説明

健康管理支援システム

【課題】被評価人の個人的な特性や事情等が加味された体力評価が可能であるとともに状況の変化に応じた柔軟な体力評価を行なうことができる健康管理支援システムを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、体力値を測定時の生後期間である年齢とともに体力データとして記憶する記憶部18と、評価するために測定した体力値である測定体力値を入力する入力手段17とを備え、体力データに基づき算出された体力値と年齢との相関式に基づいて、入力手段17により入力された測定体力値の評価を行なうことにより、健康管理を支援する健康管理支援システムにおいて、評価時前までに記憶部18に蓄積された被評価人の体力データである蓄積個人体力データを記憶部18から読込むとともに該蓄積個人体力データから該被評価人の体力値と年齢との相関式を評価時にリアルタイムに算出する相関関係検出手段24を設け、相関関係検出手段24によりリアルタイムに算出された前記相関式に基づいて被評価人の測定体力値の評価を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高齢者や介護施設利用者等の健康管理に用いられる健康管理支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
握力や歩行速度等の体力値をコンピュータに入力し、コンピュータの演算処理により入力された体力値の評価を自動的に行なう健康管理支援システムが従来公知である。この健康管理支援システムによれば、人手を介して行なっていた体力評価作業が自動化されるので、高齢者や介護施設利用者等の運動プログラムの作成作業等が簡易化されるというメリットがある一方で、どのような手段により体力値の評価を行なうかが問題となる。
【0003】
上記問題に対して、体力値を測定時の生後期間である年齢とともに体力データとして記憶する記憶部と、評価時に測定した体力値である測定体力値を入力する入力手段とを備え、体力データに基づき算出された体力値と年齢の相関式に基づいて、入力手段により入力された測定体力値の評価を行なうことにより、健康管理を支援する特許文献1に示す健康管理支援システムが公知になっている。
【特許文献1】特開2007−286854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献の健康管理支援システムは、相関式を利用することにより年齢を加味した体力値の評価を行なうことができる一方で、相関式が一般の高齢者や介護施設使用者等から得られた体力データに基づいて画一的に決定されるため、加齢に伴う体力変化が被評価人の個人的な特性や事情等により左右されるにもかかわらず、この個人的特性や事情が加味された評価になっていないという課題がある他、相関式が記憶部等に固定的に記憶されているため、被評価人の病気等、状況の変化に対応した柔軟な評価を行なうことが困難であるという課題もある。
本発明は、上記課題を解決し、被評価人の個人的な特性や事情等が加味された体力評価が可能であるとともに状況の変化に応じた柔軟な体力評価を行なうことができる健康管理支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明の健康管理支援システムは、第1に、体力値を測定時の生後期間である年齢とともに体力データとして記憶する記憶部18と、評価するために測定した体力値である測定体力値を入力する入力手段17とを備え、体力データに基づき算出された体力値と年齢との相関式に基づいて、入力手段17により入力された測定体力値の評価を行なうことにより、健康管理を支援する健康管理支援システムにおいて、評価時前までに記憶部18に蓄積された被評価人の体力データである蓄積個人体力データを記憶部18から読込むとともに該蓄積個人体力データから該被評価人の体力値と年齢との相関式を評価時にリアルタイムに算出する相関関係検出手段24を設け、相関関係検出手段24によりリアルタイムに算出された前記相関式に基づいて被評価人の測定体力値の評価を行なうことを特徴としている。
【0006】
第2に、相関関係検出手段24が蓄積個人体力データに基づいて対数線形モデルによる回帰分析によって相関式を算出することを特徴としている。
【0007】
第3に、相関関係検出手段24が前記相関式に対して生後からの経過時間を所定期間で上昇させた評価式を算出し、該評価式に基づいて体力評価を行なうことを特徴としている。
【0008】
第4に、体力データが歩行速度データ、握力データ又は片足立ち時間データであることを特徴としている。
【0009】
第5に、相関関係検出手段24が前記相関式により評価時の被評価人の年齢に基づいて想定体力値を算出し、想定体力値と測定体力値とを比較する比較手段26を設けることにより測定体力値の評価を行なうことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
以上のように構成される本発明の健康管理システムによれば、評価時前までに記憶部に蓄積された被評価人の体力データである蓄積個人体力データに基づいて相関式が算出されるため、被評価人の個人的な特性や事情等を加味した体力評価を行なうことができるとともに、相関式が評価時に相関関係検出手段によりリアルタイムに算出されるため、被評価人の病気等、状況の変化に対応した柔軟な評価を行なうことが可能であるという効果がある。
【0011】
また、相関関係検出手段が蓄積個人体力データに基づいて対数線形モデルによる回帰分析によって相関式を算出することにより、より精度の高い相関式を得ることが可能になるという効果がある。
【0012】
さらに、相関関係検出手段が前記相関式に対して生後からの経過時間を所定期間で上昇させた評価式を算出し、該評価式に基づいて体力評価を行なうことにより、前記相関式と評価式の2式により体力評価を行なうことが可能であるため、より正確な体力評価を行なうことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図示する例に基づき、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用した健康管理支援システムの体調評価の概念図である。タッチパネルからなる表示画面を備えた端末(図示しない)を用いて、高齢者や介護施設利用者や施設等の従業員等からなるシステム利用ユーザ(ユーザ)が、自分自身又は施設利用者等(被評価人)の体調に関する所定項目をタッチ操作により入力すると、その被評価人の体調に関する評価が端末の表示画面に出力される。
【0014】
具体的には、まず、体調入力画面1が表示される。この体調入力画面1には、「良い」、「まあまあ良い、」、「普通」、「あまり良くない」及び「良くない」の選択肢が表示がされ、被評価人の主観的体調状態に基づいて、上記選択肢の中から近い状態のものを選択する。選択は、ユーザがタッチパネルにおける選択肢表示箇所をタッチすることにより行なう。
【0015】
なお、「良い」が選択されると主観値として「5」の値が、「まあまあ良い」が選択されると主観値として「4」の値が、「普通」が選択されると主観値として「3」の値が、「あまり良くない」が選択されると主観値として「2」の値が、「良くない」が選択されると主観値として「1」の値が、健康管理支援システムに入力される。
【0016】
続いて、体調入力画面2が表示される。この体調入力画面2は、1分当たり脈拍数(脈拍数)[拍/分]を表示する表示欄2aと、表示欄2aに少数点を含む数値を入力可能且つ表示欄2aの数値を消去可能なボタン群2bと、表示欄2aの脈拍数を本健康管理支援システムに入力する登録ボタン2cとを備えている。そして、該当箇所をタッチすることにより、被評価人の脈拍数が健康管理支援システムに入力される。
【0017】
続いて、体調入力画面3が表示される。この体調入力画面3は、心臓の収縮期における血圧値(最高血圧値)[mmHg]を表示する表示欄3aと、表示欄3aに少数点を含む数値を入力可能且つ表示欄3aの数値を消去可能なボタン群3bと、表示欄3aの最高血圧値を本健康管理支援システムに入力する登録ボタン3cとを備えている。そして、該当箇所をタッチすることにより、被評価人の最高血圧値が健康管理支援システムに入力される。
【0018】
続いて、体調入力画面4が表示される。この体調入力画面4は、心臓の拡張期における血圧値(最低血圧値)[mmHg]を表示する表示欄4aと、表示欄4aに少数点を含む数値を入力可能且つ表示欄4aの数値を消去可能なボタン群4bと、表示欄4aの最低血圧値を本健康管理支援システムに入力する登録ボタン4cとを備えている。そして、該当箇所をタッチすることにより、被評価人の最低血圧値が健康管理支援システムに入力される。
【0019】
このようにして、主観値、脈拍数、最高血圧値及び最低血圧値を入力すると、その日の運動ができるか否かが、体調評価画面6に「運動しても差支えありません。」や「運動を控えて下さい。」等のメッセージで出力される。
【0020】
図2は、本発明を適用した健康管理支援システムの体力評価の概念図で、(A)は体力値が歩行速度の場合の概念図であり、(B)は体力値が握力の場合の概念図であり、(C)は体力値が片足立ち時間の場合の概念図である。体調評価の場合と同様に、端末を用いて被評価人の所定の体力値に関する所定項目をタッチ操作により入力すると、その被評価人の体力に関する評価が端末の表示画面に出力される。
【0021】
同図(A)に示す体力入力画面7によって体力値である歩行速度[m/分]を入力する。体力入力画面7は、歩行速度を表示する表示欄7aと、表示欄7aに少数点を含む数値を入力可能且つ表示欄7aの数値を消去可能なボタン群7bと、表示欄7aの歩行速度を本健康管理支援システムに入力する登録ボタン7cとを備えている。そして、該当箇所をタッチすることにより、評価時に測定した被評価人の体力値(測定体力値)である歩行速度が健康管理支援システムに入力される。
【0022】
そして、歩行速度が本健康管理支援システムに入力されると、本健康管理支援システムの後述する蓄積個人体力データ体力評価部8(図3)によって、本健康管理支援システムに蓄積された被評価人の全歩行速度データに基づいた体力評価が行なわれ、その結果が体力評価画面9の個人評価欄9aに表示されるとともに、本健康管理支援システムの後述する蓄積一般体力データ体力評価部11(図3)によって、本健康管理支援システムに蓄積された全体歩行速度データに基づいた体力評価が行なわれ、その結果が体力評価画面9の一般評価欄9bに表示される。
【0023】
なお、個人評価欄9aには、被評価人の歩行速度変化(体力変化)の評価が「悪化」、「現状維持」又は「好転」のメッセージの何れかにより表示される。一方、一般評価欄9bには、被評価人の歩行速度(体力値)の評価が「低い」、「普通」又は「高い」のメッセージの何れかにより表現される他、被評価人の実年齢と、被評価人の歩行速度(体力値)に基づき算出される体力年齢とが表示される。
【0024】
同図(B)に示す体力入力画面12によって体力値である左右の握力平均値(握力)[kg]を入力する。体力入力画面12は、握力を表示する表示欄12aと、表示欄12aに少数点を含む数値を入力可能且つ表示欄12aの数値を消去可能なボタン群12bと、表示欄12aの握力を本健康管理支援システムに入力する登録ボタン12cとを備えている。そして、該当箇所をタッチすることにより、評価時に測定した被評価人の体力値(測定体力値)である握力が健康管理支援システムに入力される。
【0025】
そして、握力が本健康管理支援システムに入力されると、上記蓄積個人体力データ体力評価部8によって、本健康管理支援システムに蓄積された被評価人の全握力データに基づいた体力評価が行なわれ、その結果が体力評価画面13の個人評価欄13aに表示されるとともに、上記蓄積一般体力データ体力評価部11によって、本健康管理支援システムに蓄積された全握力データに基づいた体力評価が行なわれ、その結果が体力評価画面13の一般評価欄13bに表示される。
【0026】
なお、個人評価欄13aには、被評価人の握力変化(体力変化)の評価が「悪化」、「現状維持」又は「好転」のメッセージの何れかにより表示される。一方、一般評価欄13bには、被評価人の握力(体力値)の評価が「低い」、「普通」又は「高い」のメッセージの何れかにより表現される他、被評価人の実年齢と、被評価人の握力(体力値)に基づき算出される体力年齢とが表示される。
【0027】
同図(C)に示す体力入力画面14によって体力値である開眼片足立ち時間(片足立ち時間)[s]を入力する。体力入力画面14は、片足立ち時間を表示する表示欄14aと、表示欄14aに少数点を含む数値を入力可能且つ表示欄14aの数値を消去可能なボタン群14bと、表示欄14aの片足立ち時間を本健康管理支援システムに入力する登録ボタン14cとを備えている。そして、該当箇所をタッチすることにより、評価時に測定した被評価人の体力値(測定体力値)である片足立ち時間が健康管理支援システムに入力される。
【0028】
そして、片足立ち時間が本健康管理支援システムに入力されると、上記蓄積個人体力データ体力評価部8によって、本健康管理支援システムに蓄積された被評価人の全片足立ち時間データに基づいた体力評価が行なわれ、その結果が体力評価画面16の個人評価欄16aに表示されるとともに、上記蓄積一般体力データ体力評価部11によって、本健康管理支援システムに蓄積された全片足立ち時間データに基づいた体力評価が行なわれ、その結果が体力評価画面16の一般評価欄16bに表示される。
【0029】
なお、個人評価欄16aには、被評価人の片足立ち時間変化(体力変化)の評価が「悪化」、「現状維持」又は「好転」のメッセージの何れかにより表示される。一方、一般評価欄16bには、被評価人の片足立ち時間(体力値)の評価が「低い」、「普通」又は「高い」のメッセージの何れかにより表現される他、被評価人の実年齢と、被評価人の片足立ち時間(体力値)に基づき算出される体力年齢とが表示される。
【0030】
以上のようにして被評価人の体調評価と体力評価を行なう。なお、本健康管理支援システムは端末のみで成立するスタンドアローン形式としてもよいし、クライアント(端末)とサーバからなるサーバ・クライアント方式としてもよい。
【0031】
次に、本健康管理支援システムの具体的構成について詳述する。
図3は、本健康管理支援システムの構成を示すブロック図である。本健康管理支援システムは、入出力手段17(入力手段)と、記憶部18(ハードディスク,データベース部)と、蓄積個人体力データ体力評価部8(体力評価手段)と、蓄積一般体力データ体力評価部11(体力評価手段)と、前述の体調評価を行なう体調評価手段19とを備えている。
【0032】
上記入力手段17は、前述した端末のタッチパネル等により構成されており、少なくとも、前述した体調入力画面1,2,3,4の入力値を記憶部18に記憶する機能と、前述した体調評価画面6に評価を出力する機能と、前述した体力入力画面7,12,14の入力値を記憶部18に記憶する機能と、前述した体力評価画面9,13,16に体力評価を出力する機能とを備えており、その他、データベース18の更新、書換、消去機能等を有している。
【0033】
上記記憶部18は、SQLやOracle等のリレーショナブルデータベースとして、体力データテーブル21、体調データテーブル22及び個人データテーブル23を備えている。
【0034】
図4は、記憶部のデータ構造を示す概念図である。個人データテーブル23は、フィールドとして、主キーである「個人ID」と、個人の氏名を記録する「氏名」と、その個人の生年月日を記録する「生年月日」とを有している。
【0035】
体力データテーブル21は、フィールドとして、主キーである「体力ID」と、歩行速度データを記録する「歩行速度」と、握力データを記憶する「握力」と、片足立ち時間データを記憶する「片足立ち時間」と、これらの体力値の測定年月日を記録する「測定年月日」と、これらの体力値(歩行速度,握力,片足立ち時間)が誰のものかを個人データテーブル23から参照する「個人ID」とを有している。
【0036】
このため、個人データテーブル23は体力データテーブル21によって参照されることになり、個人データテーブル23の個人の生年月日と体力データテーブル21の測定年月日によって体力値(歩行速度,握力,片足立ち時間)をその測定時における被測定者の生後からの期間(生後期間)である年齢とともに体力データとして記憶部18に記憶されておくことができる。そして、記憶部には多数の個人の体力データが経時的に逐次記憶されている。
【0037】
すなわち、歩行速度データ、握力データ、片足時間データは体力データとして記憶部18に保存されている。くわえて、本健康管理支援システム(記憶部18)に蓄積された被評価人の全歩行速度データ、全握力データ及び全片足立ち時間データは、記憶部18に経時的に逐次蓄積された被評価人の体力データである蓄積個人体力データになる。一方、記憶部18に蓄積された全歩行速度データ、全握力データ及び全片足立ち時間データは、記憶部に経時的に逐次蓄積された体力データである一般個人体力データになる。
【0038】
体調データテーブル22は、フィールドとして、主キーである「体調ID」と、主観値(体調値)を記録する「主観」と、脈拍数(体調値)を記録する「脈拍数」と、最高血圧値(体調値)を記録する「最高血圧」と、最低血圧値(体調値)を記録する「最低血圧値」と、これらの体調値の測定年月日を記録する「測定年月日」と、これらの体調値が誰のものかを個人データテーブル23から参照する「個人ID」とを有している。
【0039】
このため、個人データテーブル23は体調データテーブル22によって参照されることになり、個人データテーブル23の個人の生年月日と体調データテーブル21の測定年月日によって体調値をその測定時における被測定者の年齢とともに体調データとして記憶部18に記憶されておくことができる。そして、記憶部には多数の個人の体調データが経時的に逐次記憶されている。
【0040】
上記体調評価手段19は、上記複数種類の体調データに基づいて、被測定者の体調評価を行う。図5は体調評価手段の処理フロー図である。体調評価手段は処理が開始されると、記憶部18から必要な情報を取得しつつ、ステップS1から処理を進める。ステップS1では、被評価人の主観値が2以下であるか否かの検出を行い、2以下である場合にはステップS8に進む。ステップS8では、被評価人に運動禁止を促すため、体調評価画面6「運動を控えて下さい」のメッセージを出力し(図1参照)、処理を終了させる。
【0041】
ステップS1において、被評価人の主観値が2よりも大きい場合には、ステップS2に進む。ステップS2では、被評価人の最高血圧値が180mmHg以上であるか否かを検出し、以上である場合にはステップS8に進み、未満である場合にはステップS3に進む。ステップS3では、被評価人の最低血圧値が110mmHg以上であるか否かを検出し、以上である場合にはステップS8に進み、未満である場合にはステップS4に進む。
【0042】
ステップS4では被評価人の測定日の最高血圧値と測定日前日の最高血圧値との差が30mmHg以上、又は、被評価人の測定日の最低血圧値と測定日前日の最低血圧値との差が30mmHg以上である場合にはステップS8に進み、それ以外の場合にはステップS5に進む。ステップS5では、被評価人の脈拍数が110拍/分以上であることが検出されるとステップS8に進み、検出されないとステップS6に進む。
【0043】
ステップS6では、被評価人の脈拍数が40拍/分未満であることが検出されるとステップS8に進み、検出されないとステップS7に進む。ステップS7では、被評価人に運動OKな旨を伝えるため、体調評価画面6「運動しても差支えありません。」のメッセージを出力し(図1参照)、処理を終了させる。
【0044】
上記蓄積個人体力データ体力評価部8は、評価時前までの蓄積個人体力データを記憶部18から読込むとともにこの蓄積個人体力データから該被評価人の体力値と年齢との相関式を評価時にリアルタイムに算出する相関関係検出手段24と、比較手段26とを備えている。なお、蓄積個人体力データ体力評価部8は、体力データである歩行速度データと、握力データと、片足立ちデータとのそれぞれ全てで同一の処理を行う。このそれぞれで行われる処理について以下に説明する。
【0045】
図6は、蓄積個人体力データ体力評価部の処理フロー図である。蓄積個人体力データ体力評価部は処理が開始されるステップS11に進む。ステップS11では、相対関係検出手段24が、記憶部18や入出力手段17を介して、被評価人の評価時(現在)の年齢Xnowと、入出力手段17を介して入力された測定体力値Ynowを取得し、ステップS12に進む。
【0046】
ステップS12では、相対関係検出手段24が記憶部18から被評価人の蓄積個人体力データを取得し、ステップS13に進む。ステップS13では、ステップS12で取得した蓄積個人体力データを用いて、相関関係検出手段24が、対数線形モデルによる回帰分析を行い、被評価人における体力値と年齢との相関関係を示す回帰分析式(相関式)を算出し、ステップS14に進む。なお、この最の回帰分析式は以下のようになる。
【0047】
【数1】

【0048】
上記下記分析によりAとBが算出される。ちなみに、xは被評価人の年齢であり、yは回帰分析式から算出される年齢xでの体力値(個人的想定体力値,想定体力値)である。
【0049】
ステップS14では、Aは0以上であるか否かの検出を行い、0以上であればステップS15に進み、0の負の値であればステップS16に進む。ステップS16では、高齢者において加齢とともに減少する体力値が増加に転じているため又は後述するように体力値の減少率がこれまでに比べ抑制されているため、被評価人の体力変化が好転している旨を伝えるべく、体力評価画面9,13,16の個人評価欄9a,13a,16aに「好転」のメッセージを出力し、処理を終了させる。
【0050】
ステップS16では、前記相関式に対して生後からの経過時間を所定期間で上昇させた評価式を相関関係検出手段24によって算出し、ステップS17に進む。評価式は具体的には以下のようになる。
【0051】
【数2】

【0052】
Cは加齢速度を増加させる基準年齢を表し、kはその増加率を表す。例えば、Cが68歳で、kが1.5の場合、68歳から被評価人の体力が今までの1.5倍のスピードで加齢に伴い減少していくことを意味し、評価式と回帰分析式の関係は図7に示すようになる。この評価式でのyは、評価式から算出される年齢xでの体力値(個人的下限体力値,下限体力値)である。なお、被評価人の評価時の年齢は基準年齢よりも大きい方が、正確な評価を行う上で、好ましい。
【0053】
ステップS17では、ステップS13の回帰分析式から年齢Xnowでの個人的想定体力値を算出し、この個人的想定体力値よりもステップS11の測定体力値Ynowの方が値が大きいか否かを比較手段26により検出し、大きい場合にはステップS15に進み、それ以外の場合にはステップS18に進む。
【0054】
ステップS18では、年齢Xnowでの個人的想定体力値及び個人的下限値を算出し、測定体力値Ynowがこの個人的想定体力値以下且つ個人的下限値以上の範囲にあるか否かを比較手段26により検出し、ある場合には、ステップS19に進み、ない場合には、ステップS20に進む。
【0055】
ステップS20では、想定通り加齢とともに体力が減少しているとみなして、被評価人の体力変化が現状維持である旨を伝えるべく、体力評価画面9,13,16の個人評価欄9a,13a,16aに「現状維持」のメッセージを出力し、処理を終了させる。
【0056】
ステップS21では、想定以上に加齢とともに体力が減少しているとみなして、被評価人の体力変化が悪化している旨を伝えるべく、体力評価画面9,13,16の個人評価欄9a,13a,16aに「悪化」のメッセージを出力し、処理を終了させる。
【0057】
上記蓄積一般体力データ体力評価部11は、評価時前までの蓄積一般体力データを記憶部18から読込むとともにこの蓄積一般体力データから一般的な体力値と年齢との相関式を評価時にリアルタイムに算出する相関関係検出手段27と、比較手段28とを備えている。なお、蓄積一般体力データ体力評価部8は、体力データである歩行速度データと、握力データと、片足立ちデータとのそれぞれ全てで同一の処理を行う。このそれぞれで行われる処理について以下に説明する。
【0058】
図8は、蓄積一般体力データ体力評価部の処理フロー図である。蓄積一般体力データ体力評価部は処理が開始されるステップS31に進む。ステップS31では、相対関係検出手段27が、記憶部18や入出力手段17を介して、被評価人の評価時(現在)の年齢Xnowと、入出力手段17を介して入力された測定体力値Ynowを取得し、ステップS32に進む。
【0059】
ステップS32では、相対関係検出手段27が記憶部18から蓄積一般体力データを取得し、ステップS33に進む。ステップS33では、ステップS32で取得した蓄積一般体力データを用いて、相関関係検出手段27が、対数線形モデルによる回帰分析を行い、体力値と年齢との相関関係を一般的に示す回帰分析式(相関式)を算出し、ステップS34に進む。なお、この最の回帰分析式は以下のようになる。
【0060】
【数3】

【0061】
上記下記分析によりAとBが算出される。なお、一般的な傾向では加齢とともに体力値は減少するため、Aは必ず0より小さく、Bは必ず0より大きくなる。ちなみに、xは被評価人の年齢であり、yは回帰分析式から算出される年齢xでの体力値(一般的想定体力値)である。
【0062】
ステップS34では、ステップS33の回帰分析式に対して生後からの経過時間を所定期間で上昇させた評価式を相関関係検出手段27によって算出し、ステップS35に進む。評価式は具体的には以下のようになる。
【0063】
【数4】

【0064】
Cとkは前述した通りである。くわえて、この評価式でのyは、評価式から算出される年齢xでの体力値(一般的下限体力値)である。なお、被評価人の評価時の年齢は基準年齢よりも大きい方が、正確な評価を行う上で、好ましい。
【0065】
ステップS35では、ステップS13の回帰分析式から年齢Xnowでの一般的想定体力値を算出し、この一般的想定体力値よりもステップS31の測定体力値Ynowの方が値が大きいか否かを比較手段28により検出し、大きい場合にはステップS36に進み、それ以外の場合にはステップS37に進む。
【0066】
ステップ36では、一般人に比べて年齢に対する体力があるとみなして、被評価人の体力が高い旨を伝えるべく、体力評価画面9,13,16の一般評価欄9b,13b,16bに「高い」のメッセージを出力し、ステップS40に進む。ステップS40では、Ynowでの回帰分析式での年齢を体力年齢として一般評価欄9b,13b,16bに表示し、処理を終了させる。
【0067】
ステップS37では、年齢Xnowでの一般的想定体力値及び一般的下限値を算出し、測定体力値Ynowがこの個人的想定体力値以下且つ個人的下限値以上の範囲にあるか否かを比較手段28により検出し、ある場合には、ステップS38に進み、ない場合には、ステップS39に進む。
【0068】
ステップS38では、体力値が年齢に対して普通であるとみなして、被評価人の体力値が普通である旨を伝えるべく、体力評価画面9,13,16の一般評価欄9b,13b,16bに「普通」のメッセージを出力し、ステップS40に進む。
【0069】
ステップS39では、体力値が年齢に対して低いとみなして、被評価人の体力値が低いことを伝えるべく、体力評価画面9,13,16の一般評価欄9b,13b,16bに「低い」のメッセージを出力し、ステップS40に進む。
【0070】
以上によって被評価人の絶対的体力評価も合わせて行い、被評価人の体力評価の制御を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明を適用した健康管理支援システムの体調評価の概念図である。
【図2】本発明を適用した健康管理支援システムの体力評価の概念図で、(A)は体力値が歩行速度の場合の概念図であり、(B)は体力値が握力の場合の概念図であり、(C)は体力値が片足立ち時間の場合の概念図である。
【図3】本健康管理支援システムの構成を示すブロック図である。
【図4】記憶部のデータ構造を示す概念図である。
【図5】体調評価手段の処理フロー図である。
【図6】蓄積個人体力データ体力評価部の処理フロー図である。
【図7】年齢と体力値との相関関係を示す特性グラフである。
【図8】蓄積一般体力データ体力評価部の処理フロー図である。
【符号の説明】
【0072】
17 入出力手段(入力手段)
18 記憶部(ハードディスク,データベース部)
24 相関関係検出手段
26 比較手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体力値を測定時の生後期間である年齢とともに体力データとして記憶する記憶部(18)と、評価するために測定した体力値である測定体力値を入力する入力手段(17)とを備え、体力データに基づき算出された体力値と年齢との相関式に基づいて、入力手段(17)により入力された測定体力値の評価を行なうことにより、健康管理を支援する健康管理支援システムにおいて、評価時前までに記憶部(18)に蓄積された被評価人の体力データである蓄積個人体力データを記憶部(18)から読込むとともに該蓄積個人体力データから該被評価人の体力値と年齢との相関式を評価時にリアルタイムに算出する相関関係検出手段(24)を設け、相関関係検出手段(24)によりリアルタイムに算出された前記相関式に基づいて被評価人の測定体力値の評価を行なう健康管理支援システム。
【請求項2】
相関関係検出手段(24)が蓄積個人体力データに基づいて対数線形モデルによる回帰分析によって相関式を算出する請求項1の健康管理支援システム
【請求項3】
相関関係検出手段(24)が前記相関式に対して生後からの経過時間を所定期間で上昇させた評価式を算出し、該評価式に基づいて体力評価を行なう請求項1又は2の健康管理支援システム
【請求項4】
体力データが歩行速度データ、握力データ又は片足立ち時間データである請求項1,2又は3の健康管理支援システム。
【請求項5】
相関関係検出手段(24)が前記相関式により評価時の被評価人の年齢に基づいて想定体力値を算出し、想定体力値と測定体力値とを比較する比較手段(26)を設けることにより測定体力値の評価を行なう請求項1,2,3又は4の健康管理支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−258810(P2009−258810A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104165(P2008−104165)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【出願人】(508094189)コオポラティブ・コンピュータ・コンサルティング株式会社 (1)
【Fターム(参考)】