説明

健康端末装置

【課題】 健康端末装置にある局給電取得手段によりアナログ回線から動作に必要な電力を取得して各回路へ供給することで、ACアダプタや電池が不要である健康端末装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 健康端末装置101は、アナログ回線106からファントム給電を取得すると共に、センサ通信手段202、回線通信手段203、及び制御手段201へ電力を供給する局給電取得手段204を備える。健康端末装置101の動作に必要な電力にアナログ回線106からのファントム給電を利用することで、ACアダプタや電池が不要な構成とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医師や看護師などの医療関係者と、在宅あるいは医療機関内の患者との間で医療情報や生体情報の交信を行うことができる健康診断ネットワークシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の健康診断ネットワークシステムでは、各家庭に設置された健康端末装置へ血糖計、血圧計などの各種センサにより測定した生体情報のデータを転送し、健康端末装置からサーバー側へ送信する。これにより患者宅から離れた医師がインターネット網を経由してこのデータをチェックし、患者の通院なしに、適切なアドバイスや診療を行うことができる。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO01/75764号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の健康端末装置ではACアダプタによる外部電源か、電池の内蔵が必要である。高齢者や体が不自由な患者には壁の床に近いところにある電源コンセントへの接続や電池交換が非常に煩わしいという問題があった。
【0005】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、ACアダプタや電池が不要で煩わしさのない健康端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の健康端末装置は、バイタルセンサから測定された生体情報を受信するセンサ通信手段と、ファントム給電が可能なアナログ回線に接続可能であり、このアナログ回線を介して生体情報を蓄積するサーバーと通信するための回線通信手段と、前記センサ通信手段と前記回線通信手段とを制御する制御手段と、前記アナログ回線から前記ファントム給電を取得すると共に、前記センサ通信手段、前記回線通信手段、及び前記制御手段へ電力を供給する局給電取得手段とを備えた構成を有している。
【0007】
この構成により、健康端末装置の動作に必要な電力はアナログ回線からのファントム給電を利用することで、ACアダプタや電池が不要な構成とすることができる。これにより腰に持病を持っているため壁際のコンセントに接続するのが困難であったり、手が震えて電池交換が難しい患者であっても健康端末装置を利用できる。
【0008】
バイタルセンサの種類は特に限定されない。バイタルセンサには、例えば血糖計、血圧計、体温計、脈拍計、血中飽和酸素濃度計、体重計、体脂肪率計、聴診器、心電計などがある。
【0009】
前記健康端末装置は、前記局給電取得手段により充電され、前記回線通信手段が前記アナログ回線が接続されていないときに前記センサ通信手段、前記回線通信手段、及び前記制御手段に供給する電力を蓄積するための電力蓄積手段をさらに備えた構成を有することが好ましい。
【0010】
この構成により、アナログ回線に健康端末装置が接続されていない場合でも血糖計、血圧計などのバイタルセンサから生体情報を受信することができる。
【0011】
前記電力蓄積手段は、例えばコンデンサである。この構成により、安価に健康端末装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、血糖計、血圧計などの生体の情報を取得するバイタルセンサから測定された生体情報を受信するセンサ通信手段と、アナログ回線に接続され生体情報を蓄積するサーバーと通信するための回線通信手段と、センサ通信手段と回線通信手段とを制御する制御手段と、アナログ回線からファントム給電を取得すると共に、センサ通信手段と回線通信手段と制御手段へ電力を供給する局給電取得手段を備えた構成にすることで、健康端末装置の動作に必要な電力はアナログ回線からのファントム給電を利用できるので、ACアダプタや電池の不要な構成とすることができる。これにより腰に持病を持っているため壁際のコンセントに接続するのが困難であったり、手が震えて電池交換が難しい患者であっても煩わしさを感じることなく健康端末装置を利用できる。換言すれば、患者にとってみて非常に使いやすい健康端末装置を提供することができ、在宅ヘルスケアシステムのさらなる普及を促すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態の健康端末装置を利用する在宅ヘルスケアシステムについて、図面を用いて説明する。尚、以下の実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
本発明の実施の形態における在宅ヘルスケアシステムの構成図を図1に示す。
【0015】
図1において、在宅ヘルスケアシステムは、健康端末装置101、センタサーバー102、医師端末103、ファイアウォール104、RAS(Remote Access Service)105、アナログ回線106、インターネット網107からなる。健康端末装置101はアナログ回線106、RAS105、及びファイアウォール104を介してセンターサーバ102に接続されている。一方、医師端末103は、インターネット網107及びファイアウォール104を介してセンタサーバー102に接続されている。
【0016】
健康端末装置101は、患者がバイタルセンサの一例である血糖計210、血圧計211(図2参照)で測定した生体情報を受信する。また、健康端末装置101は、アナログ回線106を介してセンタサーバー102へ生体情報を送信する。
【0017】
センタサーバー102はWeb機能とデータベース機能を持ち合わせており、健康端末装置101から受信した生体情報をセンタサーバー102のデータベースへと蓄積をする。健康端末装置101からセンタサーバー102への生体情報の送信において、RAS105はアナログ回線106を介して健康端末装置101からの着信があると、PAP(Paswowrd Authentification Protocol)、もしくは暗号化パスワードが必要な場合にはCHAP(Callage Hand-shake Authentification Protocol)によりPPP(Point-to Point Protocol)接続を行う。そして健康端末装置101とセンタサーバー102はこの接続によりデータ受信を行うことができる。
【0018】
医師端末103は、例えばインターネットのWebサイトをブラウジングできる一般的なパーソナルコンピューターである。医師、看護師などの医療関係者は、この医師端末103によりインターネット網107を経由して、センタサーバー102のWeb機能を利用し、データベースに蓄積されている患者データを閲覧し、生体情報に異常があるならば患者に対して精密検査を勧めるなどの遠隔診断を行うことができる。例えば、センタサーバ102のデータベースに診断結果などを蓄積し、健康端末装置101で蓄積された診断結果を閲覧可能とする構成が考えられる。
【0019】
ファイアウォール104はセンタサーバー102をインターネット網107もしくはRAS105を経由した悪意のある者から防御するためのセキュリティ機器である。
【0020】
アナログ回線106は、ファントム給電を行っている回線である必要がある。ファントム給電とは、データ信号を伝送する信号伝送線を使って電力を同時に伝送する給電方式をいう。本実施の形態では、アナログ回線106は電話回線であり、電話交換機によってデータ信号にいわば上乗せする形態で電圧が印加されている。
【0021】
次に、図2に本発明の実施の形態における健康端末装置101のブロック図を示す。
【0022】
図2において、健康端末装置101は、制御手段201、センサ通信手段202、回線通信手段203、局給電取得手段204、及び電力蓄積手段205を備える。バイタルセンサの一例である血糖計210と血圧計211が健康端末装置101に接続されている。
【0023】
血糖計210により患者の血液中の糖分が測定される。血糖計210は、健康端末装置101へ測定したデータ(生体情報)を送信する。血圧計211により患者の血圧が測定される。血糖計210は、健康端末装置101へ測定したデータを送信する。
【0024】
センサ通信手段202は血糖計210と血圧計211から患者が測定した生体情報を受信して、これを制御手段201へ送信する。センサ通信手段202は血糖計210や血圧計211などの各種のバイタルセンサと通信可能なインターフェスを備えている。
【0025】
回線通信手段203はアナログ回線106を経由してセンタサーバー102へ血糖計210や血圧計211によって測定された生体情報を送信するために、RAS105とPPP接続するためのダイヤリング等の通信処理を行う。
【0026】
制御手段201はセンサ通信手段202と回線通信手段203を制御すると共に、血糖計210や血圧計211からセンサ通信手段202を介して受信した生体情報をセンタサーバー102へと送信するためにデータプロトコルを変換する機能を有する。
【0027】
局給電取得手段204はアナログ回線106に電話交換機により印加されているファントム給電を取得し、これを制御手段201、センサ通信手段202、及び回線通信手段203へ供給する。
【0028】
電力蓄積手段205はアナログ回線106からファントム給電を局給電取得手段204が取得できない場合に、事前に蓄積していた電力をセンサ通信手段202、制御手段201及び回線通信手段203へ供給するものである。
【0029】
以上のように構成された健康端末装置101の動作を詳細に説明する。尚、図2において、構成要素を示す各ブロック間を結ぶ線のうち、実線はデータないしは生体情報の転送経路を示し、破線は充電のための電気的経路を示し、一点鎖線は給電のための電気的経路を示している。
【0030】
まず、患者は血糖計210、血圧計211により血糖値や血圧値を測定する。血糖計210、血圧計211は、測定後血糖値や血圧値を健康端末装置101へ送信する。健康端末装置101ではセンサ通信手段202を通じてこの生体情報を受信する。生体情報を受信したセンサ通信手段202はこれを制御手段201へ転送する。このバイタルセンサからの生体情報の受信と受信した生体情報の制御手段201への転送の間、センサ通信手段202は、電力蓄積手段205から供給される電力により動作する。この時点では局給電取得手段204はアナログ回線106からファントム給電を取得していないので、電力蓄積手段205に事前に蓄積されている電力がセンサ通信手段202に供給される。
【0031】
センサ通信手段202から生体情報を受信した制御手段201は、センタサーバー102とアナログ回線106を介した通信を確立するために、回線通信手段203に対してPPP接続のためのダイヤリング指示を行う。回線通信手段203によるダイヤリング開始までの間、制御手段201及び回線通信手段203は電力蓄積手段205から電力供給を受ける。回線通信手段203がダイヤリングを開始するまでは、局給電取得手段204はアナログ回線106からファントム給電を取得していないので、電力蓄積手段205に事前に蓄積されている電力が制御手段201及び回線通信手段203に供給される。
【0032】
回線通信手段203はダイヤリングをするときにアナログ回線106を閉結状態にするが、このときに局給電取得手段204は回線から約100mA程度の電流を引き込む。一般的にアナログ回線からは最大130mA以下の電流を引き込んでよい。(例えば、「技術参考資料 電話サービスのインターフェス」第5版、日本電信電話株式会社を参照)。局給電取得手段204は回線通信手段203がアナログ回線106を介してセンタサーバー102と通信する間は、電流を引き込みこれを電圧変換して電力蓄積手段205に充電し、この電力は次のセンサ通信手段202、制御手段201、及び回線通信手段203の動作電力として利用される。換言すれば、回線通信手段203がアナログ回線106との接続を確立している間は、電力蓄積手段205は局電力取得手段205によってアナログ回線106から取得されるファントム給電によって充電されつつ、センサ通信手段202、制御手段201、及び回線通信手段203に対して電力を供給する。従って、この間は、センサ通信手段202、制御手段201、及び回線通信手段203に対して電力蓄積手段205を介して間接的に局電力取得手段204から電力が供給される。
【0033】
次に図3に示す概略的な回路図を参照してアナログ回線106からのファントム給電の取得と、電力蓄積手段205への充電に関する動作原理を説明する。尚、この例ではアナログ回線106と健康端末装置101の接続は2線L1,L2により行われている。
【0034】
図3に示すように、回線通信手段203は、ダイオードブリッジ301と送受信IC302を備える。ダイオードブリッジ301は、アナログ回線106からのファントム給電が印加された信号の極性を一定にする。送受信IC302は受信した信号の電圧レベルを制御手段201で扱う電圧レベルへ変換すると共に、アナログ信号とデジタル信号の変復調処理を行う。局給電取得手段204は、直流コンデンサ303とトランス304を備える。直流コンデンサ303は交流である信号をカットする。トランス304はアナログ回線106からのファントム給電の直流成分を電圧変換すると共に降圧した電力を電力蓄積手段205へ供給する。電力蓄積手段205は一端が接地され他端がトランス304に接続されたコンデンサからなる。
【0035】
アナログ回線106にて供給されるファントム給電は通常48V前後であり、ダイオードブリッジ301と直流コンデンサ303を経由してトランス304にて各回路の動作電圧として使用される5V前後まで降圧される。そして、通信中はこの電力が電力蓄積手段205であるコンデンサに蓄積される。非通信時はコンデンサである電力蓄積手段205に通信中に蓄積された電力を用いて各回路が動作する。
【0036】
以上のように、本発明の実施の形態の健康端末装置101によれば、健康端末装置101の動作に必要な電力として局給電取得手段204で取得したアナログ回線106からのファントム給電を利用することで、ACアダプタや電池なしの構成とすることができる。これにより腰に持病を持っているため壁際のコンセントに接続するのが困難であったり、手が震えて電池交換が難しい患者であっても煩わしさを感じることなく健康端末装置101を利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態における健康端末装置を利用した在宅ヘルスケアシステムの構成図。
【図2】本発明の実施の形態における健康端末装置のブロック図。
【図3】本発明の実施の形態における回線通信手段、局給電取得手段、及び電力蓄積手段の概略回路図。
【符号の説明】
【0038】
101 健康端末装置
102 センタサーバー
103 医師端末
104 ファイアウォール
105 RAS
106 アナログ回線
107 インターネット網
201 制御手段
202 センサ通信手段
203 回線通信手段
204 局給電取得手段
205 電力蓄積手段
210 血糖計
211 血圧計
301 ダイオードブリッジ
302 送受信IC
303 直流コンデンサ
304 トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイタルセンサから測定された生体情報を受信するセンサ通信手段と、
ファントム給電が可能なアナログ回線に接続可能であり、このアナログ回線を介して生体情報を蓄積するサーバーと通信するための回線通信手段と、
前記センサ通信手段と前記回線通信手段とを制御する制御手段と、
前記アナログ回線から前記ファントム給電を取得すると共に、前記センサ通信手段、前記回線通信手段、及び前記制御手段へ電力を供給する局給電取得手段と
を備えた健康端末装置。
【請求項2】
前記局給電取得手段により充電され、前記回線通信手段が前記アナログ回線が接続されていないときに前記センサ通信手段、前記回線通信手段、及び前記制御手段に供給する電力を蓄積するための電力蓄積手段をさらに備えた請求項1に記載の健康端末装置。
【請求項3】
前記電力蓄積手段がコンデンサにより構成された請求項2に記載の健康端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−230557(P2006−230557A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−46852(P2005−46852)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】