説明

偏析防止ホッパー

【課題】使用時に粉体の粒度偏析を効果的に防止することができる構造を具備してなるホッパー、及び該ホッパーを利用した粉体の貯留又は排出方法を提供する。
【解決手段】粉体を貯蔵及び/又は排出するためのホッパーであって、ホッパー1内部に偏析防止用の仕切構造2aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体を粒度偏析が生じることなく貯留及び/又は排出できるホッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
粉体を取り扱う工程において、製品の一時的な貯留装置として、通常ホッパーが設置される。このようなホッパーは、上部開口部は粉体を受入れるために直径が大きくとられ、下部排出口は他の装置への接続あるいはバルブの配置等のためその直径は上部開口部よりも小さくとられるのが通常である。このように、上部と下部では直径が異なるため、ホッパーの一部または全体は円錐あるいは角錐の形状を呈している。
【0003】
ところが、比重、粒子形状、粒径のうちの1あるいは2または全部が異なる粉体の混合物を均一にホッパーに供給しても、通常ホッパーから排出される際に内部で偏析が生じ、均一な混合物を取り出すことができないという問題点があった。
【0004】
この問題を解決する方法として、二重管を設置して内容物の偏析を防止する原料装入方法が提案されている(特許文献1)。しかし、特許文献1では実質的にコークス等の粒子径の大きい粒子を対象としており、より粒子径の細かい粉体を対象した場合には偏析防止効果が充分ではない。そのため、種々の特性をもった粒子(特に、より細かい粒子)に適用することのできる偏析防止方法の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開平6−65620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、使用時に粉体の粒度偏析(以下「偏析」ともいう)を効果的に防止することができる構造を具備してなるホッパー、及び該ホッパーを利用した粉体の貯留又は排出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ホッパー内で偏析を生じる原因は、ホッパー下部の円錐及び/又は角錐状になっている部分で、粒子が下向きの重力、ホッパー内壁から受ける斜め上向きの抗力、ホッパー内壁を滑り落ちる際に発生する逆向きの摩擦力など複雑な力を受けるためである。
【0007】
そこで本発明者らは、上記の課題を解決するためには、ホッパーの錘状部分と粒子との接触を極力少なくし、粒子の移動態様をできるだけ垂直方向(自然落下の方向)の移動に近づけることが重要であると考えた。そして、ホッパー内に複数の仕切構造を設けることにより、該ホッパー内での粒子の粒度偏析を効果的に抑制できることを見いだした。さらに、円筒及び/又は中空の角柱を組み合わせた仕切構造を用いることにより、該仕切構造をホッパー内への設置が容易となることを見出した。さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は下記の偏析防止ホッパーを提供する。
【0009】
項1. 粉体を貯蔵及び/又は排出するためのホッパーであって、ホッパー内部に偏析防止用の仕切構造を有してなる偏析防止ホッパー。
【0010】
項2. 前記仕切構造が、円筒及び/又は中空の角柱を組み合わせたものである項1に記載の偏析防止ホッパー。
【0011】
項3. 前記仕切構造が、粉体がほぼ垂直方向に落下できるように円筒及び/又は中空の角柱を複数組み合わせたものである項1又は2に記載の偏析防止ホッパー。
【0012】
項4. 前記仕切構造が複数の円筒を組み合わせたものであり、該円筒の内径が5〜100mm程度である項1〜3のいずれかに記載の偏析防止ホッパー。
【0013】
項5. 前記仕切構造の下端の一部がホッパー内壁の斜面に接しているか又は近接している項1〜4のいずれかに記載の偏析防止ホッパー。
【0014】
項6. 前記仕切構造の下端とホッパー内壁の斜面との距離が0〜5mm程度である項3に記載の偏析防止ホッパー。
【0015】
項7. 粉体を貯蔵及び/又は排出するためのホッパーの内部に、偏析防止用の仕切構造を設けることを特徴とする偏析防止ホッパーの製造方法。
【0016】
項8. 粉体を項1〜6のいずれかに記載の偏析防止ホッパーに装入して粉体を貯留又は排出する方法。
【0017】
項9. 粉体を項1〜6のいずれかに記載の偏析防止ホッパーに装入してホッパー内での粉体の偏析を抑制する方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の偏析防止ホッパーは、比重、粒子形状、粒径の異なる種々の粉体を、経時的に粒度偏析を生じることなく貯留及び/又は排出することができる。ホッパー内の仕切構造として、既製の円筒材、中空の角柱等を用いることができる。仕切構造の形状はホッパーの形状に応じて調整することができ、また、該仕切構造は必要な数だけホッパー内に設置すればよい。そのため、本発明のホッパーは偏析防止のための施工が極めて容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の偏析防止ホッパーを、その一実施態様である図1〜4を参照して具体的に説明する。
【0020】
本発明の偏析防止ホッパーは、粉体を貯蔵及び/又は排出するために用いられ、ホッパー内に偏析防止用の仕切構造を有してなる。
【0021】
ホッパーとしては一般的なものを用いることができ、その形状は特に限定はない。例えば、粉体を供給する広い開口部と下部に狭口の排出口を有し、ホッパーの一部又は全体が円錐乃至角錐の形状を呈しているものが挙げられる。具体的には、開口部側が円筒形であり排出口にかけて円錐形状を有するもの(例えば、図1(a)及び(b))、開口部が多角形(特に四角形)であり排出口にかけて角錐形状を有するもの等が挙げられる。ホッパーは、粉体の貯留及び/又は排出を制御できるバルブを排出口付近に設けてもよい(図示せず)。ホッパーは上記の形状のものに限定されず、また、その大きさ、材質等も特に限定はない。
【0022】
具体的には、図1(a)及び(b)で示される円錐形状のホッパーの場合、開口部の直径(内径)が200〜5000mm程度、さらに300〜2000mm程度のものが挙げられる。円錐部分の角度、すなわち円錐の頂点を含む垂直方向の断面において、頂点のなす角度は特に限定はないが、たとえば30〜60°のものが挙げられる。
【0023】
あるいは、角錐の形状のホッパーの場合、開口部の多角形(特に四角形)の対角線の距離が200〜5000mm程度、さらに300〜2000mm程度のものが挙げられる。角錐部分の角度は特に限定はないが、たとえば30〜60°のものが挙げられる。
【0024】
仕切構造としては、ホッパーの開口部に供給された粉体が、該仕切構造から受ける抗力や該仕切構造との摩擦が極力抑えられる構造、即ち粉体がほぼ垂直に落下できる構造であればよい。例えば、円筒、中空の角柱等の形状が挙げられる(例えば、図1(a)及び(b))。これらの仕切構造を並列に複数組み合わせたものが好適である。具体的な仕切構造としては、複数の円筒及び/又は中空の角柱を束ねたもの、切り込みを入れた板を組み合わせて格子状(複数の中空の角柱が配列したものに相当)としたもの等が挙げられる。ここで、円筒とは、断面が真円の場合だけでなく楕円の場合も含まれる。また、角柱とは、三角柱、四角柱、五角柱等の多角柱のものも含まれる。また、同一ホッパー内に、円筒及び中空の角柱の両方を含む仕切構造であってもよい。
【0025】
仕切構造を構成する円筒、中空の角柱等の大きさは、ホッパーのサイズや装入される粉体の粒子径等に応じて適宜選択することができる。
【0026】
例えば、円筒の場合、該円筒の内径(楕円の場合は最大内径)は、一般には5〜100mm程度、好ましくは、10〜100mm程度の範囲から選ばれ、より具体的には、使用する粉体の質量平均粒径の500倍以下、好ましくは300倍以下、より好ましくは5〜200倍の範囲から選択することができる。なお、粉体の質量平均粒径とは、均一に混合した粉体をJIS K1474により測定した値である。
【0027】
また、中空の角柱の場合、その最大内径は、一般には5〜100mm程度、好ましくは、10〜100mm程度の範囲から選ばれ、より具体的には、使用する粉体の質量質量平均粒径の500倍以下、好ましくは300倍以下、より好ましくは5〜200倍の範囲から選択することができる。なお、中空の角柱の最大内径とは、角柱の断面における最も長い対角線の長さを意味する。
【0028】
なお、仕切構造を構成する各円筒又は中空の角柱のサイズは、該仕切構造中において均一であっても異なっていてもよい。例えば、図1には均一な内径を有する複数の円筒が設置された形態が示されるが、これに限定されるものではない。
【0029】
また、仕切構造を構成する円筒、中空の角柱等の数も、ホッパーのサイズや装入される粉体の粒子径等に応じて適宜選択することができる。通常、15〜2000個、さらに好ましくは25〜500個となるように選択できる。
【0030】
仕切構造の上端は、粉体が均一に仕切構造内に装入されるようにフラット状(平坦状)であることが好ましい。なお、粉体の導入時において粉体がこぼれないようにするために、ホッパーの円筒側壁は仕切構造よりも上部に出ていることが好ましい。
【0031】
また、仕切構造を構成する各円筒及び/又は中空の角柱の下端の一部がホッパー内壁の斜面に接しているか、或いは近接していることが好ましい(例えば、図2及び図3)。
【0032】
具体的には、各円筒及び/又は中空の角柱の下端とホッパー内壁の斜面との距離が、0〜5mm程度の範囲あればよく、好ましくは0〜3mmである。或いは、上記距離は、粉体の質量平均粒径の10倍以下、好ましくは0〜5倍である。なお、粉体の質量平均粒径が1〜10mm程度と大きい場合は、仕切構造とホッパー斜面との間に該質量平均粒径の1〜3倍程度の隙間を設けてもよい。上記の距離は、図3に示されるように各円筒及び/又は中空の角柱の下端とホッパー内壁の斜面との垂直方向の距離(H)として把握される。
【0033】
特に、ホッパーの錘状部分と粒子との接触を極力少なくし、粒子の移動態様をできるだけ直管内の移動に近づけるために、仕切構造を構成する各円筒及び/又は中空の角柱の下端とホッパー内壁の斜面が接していること(H=0)が好ましい。
【0034】
本発明の偏析防止ホッパーは、粉体を貯蔵及び/又は排出するためのホッパーの内部に、偏析防止用の仕切構造を配置するものであり、上記した仕切構造をホッパー内に設置乃至固定することにより製造される。
【0035】
本発明の偏析防止ホッパーに適用される粉体の種類は特に限定はなく、コークス、活性炭、炭化品などの炭素製品;セピオライト、ゼオライトなどの鉱物;イオン交換樹脂などの合成樹脂等が例示される。
【0036】
特に、活性炭を用いた場合には、本品が吸着剤として使用されることからして、粒度分布や製品の均質性の維持が重要であるため、本発明の偏析防止ホッパーを用いることにより偏析が効果的に抑制される。これにより、小分けされた活性炭の各部分が当初設計した通りの吸着性能を発現することになる。また、種々の対象物質の吸着、浄化のため、活性炭とそれ以外の吸着剤を混合して使用する場合もあるが、この場合でもホッパー装入前の混合比率を維持したまま取り出すことができる。
【0037】
粉体の性状は特に限定はないが、例えば粉体の質量平均粒径(JIS K1474は、0.045〜10mm、さらに0.1〜4mmのものが挙げられ、充てん密度(JIS K1474法)は0.2〜0.9g/ml、さらに0.3〜0.7g/mlのものが挙げられる。
【0038】
本発明の偏析防止ホッパーの具体的な使用方法の一例を図4に示す。円筒部及び円錐部を有するホッパーに円筒を複数束ねた仕切構造を配置した偏析防止ホッパー(図1)に、粉体を装入する。粉体は自重により仕切構造をほぼ垂直に落下するため、側壁での摩擦や抗力を大幅に減少させることができ、粉体の偏析が大幅に抑制される。仕切構造を通過した粉体は、ホッパーの錘状部分を経て排出口から排出される。錘状部分の粉体の通過は短時間であるため、ほとんど影響を受けない。
【0039】
また、偏析防止ホッパーに排出口にバルブを設けて、粉体を一旦貯留しておくこともできる。貯留後、粉体を排出する場合にも上記の効果が発揮されて粉体の偏析が大幅に減少する。
【実施例】
【0040】
以下に実施例、比較例および試験例をあげて、本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
図1に示すように、開口部の直径1300mm、円筒部の高さ300mm、円錐部の高さ500mmのホッパーに、内径80mmの円筒を複数束ねた仕切構造を配置した。このホッパーに、粒径範囲0.300〜0.125mm、質量平均粒径0.22mmの、JIS K1474の方法で測定した充てん密度が0.600g/mlであるやし殻炭化品と、同じ粒度範囲、同じ質量平均粒径であり、充てん密度が0.400g/mlであるやし殻活性炭をそれぞれ20kgずつ均一になるよう混合したものを投入した。次に、ホッパー下部より活性炭を排出し、排出量4kg毎に100gの試料を採取し、その充てん密度を測定した。この仕切構造を設けていないホッパーについても同様にして排出される活性炭の充填密度を測定した。その結果を図5に示す。
【0041】
本実施例のホッパーから排出した場合は、活性炭の充てん密度が安定していたのに対し、仕切構造のないホッパーから排出した場合は、充てん密度の変動が大きかった。
[実施例2]
図1に示すように、開口部の直径900mm、円筒部の高さ200mm、円錐部の高さ400mmのホッパーに、一辺の長さ50mmの角柱からなる仕切構造を配置した。このホッパーに、粒径範囲0.500〜0.150mm、最も大きな粒子から細かい粒子にかけて粒径が小さくなるにつれて充てん密度が0.400g/mlから0.550g/mlに連続して変化している粒子を、均一に混合して30kg充てんした。次に、ホッパー下部より活性炭を排出し、排出量3kg毎に100gの試料を採取し、その充てん密度を測定した。この仕切構造を設けていないホッパーについても同様にして排出される活性炭の充填密度を測定した。その結果を図6に示す。
【0042】
本実施例のホッパーから排出した場合は、活性炭の充てん密度が安定していたのに対し、仕切構造のないホッパーから排出した場合は、充てん密度の変動が大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の偏析防止ホッパーを用いる方法によって、ホッパーから比重、粒子形状、粒径等の異なる粉体混合物を、偏析を生じることなく排出することができる。そのため、活性炭をはじめとする固体吸着剤の製造などの広範な分野で使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の偏析防止ホッパーの具体的態様を示す斜視図である。(a)は円筒を複数組み合わせた仕切構造を採用したものであり、(b)は中空の角柱を複数組み合わせた(格子状)仕切構造を採用したものである。
【図2】図1(a)の偏析防止ホッパーの断面図を示す。
【図3】図1(a)の偏析防止ホッパーの拡大断面図を示す。
【図4】図1(a)の偏析防止ホッパーに粉体を装入する模式図である。
【図5】実施例1において、ホッパーに仕切構造を入れる場合と入れない場合の、排出される粉体の充てん密度の経時的変化の結果を示す。
【図6】実施例2において、ホッパーに仕切構造を入れる場合と入れない場合の、排出される粉体の充てん密度の経時的変化の結果を示す。
【符号の説明】
【0045】
1 ホッパー本体
2a 仕切構造(円筒を組み合わせたもの)
2b 仕切構造(中空の角柱を組み合わせたもの)
3 ホッパーの円筒部
4 ホッパーの円錐部
5 ホッパーの開口部
6 ホッパーの排出口
7 粉体
8 コンベア
H 各円筒の下端とホッパー内壁の斜面との垂直方向の距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を貯蔵及び/又は排出するためのホッパーであって、ホッパー内部に偏析防止用の仕切構造を有してなる偏析防止ホッパー。
【請求項2】
前記仕切構造が、円筒及び/又は中空の角柱を組み合わせたものである請求項1に記載の偏析防止ホッパー。
【請求項3】
前記仕切構造が、粉体がほぼ垂直方向に落下できるように円筒及び/又は中空の角柱を複数組み合わせたものである請求項1又は2に記載の偏析防止ホッパー。
【請求項4】
前記仕切構造が複数の円筒を組み合わせたものであり、該円筒の内径が5〜100mm程度である請求項1〜3のいずれかに記載の偏析防止ホッパー。
【請求項5】
前記仕切構造の下端の一部がホッパー内壁の斜面に接しているか又は近接している請求項1〜4のいずれかに記載の偏析防止ホッパー。
【請求項6】
前記仕切構造の下端とホッパー内壁の斜面との距離が0〜5mm程度である請求項3に記載の偏析防止ホッパー。
【請求項7】
粉体を貯蔵及び/又は排出するためのホッパーの内部に、偏析防止用の仕切構造を設けることを特徴とする偏析防止ホッパーの製造方法。
【請求項8】
粉体を請求項1〜6のいずれかに記載の偏析防止ホッパーに装入して粉体を貯留又は排出する方法。
【請求項9】
粉体を請求項1〜6のいずれかに記載の偏析防止ホッパーに装入してホッパー内での粉体の偏析を抑制する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−29431(P2009−29431A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192311(P2007−192311)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(598021591)ミナベ化工株式会社 (2)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】