説明

健康増進剤およびその利用

【課題】従来から健康食品として広く用いられている梅エキスのさらなる利用可能性を見出し、特に低体温状態の被験者の体温を上昇させ、低血圧状態の被験者の血圧を正常な範囲内に上昇させるための組成物を提供する。
【解決手段】梅エキス以外に、紫ウコンおよびショウキョウを含有している健康増進用組成物。該組成物においては梅エキスを30〜60重量%、紫ウコンを10〜30重量%、ショウキョウを1〜10重量%含有しており、丸粒形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康増進剤およびその利用に関するものであり、より詳細には、梅エキス、紫ウコンおよびショウキョウを含有している組成物およびその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、健康に対する意識が高まってきている。このような世相を反映して、健康増進効果を図るための種々の商品が開発されている。漢方、生薬、ビタミン類などのような天然成分を主成分とした健康増進剤が知られており、疲労回復、胃腸機能改善、アルコール代謝促進などの種々の用途に用いられている。
【0003】
健康増進に有用な成分が多く含む梅は、種々の形態(例えば、梅エキス、梅酢)に加工されて食用として用いられている。梅および梅エキス(梅肉エキス)は、その種々の機能が研究され、そして報告されている。
【0004】
例えば、非特許文献1には、梅肉エキスに血流改善作用があることと、その成分としてムメフラールが初めて単離されたことが記載されている。非特許文献2には、梅果実から初めて4つの化合物を見出したことが記載されている。非特許文献3には、脱塩した梅酢を用いて健常人5名の血流通過時間の変化を測定し、その結果、有意に改善されることが記載されている。非特許文献4には、梅肉エキスの加熱工程によって生じるムメフラールやクエン酸の派生化合物が血流を改善することを見出すとともに、元々存在する有機酸にも血流改善効果があることが記載されている。非特許文献5には、梅果実に含まれている新しい血流改善成分として benzyl vicianoside を単離同定したことが記載されている。非特許文献6には、ウメ果実の抽出物が腸管出血性大腸菌0157に対して、その最小発育阻止濃度の半分程度の濃度で、ベロ毒素の産生を抑制することが記載されている。非特許文献7には、UV検出器を備えたHPLCを用いて梅肉エキス中のムメフラールを定量する方法を確立したことが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「梅肉エキス中の血流改善成分」 ヘモレオロジー研究会誌、第1巻p.65-68 (1998)
【非特許文献2】「Isolation of benzyl glucoside and chlorogenic acid from the fruits of Prunus mume」 Natural Medicines 53(2), 109 (1999)
【非特許文献3】「梅酢摂取が全血流動性に及ぼす影響」 ヘモレオロジー研究会誌、第2巻 p.37 (1999)
【非特許文献4】「Mumefural, Citric acid derivative improving blood fluidity from Fruit-Juice concentrate of Japanese Apricot(Prunus mume Sieb. et Zacc.)」 J. Agric. Food Chem. 47, 828-831 (1999)
【非特許文献5】「梅果実の血流改善成分」 ヘモレオロジー研究会誌、第4巻 p.15 (2001)
【非特許文献6】「Inhibitory effect of the extract of Prunus mume Sieb. et Zacc. on Vero-toxin production by Enterohemorrhagic Escherichia coli O157:H7」 Biocontrol Science, Vol.6, No.1, 53-56 (2001)
【非特許文献7】「梅肉エキス中のムメフラール定量法」 日本食品科学工学会誌 Vol.50, No.4, 188-192 (2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来から健康食品として広く用いられている梅エキスのさらなる利用可能性を見出すことを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、健康増進用の組成物を提供する。本発明の組成物は、健康を増進させるために、梅エキス、紫ウコンおよびショウキョウを含有していることを特徴としている。本発明者らは、これらを組み合わせることによって新たな機能が奏せられることを初めて見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の組成物は、梅エキスに紫ウコンおよびショウキョウをさらに配合したことにより、種々の生体調整機能を複合的に改善させることができる。具体的には、本発明の組成物は、被験者のNK細胞活性を改善させることができる。NK細胞活性が向上すると、生体の自己防衛機能が改善し、免疫機能が向上する。本発明の組成物はまた、γ−GTP値が基準値の範囲を超えている被験者に対して、その値を改善させことができ、これに伴って、血中脂質の異常も改善される。本発明の組成物はさらに、口内環境も改善し、口臭や歯周病、虫歯を予防し得る。
【0009】
このように、本発明の組成物は、被験者の体調を全体的に改善し得る。特に、本発明の組成物が低血圧状態の被験者に適用された場合は、被験者の血圧を正常な範囲内に上昇させることができる。すなわち、本発明の組成物は、低血圧状態の被験者に適用されることが好ましい。また、本発明の組成物が低体温状態の被験者に適用された場合は、被験者の体温を上昇させることができ、それに伴って、基礎代謝量を増加させる。すなわち、本発明の組成物は、低体温状態の被験者に適用されることが好ましい。
【0010】
本発明の組成物に含有されている梅エキスの量は、30〜60重量%の範囲内であることが好ましく、40〜50重量%の範囲内であることがより好ましい。また、本発明の組成物に含有されている紫ウコンの量は、10〜30重量%の範囲内であることが好ましく、15〜25重量%の範囲内であることがより好ましい。さらに、本発明の組成物に含有されているショウキョウの量は、1〜10重量%の範囲内であることが好ましく、2〜5重量%の範囲内であることがより好ましい。
【0011】
本発明に用いられる梅エキスとしては、蒸煮した梅果実を破砕および脱核し、遠心分離して回収した上清を濃縮したものが好ましい。また、本発明に用いられる紫ウコンとしては、Curcuma zedoariaの根茎を粗砕し、篩選別した紫ウコン末が好ましい。なお、選別される紫ウコン末は、60メッシュ未満であることが好ましく、本発明に用いられる紫ウコン末は、60メッシュ未満のものを90%以上含んでいることがより好ましい。また、本発明に用いられるショウキョウとしては、Zingiber officinaleの根茎を粗砕し、篩選別したショウキョウ末が好ましい。なお、選別されるにショウキョウ末は、80メッシュ未満であることが好ましく、本発明に用いられるショウキョウ末は、80メッシュ未満のものを90%以上含んでいることがより好ましい。
【0012】
本発明の組成物は、桂皮をさらに含有していてもよく、含有される桂皮の量は、1〜10重量%の範囲内であることが好ましく、2〜5重量%の範囲内であることがより好ましい。
【0013】
本発明の組成物は、上記成分を含有していればよいが、丸粒形状であることが好ましい。このような形状を有していることにより、本発明の組成物は、被験者が苦味等の苦痛を感じることなく摂取することができる。
【0014】
上述した効果以外に、本発明の組成物を用いれば、ピロリ菌を除菌し得、HHV−6型ウイルスの活性を低下させ得、さらには、被験者の体調を全体的に改善させ、これに伴い、被験者の食欲を亢進させ、食事量を増加させる。さらには、本発明の組成物を用いれば、慢性疲労、眠りの質、および/または日々の体調を改善させることができる。このような効果を奏する本発明の組成物は、機能性食品として用いられても、医薬として用いられてもよい。
【0015】
本発明はさらに、健康増進剤の製造方法を提供し、本方法は、梅エキス、紫ウコンおよびショウキョウを混合する工程を包含することを特徴としている。また、本発明は、低体温状態の被験者の体温を上昇させる方法、および低血圧状態の被験者の血圧を正常な範囲内に上昇させる方法を提供し、これらの方法は、梅エキス、紫ウコンおよびショウキョウを被験者に投与する工程を包含することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の組成物は、種々の生体調整機能を改善し、その結果、被験者の生活の質を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の組成物の摂取する前後の、被験者におけるNK細胞活性の変化を示す図である。
【図2】本発明の組成物の摂取する前後の、被験者における体温の変化を示す図である。
【図3】本発明の組成物の摂取した被験者における、体温の経時的な変化を示す図である。
【図4】本発明の組成物の摂取した被験者における、体温と基礎代謝量の相関関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明は、健康増進用の組成物を提供する。本発明の組成物は、健康を増進させるために、梅エキス、紫ウコンおよびショウキョウを含有していることを特徴としている。
【0019】
梅は、強アルカリ性食品として知られており、抗疲労、抗アレルギー、消化吸収力増加など、体調不良の改善/解消/健康増強に有用である。特に、梅エキスには、肝臓の解毒作用を助けることで、脂肪の沈着を防ぎ、肝機能を強化する効果があるといわれている。梅エキス中の成分である「ムメフラール」(学名:mumefural)には、血流改善効果があることが報告されており、それに付随して、冷え性、肩こり、むくみなどの解消や、心臓病、脳梗塞、動脈硬化の予防などの効果も一部で確認されている(非特許文献1参照)。なお、本明細書中にて使用される場合、用語「梅エキス」は「梅肉エキス」を包含する。
【0020】
紫ウコンは、ショウガ科ウコン属の多年草であり、その根茎が中国やインドの伝統医療において古くから利用されており、特に胃腸障害、消化不良、感染症、発熱などの治療に使用されている。さらに、紫ウコン中に含まれるアズレン、シネオール、カンファーといった成分にもそれぞれ、抗炎症、肝機能改善、血圧降下、除菌、血行促進効果などが確認されており、特にピロリ菌に関しては除去作用があることも近年報告されている。
【0021】
ショウキョウは、生薬として利用される、ショウガの根茎である。中国では紀元前から、寒気を伴う風邪の初期症状の治療、胃腸の冷えなどによる胃腸機能低下の治療などの薬用として利用されている。
【0022】
このように、梅エキス、紫ウコンおよびショウキョウは、何らかの薬効を有していることがすでに知られている。しかし、これらを組み合わせることによって奏せられる新たな機能は、当業者が容易に予測し得るものではなかった。
【0023】
本発明の組成物は、梅エキスに紫ウコンおよびショウキョウがさらに配合されたことにより、種々の生体調整機能を複合的に改善させることができる。本発明の組成物は、梅エキス、紫ウコンおよびショウキョウによる公知の機能(例えば、NK細胞活性の向上、肝機能の改善など)を十分発揮している。これにより、本発明の組成物に梅エキス、紫ウコンおよびショウキョウが含まれており、かつ十分に機能していることが示される。
【0024】
本発明の組成物は、低血圧状態の被験者の血圧を正常な範囲内に上昇させることができる。梅エキスおよび紫ウコンが本来高血圧改善作用を有していることから、このような新たな効果は、当業者が容易に予測し得るものではなかった。また、本発明の組成物は、低体温状態の被験者の体温を上昇させることができる。紫ウコンが古くから発熱治療に使用されていることから、このような新たな効果は、当業者が容易に予測し得るものではなかった。
【0025】
梅エキスの製造には、「煮詰め」が古来より用いられている。具体的には、梅の実をすりおろして布などで果汁を絞り出し、その後流動性を最小限残しつつ弱火にて数時間煮詰めるという方法である。本発明の組成物に用いられる梅エキスは、このような方法によって製造されても、後述する実施例の手順に従って製造されてもよい。なお、本発明の組成物に含まれる梅エキスの量は、30〜60重量%の範囲内であることが好ましく、40〜50重量%の範囲内であることがより好ましい。
【0026】
紫ウコンおよびショウキョウの製造には、根茎を破砕して篩選別が行われればよい。なお、本発明の組成物に含まれる紫ウコンの量は、10〜30重量%の範囲内であることが好ましく、15〜25重量%の範囲内であることがより好ましい。また、本発明の組成物に含まれるショウキョウの量は、1〜10重量%の範囲内であることが好ましく、2〜5重量%の範囲内であることがより好ましい。
【0027】
上述した効果以外に、本発明の組成物を用いれば、ピロリ菌を除菌し得、HHV−6型ウイルスの活性を低下させ得、さらには、被験者の体調を全体的に改善させ、これに伴い、被験者の食欲を亢進させ、食事量を増加させる。さらには、本発明の組成物を用いれば、慢性疲労、眠りの質、および/または日々の体調を改善させることができる。このような効果を奏する本発明の組成物は、健康食品として用いられても、医薬として用いられてもよい。
【0028】
本発明の組成物は、製薬分野における公知の方法によって製造される医薬であり得る。本発明の医薬は経口投与されることが好ましく、経口投与に好ましい錠剤、液剤、散剤、カプセル、顆粒、丸粒などの形態として調製され得る。経口投与される態様(すなわち経口剤)の場合、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩などが医薬用担体として利用される。また経口剤を調製する際、更に結合剤、崩壊剤、界面活性剤、潤滑剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料などを配合してもよい。安定化剤、抗酸化剤などのような補助物質もまた、本発明の医薬中に存在し得る。本発明の医薬はそのまま経口投与するほか、任意の飲食品に添加して日常的に摂取させることもできる。投与および摂取は、所望の投与量範囲内において、被験者の年齢等に応じて適宜変更され得るが、通常、150〜5000mg程度を1日に約1〜数回程度に分けて行ってもよい。
【0029】
本発明の組成物は、食品、飲料などであり、食品分野における公知の方法によって製造することができる。本発明の食品は種々の生体調整機能を複合的に改善させるので、体力向上や疲労回復などの目的に特化した機能性食品(例えば、特定保健用食品や健康食品、健康補助剤、栄養剤)として有用である。本発明の食品の製造法は特に限定されず、調理、加工および一般に用いられている食品または飲料の製造法による製造を挙げることができる。本発明の食品としては、例えば、健康食品(例えば、錠剤、液剤、散剤、カプセル、顆粒、丸粒)、飲料(例えば、果物飲料など)、ドリンク剤などが挙げられるがこれらに限定されない。本発明の食品は、このような形態にて被験者によって摂取されればよく、摂取は、所望の摂取量範囲内において、被験者の年齢等に応じて適宜変更され得るが、通常、150〜5000mg程度を1日に約1〜数回程度に分けて行ってもよい。
【0030】
本明細書中にて使用される場合、用語「組成物」は、その複数の含有成分を単一組成物中に含有する態様と、単一キット中にその複数の含有成分を別々に備えている態様であってもよい。すなわち、本発明に係る組成物は桂皮をさらに含んでいてもよいが、梅エキス、紫ウコンおよびショウキョウを含有している組成物と桂皮とを別々に備えているキットの形態であってもよい。
【0031】
本発明を用いれば、低体温状態の被験者の体温を上昇させることができる。すなわち、本発明は、低体温状態の被験者の体温を上昇させる方法を提供する。本方法は、梅エキス、紫ウコンおよびショウキョウを被験者に投与する工程を包含することを特徴としている。また、本発明は、低体温状態の被験者の体温を上昇させる医薬を製造するための、梅エキス、紫ウコンおよびショウキョウの使用方法を提供する。
【0032】
さらに、本発明を用いれば、低血圧状態の被験者の血圧を上昇させることができる。すなわち、本発明は、低血圧状態の被験者の血圧を上昇させる方法を提供する。本方法は、梅エキス、紫ウコンおよびショウキョウを被験者に投与する工程を包含することを特徴としている。また、本発明は、低血圧状態の被験者の血圧を上昇させる医薬を製造するための、梅エキス、紫ウコンおよびショウキョウの使用方法を提供する。
【0033】
本発明はさらに、健康増進剤の製造方法を提供し、本方法は、梅エキス、紫ウコンおよびショウキョウを混合する工程を包含することを特徴としている。
なお、本発明の健康増進剤を製造する際に混合される梅エキス、紫ウコンおよびショウキョウの量は、それぞれ30〜60重量%、10〜30重量%、および1〜10重量%の範囲内であることが好ましい。なお、桂皮を混合する工程をさらに包含していてもよく、本発明の健康増進剤を製造する際に混合されるべき桂皮の量は、1〜10重量%の範囲内であることが好ましい。桂皮の混合は、梅エキス、紫ウコンおよびショウキョウの混合と一緒に行われても、別々に行われてもよい。
【0034】
後述する実施例にて示すように、NK細胞活性においては、有意な活性増加が認められ、ヘリコバクター ピロリやヒトヘルペスウイルス6型などに対しても、数値を低下させるなど、好ましい方向への変化が認められた。また、体温および基礎代謝の上昇傾向が認められた。さらには、本発明の組成物を摂取する前に、肝機能異常、脂質異常、血圧異常などが認められた被験者において、これらの異常が改善する傾向が認められ、特に、最終的に正常範囲内に改善していた例もあった。結論としては、被験者全例において、何らかの項目に対し、少なくとも2項目以上において改善方向へ変化しており、これらの結果より、本発明の組成物は、生体調整機能を複合的に改善するといえる。
【0035】
本発明は、以下の実施例によってさらに詳細に説明されるが、これに限定されるべきではない。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【実施例】
【0036】
〔検査手順〕
血液検査による肝機能、脂質等の測定、NK細胞活性、ヘリコバクター ピロリIgG、HHV−6型DNA(ヒトヘルペス6型DNA)、口内唾液PH、体成分分析検査、骨密度測定、体温測定、血圧測定を実施した。
【0037】
血液検査は(株)SRL社に依頼した。一般検査項目以外の検査方法を以下に示す。
・NK細胞活性:51Cr遊離法
・抗ヘリコバクター ピロリIgG抗体:EIA
・HHV−6DNA(ヒトヘルペスウイルス6型DNA:PCR
便検査は、被験者各自で採取した便を検査機関へ持参し、(株)SRL社にて分析した。
・便中ヘリコバクター ピロリ抗原:EIA
体成分分析は、株式会社バイオスペース社製 InBody720(医療機器承認番号:21100BZY00673000/一般名称:体成分分析装置36022020)を用いた。骨密度検査は、古野電気社製超音波骨密度測定装置CM-100(医療用具認証番号:21200BZZ00071)を用いて、超音波パルス透過法にて測定した。血圧測定は水銀血圧計にて測定した。体温測定には、オムロン電子体温計を脇部にて用いた。口内PH測定は、共立理化学研究所社製pH試験紙PH-BTB 6.2〜7.6 / KN3315218を用いた。
【0038】
各被験者に対して、各検査項目について、本発明の組成物を摂取する前の測定(初回測定)、ならびに1日4回(朝食後、昼食後、夕食後、就寝前)で3ヶ月間にわたって本発明の組成物を摂取した後の測定(最終測定)を行った。初回測定では、血液検査、体成分分析、骨密度測定、体温測定、血圧測定、口内唾液PH検査を行った。便検査に関しては、測定日の便を採取した。また、問診による食生活、病歴、現在の体調などの確認を行った。なお、この段階において、本発明の組成物について公正に評価し得ないと判断された場合(基本的に慢性疾患であり、通院や処方薬の服用をしている場合や、妊娠中の場合)に検証対象から除外し、最終的に40〜60代の健常者15名(男性5名、女性10名)を被験者として選定している。また、実施期間内において、自覚症状(体調の変化や体温)を記録させた。初回測定および最終測定によって得られた結果を集計し、Wilcoxonの符号順位和検定によって推計学的処理を行った。
【0039】
〔組成物の製造〕
和歌山県産の梅果実を洗浄した後に蒸煮し、次いで破砕および脱核し、引き続き、ペクチン分解酵素による酵素処理を行い、遠心分離して回収した上清を85℃にて殺菌し、真空蒸発によってBX30程度まで濃縮し、低温貯蔵した後にさらにBX80以上に濃縮/蒸練して、梅エキスを調製した。Curcuma zedoariaの根茎を粗砕した後に殺菌処理を施し、粉末加工した後に篩選別して、60メッシュを通過するものを90%以上含む紫ウコン末を調製した。Zingiber officinaleの根茎を粗砕した後に殺菌処理を施し、粉末加工した後に篩選別して、80メッシュを通過するものを90%以上含むショウキョウ末を調製した。
【0040】
梅エキスを45.0重量%、紫ウコン末を20.0重量%、ショウキョウ末を3.00重量%混合し、本発明の組成物として黒色の丸粒(150mg)を製造した。本発明の組成物は、上述した成分以外に、桂皮、カキガラ末、デンプン、甘藷(アヤムラサキ)、オレンジファイバーを含んでいる。
【0041】
〔測定および分析結果〕
〔1:生体調整機能の改善について〕
生体調整機能の改善について本発明の組成物を評価するために、全検査項目の中からNK細胞活性、肝機能、血中脂質、血圧、体温、基礎代謝、口内唾液PHについて詳細に検討した。
【0042】
〔1.1:NK細胞活性〕
ナチュラルキラー(NK)細胞は抗腫瘍活性や、抗体産生系に対する調節作用を有する細胞であり、生体防衛免疫監視機構として注目されているものである。つまり、NK細胞活性が向上すると、生体の自己防衛機能が改善し、免疫機能が向上することになる。NK細胞活性の結果を表1および図1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
結果より、NK細胞活性は、被験者15例中10例において改善されており、これらの変化は推計学的にも有意な増加であった。このことから、本発明の組成物は、NK細胞活性を向上させ、生体の自己防衛/免疫機能を向上させることが示唆された。
【0045】
〔1.2:肝機能〕
本発明の組成物についての肝機能の測定結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
本発明の組成物に含まれる梅エキスには、肝臓の解毒作用を助けることで、脂肪の沈着を防ぎ、肝機能を強化する効果があるといわれている。また、紫ウコンに含まれるアズレン、シネオールもまた、肝機能を改善する作用および胆汁の分泌を促進する作用があるといわれている。表2に示したように、初回測定時にγ−GTP値が基準値の範囲を超えていた2例(ID No.5およびID No.14)においては、いずれも改善されていた。このことから、本発明の組成物が肝機能(特に胆汁生成/排出系)の改善に比較的速やかに効果を表している可能性が示唆された。
【0048】
〔1.3:血中脂質〕
本発明の組成物についての血中脂質の測定結果を表3に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
生体の自己調整機能の改善について評価するために、各項目で基準値を超えた例を抽出した(表中※にて示す。)。総コレステロール(TC)が高値であった3例のうち、2例(ID No.5およびID No.14)において改善が認められ、2例とも基準値内におさまっていた。また、LDL−コレステロール高値例と中性脂肪高値例とは同一被験者(ID No.5)であったが、このいずれの項目においても、改善方向に変化を示し、そのいずれの項目においても基準値内におさまっていた。
【0051】
先の「1.2:肝機能」の結果とあわせて検討すると、総コレステロール、LDL−コレステロール、中性脂肪値のいずれにおいても高値を示した被験者(ID No.5)、および総コレステロール値に高値を示した被験者(ID No.14)は、いずれもγ−GTPが改善(低下)されている。γ−GTPは、胆汁生成/排出系の異常で高値を示し、胆汁は脂肪の分解に寄与する物質であることを考慮すると、この2例の結果からは、本発明の組成物によって、肝機能(特に胆汁生成/排出系)の改善に伴って、血中脂質の異常も改善したことが示唆された。
【0052】
〔1.4:血圧〕
血圧の測定結果を表4に示す。
【0053】
【表4】

【0054】
梅エキスの血圧安定作用として、ナトリウムの排出を促進することによって、降血圧作用を示すことが知られており、また、紫ウコンに含まれるアズレンにも降血圧作用があると報告されている。被験者15例中に高血圧と診断された被験者はなく、逆に低血圧と診断された被験者が4例存在していた。その4例中3例(ID No.1、ID No.2、およびID No.10)において、収縮期血圧および拡張期血圧の上昇が観察され、特に2例(ID No.1およびID No.10)においては、正常血圧への改善が認められた。このことから、本発明の組成物は、特定の組合せを採用したことによって、梅エキスおよび紫ウコンが本来有している高血圧改善作用以外に、低血圧を改善し得ることが示された。
【0055】
〔1.5:体温〕
体温の測定結果を表5および図2に示す。また、継続的に毎日測定を実施した被験者(ID No.11)の経時変化を図3に示す。
【0056】
【表5】

【0057】
これらの結果より、推計学的な有意差は認め得なかったが、初回測定時に低体温(35度台)であった7例のうち6例(ID No.3、ID No.5、ID No.6、ID No.9、ID No.11、およびID No.15)において体温の上昇が認められ、また、経過を追った1例(ID No.10)の変化を見ても明らかなように、継続した摂取によって、体温の上昇が観察された。このことから、本発明の組成物は、古くから発熱治療に使用されている紫ウコンを含んでいるにもかかわらず、低体温時に体温を上昇させる能力を有していることが示された。
【0058】
〔1.6:基礎代謝〕
体成分分析による基礎代謝量の測定結果を表6に示す。
【0059】
【表6】

【0060】
基礎代謝において、推計学的な有意な差は認め得なかったが、15例中9例において、基礎代謝の上昇が認められるという結果が示された。先の「1.5:体温」で示した体温の結果を合わせて検討すると、体温の上昇と基礎代謝量には正の相関関係が見られたことから(図4参照)、本発明の組成物が体温を上昇させて、それに伴って、基礎代謝量の増加も引き起こされているということが示唆された。基礎代謝量の増加は、体内でのエネルギー消費量の増加を表していることから、本発明の組成物は、生体調整機能の改善だけでなく、健康的なダイエットにも有用である可能性も示唆された。
【0061】
〔1.7:口内唾液PH〕
口内唾液のPH測定結果を表7に示す。
【0062】
【表7】

【0063】
口内の環境は、正常に生体調整機能が働いている場合は、通常中性から弱アルカリ性で安定している。食後やストレス過多、歯周病、胃酸の逆流などで口内環境は酸性に傾き、このことが口臭や虫歯の原因となり得るといわれている。
【0064】
推計学的な有意差は認め得なかったが、15例中8例に唾液のPHの上昇(弱アルカリ性方向への変化)が観察され、また、初回測定時に酸性であった9例中3例において、中性〜弱アルカリ性へ改善していた。このことより、本発明の組成物は、生体調整機能を改善させることで、口内環境も改善し、口臭や歯周病、虫歯を予防し得る可能性も示唆された。
【0065】
〔2:除菌/ウイルス活性低下に関する効果について〕
ヘリコバクター ピロリ菌の除去およびヒトヘルペスウイルスの活性低下作用についての有用性を評価するために、抗ヘリコバクター ピロリIgG抗体およびHHV−6DNA(ヒトヘルペスウイルス6型DNA)の測定結果を分析し、その有用性を検討した。
【0066】
〔2.1:ヘリコバクター ピロリ菌〕
ヘリコバクター ピロリは胃粘膜に付着し、粘膜に色々な障害を与えることによって、胃炎や潰瘍を引き起こし、胃ガンのリスクも高めることが報告されている。近年、ピロリ菌の除菌が保険診療になるなど、ピロリ菌は注目されており、その除菌効果を有している食品の人気は高い。
【0067】
本発明の組成物についての検査結果を表8に示す。
【0068】
【表8】

【0069】
便検査のピロリ抗原においては、変化は認められなかったが、血液検査にて測定された抗ヘリコバクター ピロリIgG抗体が基準値(10未満)以上であった5例(ID No.5、ID No.8、ID No.9、ID No.14、およびID No.15)の全てにおいて、減少傾向が認められた。このことから、本発明の組成物がピロリ菌の除菌に有用であることが示された。
【0070】
〔2.2:ヒトヘルペスウイルス6型〕
ヒトヘルペスウイルス6型(HHV−6)は、既に知られている8種のヘルペスウイルスの1つであり、HHV−6による感染に対して免疫反応を示す抗体について、陽性を示す人は、世界人口の95%を超えることが血清検査により明らかにされている。また、HHV−6は慢性疲労症候群(CFS)との関係が示唆されており、成人期において、免疫系の低下が起こる場合などに再活性化し、疾患が発現する可能性があるといわれている。
【0071】
本試験におけるHHV−6の測定結果を表9に示す。
【0072】
【表9】

【0073】
HHV−6の再活性が引き起こされている3例の被験者(ID No.6、ID No.10、およびID No.11)の全てにおいて、本発明の組成物の摂取によって、HHV−6型ウイルスのDNA量が減少しているといた。この結果より、本発明の組成物は、HHV−6型ウイルスの活性低下に有用であることが示唆された。
【0074】
〔3:考察〕
実施例にて示したように、本発明の組成物は、各有効成分の相乗効果によって、新たな機能が導き出されているとともに、複合的に生体調整機能を改善したり、除菌やウイルス活性を低下させたりすることができる。
【0075】
上述したように、本発明の組成物が、生体の自己調整機能を複合的に向上させ、除菌やウイルス活性を低下させることによって、体調不良の解消および疾病の予防に有効であることが示された。さらなる効用を検討した。
【0076】
〔3.1:ダイエット(体重減少効果)について〕
基礎代謝量の増加傾向が認められたことから、被験者の体重/体脂肪/骨格筋量の変化を分析した。それぞれの測定結果および参考値として、基礎代謝量の結果を表10に示す。
【0077】
【表10】

【0078】
測定結果より、体重に関しては、減少例が2例に対して増加例が13例と、有意な体重増加を示し、同様に体脂肪量に関しても増加傾向が認められた。骨格筋量は推計学的には有意ではなかったが、15例中10例において増加していた。後述する自覚症状にて示すが、15例中5例が「食欲が旺盛になった」または「食欲が少し旺盛になった」と回答しており、また胃腸が活発に活動していることを示すコメント(「腹がなる」など)も見られる。しかし、「食欲がなくなった」との回答は一例もなかった。このように、胃腸の調子だけでなく、全体の体調の改善に伴い、食事量が増加していた可能性が高いと思われる。
【0079】
〔3.2:骨密度〕
本発明の組成物の有効成分である梅エキスにはクエン酸が多く含まれており、クエン酸の働きによってカルシウムの吸収率を向上させるといわれている。
【0080】
骨密度の測定結果を表11に示す。
【0081】
【表11】

【0082】
この結果からは、骨密度の増加は推計学的に有意な差は認めえず、上昇した例も15例中5例にとどまった。
【0083】
〔3.3:自覚症状〕
なんらかの変化を自覚した項目についての被験者の回答を表12に示した。
【0084】
【表12】

【0085】
全被験者が元々慢性疲労を実感していたにもかかわらず、80%の被験者がその改善を実感していた。同様に80%の被験者が眠りの質の向上を実感していた。また、今回測定していないが、被験者の40%が美肌効果を実感していたことから、本発明の組成物によって、総合的な生体機能改善がもたらす新陳代謝の活性化や生体内部からの健全化が導き出されたことは、容易に推測される。
【0086】
〔4:まとめ〕
今回の検証の結果、本発明の組成物は、被験者全例において何らかの生体内の改善、および有害なヘリコバクター ピロリの除菌やヒトヘルペスウイルス6型の活性低下、その他、慢性疲労、眠りの質、日々の体調など改善を確認した。このことから、本発明の組成物は、生体調整機能の改善を通じて、生活の質を改善させることができることが示唆された。梅は、強アルカリ性食品としても知られ、抗疲労、抗アレルギー、消化吸収力増加など、体調不良の改善/解消/健康増強にも有用であるとされていることから、本発明の組成物は、複合的に生体調整機能を改善し、健康増強に対するさらなる効果が期待される。
【0087】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、医薬分野、食品分野に利用され得るだけでなく、あらゆる産業に従事する者の生活の質を改善することによって種々の生産の向上に間接的に寄与する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
梅エキス、紫ウコンおよびショウキョウを含有している、健康増進用組成物。
【請求項2】
上記梅エキスを30〜60重量%含有している、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
上記紫ウコンを10〜30重量%含有している、請求項1または2項に記載の組成物。
【請求項4】
上記ショウキョウを1〜10重量%含有している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
桂皮をさらに含有している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
上記桂皮を1〜10重量%含有している、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
低体温状態の被験者の体温を上昇させるための、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
低血圧状態の被験者の血圧を正常な範囲内に上昇させるための、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
機能性食品である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
医薬である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
丸粒形状である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
梅エキス、紫ウコンおよびショウキョウを混合する工程を包含する、健康増進剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−157303(P2011−157303A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20600(P2010−20600)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(503023324)株式会社ムラタ漢方 (1)
【Fターム(参考)】