説明

側壁の構築方法、支持構造およびセグメント

【課題】施工が容易で、かつ連結手段の腐食の問題がない耐久性に優れた側壁の構築方法および側壁とセグメントの連結構造を提供する。
【解決手段】まず、地盤を掘削してトンネル1を形成し、トンネル1の内壁にセグメント3bを設ける。セグメント3bは、内面に凹凸部13を有している。
次に、トンネル1内に架台17を設置し、架台17のクレーン25を用いて、側壁ユニット化部材15aをセグメント3b上に設置する。
次に、側壁ユニット化部材15aの周囲に型枠35aを設置し、コンクリートを打設して側壁5aが構築される。この際、架台17をセントルとして用いる。
側壁5aとセグメント3bは、床版の支点反力に対して、凹凸部13のせん断耐力と、側壁のコンクリートの支圧で抵抗するので、別途ジベルを取り付ける工程が不要となり、施工が容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内の側壁の構築方法、支持構造およびセグメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル内に道路を設ける場合には、トンネル内に床版を設ける。
この際、床版を支持する部材として、側壁が必要になる。
【0003】
側壁は、トンネルの側部に設けられたセグメントにジベル(シアコネクター)を設け、セグメント上に鉄筋を設置した後に、鉄筋の周囲にコンクリートを打設することによって構築される。
【0004】
即ち、側壁とセグメントとはジベルによって連結され、床版の支点反力に対してジベルのせん断耐力と側壁のコンクリートの支圧で抵抗することにより、床版を支持している(特許文献1)。
【0005】
なお、側壁として場所打ちコンクリートではなく、プレキャストコンクリートを用いる場合もある。
この場合は、側壁とセグメントはボルトによって連結され、床版の支点反力に対してボルトのせん断耐力と側壁のコンクリートの支圧で抵抗することにより、床版を支持している(特許文献2)。
【特許文献1】特開2006-152746号公報
【特許文献2】特開2004-285758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ジベルを用いて側壁とセグメントを連結する場合は、ジベルの設置に手間がかかり、また、トンネル内の漏水によってジベルが腐食するという問題も考えられる。
【0007】
また、側壁としてプレキャストコンクリートを用いる場合は、施工誤差を考慮して、側壁のボルト挿入孔の直径を、ボルトの直径よりも大きく形成する必要がある。
【0008】
そのため、ボルトを挿入した後に、ボルトとボルト挿入孔の間の隙間を充填しなければならず、施工の手間がかかり、充填管理が困難であるという問題があった。
また、施工の品質の管理が困難であるという問題があった。
さらに、トンネル内の漏水によってボルトが腐食するという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は施工が容易で、かつ連結手段の腐食の問題がない耐久性に優れた側壁の構築方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、床版を支持する側壁をトンネル内に構築する側壁の構築方法であって、前記トンネルの内壁として、内面に凹凸形状を有するセグメントを設置する工程(a)と、前記トンネルの側部の前記セグメント上に、鉄筋を設置する工程(b)と、前記鉄筋の周囲にコンクリートを打設する工程(c)と、を有することを特徴とする側壁の構築方法である。
【0011】
前記工程(b)は、鉄筋の籠体である側壁ユニット化部材を前記セグメント上に設置する工程である。
前記工程(b)は、前記側壁ユニット化部材を、前記トンネル内に設けられた架台を用いて前記セグメント上に設置し、前記工程(c)は、前記側壁ユニット化部材の周囲に型枠を設置する際に、前記架台を支保工として用いてコンクリートを打設する。
【0012】
第2の発明は、トンネル内で床版を支持する支持構造であって、トンネルの内壁として設けられ、内面に凹凸形状を有するセグメントと、前記トンネルの側部の前記セグメント上に設置された側壁と、を有することを特徴とする支持構造である。
前記側壁は、鉄筋の籠体である側壁ユニット化部材から構成される。
【0013】
第3の発明は、トンネルの内壁として設けられるセグメントであって、内面に凹凸形状を有し、側壁構築に際して、せん断抵抗力を増加させることを特徴とするセグメントである。
【0014】
本発明では、側壁の構築方法が、トンネルの内壁に、内面に凹凸形状を有するセグメントを設置する工程を備えており、構築されたセグメントと側壁は、床版の支点反力に対してセグメントの凹凸形状のせん断耐力と側壁のコンクリートの支圧で抵抗する。
従って、ジベルやボルト等の連結手段(せん断伝達手段)が不要であり、従来と比べて施工が容易になる。
【0015】
また、本発明では、凹凸形状はセグメントの一部であり、腐食の恐れがないため、連結部(せん断伝達手段)の防食処理が不要となり、コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、施工が容易で、かつ連結手段の腐食の問題がない側壁の構築方法等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。
図1、図4、図6および図7は、本実施形態に係る側壁の構築方法による側壁5a、5bの構築手順を示す断面図である。
【0018】
また、図2はセグメント3bを示す斜視図、図3(a)は図2のA−A断面図、図3(b)は図3(a)の凹凸部13付近の拡大図である。
さらに、図5は側壁ユニット化部材15aを示す斜視図であって、図8は構築された側壁5a、5bを示す断面図、図9は図8の側壁5a付近の拡大断面図である。
【0019】
まず、図1に示すように、図示しないシールド機等を用いて地盤を掘削し、地盤内にトンネル1を構築する。
この際、トンネル1の構築と同時にトンネル1の内壁にセグメント3a、3bを設置する。
セグメント3bは少なくともトンネル1の側部に設置される。
【0020】
図2および図3(a)に示すように、セグメント3bは、本体11の内面に凹凸形状としての凹凸部13を有している。ここで、凹凸部13は、図2(a)に示すように、セグメント3bの内面に対して複数の凸部13aを有し、凸部13a間を凹部12としてもよく、また、図2(b)に示すように、セグメント3b内面に対して複数の凹部12を有し、凹部12間を凸部13aとしてもよい。
【0021】
図3(b)には、凹凸部13が、台形状の凸部13a、13bを有し、凸部13aと凸部13bの間には凹部12が設けられている状態の拡大図を示す。
【0022】
凸部13aと凸部13bの中心間の距離である凸部幅14aは、例えば凸部高さ16が3〜5mm程度の場合、40〜50mm程度である。これは既住の実績等により接触面のせん断耐力の向上が期待できる一例である。なお、一例としては以下の文献に記載されている。
「PC合成床版工法設計施工指針(案)」、土木学会、昭和62年3月。
また、凸部13a、13bの台形部分の角度αは45度以上が望ましい。
【0023】
さらに、凸部高さ16と、凸部底部幅14bの間の関係は、以下に示す式(1)の条件を満たすのが望ましい。

h/lpe=0.10〜0.20 ………式(1)

:凸部高さ16
pe:凸部底部幅14b

これは凸部13a、13bの前面のコンクリートが局所的に圧壊する支圧破壊形式とするためであり、既往の文献等でも、h/lpeが0.20以上ではせん断破壊するという報告がある。
【0024】
また、凸部13aの頂部は、平坦部18を有するのが望ましい。
これは、頂部が平坦でない場合は、セグメント3bの搬送中に凸部13aが欠けてしまう恐れがあるからである。
また、後述するコンクリートの打設の際に充填性が低下する恐れがあるからである。
【0025】
一方、セグメント3aの形状は、公知の形状の物を用いることができ、またセグメント3bと同様の形状の物を用いてもよい。
【0026】
なお、セグメント3a、3bの材質は特に限定されず、公知のセグメントの材質と同様であり、例えばコンクリートである。なお、コンクリートとして、耐火コンクリートを用いてもよい。
【0027】
トンネル1の内壁にセグメント3a、3bが設置されると、次に、セグメント3bの凹凸部13の表面を清掃し、凹凸部13の表面に付着した異物等を除去する。
これは、後述するコンクリートの打設工程において、コンクリートとセグメント3bの密着性を向上させるためである。
【0028】
次に、図4に示すように、トンネル1内に架台17を設置する。
そして、架台17に設けられたクレーン25を用いて、側壁ユニット化部材15a、15bをC1方向に移動させ、セグメント3b上に設置する。
【0029】
なお、側壁ユニット化部材15a、15bは、セラミックインサートによってセグメント3bに固定される。
【0030】
架台17は、側壁ユニット化部材15a、15bの搬送および設置に用いられる装置であり、また、後述する型枠35a、35bの設置の際にはセントル(型枠の支保工)として用いられる。
【0031】
図4に示すように、架台17は脚部19a、19bを有し、脚部19a、19bにはレール21が設けられている。
脚部19a、19bの下部には移動用の車輪20a、20bが設けられている。
レール21には、クレーン25が図4のB1、B2方向に移動可能に設けられている。
【0032】
また、脚部19aと脚部19bとの間には、平板状の台座23が設けられている。
即ち、側壁ユニット化部材は、図4に示す側壁ユニット化部材15bのように、台座23に載置されてトンネル1内に搬入される。
【0033】
そして、図4に示す側壁ユニット化部材15aのように、クレーン25によってC2方向に吊り上げられ、B1、B2方向およびC1方向に移動してセグメント3b上に載置される。
【0034】
図5(a)に示すように、側壁ユニット化部材15aは鉄筋31を組み合わせた籠体であり、両端には型枠33a、33bが設けられている。
側壁ユニット化部材15aは、後述する側壁5aの鉄筋部分であり、トンネル1内に搬入される前に、あらかじめ鉄筋31が配筋されている。
なお、図5(b)に示す側壁ユニット化部材18aのように、前面にも型枠34を設けた構造としてもよい。
このような構造とすることにより、後述するセントルが不要となる。
【0035】
側壁ユニット化部材15bは、後述する側壁5bの鉄筋部分であり、側壁ユニット化部材15aと同様に、トンネル1内に搬入される前に、あらかじめ鉄筋31が配筋されている。
【0036】
なお、側壁ユニット化部材15bの構造は、側壁ユニット化部材15aの構造と同様であるため、説明を省略する。
【0037】
また、側壁ユニット化部材15aはトンネル1の軸方向に並ぶように複数個設置され、図示しないボルト等によってトンネル1(セグメント3b)に連結される。側壁ユニット化部材15bも同様である。
【0038】
このように、鉄筋として、あらかじめ鉄筋が配筋された側壁ユニット化部材15a、15bを用いることにより、トンネル1内での鉄筋の配筋作業を省略することができ、施工性を向上させることができる。
【0039】
次に、図6に示すように、側壁ユニット化部材15a、15bの周囲に型枠35a、35bを設置する。
この際、架台17の脚部19a、19bをセントル(型枠の支保工)として用いて型枠を支持する。
【0040】
なお、必要に応じて、脚部19a、19bと型枠35a、35bの間にジャッキ40a、40bを挿入して脚部19a、19bと型枠35a、35bを連結する。
【0041】
このように、側壁ユニット化部材15a、15bの搬送と取付に用いた架台17を、セントルとして用いることにより、別途セントルを設置する工程が不要となり、従来と比べて施工性が改善される。
【0042】
次に、図7に示すように、側壁ユニット化部材15a、15bの周囲にコンクリートを打設して、側壁5a(ブラケット)および側壁5b(ブラケット)を構築する。
【0043】
以上の工程で、トンネル1の内壁に側壁5a、5bが構築され、セグメント3bと側壁5a、5bとは凹凸部13(図3)によって連結される。
【0044】
図8に示すように、側壁5a、5bには床版7が設けられ、床版7を側壁5a、5bが支持する。
このようにして床版7は設置され、トンネル1が道路トンネルとして用いられる。
【0045】
ここで、先に述べたように、セグメント3bには凹凸部13が設けられており、図9に示すように、セグメント3bと側壁5aとは凹凸部13によって連結されている。
同様に、セグメント3bと側壁5bとは凹凸部13によって連結されている。
【0046】
即ち、側壁5a、5bとセグメント3bは、床版7の支点反力に対して、セグメント3bの凹凸部13のせん断耐力と、側壁5a、5bのコンクリートの支圧とで抵抗する。
【0047】
従って、ジベルやボルトを用いた従来の連結構造と異なり、連結手段(せん断伝達手段)として、ジベルやボルトを取り付ける工程が不要となるため、側壁5a、5bの施工が容易となる。
【0048】
また、凹凸部13はセグメント3bの一部であり、例えばコンクリートで形成されるので、トンネル内の漏水により腐食する恐れがない。
【0049】
このように、本実施の形態によれば、側壁5a、5bの構築方法が、トンネル1の内壁に、内面に凹凸部13を有するセグメント3bを設置する工程を備えており、構築されたセグメント3bと側壁5a、5bは、床版7の支点反力に対して、セグメント3bの凹凸部13のせん断耐力と、側壁5a、5bのコンクリートの支圧とで抵抗する。
【0050】
従って、連結手段(せん断伝達手段)として、ジベルやボルト等を設ける必要がなく、従来と比べて施工が容易になり、また、施工の品質管理も容易となる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、凹凸部13はセグメント3bの一部であり、例えばコンクリートであるため、腐食の恐れがない。
【0052】
従って、従来と比べてセグメント3bと側壁5a、5bの連結部分の品質が向上し、耐久性も向上させることができる。
さらに連結部分の防食処理が不要となるため、コストを低減することができる。
【0053】
さらに、本実施の形態によれば、側壁5a、5bの鉄筋として、トンネル1内に搬入される前にあらかじめ鉄筋が配筋された側壁ユニット化部材15a、15bを用いている。
【0054】
従って、トンネル1内での鉄筋の配筋作業を省略することができ、施工性を向上させることができる。
【0055】
また、本実施の形態によれば、側壁ユニット化部材15a、15bの搬送と、セグメント3bへの取付に用いた架台17を、コンクリートを打設する際のセントルとして用いている。
【0056】
従って、別途セントルを設置する工程が不要となり、従来と比べて施工性が改善される。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0058】
例えば、本実施形態では側壁ユニット化部材15a、15bが型枠33a、33bを有しているが、型枠33a、33bを有さない構造としてもよい。
【0059】
この場合は、型枠33a、33bは、側壁ユニット化部材15a、15bとは別の部材として、型枠35a、35bを設置する際に合わせて側壁ユニット化部材15a、15bの周囲に設置される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】側壁の構築手順を示す断面図
【図2】セグメント3bを示す斜視図
【図3】図2のA−A断面図および凹凸部13付近の拡大図
【図4】側壁の構築手順を示す断面図
【図5】側壁の構築手順を示す断面図
【図6】側壁の構築手順を示す断面図
【図7】側壁の構築手順を示す断面図
【図8】構築された側壁を示す断面図
【図9】図7の側壁5a付近の拡大断面図
【符号の説明】
【0061】
1…………トンネル
3a………セグメント
3b………セグメント
5a………側壁(ブラケット)
7…………床版
11………本体
12………凹部
13………凹凸部
13a……凸部
14a……凸部幅
14b……凸部底部幅
15a……側壁ユニット化部材
17………架台
19a……脚部(セントル)
21………レール
23………台座
25………クレーン
31………鉄筋
33a……型枠
35a……型枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床版を支持する側壁をトンネル内に構築する側壁の構築方法であって、
前記トンネルの内壁として、内面に凹凸形状を有するセグメントを設置する工程(a)と、
前記トンネルの側部の前記セグメント上に、鉄筋を設置する工程(b)と、
前記鉄筋の周囲にコンクリートを打設する工程(c)と、
を有することを特徴とする側壁の構築方法。
【請求項2】
前記工程(b)は、鉄筋の籠体である側壁ユニット化部材を前記セグメント上に設置する工程であることを特徴とする請求項1記載の側壁の構築方法。
【請求項3】
前記工程(b)は、前記側壁ユニット化部材を、前記トンネル内に設けられた架台を用いて前記セグメント上に設置し、
前記工程(c)は、前記側壁ユニット化部材の周囲に型枠を設置する際に、前記架台を支保工として用いてコンクリートを打設することを特徴とする請求項2記載の側壁の構築方法。
【請求項4】
トンネル内で床版を支持する支持構造であって、
トンネルの内壁として設けられ、内面に凹凸形状を有するセグメントと、
前記トンネルの側部の前記セグメント上に設置された側壁と、
を有することを特徴とする支持構造。
【請求項5】
前記側壁は、鉄筋の籠体である側壁ユニット化部材から構成されることを特徴とする請求項4記載の支持構造。
【請求項6】
トンネルの内壁として設けられるセグメントであって、内面に凹凸形状を有し、側壁構築に際して、せん断抵抗力を増加させることを特徴とするセグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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