説明

偏波保持光ファイバカプラ及びその製造方法

【課題】簡易な構造で、偏波特性を保持したまま、偏波方向における分岐比の変動が殆どない偏波保持光ファイバカプラ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の偏波保持光ファイバカプラは、一部にコア及びクラッドからなる光結合用部位を有するコア径の等しい2本のパンダ型偏波保持光ファイバと、前記パンダ型偏波保持光ファイバの光結合用部位同士を融着・延伸してなる光結合部とを備えている。コア径の等しい2本のパンダ型偏波保持光ファイバのそれぞれ一部をエッチングして縮径を行い、コア及びクラッドからなる結合用部位を形成する工程と、前記パンダ型偏波保持光ファイバの結合用部位同士を融着・延伸して、光結合部を形成する工程とを行うことによって作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏波特性を保持したまま、偏波方向における分岐比の変動が殆どない偏波保持光ファイバカプラ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信需要の急速な伸びにともなって、コヒーレント光による長距離、大容量伝送の技術の開発が待望されており、その伝送路のひとつとして偏波保持光ファイバが期待されている。偏波保持光ファイバはまた、計測、制御の分野ですでに用いられている。近年では、この偏波保持光ファイバを用いて、偏波特性を保持したまま、偏波方向における分岐比の変動が殆どない偏波保持光ファイバカプラが求められている。従来このような偏波保持光ファイバカプラとしては、コア径の等しい2本のパンダ型偏波保持光ファイバを用いた偏波保持光ファイバカプラが知られている(例えば、下記特許文献1、2)。
【特許文献1】特開平06−337324号公報
【特許文献2】特許第2552960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1のものは、光結合部において応力付与部が存在することから、応力によってX方向とY方向とで光の屈折率が異なる。したがって、光結合部における分岐比が変化してしまうことがある。また、特許文献2のものは、応力付与部が露出した状態で存在しており、これに含まれるガラスが水分に弱いことから、製品信頼性の点に問題がある。
【0004】
そこで、本発明の目的は、簡易な構造で、偏波特性を保持したまま、偏波方向における分岐比の変動が殆どなく、製品信頼性の高い偏波保持光ファイバカプラとその製造方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の偏波保持光ファイバカプラは、一部にコア及びクラッドからなる光結合用部位を有するコア径の等しい2本のパンダ型偏波保持光ファイバと、前記パンダ型偏波保持光ファイバの光結合用部位同士を融着・延伸してなる光結合部とを備えている。
【0006】
本発明の偏波保持光ファイバカプラの製造方法は、コア径の等しい2本のパンダ型偏波保持光ファイバのそれぞれ一部をエッチングして縮径を行い、コア及びクラッドからなる結合用部位を形成する工程と、前記パンダ型偏波保持光ファイバの結合用部位同士を融着・延伸して、光結合部を形成する工程とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、偏波特性を保持したまま、偏波方向における分岐比の変動が殆どなく、製品信頼性の高い偏波保持光ファイバカプラとその製造方法とを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施形態を説明する。図1は本発明の実施形態に係る偏波保持光ファイバカプラを示す図である。図2は、図1における偏波保持光ファイバカプラに用いたパンダ型偏波保持光ファイバの断面図であって、(a)はエッチングされていない部分の断面図、(b)はエッチングされている部分の断面図である。図3は、図1における偏波保持光ファイバカプラの光結合部の断面図である。図4は、図1のIV―IV矢視断面図であって、パンダ型偏波保持光ファイバと光結合部とのみを模式的に表した図である。
【0009】
本実施形態に係る偏波保持光ファイバカプラ100は、図1に示すように、基板1と、保護材2が被覆されたパンダ型偏波保持光ファイバ3と、保護材4が被覆されたパンダ型偏波保持光ファイバ5と、光結合部6と、パンダ型偏波保持光ファイバ3、5を基板1に固定する接着剤7、8とを備えている。
【0010】
パンダ型偏波保持光ファイバ3のエッチングされていない部分は、コア9と、応力付与部10、11とを備えたクラッド12からなる。具体的には、応力付与部10、11が、コア9を中心として左右対称に所定距離の間隔をあけてクラッド12内に埋設されており(図2(a)参照)、途中部分がコア9とエッチングされたクラッド12aとからなる(図2(b)参照)。パンダ型偏波保持光ファイバ5においても同様で、応力付与部13、14が、コア15を中心として左右対称に所定距離の間隔をあけてクラッド16内に埋設されており、途中部分がコア15とエッチングされたクラッド16aとからなる。
【0011】
パンダ型偏波保持光ファイバ3、5のエッチングは、パンダ型偏波保持光ファイバ3、5の一部を予めエッチング液に浸漬し、この部分における応力付与部10、11、13、14がなくなるまで行われる。パンダ型偏波保持光ファイバ3を例にすると、具体的には、断面が図2(a)のものから、図2(b)のようなものとなるまで径を細くする。これにより、パンダ型偏波保持光ファイバ3、5の光結合用部位(光結合部6を形成する部分付近)が形成される。ここで使用されるエッチング液としては、例えばフッ酸とフッ化アンモニウム水溶液の混合液などである。
【0012】
光結合部6は、パンダ型偏波保持光ファイバ3、5の一部をエッチングすることによって形成された光結合用部位同士を溶融・延伸することにより形成される。したがって、光結合部6は、コア9、15と、クラッド12a、15aが融着して形成されたクラッド17とからなる(図3参照)。
【0013】
ここで、光結合部6を形成するのに用いた溶融・延伸方法について説明する。まず、一部がエッチングされることにより形成された光結合用部位を有するパンダ型偏波保持光ファイバ3、5を用意する。次に、応力付与部10、11及び応力付与部13、14の中心を結ぶ線A、B(図4参照)がほぼ平行となるように、パンダ型偏波保持光ファイバ3、5を並べる。続いて、コア9、15の中心を結ぶ方向が、図4の線A、Bに垂直な方向とほぼ一致するように、パンダ型偏波保持光ファイバ3、5の光結合用部位を当接する。この状態で、例えば1500℃で加熱し、融着させながら後述する方法で延伸することにより、図1及び図4の偏波保持光ファイバカプラ100の光結合部6が形成される。
【0014】
次に、延伸の方法を説明する。まず、偏波保持光ファイバ3、5を上記のように当接させる。そして、示唆は一つの入力ポートから光(線A、Bに平行な方向と垂直な方向とで、波長が異なる光でも同じ光でもよい)を入射し、二つの出力ポートからのそれぞれの波長の出力パワーを監視しつつ延伸し、最初に出力パワーが等しくなるところ(したがって、分岐比が等しくなるところ)で延伸を停止する。これにより、所望する光結合部6を得ることができる。
【0015】
保護材2、4は、例えば、ポリアミド、ポリエステルエラストマー、エチレン−テトラフルオロエチレン/4フッ化エチレン−エチレン供重合等からなる。
【0016】
接着剤7、8には、例えば、透湿性の少ないエポキシ系接着剤やアクリレート系接着剤等が用いられる。
【0017】
本実施形態によれば、光結合部6において応力付与部10、11、13、14が存在しないので、偏波特性を保持したまま、偏波方向における分岐比の変動が殆どなく、製品信頼性の高い偏波保持光ファイバカプラを提供できる。
【0018】
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の偏波保持光ファイバカプラにおいて、光の干渉系を構成することにより、波長圧縮ができる光回路の作製が可能であり、多波長多重通信システムなどの通信容量増大に寄与することができる。また、X偏波及びY偏波それぞれの特性をモニターして、光の波長及び強度を監視するモニター回路にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る偏波保持光ファイバカプラを示す図である。
【図2】図1における偏波保持光ファイバカプラに用いたパンダ型偏波保持光ファイバの断面図であって、(a)はエッチングされていない部分の断面図、(b)はエッチングされている部分の断面図である。
【図3】図1における偏波保持光ファイバカプラの光結合部の断面図である。
【図4】図1のIV―IV矢視断面図であって、パンダ型偏波保持光ファイバと光結合部とのみを模式的に表した図である。
【符号の説明】
【0021】
1 基板
2、4 保護材
3、5 パンダ型偏波保持光ファイバ
6 光結合部
7、8 接着剤
9、15 コア
10、11、13、14 応力付与部
12、12a、16、16a、17 クラッド
100 偏波保持光ファイバカプラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部にコア及びクラッドからなる光結合用部位を有するコア径の等しい2本のパンダ型偏波保持光ファイバと、
前記パンダ型偏波保持光ファイバの光結合用部位同士を融着・延伸してなる光結合部とを備えていることを特徴とする偏波保持光ファイバカプラ。
【請求項2】
コア径の等しい2本のパンダ型偏波保持光ファイバのそれぞれ一部をエッチングして縮径を行い、コア及びクラッドからなる結合用部位を形成する工程と、
前記パンダ型偏波保持光ファイバの結合用部位同士を融着・延伸して、光結合部を形成する工程とを有することを特徴とする偏波保持光ファイバカプラの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−121478(P2007−121478A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310712(P2005−310712)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000108742)タツタ電線株式会社 (76)