説明

健康管理の鑑別方法及びその評価の表示方法

【課題】 栄養状況、疾病状況、心身機能状況を統合し、健康状況、健康状況の方向性を鑑別する方法を提供する。
【解決手段】 生活における個人個人の健康指向性の鑑別法であって、健康指向性の鑑別因子を1)個体の心身の慣習の状況と、2)病理学的状況とに分け、健康指向に則っている場合には正の評点を付し、反していれば負の評点を付し、算出された評点の総和を以て、該総和が高い場合には健康指向性が高く、該総和が低ければ健康指向性が低いと鑑別する。前記個体の心身の慣習上の状況の構成因子は、BMI、万歩計の利用状況、主体的運動の実施状況及び一日あたりの歩数から選択される項目であり、前記病理学的状況の構成因子は、疾患数の変化、服薬量の変化及び歯のケアの状況から選択される項目が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康管理の鑑別方法及び該鑑別結果の表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年健康保険財政の悪化に伴い、成人病の原因とされる肥満に対しての対策、指導が苛烈になる情勢にある。肥満度合いを示すBMI値による、社員コントロールは、保険負担比の増加可能性を背景として、各社盛んに行われるようになってきている。しかしながら、その実効においては疑問の余地が大きい。この原因として、本発明者が考えるのは、例えば、BMI値に例をとれば、BMI値そのものの判断は、社会科学的、統計科学的な推定示唆値であるのに対し、個人の健康に関わるBMI値は、個人ごとに、その意味合いが異なってくることにあるし、また、個人の健康管理においては数値そのものよりも、数値の微分値、言い換えれば方向示唆値が重要になってくると言う、数値評価、数値解釈のギャップが挙げられるように感じる。
【0003】
BMI以外にも、健康管理の数値としては、尿の分析値、血液の分析値或いはこれらから算出される生体状況の推定値等の変動を指標に管理する技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6を参照)が、これらの何れもが、母集団群における個人値の位置付けであることにおいて、個人個人の個体別の要素が加味されていない点では、方向性の示唆が存するものではないといえる。加えて、健康という要素が栄養状況、疾病状況、心身機能状況の総和であるにもかかわらず、これらの状況を統合して健康状況、健康状況の方向性を鑑別する方法も知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開2006−309465号公報
【特許文献2】 特開2004−350861号公報
【特許文献3】 特開2004−254616号公報
【特許文献4】 特開2004−227250号公報
【特許文献5】 特開2004−5248号公報
【特許文献6】 特開2004−4018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、栄養状況、疾病状況、心身機能状況を統合し、健康状況、健康状況の方向性を鑑別する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、栄養状況、疾病状況、心身機能状況を統合し、健康状況、健康状況の方向性を鑑別する方法を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、生活における個人個人の健康指向性の鑑別法であって、健康指向性の鑑別因子を1)個体の心身の慣習の状況と、2)病理学的状況とに分け、健康指向に則っている場合には正の評点を付し、反していれば負の評点を付し、算出された評点の総和を以て、該総和が高い場合には健康指向性が高く、該総和が低ければ健康指向性が低いと鑑別することにより、この様な健康状況、健康状況の方向性を鑑別することができることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
<1>生活における個人個人の健康指向性の鑑別法であって、健康指向性の鑑別因子を1)個体の心身の慣習の状況と、2)病理学的状況とに分け、健康指向に則っている場合には正の評点を付し、反していれば負の評点を付し、算出された評点の総和を以て、該総和が高い場合には健康指向性が高く、該総和が低ければ健康指向性が低いと鑑別することを特徴とする、鑑別法。
<2>前記個体の心身の慣習上の状況の構成因子は、BMI、万歩計の利用状況、主体的運動の実施状況及び一日あたりの歩数から選択される項目であり、前記病理学的状況の構成因子は、疾患数の変化、服薬量の変化及び歯のケアの状況から選択される項目であることを特徴とする、<1>に記載の鑑別法。
<3>前記評点は、好ましい方向への移行が存した場合には正の値を、好ましからざる方向への移行が存した場合には負の値を付すものであることを特徴とする、<1>又は<2>に記載の鑑別法。
<4><1>〜<3>何れか1項に記載の鑑別法によって鑑別された健康指向性の表示方法であって、因子項目を一つの軸として、因子項目の評点が負の数値であった場合と、正の場合と色分けを行ったカラム内に数値を記入して表示することを特徴とする、表示方法。
<5>健康管理指導のためのものであることを特徴とする、<4>に記載の表示方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、栄養状況、疾病状況、心身機能状況を統合し、健康状況、健康状況の方向性を鑑別する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】 実施例1のアンケート結果を因子毎に色分けして示した図である。図中白と黒の中間色は赤色を代用するものであり、点、直線のバックグラウンドは黄緑を代用するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の鑑別法は、生活における個人個人の健康指向性の鑑別法であって、健康指向性の鑑別因子を1)個体の心身の慣習の状況と、2)病理学的状況とに分け、健康志向に則っている場合には正の評点を付し、反していれば負の評点を付し、算出された評点の総和を以て、該総和が高い場合には健康指向性が高く、該総和が低ければ健康指向性が低いと鑑別することを特徴とする。
【0010】
前記個体の真の慣習の状況としては、例えば、万歩計を持っている或いは持っていない、毎日着用、散歩の時に着用などの万歩計の利用状況、毎日決まった運動を行っている、一日あたりの平均運動時間などの主体的運動の実施状況、一日あたりの歩数或いは前回計測時の一日あたりの歩数からの変化率など、歩行などの意識しない運動の運動量に関する状況、歯を毎日磨いているか、定期的に歯医者に通い歯石除去を行っているか、デンタルフロスによる歯垢・歯石の除去を行っているか等の歯のケアの実施状況、歯磨きはバス法か、スーパーソニック法か等の歯のケアの実施方法等が構成要素として好ましく例示できる。これらは全てを構成要素とすることもできるが、略して4〜5項目を選択し個体の心身の慣習状況の代表項目とすることができる。
【0011】
前記病理学的状況としては、例えば、BMIの値そのもの、前回測定のBMIからの変化率、変化方向などのBMIに関する状況、肝機能、尿タンパク値、血糖値等の基礎代謝値の母集団平均からの乖離度と乖離度の先回測定からの変化率、乖離した項目数の変化、慢性疾患としての通院経験、通院治療を受けている疾患の種類の多少、前記通院治療の際に受け取る薬剤の種類の多少、薬剤の1回あたりの投与量の多少、治療すべき虫歯の数等が好ましく例示できる。これらは全てを構成要素とすることもできるが、略して3〜5項目を選択し、病理学的状況の代表項目とすることができる。
【0012】
前記構成要素項目における評価は、測定値そのものを使用することもできるが、本発明においては個体における測定量の評価を行うことが必要であることから、測定値について、前回測定値との比較を行い、その変化を判別し、該変化が好ましい方向への変化であれば正の整数の得点を与え、該変化が好ましからざる方向への変化であれば負の整数の得点を与えるというように、変化の方向を評価した値を用いることが好ましい。本発明の鑑別法においては、この変化の方向こそが重要な項目であるため、変化の程度はそれに付随する従属的評価値とすることができ、前記評価の尺度は適宜これまでの慣習に則して設定することができる。通常は、変化が好ましい方向への変化であれば評点は+1点、該変化が好ましからざる方向への変化であれば評点は−1点として評点を決定すればよい。斯くして得られた評点は、項目ごとにプラスの方向であるかマイナスの方向であるかを識別できるように図示し、これより個体としての状況変化の概要を知ることが好ましい。図示の方法としては、横に構成項目を並べ、縦軸に個体における測定履歴の日時を順次並べ、マイナスの評価値であればその項目の下の測定した日のマス目をマイナスを表す色で塗りつぶし、同様にプラスであればプラスを代表する色で塗りつぶして、塗りつぶしたマス目の色分布の測定時期の変化との関係を判別することにより、その個体の健康状況の変化方向を鑑別することができる。
【0013】
同様の操作で、縦に所属社会の他の個体を配し、同様の色分け作業を行えば、社会単位での構成個体の健康状況の変化方向が鑑別でき、労働管理などに応用することも可能である。
【0014】
この様に図示したデータを個人に提示することにより、測定値そのものに惑わされることなく健康状況の変化を認識させることができる。かかる図示においては、健康の状況変化を、健康状態の好ましい方向に変化した場合と、好ましからざる方向に変化した場合とを色系統で分けて変化することが好ましい。例えば、健康状態の好ましい方向への変化を青系統で表示するならば、その程度が著しくなるに従って青の濃さを濃くし、好ましからざる方向への変化を赤系統で表示するならば、その重篤度が増すに従って赤味を濃くするような色分けである。これは個人ごとのカラムの評価項目ごとのセルを色分けすることによって図示することにより、各個人と健康変化の関係をより的確に把握できる。また、この様な個人を所属の母集団ごとにまとめることにより、母集団の集団としての健康状態の変化方向の把握を一別してできるようになる。かかる視覚に由来する健康状態の変化の方向性の認識は、健康状態向上活動に大きな動機を与えることができる。
【0015】
以下に、実施例を示し、本発明について、更に詳細に説明を加える。
【実施例1】
【0016】
ボランティアとして集めたパネラーを用い、アンケートを行い、健康への意識調査と、健康状態の実態調査とについて足かけ2年にわたって定点観測を行った。
即ち、成人男女6名に健康状態をアンケート形式で聴取した。アンケート内容;年齢、性別、勤務の有無、BMI、1週間当りの歩数(min)、通院の有無と有りの場合の疾患数増減、服薬の有無と有りの場合の服薬量の増減、実施中の運動内容、歯の健康について(歯のケアの実態)、運動等で変化した場合の臨床検査値の記載及び食事状況等の記載。1年後、上記6名を含む成人に同様のアンケート調査を行った。集計したアンケートの各項目結果を採点し、以下の評点基準に従って、評点を付し、判別した。
評点基準;BMI値が25.1を超えた場合−1点、BMIが30を超えた場合−2点。通院あり・疾患あり・疾患数不変・服薬中は採点しないが、疾患数増加・薬量増加は−1点、これらの減少はプラス2点。万歩計あり:+1点、同なし−1点。1週間当りの歩数(min);程度により+1、0、−1点、歯具合よし;+1点、同悪い;−1点。具体的運動実施;程度により+1点、+2点で運動しない;−1点。具体的健康メッセージで改善の場合、程度により+1、+2、その他は評点0とした。この結果を1年間での健康状態の改善、増悪の方向として、個人ごとの評価項目の横並びのカラムとして図1に図示した。赤(図では点乃至は格子のバックグラウンドで示す)は健康状態の変化が好ましくない方に移行したことを示し、黄緑(図では白と黒の混合色のバックグラウンド)は好ましい方向に変化したことを示す。次年度のアンケートでは男女91名(男性50名、女性41名)から回答を得た(一部無記載回答項目あり)。年齢は男性69〜25歳(中央値; 47)、女性65〜25歳(中央値45)、男女差はなかった(p>0.05)。BMIは男性18.2〜40、女性15.8〜30.5で、BMI19.9以下は男性3/49、女性15/39、BMI25.1以上は男性12/49、女性1/39であった。年代別の通院ありは、60代〜20代10/21、9/22、9/23、4/13、0/14であった(p<0.05)。年代別運動量(1週間総計の歩数;回答者の単純平均値(min))は、60、50、40、30、20代で順に292、423、434、303、205であった。個人別に各アンケート項目内容を良好から要注意の2、1、0、−1、−2に評点した。次に、合計したスコアを個人毎に+3点以上(H群)、−2〜+2点(M群)、−3点以下(L群)に分けると、その割合は60代では7:122、50代8:11:3、40代9:11:3、30代3:9:1、20代113:0と計算された。
【0017】
前記の評点化では、運動の実施を数値化することで、各人の目標が明確になり、運動が継続できた症例が多いことが判明した。年代別評点で、20代30代は比較的マイナス評価は少なく、高年齢に従いマイナス評点は増加する傾向があるものの、運動実施効果が反映され評点が高まる傾向が見られH群は努力型、M群は改善必要予備型、L群は早急な生活改善が必要型とみなすことができる。健康は適度な運動と摂取カロリー等の要素が組み合わされ維持・改善される判明した。
食事制限に関する状況は、これまでの調査、判別法では内容実態の把握が困難であり、為されてこなかったが、その因子として、健康メッセージに摂取カロリーを記述し、摂取カロリーに対する意識とその実態把握が為されているか否かを指標として採点することで、評価、判別できることも見出した。これは食事制限の遵守そのものよりも、食事制限を遵守しようとする態度の方が健康の向上には優位に働いているためと推測される。運動の質と量を数値化し現状を評価、判別する本評点法は客観的に健康管理できるものと期待できることがわかる。また、これらのデータを図1に示す如く、評価因子毎に色分けして表示することにより、健康向上への意識、態度が正確に表示でき、これにより生活改善効果も向上する。
特に、注目すべきは、計測データそのものを経時的に表示する方法よりも、前のデータからの変化率と変化方向が判るように表示することの方が個々の健康増進の観点においては、重要であり、指導効果の高いものであることも判る。なお、項目別評点との点数の意味合いが異なるため、総合評点の表示では、H群は太字、M群は細字、L群は縦線を背景に記した。
【0018】
これらの因子、判別・評点の一部の統計解析を行った。これらの統計解析結果を表1に示す。この結果が示すように、本発明の判別は優れた的確性を有することが判る。
【0019】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、健康診断等の健康のチェックに際して用いられ、健康管理維持の向上のためのアイテムに応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生活における個人個人の健康指向性の鑑別法であって、健康指向性の鑑別因子を1)個体の心身の慣習の状況と、2)病理学的状況とに分け、健康指向に則っている場合には正の評点を付し、反していれば負の評点を付し、算出された評点の総和を以て、該総和が高い場合には健康指向性が高く、該総和が低ければ健康指向性が低いと鑑別することを特徴とする、鑑別法。
【請求項2】
前記個体の心身の慣習上の状況の構成因子は、BMI、万歩計の利用状況、主体的運動の実施状況及び一日あたりの歩数から選択される項目であり、前記病理学的状況の構成因子は、疾患数の変化、服薬量の変化及び歯のケアの状況から選択される項目であることを特徴とする、請求項1に記載の鑑別法。
【請求項3】
前記評点は、好ましい方向への移行が存した場合には正の値を、好ましからざる方向への移行が存した場合には負の値を付すものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の鑑別法。
【請求項4】
請求項1〜3何れか1項に記載の鑑別法によって鑑別された健康指向性の表示方法であって、因子項目を一つの軸として、因子項目の評点が負の数値であった場合と、正の場合と色分けを行ったカラム内に数値を記入して表示することを特徴とする、表示方法。
【請求項5】
健康管理指導のためのものであることを特徴とする、請求項4に記載の表示方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−279655(P2010−279655A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148070(P2009−148070)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.万歩計
【出願人】(509175584)
【Fターム(参考)】