説明

健康補助剤及びその誘導方法

【課題】栄養素を局所的に集中させて、より健康維持効果を得ることが可能な健康補助剤を提供する。
【解決手段】磁性を有する有機化合物と栄養素との化合物を含有する健康補助剤を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康補助剤及びその誘導方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、栄養バランスに優れた食事を取ることが困難な状況にあることから、サプリメントと呼ばれる健康補助食品を摂取することで健康維持を図ることが一般的となっている。このような健康補助食品は、ビタミンやミネラル、アミノ酸等、生活習慣病を予防する効果や美容効果などを有する各種の栄養素から成り、目的に応じて様々な種類のものが市販化されている。
なお、上記の内容は広く一般的に知られた内容であるため、記載すべき先行技術文献情報は特にない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来では、上記のような健康補助食品を摂取すると、栄養素が血流に乗って全身に運ばれ、身体全体で消費されていた。そのため、最も改善したい患部に到達する栄養素は極めて微量になり、所望の効果を得ることが困難であった。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、栄養素を局所的に集中させて、より健康維持効果を得ることが可能な健康補助剤及びその誘導方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の健康補助剤は、鉄フタロシアニンやコバルトサレンなどの磁性を有する有機化合物と栄養素との化合物を含有することを特徴とする。
また、本発明の健康補助剤において、前記有機化合物は鉄サレン錯体であることを特徴とする。
また、本発明の健康補助剤において、前記栄養素は分子量860以下であることを特徴とする。
また、本発明の健康補助剤において、前記栄養素は、ビタミンC(L−アスコルビン酸)、ビタミンC誘導体(リン酸アスコルビン)、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン、ニコチン酸)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6(ピリドキシン)、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB9(葉酸)、ビタミンB12(シアノコバラミン)、L−システイン、ビタミンA(レチノール)、ハイドロキノン、ピクジェノール、エラグ酸、マグノリグナン、ヒアルロン酸、カプサイシンのいずれかであることを特徴とする。
さらに、本発明の健康補助剤の誘導方法は、上記の健康補助剤を経口投与または外部塗布した後に、所望の部位に局所的に磁場を加えることにより、前記健康補助剤に含有されている磁性を有する金属錯体と栄養素との化合物を前記部位に誘導させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の健康補助剤によれば、磁性を有する有機化合物と栄養素との化合物、言い換えれば磁性を有する栄養素を含有しているため、経口投与または外部塗布して所望の部位に局所的に磁場を加えることにより、当該部位に栄養素を誘導及び集中させることができ、より健康維持効果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態に係る健康補助剤の磁場誘導実験に関する説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る健康補助剤で用いる栄養素を例示的に列挙した一覧表である。
【図3】本発明の一実施形態に係る健康補助剤に含有される鉄サレン錯体化合物の生成手順に関する第1説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る健康補助剤に含有される鉄サレン錯体化合物の生成手順に関する第2説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る健康補助剤に含有される鉄サレン錯体化合物の生成手順に関する第3説明図である。
【図6】第1形態の鉄サレン錯体化合物のR、R部分に結合する電荷移動の値の平均値を示す表である。
【図7】第2形態の鉄サレン錯体化合物のR、R部分に結合する電荷移動の値の平均値を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
〔健康補助剤〕
まず、本実施形態に係る健康補助剤について説明する。本実施形態に係る健康補助剤は、磁性を有する有機化合物と栄養素との化合物を含有することを特徴としている。以下では、磁性を有する有機化合物として鉄サレン錯体を用いる場合を例示して説明する。
【0009】
下記(1)式は、本実施形態における鉄サレン錯体と栄養素との化合物(以下、鉄サレン錯体化合物と称す)の第1形態を表す化学構造式である。また、下記(2)式は、本実施形態における鉄サレン錯体化合物の第2形態を表す化学構造式である。下記(1)及び(2)式において、R及びRの少なくとも一方は、以下で説明する栄養素が結合する位置を示している。より具体的には、栄養素が有する官能基から水素が離脱してなる結合基の部分が、上記の鉄サレン錯体化合物のR及びRの少なくとも一方の位置で結合することになる。なお、RまたはRが栄養素との結合部でない場合、これらRまたはRには水素が結合する。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
本願発明者は、例えば特開2008−117969号公報に開示されているように、金属錯体、例えばシスプラチンやコバルト錯体、鉄錯体などに側鎖修飾を施して得られる誘導体、つまりシスプラチン誘導体やコバルト錯体誘導体、鉄錯体誘導体(鉄サレン錯体)が磁性を有することを発見した。すなわち、上記化学構造式(1)、(2)で表される第1及び第2形態の鉄サレン錯体化合物は磁性を有した栄養素であると言うことができる。
【0013】
ここで、鉄サレン錯体に結合させる栄養素は分子量860以下であることが望ましい。本願発明者は、栄養素の分子量を860以下とすることで、磁性を有する栄養素(鉄サレン錯体化合物)をネオジウム永久磁石などで誘導可能であるとの実験結果を得た。その実験の一例として、鉄サレン錯体(分子量322.04)に分子量853.906のパクリタキセル(タキソール)を結合させて得られる鉄サレン錯体化合物を磁場誘導する実験を行った。
【0014】
図1(a)は、ラットL6細胞の培地がある角型フラスコに棒磁石を接触させた状態を示している。次いで、48時間後角型フラスコ底面の一端から他端までを撮影し、細胞数を算出した結果を図1(b)に示す。図1(b)において、磁石から近位とは角型フラスコ底面における磁石端面の投影面積内を示し、磁石から遠位とは角型フラスコ底面において磁石端面と反対側にある領域を示す。図1(b)に示すように、磁石から近位では鉄サレン錯体化合物が引き寄せられて鉄サレン錯体化合物の濃度が増し鉄サレン錯体のDNA抑制作用によって細胞数が遠位よりも極端に低いことが分かる。この結果、磁場を加えることによって磁性を有する栄養素(健康補助剤)を誘導可能であり、所望の部位に栄養素を集中させ、より健康維持効果を得ることが可能となる。
【0015】
図2に、鉄サレン錯体に結合させる栄養素を例示的に列挙した一覧表を示す。この図2に示すように、鉄サレン錯体に結合させる栄養素としては、ビタミンC(L−アスコルビン酸:分子量176)、ビタミンC誘導体(リン酸アスコルビン)、ビタミンB1(チアミン:分子量265.356)、ビタミンB2(リボフラビン:分子量376.364)、ビタミンB3(ナイアシン、ニコチン酸:分子量122.102)、ビタミンB5(パントテン酸:分子量219.235)、ビタミンB6(ピリドキシン:分子量169.18)、ビタミンB7(ビオチン:分子量244.31)、ビタミンB9(葉酸:分子量441.1396)、ビタミンB12(シアノコバラミン:分子量1355.4)、L−システイン(分子量121.16)、ビタミンA(レチノール:分子量286.456)、ハイドロキノン(分子量110.11)、ピクジェノール、エラグ酸(分子量314)、マグノリグナン(分子量244)、ヒアルロン酸、カプサイシン(分子量305.41)等のいずれかを用いることができる。
【0016】
ビタミンCは、コラーゲンの生成作用、メラニン色素の生成の抑制作用及びメラニン色素の淡色化作用(還元作用)を有している。ビタミンC誘導体は、ビタミンCと同等作用を有すると共にビタミンCより壊れにくく、吸収されやすいという特徴を有している。ビタミンB群(ビタミンB1〜B12)は、色素沈着を強力に抑制する作用があり、経口投与した場合の色素沈着抑制効果はL−システインより大きく、外用塗布でも有効であるという特徴がある。
【0017】
L−システインは、一般的なサプリメントに使用される色素沈着抑制作用を有する栄養素であり、体内に投与されると抗酸化剤のグルタチオンへと代謝される。ビタミンAは、代謝促進作用を有している。ハイドロキノンは、強力な漂白作用を有し、ビタミンAの一種であるトレチノインと併用することで、皮膚の漂白効果がより高まるとされている。ピクジェノールは、ポリフェノールの一種であり、抗酸化作用を有すると共に、エラスチン繊維を分解する酵素の働きを抑制する作用を有する。
【0018】
エラグ酸は、メラニン生成反応を促進する酵素「チロシナーゼ」の活性化を阻害する作用を有している。マグノリグナンは、上記の酵素「チロシナーゼ」の成熟を阻害する作用を有している。ヒアルロン酸は、肌の保湿作用を有している。カプサイシンは、摂取すると受容体活性化チャネルの1つであるTRPV1を刺激し、実際に温度は上昇しないものの激しい発熱感を引き起こす作用がある。
【0019】
下記(3)式は、ビタミンC(L−アスコルビン酸)の化学構造式である。
【0020】
【化3】

【0021】
下記(4)式は、ヒアルロン酸の化学構造式である。
【0022】
【化4】

【0023】
下記(5)式は、エラグ酸の化学構造式である。
【0024】
【化5】

【0025】
下記(6)式は、マグノリグナンの化学構造式である。
【0026】
【化6】

【0027】
下記(7)式は、ビタミンB1(チアミン)の化学構造式である。
【0028】
【化7】

【0029】
下記(8)式は、ビタミンB2(リボフラビン)の化学構造式である。
【0030】
【化8】

【0031】
下記(9)式は、ビタミンB3(ナイアシン、ニコチン酸)の化学構造式である。
【0032】
【化9】

【0033】
下記(10)式は、ビタミンB5(パントテン酸)の化学構造式である。
【0034】
【化10】

【0035】
下記(11)式は、ビタミンB6(ピリドキシン)の化学構造式である。
【0036】
【化11】

【0037】
下記(12)式は、ビタミンB7(ビオチン)の化学構造式である。
【0038】
【化12】

【0039】
下記(13)式は、ビタミンB9(葉酸)の化学構造式である。
【0040】
【化13】

【0041】
下記(14)式は、ビタミンB12(シアノコバラミン)の化学構造式である。
【0042】
【化14】

【0043】
下記(15)式は、L−システインの化学構造式である。
【0044】
【化15】

【0045】
下記(16)式は、ビタミンA(レチノール)の化学構造式である。
【0046】
【化16】

【0047】
下記(17)式は、ハイドロキノンの化学構造式である。
【0048】
【化17】

【0049】
上記(1)及び(2)式で表される鉄サレン錯体化合物の主骨格は、以下のような手順で生成することができる。
<ステップ1>
まず、図3(a)に示すように、4-nitrophenol (25g, 0.18mol)、hexamethylene tetramine (25g, 0.18mol)、 polyphosphoric acid (200ml)の混合物1を1時間100℃で攪拌した。その後、その混合物を500mlの酢酸エチルと1Lの水の中に入れ、完全に溶解するまで攪拌した。さらにその溶液に400mlの酢酸エチルを追加で加えたところ、その溶液は2つの相に分離し、水の相を取り除き、残りの化合物を塩性溶剤で2回洗浄し、無水MgSOで乾燥させた結果、compound2が17g(収率57%)合成できた。
【0050】
<ステップ2>
続いて、図3(b)に示すように、compound2 (17g, 0.10mol)、 acetic anhydride (200ml)、H2SO4 (少々)を室温で1時間攪拌させた。得られた溶液は、氷水(2L)の中に0.5時間混ぜ、加水分解を行った。得られた溶液をフィルターにかけ、大気中で乾燥させたところ白い粉末状のものが得られた。酢酸エチルを含む溶液を使ってその粉末を再結晶化させたところ、24gのCompound3(収率76%)の白い結晶を得ることができた。
【0051】
<ステップ3>
続いて、図3(c)に示すように、compound3 (24g, 77mmol)とメタノール(500ml)に10%のパラジウムを担持したカーボン(2.4g)の混合物を一晩、1.5気圧の水素還元雰囲気で還元した。終了後、フィルターでろ過したところ、茶色油状のcompound4 (21g)が合成できた。
【0052】
<ステップ4>
続いて、図4(a)に示すように、無水ジクロメタン(DCM) (200ml)にcompound4 (21g, 75mmol)、 di(tert-butyl) dicarbonate (18g, 82mmol)を窒素雰囲気で一晩攪拌した。得られた溶液を真空中で蒸発させた後、メタノール(100ml)で溶解させた。その後、水酸化ナトリウム(15g, 374mmol)と水(50ml)を加え、5時間還流させた。その後冷却し、フィルターでろ過し、水で洗浄後、真空中て乾燥させたところ茶色化合物compound5が得られた。このように得られた化合物5に、シリカジェルを使ったフラッシュクロマトグラフィーを2回行うことで、10gのcompound6(収率58%)が得られた。
【0053】
<ステップ5>
続いて、図4(b)に示すように、無水エタノール400mlの中にcompound6 (10g, 42mmol)を入れ、加熱しながら還流させ、無水エタノール20mlにエチレンジアミン(1.3g, 21mmol)を0.5時間攪拌しながら数滴加えた。そして、その混合溶液を氷の容器に入れて冷却し15分間かき混ぜた。その後、200mlのエタノールで洗浄しフィルターをかけ、真空で乾燥させたところcompound7が8.5g (収率82%)で合成できた。
【0054】
<ステップ6>
続いて、図5(a)に示すように、無水メタノール(50ml)の中にcompound7 (8.2g, 16mmol)、triethylamine (22ml, 160mmol)をいれ、10mlメタノールの中にFeCl3(2.7g, 16mmol)を加えた溶液を窒素雰囲気下で混合した。室温窒素雰囲気で1時間混合したところ茶色の化合物が得られた。その後、真空中で乾燥させた。得られた化合物はジクロロメタン400mlで希釈し、塩性溶液で2回洗浄し、NaSOで乾燥させ、真空中で乾燥させたところcomplex A(第1形態の鉄サレン錯体化合物)が得られた。得られたcomplex Aを、ジエチルエーテルとパラフィンの溶液中で再結晶させ、高速液化クロマトグラフィーで測定したところ、純度95%以上の鉄サレン錯体5.7g(収率62%)が得られていた。
【0055】
<ステップ7>
さらに、図5(b)に示すように、無水メタノール(50ml)の中にcompound7 (8.2g, 16mmol)、triethylamine (22ml, 160mmol)、Mg(OMe)2を少々いれ、10mlメタノールの中にFeCl3(2.7g, 16mmol)を加えた溶液を窒素雰囲気下で混合した。室温窒素雰囲気で1時間混合したところ黒色の化合物が得られた。その化合物を真空中で乾燥させたところcomplex B(第2形態の鉄サレン錯体化合物)が得られた。得られたcomplex Bを、ジエチルエーテルとパラフィンの溶液中で再結晶させ、高速液化クロマトグラフィーで測定したところ、純度95%以上の鉄サレン錯体4.2g(収率55%)が得られていた。
その後、鉄サレン錯体化合物をアシル化、Et3N等の反応ステップを経ることにより、R、Rに上記の栄養素を結合させた。
【0056】
ところで、鉄サレン錯体とそれに結合する化合物(栄養素)の電子の移動は第一原理計算で求めることができる。このコンピュータシミュレーションを実現するシステムは、コンピュータとしての公知のハードウェア資源を備えるものであって、すなわち、メモリと、CPUなどの演算回路を備える演算装置と、演算結果を出力する表示手段を備えているものである。
【0057】
メモリは、既存の有機化合物または3次元構造を特定するデータと、コンピュータシミュレーションを実現するソフトウェア・プログラムを記憶している。このソフトウェアは、各化合物の側鎖を追加・変更・削除し、所定の側鎖間で架橋し、記述のスピン電荷密度の高い領域を計算し、構造全体としてのスピン電荷密度を決定可能なものである。このプログラムとして、例えば、市販品(Dmol3、アクセルリス社)を利用することができる。
【0058】
ユーザーは化合物について、側鎖を追加する位置を入力し、または側鎖を変更し、あるいは削除するものを選択し、さらに、架橋を形成すべき箇所をメモリの支援プログラムを利用して演算装置に指定する。演算装置はこの入力値を受けて、スピン電荷密度を演算してその結果を表示画面に出力する。また、ユーザーが既存の化合物の構造データをコンピュータシステムに追加することによって、既知の化合物についてのスピン電荷密度を得ることが出来る。なお、磁性を有する薬剤(鉄サレン錯体)の設計方法については、WO2008/001851に開示の方法を用いることができる。
【0059】
鉄サレン錯体化合物のR、R部分に結合する電荷移動は、上記シミュレーションで求めた上向きと下向きのスピン電荷密度を三次元空間で積分すると求めることができる。図6及び図7に電荷移動の計算結果を示す。図6は、第1形態の鉄サレン錯体化合物のR、R部分に結合する電荷移動の値の平均値を示している。なお、マイナスは電子が増加していることを示し、プラスは電子が減っていることを示している。また、図7は、第2形態の鉄サレン錯体化合物のR、R部分に結合する電荷移動の値の平均値を示している。
【0060】
〔健康補助剤の誘導方法〕
次に、上述した鉄サレン錯体化合物(磁性を有する栄養素)を含有する健康補助剤の誘導方法について説明する。例えば、メラニン色素の生成の抑制作用及びメラニン色素の淡色化作用を有するビタミンCを鉄サレン錯体に結合して得られる鉄サレン錯体化合物を、経口投与可能な他の化合物と混合して健康補助剤(言い換えれば、健康補助食品)を生成する。
【0061】
このような健康補助食品を食用後、シミやソバカス等の現れている部分(患部)に、シート状または粒状の磁石を当てることにより、血流によって運ばれてくる鉄サレン錯体化合物(磁性を有するビタミンC)を患部に誘導及び集中させることができる。これにより、シミやソバカスを集中的に改善することが可能となる。また、このような美容効果は、ビタミンCだけでなく、上述したビタミンA、ビタミンB群などの他のビタミン類、ピクジェノールやその他の有機酸のように抗酸化作用を有する物質、ハイドロキノンのように漂白作用を有する物質、エラグ酸のようにチロシナーゼの活性化を阻害する作用を有する物質、マグノリグナンのようにチロシナーゼの成熟を阻害する作用を有する物質を用いても同様に美容効果を得ることができる。
【0062】
また、例えば、発熱感を与えるカプサイシンを鉄サレン錯体に結合して得られる鉄サレン錯体化合物を、経口投与可能な他の化合物と混合して健康補助食品を生成する。このような健康補助食品を食用後、シート状または粒状の磁石を仕込んだ靴下や手袋を着用することにより、血流によって運ばれてくる鉄サレン錯体化合物(磁性を有するカプサイシン)を手足に誘導及び集中させることができる。これにより、手足の冷えを集中的に改善でき、健康維持を図ることができる。なお、この他、磁石付き腹巻、磁石付き耳当て等を着用することにより、腹や耳を集中的に暖めることも可能である。
【0063】
一方、ビタミンC誘導体、ヒアルロン酸、ビタミンB群、ハイドロキノン等のように外用塗布に有効なものもある。そこで、これらの栄養素を鉄サレン錯体に結合して得られる鉄サレン錯体化合物を、外部塗布可能な他の化合物と混合して健康補助剤を生成し、この健康補助剤を患部に塗布して磁場を加えることにより、患部に磁性を有する栄養素を誘導・集中させて肌内部への浸透を促進することが可能となる。
【0064】
以上のように、本実施形態に係る健康補助剤によれば、鉄サレン錯体と栄養素との化合物、言い換えれば磁性を有する栄養素を含有しているため、経口投与または外部塗布して患部に磁場を加えることにより、当該患部に栄養素を誘導及び集中させることができ、上述した美容効果や冷え性予防効果などを得ることが可能となる。
【0065】
なお、上記実施形態では、磁性を有する金属錯体として鉄サレン錯体を例示して説明したが、その他の金属錯体、シスプラチン誘導体やコバルト錯体誘導体も磁性を有することがわかっているため、これらの金属錯体を使用しても良い。また、上記実施形態では、美容効果や冷え性予防効果に着目して栄養素を例示したが、図2に示す栄養素以外の栄養素(例えばミネラルやアミノ酸など)を金属錯体に結合するような構成としても良い。
【符号の説明】
【0066】
1、2、3、4、5、6、7…compound、A…complex(第1形態の鉄サレン錯体化合物)、B…complex(第2形態の鉄サレン錯体化合物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性を有する有機化合物と栄養素との化合物を含有することを特徴とする健康補助剤。
【請求項2】
前記有機化合物は鉄サレン錯体であることを特徴とする請求項1記載の健康補助剤。
【請求項3】
前記栄養素は分子量860以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の健康補助剤。
【請求項4】
前記栄養素は、ビタミンC(L−アスコルビン酸)、ビタミンC誘導体(リン酸アスコルビン)、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン、ニコチン酸)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6(ピリドキシン)、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB9(葉酸)、ビタミンB12(シアノコバラミン)、L−システイン、ビタミンA(レチノール)、ハイドロキノン、ピクジェノール、エラグ酸、マグノリグナン、ヒアルロン酸、カプサイシンのいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の健康補助剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の健康補助剤を経口投与または外部塗布した後に、所望の部位に局所的に磁場を加えることにより、前記健康補助剤に含有されている磁性を有する金属錯体と栄養素との化合物を前記部位に誘導させることを特徴とする健康補助剤の誘導方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−222264(P2010−222264A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68450(P2009−68450)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】