説明

健康食品及びその製造方法

【課題】最近の研究によれば、酒粕酢は、一般穀物酢または米黒酢以上に、アミノ酸や有機酸を豊富に含有することが分かってきているが、酒粕酢を消費者が容易に入手することはできない。また、酒粕酢は独特の色の濃さや香りの強さがあるため、消費者に食品としての利用を促すことは難しい。
【解決手段】酒粕酢の粉状体またはエキスを含有し、固形状または半固形状に製剤化してなる健康食品。好ましくは、米黒酢などの醸造酢にカルシウムを添加し濾過したものを混合する。この添加により、粉状体にしても、酢酸含量を十分確保しながら、骨粗鬆症に効果のあるカルシウムを添加できる。製剤化しているので、酒粕酢を携帯でき、何時でも何処でも経口摂取できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酒粕酢を含有する健康食品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酒粕酢の製造は、江戸時代に始まる。戦前まで、米は貴重であったため、米から造った米酢は庶民には高嶺の花であり、その代用品として、酒粕から造った酒粕酢が庶民の間に流通していた。
しかしながら、戦後、米の生産量増加により、米から作られた米酢が安価に提供されるようになったことや、酒粕酢には独特の色の濃さや香りの強さがあることから、急速に廃れてしまった。
現在は、米酢に少量ブレンドされたものが、業務用としてすし店を中心に細々と取引されているに過ぎない。平成15年度農林水産省調査によれば、醸造酢全体に占める酒粕酢の割合は1%程度とのことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
最近の研究によれば、酒粕酢は、一般穀物酢、米黒酢以上に、アミノ酸や有機酸を豊富に含有することが分かってきている。
而して、今まで酒粕酢の利用方法を充分紹介して来なかったことにより、一般市場にでることが少なかった。
また、上記したように、酒粕酢は独特の色の濃さや香りの強さがあるため、消費者に食品としての利用を促すことは難しい。
本発明は、上記課題を解決するために、酒粕酢を携帯でき、何時でも何処でも経口摂取できる健康食品化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、酒粕酢の粉状体またはエキスを含有し、固形状または半固形状に製剤化してなる健康食品である。
請求項2の発明は、さらにカルシウムを含有することを特徴とする請求項1に記載の健康食品である。
請求項3の発明は、酒粕酢と、醸造酢にカルシウムを添加し濾過したものを混合したことを特徴とする請求項2に記載の健康食品の製造方法である。
請求項4の発明は、醸造酢として酒粕酢以外のものを使用することを特徴とする請求項3に記載の健康食品の製造方法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、健康食品化して提供できるので、酒粕酢を携帯でき、何時でも何処でも経口摂取できる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
酒粕酢は、赤酢、粕酢とも言われる。日本酒の製造時に出る酒粕を醗酵させた醸造酢の一種であり、主に業務用として販売されている。製法としては、酒粕に水を加えて濾過後、アルコールを添加し酢酸菌を加えて酢酸発酵したものが一般的である。酢酸発酵法には、静置発酵法と全面発酵法(通気発酵法とも言われる)の2種類があるが、そのどちらでもよい。
なお、米を使用して製造した酢としては、米酢、米黒酢等があるが、原料に酒粕を使用しているため、全く別のものである。
【0007】
本発明で使用するものは、酒粕として、常温で1ヶ月以上または15〜70℃で熟成したものを使用するのが好ましく、常温で1年以上熟成したものを使用するのがより好ましい。十分に熟成させることにより、酒粕に含まれるたんぱく質や澱粉が麹の働きにより、アミノ酸や糖分・有機酸として豊富に含まれるからである。また、水100重量部に対して、酒粕の固形分を0.4〜60重量部溶解させたものが好ましい。
酒粕酢は、自ら製造したものでも市販品でもよい。出願人が調べた限りでは、市販の酒粕酢の原料は全て日本国内産であり、しかも、原料となる酒粕は、江戸時代以降より続いた職人制度により受け継がれた手法により製造されているので、安全性も高い。なお、市販品では、横井醸造工業株式会社販売の酒粕酢が上記の好ましい条件を満足することが確認されており、その使用が推奨される。
【0008】
酒粕酢を分析したところ、以下のことが確認さている。
(1) アミノ酸含量が一般穀物酢や米黒酢以上であること。
(2) 従来の食酢(米黒酢を含む)に含まれていない成分を含んでいること。
【0009】
健康食品として、効率良く摂取するためにエキスまたは粉状体とする。これらは定法により製造できる。例えば、エキスは減圧濃縮機を、粉状体は凍結真空乾燥機を使用して製造できる。
本発明では、製剤化されるが、その剤形は特に限定されず、通常使用され得るものであれば任意の剤形をとることができる。通常は、固形剤または半固形剤であり、好ましくは固形剤である。半固形剤としては、ペースト剤などが挙げられ、固形剤としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤などが挙げられる。これらは一般的な製造方法に準じて製造される。
【0010】
本発明の健康食品は、本発明の効果および製剤的な安定性などを損なわない限り酒粕酢の他に、用途あるいは剤形などに応じて、成分を適宜配合しても良い。
配合したい成分としては、先ず、カルシウムやクエン酸やその他の醸造酢が挙げられる。カルシウムは、日本人女性に多く見られる骨粗鬆症に対応できると期待され、クエン酸は、疲労回復に効果が期待できるからである。また、他の醸造酢、具体的には穀類、果物、野菜などをアルコール発酵した後酢酸発酵して得らえる酢が挙げられる。酒粕酢には含まれない成分が含まれるからである。特に、米黒酢は有望である。
【0011】
但し、カルシウムについては、卵殻カルシウム、貝殻カルシウム、ドロマイトなどの複合形態で添加されるので、所望の量を正確に添加するのは難しい。そのため、処理全量の酒粕酢を入れた容器に直接添加すると、酒粕酢の酢酸が酢酸カルシウムに過剰に転化し、アミノ酸の量が有意的に減ってしまう恐れがある。従って、別に少量の酒粕酢や併用する別の醸造酢などの酢にカルシウムを入れて必要な量だけ酢酸カルシウムを生成した後、カルシウムを濾過により除去したものを別途用意し、これに酒粕酢を合わせるのが好ましい。その際、カルシウムを添加する側の醸造酢として、酒粕酢以外のもの、例えば米黒酢を用いれば、酒粕酢には含まれない成分を含ませることになり、好都合である。
なお、カルシウムを添加すると、上記に加えて、酢酸が酢酸カルシウムとなり、粉状体化する際にも揮発し難くなるので、最終的な粉状体にも酢酸が残り易くなる利点もある。
【0012】
また、軟カプセル剤化する場合には、分散性や流動性を考慮して、油脂としてオリーブ油、大豆油、サフラワー油、菜種油等の植物油、リノール酸、オレイン酸等の脂肪酸、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステルなどの界面活性剤、クエン酸などのpH調整剤を配合することが望ましい。
【実施例】
【0013】
(実施例1:原料酢の分析)
各種酢に含まれる遊離アミノ酸と有機酸その他アミノ酸を分析したところ、表1、表2の結果が得られた。
ここで、「赤酢」は、横井醸造工業株式会社製造の酒粕酢(1年以上常温で熟成)であり、「穀物酢」、「玄米黒酢」は市販品である。
【0014】
【表1】

【0015】
【表2】

【0016】
(実施例2:粉状体化した酢の分析)
実施例1で分析した酒粕酢を減圧濃縮機でBx.30まで濃縮してエキスとした。このエキスを凍結真空乾燥機で乾燥し粉末を得た。
酒粕酢の粉状体に含まれる遊離アミノ酸と有機酸、その他アミノ酸を分析したところ、表3、表4の結果が得られた。遊離アミノ酸、有機酸含有量が有意に増加していた。
【0017】
【表3】

【0018】
【表4】

【0019】
(実施例3:軟カプセル剤化)
酒粕4tに対して水10tを加え、撹拌溶解させ、6日間放置した。その後、自動圧搾装置で濾過した後、酢酸菌を加えて、全面発酵法で10日間発酵させた後、自動濾過機で濾過して酒粕酢を製造した。別に、定法で製造した玄米黒酢(酸度5%以上)740Lに卵殻カルシウム185kgを添加し、自動圧搾機で濾過した濾液を準備した。
そして、酒粕酢に上記した濾液を加えて混合し、減圧濃縮機(液温度50℃以下)でBx.30まで濃縮した。その後、この濃縮液を凍結真空乾燥機(棚温度40℃以下)で乾燥し粉状体を得た。
【0020】
(減圧濃縮時の液温度)
従来の減圧濃縮時の液温の設定温度は60℃程度であるが、酢酸の保持やタンパク質の変性防止のため、液温の設定温度を50℃以下とした。
(凍結乾燥時の液温度)
従来の凍結乾燥時の液温の設定温度は50℃以上であったが、40℃以下にしたところ50℃に比べ粉末中の酢酸残存率が平均して15%も高かったことから、この実施例では、酢酸を効率よく残すため、40℃以下とした。
【0021】
得られた粉末200mgに、梅肉エキス(クエン酸)3mg、サフラワー油170mg、ミツロウ25mg、大豆レシチン2mgを加えて混合した後、それを内溶液とし、ゼラチン系シートを皮膜として軟カプセル剤に製剤化した。
比較のために、香酢についても、同様にして軟カプセル剤に製剤化した。
【0022】
軟カプセル剤を比較したところ、香酢の凍結乾燥粉末を使用した場合のカプセル1粒中の酢酸含量は11.5mg程度であったが、酒粕酢凍結乾燥粉末を使用した場合は20.0mgになっていた。その他にも必須アミノ酸、γ−アミノ酪酸等が豊富に含まれていることがわかった。
香酢軟カプセルとの比較分析結果を表5に示す。
【0023】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0024】
酒粕酢に使用されている酒粕については、
(1)乳酸醗酵して低分子化したペプチドによる血圧上昇の抑制効果
(2)メラニン色素の生成抑制効果
(3)肝機能の強化効果、成長促進効果、老化防止効果
(4)エストロゲン様作用、表皮角化細胞増殖作用及び保湿作用
(5)糖尿病の予防効果
(6)肥満の防止効果
(7)健忘症の予防効果
(8)骨粗鬆症の予防効果
(9)アレルギー体質の改善効果
(10)脳梗塞の予防効果
などが報告されたりしている。
また酢の主成分である酢酸については、
(1)血圧上昇の抑制効果
(2)食欲増進
(3)消化促進
などが報告されている。
酒粕酢に関しては、業務用でしか流通していなかったこともあり、研究も殆どなされていない。しかしながら、アミノ酸(特に特有成分のピログルタミン酸や軟カプセル剤で比較的多く含まれるγ−アミノ酪酸)、有機酸(特に濃縮粉末で多く含まれるヒドロキシクエン酸)が豊富であることから、臨床面での研究が進めば、酒粕、酢酸と同等以上の効果の報告も出てくるものと期待される。
従って、有望な健康食品になるものと期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酒粕酢の粉状体またはエキスを含有し、固形状または半固形状に製剤化してなる健康食品。
【請求項2】
さらにカルシウムを含有することを特徴とする請求項1に記載の健康食品。
【請求項3】
酒粕酢と、醸造酢にカルシウムを添加し濾過したものを混合したことを特徴とする請求項2に記載の健康食品の製造方法。
【請求項4】
醸造酢として酒粕酢以外のものを使用することを特徴とする請求項3に記載の健康食品の製造方法。