および反射型液晶スイッチアレイなど、他の微小スイッチアレイを用いたWSSにも適用することができる。
【0052】
また、本実施の形態では、ミラー素子52が一次元に配列されたMEMSミラーアレイチップ5について説明したが、二次元に配列されたMEMSミラーアレイについても適用できることは言うまでもない。この場合、回折格子により分波されたチャネルの何れかの位置に上述したアライメントパタンを配置することにより、本実施の形態と同等の作用効果を実現することができる。
【0053】
さらに、本実施の形態では、波長選択型光スイッチに適用した場合を例に説明したが、波長分離された入力光を偏向する素子やこの素子を備える光学系であるならば、適宜自由に適用できることは言うまでもない。また、その素子は、所定の軸回りに回動可能であるか否かを問わず、適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、波長分離された入力光を偏向する素子やこの素子を備える各種光学系に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…ファイバアレイ、1a…入力ポート、1b…出力ポート、2…マイクロレンズアレイ、3…集光レンズ、4…4f光学系、5…MEMSミラーアレイチップ、6,10〜13…アライメントパタン、6a,11a,12a,13a…低反射領域、10a…高反射領域、6−1〜6−3,10−1〜10−3…領域、6−1’〜6−3’,10−1’〜10−3’…スペクトル形状、6−1”〜6−3”…帯域幅、7…広帯域光源、8…調心ステージ、9…スペクトルアナライザ、41…第1レンズ、42…第2レンズ、43…回折格子、51…基部、52…MEMSミラー素子、52a…ミラー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長に応じて分離された入力光を偏向する偏向素子であって、
周囲と異なる反射率を有し、前記入力光の波長分離方向に平行な所定の第1の軸から、この第1の軸と直交し前記入力光の光軸と交わる第2の軸に沿って離れるにつれて前記波長分離方向の幅が変化し、前記第1の軸上に前記波長分離方向の幅の極値を有する形状のアライメントパタンを備える
ことを特徴とする偏向素子。
【請求項2】
前記アライメントパタンは、前記第1の軸と前記第2の軸との交点に対して点対称な形状を有する
ことを特徴とする請求項1記載の偏向素子。
【請求項3】
前記アライメントパタンは、対角線の一方が前記第1の軸、他方が前記第2の軸に平行な菱形の形状を有することを特徴とする請求項2記載の偏向素子。
【請求項4】
前記アライメントパタンは、前記第2の軸の方向の中央部における前記波長分離方向の幅が極値となる鼓型の形状を有することを特徴とする請求項2記載の偏向素子。
【請求項5】
前記アライメントパタンは、このアライメントパタンの前記極値となる幅の中心が、光周波数グリッドに対応する位置と一致するように配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の偏向素子。
【請求項6】
波長に応じて分離された入力光を偏向する偏向素子のアライメント方法であって、
前記偏向素子に設けられ、周囲と異なる反射率を有し、前記入力光の波長分離方向に平行な所定の第1の軸から離れるにつれて前記波長分離方向の幅が変化する形状のアライメントパタンに対して前記第1の軸方向に波長分離された光を照射する第1のステップと、
前記アライメントパタンからの反射光の周波数帯域の幅を測定し、この幅が極値となるように前記第1の軸に直交し、前記入力光の光軸と交わる第2の軸の方向における前記偏向素子の位置を調整する第2のステップと
を有することを特徴とする偏向素子のアライメント方法。
【請求項1】
波長に応じて分離された入力光を偏向する偏向素子であって、
周囲と異なる反射率を有し、前記入力光の波長分離方向に平行な所定の第1の軸から、この第1の軸と直交し前記入力光の光軸と交わる第2の軸に沿って離れるにつれて前記波長分離方向の幅が変化し、前記第1の軸上に前記波長分離方向の幅の極値を有する形状のアライメントパタンを備える
ことを特徴とする偏向素子。
【請求項2】
前記アライメントパタンは、前記第1の軸と前記第2の軸との交点に対して点対称な形状を有する
ことを特徴とする請求項1記載の偏向素子。
【請求項3】
前記アライメントパタンは、対角線の一方が前記第1の軸、他方が前記第2の軸に平行な菱形の形状を有することを特徴とする請求項2記載の偏向素子。
【請求項4】
前記アライメントパタンは、前記第2の軸の方向の中央部における前記波長分離方向の幅が極値となる鼓型の形状を有することを特徴とする請求項2記載の偏向素子。
【請求項5】
前記アライメントパタンは、このアライメントパタンの前記極値となる幅の中心が、光周波数グリッドに対応する位置と一致するように配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の偏向素子。
【請求項6】
波長に応じて分離された入力光を偏向する偏向素子のアライメント方法であって、
前記偏向素子に設けられ、周囲と異なる反射率を有し、前記入力光の波長分離方向に平行な所定の第1の軸から離れるにつれて前記波長分離方向の幅が変化する形状のアライメントパタンに対して前記第1の軸方向に波長分離された光を照射する第1のステップと、
前記アライメントパタンからの反射光の周波数帯域の幅を測定し、この幅が極値となるように前記第1の軸に直交し、前記入力光の光軸と交わる第2の軸の方向における前記偏向素子の位置を調整する第2のステップと
を有することを特徴とする偏向素子のアライメント方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−83856(P2013−83856A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224663(P2011−224663)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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