説明

健康管理システム、健康情報センタ

【課題】 適切なタイミングで健康状態の診断が可能で、車載することの容易な健康管理システム及び健康情報センタを提供すること。
【解決手段】 健康管理装置が、車両に運転者が乗車したことを検出する乗車検出手段と、乗車検出手段により運転者の乗車を検出した場合、運転者の健康状態の目安となる健康管理データを取得するデータ取得手段18〜22と、データ取得手段の取得した健康管理データを前記健康情報センタに送信するデータ送信手段15と、を有し、健康情報センタが、健康状態を判定するための医療情報34、35と、医療機関が記憶された医療機関情報37と、送信された運転者の健康管理データに基づいて、医療情報を参照し運転者の健康状態を診断する健康診断手段31と、健康診断手段による診断結果を健康状態管理装置に送信する診断結果送信手段32とを備え、診断結果に応じて運転者の健康管理を支援する運転者健康管理システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に乗車した運転者の健康状態の目安となる健康管理データを取得して、運転者の健康状態を管理する健康管理システム及び健康情報センタに関する。
【背景技術】
【0002】
体温や血圧などに基づく個人の健康管理は日常的に行われているが、車両の運転においては、運転中に運転者の健康状態が悪化すると、車両の運転に悪影響を及ぼすおそれがあるため、何らかの対策を施すことが望ましいとされる。このため、運転者の健康状態を運転の間、持続的に監視可能とする健康診断システムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。当該健康診断システムでは、運転者の体温等を車両に備えたセンサにより計測し蓄積すると共に、体温等に基づく診断結果に異常がある場合、予め定めた自宅等の連絡先に通報する。
【0003】
また、持病を有している運転者が、車両による外出中に体調が悪化した場合、かかりつけの病院までの走行経路を案内する健康管理システムが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。当該技健康管理システムでは、運転者の健康状態を診断し、異常があった場合、異常状態に応じて適切な医療機関までの走行経路を案内する。
【特許文献1】特開2003−148967号公報
【特許文献2】特開2004−246707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1又は2記載の発明は、車両の運転中の健康状態を監視するものであり、運転を開始する前の健康状態の取得については記載されていない。運転者の健康状態は、本来、運転を開始する前に把握し、健康状態が優れない場合等には運転前に運転者に対し適切な措置を講ずることが望ましい。
【0005】
また、特許文献1又は2記載の発明は、運転者の健康状態の診断結果を車内に蓄積し、又、診断システムを車載しているため、医療機関の情報や診断システムを更新することが困難であり、また、各車両に高度な診断システムを車載することはコストの増大をもたらすという不都合がある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、適切なタイミングで健康状態の診断が可能で、車載することの容易な健康管理システム及び健康情報センタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題に鑑み、本発明は、車両に搭載された健康管理装置と健康情報センタとが通信することにより運転者の健康を管理する運転者健康管理システムであって、健康管理装置は、車両に運転者が乗車したことを検出する乗車検出手段(例えば、体重計18や体温計19)と、乗車検出手段により運転者の乗車を検出した場合、運転者の健康状態の目安となる健康管理データを取得するデータ取得手段と、データ取得手段の取得した健康管理データを健康情報センタに送信するデータ送信手段(例えば通信手段15)と、を有し、健康情報センタは、健康状態を判定するための医療情報(例えば、マイカルテ35、標準データ34)と、医療機関が記憶された医療機関情報(例えば、医療機関情報37)と、データ送信手段により送信された運転者の健康管理データに基づいて、医療情報を参照し運転者の健康状態を診断する健康診断手段(例えば、健康診断装置31)と、健康診断手段による診断結果を健康状態管理装置に送信する診断結果送信手段(例えば、通信手段32)と、を備え、診断結果に応じて運転者の健康管理を支援する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、適切なタイミングで健康状態の診断が可能で、車載することの容易な健康管理システムを提供できる。
【0009】
また、本発明の一形態において、健康情報センタは、健康診断手段による診断の結果、異常があった場合、医療機関情報に記憶されている運転者のかかりつけの病院又は最寄りの病院を予約する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、健康情報センタがかかりつけの病院又は最寄りの病院を予約してくれるため、運転者が医療機関を探す負担を低減できる。
【0011】
また、本発明の一形態において、健康管理装置は、健康診断手段による診断の結果、異常があった場合、医療機関情報に記憶されている運転者のかかりつけの病院又は最寄りの病院を目的地とした経路案内を行うカーナビゲーションシステムを有する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、健康管理装置が、かかりつけの病院又は最寄りの病院までの経路案内をしてくれるため、運転者が医療機関の場所を知らなくても医療機関に到達できる。
【0013】
また、本発明の一形態において、カーナビゲーションシステムは、道路幅や道路混雑状況に応じて経路案内を行う、ことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、健康状態の優れない運転者の運転の負担を低減し、また、短時間で医療機関へ到達することができる。
【0015】
また、本発明の一形態において、健康管理装置又は健康情報センタは、健康診断手段による診断の結果、異常があった場合、予め登録してある連絡先に体調不良の旨を連絡する、ことを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、体調不良の旨を連絡先に連絡でき、また、代わって運転を依頼することができる。
【0017】
また、本発明は、車両に搭載された健康管理装置と通信して運転者の健康管理を支援する健康情報センタであって、健康管理装置から送信された、運転者の健康状態の目安となる健康管理データを受信するデータ受信手段と、健康状態を判定するための医療情報と、医療機関が記憶された医療機関情報と、データ受信手段により受信した健康管理データに基づいて、医療情報を参照し運転者の健康状態を診断する健康診断手段と、健康診断手段による診断結果を健康状態管理装置に送信する診断結果送信手段と、を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の一形態において、データ受信手段により受信した健康管理データを前記医療情報に記録する、ことを特徴とする。本発明によれば、健康管理データを蓄積できるので運転者の健康状態を精度よく判断可能となる。
【0019】
また、本発明の一形態において、運転者が医療機関で診療を受けた場合、医療機関から診断結果を受信する診断結果受診手段を有し、診断結果受診手段により受診した診断結果を医療情報に記録する、ことを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、医師の診断結果を医療情報に記録できるので運転者の健康状態を精度よく判断可能となる。
【0021】
また、本発明の一形態において、ネットワークを介して端末と接続して、該端末を操作する運転者を認証する認証手段と、運転者が認証された場合、端末に医療情報を表示する医療情報表示手段と、を有することを特徴とする。本発明によれば、車両以外から、医療情報を閲覧することができる。
【発明の効果】
【0022】
適切なタイミングで健康状態の診断が可能で、車載することの容易な健康管理システム及び健康情報センタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。図1は、健康管理システムの全体構成図の一例を示す。健康管理システムは、車両4が搭載する健康管理装置1と健康情報センタ2とにより構成される。健康管理装置1は、運転者の体温等を取得すると共に、運転者の健康を管理するための情報の送受信を健康情報センタ2と行う。
【0024】
より具体的には、健康管理装置1は、運転者が乗車した際に、体温、血圧、脈拍等、運転者の健康状態の目安となる健康管理データを取得し、健康情報センタ2に送信する。健康情報センタ2は、健康状態を判定するための医療情報や医療機関、その他健康管理に必要な情報を記憶する医療情報DB7を有すると共に、健康管理装置1から送信された健康管理データに基づき運転者の健康状態を診断する。診断結果は、当該運転者の「マイカルテ」として健康情報センタ2に記憶されると共に、健康管理装置1に送信される。
【0025】
健康状態が優れないと診断されるような場合、健康情報センタ2は、運転者に医療機関5を予約するか否かを問い合わせ、運転者が医師の診療を希望した場合、医療機関5に予約を申請し、また、マイカルテに記録されている診断結果を医療機関5へ送信する。また、健康情報センタ2は、運転者が通勤途中であれば、予め登録された運転者のユーザ情報を参照して、医療機関5に立ち寄る旨の連絡を会社6へ送信する。なお、健康状態が極めて悪化しているような場合、運転の中止を運転者に促すことが好適となる。
【0026】
健康情報センタ2は、医療機関5の位置情報を医療情報DB7から抽出し、健康管理装置1に送信する。車両4のカーナビゲーションシステム(以下、カーナビという)は、車両4の現在位置と医療機関5の位置情報に基づき、車両4を医療機関5まで経路案内する。
【0027】
また、健康情報センタ2は、ネットワークを介して端末3と接続されているので、運転者は車両4からでなくても自己のマイカルテ35を閲覧すること等ができる。
【0028】
健康管理装置1について詳細に説明する。図2は、健康管理装置1の機能ブロック図を示す。健康管理装置1は、カーナビシステム100と情報管理システム200とにより構成される。カーナビシステム100は、車両の走行距離や走行速度の検出などに使用される車速センサ11、GPS衛星からの電波を受信するGPS受信機12、ヨー角速度(ヨーレート)を検出するためのヨーレートセンサ13、道路網や交差点などの地図情報が格納された地図データ14、及び、これらと接続されたカーナビECU10から構成されている。カーナビシステム100は、車両の現在位置情報を算出し、また、目的地が設定された場合には目的地までの経路案内を行う。
【0029】
情報管理システム200は、通信手段15、音声出力装置16、表示装置17、体重計18、温度計19、血圧計21、体脂肪率計22、及び、これらと接続された健康管理ECU20、とを有するように構成される。
【0030】
通信手段15は、携帯電話網、PHS(Personal Handyphone
System)網、無線LAN等の通信網を介して、健康情報センタ2とのデータ通信や音声通信、外部のネットワークとの接続を可能とする。通信手段15により、車両4から健康情報センタ2へ健康管理データの送信を行うと共に、健康情報センタ2から診断結果等を受信する。
【0031】
音声出力装置16は、音声合成回路、アンプ、スピーカなどを備えたもので、健康管理ECU20からの音声情報に応じた音声を出力する。なお、健康管理ECU20は、音声による操作を可能とするため、マイクロホンや音声識別回路を備え、運転者が発した音声を認識した結果が信号として健康管理ECU20に入力される。
【0032】
表示装置17は、車両4が走行している場所の地図や診断結果等を表示するためのFPD(Flat Panel Display)である。表示装置17には、道路を含む地図が表示されると共に、車両の現在位置及び進行方向を示すポインタが表示されるようになっている。また、目的地までの経路を表示している場合、道路上に例えば道路と異なる色で進むべき案内経路が表示される。表示装置17は、タッチパネルとして使用することも可能であるため、画面の切替や目的地の入力など運転者による各種操作が表示装置17を介して可能となる。
【0033】
体重計18は、運転席に着座した運転手の体重を計測する。体重計18は、例えば運転席シートに設置された圧力センサとして構成され、圧力センサの出力する信号の大きさに応じて運転者の体重が算出される。着座した場合、運転者の脚の部分の重量は運転席シートに加わらないので、予め検定した比例定数を圧力センサの出力に乗じて、その結果を運転者の体重として算出する。
【0034】
体温計19は、運転者の体温を計測する。体温計19は、例えば、ステアリングホイールに埋設して構成してもよいし、赤外線モニタで運転者を撮影したり、非接触体温計により運転者から放射される赤外線に基づき体温を測定してもよい。
【0035】
血圧計21は、運転者の血圧を計測する。血圧の測定方法は、どのような方法であってもよいが、周知のオシロメトリック法やリバロッチ・コロトコフ法を用いた血圧計を利用してもよいし、心臓の収縮に伴う血液の脈波が心臓から指先に到達するまでの伝達時間と血圧との関係を利用して算出してもよい。例えば、簡単には車両の所定部位にオシロメトリック法の血圧計を備える。また、ステアリングホイールの運転者が左右の手でそれぞれ握る部位に電極を設け、一方の電極で心臓の拍動時に発生する電位変化を検知し、他方の電極で指先の血流量の変化を赤外線により検知して脈波が指先に到達したタイミングを捉え、所定の演算を行うことで血圧を計測する。
【0036】
血圧計21は、運転者に触れる部位を備えるので、かかる部位に設けた電極により運転者の脈拍も同時に計測できる。
【0037】
体脂肪率計22は、ステアリングホイールリングの左右両側部に配置された一対の電極により構成され、一方の電極から微弱な電出を流し、当該電流が車両運転者の体内を伝達して他方の電極に到達する電流の流れやすさに基づき体脂肪率を計測する。
【0038】
続いて、健康情報センタ2について詳細に説明する。図3は、健康情報センタ2の機能ブロックを示す。健康情報センタ2は、健康診断装置31と通信手段32とを備え、また、医療情報DB7には、マイカルテ35、ユーザ情報36、医療機関情報37及び標準データ38が格納されている。
【0039】
マイカルテ35は、健康管理装置1から送信された健康管理データを各運転者毎に蓄積したものである。したがって、マイカルテ35には、車両4で測定された運転者の体重、体温、血圧、脈拍、体脂肪率が、計測日に対応づけて記憶されている。また、後述のように、医療機関5が運転者を診療した場合、医師が記録した診断結果が記録される。
【0040】
ユーザ情報36は、健康管理にかかる運転者の情報を記憶している。例えば、運転者の生年月日、勤務先、緊急の連絡先、かかりつけ病院、担当医師名、既往症、診療履歴、食事制限、異常判定値、等が記録され、診療結果等に応じて更新される。
【0041】
標準データ34は、体温、体重、体脂肪、血圧、脈拍等に関する標準的なデータを記録したものである。標準データ34は、性別や年代別に分けて統計的に正常とされる数値の範囲が記録されている。例えば、20代男性の体温であれば、35.9〜36.3度が「標準的な体温」とされ、36.4〜37.0度を「やや高め」、37.0度より高い数値を「高い」としておく。
【0042】
医療機関情報37は、病院等の医療機関の位置情報と対応づけて、各医療機関で可能な診療科目(外科、内科、小児科等)や専門の治療分野、緊急病棟の有無、休診日、ベッド数、等が記録されている。
【0043】
健康診断装置31は、健康管理装置1から送信された健康管理データに基づいて、マイカルテ35、ユーザ情報36及び標準データ34を参照し、車両運転者の健康状態に対し何らかの配慮或いは対策が必要か否かを判断する。
【0044】
例えば、体温がマイカルテ35に記録されている通常時より所定量以上高くなった状態であれば、医療機関5に診療を受けに行くことを勧め、血圧が標準データ34に記録されている正常とされる数値より高くなった状態であれば、健康状態に異常があるものとして運転の中止を勧める。また、脈拍が異常に高いような場合、運転者が興奮状態にあると判断して、脈拍が下がるまで運転を控えるよう勧めたり、運転者の要望に応じてリラックスする音楽等を流す。
【0045】
また、体重や体脂肪率が標準データ34に記録されている標準的な数値よりも所定量以上高い場合は生活習慣病の予防として運動を勧め、体重や体脂肪率が予め決められた上限値より高くなった場合、医師の診療を勧める。
【0046】
運転者が医師の診療を希望する場合には、ユーザ情報36からかかりつけ病院を抽出し、また、医療機関情報37から現在の車両位置や症状に応じて適当な医療機関5を抽出し、健康管理装置1へ送信する。
【0047】
通信手段32は、携帯電話網、PHS網、LAN等の通信網を介して、車両4の健康管理装置1とのデータ通信や音声通信、外部のネットワークとの接続を可能とする。通信手段32は、インターネットとも接続されており、運転者は例えば自宅の端末3からマイカルテ35を閲覧することができる。また、健康情報センタ2は、通信手段32により、医療機関5や運転者の会社へメールの送受信等を行うことができる。
【0048】
以上の構成に基づき、運転者の健康管理データに基づき健康管理システムが健康を管理する処理の手順を図4のフローチャート図に基づき説明する。図4のフローチャート図は、運転者が車両4に乗車した場合にスタートする。健康管理データの計測は、出勤時のみに制限してもよいし、出勤時と退社時の一日2回取得してもよい。また、運転中定期的に健康管理データを計測してもよい。
【0049】
運転者が運転席に着座すると、体重計18や体温計19等がこれを検出し、体重、体温、血圧、脈拍、体脂肪率の健康管理データを計測する(S11)。健康管理データは健康情報センタ2に送信される。
【0050】
健康情報センタ2は、健康管理データの各計測データを蓄積し、健康管理データとマイカルテ35の過去の数値、標準データ34の標準的な数値と比較する(S12)。その結果、健康診断装置31は、
a)運転を行うべきでない
b)運転を行ってもよいがすぐに医療機関の診療を受けるべきである、
c)運転を行う上では問題ないが健康に留意すべきである、
d)健康である、
などの総合判断を示し、また、総合判断の根拠となった計測データやその数値について説明を付する。
【0051】
かかる診断結果は、健康管理装置1に送信され、図5(a)のような診断結果として表示装置17に表示され、また音声出力装置16により内容が読み上げられる(S13)。
【0052】
図5(a)は、例えば、b)運転を行ってもよいがすぐに医療機関の診療を受けるべきである、と総合判断された場合に表示される内容を示す。総合判断結果に加え、健康管理データの各計測値及び総合判断の根拠として「体温が普段より1度以上高いようです」と表示されている。
【0053】
健康管理装置1は、総合判断の結果が健康状態であるか否かを判定する(S14)。健康状態であるか否かの判定は設計事項であるが、本実施の形態では、総合判断がc)又はd)であれば健康状態であると判定する。健康状態であると判定された場合(ステップS14のYes)、図4の処理は終了する。
【0054】
健康状態でないと判定された場合(ステップS14のNo)、総合判断a)又はb)の結果に応じて運転者の健康に配慮した対処がなされる。例えば、a)運転を行うべきでない、と判断された場合、自宅であればそのまま運転を中止する。自宅から離れている場合であって自宅までの距離が短かければ自宅までの走行ルートを表示装置17に表示する。また、自宅から離れている場合であって自宅までの距離が所定よりも長い場合、運転代行サービスに連絡してもよいし最寄りの駐車場を検索し駐車場までの走行ルートを表示装置17に表示してもよい。かかる対応により、運転を行うべきでないほど健康状態が悪いと判断されても、運転者による運転を抑制できる。
【0055】
また、b)運転を行ってもよいがすぐに医療機関の診療を受けるべきである、と判断された場合、健康管理装置1は、健康状態が優れていない場合の緊急の連絡先が健康情報センタ2に登録されているか否かを判定する(S15)。緊急の連絡先が登録されている場合、緊急の連絡先と図5(b)に示すようなメッセージを表示装置17に表示しまた音声出力装置16から音声で出力する(S16)。運転者が連絡すると選択した場合、該緊急連絡先にメール又はハンズフリーフォンにより、体調不良である旨のメッセージを送信する。これにより、運転者の健康状態が優れないことが緊急の連絡先に伝達でき、代わりの者に運転を依頼できる。なお、緊急の連絡先は、ユーザ情報36に登録されているため、緊急連絡先が登録されていれば健康情報センタ2から健康管理装置1に送信される。
【0056】
次いで、健康管理装置1は、かかりつけの病院が登録されているか否かを判定する(S17)。かかりつけの病院が登録されている場合(ステップS17のYes)、図5(c)に示すようなメッセージを表示装置17に表示しまた音声出力装置16から音声で出力する(S18)。なお、かかりつけの病院は、ユーザ情報36に登録されているため、かかりつけの病院が登録されていれば健康情報センタ2から送信される。
【0057】
また、かかりつけの病院が登録されていない場合(ステップS17のNo)、最寄りの病院を図5(d)に示すようなメッセージと共に表示装置17に表示しまた音声出力装置16から音声で出力する(S19)。健康情報センタ2は、かかりつけの病院が登録されていない場合、医療機関情報37を車両4の現在位置に基づき検索し、現在位置に近い医療機関を抽出し、健康管理装置1に送信する。なお、最寄りの病院を表示する場合、およその到達予想時間を表示することが好適である。
【0058】
運転者が、かかりつけの病院又は最寄りの病院を予約すると選択した場合(ステップS20のYes)、選択された医療機関5に予約手続きがなされる(S21)。健康管理装置1は、医療機関5が選択された旨を健康情報センタ2に送信し、健康情報センタ2は選択された医療機関5に対し予約手続きを行う。次いで、健康情報センタ2は、予約が受けつけられたか否かの予約結果を医療機関5から受信する。健康情報センタ2は、予約結果及び医療機関5の詳細な位置情報を健康管理装置1に送信する。
【0059】
健康管理装置1は、予約の結果を表示装置17に表示すると共に、音声出力装置16から音声により出力する。選択された医療情報5の混雑状況等により予約できなかった場合(ステップS22のNo)、ステップS20に戻り、再度、予約する医療機関を、かかりつけの病院又は最寄りの病院から選択する。
【0060】
予約できた場合(ステップS22のYes)、健康管理装置1は運転者に医療機関5をカーナビシステム100の目的地に設定するか否かを確認する(S23)。目的地に設定する場合(ステップS23のYes)、健康管理装置1は、医療機関5を目的地に設定し、ルート案内を開始する(S24)。これにより、運転者は、医療機関5までのルートが分からなくても、ルート案内にしたがい医療機関5へ到達できる。健康管理装置1は、目的地を設定した旨を表示装置17に表示したり音声出力装置16から音声により出力する。また、予約時間や予約受付番号等を同様に運転者に報知する。
【0061】
また、医療機関5を目的地に設定するルートは、運転が難しい狭い道や右左折の多いルートとなることを避け、大きな道幅の道路を選択する。また、大きな道路が混んでいるような場合、VICS(Vehicle Information and Communication
System)を利用して渋滞のある道路を避ける。このようなルート設定を行うことで、健康状態の優れない運転者の運転の負担を低減し、また、短時間で医療機関5へ到達することができる。
【0062】
医療機関5を目的地に設定しない場合(ステップS23のNo)、カーナビシステム100の目的地の設定は変更しない。カーナビシステム100に登録しなくても到達できる場合、運転者が好みの経路を走行して医療機関5へ到達する。
【0063】
医療機関5で診療を受けた後、医療機関5はカルテを記入して健康情報センタ2へ送信するので、健康情報センタ2は送信されたカルテを運転者のマイカルテ35に登録する(S25)。診療を受けた場合には医師による診断結果がマイカルテ35に登録されるので、マイカルテ35は健康管理データと合わせて運転者の健康管理の重要な情報となる。以上で、健康管理システムが行う処理が終了する。
【0064】
本実施の形態では、マイカルテ35が健康情報センタ2に登録されているので、運転者はネットワークに接続された端末から、パスワードや生体識別により個人認証を行えば、自己のマイカルテ35を閲覧できる。例えば、体重の推移をグラフにして表示すれば、体重変化の傾向を一目で把握できる。マイカルテ35を閲覧すれば、診療時の医師の説明を後から確認したり、薬の説明を確認することができる。また、マイカルテ35には、体調を崩した日付も記録されるので、過去にいつ頃体調を崩したかを確認できるし、その場合の対処法や注意すべきアドバイスを確認できる。
【0065】
また、健康診断装置31は、当該運転者のマイカルテ35を参照して、体調を崩しやすい季節やかかりやすい疾患があればそれを抽出し、アドバイスをすると共に当該疾患に対する一般的な対処方法をデータベース等から抽出して運転者に提供する。
【0066】
また、運転者が薬を必要とするが診療を受ける時間がないような場合、症状に適切な市販の薬を紹介し、また、通信販売による薬の注文を受ける。
【0067】
以上のように、本実施の形態の健康管理システムによれば、車両の運転という日常の行為を通じて運転者の健康を管理できる。運転者は特に意識せずとも健康管理データが計測されるので、煩わしさを感じることなく健康管理ができる。また、体調がおかしいと感じた場合には自ら健康管理データを計測できるので、車内で所望のときに体温等を計測できる。
【0068】
また、本実施の形態では、運転を開始する前に健康管理データが計測できるので、運転中に体調不良となり、車両操作に影響を及ぼすことが防止できる。
【0069】
また、本実施の形態では、健康診断装置31、標準データ34及び医療機関情報37を健康情報センタ2が所有しているので、最新の診断方法や医療機関情報への更新が容易である。また、診断を健康情報センタ2が行うので、健康管理装置1の計算の負荷を低減できる。また、マイカルテ35を健康情報センタ2に登録してあり、健康情報センタ2はネットワークを介して接続可能であるので、運転者は端末があればどこからでも自己の健康管理データや診断結果を閲覧できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】健康管理システムの全体構成図の一例である。
【図2】健康管理装置の機能ブロック図の一例である。
【図3】健康情報センタの機能ブロック図の一例である。
【図4】運転者の健康管理データに基づき健康管理システムが健康を管理する処理の手順を示すフローチャート図である。
【図5】健康管理装置の表示装置に表示される内容の一例である。
【符号の説明】
【0071】
1 健康管理装置
2 健康情報センタ
3 端末
4 車両
5 医療機関
6 会社
7 医療情報DB
15.32 通信手段
16 音声出力装置
17 表示装置
18 体重計
19 体温計
20 健康管理ECU
21 血圧計
22 体脂肪計
31 健康診断装置
34 標準データ
35 マイカルテ
36 ユーザ情報
37 医療機関情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された健康管理装置と健康情報センタとが通信することにより運転者の健康を管理する運転者健康管理システムであって、
前記健康管理装置は、車両に運転者が乗車したことを検出する乗車検出手段と、
前記乗車検出手段により運転者の乗車を検出した場合、運転者の健康状態の目安となる健康管理データを取得するデータ取得手段と、
前記データ取得手段の取得した健康管理データを前記健康情報センタに送信するデータ送信手段と、を有し、
前記健康情報センタは、健康状態を判定するための医療情報と、医療機関が記憶された医療機関情報と、
前記データ送信手段により送信された運転者の健康管理データに基づいて、前記医療情報を参照し運転者の健康状態を診断する健康診断手段と、
前記健康診断手段による診断結果を前記健康状態管理装置に送信する診断結果送信手段と、を備え、
前記診断結果に応じて運転者の健康管理を支援する、
ことを特徴とする運転者健康管理システム。
【請求項2】
前記健康情報センタは、
前記健康診断手段による診断の結果、異常があった場合、前記医療機関情報に記憶されている運転者のかかりつけの病院又は最寄りの病院を予約する、
ことを特徴とする請求項1記載の運転者健康管理システム。
【請求項3】
前記健康管理装置は、
前記健康診断手段による診断の結果、異常があった場合、前記医療機関情報に記憶されている運転者のかかりつけの病院又は最寄りの病院を目的地とした経路案内を行うカーナビゲーションシステムを有する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の運転者健康管理システム。
【請求項4】
前記カーナビゲーションシステムは、道路幅と道路混雑状況に応じて経路案内を行う、ことを特徴とする請求項3記載の運転者健康管理システム。
【請求項5】
前記健康管理装置又は前記健康情報センタは、
前記健康診断手段による診断の結果、異常があった場合、予め登録してある連絡先に体調不良の旨を連絡する、
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の運転者健康管理システム。
【請求項6】
車両に搭載された健康管理装置と通信して運転者の健康管理を支援する健康情報センタであって、
前記健康管理装置から送信された、運転者の健康状態の目安となる健康管理データを受信するデータ受信手段と、
健康状態を判定するための医療情報と、医療機関が記憶された医療機関情報と、
前記データ受信手段により受信した健康管理データに基づいて、前記医療情報を参照し運転者の健康状態を診断する健康診断手段と、
前記健康診断手段による診断結果を前記健康状態管理装置に送信する診断結果送信手段と、
を有することを特徴とする健康情報センタ。
【請求項7】
前記データ受信手段により受信した健康管理データを前記医療情報に記録する、
ことを特徴とする請求項6記載の健康情報センタ。
【請求項8】
運転者が医療機関で診療を受けた場合、
前記医療機関から前記診断結果を受信する診断結果受診手段を有し、
前記診断結果受診手段により受診した前記診断結果を前記医療情報に記録する、
ことを特徴とする請求項6又は7記載の健康情報センタ。
【請求項9】
ネットワークを介して端末と接続して、該端末を操作する運転者を認証する認証手段と、
運転者が認証された場合、前記端末に前記医療情報を表示する医療情報表示手段と、
を有することを特徴とする請求項6ないし8いずれか記載の健康情報センタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−302206(P2006−302206A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126807(P2005−126807)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】