説明

健康状態管理装置

【課題】座席に着座したユーザMの健康状態の変化を管理する。
【解決手段】ユーザMが着座する座席10の支持面(S.T)の異なる位置に設けられた一対のセンサ電極30A,30B間の静電容量を検出する静電容量センサ40と、静電容量センサ40により検出された静電容量に基づいて、体重その他の身体情報ごとに、静電容量及び人間の体脂肪率が予め対応づけられた対応情報521を参照して健康状態情報を算出し、健康状態情報の算出結果の履歴からユーザMの健康状態の変化を管理する管理情報521を生成する管理手段52と、管理手段52によって生成された管理情報を出力する出力手段54と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式のセンサを用いた健康状態管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車輌のシートに電極を埋め込み、電極間の静電容量を測定して乗員の着座を検知する乗員検知システムが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−150783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の装置では、静電容量の測定結果を用いて乗員の着座の有無を検出できるものの、乗員の身体の状態を検出することができないという不都合がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、着座した乗員の身体の静電容量を検出し、この静電容量に基づいて健康状態の管理情報を生成する健康状態管理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ユーザが着座する座席の支持面の異なる位置に設けられた一対の電極間の静電容量を検出する静電容量センサと、前記静電容量センサにより検出された静電容量に基づいて健康状態情報を算出し、前記健康状態情報の算出結果の履歴から前記ユーザの健康状態の変化を管理する管理情報を生成する管理手段と、前記管理手段によって生成された管理情報を出力する出力手段と、を備える健康状態管理装置によって、上記課題を解決する。
【0007】
上記発明において、前記管理手段は、前記ユーザの体重を含む身体情報と前記検出された静電容量とを取得する情報取得手段をさらに有するとともに、前記情報取得手段により取得された前記ユーザの身体情報と静電容量とに基づいて、体重その他の身体情報ごとに、静電容量及び人間の体脂肪率が予め対応づけられた対応情報を参照し、前記ユーザの体脂肪率を健康状態情報として算出することができる。
【0008】
上記発明において、前記ユーザの体重を検出する重量センサをさらに設け、前記情報取得手段が、前記重量センサにより検出された前記ユーザの体重を取得することを特徴とするように構成することができる。
【0009】
上記発明において、前記静電容量を検出する電極を、前記座席の支持面の異なる位置に複数設けることができる。
【0010】
上記発明において、前記座席に前記ユーザが着座しているか否かを検出する着座センサをさらに設け、前記管理手段は、前記着座センサが、前記座席にユーザが着座していると検出した場合に、前記ユーザの健康状態情報の算出を行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、座席に着座したユーザの静電容量を検出し、この静電容量に基づいてユーザの健康状態の管理情報を生成するので、ユーザは座席に着座するだけで日々の健康状態の変化を管理する管理情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】座席に設けられた、本発明の実施の一形態に係る健康状態管理装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示す座席が車両のドライバシートである場合の態様を示す断面図であり、図1のII-II線に沿う断面図である。
【図3】本実施形態のセンサ電極を示す平面図である。
【図4】静電容量センサの作用を説明するための断面図(図3のVI-VI線に沿う断面に対応する図)である。
【図5】本発明の実施形態に係る健康状態管理装置のブロック構成図である。
【図6】体脂肪率の対応情報の一態様を示す図である。
【図7】管理情報の生成処理の制御手順を示すフローチャート図である。図1の静電容量センサの作用を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、車両のドライバシートに本発明に係る健康状態管理装置を設けた例を説明する。
【0014】
図1は、座席10に装着された、本発明の実施の一形態に係る健康状態管理装置1を示す斜視図であり、図2は、図1に示す座席1が車両のドライバシート1である場合の態様を示す断面図であり、図1のII-II線に沿う座席1の断面図を含む図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、座席10は、着座するユーザの身体の荷重を受けて支持面として機能する座面Sと背もたれ面Tとを有する。座面S及び背もたれ面Sのそれぞれには、静電容量を検出するための複数のセンサ電極30A及び30Bが異なる位置に設けられている。これら複数のセンサ電極極30A及び30Bは対をなし、センサ電極30Aとセンサ電極30Bとの間に存在するユーザM(誘電体20)の静電容量を検出する。
【0016】
具体的に、静電容量センサ1は、各センサ電極30A及び30Bから受信した静電容量の検出信号からセンサ電極30A及び30B間に存在するユーザMの静電容量を検出し、後述する演算装置50へ出力する。なお、図2に示すように、座席10は、座面S及び背もたれ面Tを支える構造体11と、構造体の上に載置されたクッション材60と、クッション材60を覆う座席カバー70とを備えており、静電容量センサ1は、座席カバー70とクッション材60との間に配置することができる。
【0017】
また、座席10の座面Sと背もたれ面Tには、重量センサ41と着座センサ42とが設けられている。これらについては後述する。
【0018】
以下、静電容量センサ1のセンサ電極30(30A,30B)の構成を詳細に説明する。図3はセンサ電極30(30A,30B)を示す平面図、図4は静電容量センサの作用を説明するための断面図(図3のVI-VI線に沿う断面に対応する図)である。なお、一対のセンサ電極30A,30Bは、電極として同じ構造を有する。
【0019】
図3及び図4に示すように、本実施形態のセンサ電極30(30A,30B)は、絶縁性基材31と、この絶縁性基材31の支持面(座面S,背もたれ面T)と対向する主面に形成された電極層32と、この電極層32を覆う保護層33とを有している。電極層32はコネクタ34を介して静電容量センサ40と接続している。
【0020】
図3に示すように、平板状の各センサ電極30A,30Bは、検出対象となる誘電体20(ユーザM)と対向するように配置されている。また、図4に示すように、一対のセンサ電極30A,30Bは、誘電体20(ユーザM)の身体の異なる部位にそれぞれ対向するように配置されている。このように、着座したユーザMの身体は、センサ電極30Bが設けられた座面Sとセンサ電極30Aが設けられた背もたれ面Tに接する。つまり、センサ電極30A及び30Bの間には誘電体20であるユーザMの身体が存在する。したがって、本実施形態の静電容量センサ40は、一対のセンサ電極30A及び30B間に存在するユーザM(誘電体20)の静電容量を検出することができる。
【0021】
特に限定されないが、絶縁性基材31は可撓性を有する厚さ5μm〜200μm程度のポリイミド、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートやポリエステルなどの樹脂製シート材であり、電極層32は銅箔層又は導電性ペーストの印刷層である。この電極層32を覆う保護層33は、センサ電極30の歪みや収縮を防止する観点から、絶縁性基材31と同系の材料で形成されることが望ましい。このように、保護層33で電極層32を覆うことにより、電極層32を保護することができるので、センサ電極30の耐久性を向上させることができる。
【0022】
また、静電容量センサ40の製造方法は特に限定されないが、たとえば、まず、センサ電極30(30A,30B)を作製する。具体的に、銅箔が貼り付けられた絶縁性基材31を準備し、銅箔の所定領域をエッチングすることにより電極層32を形成する。もちろん、電極層32を、絶縁性基材31の主面に銀などの導電材を含む導電性ペーストを印刷することにより形成することもできる。そして、電極層32を覆う保護層33を形成する。保護層33は、カバーコートインクを用いて電極層32の上にスクリーン印刷することにより形成する。ドライフィルムを電極層32に接着剤を介して貼り付けて保護層33を形成することも可能である。
【0023】
次に、電極層32(電極層32が保護層33に覆われている場合には保護層33)の面が座面S又は背もたれ面T側を向くように座席カバー70とクッション材60側との間に接着剤を用いて装着する。つまり、電極層32を、保護層33と座席カバー70を介して着座したユーザMの身体に面接触する位置に設ける。これらのセンサ電極30A,30Bは、支持面(S,T)の異なる位置に複数設けることが望ましい。このように、センサ電極30A,30Bを複数設けることにより、ユーザMの様々な部分の静電容量を検出することができるので、人体の部分ごとに生じる静電容量の偏りを低減し、人体の正確な静電容量を検出することができる。
【0024】
センサ電極30A、30Bを装着したら、各センサ電極30A、30Bから延出する信号線のそれぞれを静電容量センサ40に接続する。このように、静電容量センサ40を座席10に設けることにより、センサ電極30A、30Bの電極層32を、シートカバー70を介して座席10に着座したユーザMの腰又は背中などの異なる身体部位と対向させることができる。なお、本発明においてユーザMが着座する座席の支持面は、ユーザMの身体と接する面(表面)や座席カバー70とクッション材60との間の面に限定されるものではなく、着座したユーザMの身体と接する面にユーザMの身体の荷重による押圧力を受ける方向に沿って重なる面(クッション材の内部に形成される面)をも含む。
【0025】
また、先に説明した図1、図2に示すように、本実施形態の健康状態管理装置1は、重量センサ41と着座センサ42とを備えている。座席10の座面Sには、複数の重量センサ41と複数の着座センサ42とがそれぞれ異なる位置に設けられている。重量センサ41は、座席10に着座するユーザの体重を計測することができ、着座センサ42は、座席10にユーザMが着座しているか否かを検出することができる。重量センサ41により検出されたユーザMの体重、着座センサ42により検出されたユーザMが着座しているか否かの判断結果は、後述する演算装置50に向けて送出される。
【0026】
本実施形態における重量センサ41としては、荷重と抵抗とが直線的な関係を示す感圧センサモジュールなどの出願時に知られている荷重センサを用いることができる。重量センサ41は、ユーザMが座席10に着座して身体の荷重を座面Sに与えたときの抵抗値を検出し、検出された抵抗値に基づいてユーザMの荷重を検出することができる。また、本実施形態における重量センサ41は、座席10の座面Sの異なる位置に複数設けることができる。なお、本例では、重量センサ41を座面Sに設けた例を示したが、ユーザMの足が置かれる場所に配置してもよい。この場合は、ユーザの足から与えられる荷重とユーザの体重とを予め対応づけておき、この対応づけ情報を参照して、ユーザMの足から与えられる荷重に基づいてユーザMの体重を算出することができる。
【0027】
このように、重量センサ41を設けることにより、健康状態情報を算出する度に身体情報であるユーザMの体重を自動的に検出することができる。静電容量検出時のユーザMの体重(身体情報)を用いて健康状態情報を算出できるので、算出される健康状態情報の精度を向上させることができる。また、ユーザMに体重を一々入力させる手間を求める必要がなく、ユーザMの利用の便を向上させることができる。
【0028】
本実施形態における着座センサ42は、スペーサにより離隔して配置された対向電極が、荷重の印加によって接触し、荷重の印加が解除されることによって離隔することにより、乗員が着座したか否かに対応するオンオフ信号を出力する一般的な感圧センサを用いることができる。もちろん、出願時に知られた他の構成の着座センサを用いてもよい。また、本実施形態における着座センサ42は、座席10の座面Sの異なる位置に複数設けることができる。図1に示すように、2つの着座センサ42を座面の左右に設けると、人間が着座したときには両方の着座センサ42がオンとなり、荷物を座席に置いたときには一方の着座センサ42のみがオンとなるので、人間(ユーザM)が着座したか否かを正確に判断することができる。
【0029】
ちなみに、本実施形態の着座センサ42として、別のセンサを新たに設けるのではなく、先述した静電容量センサ40を用いることができる。この場合は、静電容量センサ40により検出された静電容量値が人間の誘電率に応じて定義された所定域値内である場合には、ユーザMが座席に着座していると判断するように構成することができる。
【0030】
着座センサ42を設けることにより、ユーザMの着座のタイミングを自動的に検出することができる。ユーザMの着座のタイミングが分かれば、ユーザMの着座を確認してから静電容量の検出処理を開始することができるので、正確な静電容量を検出することができる。
【0031】
さらに、本実施形態に係る健康状態管理装置1は、入出力装置90を備えている。入出力装置90は、情報や命令の入力を受け付ける入力デバイス91と、モニタ92と、スピーカ93を少なくとも備えている。入力デバイス91は、ユーザMの体重、ユーザの身長、ユーザのIDなどの身体情報や、管理情報の出力命令を受け付けて、演算装置50へ送出する。
【0032】
次に、健康状態管理装置1の演算装置50について図面に基づいて説明する。図5は本発明の実施形態に係る健康状態管理装置のブロック構成図、図6は体脂肪率の対応情報の一態様を示す図、図7は管理情報の生成処理の制御手順を示すフローチャート図である。
【0033】
本実施形態の健康状態管理装置1に係る演算装置50は、図示は省略するが、ユーザMの健康に関する管理情報を生成するプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行することで、健康状態管理装置1を機能させる動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)と、を備えている。
【0034】
また、本実施形態に係る健康状態管理装置1の演算装置50は、各種の情報を取得する情報取得機能と、健康状態情報を算出し、健康状態情報からユーザMの健康状態の変化を管理する管理情報を生成する管理機能と、管理情報を出力する出力機能とを備えている。本実施形態の演算装置50は、上記機能を実現するためのソフトウェアと、上述したハードウェアの協働により各機能を実行することができる。
【0035】
上述の各機能を実行するため本実施形態の健康管理演算装置1に係る演算装置10は、図5に示すように、情報取得機能を実行する情報取得手段51と、管理機能を実行する管理手段52と、記憶手段53と、出力手段54とを備えている。
【0036】
まず、情報取得手段51の機能について説明する。情報取得手段51は、座席10に着座するユーザMの体重を含む身体情報を取得する。本実施形態において、身体情報は、ユーザMの体重のほか、ユーザMを特定するための識別情報、ユーザMの身長情報、ユーザMの年齢、ユーザMの性別などのユーザMの身体に関する情報を含む。この身体情報は、先述した入力デバイス91から入力してもよいし、車両側のECU200に記憶されたものを読み込んでもよい。また、情報取得手段51は、先述した重量センサ41により検出されたユーザMの体重を身体情報として取得することもできる。ユーザMの身長、年齢、性別は管理情報の生成処理に必ずしも必要ではないが、これらを身体情報に含ませることにより、身体情報に基づいて算出される健康状態情報の算出結果の精度を高めることができる。
【0037】
また、情報取得手段51は、健康状態を管理するユーザM(の身体)を特定するため、車両の座席10に着座するユーザMの識別情報を身体情報として取得する。上述したように、情報取得手段51は、入力デバイス91を介して識別情報を取得することができるが、本実施形態において、情報取得手段51は、ユーザMが車両を解錠する際に用いた電子キーから送出される開錠命令に含まれる電子キーのIDを、車両のECU(Electronic Control Unit)を介してユーザMの識別情報として取得することができる。このように、識別情報によってユーザMを特定するので、算出した健康状態情報及び管理情報をユーザMごとに管理することができる。
【0038】
さらに、情報取得手段51は、静電容量センサ40、重量センサ41、着座センサ42のそれぞれが検出した検出結果を取得する。このとき、情報取得手段51は、検出結果の取得時刻をタイマTから取得し、検出結果を取得時刻とともに記憶手段53(RAM)に格納する。情報取得手段51は、静電容量センサ40の検出結果を記憶手段53に格納する際に、検出結果をユーザM(識別情報)ごとにタイマTが備えるカレンダ情報に従い、時系列(検出の日時及び時刻の順で)記憶する。これにより、静電容量の検出結果が時系列で整理された検出履歴が作成される。この検出履歴には、ユーザMの身長や体重などの含む身体情報を対応づけて記憶させてもよい。なお、検出履歴の時間軸となる取得時刻は、静電容量センサ40、重量センサ41、着座センサ42が備えるタイマの検出時刻であってもよい。
【0039】
このように、情報取得手段51は、取得した身体情報や検出結果を記憶手段段53に記憶し及び/又はこれらの情報を管理手段52に送出する。
【0040】
次に、演算装置50の管理手段52について説明する。管理手段52は、静電容量センサ40により検出され、情報取得手段51を介して取得した静電容量に基づいて、健康状態情報を算出する。本実施形態の健康状態情報としては、ユーザMの身体の体脂肪率、水分率、又は筋肉率を例示できる。
【0041】
ここでは、一例として、ユーザMの体脂肪率を健康状態情報として算出する手法について説明する。
【0042】
人体の構成を骨、内臓、筋肉、脂肪、及び水と定義した場合に、人体の静電容量は、各構成(骨、内臓、筋肉、脂肪、水)の各静電容量の和となる。人体の静電容量は、同一人であっても毎日同じ値になるわけではなく、日々の健康状態に応じて変化する。発明者は、静電容量の変化と健康状態との関係に着目し、静電容量の検出値に基づいて、ユーザMの体脂肪率を算出する手法を提案する。
【0043】
本実施形態の管理手段52は、人間の静電容量及び人間の体脂肪率を予め対応づけた対応情報521を予め記憶する。対応関係521は、上述した人体の各構成の存在率と、体脂肪率と、人体の静電容量との関係に基づき、人体の静電容量と体脂肪率との関係として定義している。つまり、対応情報521を参照すれば、人体の静電容量に基づいて、その人体の体脂肪率を求めることができる。
【0044】
また、本実施形態では、人体の体重と静電容量との関係にも着目し、対応関係に体重のパラメータを導入する。人体の体重は上述した人体の各構成の存在率に応じて変化するため、体重が異なると検出される静電容量の値域が異なる傾向がある。本実施形態では、体重ごとに人体の静電容量と体脂肪率との関係を分析し、対応情報として定義する。本実施形態の体重と、体脂肪率と、人体の静電容量との関係、つまり、体重ごとの対応情報521を参照すれば、人体の静電容量と体重とから、その人体の体脂肪率を求めることができる。
【0045】
さらに、本実施形態では、人体の性別と静電容量との関係にも着目し、対応関係に性別のパラメータを導入する。人体は性別によって上述した人体の各構成の存在率が異なるため、性別が異なると検出される静電容量の値域が異なる傾向がある。本実施形態では、性別ごとに人体の静電容量と体脂肪率との関係を分析し、対応情報として定義する。本実施形態の性別と、体脂肪率と、人体の静電容量との関係、つまり、性別ごとの対応情報521を参照すれば、人体の静電容量と性別とから、その人体の体脂肪率を求めることができる。
【0046】
加えて、本実施形態では、人体の身長と静電容量との関係にも着目し、対応関係に身長のパラメータを導入する。人体の身長によって上述した人体の各構成の存在率が異なるため、身長が異なると検出される静電容量の値域が異なる傾向がある。本実施形態では、身長ごとに人体の静電容量と体脂肪率との関係を分析し、対応情報として定義する。本実施形態の身長と、体脂肪率と、人体の静電容量との関係、つまり、身長ごとの対応情報521を参照すれば、人体の静電容量と身長とから、その人体の体脂肪率を求めることができる。
【0047】
以上、対応情報521の追加的なパラメータとして、性別、身長及び体重を例示した。本実施形態では、より正確な健康状態情報を算出する観点から、これら全てのパラメータを考慮した対応情報521を定義する。ちなみに、人体の静電容量と体脂肪率との対応関係521は、単一のモデル(体重の区別無し、性別無し、身長の区別無し)に基づいて定義することもできるが、体重、性別、身長によって人体の構成の存在比率が異なり、特に他の構成に比べて比誘電率の高い水を多く含む筋肉と脂肪の身体含有比率も異なるため静電容量から正確な体脂肪率を算出するためには、詳細なモデルに基づく対応関係を求める必要がある。
【0048】
このため、本実施形態の管理手段52は、図6に示すように、性別、身長及び体重ごとに作成された対応関係521を備えている。本実施形態の対応情報521は、身長が170cmの男性に適用されるものであり、かつ体重別に静電容量と体脂肪率との対応関係が定義されたものである。つまり、同図に示す対応情報521は、静電容量(PF)と体重(kg)との組み合わせごとに体脂肪率(%)の値が定義されている。
【0049】
なお、本実施形態では、身長が170cmの男性の体重別の対応情報521を一例として示すが、管理手段52には身長及び性別ごとの体重別の対応情報521を予め記憶させておくことが望ましい。もちろん、身長、性別、体重を指定して、ユーザM用の対応情報521をサーバからダウンロードすることもできる。
【0050】
このように本実施形態では、性別、身長及び体重ごとに対応情報521を準備しているため、検出された静電容量に基づいて正確な体脂肪率を算出することができる。
【0051】
ちなみに、本実施形態の対応情報521は、人間の各構成の存在率に関する既存データを用いて定義してもよいし、サンプルデータを用いてシミュレーション又は統計処理により生成してもよいし、また実際の計測データに基づいて実験的に生成することもできる。特に限定されないが、対応情報521は、性別、身長、体重の組み合わせごとに生成されることが好ましい。
【0052】
上述した対応情報521を参照し、本実施形態の管理手段52は、情報取得手段51を介して取得した、ユーザMの身体情報(ユーザの識別情報、ユーザの性別、ユーザの体重、ユーザの身長)と静電容量センサ40により検出された静電容量値に基づいて、ユーザMの体脂肪率を健康状態情報として算出する。具体的に、管理手段52は、ユーザの性別、身長、体重などの身体情報に基づいて参照すべき対応情報521を特定し、特定した対応情報521を参照し、検出された静電容量に基づいて体脂肪率を算出する。管理手段52は、算出した体脂肪率を、静電容量値の取得時刻又は算出時刻とともに記憶手段53に管理情報531として記憶させる。
【0053】
また、本実施形態の管理手段52は、体脂肪率の経時的変化に基づいて、所定時間経過前後の体脂肪率を比較し、この体脂肪率の変化に基づく管理情報を生成することもできる。例えば、管理手段52は、昨日、1週間前、先月同日又は昨年同日よりも、体脂肪率が増加又は減少した旨の管理情報を生成することができる。また、管理手段52は、静電容量の検出履歴や体脂肪率の算出履歴から、ユーザMの経時的な健康状態の推移を表す管理情報を生成することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、管理手段52が体脂肪率を算出する例を説明したが、体内の構成要素のうち水の比誘電率が特に大きいという知見から、静電容量と体内の水分率を対応づけた対応情報予め準備し、この対応情報を参照して、管理手段52が検出された静電容量に基づいて体内水分率を健康状態情報として算出することができる。また、体内において水分は筋肉中に存在する確率が高いという知見から、静電容量と体内の筋肉量とを対応づけた対応情報予め準備し、この対応情報を参照して、管理手段52が検出された静電容量に基づいて身体の筋肉の存在率を健康状態情報として算出することができる。さらに、体内において水分は筋肉中に存在する確率が相対的に低いという知見から、静電容量と体内の脂肪量とを対応づけた対応情報予め準備し、この対応情報を参照して、管理手段52が検出された静電容量に基づいて身体の脂肪の存在率を健康状態情報として算出することができる。
【0055】
最後に出力手段54について説明する。出力手段54は、記憶手段53に格納された管理情報531を読み込み、車載のモニタ92及び/又はスピーカ93に出力する。管理情報は、テキストやグラフなどの視覚情報であってもよいし、音声情報であってもよい。ユーザMは、モニタ92に表示された管理情報531及び/又はスピーカ93から音声出力される管理情報531の内容を視聴することができる。
【0056】
続いて、本実施形態の健康状態管理装置1の制御手順を、図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0057】
まず、ステップS101において、健康状態管理装置1は、着座センサ42が座席10にユーザMが着座している旨の検出結果を、情報取得手段51を介して取得した場合には、健康状態情報の算出処理を開始する。健康状態情報の算出処理の実行タイミングは、予め定義することができる。例えば、一日に1回測定することを定義した場合には、健康状態管理装置1は、タイマTの暦を参照し、1日が開始する午前0時、1週間が開始する月曜の午前0時等の所定時刻から最も早い時間に着座したときに健康状態情報の算出処理を実行するように構成することができる。
【0058】
このように、ユーザMの静電容量が検出可能な状態となってから健康状態情報を算出するので、ユーザMの静電容量を正確に検出することができる。この結果、精度の高い健康状態情報を算出することができる。
【0059】
続く、ステップS102において、健康状態管理装置1の情報取得手段51は、ユーザMの識別情報を入力デバイス91又はECU200を介して取得する。管理手段52はユーザMの識別情報によりユーザMを識別する。
【0060】
ステップS103において、情報取得手段51は、ユーザMの性別、身長、体重などの身体情報を取得する。情報取得手段51は、予め入力され又は記憶されているユーザMの性別及び身長などの身体情報を記憶手段53から読み出す。このとき取得する身体情報は、ステップS102で特定されたユーザMのものである。
【0061】
また、情報取得手段51は、重量センサ41からユーザMの体重(身体情報)を取得する。ユーザMの体重は入力デバイス91を用いて入力され、記憶手段53に記憶された値を読み込んで取得することもできる。取得したユーザMの体重は、管理手段52へ送出される。
【0062】
次に、ステップS104において、静電容量センサ40は、座席10に着座したユーザMの静電容量を検出し、情報取得手段51へ送出する。ステップS105において、情報取得手段51は、得られた静電容量と取得時刻を対応づけて、管理手段52へ送出する。
【0063】
そして、ステップS106において、管理手段52は、S103で取得した性別、身長及び体重その他の身体情報に基づいて、参照すべき対応情報521を特定する。さらに、管理手段52は、ステップS104で検出された静電容量に基づいて、特定された対応情報521を参照して、ユーザMの体脂肪率を算出する。
【0064】
ステップS107において、算出された体脂肪率は、ステップS105で受け付けた時刻とともに、記憶手段53にユーザM(識別情報)ごとに管理情報531として格納する。
【0065】
続くステップS111において、ユーザMから入力デバイス91を介して管理情報の出力命令が入力されたら、ステップS112に進む。ステップS112において、管理手段52は記憶手段53に記憶された検出履歴、算出履歴を含む管理情報521を読み込む。さらに、ステップS113において、管理手段52は読み込んだ管理情報521に基づいて経時的な変化量を示すグラフなどを編集し、モニタ92及び/又はスピーカ93を介して出力する。
【0066】
以上のように構成され動作する本実施形態の健康状態管理装置1によれば、ユーザMは座席に着座するだけで、自動的に検出された静電容量に基づく健康状態の変化を管理するための管理情報を得ることができる。特に、本実施形態の健康状態管理装置1を車両に搭載すれば、車両を利用するたびに健康状態情報が算出され、蓄積されるので、ユーザMの健康状態の観察を経時的に実行することができる。
【0067】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0068】
1…健康状態管理装置
10…座席
30,30A,30B…センサ電極
31…絶縁性基材
32…電極層
33…保護層
34…コネクタ
40…静電容量センサ
41…体重センサ
42…着座センサ
50…演算装置
51…情報取得手段
52…管理手段
521…対応情報
53…記憶手段
531…管理情報
54…出力手段
60…クッション材
70…座席カバー
90…入出力装置
91…コントローラ
92…モニタ
93…スピーカ
M…ユーザ、乗員
S…座面
T…背もたれ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが着座する座席の支持面の異なる位置に設けられた一対の電極間の静電容量を検出する静電容量センサと、
前記静電容量センサにより検出された静電容量に基づいて健康状態情報を算出し、前記健康状態情報の算出結果の履歴から前記ユーザの健康状態の変化を管理する管理情報を生成する管理手段と、
前記管理手段によって生成された管理情報を出力する出力手段と、を備える健康状態管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の健康状態管理装置において、
前記管理手段は、前記ユーザの体重を含む身体情報と前記検出された静電容量とを取得する情報取得手段をさらに有するとともに、前記情報取得手段により取得された前記ユーザの身体情報と静電容量とに基づいて、体重その他の身体情報ごとに、静電容量及び人間の体脂肪率が予め対応づけられた対応情報を参照し、前記ユーザの体脂肪率を健康状態情報として算出することを特徴とする健康状態管理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の健康状態管理装置において、
前記ユーザの体重を検出する重量センサをさらに設け、
前記情報取得手段は、前記重量センサにより検出された前記ユーザの体重を取得することを特徴とする健康状態管理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の健康状態管理装置において、
前記静電容量を検出する電極が、前記座席の支持面の異なる位置に複数設けられていることを特徴とする健康状態管理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の健康状態管理装置において、
前記座席に前記ユーザが着座しているか否かを検出する着座センサをさらに設け、
前記管理手段は、前記着座センサが、前記座席にユーザが着座していると検出した場合に、前記ユーザの健康状態情報の算出を行うことを特徴とする健康状態管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−125379(P2012−125379A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278942(P2010−278942)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】